2021年9月9日木曜日

どちらが真実を語っているのか---9月8日USSベンフォールドによるFONOPをめぐる米中両国の主張の違い.判断は読者にお任せします。

 

事実はひとつでも価値観のちがい、主義主張の違いから報道内容が大きく異なることがあります。このたび航行の自由作戦を展開した米駆逐艦について対照的な報道記事が出ましたのでご紹介します。



2021年9月8日USSベンフォールド(DDG-65) が南シナ海で航行の自由作戦を実施した。 US Navy Photo

 

まず、USNI Newsはこう伝えています。

 

 

海軍は航行の自由作戦(FONOP)を実施した米艦艇を南シナ海から追い出したとの中国の主張を否定した。

 

第七艦隊はUSSベンフォールド(DDG-65)がスプラトリー諸島付近を9月8日航行したと発表。人民解放軍(PLA)はFONOPを非難し、米艦を追尾したのち排除したと国営メディアCGTNが伝えている。

 

PLA南方戦域司令部報道官Tian Junilは「高度警戒態勢を維持している」とCGTNが伝えている。

 

米海軍は中国の発表内容を否定し、FONOPを国際法の枠内で実施したと主張している。

 

「PRCが今回のミッションについて発表した内容は虚偽だ。USSベンフォールドはFONOPを国際法に準拠して実施した。この実施は航行の自由と海域の合法的な活用を進めるに対するわが国の姿勢を反映したものだ。米国は今後も飛行、航行、運用を国際法の許す範囲で継続する。USSベンフォールドはその模範を示した。PRCの主張内容のいかんにかかわらずわが方はこのまま進む」(第七艦隊発表)

 

「PLA発表はPRCによる米海上活動の合法性を曲解しながら、南シナ海域の東南アジア各国に波紋を拡げる過剰かつ根拠のない領有主張の最新例に過ぎない。米国が国際法に則り、自由で開かれたインド太平洋の展望を堅持するのと対照的なのがPRCの行動だ。大小を問わずあらゆる国家の主権を尊重すべきであり、力の脅しに屈せず、経済成長を各国合意の国際ルールや規範の元で追及することが可能としなければならない」

.

ベンフォールドは7月にもパラセル諸島付近でFONOPを実施し、この際も中国は同艦を南シナ海で追尾し追いだしたと発表しており、やはり米海軍はこの主張を一蹴していた。■

 

Destroyer Performs FONOP, US Navy Disputes Chinese Claim That It Ousted Warship - USNI News

By: Mallory Shelbourne

September 8, 2021 12:32 PM

 

では、おなじみ環球時報英語版の記事はこれをどう報じているかを見てみましょう

 

民解放軍南方戦域司令部は9月8日高度警戒態勢に入り中国の主権、安全を守り、南シナ海の安全安定を維持すると発表しt。これは米駆逐艦が中国領海に侵入したのに対し警告を与えたことを受けてのこと。数日前も米空母が同地域で挑発的な展開を示していた。

 

9月8日、米誘導ミサイル駆逐艦USSベンフォールドが南シナ海メイジ礁隣接部を中国の許可なく通航したため、PLA南方戦域司令部は同艦の追尾、監視を展開し、警告を与えたのち同水域から排除したと同司令部は発表。

 

報道官空軍上級大佐Tian Junliは米側の行動は中国主権の侵害と指摘し、米国が目指す海洋覇権と南シナ海軍事化の動きを示す証拠だとした。

 

「米国こそリスクを作り出している側との証拠が次々に出ており、域内の安全安定を損なっているのは米国だ」(Tian大佐)

 

同報道官発表の声明文では中国は島しょ部及び近隣水域に主権を有し、PLA南方戦域司令部は高度警戒態勢にあると述べている。

 

北京のシンクタンク、南シナ海戦略状況調査事業 (SCSPI)によれば空母USSカール・ビンソンがバシー海峡から南シナ海に9月6日に移動しており、

米空母の南シナ海への移動は今年に入り六回目だとSCSPIは述べている。

 

中国在住の軍事専門家Fu Qianshaoは米駆逐艦が中国領海を通過航行したこと、米空母が南シナ海入りしたことは中国をにらんだ挑発行為であり、日本近海に展開する英空母HMSクイーン・エリザベスと連携しているとGlobal Timesに指摘。

 

USSカール・ビンソンには米海軍初のF-35C戦闘機とCMV-22Bティルトローターで編成の航空団が搭載されており、海外への展開はこれが初と米海軍協会が伝えている。

