2022年7月24日日曜日

米国防総省がBWBに再注目。将来のタンカー、輸送機として主流になる予感。

 民間航空で革新的な技術がなかなか登場していないのは現状のモデルで利益をどこまで最大化できるかに必死になっているためです。そのため、今でも機体はチューブに主翼をつけるという点では全然進歩がありません。やはり革新的な技術は軍用途にしか期待できないのでしょうか。しかし、今回の米空軍は軍民両用を最初からうたっており、近い将来のエアポートに現れる機体形状が大幅に変わる可能性もゼロではありません。(ターミナル1.2共通記事)



Boeing

 

国防総省は、将来のタンカーや輸送機向けに、BWBへ再び注目している。

 

 

国防総省は、2026年までのフルサイズ実証機を製造・飛行を視野に、混合翼機(Blended Wing BodyBWB)の設計案を求めている。同省は、設計コンセプトから始め、高効率性の実現に焦点を当てる。同プロジェクトは、将来の空中給油機や輸送機に影響を与える可能性があり、米空軍は過去にステルスタイプ含むBWB設計を検討していた。

 今回の情報提供要請(RFI)は、米軍が新しい民生技術を迅速に利用できるよう設立された国防革新ユニット Defense Innovation Unitのウェブサイトに掲載されている。RFIは、民間企業にデジタル設計概念(CoD)の提供を求めている。「ボーイング767やエアバスA330含む民間・軍用機より最低30%空気力学的効率が高い先進的な航空機構成」の実物大プロトタイプにつながるものとある。

 

 

昨年、エネルギー・施設・環境担当の空軍次官補(SAF/IE)が発表した、2種類の混合翼機コンセプトを示すインフォグラフィック。新RFIで実寸大実証機として同登場する可能性がある。U.S. Air Force

 

 

上記旅客機2機種は、KC-46AペガサスとA330多用途タンカー輸送機(MRTT)の原型で、とくに前者は空軍のKC-Xタンカー要件で後者に勝ったことが注目すべき点だ。しかし、KC-46は問題や遅延が相次ぎ、運用に限界があるため、A330 MRTTが後続のタンカー購入の候補に残っている。

 このことは、DIUが研究対象とするBWB機が、KC-46よりもはるかに高度な航空機、おそらくステルス特性を持つ航空機が想定の将来型KC-Zタンカーとして検討される可能性を示唆しているのか。

 

 

ロッキード・マーチン社によるハイブリッド翼KC-Zコンセプトの模型。Lockheed Martin. Joseph Trevithick

 

KC-Yは、空軍が計画するKC-46の購入終了とKC-Zの間の「ギャップを埋める」タンカーとなる。KC-46を追加購入するか、ロッキード・マーチンがLMXTとして売り込み中のA330 MRTTへ変更することがある。

 今年4月、空軍参謀長チャールズ・Q・ブラウン・ジュニア大将は、KC-46がKC-Yの選択肢になる可能性を示唆した。フランク・ケンドール空軍長官が、KC-YとKC-Xの両方について「競争の可能性は下がった」と発言したわずか1カ月後だった。

 

 

 

2021年2月22日、メリーランド州アンドリュース統合基地での空中給油運用調査で、KC-46Aペガサスとの接続準備をする米空軍参謀長チャールズ・Q・ブラウン・Jr.大将。U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Chris Drzazgowski

 

Air Force Magazine取材に対し、空軍研究本部(AFRL)の広報担当者は、新しいDIU RFIは「KC-Yプログラムと無関係」と確認したが、KC-Zと関係があるかについては明言を避けた。

 RFIでは、BWBの空力構成と「2030年のエンジン技術の予測」を組み合わせ、期待通りの効率化が達成されると想定し、「現行技術から少なくとも60%のミッション燃料消費の削減」を実現するとしている。この点で、同プロジェクトは、高レベルの効率を実現する(そして短距離離陸能力を提供する)エキゾチックな推進システムの可能性を探求してきた、これまでの取り組みを思い起こさせるものがある。ガスタービンを使い電動ファンのアレイに電力供給するAFRLの分散型推進コンセプトがあった。

 

 

AFRLの分散型推進コンセプトの模型 Courtesy Guy Norris

 

こうした利点により、現在稼働中の貨物機やタンカーと比較し、航続距離、滞空時間、積み下ろし能力を大幅に向上させるはずだ。特にタンカーについては、アジア太平洋地域シナリオを想定し、遠大な距離で燃料補給する能力が重要な指標となり、高効率の BWB設計が優位性を発揮するだろう。

