2022年7月26日火曜日

米海軍の次期主力駆逐艦DDG(X)の技術開発契約をHII、BIW両社に交付。

 

DDG(X) concept

米海軍は、次世代駆逐艦DDG(X)の詳細だが最終決定ではないコンセプトを発表した(Graphic by Breaking Defense; original concept model via US Navy)


海軍は DDG(X) 一号艦を 2030年度に発注したい意向だ


海軍はHIIとジェネラル・ダイナミクス・バス・アイアン・ワークスGeneral Dynamics Bath Iron Works両社に、DDG(X)次期大型水上戦闘艦のエンジニアリング設計契約を交付した。

 海軍の金曜日発表によると、「情報源選択の機密情報」を理由に、契約金額を公表していない。契約は、海軍の主力艦アーレイ・バーク級駆逐艦の後継艦の実現で初期かつ重要なステップであり、今後数十年にわたりプログラムの指針となる設計図の作成につながる。

 インガルス造船Ingalls Shipbuilding社長カリ・ウィルキンソンKari Wilkinsonは、契約締結後の声明で、「当社は、海軍と業界パートナーと共にこの道を進むことに興奮している」と述べた。「重要な将来型水上戦闘艦の設計に、当社の経験豊富なエンジニアリングチームのベストプラクティスとイノベーションを提供する絶好の機会だ」。

 バス・アイアン・ワークスは、現行DDG 51プログラムに投入されている同社の最先端エンジニアリングと設計の専門知識を、次世代大型水上戦闘艦にも応用したいと熱望している。同社社長チャック・クルーグChuck Krughは、金曜日にこう述べた。「HIIや当社の業界パートナーとともに、能力、スケジュール、コストに対する海軍のニーズを満たす機会を得ることで、その他海軍建設計画の成功例と相乗効果がもたらされる」。

 HIIとBath Iron Worksは、1985年以来、共にアーレイ・バーク級を建造しており、米海軍のお気に入り大型水上戦闘艦ベンダーであり、そのため、海軍は両社社員を海軍のDDG(X)チーム内に入れたと、今年初めに海軍担当者が述べている。

 設計段階を終えれば、両社のいずれか、または双方が艦船建造にあたるのはほぼ確実です。しかし、仕事の受け渡し方法がはっきりしない。海軍が大規模な建艦計画を管理する場合、業者に価格を下げさせる手段として、競合させるのが通例だ。HIIとBath Iron WorksがDDG-51で長い歴史を持つことを考えれば、第三のベンダーが新型艦の主契約者になる可能性は極めて低い。

 両社を競争させれば、海軍はより良い取引先を確認できる。その場合でも、造船業の政治的な事情や産業基盤の維持の観点から、負けた社も建造に携わる可能性はあるが、第二業者として不利な立場に立たされよう。

 もう一つの可能性は、競争の回避だ。USNI News によれば、上院軍事委員会は、次期防衛政策法案の草案において、過去の造船計画の失敗を理由に、HII とBIWの合同チーム編成を模索している。

 Breaking Defenseは、DDG(X)プログラムの取得戦略の状況について、海軍海洋システムズ本部Naval Sea Systems Commandにコメントを求めている。■


Navy awards HII, Bath engineering, design contracts for future destroyer


By   JUSTIN KATZ

on July 25, 2022 at 2:21 PM


ミサイル基地付近の携帯中継タワー、空軍基地付近を買い占めたPLA退役将軍、中国のスパイ活動への警戒心を高める米国。日本にとっても傍観刷る余裕はない。

 

フロリダ州ホームズビーチの携帯電話タワー。

Yvesmayrand/Wikimedia Commons

 

核ミサイル格納施設付近の中国製携帯電話関連機器に情報機関が懸念しているが、その主張に同意しない専門家もいる。

 

 

CNNの報道によると、米軍基地近くに設置された中国製電子機器は、米国防総省の陸上核抑止力に不可欠な通信回線を脅かす可能性がある。最新の調査結果で、FBIがかなりの警戒心を抱き、中国の技術の問題が大きくなりつつあるのを示唆している。

 

ケイティ・ボー・リリスによるCNN報道は、中国企業ファーウェイ製機器の使用を特に対象としたFBI調査が元だ。調査は、米国で急増中の中国のスパイ活動を受けてのもので、記事では「FBI含む連邦機関による防諜活動の熱狂」と表現している。

 