 

そのUSSカール・ビンソンが南シナ海へ直行しているのは中国封じ込めが目的だが、中国には対ステルスレーダーがあり、F-35Cの探知は可能とFuは指摘。またCMV-22Bに島しょ部へ着陸できる性能があるが、中国には対抗策がるとも述べた。

 

こうした挑発行為へ中国は余裕を持って対応できるとFuは述べる。「第二列島線内部でPLAは負けない」■

 

PLA on alert amid US' provocative destroyer, carrier activities in South China Sea

 

By Leng Shumei and Liu Xuanzun

Published: Sep 08, 2021 07:59 PM

   


2021年9月8日水曜日

ファイブアイズはナインアイズへ。日本、インド、ドイツ、南朝鮮の加盟へ。

 



「ファイブアイズ」サミットがカリフォーニアで2019年に開かれた(Photo: Rights reserved).


「ファイブアイズ」通信傍受追尾集団を率いる米国はオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国とともに新規加盟国を加えたいとする。


1941年の大西洋憲章調印後に英米両国は枢軸国の通信傍受の仕組みづくりに動いた。1946年のUKUSA合意に発展し、1948年にカナダを加え、その後オーストラリア、ニュージーランドが1956年に加入し、「ファイブアイズ」(FVEY)が生まれた。


その後、第二陣として発足五か国と同等ではないが、デンマーク、フランス、ノルウェー、オランダ加わり、さらにその後ドイツ、ベルギー、スペイン、イタリア、スウェーデンも加わった。今回は第四次加盟国として南朝鮮、イスラエル、日本、シンガポールが加わる。


下院軍事委員会はドイツ、南朝鮮、インド、日本の地位を高めるべきとの構想を練っている。


ファイブアイズの全貌は2013年にエドワード・スノーデンがすっぱ抜くまで誰も知らなかった。この「内部告発」によりファイブアイズは外国勢力のみならず加盟国国民も監視対象にしていることが判明した。スノーデンは現在ロシアに亡命中だが、以下の監視事業五種類を暴露した。

  • プリズムは主要インターネットプロバイダー各社上のインターネット通信を不法に監視するもの

  • テンポラは潜水艦ケーブルを介しての通信傍受

  • マスキュラーは国際間のデータベースのやり取りを傍受する

  • ステイトルーム(ウィーン条約に違反し大使館、領事館の現地通信を傍受する)

  •  Xキースコアは世界規模のデータ処理


ファイブアイズは国家が運用するというよりむしろ国家の域を超える存在だ。各国の憲法や基本法を違反することもある。加盟国の元首や政府が集まった姿よりも強力を誇る。「世界で最も監視されてるのはファイブアイズ」国の市民で、中国やロシア国民よりもその監視の強さは大きい。■


"Five Eyes" about to become "Nine Eyes"

VOLTAIRE NETWORK | 6 SEPTEMBER 2021


2021年9月7日火曜日

フィリピン上空を通過した謎の機体の正体を推測する。RQ-180か。そもそも同機の姿は今のところ不明なのだが....

 Mystery flying wing over the Philippines RQ-180

FUGNIT 

ィリピンは南シナ海、フィリピン海に囲まれ、ともに中国、米国の軍事活動が活発になっている場所だ。爆撃機から無人機まで各種装備が上空を飛ぶのが普通になっているが、9月2日現地時間午前6時15分ころ風景写真家マイケル・フグニットが異様な姿をレンズに捉えた。全翼機のようでダイヤモンド形の機体で長い主翼、双発のようで排気はひとつにまとめてあり、機体に膨らみがついている。

 

フグニットは日の出を捉えるつもりでサナンマグダレーニャへ出かけたものの、上空を通過する航空機に気づいたので撮影したとThe War Zoneに語った。その写真を見ると通常の民間機や軍用機と異なる機体が空を横切るのがわかる。

 

MICHAEL FUGNIT

マイケルの写真がこれ。本人は"Fujifilmxt2 +50-200mm"で撮影し、早朝の陽光のため画質が粗くなったと説明。

 

現時点では写真が本物である裏付けが取れていないことを明記しておく。フォトショップで点検したが何も不審な点はなかった。本人が写真を偽造したと信じる理由もないが、写真データは操作可能であることは確かだ。今後、別のツールを使い、さらに専門家の意見も聞き、真贋を確かめる。

