2016年6月27日月曜日

★歴史に残る機体③ T-4超音速爆撃機など実現しなかったソ連の怪物たち




戦闘装備の歴史では数々の役に立たない兵器が生まれましたが、ソ連では特にその数が多いようです。いつか実物を拝見したいものです。では現在のロシアはどうなのでしょう。すっかり元気がなくなっているロシアですがいつまでもこのままではないでしょう。なんといっても基礎研究はしっかりしていたロシアでボーイングその他米企業が安価に基礎研究結果をソ連崩壊後に買いあさっていましたね。今はむしろ中国の動向に配慮すべきでしょうね。数十年たって中国のとんでもない兵器が過去の遺物になればいいのですが。

War Is Boring These Five Soviet Super-Weapons Were Disastrous

It’s not surprising that most stayed on the drawing board

by ROBERT FARLEY
T-4爆撃機. Clemens Vasters/Flickr photo
  1. ソ連時代の産軍複合体は西側企業へ70年近くも対抗意識を燃やしていた。中には西側を驚かせる安価かつ革新的で高性能の装備もあったが、空を飛ぶのもやっとという機体や何とか浮かんでいるだけの艦船があったのも事実だ。
  2. ソ連崩壊を回避できた兵器は一つもなかったが一部は崩壊の様相を変えている。戦闘では技術と「ヒト」的要素の関係は複雑だ。その関係で孤立した装備の配備を決定をすれば国防に大きな影響が出る。
  3. 兵器開発の中止にはそれなりの理由がある。各種の出来事が関係する中で真の国益と必要性に集中するのが普通で栄光や見栄だけの追求ではない。ソ連の場合では「驚異の兵器」の多くは想像の世界のままだった。ソ連自身にもソ連の敵にとっても。
口径40.6センチのB-37海軍砲は「ソヴィエッキー・ソユーズ」級に製作された。 Photo via Wikipedia

「ソヴィエッキー・ソユーズ」級戦艦


  1. 20世紀初頭時点で帝政ロシアは比較的近代化されて強力な海軍力を維持していたが日露戦争がおわるとロシア造船業界は西側諸国よりかなり遅れをとり、さらに革命で産業界のみならず海軍まで活動を停止してしまう。大戦間のソ連は弱体化した艦隊を再活性化しようとと各種の策を試みた。
  2. 1930年代も終わりに近づくとソ連経済は回復してきたのでスターリンは海軍力整備を真剣に考えるようになった。ソヴィエツキー・ソユーズ級戦艦を先頭に野心的な整備計画を立案し、巡洋戦艦や航空母艦の整備も想定した。
  3. ソヴィエツキー・ソユーズ級はイタリアのリットリオ級を参考に排水量は6万トン近く、主砲16インチ9門で最高速度28ノットの構想だった。
  4. 完成していれば西側の最優秀戦艦と同程度の規模だったろうが、ソ連は建艦で経験不足があり手抜き作業で実戦ではいろいろトラブルがあっただろう。
  5. ソ連は16隻の戦艦建造を1938年から1940年に計画し、うち4隻を起工している。建造場所はレニングラード、ニコライエフ(黒海)、モロトフスク(白海)でうち一隻は1940年に作業が稚拙なため途中で放棄されている。
  6. 残る三隻も開戦により作業を中断し、うち一隻はレニングラードで大戦後も完成を目指したが、賢明な一派が各艦の建造を中止させ解体している。
  7. 各艦の建造はソ連に膨大な資源投入を求めた。建造がもう少し早い時期に始まっていたら、ソ連は相当の国力を投入した挙句、黒海やバルト海に封鎖されたままの戦艦を抱え込んでいただろう。あるいは一隻は北極航路で船団護衛に投入されていたはずだ。
  8. 大戦中のソ連には戦艦に使う予定の資材を投入すべきもっと有益な分野があったのだ。
国防総省による「ウリヤノフスク」級空母の想像図。 Art via К.Е.Сергеев/Wikimedia

オレル級、ウリヤノフスク級空母

  1. ソ連は革命直後から空母建造を検討していたが、戦艦建造で経済が混乱するとソ連産業界が消極的になりさらに第二次大戦で計画は立ち消えとなる。
  2. 戦後になりスターリンの非現実的な建艦計画からもっと足が地についた空母建造に切り替えた。モスクワ級ヘリコプター空母が1960年代中期に就役し、その後キエフ級VSTOL空母数隻が1970年代から80年代にかけ登場した。
  3. その次は簡単ではなかった。堅実な進歩を主張する向きがあった一方で、一気にスーパー空母へ移行すべきとする向きも出た。(これがオレルプ級である) だがソ連海軍は段階的な発展策を採用し、キエフ級の改良とクズネツォフ級通常動力型中型スキージャンプ式空母の開発が始まった。
  4. さらにクズネツォフ級の後継としてウリヤノフスク級を想定した。
  5. 排水量8万トンで原子力推進のウリヤノフスク級は米スーパー空母に初めて真正面から対抗する艦となるはずだった。スキージャンプ式を採用していたが、カタパルトを装備し戦闘機、早期警戒機を運用できれば米海軍空母とほぼ互角になっていただろう。また完成すれば初めてソ連海軍は長距離攻撃作戦を世界のいかなる地点でも実施する能力を入手していたはずだ。
  6. だがソ連時代の兵器システムの例にもれず壊滅的な出来事が発生した。冷戦終焉でソ連体制が崩壊し、ウリヤノフスクの建造のはリスクがあまりにも大きくなり、船体は分解された。後になってみれば段階的な戦力整備方法はそれなりの効果を上げ、制海艦や海軍航空隊を生んでいる。
  7. ただしスーパー空母をそのまま建造する決定をしたソ連海軍の考えは米海軍と全く異なっいたのであり、西側に匹敵する海軍の存在意義を示すより海軍戦略の再活性化にこだわっていた。だが完成していてもソ連には友邦国、敵国に誇示できる内容は多くなかっただろう。
K-7重爆撃機のRC模型. Photo via Wikipedia