調査は、少なくとも2017年から行われ、米国の機密施設付近での中国による土地購入、スパイ組織、米国の軍事・政府インフラ近くに仕掛けられたとされる中国の監視装置などを調べた。

 

特に興味深く、懸念されるのは、中西部の米軍基地に近いセルタワーに設置されたファーウェイ機器をFBIが発見したとされることだ。CNNは、現職および元国家安全保障当局者を含む、この問題に詳しい「10人以上」の情報筋に話を聞いた。各自は、機器が「高度に秘匿された国防総省の通信を捕捉し、妨害できる」と認めたという。

 

グレートプレーンズの中央と北にあるミニットマンミサイル部隊六ヶ所を示す地図。黒字は非稼働の部隊、赤字は稼働中のミサイル部隊3個を表す。 National Park Service 

 

中でも重要なのは、核兵器を担当する米戦略司令部(USSTRATCOM)の通信が含まれていることだ。中西部には、コロラド州、モンタナ州、ノースダコタ州、ネブラスカ州、ワイオミング州の広大な大陸間弾道ミサイル(ICBM)配置場所がある。

 

2019年には、ミニッツマンIII ICBMのサイロが100基以上あるモンタナ州中部のマルムストロム空軍基地付近にファーウェイの携帯電話電波塔が設置されているのはがわかった。その後の報道では、コロラド州とモンタナ州、ネブラスカ州を通る州間高速25号線に沿い設置されているタワーが調査対象になったとされる。

 

 

2017年、マームストローム空軍基地が運用する発射施設。空軍資材司令部所属の第583ミサイル整備飛行隊は、大陸間弾道ミサイル兵器システムとしては史上初となる、マルムストロムの発射施設のプログラムデポ整備を完了した。 U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Delia Marchick

 

翌年には、ネブラスカ州のICBMサイロ付近のタワーが中国諜報活動に脆弱となるとの報道が出た。

 

機器が米軍にどう使用される可能性があるかは、すぐには明らかにならない。しかし、「盗聴および妨害」とあることから、FBIは高度に機密化された通信を中国が傍受したり、なりすましたりできるだけでなく、妨害もできると考えているようだ。この場合、通信路を妨害して閉鎖することも考えられるし、偽信号を送るなど、高度な技術を用いることも考えられる。しかし、こうしたシナリオの信憑性は、一部が疑問視している。カーネギー核政策プログラムの共同ディレクター、ジェームズ・アクトンは、携帯電話の周波数は、米軍の通信と全く異なると指摘する。

 

エンブリー・リドル航空大学(フロリダ州)の電波スペクトル研究所のエドゥアルド・ロハスはCNNに対し、軍事通信の盗聴は「実現可能」と語った。ただし、「FCCに準拠し、非公開バンドを聴きつつ、別のバンドを聴く起動トリガーを静かに待つ装置の作成は、技術的に難しくない 」と付け加えた。

 

ロイター通信によると、この問題に詳しいとされる匿名の人物は、中国が 「軍事訓練や基地や人員の準備状況に関する機密データを入手する」 懸念を指摘している。

 

しかし、USSTRATCOMが機密データを送信するために使用する暗号化メッセージを、中国の諜報機関が実際に解読できるかは不明だ。また、Bulletin of the Atomic Scientistsの非専属シニアフェローであるスティーブン・シュワーツStephen Schwartzが提起しているように、同司令部の通信は安全な地下固定回線を主に使い、堅牢で回復力のあるネットワークを実現しているという事実もある。

 

シュワーツはThe War Zoneに以下語った。「ICBMに関しての懸念は、全く信用できない。携帯電話電波塔にあるものは、ICBM部隊が使う地下の固定電話を妨害することはおろか、傍受もできないだろう。バックアップの無線や衛星通信システムに干渉する可能性はどうか?その専門家ではないので......たぶんとしかいいようがない。しかし、繰り返すが、各チャンネルは地下回線が使用不能になった場合にのみ利用され、それは核戦争か、大規模なサイバー攻撃でしか起こり得ない」。

 

携帯電話の盗聴と同様に、FBIは高解像度の監視カメラを調査していると伝えらる。タワーに取り付けられ、天候や交通情報のライブストリームを提供するため使用されている。匿名の関係者にれば、こうしたカメラが、州間高速25号線沿いのほぼ同じ地域で、米軍車両の動きを監視するため使用される懸念がある。

 