 

一見すると写真の機体はRQ-180センティネルと通常呼ばれる機体に似ているようだ。高高度長時間飛行可能のステルス無人機で、極めて限定的に供用され、極秘作戦との関連が言われる。同地上空を飛行していたのであれば説明がつく。なんといっても同機の運用想定に符合する場所であるからだが、同時に他地区への移動経路にもあたり、米本土への帰還途中だった可能性もある。

 

また日の出という時間帯で人口稠密地帯上空を横断し太平洋に抜けるフライトも説明がつく。同機はネヴァダのエリア51を本拠地に活動しているといわれ、超長距離ミッションに投入されているが、インド洋のディエゴガルシア島も運用基地になっている。同地の特別施設はB-2スピリットステルス爆撃機の支援も可能で、RQ-180への対応も可能なはずだ。その他極秘機材の運用地としてグアムのアンダーセン空軍基地もあるが、同機運用を展開するのはあまりにも目立つ場所になる。

 

HANGAR B PRODUCTIONS

RQ-180の公開情報から作成した想像図。

 

今回とらえられた機体の姿は我々が理解している米ステルス機HALE(高高度長時間飛行)無人機RQ-180の形状に似ているが可能性は別にもある。中国には無人機開発案件が多数があり、なH-20ステルス爆撃機以外の無人機開発も進展中だ。RQ-180におおむね近い形のCH-7レインボーもある。またスターシャドーの開発も判明しており、機体形状は今回の画像のものと近い。中国の無人機では存在が判明しているものとしていないものがあり、今回の画像に符合するものもある。

 

今回の機体の飛行高度が不明のため、機体が戦略機材で中高度でも長時間飛行可能な性能だったのかも判明しない。とはいえ、中国製無人機の飛行が同地区で日常茶飯事になるのは数年先のことのはずで、今回のフライトが秘密のうちに実施されたテストだった可能性もある。偵察機材に領有権をめぐり対立する諸国の上空を飛行させ、重要情報を中国が入手するのはありうる事態だ。

 

機体がH-20ステルス爆撃機だった可能性は極めて低い。まず、同機が完成済みで飛行テストを開始しているとの情報はない。ではB-2スピリットが移動飛行した可能性はどうか。

 

写真ではB-2の特徴と異なる形状に見える。また撮影時点の無線交信やフライト追跡データにはB-2が同地上空を飛んだ痕跡はない。RQ-170という別の可能性もある。同機が海上監視用に改良されていることが判明しており、アジアに投入されているのも事実だが、主翼形状が異なる。ただし、可能性としては残しておく。

 

ということだと、推論にふたつの問題がある。まず、米英インド日本オーストラリアの各国がフィリピン海で最大規模の海軍演習を展開した。これは中国にとって大きな関心事項のはずだ。演習は8月末に閉幕となったが、同機が飛行した時点で艦艇がまだ残っていた。逆も真であり、中国艦艇も同地区で活動を展開しており、米国が大きな関心を示す対象であるのも確かだ。

 

南シナ海、フィリピン海はともに世界中で最も頻繁に監視を受けており、米中のみならずその他の国の偵察機多数が毎日飛び回っている。

 

次にこの仮説に関連するか関連しないかわからないが次の事実がある。フィリピン現地報道機関には同日に謎の機体に向け戦闘機スクランブルがあったとの記事が出ている。時間も写真撮影時とほぼ合致する。そのひとつInquirer.netの記事は以下の通りだ。

フィリピン空軍(PAF) は「スクランブル出撃」でFA-50軽戦闘機の二機を発進させ、「正体不明の航空機」に向かわせた。この機体はフィリピン領空に9月2日接近したもの。

PAF発表ではフィリピン防空指揮所が未確認機がパンガシナン州ボリナオ北西120カイリのフィリピン防空識別圏へ接近するのを探知した。

「未確認機は高度21千フィート、265ノットで北東に向かっていた」

「FA-50編隊は最大速力で未確認機へ向かうと、4分後に未確認機は北へ方向を変え、400ノットに加速しフィリピン領空から離れた。迎撃は9:45AMで終了した」とPAFは述べている。

空軍報道官メイナード・マリアノ中佐は同機の飛行意図は不明で無線交信への返答もなかったと記者団に語った。

 