大戦間の重爆撃機

  1. ソ連空軍は第二次大戦中に戦略爆撃能力を整備できなかったが、大戦間にソ連は長距離四発エンジン爆撃機を重点的に開発しようとしていた。
  2. 大戦勃発時のソ連は他国を上回る規模の重爆撃機を配備していた。ただし、機種は旧式化したTB-3が大部分であったが。
  3. 戦闘の激化でソ連はPe-8を主力としている。ほぼアヴロ・ランカスターやボーイングB-17に匹敵する機体だったがPe-8は西側爆撃機に匹敵する成果は上げていない。機体製造と補給問題がその原因だった。
  4. だたし、ソ連空軍は真に壮大なプロジェクトも実験しており、なかでもK-7重爆撃機はユンカース構想に酷似していたが八回目のテスト飛行で墜落し機内の14名が全員死亡している。
  5. その中で最も有望な開発事業はTB-3/ANT-20/TB-6ファミリーを軸に進められエンジン六基以上の怪物機となった。重武装のため速度と操縦性は犠牲にされたが編隊飛行中の重爆撃機は迎撃機から防御が必要との考え方が理由だった。
  6. ANT-20輸送機はエンジン八基で乗客72名を乗せ、試作機はモスクワ近郊に墜落し45名が死亡した。ANT-26は爆撃機に転用したANT-20でエンジン12基で爆弾33千ポンドとB-29を上回る搭載量になるはずだった。
  7. 結局空を飛んだのは試作型だけでかつ長時間飛行はしていない。ソ連がこの路線を採用していたら、戦術空軍力の整備が相当遅れ、かつ赤軍地上部隊の資源を相当吸い上げていただろう。
  8. 巨大なANT-26はドイツ戦闘機の格好の標的になっていたはずで、ルフトバッフェの待ち構える空域に飛び込むだけだっただろう。
  9. ソ連に資源を無駄使いする余裕はなく、戦略爆撃のような高価な作戦は実施できなかった。なんといってもドイツ国防軍を地上で撃破することが必須だった。もしソ連が戦略爆撃を真剣に実施する政策を採用していたら、ドイツ軍の地上侵攻を食い止めることは不可能だったろう。
T-42戦車の想像図。 Art via Wikipedia

超大型戦車T-42

  1. ドイツとソ連の戦車設計が1930年代に類似していたのはカザン戦車学校の知見を共有していたためだ。ワイマール時代のドイツとソ連は1920年代末から航空分野、装甲車両、化学兵器共同作業を開始し成果が上がっていた。t.
  2. ナチの台頭でこの協力は幕を下ろし、ソ連とドイツはともに革新的な新発想の装甲車両技術を手にしていた。
  3. 大戦間に「超大型」戦車の生産を試みた国は数多い。標準型戦車の三倍から四倍の重量のある戦車を指す。その中でドイツのエドワード・グロッテは超重量戦車をドイツ、ソ連双方に設計していた。
  4. ソ連参謀本部へ提出した案で一番関心を集めたのはT-42案で重量100トン、砲塔三つ、時速17マイル、乗員14から15名というものだった。
  5. T-42は試作さえされなかったが、ソ連軍部が真剣に装備化を検討していたのは事実だ。もう少し現実的な案としてT-35、T-100、SMK、KV-4、KV-5があった。このうち生産に入ったのはT-35だけで、45トン、砲塔は5つあった。配備された61両はほとんどがバルバロッサ作戦の初期段階で喪失している。機構上の不具合と乗員が放棄したためだった。
  6. 超重量戦車の例にもれずT-42も重量超過、高価格で開発に手間取り本格生産されなかった。赤軍が同戦車を採用していたら、日本、フィンランド、ドイツを相手にいずれの場合も悲惨な結果になっていたはずで、ソ連の装甲車両教導方針そのものが戦術的に意味のない内容にされていた可能性もある。
氷に覆われたT-4爆撃機。Samantha Cristoforetti/Flickr photo