シュワーツはさらに続けた。「タワーに付けたカメラから、準オープンソースの情報を得られるかもしれません。例えば、定期的な飛行テストの前後にミサイルを取り外したり交換するのに使われる大型トラック、核弾頭を基地に輸送するのに使われる装甲車、発射隊が仕事に到着または出発する時、またはサイロにメンテナンスチームがいる時を(ミサイルが数時間使用できなくなることを意味して)リアルタイムで見られるかもしれません」。

 

しかし、5つの州の数千平方マイルに散らばる400機のミニットマンIIIが24時間365日警戒態勢にあることを考えれば、ほんの一握りが使用不可能であるとわかっても、飛んでくる脅威の計算に変わりはない。唯一重大な脅威となるのは、タワーに設置された機器で、ICBMを運用・維持する空軍の職員や民間の請負業者など、携帯電話ネットワークを利用したりPing送信する動きを監視する可能性だ。そのデータから、誰がどのシフトで勤務しているか、どのルートで移動しているか、どこに住んでいるか、誰と知り合いか、どの地元企業に出入りしているか、などがわかる。そのデジタルデータを使えば、ICBMや核戦争計画全般に関する秘密情報にアクセスできる人物を特定し、勧誘し、あるいは利用できるかもしれない。しかし、報告書によると、FBI含むセキュリティ専門家の最大の懸念はその点ではない。

 

また、中国が当該機器を何らかの不正な目的で使用している証拠は今のところないが、可能性は残る。しかし一方で、情報当局が、米国の機密データの流れを傍受し妨害する中国の能力に対処していることは明らかだ。

CNNによると、中国政府は米国に対するスパイ行為を「強く否定」している。

 

一方、ファーウェイはCNNに対し、同社機器は国防総省の通信を傍受できないと述べている。また、同社は、米国における同社の技術は全点、最初に連邦通信委員会(FCC)でテストされ、承認されていると述べています。

しかし、CNNの取材に応じた、捜査の詳細を知る元FBI職員など情報筋はこれに反論している。ファーウェイの機器について、関係者はこう語っている。「これは、我々が行っている最も機密性の高い事柄に関わる。核の三本柱での指揮統制能力に影響を与える。 "BFD "のカテゴリーに入る」。

 

それが真実で、セルタワー設備がUSSTRATCOM通信を盗聴できるなら、範囲内ならば、他の軍事・商業チャンネルからデータを中国が密かに収集できることになる。ファーウェイは過去にも、オーストラリア含む世界各国の携帯電話通話を監視していたとして訴えられている。オランダでは、当時の首相の会話にアクセスできた可能性があるとされた。

 

イギリスがファーウェイに5Gインフラを構築させる計画を立てた際、アメリカは「イギリスの主権を危険にさらす可能性がある」と宣言し、「イギリスの決定は、アメリカ空軍のF-35ステルス戦闘機の今後の配備を妨げる可能性がある」と警告する上院議員もあった。結局、英国は決定を覆した。

 

最新の調査中に、米国政府はファーウェイを中心とした潜在的なスパイ行為を防ぐ行動を取っていた。同社が国家安全保障で潜在的な脅威と見なされ始めたため、米国規制当局が介入したのだ。以来、ファーウェイは米国の捜査に何度も巻き込まれ、貿易制限の対象となった。

 

2019年には、ファーウェイを(中国企業のZTEとともに)ブラックリスト化し、農村部での携帯電話サービス普及を目的とした連邦政府補助金を使って、米国通信会社が同社機器を購入することを阻止するなどの措置がとられた。

 

その1年後に、ファーウェイとZTEの携帯電話技術を米国農村部の通信ネットワークから排除する目的で、さらなる措置が実施された。しかし、この措置は行き詰まり、影響を受けた通信会社は、連邦政府の償還金をまだ受け取っていない。通信機器約2万4,000台が影響を受けたとされる。

 

バイデン政権下で、国家安全保障当局は、米国の通信インフラ内でファーウェイが果たす役割に批判的な目を向け続けている。この調査は現在進行中だが、最終的には米国通信事業者が自社のネットワークからファーウェイ製機器の排除を求める判決につながる可能性もある。

 

中国がUSSTRATCOMやその他の重要な通信を盗聴したり妨害したりする能力の実態がどうであれ、最新調査が公開された事実は、北京の推定スパイ戦術に対する新しいアプローチを反映しています。FBI長官クリストファー・レイによると、米情報当局は毎12時間で新たな中国防諜調査を開始している。ここには大きな問題だと判断されるサイバーセフトは含まれない。

 