ここで最大の相違点は時間だ。空軍の迎撃が終了したのは写真撮影時間から3.5時間後のことだ。ステルス機は写真撮影後に上空に滞空していたのか。ステルス偵察機はそもそもその機能を有する。高度もHALEにしては低すぎるが、戦術機にはあり得る話だ。またこういう種類の機体には高度の電子戦装備が搭載され自機防御を行い、実際の高度の確定は困難になることがある。

 

今回は基本的な背景情報を整理してから記事掲載をした。映像のさらなる解析や事実解明が進めば別途お伝えする。最後になるが、映像そのものが真実でない可能性もあるので、今回の記事はすべて速報であるとお断りしておく。■


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Mystery Flying Wing Aircraft Photographed Over The Philippines

The aircraft resembles the one seen in an image taken in California a year ago that is thought to be of the elusive RQ-180 stealth spy aircraft. 

BY TYLER ROGOWAY SEPTEMBER 4, 2021

2021年9月6日月曜日

NATOが加盟国に求める防衛費GDP2%目標を達成している国、していない国。日本の1%上限がいかに低いかがよくわかる。

 


年3月、NATOが国防支出に関する年次報告書を発表した。北大西洋条約機構では加盟29か国に最低でも国内総生産GDP2パーセント相当の国防支出を求めている。


大したことがない数字に見えるが、実現できている加盟国ではわずかで、NATO内部で論議を呼んでいる。


2020年のNATO全体の支出規模は1.028兆ドルで、うち米国が7,170億ドルと最大だった。2019年は1.001兆ドルでやはり米国が7,020億ドルと最大規模だった。


2019年から2020年にかけNATO加盟国はコロナウィルス流行にもかかわらず国防支出を実質3.9パーセント増加させている。


NATO事務局は加盟各国が提出する国防支出の現況と見通しの報告に加え、経済協力開発機構(OECD)、ヨーロッパ委員会の経済財政局による経済国勢情報からの報告を取りまとめている。


各国の国防支出は人件費、作戦維持費、組織維持費、主要装備費の四分類で成り立つ。


まず、次の5か国がGDP比で国防支出水準が多い上位国だ。

  • 米国 (3.73%)

  • ギリシア (2.68%)

  • エストニア (2.33%)

  • 英国 (2.32%)

  • ボーランド (2.31%)

それに対し、次の5か国が底辺に位置する。

  • 北マケドニア (1.27%)

  • スペイン (1.17%)

  • スロヴェニア (1.10%)

  • ベルギー (1.07%)

  • ルクセンブルグ (0.57%)


なお、フランスは第9位の2.04パーセント、ドイツは第11位の1.56パーセント、イタリアは1.39パーセントで21位だった。


ただしNATOではこうした数字では各国ごとに国防支出の定義が統一されていないため解釈に注意が必要としている。例として装備費があり、NATOでは新型装備の研究開発費も含めている。同様に人件費には年金費も含めている。


ブリンケン国務長官も同席した記者会見でNATO事務局長イェンス・ストルテンベルグからNATOはテロ、サイバー攻撃、中国の台頭、ロシアの不穏な動き等に常時対応を迫られている他、核兵器の拡散、気候変動もここに含まれると発言した。


「この数年、機構内部の議論でで加盟国に若干の相違があることがわかったが、あらためて機構を強力に維持する重要性が浮き彫りになった。


「状況に合わせていく必要性を訴えてきたが、軍事力の養成のみらずすべての問題へ対応が必要だ。そのため加盟国が団結し、中国の台頭ならびに強気で強硬なロシアに対応していく。これこそNATOの存在意義だ」


ストルテンベルグ事務局長は世論調査結果を引用し、各国国民のNATO観を説明した。NATO加盟を続けるべきかとの問いに加盟国全体の62パーセントが賛成しており、79パーセントは北米欧州間のつながりの強化に賛成である。


識者や政治家がNATOの意義、必要性へ疑問を呈することが多い。機構自体が時代遅れになっており、本来ソ連崩壊とともに解散すべきだったとの意見さえある。


1949年のNATO創設の理由に米国欧州をソ連侵攻から防衛することがあった。条約機構自体は当時のままではないものの、今も健在だ。脅威がなくなったわけではない。ロシアの再興、中国の台頭、テロ活動に終息の兆候がない。こうした脅威に対応すべく、機構は今後も変化し続け、加盟国は共通の目的の下に動く必要がある。29か国にとってこれは容易な命題ではない。■


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How much does each NATO nation spend on defense?

