2017年2月9日木曜日

★2040年の世界:中国から首位を奪う国は日本だ



ちょっと歯切れの悪い論調でもあるのですが、フリードマンの前著では中国を100年後の大国としてはまったく想定しなかったことを思い出す必要があります。海洋大国としての日本の将来についてはもっと楽観的になって良いのではないでしょうか。そのためにも国内に残るしがらみをひとつひとつ検討して本当に維持する価値があるか見極める必要があります。保守とはなんでも昔通りに守ることにこだわることではないはずです。皆さんはどう思いますか。

Asia's superpower in 2040 won't be China

  1. 日本が2040年までに東アジアの主導権を握る大国に上り詰める。これがGeopolitical Futures(GPF)による物議をかもす予測の一部だ。
  2. GPFが中国に消極的なことはよく知られている。またこの見方に同意しない向きがあるだろうが、当社の理由付けには納得してもらえると思う。中国はこれから深刻な問題に直面し、中国共産党の支配力が衰える。
  3. 日本が超大国になる可能性は一見少ない。人口は中国の十分の一にすぎず、高齢化しつつ減少中だ。日本の負債総額は対国内総生産比で229%にのぼる。
  4. そんな日本があと25年もすると東アジア最大国になるとはどういうことだろうか。
  5. 出発点は日中両国の経済構造の違いだ。
  6. 分析を進めると両国の強み弱みがはっきりとし、当社の予測が一層正確に見えてくる。

中国経済を地域別に見ると
  1. 下の地図では中国は4地帯に分け、それぞれのGDP構成比を示した。データは中国国家統計局のものである。中国はこの区分で各地方の経済動向を把握する。(数字が政治的思惑で操作されている可能性が高いことを忘れてはならない)
ChinaMauldin Economics
  1. この地図から中国経済のいびつさと弱点が見える。
  2. 東部の沿海地方が中国経済の半分以上に相当する。中部、西部はそれぞれ2割ほどの国富を形成する。ただもっと詳しく見る必要がある。
  3. 西部は国土の半分以上だが経済規模は東部の半分に満たない。また中部と同程度の経済産出成果を示すが、中部は西部の半分に満たない面積だ。
  4. 東北部は例外のようだ。GDPではわずか8%だが、経済は重工業中心で中国が内需拡大で輸出依存を減らすと大きな影響を受ける。この意味は何か。
中国最大の弱みは国内貧困だ
  1. 最大の経済上の弱みであり、最大の敵となりうるのが貧困だ。地域間の経済格差は世界の多くの国に見られるが、中国ほど大きい例はない。
  2. この問題の根本に国土規模がある。
  3. 1981年ではおよそ10億人が一日3.1米ドル(2011年の購買力平価換算)以下で暮らしていた。世界銀行の最新データでは2010年に3.6億人に低下している。これ自体は大きな成果だが問題はそれで終わりではない。
  4. 中国の経済成長はこの30年間通じ目を見張る規模だったが、ここに来て成長は鈍化し、その中で3.6億人はまだ絶望的な貧困生活を余儀なくされている。
  5. つまり中国の経済成長を享受したのは沿海部で、その他国土とは別だと地図は示す。

諸刃の剣

  1. 中国の人口は世界最大で国土面積は世界四番目だ。これが国力の源泉だが両刃の剣にもなる。
  2. 大規模な軍の整備には有利だ。広大な国土と厳しい地理条件で敵国の侵入を阻みながら大量の人員を動員できるのは他国にない特徴だ。
  3. 他方、国内治安維持に投入する労力が人民解放軍整備を上回っている。漢族が少数の地方多数での支配を維持する必要が生まれているが、地方には自治を求める声が根強い。また国境警備に多大な負担をしている。
  4. 中国は大陸国家としては強力だが、世界規模の海軍国になったことはない。つねに内乱と外部勢力からの支配を恐れてきた。では日本はどうなのか。

日本国内の富の分布状況

  1. 下図を見てもらいたい。日本でも富の集中が一部地域に見られる。中国と同様に日本でもデータが地域別にまとめられる。
JapanMauldin Economics
  1. 本州5地区が日本経済の87%を構成する。(関東地区が43%に相当する)地図からGDPで18%を生み出す東京都の突出度がわかる。
  2. さらに2012年OECDデータから東京広域圏のGDPは都市として世界最大の1.48兆ドルであることがわかる。(第二位はソウルだったが半分未満の規模)つまり東京が日本のGDP全体の三分の一を占めることになる。