スホイT-4超音速爆撃機

  1. 大戦後のソ連爆撃機には米側と類似する機種が多い。Tu-4は捕獲したB-29をそのままコピーした。スホイT-4はB-70ヴァルキリーに相当するソ連の機体だ。大型高速爆撃機として高高度を飛行するT-4はソ連防衛産業の能力を試す課題(能力以上の課題にもなった)だった。
  2. マッハ3で実用最高高度が70千フィート近くのT-4は外観がB-70に酷似し、性能も同様だった。しかし、ソ連空軍の構造が米国と異なり、T-4は戦術ミッションに投入され偵察や対艦ミサイルの輸送にも使う構想だった。Kh-22対艦ミサイルを抱いて飛行するT-4は恐ろしかっただろう。
  3. だが要求水準がソ連に高すぎ生産に移されなかった。高速で高高度を飛行する機体に許される公差はソ連航空産業界では実現できなかった。さらにT-4にもB-70同様にSAMが立ちふさがった。
  4. T-4は可変翼型Tu-160の先駆けとなった。Tu-160は35機しか製造されずT-4の就役開始想定年からほぼ10年後に登場している。
  5. もしソ連がT-4を配備していたら戦術機部隊で相当部分を断念していただろう。だが、同時に高性能超音速爆撃機部隊は対艦ミサイルを搭載していたはずで、米空母部隊にとっては小型で短距離型のTu-22M以上に防御が困難だったはずだ。
  6. T-4が量産されていたら米国の調達にも変化が生まれていたはずで、B-1Aがもっと重視され、戦略迎撃戦闘機も脚光を集めていたはずだ。運行維持が極めて高額につくT-4だがソ連崩壊後も一部は残存してロシア空軍に編入されていたかもしれない。

結語

  1. ソ連には壮大な構想と世界規模の野心があったが国防産業の基盤に深刻な制約があった。
  2. 制約が傑作装備を生んだこともある。T-34やMiG-21がその例だ。逆に制約で悲惨な結果を生む決断につながったこともあり、大戦間の巨大爆撃機、巨大戦艦や巨大戦車構想が例だ。
  3. ここから導き出せる教訓としてウェポンシステムの選択が防衛産業に影響を与えることはあっても国家の運命を変えるだけの力はないということだろう。■


2016年6月26日日曜日

★米海軍のUAVトライトンがP-8へ映像送信に成功、ひろがる広域海上監視能力の実現性



しばらくニュースがなかったトライトンですが着実に海軍用として進化を遂げているようです。P-8との共同運用が今回のテストで実証されています。前にも主張しましたが日本が本当に必要とするのはこちらのトライトンが本命ではないでしょうか。

 Navy’s Triton UAV Passes Full-Motion Video To P-8 During Flight Test

June 22, 2016 5:12 PM

The MQ-4C Triton prepares for a flight test in June 2016 at Naval Air Station Patuxent River, Md. During two recent tests, the unmanned air system completed its first heavy weight flight and demonstrated its ability to communicate with the P-8 aircraft while airborne. US Navy photo.
MQ-4Cトライトンが飛行テストに離陸する準備中。2016年6月、パタクセントリバー海軍航空基地。直近のテストで同機は初めて最大荷重飛行とともに飛行中のP-8とのデータ交換性能を実証した。US Navy photo.


米海軍が実用化をめざす長距離無人海上哨戒機MQ-4Cトライトンで運用テストが続いているが、今回は収集情報を有人P-8Aポセイドン多用途哨戒機と共用できることを実証した。
  1. 6月2日に海軍航空基地パタクセントリバー(メリーランド州)でトライトンはポセイドンと共通データーリンクシステムを介してフルモーションビデオ画像の交換に初めて成功した。海軍航空システムズ本部NAVAIRが本日発表した。テストでトライトンが持つ水上目標追跡能力(電子光学赤外線カメラEO/IRを使用)による状況把握能力が離れた地点を飛行中のポセイドン乗員に共有され二機種の同時運用が実証されたことで広域海洋上での共同ミッションに道が開けた。
  2. 「作戦環境では現地到着する前からP-8乗員が監視対象の状況を知ることができることを意味します」とダニエル・パップ中佐(トライトン統合運用実証チーム主査がNAVAIR広報資料で語っている。
  3. トライトンはこれとは別に一連の重量荷重飛行テストを行い、燃料満載で監視地点上空の高高度で滞空可能な時間をさらに伸ばしている。トライトンは燃料満載状態で高度20千フィートから30千フィートへ上昇している。重量物搭載テストは今後も続け最終的に実用上昇限度を60千フィートに伸ばすとNAVAIR広報官ジェイミー・コスグローブがUSNI Newsに語っている。
  4. トライトンは空軍仕様のRQ-4Cグローバルホークを大幅改修し、海軍の広域海上哨戒機(BAMS)事業で生まれた機体だ。高高度を24時間飛行でき、AN/ZPY-3レーダーで広域監視する海上偵察機だ。EO/IRと自動識別で商船の発する信号をとらえる。同機に広い海域を走査させてP-8は必要な個所だけに専念できる。
  5. トライトンとグローバルホークはともにノースロップ・グラマン製だ。
  6. BAMS事業では69機を調達し、P-8の117機と組ませる。196機あったP-3Cオライオンは順次退役中だ。
  7. 先行して海軍は初期モデルのグローバルホーク2機を空軍から購入し、長時間洋上飛行用に大幅改造し、米中央軍の管轄地域で2008年にBAMS実証機として投入した。一機はその後喪失。コスグローブ報道官によれば残存機は飛行時間が21千となり今でも監視ミッションに投入しているという。
  8. ノースロップ・グラマンは2月17日にトライトンが海軍による作戦運用評価に合格したと発表している。マイルストーンCの調達決定に繋がり本格生産が始まる。コスグローブ報道官によれば海軍はノースロップと低率初期生産の協議中という。トライトンの初期作戦能力獲得は2018年予定。
  9. 海軍はトライトンを以下の五地点に配備する。ジャクソンヴィル海軍航空基地(フロリダ州)、ウィドベイアイランド海軍航空基地(ワシントン州)、グアム、地中海および中東、とコスグローブ報道官は明かした。■