HOW MUCH DOES EACH NATO NATION SPEND ON DEFENSE?

Stavros Atlamazoglou | April 16, 2021


環球時報=CPCは日本政局の混乱をこう見ている。圧倒的な国力の差がない限り日本が屈服しないのでイライラしているようです。

さて、CCPの見解を伝える環球時報英語版からCCPの思考を読み解くという無謀なシリーズです。CCPにとって都合のよい候補、都合の悪い候補がいるはずで、おそらく後者の筆頭が高市さんであることはまちがいないはずです。今後マスメディアからのバッシングが強まりそうですが、その背後にCCPの情報戦も加担してくるはずなので日本側は注意と警戒が必要ですね。自民党総裁選は9月末なので環球時報から次の記事が出てくることも容易に想像できます。

An extra edition of a daily newspaper reporting on Japan's Prime Minister Yoshihide Suga deciding not to run for the Liberal Democratic Party (LDP) presidential election is distributed in Tokyo's Ginza district on Friday. Photo: AFP

菅義偉首相が再選に向かわないの号外が9月3日に東京都内で配布された。Friday. Photo: AFP

 ご注意 この記事は環球時報の社説=CCPの公式見解をそのままお伝えするものです。


義偉首相が与党自由民主党総裁選挙で立候補を断念し、首相の座を降りると金曜日突然発表し、政界に衝撃が走った。菅は安倍晋三の辞職で、首相の座につき、総選挙、自民党総裁選出を完了するはずだった。首相在職は1年2カ月となった。日本では首相が目まぐるしく変わる政治混乱の時代が再び始まるとの見方がひろがっている。

 

 

菅が自民党総裁再選を断念したのは本人が政治力低下を自覚したのが大きい。自民党内の各派閥が本人に再選支持の見込みが極めて低くなった。党人事に手を付けたものの見通しがつかなくなり、総選挙の勝利もおぼつかなくなってきた。そこで断念したというわけである。

 

菅の最大の失策はCOVID-19対策であった。日本国内のCOVID-19一日当たり発症例合計が9月1日に20,031件となり、日本はウイルスの恐怖を欧米より強く感じている。東京オリンピック開催中もこの不安が重苦しくのしかかっていた。

 

COVID-19流行は先が見えず、日本経済にも影響が出たままだ。菅の支持率は低迷し、金曜日の発表につながった。発表直後に日本の株式価格は大幅に上昇した。

 

岸田文雄元外相、高市早苗元総務相、河野太郎行革担当大臣、石破茂元防衛相が今のところ想定される総裁候補で、次の総理大臣の座をねらう。日本には多くの課題があるが、実利につながる動機付けや政治団結力がともに欠如しており、難局の打開が進まない。次期総理大臣は厳しい舵取りを迫られそうだ。日本が再び政治混迷の時代に入るとの予想は根拠のないわけではない。

 

ご注意 この記事は環球時報の社説=CCPの公式見解をそのままお伝えするものです。

 

菅政権での中日関係は今年に入り厳しいものとなり、2018年の「正常路線への復帰」から見れば一気に崖の下に落ちた感がある。自民党総裁がだれになっても、中日関係が大きくUターンするとは思えない。理由として日本国内の対中姿勢が大幅に非友好的になっていることがある。中国を封じ込めようとする米国がが日本に大きく影響しており、日本は国内外で中国姿勢を変える条件ができていない。

 

 

ただし、中日両国の国力比較は歴史的変化を示している。2008年北京オリンピック時点で日本のGDPは中国をうわまわっていたが、2020年の中国GDPは日本の三倍に拡大した。この差は20世紀末の中国本土と台湾島の経済格差に近い。具体的には中国国内の自動車販売台数は日本の4-5倍になっている。中国の高速鉄道路線合計は日本の新幹線の13.7倍だ。日本が中国に厳しい地政学的姿勢をとってきたが、静かに変化しつつある。

 

中日両国の心が接近するのは短中期的にはむずかしいようだ。日本は米国の側についており、原爆投下を受けた憎しみを忘れ、米国に占領された屈辱も今日まで封印してきた。中国が唐時代(AD 618-907年)並みの圧倒的国力の差を日本に示さない限り、日本は中国を尊敬の念で見ず、相互尊敬の気持ちも短期のうちに生まれないだろう。日本の対中姿勢は今後長期にわたりぎこちないままだろう。

 