 

 

2021年2月1日、グアムのアンダーセン空軍基地に着陸するアイオワ州空軍第185空中給油隊所属の米空軍KC-135ストラトタンカー。KC-135はアジア太平洋地域で活動する航空機への空中給油支援に重要な役割を担っている。U.S. Air Force photo by Airman Kaitlyn Preston

 

効率改善は、化石燃料への依存度を減らす国防総省の大きな目標に合致する。「国防総省は石油ベースエナジーの最大の連邦政府消費者で、全体消費の77パーセントを占めている」とRFIは述べている。「大半は、世界規模の作戦を支援する航空機の燃料に起因する」。

 国防総省の燃料依存と、米軍を脆弱にする可能性について懸念が高まっており、将来の作戦と有事はアジア太平洋地域に集中する可能性が高いとの予想にも重なる。同戦域は距離が長く、長距離の出撃の要求が高まる一方、燃料ロジスティックスの要求とサプライチェーンでリスクが増大する。高効率の輸送機やタンカーは、これに対処する手段となる。

 一方、効率的な輸送機技術の実証プログラムも進行中です。昨年8月に発表されたNASA契約では、ボーイング、レイセオン・テクノロジーズジェネラル・エレクトリックブレンド・ウィング・エアクラフトROHRの各社が「Future Subsonic Demonstrator Risk Reduction Activities」プログラムを支援している。これは、持続可能性、環境、騒音低減、効率、コストなど厳しい目標を満たす亜音速輸送機(BWBコンセプトも含む)の技術を特定するのを目的とするものだ。

 全体として、BWB設計の効率と持続可能性での高い優先順位は、今回のRFIが、通常この種の募集で出てくるAFRLや空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)ではなく、空軍運用エナジー室Air Force Operational Energy Officeが主催している事実にも反映されている。

 

 

 

風洞でのX-48混合翼機2%モデルの空力試験。U.S. Air Force

 

 

空力効率を大幅に向上させるだけでなく、「システム統合と将来のアップグレードを可能にする」モジュラー・オープン・システム・アプローチ(MOSA)を取り入れた設計が求められている。タンカー任務に適応することを指しているのかもしれないが、将来的に他のミッションも引き受ける計画の可能性もある。

 設計では、「各種ミッションに特化したシステムの組み込み」を考慮する必要があり、電子戦コンポーネントとJADC2(Joint All Domain Command & Control)アーキテクチャの想定システムという2例が挙げられている。KC-135を通信ハブとする現在の計画や、ブラウン大将の過去発言に沿ったもので、将来のタンカーが「さらなる自己防衛」能力と通信ノードの役割を果たす装置となるよう望んでいると同大将は述べている。

 

 

 

2021年8月7日、ユタ州空軍がコリンズ・エアロスペースと共同で、ユタ州ソルトレイクシティのローランド・R・ライト空軍州兵基地において、JADC2(統合全領域指揮統制)およびABMS(先進戦闘管理)を支援する先進通信、ミッションコンピューティング、センサー技術のデモンストレーションをKC-135で成功させた。 U.S. Air National Guard photo by Tech. Sergeant Danny Whitlock

 

新RFIはタンカーの役割に言及していないが、AFLCMCが先月開始した先進空中給油システム(AAR FoS)プログラムと類似点が多数ある。

 AAR FoSのRFIでは、無人航空機への給油を最適化し、電子戦プラットフォームとしても機能する未来型タンカーを想定している。

 Defense Innovation Unitの公募がエキゾチックなBWBデザインを核とするのに対し、AAR FoSでは進化的なアプローチとし、まず現行タンカー群(KC-46A、KC-135R/T)に新機能を追加し、その後「新型タンカーの全体要件を策定する 」。

 各 RFI は異なるが、重複もあり、最終的には各要素を組み合わせた新世代タンカーや輸送機が生まれると考えられている。

 

 

 

ロッキード・マーティンのBWB軍用輸送機コンセプトの特徴を示すインフォグラフィック。NASA

 

 RFIでは、現在の設計コンセプトに沿い、企業が「デジタルエンジニアリングツールとプロセス」を使用し、設計、開発、テスト、検証、妥当性確認、および後続のプロトタイプ構築、実飛行、および生産の可能性があるシステムの認証を行うと定めている。フルスケール実証機は、2026年までに飛行する予想だ。