日本の優位性

  1. 中国と違うのは日本の富が格差が少ないまま全国に広く分布していることだ。端的に言えば13億の中国に対して1.273億の日本の違いだ。
  2. だが単純に規模の差だけではない。中国で不利なのは規模の大きさから生まれた多様性だ。中国のような内陸部沿海部の格差問題は日本には存在しない。
  3. 中国では沿海部各省を内陸部と比較すると大きな差が歴然だ。東京が全国の一人あたり所得3.1百万円より突出しているとは言え生活費が高いことも原因だ。たしかに日本国内にも豊かさの格差はあるものの、中国のような大きな格差はない。

日本の課題

  1. 日本の弱点は食料及び原材料の輸入依存度だ。食物自給率はカロリー換算で2015年は39%しかなかった。製品価格では66%だった。

  2. エネルギーでも輸入依存は同じで、第2次大戦への参戦理由の一つが原油輸送路の確保にあったのは明らかだ。
  3. 現在の日本もエネルギー輸入依存では変わらない。2011年の福島原発事故の前でもエネルギー供給の輸入依存度は80%近かった。2012年以降は91%近くまで上がっている。(米エネルギー情報局まとめ)
  4. 日本の大問題は人口構成だと主張する向きがある。たしかに高齢化は進行中だが、中国でも同様である。ヨーロッパ主要国も直面する問題は共通している。だが日本には選択肢がある。
  5. 日本は人工知能分野への支出が世界最大級である。自動化、ロボット工学でも同様で生産性の維持を図っている。また日本社会に同質性志向があり、外国人には比較的冷たい傾向があるが、深刻な状況から移民政策で大きな転換を迫られる事態が来るかもしれない。
  6. 広範なアジア太平洋地域から日本は必要な労働力を確保する可能性がある。

そうなると日中を比較すると

  1. 日本は国土面積では世界第62位で、人口では11位だが、だからといって日本が地域大国の座につけないわけではない。
  2. 中国と違い、日本に国境を接する敵国はない。中国と違い、日本政府には全国規模で統治効果を心配する必要はない。
  3. また地域間で格差も心配する必要がない。日本には経済の高成長から低成長を平穏に変化させた実績もある。
  4. 日本が持つ弱点から強力な海軍力の整備が実現し、海洋通商路の保護が目標になった。また通商路の保護に当たる米国と緊密な同盟関係を整備してきた。
  5. 端的に言えば、中国はきわめて強い国であるのは事実だ。本稿では中国の経済問題が政治課題につながると示唆したつもりだ。
  6. いまのところ日本は精彩を欠いているが、その重要性は増えていく。日本に関する発言を当社が増やしていくのは日本がアジア太平洋で主導的な立場につくのと比例するはずである。■
Read the original article on Mauldin Economics. Copyright 2017.
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ヘッドラインニュース 2月9日(木)


2月9日のヘッドラインニュース:T2

注目記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがありますのでご了承ください

対ISIS戦にB-1再投入もためらわない 米空軍参謀総長
B-1Bランサーは2016年初頭に不動の決意作戦投入が終わり、米本国で整備中だが、現在はB-52が任務にあたっている。B-1の爆弾搭載量はB-52より5千ポンドも多いが、ゴールドフェイン大将は同機の運用は柔軟に考えていると述べた。B-52はモスル攻略戦で上空に長時間待機し、必要に応じ爆弾を投下するミッションにあたっている。

オスプレイを空中給油機に転用する米海兵隊
米海兵隊はV-22空中給油システム(VARS)の初期作戦能力獲得を2019年に設定しており、順調に開発が進捗している。F/A-18を使った実証試験ではティルトローター後方にに入っても飛行上問題はないことがわかっている。改装にあたるのはCobham Mission Systemsで海兵隊が運用するF-35B、F/A-18、AV-8B、CH-53への空中給油をめざす。


A400M共同運用を周辺国に提案するドイツ
ドイツがA400M13機の売却方針を変更し、チェコ、スイスへ機材の共同運用を提案していることが明らかになったと現地紙が報道。ドイツ国防省は言及を避けている。ドイツは同機を当初60機購入予定だったが、53機に削減し、さらにうち13機は売却することとしていた。


  レオナルドがレイセオン抜きでT-X競合に参入の構え
米空軍のT-X選定でイタリアのレオナルドは米側提携先レイセオンが抜けて去就が注目されていたがT-100提案を単独で進めると2月8日表明した。T-100の原型はM-346だが、同社は米国で生産し国内雇用に貢献すると現政権を意識している。