とはいえ、日本が脅威を中国に与えるのは極めて困難だ。日本が米国の共犯者の役割を長くとっているのはそれがわかっているからだ。日本が新たな体制に代わるのを中国は出発点ととらえるべきだ。日本社会内の対中感を正確に把握し、日本の脅威を客観的に把握し、日本への対処方針を決めるべきだ。

 

中日間の経済貿易協力関係は大規模なもので両国関係の中で最も意味のある要素と理解すべきだ。次期総理大臣がだれになるにせよ、また日本が対中関係でより厳しい姿勢をとったとしても、両国間の経済のつながりは両国にとって利益を生んでおり、貿易面で影響は発生するとは思えない。また日本が中国へ対決姿勢を取る主導役になるのも考えにくい。こうしたことから中国には対日関係の取り扱いを冷静に進める余裕があるといえよう。

 

誰が次期総理大臣となろうと、日本が厳しい対中姿勢を継続しても、中国に課題対処する能力があることに変わりない。中国の国力は日本をうわん割るペースで成長し続ける。二国間関係の悪化で損害を強く受けるのは日本であることに間違いない。■


U-turn in bilateral ties unrealistic regardless of next Japanese PM – until China regains Tang Dynasty

By Global Times

https://www.globaltimes.cn/page/202109/1233287.shtml

Published: Sep 03, 2021 11:15 PM

 

2021年9月5日日曜日

米陸軍が実用化を目指す画期的な新型装備品5種類とは

 





争の形態が変化する中で米軍も装備品技術の革新を進めている。

 

米陸軍は各種新兵器を実用化してきたが、ハイテクのロシアや中国部隊との対決を想定せざるをえないため、さらなる新装備開発に取り組んでいる。

 

今後は冷戦期に生まれたおなじみの装備品が徐々に姿を消していく。エイブラムズ戦車やアパッチヘリコプターのように米軍の象徴のような装備だ。そのあとに新世代兵器がやってくる。

 

実現が有望視される装備品5種を眺めてみよう。

 

1. 次世代戦闘車両:

 

1980年代より米陸軍の装甲部隊の中心はM1エイブラムズ戦車、M2ブラッドレイ歩兵戦闘車だった。ともに性能向上を図り内容を近代化してきたが、このうちエイブラムズ最新型のM1A2はセンサー機能電子装備が1980年代製よりはるかに向上している。とはいえ40年前の設計で、もともとはフルダ渓谷でソ連戦車隊を阻止する構想で生まれた車両だ。戦闘員掃討作戦のような「小規模戦」がここ20年続き、装甲の厚さより歩兵部隊の機動性が重要視されるようになったが、再び米陸軍が「大規模戦闘」をロシア、中国相手に想定する今、改めて戦車へ関心が高まっている。

 

そこで陸軍の目指す次世代戦闘車両構想では21世紀の装甲車両部隊の創設を目指し、新型主力戦車、歩兵輸送戦闘車両、自走砲、さらにロボット戦車の構想がある。防衛産業企業ではすでにBAEのCV90歩兵輸送車両のように採用を狙う動きがある。だが次回採用となる車両にはここ40年の技術革新を反映し大きな変化が生まれるはずだ。アクティブ防御による対戦車ミサイルの阻止、戦術ネットワーク、さらに無人機も車両の一部になるかもしれない。もっとも未来的な形状ではDARPAのX-Vehicle Techologies事業を見てもらいたい。戦車の概念図はまるで砂漠走行バギーのようだ。

 

2. 機動性短距離防空装備(MSHORAD):

 

米空軍の防御の下、さらに対戦相手がずっとローテクのタリバン等であったため米陸軍の防空能y六は冷戦終結後に委縮した。だが無人機の普及やハイテクのロシア、中国の航空機ヘリコプターを意識し、米陸軍にとって空は安全な場所でなくなってきた。そこでつなぎ解決策としてスティンガー対空ミサイルをストライカー軽装甲車両に搭載する。さらに指向性エナジー兵器をストライカーに搭載する構想もある。実現すればミサイルよりも迅速に対応可能となり、電力がある限り弾薬切れも発生しない。

 

3. ロボット戦車: 

 

まるでSF小説の世界だが、米陸軍に有人操縦選択制戦闘車両があり、今後の発展が期待されている。ロボット試験車両はM113装甲兵員輸送車を遠隔操縦式にしたもので今後は運転手なしで前線に補給品を届ける車両となる。

 

4.  将来型垂直離着陸機:

 