 意外なことに、RFIはステルス性や低観測性に言及していない。しかし、全翼機形状のBWBは、従来機と比較して、低観測性の設計コンセプトに近くなる。同時に、この種の設計は、貨物や燃料の運搬の内部空間で利点を提供する。

 

 

初期のブレンデッドウイングボディデザインがNASAのN3-Xコンセプトだった。翼を機体にシームレスに溶け込ませ、空力的で、燃料消費、騒音、排出ガスの削減をめざした。NASA

 

また、空軍のKC-Zでは、低観測性を縮小するか、あるいは完全に削除している可能性もある。ブラウン大将は今年初め、次世代航空優勢(NGAD)戦闘航空システムには「必要な場所に行ける航続距離がある」と述べ、危険な場所に同行するステルス「護衛」タンカーの必要性は減ると指摘していた。

 また、空軍が目的別に設計された無人機での能動的防衛を真剣に検討し始めたため、将来のタンカー(または輸送機)にステルス性を組み込む優先度が低くなった可能性もある。

 タンカーなど、脆弱な高価値資産航空機(HVAA)の近接護衛を行うミサイル搭載無人機に関する研究や提案はいくつかあり、AAR FoS プログラムでは特に「オフボード自律協調プラットフォーム」を想定している。こうした無人機は、戦闘機含む各種航空機を護衛し、電子攻撃や敵防空網の抑制、情報・監視・偵察(ISR)などの任務もこなすことが期待される。

 しかし、BWBは低視認性であり、貨物機やタンカーとして以外に特殊作戦部隊の輸送も検討されたことがある。

 また、今回のRFIには実物大試作機製作の可能性が含まれているが、ボーイングX-48プログラムでサブスケール実証機をテストしており、2007年に初飛行させていた。

 将来のタンカーの基礎となるBWB設計の実用性について、The War Zoneは、退役空軍軍人で、C-135ファミリーについて幅広く執筆しているロバート S ホプキンス3世 Robert S Hopkins IIIに話を聞いた。

 ホプキンスは、BWBタンカー開発には重大な問題があると指摘している。まず、ブームとレシーバーの比率だ。これはタンカー全体のサイズに依存する。大型機用の中央ブームと、戦闘機サイズのレシーバー用の機外ブームの合計3台のブームを、長い翼幅に沿わせる。「AIを使えば簡単だろう」((ホプキンス)。

 そして、タンカーの機数は永遠の課題だ。空軍がタンカーと輸送機の「スプリット・デューティー」を行うBWBを100機購入したとしても、現在のタンカー不足を十分に解消できない。「タンカー需要は現在、460本のブーム(MPRSポッドは別)で満たされているため、タンカー購入総計は同じかそれ以上にする必要がある」とホプキンスは指摘する。

 空軍の将来のタンカー要件はこれまでも詳しく議論されており、KC-YとZの各要件が想定されたが、空軍が大型貨物輸送機、C-5M ギャラクシーとC-17A グローブマスターIIIの各後継機をどこまで検討し始めているかは明らかではない。

 

 

2021年9月14日、横田基地のフライトラインで、カリフォーニア州トラビス空軍基地第60航空機動飛行隊所属のC-5Mスーパーギャラクシー。Yasuo Osakabe

 

冷戦時代のC-5は、空軍最大の機体で、非常に大きく重い貨物を輸送する比類ない能力を実現している。C-5Mは、エンジン改良を含む大幅性能改修で、2040年代まで運用される。2040年代以降は、ギャラクシー代替機として、容量が大きく効率的なBWBタイプが考えられる。

 2015年に生産終了し、最後の1機が輸出された主力輸送機C-17については、空軍は耐用年数を延長するか決定していない。同機は、機械化部隊を含む戦闘部隊を戦闘地域まで長距離迅速移動させる上で第一選択肢で、平和維持活動や人道支援ミッションの輸送にも優れる。

 

 

2013年9月12日、カリフォーニア州ロングビーチで行われた米空軍向けC-17納入20周年を祝う式典で、フライトラインに置かれる米空軍最後のC-17AグローブマスターIII(P-223)。U.S. Air Force photo/ Senior Airman Dennis Sloan

 

空軍がC-17の大規模近代化を断念した場合、活動する空域が今後ますます厳しくなることを考慮し、ステルス性の高いBWBエアリフターが後継として検討されるかもしれない。

 RFIはBWBで軍事的用途のほかに、二重用途の商業化計画にも言及しており、潜在的な商業的用途が考慮される。長距離飛行、効率、大量貨物を輸送する能力を併せ持つ航空機は、貨物や旅客の民間輸送に利用できそうだ。以前から、大手企業はBWBと全翼機の潜在的な利点に注目している。