中国は「主要国すべてを合わせたより大規模なハッキングプログラムを運用しており、すべての国を合わせたよりも多くの米国人の個人データや企業データを盗んでいる」とレイ長官は述べている。

 

携帯電話の電波塔に搭載されたファーウェイ技術を通じて、中国がスパイ活動を行っている証拠は提供されていないが、捜査当局は、こうしたシステムが特定地域に拡散していることに疑念を特に抱いているようだ。米軍基地に近いだけでなく、ファーウェイが採算が合わないはずの地域に設置されている。

 

注目すべきは、他にも中西部にある米空軍のICBM施設が外国勢力による諜報活動に懸念が出ていることだ。

 

これには、中国企業が該当地域に近い土地を買い占めているかの調査も含む。CNNによると、「ユタ州の非常に機密性の高い軍事実験施設の近く」の土地と明らかになって、売却が中止された事例が少なくとも1件あったという。テキサス州ラフリン空軍基地に隣接する200平方マイルの土地を中国人民解放軍の元将軍が所有していることが明らかになり、同様の心配が浮上した。

 

一方、ノースダコタ州のグランドフォークス空軍基地は、以前はICBMの基地で、現在はRQ-4グローバルホーク偵察機など機材を運営しているが、中国関連で別の懸念になっている。中国の富峰集団が近くに建設を予定していたトウモロコシ製粉工場は、スパイ活動の危険性があるとして、監視対象となっている。そのプロジェクトの行方は、米国政府審査によって決定される。

 

これまでもThe War Zoneは、コロラド州東部とネブラスカ州、カンザス州の隣接地域で、法執行機関がドローンの編隊の報告を相次いで受けたことについても深く考察してきた。この「謎のドローン」事件は、少なくとも二名の米国上院議員、コロラド州知事、州公安機関が懸念を表明するに至った。

 

その中心には、相次ぐドローンを目撃した、F.E. ウォーレン空軍基地の第90警備隊グループがあった。第90警備隊は、ウォーレン空軍基地と第90ミサイル飛行隊が運用するミニットマンIII ICBM150機の警備を担当する。


連邦航空局(FAA)は2019年12月と2020年1月に多くの信頼できる目撃者が報告したドローンの飛行隊列の起源を特定できなかった。


米国の戦略的態勢でICBMの重要性は軽視できず、それを考慮すれば、この分野が潜在的なスパイ行為や高いレベルの監視の対象となっても驚くべきことではない。


こうした施設へのスパイ活動の疑いに中国がどう関わっているかは、少なくとも米国の情報機関が確固たる証拠を提示するまでは、疑問の余地がある。とはいえ、北京に対する疑惑、特にアメリカのICBMに関する疑惑は、長い実績がある。ここでもまた、スティーブン・シュワーツが観察するように、リスクの真の大きさを注意深く見る必要がある。


「仮に、中国が何らかの方法でICBM全体を危険にさらし、使用を阻止または遅延させたとしても、太平洋を拠点とする8隻のオハイオ級弾道ミサイル潜水艦には、それぞれ4〜5個の弾頭を搭載する計160本のトライデントII D5/LE SLBMがあり、中国を消滅させられ」。そして、ICBMの一部は中国を狙うかもしれないが、最も極端な状況、つまり全面核戦争以外では、中国に到達するためにまずロシアを飛び越えねばならず、これは非常に挑発的で危険になるため、「そのために使うことはまずないだろう 」と指摘している。


もちろん、太平洋と大西洋で抑止パトロールを常時行う潜水艦は数隻だけだが、潜水艦による二次攻撃抑止力は極めて強固で、爆撃機は柔軟だが生存能力が劣る。しかし、国防総省にとってICBMは戦略的優先度が最も高く、安全保障上で脅威の可能性があれば、極めて深刻に受け止める。


今回の疑惑の真偽はともかく、最近の動向は、米国内で疑われる中国の諜報活動の詳細を公表する際に、米国が透明性の高いアプローチを追求していることを示唆している。このことを考えると、今後、ICBMやその他の米軍インフラへの中国活動について、証言がより多く得られる可能性は十分にある。■


Nuclear Experts Question Possible Effects Of Chinese Cell Towers On U.S. Missile Silos

BYTHOMAS NEWDICKJUL 25, 2022 4:48 PM

THE WAR ZONE


2022年7月25日月曜日

11章 ハインライン著SIXTH COLUMN いよいよパンアジア占領軍への総攻撃へ。次回で完結です

 第11章 

カルフーンはシタデルに戻るとすぐに、アードモアを呼び止めた。「アードモア少佐、」と咳払いをしながら言った。「重要な問題について、話し合うためにお待ちしてました」。この男は、会議のために最も忌まわしい時を選べるんだと、アードモアは思った。「事態の急展開を期待しているのでしょう」