  台湾が超音速練習機を国産化

予算不足がここまでひどいとは:米海軍ホーネット多数が飛行不能状態に


海軍拡張を主張するトランプ政権も足元がこんな状態ではびっくりするでしょう。オバマ政権に非を求める代わりにビジネスライクな予算編成、執行体制を考えてもらいたいものです。米軍組織は予算確保のために惨状を訴えることが多いとは言え、今回は本当に深刻なようです。これは米国に挑戦しようとする国にとっては願ってもない機会になるでしょう。

Grounded: Nearly two-thirds of US Navy’s strike fighters can’t fly Congress’ inability to pass a budget is hurting the fleet, leaders say

By: Christopher P. Cavas, February 6, 2017 (Photo Credit: MC2 Brooks Patton/US Navy)


WASHINGTON — 米海軍のF/A-18ホーネット及びスーパーホーネット打撃戦闘機は先頭に立って敵を切り込む機材、空母打撃群の攻撃手段の中心だ。だが機体の三分の二近くが飛行不能状態にある。飛べないのは整備の理由もあるが補給処からの部品を待っているためだ。
  1. 海軍航空機材の半分以上が飛行できない。主な理由は補修整備の予算がないためだ。
  2. さらに艦艇の修繕費も不足している中、仕事は増えるばかりだ。大型修理保全活動が先送りされたり見送られている。これでは必要な場面で艦艇が威力を発揮できない。空母には三年にも渡る大規模整備が必要で、潜水艦も四年ほど作戦投入できなくなるのは普通だ。その中でボイシーは潜航証明が撮れず、造船所の作業日程があかないと作戦に投入できない。
  3. 海軍上層部はもっと予算がないと同じ状況が今年末までに少なくとも潜水艦五隻で発生すると述べている。
  4. 乗組員や家族の勤務先変更に伴う移転費用が確保できておらず、440百万ドルが足りないとする。また陸上施設の15パーセントが劣悪な状態で、修繕・差し替え・廃棄が必要だとする。
  5. このような暗い状況を上層部が述べているが、トランプ政権が海軍艦艇を現状の308隻から350隻に増強すると公言するのと対照的だ。とはいえ作戦部長ジョン・リチャードソン大将は355隻構想をねっており、指導的立場の議員連が関心を示している。海軍は高い目標のためなら予算がいくらでも降ってくると期待しているようだ。
  6. だが現状の予算状態は厳しく、オバマ政権が提唱し議会が認めた予算削減継続の影響をまともに受けているのに加え、議会も軍の要望に応える予算を実現できていない。予算は現場の要望がわかりながら削減されてきた。また海軍も建艦予算を確保するため艦船数を減らす代わりに保守整備や訓練予算を削ってきたため急に予算が増えても成果がすぐに出しにくい。
  7. 会計年度が始まる10月1日以前に議会が予算を成立出来ない状況がこれで9年間連続になっている。そのため暫定的に予算継続決議(CR)で前年度並の実行予算を手当している。ただしCRでは新規事業に予算計上ができない。該当事業が前年度にないためだ。CR措置でペンタゴンや産業界に混乱が発生することは皆知っているものの、先送りしたりしてコストが結果的に高くなっている。わかっているのに変えられない現状には議会内にもっと合理的な予算編成に変革すべきとの切迫感がないのが原因だろう。
  8. 現在の継続予算決議は4月28日まで有効であり、1977年以来最長のつなぎ予算措置である。今年が大統領交替の年であるのも背景にある。
  9. 見出しでは艦艇建造の増加が目立つが、予算管理法(強制削減措置)を議会がいつ撤廃するのか、果たして撤廃する意思があるのかが見えない。このままだと2021年まで予算は制約されたままだ。
  10. 新政権が予算編成工程に手を加えようとしている状態が浮上してきた。ジェイムズ・マティス国防長官による1月31日付覚書では三段階構想でペンタゴンに2017年度国防予算変更要求を提出させようとしている。要求はホワイトハウスの予算管理室に3月1日まで送付される。2018年度予算要求は完全な形で同室に5月1日までに送られる。
  11. 三段階目では新しいっ国防戦略構想とともに2019-2023年度国防事業案を作成し、「国防力整備見直し」により「今後の戦力整備の目標を明示」するとマティス長官は述べている。
  12. 各軍の副参謀総長クラスが2月7日に下院軍事委員会に於いてさらに翌日は上院軍事委員会で即応体制を陳述する。
  13. 各自はすぐに必要な予算を訴えるものと思われるが、長期的な視点に立った予算手当は二の次となるだろう。議会が2017年度予算を通過させてもすぐに使えるわけではないためだ。
  14. 「予算が入れば、まず現場に投入したい」と海軍の上位消息筋が2月2日に述べている。「艦艇補修整備、航空機補給処、予備部品補修部品であり、基地を整備し家族含む関係者が赴任できるようにしたい」
  15. 総計で相当の額になる。「予算がつけば4月に60億から80億ドルの執行ができる。契約が成立すれば直ちに効果が出る」(同上消息筋)
  16. 予算全体額が増えても海軍上層部に言わせれば緊急に必要なのは補修整備資金であり、新型艦の建造ではないという。2017年度の予算手当が付いていない事業リストが海軍から議会に1月はじめに送られており、保守整備費用が最重要だと強調すべくさらに内容を改訂中だ。
  17. 「優先するのは即応体制であることは明白で、航空機を飛行させ、艦艇潜水艦を送り出し、乗員を訓練し備えさせること」と海軍関係者は説明。「新規事業は考えてない」
  18. 海軍の航空運用がここまで切迫しているのは歴然たる事実だ。海軍によれば飛行不能な機材は全体の53パーセントおよそ1,700機とする。通常は三分の一から四分の一の機材は定期整備で使用から外されているものだ。だが53%と言うのは通常の二倍の規模だ。
  19. 打撃戦闘機の状況はもっと緊急度が高く影響も大きい。もともと艦隊の戦闘航空力の投射すで主役だからだ。F/A-18の62パーセントが飛行できず、27%は大規模整備中で、35%は整備あるいは部品を待っている状態だと海軍はまとめている。
  20. 訓練や飛行時間が削減されて海軍飛行要員は最小限の飛行資格維持時間の確保にも苦労している。要員のつなぎとめも問題になってきた。2013年当時は飛行士官の17パーセントが幹部任務につくのを拒否している。これが2016年には29パーセントに急増。
  21. 予算不足のため隊員は新任地に赴任するのにも苦労している。2016年中の引っ越し回数が15千件も減っているという。
  22. 予算継続決議により艦艇14隻の供用が2018年に先送りされ、うちわけは潜水艦1、巡洋艦1、駆逐艦6、揚陸ドック型艦2、揚陸輸送ドック艦1、掃海艇3だという。2016年度に調達できなかった案件の購入は先送り不可となる。CH-53Kヘリコプター、共用空対地ミサイル、長距離対艦ミサイル、沿海戦闘艦用の兵装モジュールだ。さらに2017年には前年度より調達規模を拡大する予定だった案件が実施できなくなっている。
  23. 2017年度と言ってもあと5ヶ月しか残っていない中で、予算が4月末に議会を通過したとしても、継続予算決議が一年にわたり適用される可能性がすでに話題に上がっている。だが海軍上層部はこの話題に渋い顔だ。「CRが長期になっても状況は好転しない」という。■