 

 

エアバスは、将来の旅客機開発を目的として、2020年にBWBスケールモデルの技術実証機「MAVERIC(Model Aircraft for Validation and Experimentation of Robust Innovative Controls)」を公開した。Airbus

 

BWB航空機が軍用および民生双方に適用できる利点を多数提供するのは明らかだ。RFIへの回答は8月2日期限となっており、空軍が将来の混合翼航空機に期待する任務や、近代化計画にどこまで適合するかが順次明らかになる期待がある。■

 

 

Air Force Wants Blended Wing-Body Aircraft Demonstrator Flying By 2026

BYTHOMAS NEWDICKJUL 22, 2022 

6:58 PM

THE WAR ZONE

 




バイデンのイスラエル、サウジアラビア訪問は大失敗。大統領としての資質が改めて問われる結果に

 

 

ジョー・バイデンの外遊で中東の対立がさらに加速されてしまった。

 

ョー・バイデン大統領のイスラエルとサウジアラビア公式訪問は、国内政治の古い習慣が、海外における米国の国益に関し、創造的思考や進展も圧倒できるかを実証した。今回の外遊の主な目的は2つで、1つは、世論調査の結果が芳しくない大統領の国内政治的利害に関わるものだった。多くのアメリカの政治家が選挙で必要だと考えていること、つまりイスラエルへの愛情を示すことがそのひとつ。もう一つは、米消費者に、ガソリン価格を下げるために何かしようとしていることを示し、それにより、インフレという大きな問題を緩和することだ。バイデンの政治的勝利の是非はともかく、今回の訪問は国益につながる利益は明らかにもたらしておらず、むしろマイナスの結果をもたらす可能性が高い。

 ガソリン価格問題は、サウジアラビアの原油生産量に関わる。バイデンはサウジとの会談後、原油供給量を増やすために「今後数週間のうちにサウジがさらなる措置をとる」ことを期待するという曖昧な発言にとどまった。実際、サウジアラビアの能力と意思の問題から、そのような増加は最小限にとどまる予想するに十分な根拠がある。サウジ指導部は、日量1200万バレル、あるいは1300万バレルまで増やすと豪語しているが、サウジの石油業界関係者は重大な疑念を抱いている。アラブ首長国連邦のザイード大統領は最近、フランスのマクロン大統領に、サウジとアラブ首長国連邦はすでに石油汲み上げで能力の限界に近づいていると述べた。サウジの生産量は現在、約1050万B/Dである。サウジの最高生産量記録は、1カ月約1150万B/Dだった。

 もしバイデンが本当に多くの石油を急いで世界市場に出させたいのなら、サウジを籠絡するのではなく、イランの核活動を制限した多国間協定である「包括的共同行動計画(JCPOA)」を米国が遵守する形に戻すことがそのチャンスとなる。そうすれば、世界第4位の石油埋蔵量を誇るイランへの石油制裁が解除される。イランは現在、制裁前と比べ、生産量を約130万bpd減らしている。JCPOAの締結で制裁が解除され、イランは4カ月で日量50万バレル、1年で約100万バレルの増産に成功し、増産能力の高さを示していた。また、イランが輸出に備えて停泊中のタンカー船に貯蔵中の石油コンデンセート約6500万バレルは言うに及ばずである。

 バイデンはイランに対処するため外交を好むと言ったが、今回の外遊で姿勢は外交から戦争へと向かっている。イスラエルのテレビ局とのインタビューでは、JCPOA回復が前提でも、イスラム革命防衛隊を米国の外国テロ組織リストから削除する検討を再び拒否し、イランに対して軍事力を行使する意志を表明した。つまり、バイデンは、イラン核武装を阻止するため、前政権の純粋に象徴的なジェスチャーを取り払うことは望まないが、そのために新たな中東戦争を引き起こすリスクは厭わないと述べている。

 今回の外遊では、イスラエルと湾岸アラブ諸国の関係深化を促すというメインテーマを含め、バイデンの中東政策がいかにドナルド・トランプを踏襲したものである形が浮き彫りになった。現政権は明らかに、バイデンの任期中にサウジアラビアがイスラエルと完全な外交関係に移行することを切望しており、他のアラブ諸国をそのステップに移行させることによって、トランプ政権が懸命に獲得した国内政治的ポイントを自らも獲得しようと考えている。