★ブレグジット後の英国防衛政策はどうなるのか



なんといっても先週の大きな話題はBrexitで結構な差で離脱が決まりましたね。英国内ではまだ動揺が続いているようですが、英国はNATO脱退まで決めたわけではありません。それでも経済パフォーマンスが落ちることを前提に早くも国防力縮小の議論が発生しているようです。これを機会にロシアが勢力を伸ばすことは許容できませんので、欧州特に西欧の防衛面の結束はますます必要で、EUがだめでもNATOは一層重要性を増してくるでしょう。その中で日本のNATO加盟(NATOの改組が当然必要です)もそのうち議題に上るのではないでしょうか。週明けの金融界は大変でしょうが、経済論理より正当な扱いを受けていないと感じる政治感情の方が強いことが証明された事件で、これから世界は大きく変わるのではと見ています。

After the Brexit, What's Next for Defense?

Andrew Chuter12:10 p.m. EDT June 24, 2016
TOPSHOT-BRITAIN-EU-VOTE-BREXIT(Photo: LEON NEAL, AFP/Getty Images)

英国は未知の世界に突入した。国民投票でEU離脱が決まるとアナリスト、関係者それぞれが国防関連の影響を憂慮し始めた。
  1. 直近の影響は政治面ですでに現れており国防支持派の首相ディヴィッド・キャメロンが辞任を発表し10月までに退陣する。
  2. ジョージ・オズボーン蔵相も辞任と見られる。オズボーンは国防省の実績に不満を持ちながら戦略国防安全保障見直し strategic defence and security review, SDSR で今後五年間の国防支出増を昨年11月の認めた
  3. 欧州残留を希望したスコットランド自治政府も独自に国民投票を実施し連合王国残留の可否で民意を問う可能性が出てきた。
  4. スコットランドが分離独立すれば軍事作戦上で大きな影響が発生する。ファスレーンの原潜基地だけの問題ではない。与党スコットランド国民党の公約は英海軍の弾道ミサイル原潜、攻撃型原潜をスコットランドから追い出すことだ。
  5. だがEU離脱の影響は国防面でもっと緊急の課題を生むとの分析がある。
  1. 「離脱後に歳出見直しは必至な中で国防費が削減対象外というのは非現実的」とマルコム・チャーマーズ英シンクタンクRoyal United Services Instituteの副所長は述べる。
  2. 「財源が減れば政府は戦略の優先を従来のグローバルな役割から欧州同盟国と同じ水準に再調整を迫られるでしょう」
  3. 23日の投票後にチャーマーズが出したレポートでは短期的な支出削減の可能性は十分あるが、国防予算への長期的影響を左右するのは経済実績の悪化の程度次第としている。
  4. 元軍需調達大臣のピーター・ラフは保守党政権は歳出削減に及び腰となりNATO加盟国の防衛費2パーセント水準目標を達成できずに問題を再発させたくないはずと見る。この水準はオズボーン蔵相が昨年の支出見直しで了承している。
  5. 「緊縮予算は必至だったが蔵相が2パーセント公約を守ったのは極めて勇気のいる行為だった」と評価し、「保守党は懸命に国土防衛を継続しており、国会議員からの支援は強い。蔵相人事は見えないが支出削減に動かないだろう。削減が必要なのは事実だが次の首班人事次第でしょう」とラフは述べた。
  6. 予算編成の圧力の中で国防予算水準をどこにおくか疑問が出ている。
  7. 国家監査局による先週の報告では国防予算は256億ポンド(350億ドル)でSDSRでボーイングP-8哨戒機の調達も決まっている。