2017年2月8日水曜日

ヘッドラインニュース 2月8日(水)


2月8日のヘッドラインニュース:T2

注目記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがありますのでご了承ください

ノースロップの新工場はB-21のステルス塗装用施設の模様
ノースロップ・グラマンは米空軍から35.8百万ドルでパームデール施設内に新表面塗装工場の新設を認められた。B-21ステルス爆撃機の表面塗装用であるのは明らかだ。B-2もパームデールで生産されたが生産は終了しており塗装工場の新設の必要はないためだ。公表資料によれば新工場の完工は2019年12月となっており、B-21の最初の機体は2021年ごろに完成する予定となっているのに符号する。


マティス国防長官はなぜ韓国、日本を訪問先に選んだのか
マティス長官、ダンフォード統合参謀本部議長は揃ってロシアを最大の脅威とするものの、軍事的観点からは西太平洋地区が最重要だとの認識は明確だ。その場合脅威対象は中国である。

USSズムワルトの配備先は韓国か
韓国聯合通信が韓国国防部からとして米太平洋軍ハリス司令官から最新鋭艦ズムワルトを韓国に配備したいとの打診があったと伝えている。

A-10は2021年まで供用は確実(米空軍参謀総長)
A-10の退役は2021年以前には開始しないとゴールドフェィン大将が発言したことで同機の行方を巡る議論が一段落しそうだ。ただ大将はA-10を2021年過ぎたところで退役させCAS任務はF-35の他、F-16やB-1さらに米陸軍の高機動性ロケット砲兵部隊HIMARSに移行させる考えだ。

B-52エンジン換装案の採択近づく
米空軍はいよいよB-52のエンジン換装の方針を固めるようだ。エンジンメーカーへはすでに打診しているが、予算確保方法でも工夫するようだ。現行のプラットアンドホイットニーTF33エンジンが脱落する事故が最近発生したばかりだ。機体構造の変更を避けるためTF33と同程度の大きさのリージョナルジェット用エンジンの採用を検討しているようだ。(この記事は別途紹介します