 パレスチナ領土の占領、入植計画、パレスチナ人の自決拒否を続けているにもかかわらず、イスラエルが地域の他国と友好的な関係を享受できることを示している。しかし、前政権も現政権も、米国にとって、あるいは中東の平和と安定にとって、何が有利なのか説明していない。今回の関係強化は「平和協定」と異なる。関係するアラブ諸国は安全保障面も含めイスラエルと協力関係にある。

 むしろ、反イランの軍事同盟であると、イスラエル国防相は明言している。バイデン政権が推進し、サウジが全面的かつ公然と参加するよう促しているのは、ペルシャ湾地域における紛争の激化であり、平和と安定に向かうのではなく、遠ざかる方向に進むことである。

 イスラエルとアラブ諸国との関係強化は、中東のもう一つの紛争、すなわちイスラエルとパレスチナ人間の紛争を永続させる。イスラエルにとって、パレスチナ人との和解を回避することが、関係強化の目的であった。バイデンがヨルダン川西岸を短期間訪問し、パレスチナ自治政府という時代遅れの組織の不人気な八重奏者議長であり、今やイスラエル治安部隊の補助にすぎないマフムード・アバスと会談したが、米大統領が就任当初から、この紛争を少しでも解決に近づける、パレスチナ人を自決に近づけることに政治資金を使うつもりはないと明白にしていたのを思い出させる悲しい出来事となった。

 今回の大統領訪問では、サウジアラビアがいかに重要であり、関与しないわけにはいかないか、したがってバイデンはサウジアラビアを「亡国」とするという以前の発言を撤回することが正当化される、という多くの論評が出た。確かに関与は必要だが、関与と大統領府の訪問はイコールではない。もし関与が重要なら、バイデンはなぜわずか3ヶ月前までサウジアラビア大使を指名せず、今も指名が確定していないのかと問うのが妥当だろう。

 好むと好まざるとにかかわらず、大統領の訪問は、訪問先の指導者への報酬であり、評価であると受け取られる。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)は、米国大統領が自分のところに来て喜んでいる。MBSはほんの数カ月前、大統領からの電話に出ることを拒否し鼻持ちならなくない存在になっていた。ジャマル・カショギの殺害を命じた支配者は、バイデン会談を利用し、イスラエルによるパレスチナ系アメリカ人ジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレの殺害を隠蔽したことから、致死的虐待に関する政権の偽善を煽ったのだ。

 この訪問がMBSの動機に影響を及ぼすとすれば、それは石油をより多く生産するためではないだろう。むしろ、サウジ支配者が王国内の深刻な人権侵害を是正したり、イエメンに対する壊滅的な空爆に代表されるサウジの地域支配とイランとの対立を追求する不安定な方法から手を引いたりする可能性を、さらに低くすることになるのだろう。

 ジェッダ・サミットでの演説でバイデンは、米国はロシアや中国が埋めるべき中東の「真空地帯」を残すつもりはないと述べた。この発言には、大国が他人の地域に介入する際に「真空」の比喩が通常適用されるのと同じ問題がある。ガスを押し出すようなものではなく、むしろ相手側の反作用を引き出す可能性が高い。サウジアラビア外相はバイデン訪問時に、同国と米国および中国との結びつきは相互かつ排他的ではないと発言した。また、米国が推進するイランへの敵対心を前提とした同地域での活動は、イランをロシアや中国との緊密な関係に追いやるという効果を当然ながらもたらしている。このプロセスは、イランが上海協力機構に加盟し、バイデンの中東歴訪とほぼ同時期にロシアのプーチン大統領がイランを訪問したことで、より明確になった。

 つまり、バイデンの中東歴訪の正味の帰結は、中東を以前にも増して紛争地化させてしまった。大国の関与という点では、米ソ冷戦時代に中東が土俵であったことと重なる。ただし、米側につく存在がイラン国王の独裁体制からエジプトのシシ大統領の独裁体制に変わり多少変わっている。■

 

Biden’s Middle East Trip Was About Domestic Politics, Not Peace

by Paul R. Pillar

July 20, 2022  Topic: Saudi Arabia  Region: Middle East  Blog Brand: Paul Pillar  Tags: Saudi ArabiaUAEIranIsraelAbraham AccordsGas PricesOilGreat Power Competition

https://nationalinterest.org/blog/paul-pillar/biden%E2%80%99s-middle-east-trip-was-about-domestic-politics-not-peace-203709?page=0%2C1

 

Paul Pillar retired in 2005 from a twenty-eight-year career in the U.S. intelligence community, in which his last position was National Intelligence Officer for the Near East and South Asia. Earlier he served in a variety of analytical and managerial positions, including as chief of analytic units at the CIA covering portions of the Near East, the Persian Gulf, and South Asia. Professor Pillar also served in the National Intelligence Council as one of the original members of its Analytic Group. He is also a Contributing Editor for this publication.