  8. これに対してチャーマースは政府はSDSR内容を見直し「EU離脱で生まれる新しい状況に国防安全保障政策全般を合わせる好機だ。政府は特にフランス、ドイツと密接に動くべきだ」と主張する。
  9. ラフは2015年度SDSRは現時点で負担不可能で予算調達できないと指摘する。「あくまで願望であり実現は無理」
  10. 「英国は軍事活動の中心をヨーロッパの安全確保に移すべき」とチャーマースは述べる。
  11. これに対し国防コンサルタントのハワード・ウィールドンは英国離脱の直近の影響は最小限と見る。
  12. 「長期的な影響は首相人事で今と同様の国防支出の考え方が続くかで大きく変わります。次期蔵相は国防省にSDSR2015の見直しを強く迫ると見ています」
  13. ウィールドンはEU離脱でP-8およびAH-64E攻撃ヘリコプターの調達契約発表がまもなく開催のファーンボロ航空ショーで取り消しにはならないと見る。
  1. 匿名条件の国防企業幹部は不確実ではあるものの中核事業は政府承認を受け前進するはずと語った。
  2. 「今の勢いを殺したくないです。ビジネスは予定通り進むと見ていますが、途中で変更が発生するかもしれません」
  3. 次期原子力潜水艦事業は総額300億ポンド以上と見られ、国会での審議を待つが、ヴァンガード級トライデントミサイル潜水艦四隻の後継艦は大問題だ。
  4. 上記企業幹部は国民投票結果で英国内及び海外から投資は減速すると見ている。
  5. 「英国向け投資案件は疑問視されるでしょう。英国企業も投資活動に慎重になり、状況がはっきりしするまではそのままとなり、結果として投資低迷が続くと思います」
  6. 「英国に投資しようと考える向きも政治面で不確実性を嫌うでしょう。企業活動でこれまでとは見方が変わります」
  7. ただし英国防産業は全般として「きわめて回復力が高く粘り強いので、問題を直視し新しい政治環境に挑戦していくでしょう」とする。
  8. 同幹部は英国離脱でもヨーロッパ各国とりわけフランスとの共同事業に大きな影響はないと見ている。
  9. 「国防産業の観点ではEUを高く評価していません。ヨーロッパ各国との国防関係協力事業はブリュッセルと無関係です。特にフランスと関係強化につながると楽観視しています」
  10. 「ヨーロッパの反応はこれからですが、ドイツの国防観はフランスと大きく違いますし、フランスは英国よりの考え方ですので、事業の協力関係は自然に続きますよ」
  11. ラフは対欧州協力関係で政治要素が入るのは必至と見る。
  12. 「そうなると英仏協力は一層難しくなりますね。英仏防衛条約が両国のトップによる政治取り決めで成立ずみですが難易度は高くなるでしょう。次期首相がキャメロンと同じ扱いをするかも不明です」
  13. パリではフランス防衛調達部門のトップが英国との強い関係を強調しつつ現時点で中長期的には不明と語っている。
  14. 「国防部門ではランカスター条約で取り決めた二国間協力が基礎で両国の高レベルがそれぞれ支持しています」とローラン・コレ・ビヨン防衛装備調達総局局長が語った。「今の時点ではブレグジットの影響が防衛部門にどう出てくるか不明ですが、短期的な影響は少ないとしても中長期的にはわかりません」
  15. カミユ・グランはシンクタンク戦略研究財団Fondation pour la Récherche Stratégiqueを主宰し短期的には若干の不確実性があるが心配すべきは先が見通せないことだという。「ヨーロッパの防衛に悪材料です」■