2017年2月7日火曜日

★★★米海軍でF-14(の機能)が改めて必要とされる理由



そもそも一機種ですべてをこなすことに無理があるのであってこれまで機種の絞込をしてきた米海軍ですが今後再び高性能の専用機材複数を揃える方向にむかわないともかぎりません。21世紀の米軍部隊は海外基地も縮小するので空母打撃群に期待するところがふえるはずです。ソ連の米空母攻撃構想と中国のA2ADは違う気がするのですがどうでしょう。

The National Interest


Forget the F-35: Why America's Military Misses the F-14 Tomcat

February 6, 2017


空母搭載機に長距離攻撃能力が必要だとワシントンでよく議論に上るが、制空能力の向上が米海軍に必要なことは軽視されがちだ。
  1. 米海軍はグラマンF-14トムキャットが2006年に全機退役後に空対空専用機材は保有しない状態が続いている。だがトムキャットでさえ最後の数年間は地上攻撃任務に転用されていた。ソ連の脅威が消えたためだった。だが今や空母に新しい脅威が現れており、敵側も新型戦闘機を配備してきたことでボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットおよびロッキード・マーティンF-35C共用打撃戦闘機も安閑としていられなくなっており、軽視されてきた海軍の防空任務が特に西太平洋で再び注目を集めつつある。
  2. 「航空優勢確保用の戦闘機の新型が必要だ」とハドソン研究所は「槍先を鋭くする:空母、統合部隊、ハイエンド紛争」との表題の報告書を刊行した。著者はセス・クロプシー、ブライアン・マグラス、ティモシー・A・ワトソンといったNational Interestにおなじみの研究員だ。「統合運用部隊には空母搭載戦闘機の支援が必要であることを鑑みれば、この機能の有無は死活的だ」
  3. 報告書ではスーパーホーネット、F-35Cともに敵の新型第五世代機からの挑戦に対抗できないとし、ロシアのスホイT-50 PAK-FA、成都J-20を例示している。現行のSu-30SM、Su-35Sや中国のJ-11DやJ-15でもスーパーホーネットには相当の脅威となるのは米海軍、米空軍、米海兵隊の航空関係者が共有する認識だ。「F/A-18E/FおよびF-35Cではスーパークルーズで長距離高高度飛行可能な敵の大量のミサイル運用能力があるT-50やJ-20さらにその後継機に立ち向かうのに難がある」と報告書は指摘。「これら機材は米空母運用機材に対して有利に対抗でき、当方の貴重なAEW機、ASW機、給油機を狙い撃ちできる。F/A-18E/Fではすでに中国J-11に対する速度不足が明白でJ-11が発射するミサイルは米AIM-120ミサイルより射程が長く、運動性でも優勢だ」
  4. F-35Cでは加速性能が大変劣ることに加えJSF他機種よりステルス性も劣るため解決にならない。「F-35Cは攻撃機として最適化されており、中高度の飛行性能を重視しつつ、現状ではAIM-120ミサイル二発を機内に搭載するだけの制限を(ブロック3登場まで)受けたまま電子戦環境でも成約がある」とし、「中継ぎとして海軍と空軍はF-35Cのブロック5実用化を急ぎ、AIM-120ミサイル6発の機内搭載を実現すべきだ」
  5. F-35Cはもともと航空優勢確保用の設計ではない。1990年代中頃の海軍はJSFを攻撃特化の機体として6.5G負荷に耐えるるが空対空性能は限定付きとなるのは甘受したと退役海軍関係者が認めている。当時の海軍ではF-14を早期退役させてグラマンA-6イントルーダーを残す案を検討していた。空対空戦は過去の遺物と考えるのが冷戦後の常識といわれていた。当時は将来の戦争はソ連崩壊を受けて空対地が主になると見ていた。このため予算不足も相まって海軍は海軍用高性能戦術戦闘機(NATF)ならびにその後継A/F-X構想を進めなかったのだろう。
  6. 海軍の進めるF/A-XXが登場すれば航空優勢確保のギャップを埋められるかもしれない。同構想はF-14の退役後、NATFおよびA/F-X構想が死んでからそのままになっている。問題は海軍がF/A-XXを多用途のスーパーホーネットの後継機ととらえているものの、航空優勢確保は重視していないことだ。「このまま開発をすすめると戦闘機・攻撃機の兼用で戦闘機の機能が低くなる危険がある」と報告書は指摘。「そうなると統合部隊に空母運用型の第六世代航空優勢戦闘機の支援が得られなくなる」
  7. 現在海軍航空部門を率いるマイク・マナジール少将はかつてこう述べていた。「長距離パッシブ、アクティブセンサーアレイを搭載し、高巡航速度を維持し(加速は別)、機内に大型兵装庫を有し、各種ミサイルを発射しつつ、将来の技術開発の成果を取り入れる余裕を残し、HPM(高出力マイクロウェーブ)やレーザーの運用を想定する。こんな航空優勢確保用の機材なら外縁部航空戦に投入して敵の防空体制を打破しつつ遠距離で敵目標を補足できるはずだ」
  8. 外縁部航空戦とは海軍が1980年代から使っている概念でソ連のツボレフTu-22Mバックファイヤー爆撃機、オスカー級原子力誘導ミサイル潜水艦、キーロフ級原子力巡洋戦艦が率いる水上艦部隊の一斉攻撃に対抗する構想だ。国防副長官ボブ・ワークが記者に内容を2013年に説明してくれた。ソ連は対艦巡航ミサイルを多数の地点から発射する想定だった。
  9. ワーク副長官が述べたように米海軍はミサイル発射前にオスカー級潜水艦や水上艦の撃沈に自信があった。だが発射地点に達する前にTu-22Mを迎撃できるか自信がなかった。外縁部航空戦でのトムキャットは「射手を殺す」ことで、つまりバックファイヤーをミサイル発射前に処分することで脅威を除去するはずだった。だがワークが指摘したように実戦に想定通りとなる保証はなかったし、試すことは今後もないだろう。だがこの脅威が中国の接近阻止領域拒否となって復活してきた。
  10. F/A-XX及び空軍のF-Xははじまったばかりだが、両機種は技術を共有しながら異なる形状になりそうだ。海軍はF-14を思わせる防御重視の思想なのに対し空軍は攻撃力を重視した航空優勢戦闘機としてロッキード・マーティンF-22ラプターの後継機を狙う。「今後わかると思うが、主任務の違いおよび想定する脅威内容の違いからF/A-XXとF-Xの間に相違点が生まれ、現行のF-22やF-35とも違う形に進化するだろう」と国防関係の高官が記者に語ってくれた。
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.
This first appeared in October 2015 and is being reposted due to reader interest.