Image: Reuters.


ウクライナへの装備品供給を調整管理する米欧州軍司令部下の連絡事務所

 

 

 

2022年6月3日、ドイツで作業に臨む米英国際ドナー調整センターのスタッフ。ECCU/IDCCは、同盟国およびパートナー40カ国以上からの治安部隊支援用の提供品をタイムリーに提供するための調整と同調を行う。(Capt. Christina Judd/U.S. European Command)

 

 

略するロシア軍と防衛するウクライナ軍との戦争が5カ月目に入る中、世界各国はウクライナの主権を守るため、軍事支援数十億ドル相当を提供してきた。

 

 

 3月上旬から、支援国からウクライナの玄関口まで確実に装備品を届けるため、米軍と各国の交代要員が、米欧州軍司令部に拠点を構えている。

 チームは、EUCOMコントロールセンター・ウクライナ/国際ドナー調整センター(ECCU/IDCC)と呼ばれ、配送を監督しながら、ウクライナが受領した装備品で適切な訓練を受けられるようにしている。

 ドイツ南西部のシュツットガルト米軍駐屯地内のEUCOM司令部で、水曜日に記者団が説明をうけた。この兵站拠点は、米軍と英軍の2つの個別セルが発展したものだ。ウクライナ向けのパートナー国からの軍事支援を調整するためECCUとなった。現在では、同盟国やパートナーを含む合同セルを、米英両国が率いている。

 米軍欧州司令部の兵站部長デューク・ハインツ少将Rear Adm. Duke Heinzは、「我々の目的は、ウクライナ主権を守るために支援することだ」と述べた。ロシアの侵攻開始後、米軍は同盟国やパートナーにウクライナ向け安全保障支援を提供する意志を確認した。

 ハインツ少将は、「目的は、紛争の解消だ」と述べた。「ウクライナがどれだけ吸収できるかわからないし、独立機関が毛布や救急キットを届けるため使う国境管理地点で、安全保障支援や軍需品を届けるようなことはしたくなかった」と言う。

 

有志連合

 

「屋根裏部屋」と呼ばれる、エアコンもない息苦しいほど暑い多目的スペースに、NATO加盟非加盟26カ国の軍人数十人が、計画、支援と通信、移動、作戦に取り組むセクションに分かれている。また、持ち回りの外国人連絡将校が並ぶ。ウクライナ軍代表がチームに加わり、本国要請を確認し、ECCU/IDCCチームが対応する。

 ウクライナが具体的な装備の要求を出し、参加国がそれをどの程度満たせるかを確認している。

 多国籍チームは「有志連合」で、輸送、援助、訓練資源、資金などの組み合わせや量を自由に選択できる、と関係者は述べている。

 3月に米英のセルが統合され、セルの機能は進化してきた。ECCU/IDCCのチーフであるクリス・キング英陸軍准将Brig. Gen. Chris Kingによると、開戦当初、後方支援セルは主に小火器弾と対戦車装備の輸送を支援した。その後、ウクライナ軍になじみあるソ連時代の装備品の輸送を支援するようになったという。

 NATO同盟国から拠出の高度な装備品が到着したことで、ECCUは、ウクライナの玄関口まで届けられる世界中からの装備品を調整し追跡するだけでなく、提供された装備品を操作し維持するためウクライナ軍の訓練を組織する「ワンストップショップ」となった。ハインツ少将は、「訓練のスケジュールと装備品の納入を一致させるのが課題」と指摘する。

 そのプロセスも多国間だ。キング准将は、イギリスがウクライナに105mm榴弾砲を寄贈した状況を説明した。榴弾砲はニュージーランドの装備のため、同国が訓練支援と部品を提供し、訓練はイギリスで行われた。米軍は弾薬と榴弾砲牽引用の戦術車両を提供した。

 EUCOMによると、米国はこれまでにウクライナ軍約1,500名を訓練している。英国はウクライナ軍に対し、120日ごとに最大1万人を訓練すると約束している。

 

課題の回避

 