宇宙アセットをどう守るか 米宇宙軍団が新構想を発表


各種宇宙装備は軍事作戦に不可欠な存在ですが、中国の衛星攻撃実験で(発生したデブリはどうするのでしょうか)、衛星の脆弱性が急にクロースアップされているという理解で正しいでしょうか。システム冗長性にくわえて防御のための攻撃能力開発が新しい切り口ですが、宇宙非武装化の概念が揺らいでいくのでしょうか。

By COLIN CLARK on June 20, 2016 at 4:01 AM

WASHINGTON: 米空軍宇宙軍団は宇宙空間での勝利への道筋を「宇宙事業構想」Space Enterprise Vision、 SEV との無害な表題の構想で発表した。
構想の存在は機密事項ではないが、内容の多くは機密扱いとなっている。
宇宙軍団広報官ジョン・ドリアン大佐はSEVを「わが方宇宙装備の復元力を強化し、能力を向上し、脅威に対応する能力のため必要な対策全部を包括的に展望しています」という。
現行の武器システム各種に加え計画中の装備ならびに訓練や機構運営の変更点が内容に網羅されている。ドリアン大佐によればSEVは政府全体で進める宇宙ポートフォリオ検討SPRの直接の成果ではないというが、「関連はある」という。その大きな理由にSPRが扱う米スパイ衛星群は宇宙軍団の管轄外のためと記者は考える。
構想に宇宙問題専門家が好意的な見解を示している。「米政府がやっと国家安全保障問題として宇宙空間を真剣に見るようになったのはよいこと。長い間にわたり話題だけで行動はなかった」と語るのはテレサ・ヒッチンス(メリーランド大国際安全保障研究センター主任研究員)だ。
ただしこれまで見過ごされてきたわけではない。「宇宙装備ではこれまで『単一点故障』に近い水準しか許されてこなかったのです」とヒッチンスは述べ、一回の事故あるいは攻撃により中核機能が失われる事態を指している。「これではだめで、米国どころか世界の安全保障に有害です。なぜならそのためにこちら側装備を標的にする勢力が出てくるためです」
ジョン・ハイテン大将(空軍宇宙軍団司令官)も4月11日配信の空軍記事でこれを認めている。
「米国の軍事宇宙衛星の大部分がそもそも脅威を想定しておらず、長期間にわたり機能し効率を維持するつくりになっている。数十年にわたりシステムが機能する装備も中にはある」と発言している。「脅威を想定しないため設計で稼働期間と価格が重要な要素となり、ミッションにも反映されている。しかし今となると宇宙軍装備としては不適当と言わざるを得ない」
ヒッチンスが評価する進展は次の通りだ。
  • 「宇宙空間での状況把握能力改良」
  • 「IC(各情報機関)と軍の間に見られる宇宙装備に関する認識の違いを埋める努力(これは深く深刻な問題で克服の必要がある)」
  • 「回復力」
  • 「ミッションの成功のために装備を分散すること」
  • 「同盟各国と協力して冗長性を確保すること」
  • 「分離(戦略上重要な装備と戦術戦装備を区別すること)」
だがヒッチンスは「全部20年前に実施しておくべきことだったのにまだ実現していない」と付け加えた。
今回の構想で述べた新技術開発で情報諸機関が大きな役割を果たす。省庁間共同宇宙作戦センター (JICSPOC) が実戦演習を行い指揮統制手順やシステム各種をこれから作っていくためだ。公式説明では国家偵察局(NRO)が米スパイ衛星群の製造運用の監督機関で空軍とともにSEVの実施調整にあたるとハイテン大将は説明している。
空軍の公式説明ではSEVの新しい概念に「復元能力」があり、「宇宙配備装備が既知の脅威対象全般にどこまで対応でき、どれだけ迅速に将来の脅威に適応できるか、一方で宇宙から各軍や同盟軍に支援を引き続き提供していく」としている。ここで消えたのが「機能有効性」による評価の概念でこれまでの衛星の運用や設計に用いられてきた。旧基準は「これから登場する脅威に対応しきれない」と公式説明は述べている。
高復元力の宇宙装備を作る根本的な理由のひとつに衛星地上局でこれまでより多くの衛星を自動管制できるようになったことが挙げられよう。管制員をデータ遠隔測定、追尾、通信の仕事から解放し人員削減が可能となる。
地上局の機能強化と並び、宇宙軍団はシステムを冗長に保有し、代替システムもあり、アメリカの全力を経済、外交、軍事で行使し、敵勢力に対してこちら側衛星を攻撃する代償は高くつくと理解させようとしている。
SEVの機微部分は宇宙対抗装備、攻撃兵器の開発配備に関する予算だ。これにヒッチンスが憂慮している。
「米国がここまでの能力を必死に開発すれば、新たな基準となってしまい、TCBMがすでに揺らいでいることもあり、健全とは言えません」という。ヒッチンスが言及しているTCBMとは透明性信頼性醸成手順 Transparency and Confidence-Building Measures のことだ。
なぜか。「三大宇宙利用国は危機エスカレーションにつながりかねない要素を理解しておらず危機が紛争に変わることもあり得ます」という。「強い姿勢を見せ、邪魔をする、強硬な態度はリスクを上げるだけです」
「各国には理解を深める時間がまだ残されており、武装化を性急に進める必要はないのでは」と主張する。
ドリアン大佐は抑止力の重要性を認めつつ宇宙対抗攻撃兵器の開発、配備の予算は極秘情報だとするが、2017年度予算案では宇宙対抗手段で支出予定が三倍に増えているのは周知の事実だ。■


2016年6月25日土曜日

★A400Mの対米輸出を狙うエアバス、だが技術問題解決の遅れ発生中


エアバスがA400Mの米空軍売り込みを図っている模様ですが、本当に採用される可能性があると考えているのでしょうか。事業が大赤字のため輸出に活路を見出そうというのですが、どこまで真剣なのでしょうか。