イエメン強襲作戦の内幕を推理する


What has emerged so far about the deadly U.S. Special Operations on Al Qaeda in Yemen

Feb 02 2017 - By Tom Demerly


米特殊軍団によるイエメンのバイダ地方ヤクラのアルカイダ施設郷愁作戦の情報がその後浮かび上がってきた。

  1. 作戦情報は依然極秘扱いだがABC13 News Now の記者エリーズ・ブラウンが消息筋から「アルカイダはSEALの来襲を事前に知っていたようで準備していた」との発言がABCニュースにあったと伝えている。
  2. 米海軍上等兵曹ウィリアム・「ライアン」・オーウェンス(36歳、イリノイ州出身)が作戦中に死亡したと報道されている。その他に米隊員三名が負傷し、別に海兵隊MV-22オスプレイの着陸失敗で3名が負傷した。同機は米軍により地上で破壊され敵による機体回収を防いだ。
  3. 今回の急襲作戦は米特殊部隊の混成チームで実施されたようだが、オーウェンス兵曹は東海岸配備の米海軍海空陸(SEAL)チームの所属でヴァージニア州リトルクリーク基地に配属されていた。報道によればオーウェンスは特別に訓練を受けたタスクフォース・ブルーの所属で「SEALチームシックス」とメディアが報じる部隊のことだ。
  4. 米海軍のタスクフォース・ブルーには対テロ特殊作戦部隊と同様に内部に「戦隊」を置いており、赤、金、青、銀の各戦隊が「急襲」部隊で黒戦隊が支援し、その他情報収集分析部隊が後方に回る。オーウェンス兵曹の所属戦隊は不明だ。
  5. 公式発表では急襲の目的は物理的な情報の確保で、電子媒体やコンピューターのハードディスクや文書でアルカイダの今後の作戦を知ることだったとロイター通信は米国防総省から報道陣に説明があったと伝えている。
  6. ロイターのカイロ駐在モハメド・エル・シェリフの記事によれば「現地のアルカイダは2015年のシャルリエブド編集部襲撃事件をお膳立てした以外に米エアライン機の撃墜もねらっていたという。
  7. 急襲作戦は現地報道によれば「一時間の消火活動」で終わったという。死傷者報道はバラバラで現地人17名から30名が死亡したとしており、アルカイダ戦闘員含め急襲作戦で地上で死亡しているという。
  8. 週末に実施された米特殊部隊による急襲は「相当前に」立案されており、情報収集内容を反映していた。急襲のタイミングは匿名条件の米軍内部関係者によれば「ちゃんとした理由がある」のだという。おそらく月齢が関係しているのだろう。新月で急襲は実施されており、反射の関係から暗さが最大限期待できた。
Approximate location of the raid (Google Earth screenshot)