西側のウクライナ支援を妨害するロシアの脅威があるが、ECCU/IDCCチームは今のところ大きな問題を回避していると関係者は述べている。

 ロシアからサイバー攻撃など妨害はまだない、とキング准将は言う。「しかし、(ロシアは)学び続けるだろうし、こちらはそれに備える必要がある」。

 ハインツ少将によると、機材をウクライナ国境に届ける上で、移動上の障害は経験していないという。

 「支援用装備が倉庫に積み上げられているわけではありません」と彼は言い、空港や列車の発着場に置かれる時間は、長くても12〜24時間だという。

 ある国から軍事支援の申し出があると、支援国からウクライナの国境までの「流れ」に沿って兵站をコーディネートするのが「セル」の役目だ。ハインツ少将によれば、ドア・ツー・ドアの工程に48時間から96時間かかるという。

 ウクライナと国境を接する同盟3カ国は、国境での軍事支援を許可しており、ポーランドそのひとつだ。3カ国のうち2カ国は、ウクライナ人が入国し、指定場所に移動して装備を集めることを許可している。「国境までの移動と、どの国境管理ポイントから入国するかは、ウクライナ側の責任だ」とハインツ氏は言う。

 第三国は、国境まで機材を運び、そこからの搬送を要求している、と彼は付け加えた。

 ハインツ少将は、軍事システムが闇市場に出回る心配を問われ、米国提供の軍事装備品の使用について、ウクライナ当局と「非常に率直に」話し合っていると答えた。

 「国境を越えた時点でシリアルナンバーを追跡しているわけではないが、納入装備はすべて把握している。在庫もある。しかし、国境を越えるとウクライナの手に渡る」。ただし、これまでのところ、配送が最終目的地に届かなかったケースはないという。

 

移動手段の変更

 

7月21日現在、ECCU/IDCCチームは、空路140万km、地上距離45万km以上、78,000トンの軍事支援の移動を調整した。提供ずみ支援物資の見積もり合計額は、提示されなかった。

 航空機800便以上でウクライナ国境に機材を輸送している。しかし、ウクライナへの搬入順序は過去数カ月間同じである一方、搬入方法は変化していると関係者は強調している。

 3月と4月には、各国が当初提供していた小火器や対戦車・対人戦能力の空輸は容易だったと、ハインツ少将は指摘。現在は、提供装備品に戦車や榴弾砲が含まれており、鉄道や船舶も採用されている。

 「しかし、流れは止まっていない」と彼は言った。欧州議会が夏休みに入り、米国が数カ月後に中間選挙を控えていても、納入が「夏枯れ」になる心配はない、と少将は付け加えた。

 キング准将は、「セル」設立当初は、急速に寄せられる軍事支援寄付を調整するため、チームは迅速に動いていたと述べた。現在では、配送2カ月先分まで計画しているという。

 ソ連時代の装備品は減り始めているが、寄贈した各国は老朽装備品をNATO仕様の軍事資産に交換することに関心を示しているとハインツ少将は指摘する。「軍備の足元を見れば、同盟の未来はかなり明るい」と言う。

 ソ連時代の152ミリと122ミリ迫撃砲弾のサプライヤーが1社残っており、生産ラインから装備品を提供しているとハインツ少将は語ったが、サプライヤー名称は口にしなかった。

 

装備が今後追加される

 

水曜日、米国防総省はウクライナにM142高機動砲ロケットシステム(HIMARS)を追加送付すると発表し、これで総数は16となった。

 ハインツ少将は、ウクライナ向け軍事支援レジストリが戦争の過程で成長し続けるにつれ、米国がその他高性能装備品を提供する可能性を排除しないと述べた。

 「この紛争は3カ月半前とは全く違う」と指摘した。もしあの時、『ウクライナにHIMARSを届けられるって思う?』って聞かれたら、『無理だね』と答えていたでしょう。

「ウクライナが示してますが、戦い勝利する能力に基づき、すべてがテーブルの上にあるのです」。■


Inside the multinational logistics cell coordinating military aid for Ukraine

 

By Vivienne Machi

 Jul 22, 03:33 AM


2022年7月23日土曜日

ここまでわかったFC-31(J-35)の機体情報。オリジナリティ希薄な同機が今年秋の珠海ショーに登場との噂。

 Our Best Look Yet At China’s J-35 Carrier-Capable Stealth Fighter

Chinese internet

 

中国海軍向け新型ステルス戦闘機の高解像度写真で、エンジンやキャノピーなど詳細が明らかになった。

 

 