冷戦時のM1戦車が姿を消すとアパッチ、ブラックホークの寮へリコプターも同様に退役する。ともに陸軍航空戦力の中心機材だ。将来型垂直離着陸機(FVL)は各種新型ヘリコプターの実現をめざし、攻撃偵察用も含む。

 

5.長距離火砲と極超音速ミサイル: 

 

空軍による潤沢な航空支援に慣れ切ってしまった陸軍の砲兵隊はロシアの後塵を拝するまでになってしまった。ロシアが新型りゅう弾砲を実用化しているが、米陸軍は大口径火砲のM109A6パラディン155mm自走りゅう弾砲が射程20マイルそこそこであるのに対し、一気に1000マイル射程の実現を目指す。長射程の新型砲弾を開発中で、実現すれば攻撃対象地帯を一気に拡げ、敵部隊の活動を妨害できるようになる。■

 

Five Pieces of Future US Military Technology

by Michael Peck

August 31, 2021  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: Defense TechnologyChinaMilitaryTechnologyU.S. Army

 

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: DARPA


英米間で実証されたF-35B搭載艦・機材の相互活用作戦構想。将来は日米でも実施になるのか。その前に日本に必要となる条件がある。

 

今回実証された作戦構想が日米間でも実行に移される前に集団安全保障をめぐる解釈、さらに自衛隊が軍組織になっていない現状(アフガニスタン邦人退避でもこのための制約がありました)がもう放置できなくなっている事実を直視すべきでしょう。改憲という政治課題に真正面から取り組むと公言する自民党(リベラルデモクラッツという英語名は早く改正してもらいたいですね)の総裁候補はだれなのか、しっかり見ておきましょう。


F-35B Queen Elizabeth

米海兵隊のF-35BがHMSクイーン・エリザベスから発艦した。 August 20, 2021. 米軍機材が他国艦艇からの出撃する相互運用は今回が初めてとなり、両国の協力関係の強化ぶりを印象付けた。1st Lt. Zachary Bodner

 

空母HMSクイーン・エリザベスとUSSアメリカが搭載機材F-35Bを相互運用し、大型空母を使わなくても大きな戦力を実現することを実証した。

 

滑走路を必要としないF-35Bは共同作戦運用でこれまでにない戦術面の優位性を実現する。

 

英米両軍がF-35を運用し、標的データの交換以外に大きな共同運用能力を実現した。

 

なかでも母艦複数による多国間作戦での攻撃効果が増える。空中給油なしで攻撃有効距離を拡大できることに大きな意味がある。

 

例えば英空母を遠方配備したまま、強襲揚陸部隊が接近し、あるいは敵部隊に挑む。F-35はどちらかの艦から発進し別の艦で給油を受け、兵装を再装填して次の出撃に向かう。

 

F-35航空戦力の倍増効果

 

これにより強襲揚陸攻撃を敵沿岸に接近したまま実行でき、空には第五世代F-35を当初の二倍の戦力で展開しながら上陸部隊は水上を移動し上陸作戦を行える。

 

運用機数が増えればF-35の作戦実施範囲が広がり、揚陸作戦は全く違う様相を呈する。具体的には、現行の海軍戦略である分散型運用の実現につながる。無人装備や長距離探知センサー、ネットワーク機能により敵砲火にさらされる脆弱性を減らそうというものだ。

 

多国籍部隊のF-35を多数、かつ共同運用すれば航空優勢を揚陸部隊上空に確立し、作戦の成功確率が高くなる。

 

F-35を介して通信機能強化

 

通信でも優位となる。NATOでは加盟国間の情報共有に向け今もだ多大な努力をしていることを考えるとこの効果は大きい。米英を中心としたF-35運用国が増えればデータ共有の保安性とともに量的拡大が実現する。

 

F-35には共通データリンクがあり、これを多機能高性能データリンク(MADL)と呼び、全F-35機材間にリアルタイムかつシームレスで接続できる。これにより艦隊規模での作戦協調、標的情報の共有、あ新しい情報などが戦闘中に実現する。■

 

 

F-35Bs Massively Scale Amphibious Attack Potency After U.S. & British Sea Exchange

UPDATED:AUG 30, 2021ORIGINAL:AUG 30, 2021

F-35Bs Massively Scale Amphibious Attack Potency: Successful U.S. & British Sea Exchange

 

-- Kris Osborn is the President of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master's Degree in Comparative Literature from Columbia University.