  1. 衛星画像からは対象地は山地に囲まれた小都市で海抜は1500フィート以下とわかる。つまりMV-22オスプレイの着地失敗には高地特有の渦輪気流は関係なかったことになる。
  2. オサマ・ビン・ラディンへの急襲となったネプチューン・スピア作戦で特殊部隊仕様のヘリコプターが着陸に失敗した原因が渦輪気流であった。回転翼機が自機の回転翼流に包まれて急降下すると揚力が消滅する。
  3. 当日の天候条件は華氏70度と比較的低く、視界は新月で「8マイル」で中程度の湿度と風速10マイル以下であった。これに暗い月明かりの条件を加えても作戦実施には差し支えない範囲だった。
  4. 一部報道では急襲はアデン湾の米海軍艦船から行ったとしている。
  5. 追加航空支援は同艦が搭載する海兵隊のAH-1Zヴァイパーガンシップから投入可能だったのだろう。また現地報道ではガンシップを「アパッチ」だったとしている。これは考えにくい。急襲作戦は艦船から始まったとの報道があるためだ。
  6. では同地区にいた艦船名は何か。保安上の理由があるが、強襲揚陸艦からの発進だったとすれば、可能性はUSSキアサージ、バターン、ボンノム・リチャード、イオウジマ、またはマキン・アイランドであろう。オンライン資料によればUSSワスプ、エセックス、ボクサーの当日の位置もわかる。
  7. 米第五艦隊管轄地区で興味深い艦船関連の報道があるのは通常とは違う仕様に改装sれたUSSポンセ(AFSB(1)-15)の存在だ。USSポンセの可能性があるのは最近同艦が特殊作戦支援用の改装を受けているためで、ヘリコプター甲板があり、その他特殊部隊用仕様もある。USSポンセは艦載レーザー兵器システム(LaWS)の運用試験にも使われている。
複合艇に爆発物処理移動ユニット’EODMU)12隊員が乗り、移動海上基地(暫定)のUSSポンス(AFSB(I) 15)の収納部分に入ろうとしている。 (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Scott Raegen/Released)
  1. また最近だが同地区には誘導ミサイル駆逐艦USSニッツェ (DDG-94)とUSSメイソン(DDG-87)がUSSポンセとともに展開しているとの報道がある。各艦はイエメン沖合のバブ・エル・マンデブ海峡近くで活動中とされ、紅海とアデン湾を結ぶ場所にいたとの報道が9月にあった。そのまま残っていれば、今回の作戦に各艦も参画していた可能性がある。
  2. イエメンでの米特殊作戦に注目が集まったのは2016年5月6日のNBCニュースでペンタゴン報道官ジェフ・ディビス海軍大佐の発言として「小規模の米軍人がイエメンで限定的な支援をアラビア半島のアルカイダ勢力と戦っているイエメン政府及びアラブ連合軍に提供している」と報道したためだ。これは以前の発言である「米軍部隊はイエメンでは2014年12月以降いかなる特殊作戦も実施していない」との声明と矛盾していた。
  3. そして水曜日遅くに飛び込んできたのがドナルド・トランプ大統領が予定外にドーヴァー空軍基地(デラウェア州)に移動し、オーウェンス兵曹の遺体帰国に立ち会うとの発表だった。トランプ大統領はマリーンワン専用ヘリコプターでイヴァンカ令嬢、デラウェア選出クリス・クーンズ上院議員とともにドーヴァー基地に向かった。■

U.S. President Donald Trump and his daughter Ivanka Trump walk toward Marine One while departing from the White House, on Feb. 1, 2017, en route to Dover Air Force Base. (Credit: Mark Wilson/Getty Images)

2017年2月6日月曜日

★F-35A参加でレッドフラッグはこう変わった



Controversial F-35A warplane struts its stuff in Red Flag exercise

Posted February 2, 2017 - 6:15pmUpdated February 3, 2017 - 12:10am

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An F-35A Lightning II takes off from Nellis Air Force Base during Red Flag on Thursday, Feb. 2, 2017, in Las Vegas. (Brett Le Blanc/Las Vegas Review-Journal Follow @bleblancphoto)