Airbus Looks To the US in Search of A400M Buyers

Pierre Tran, Defense News1:26 p.m. EDT June 23, 2016
MUNICH, Germany – エアバス・ディフェンスアンドスペース(エアバスDS)はA400Mアトラスの輸出先としてアメリカが有望と見ており、技術問題に直面しているが同機を西側最大の軍用機市場に売り込む。
  1. 「米国を狙いますがまだ実現していません」と同社の軍用機部門トップ、フェルナンド・アロンソが6月20日報道陣に語っている。同社はプロペラギアボックスtp一部機体の胴体中央部で見つかった亀裂問題で修理を急いでいる。
  2. エアバスDSは今後30年で最低200機のA400M輸出を目指し、米国が最大の需要国とみなす。同社としては財務大損失を輸出で回避したいところだ。
  3. 空中給油機案件でボーイングに敗退した教訓から、A400Mでは米政界、軍部の上層部に働きかける。
  4. そのためアトラスをワシントンまで飛ばし空軍に見せる予定で、米国の複雑な調達手続きを乗り切りたいとしている。
  5. A400Mは米国製部品も採用しており、米国販売が成約すれば米国製部品比率も上げるとしている。未発表だが、同社がA320旅客機を生産するアラバマ州モビール工場で組み立てるのではないか。
  6. 米国のエアバス関係者は営業でデジタル装備と接続性を売り物にするという。だが技術問題解決の遅れが輸出の脚を引っ張っている。
  7. 「輸出販促活動の方が難しいですが、あえてこの話題を口にするのは問題の解決策に光が見えてきたからです」とアロンソも言う。「傑作機になると見ており、当社は自信を持っています」
  8. 問題とはエンジンにつけたプロペラギアボックスの改修とともに素材をアルミ合金から既存材料に戻し機体中央部の亀裂発生を防ぐことだ。
  1. このうちギアボックスについてはアヴィオ製プロペラギアボックスを緊急交換したテスト機が6月24日までに100時間飛行する。
  2. 「亀裂問題は安全とは関係ありません。定期検査で安全は保障さています」(アロンソ)
  3. 緊急対策が付いたギアボックスは600時間ごとに検査される。現状は検査間隔は20時間にすぎない。
  4. 長期対策として新設計のギアボックスがジェネラルエレクトリックにより製造され、同社のイタリア子会社アヴィオへ来年までに届く見込みだ。
  5. エアバスDSの親会社エアバスグループからは5月10日に補修コストが「相当」の規模になるとの見込みが示されている。エアバスにはこれまで各種のトラブルで50億ユーロ(57億ドル)の追加出費となっている。
  6. エアバスDSはまもなく改訂版の納入日程表を公表するとし、ギアボックス改修ならびに一部「戦術」性能の追加を盛り込む。
  7. この戦術性能向上型を最初に受領したのはフランスで改修の中にはコックピット乗員の防御性向上がある。
  8. またフランスの航空宇宙研究機構Oneraがフランスが重要視するヘリコプター向け空中給油能力の研究開発中だ。
  9. 長さ120フィートの小口径燃料ホースの飛行試験を今年末までに行う。80から90フィートが標準だ。延長でヘリコプターから燃料補給中に給油機尾部が目視しやすくなり、A400Mが搭載する強力なユーロプロップインターナショナルTP-400ターボプロップエンジン4基の生み出す乱気流から安全となる。
  10. フランスはC-130Jを4機一月に発注しており、うち二機は空中給油型KC-130J仕様だ。フランス陸軍と特殊作戦部隊から能力ギャップの早期解消を求められていた。
  11. 落下傘部隊116名を胴体の両側にドアを設け58名ずつ落下させる改修もあり今年末には116名運用が実現する。両側から同時に落下させることも可能となる。
  12. エアバスは米国商戦で空中給油機の二の舞をするつもりはないようだが米空軍には給油機を二機種運用する意向はない、と同社営業トップのジャン・ピエール・タラモ二は語っている。
  13. ヴィエトナム代表団がエアバスDSを訪問し、C-295軽輸送機に「真剣な関心を」示したとタラモ二は述べた。同社はヴィエトナムの輸送機需要の潜在性は高く「極めて有望な輸出先」という。■


2016年6月24日金曜日

★★海上自衛隊がAW101掃海ヘリを12機追加発注か



 Japan eyeing fresh order of AW101 helicopters

22 JUNE, 2016
BY: DOMINIC PERRY
LONDON


Asset ImageLeonardo Helicopters
レオナルドヘリコプター(旧アグスタウェストランド)が海上自衛隊とアグスタウェストランドAW101の追加調達を交渉中だ。
  1. 日本は発注済み11機のうち7機をMCH-101の名称で掃海任務に投入している。また輸送型CH-101を三機発注し二機が稼働中だ。
  2. 重量15.6トンでターボメカRTM322エンジンを三基搭載する同機は日本では川崎重工業が現地生産している。
  3. 6月17日の報道発表でレオナルドの執行副社長で企業戦略、市場開拓、業務推進担当のジオヴァンニ・ソコダトは「成約一歩前まで」にきていると日本との商談について述べた。
  4. またステファノ・ボルトリ営業販売担当副社長は「追加購入は十数機規模になる」と述べている。
  5. 日本向けとは別にAW101は英国ヨーヴィルでイタリアとノルウェー向けに組み立てられている。二国の受注残はそれぞれ8機と14機だ。
  6. ボルトリによればその他国から受注に成功すれば生産継続につながる。
  7. ヨーヴィルにはもう一つの軍用ヘリAW159もあり、営業活動が待ったなしになっている。
  8. 同機は英軍ではワイルドキャットと呼ばれ、陸軍航空隊と英海軍が発注した60機の納入が2016年中に終わると受注残はわずか6機になる。韓国海軍の4機とフィリピン向け2機だ。
  9. ボルトリは受注と生産量の乖離は商談中の案件があるので警戒していないと一蹴。商談はアジアとヨーロッパにあるとし、ドイツがLunx 88の更新発注しそうだと指摘。■

海兵隊の老兵EA-6Bはイラク、シリアでISR任務にも投入されている


The U.S. Marines’ Jamming Jets Are Spying on Islamic State

Old EA-6Bs get a new role

by JOSEPH TREVITHICK
イラク上空を飛ぶプラウラーにライトニングポッドがついている。 U.S. Air Force photos.