FC-31と呼ばれる瀋陽J-35ステルス戦闘機の海軍仕様試作機で最初の高解像度写真と思われるものが、ネット上に出現した。製造番号35003、グレーの戦術塗装に控えめなマーキングが施された同機で、キャノピーやエンジンなど、興味深い詳細が確認できる。

 中国空母が増える中、同機の開発は以前から噂されていたが、昨年末に飛行中や地上での映像が公開されていた。画像はすべて、ターコイズブルーの下塗り塗装の機体で、解像度は低いものだった。

 今回公開の画像では、機体やその特徴がよりよくわかる。人民解放軍海軍(PLAN)の空母艦載戦闘機J-15に見られる「空飛ぶサメ」のロゴを含む新塗装とマーキングは、ここ数カ月で開発が着実に進んでいることを示し、海軍での使用を意図しているがわかる。

 

 

J-35試作機の尾翼のアップ。右尾翼の上部に「フライングシャーク」のロゴと思われるものが見える。Chinese internet

 

F-35のような前開きの内反キャノピーは、後部にバルクヘッドを備えるのがわかる。これは、ロッキード・マーチンF-35統合戦闘機のA型C型のキャノピーの構成とほぼ同様で、少なくとも米ジェット機のデザインから影響を受けていることは間違いない。F-35Bのキャノピー後部には、バルクヘッドがない。F-35J-35ともにキャノピーでパイロットの後方視界は確保できない。

 

J-35のキャノピー. Chinese internet

 

 

オーストラリア空軍のF-35A。キャノピー形状がよくわかる。 USAF / Senior Airman James Hensley

 

F-35のキャノピー形状は、少なくとも部分的には、短距離離陸と垂直着陸(STOVL)可能なB型に見られるリフトファンやその他の関連する独自の要素を搭載する必要性に直接関連した設計上の妥協であるのを考えれば、中国がこのキャノピー設計を採用したのは不思議なことだった。今のところ、J-35やその前のFC-31のSTOVLバージョンが計画されている気配はない。そのため、海軍仕様の中国機が、視認性やその他の設計上のペナルティが不要なのに、なぜこの構成したのかという疑問が生じる。

 J-35の新しい画像で特に目立つそ他のディテールには、鋸歯状の排気ノズルを持つエンジンと、胴体後部のカウリングがある。これは、同機の推進用と思われる新型WS-21である可能性がある。WS-21は、WS-13Xとも呼ばれ、WS-13Eを改良した派生型で、アフターバーニングを強力にしたものだ。FC-31の試作2号機は、試作1号機が搭載したロシア製RD-93に代わり、WS-13Eを搭載しているといわれる。WS-13シリーズは、RD-93と形状・性能ともに似ている。

 

 

J-35のエンジン排気口。 Chinese internet

 

 6月の中国国営テレビCCTVで、11月に予定される珠海航空ショーで、WS-21エンジンを搭載したJ-35が正式に登場すると示唆された。珠海ショーは、偶数年に開催される中国最高峰の航空見本市で、新鋭機の一般公開が行われることで知られる。

 その他、機首の着陸装置のノコギリ歯状のドア、主脚には台形状のドア、右エンジン吸気口の側面に目立つ台形状のパネルがある。ステルス性を発揮するため、設計に高度なノウハウが必要で、製造や取り付けにも極めて高い精度が要求される。高度ステルス用の低視認性の「トリック」の多くは、外見上は見えない。そのため、同機がどの程度のステルス性を持っているかは不明だ。 とはいえ、中国の航空業界は長年にわりJ-20シリーズなどの開発・生産を続け、この点で経験を積んでいるのは間違いない。J-35はF-35ほどステルス性は高くないが、低視認性を活かし多くの状況下で生存能力を向上できる。

 

 

J-35試作機の着陸装置ドアと、その空気取り入れ口の側面にあるパネルの様子。Chinese internet

 

全体的に驚くほど継ぎ目のない機体で、パネルやファスナー、隙間、折り目、アンテナなど、レーダー探知に悪影響を与える要素の露出を最小限に抑え、非常に滑らかな外装となっている。

 また、各種飛行試験中によく搭載されるエアデータプローブが、今回の写真でもJ-35に搭載されているのが確認できます。

 J-35が、どのエンジンを積んでいるにせよ、今年の珠海ショーに登場すれば、同機の設計と特徴について、さらに多くのことがわかるだろう。■

 

Our Best Look Yet At China's J-35 Carrier-Capable Stealth Fighter

BYJOSEPH TREVITHICKJUL 22, 2022 5:30 PM

THE WAR ZONE