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An RC-135V Rivet Joint taxis to a runway at Nellis Air Force Base on Thursday, Feb. 2, 2017, in Las Vegas. Brett Le Blanc/Las Vegas Review-Journal Follow @bleblancphoto
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A B-1B Lancer takes off from Nellis Air Force Base during Red Flag on Thursday, Feb. 2, 2017, in Las Vegas. Brett Le Blanc/Las Vegas Review-Journal Follow @bleblancphoto
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An F-22 Raptor takes off from Nellis Air Force Base during Red Flag on Thursday, Feb. 2, 2017, in Las Vegas. Brett Le Blanc/Las Vegas Review-Journal Follow @bleblancphoto
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An aggressor F-16C Fighting Falcon takes off from Nellis Air Force Base during Red Flag on Thursday, Feb. 2, 2017, in Las Vegas. Brett Le Blanc/Las Vegas Review-Journal Follow @bleblancphoto
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An EA-18G Growler takes off from Nellis Air Force Base during Red Flag on Thursday, Feb. 2, 2017, in Las Vegas. Brett Le Blanc/Las Vegas Review-Journal Follow @bleblancphoto

By KEITH ROGERS
LAS VEGAS REVIEW-JOURNAL

F-35Aを巡る議論が続く中、先週木曜日に同機が初めてレッドフラッグ航空戦闘演習のためネリス空軍基地に姿を現した。
今年初のレッドフラッグ演習は1月23日に開幕し、F-35Aがもう一つのステルス戦闘機F-22と初めて一緒に飛行しており、その他80機ほどの制空戦闘機が米国以外に英国、オーストラリアから参加した。
ライトニングIIは演習でミッション110回ほどをこなしており、2月10日の閉幕を待つ状態だ。演習場所はラスヴェガス渓谷の北ネヴァダ試験練習場だ。
F-35に関しては昨年末からドナルド・トランプ大統領が政権移行期から価格を批判し、さらに「制御不能」とまでツイッターで批判し、ロッキードのライバルであるボーイングにF-18スーパーホーネットの参考価格提示を求めるなどその行く末が疑問にさらされていた。今回のレッドフラッグではF/A-18も8機参加している。
第34戦闘機飛行隊でF-35A編隊を率いるジョージ・「バンザイ」・ワトキンス中佐はF/A-18スーパーホーネットト比較するのは「りんごとオレンジ」を論じるのと同じだと述べている。だがそのワトキンスもF-35は今回の演習で「本領を発揮した」と言う。
今回のレッドフラッグの企画ではF-35をユタ州ヒル空軍基地から35機移動させ、もっと多くのアグレッサー機に対決させ、高性能ミサイル攻撃のシミュレーションの回避も狙った。
友軍の「青チーム」所属のF-35各機は地上の防空陣地を搭載するハイテクセンサーで探知に成功し、訓練用爆弾で目標を排除している。
木曜日の時点でF-35のキルレシオは15対1にのぼっているが、もともとF-35は空対空任務を主に想定していない。ラプターがこの任務にあたっている。
ワトキンス中佐によれば「こんなレッドフラッグは初めてで、これだけ多くの高性能敵機がむかってきとたことはない。これで損害が少なくなかったらそれ自体がすごいこと」なのだという。
ペンタゴン予算を握る議会もF-35の費用問題を注視している。一機およそ100百万ドルとされるものが90百万ドルになると見られている。
ジャッキー・ローゼン下院議員(民、ネヴァダ州)は下院軍事委員会に新しく加わったが、大統領の主張する史上最高価格の兵器システムとなった同機の見直しの方向性に同感できるという。「大統領、国防長官はともにF-35価格に取り組んでおり、これは絶対に正しい動きだ。コストは下がるだろうが、これまで支払ってきた値段をさらに下げていく追加策はあるはずです」
ワトキンス中佐によればF-35Aのレッドフラッグ演習デビューで同機がF-22と補完効果があると実証できたという。
「F-22は空対空を主眼に設計しています。こちらは敵防空網の制圧を主任務にししています。SAR(合成開口レーダー)で天候条件に関係なく地表の様子がわかりますし、脅威の存在もわかり、他の機体に脅威になる前に除去できます」
海兵隊仕様のF-35Bは昨年7月のレッドフラッグ演習に投入され、JSFとして初登場をしている。■
Contact Keith Rogers at krogers@reviewjournal.com or 702-383-0308. Follow @KeithRogers2 on Twitter.