EA-6Bブラウラー電子戦機が米海軍、海兵隊で供用開始したのは1971年で強力な搭載ジャマーを使った敵レーダーや通信の妨害が主任務だった。

  1. 海兵隊はじめ各軍で機材不足が深刻な中、わずかになってきたプラウラーも穴埋めで使われ、イラク上空でスパイ活動に投入されている。
  2. 2016年5月にISISに対抗するペンタゴンの特別部隊がFacebookに掲載した写真にこれまでと異なる機体各種が写っていた。その中に海兵隊第四戦術電子戦飛行隊所属のプラウラーがあり、通常のジャミング装備ではなく目標捕捉ポッドを搭載していた。
  3. 2015年1月時点で海兵隊はWar Is Boringにプラウラーがイスラム国戦を支援中と発言したが具体的には何も教えてくれなかった。各機は海兵隊が主に使用しているクウェートのアーメド・アル・ジャバー基地を本拠地にしている様子でトルコのインチリック空軍基地にもEA-6Bが増派されている。
  4. 「プラウラーは連合軍各機や地上部隊の防護の傘となりダーイシュの通信を妨害してくれる」と米空軍のオマー・ヴィラレアル少佐(空軍中東メディアオペレーション主任)がWar Is Boring にメールで語った。少佐はイスラム国の別称を使っている。
  5. ありがたいことにイラク国内のテロリスト集団には長距離レーダー誘導による地対空ミサイルの装備はなくプラウラーは妨害を加える必要がない。だがイスラム国のプロパガンダは高度に組織化され技術も高く、通信ネットワーク、ラジオ放送他を沈黙させる機会は豊富にある。
イラク上空を飛ぶプラウラーにライトニングポッドがついている。 U.S. Air Force photos.
  1. 「EA-6BはNTISRポッドを搭載できます」と少佐は述べ、「非通常型情報収集監視偵察non-traditional intelligence, surveillance and reconnaissance」任務について言及している。「ただし保安上の理由から同装備をどう使っているか詳細はお話しできません」
  2. ノースロップグラマンが製造したライトニングポッド Litening pod はスマート爆弾やミサイルの照準用だが、偵察用途にも使えると同社は売り込んでいる。高解像度赤外線カメラとレーザー画像センサーを搭載し、空中からのスパイ活動に最適だという。
  3. 海兵隊は2007年にプラウラーに同ポッド搭載の改修をしており、とくに監視偵察用途を狙った。海兵隊航空部隊はこの機体をイラクに持ち込んでいる。
  4. この追加装備でプラウラーは道路わきに爆発物を埋める戦闘員を追尾し、携帯電話からの爆破信号を電子妨害できる。また乗員は新しい目標を発見すれば空爆を要請したり、地上部隊へ警告できる。
  5. EA-6Bは増槽をつければスパイ任務をさらに長時間延長することが可能で2,000マイルの飛行が可能となる。
  6. クウェートの基地からイスラム国の拠点地モスルまで往復1,200マイルで、イラク政府軍が奪回を急ぐファルージャまでは400マイル短くなる。
トルコのインチリック航空基地に着陸しようとするEA-6B、 2016年4月撮影. U.S. Marine Corps photo
  1. ペンタゴンはプラウラーの話題では口を閉じているが、米海軍安全本部は同機がイラク上空で情報収集活動についていると認めており、おそらく2014年に投入されていたのだろう。その理由としてダグラス・デヴオノ海軍大尉は同本部発行のApproach誌上で2015年3-4月号で乗機EA-6Bの空調が飛行中に故障したと伝えている。
  2. 「イラク上空の長時間飛行中に発生した」とあり「NTISRミッションの最中だった」と述べている。
  3. 記事では当該機の所属は明示していないがAP通信が同大尉が家族と映る写真を2014年11月に配信しており、キャプションでは空母USSジョージ・H・W・ブッシュ航空隊所属としている。
  4. ブッシュは9か月に及ぶ海上任務からヴァージニアの母港に戻ったばかりだった。艦載機はプラウラー5機も含め空爆他のミッションをイスラム国相手に実施していた。
  5. これが海軍のプラウラーに最後の実戦展開となった。空母の帰還から7か月して海軍は同機運用を終了している。
  6. 一方で海兵隊は同機を電子戦機材として少なくとも2019年まで使う予定で、イスラム国戦に投入していくようだ。
  7. 3月27日に空軍中将チャールズ・ブラウンが中東地区の最上級将官として報道陣に情報収集増強の必要性を話している。「もっと情報があれば民間人被害を最小限に食い止めつつ精密攻撃を継続できる」
  8. ペンタゴンはイラク、シリア両国で空中情報収取活動を広げる必要に迫られている。さらにスパイ機や無人機はアフガニスタンやイエメンの上空も飛行する必要がある。
  9. 空軍は監視偵察機を要注意地区のウクライナや南シナ海上空にも飛ばす必要があり、ブラウン中将にとってプラウラー隊がイラク上空にあることは心強いにちがいない。
  10. 海兵隊のF/A-18ホーネット戦闘爆撃機も臨時に情報収集ミッションをプラウラー同様に行えるが、ホーネットはすでに酷使気味である。予算削減の上ずっと遅れたままのF-35ステルス戦闘機に予算が流れるため、海兵隊航空部隊はホーネットを飛行させるだけで精一杯の観がある。
  11. 2016年4月20日には海兵隊で航空部門トップのジョン・デイヴィス中将がワシントンの議会で海兵隊保有のジェット機材で飛行可能な状態なのは32パーセント90機未満しかないと驚くべき発言をしている。
  12. 海兵隊もゆくゆくはEA-6Bの後継機種としてF-35を投入する。だが共用打撃戦闘機の実用化が数年先のままで最前線に大きなしわよせがきており、機齢45年のプラウラーは当面第一線でがんばるしかない。
  13. イラク、シリア、ペンタゴン、海兵隊で状況がこのままだと、海兵隊プラウラー乗員は通常ミッションに加え情報収集任務を覚悟しなければならない。