  「事態は収束に向かっている、そうだ」

  「問題はまもなく決着がつくと思います。 あなたの部下のトーマスから欲しい詳細情報が得られなかった。あいつは協力的ではなく、あなたが不在のときになぜあなたの代理の地位に押し上げたのか分からないが、それは重要なことではない。言いたかったのは、こういうことなんです。アジアからの侵略者を追い払った後の政府の形態について、考えたことはありますか?」この男はいったい何を言いたいのだろう。「特にないな。もちろん、暫定的な軍政のようなものは必要だろう。その間に、生き残っている昔の役人をすべて探し出し、仕事に復帰させ、国政選挙を手配します。地元の神官たちがいるから、そんなに難しくはないだろう」。

 カルフーンの眉がつり上がった。「真剣に、選挙などという時代遅れで非効率的なものに戻ろうと本気で考えていると言うんですか」。

 アードモアはじっとにらんだ。「何が言いたいんだ?」

 「明らかですよ。過去の愚かな習慣を断ち切り、真に科学的な統治を行うまたとない機会です。大衆の心をつかむ技能ではなく、知性と科学面の訓練から選んだひとりによる」

 「独裁者というわけか?そんな男がどこにいる」アードモアの声は無愛想で、危険なほど穏やかだった。

 カルフーンは何も言わなかったが、わずかな自虐的な身振りで、適切な人物を探すのにアードモアがそれほど苦労はしないだろうと示した。

 アードモアはカルフーンの服従の意思に気づかないことにした。「気にしないでくれ」と彼は言ったが声にはもはや優しさはなく、鋭かった。「カルフーン大佐、あなたの義務を思い出させなければならないのは嫌ですが、これを理解してほしい。ふたりは軍人です。政治に口を出すのは軍人の仕事ではありません。われわれは憲法の恩恵を受けて任務を遂行しているのであり、唯一の義務はその憲法に対するものです。もし国民が政府の合理化を望むなら、我々に知らせてくれるだろう。その間は、あなたにも私にも軍の任務がある。任務を遂行せよ」

 カルフーンは、言葉を発しそうだった。アードモアは遮った。「以上です。命令を遂行しなさい!」。 カルフーンは突然振り返って立ち去った。アードモアは情報部長を呼び寄せた。「トーマス、私はカルフーン大佐の動きを綿密に、しかし慎重にチェックして欲しい」と言った。

 「了解しました」。

 「最後の偵察車が到着しました」。 

 「よろしい 集計はどうなっている?」 アードモアは尋ねた。

 「ちょっとお待ちを... この最後の1台で......合計68回の襲撃で1172人の捕虜を確保しました。何人かは二重計上... 」

 「犠牲者は?」

 「パンアジア人だけです」

 「ちくしょう、そういうことだ!いや、もちろん部下にという意味だ」。

 「ひとりもいません、少佐。一人暗闇で階段から落ちて腕を折りました」。

 「我慢できるだろう。東海岸の都市から、まもなく現地デモの様子が報告されるだろう。来たら教えてくれ」。

 「そうします 」

 「出るとき部下に来るよう伝えてもらえるかな?カフェイン錠剤を送りたいんだが、自分でも飲んだ方がいい。今日は大事な日になりそうだ」。

 「いい考えです、少佐」。通信兵は外に出た。

 全国68の都市で、4号作戦「無秩序化」の第2段階でデモの準備が進められていた。オクラホマシティの神官は、地元の仕事の一部をタクシー運転手のパトリック・ミンコウスキーと、小売商ジョン・W・スマイスに任せていた。二人はオクラホマ・シティのパンアジア管理者「輔佐の声」の足首に脚鉄を装着する作業に従事していた。東洋人のぐったりした裸体は、神殿下の作業場にある長いテーブルの上に横たわっていた。

 ミンコウスキーが言った。「これが、熱器具を使わずにできる最高のリベットの仕事だ。どうせ、取り外すのに時間がかかるだろう。ステンシルはどこだ?」

 「肘の辺りだ。アイザック大尉は、俺たちの仕事が終わったら、継ぎ目を部下が溶接すると言ってたよな。

心配いらないよ。神官をアイザック大尉と呼ぶのは変な気がしないか?俺たちは正式に軍隊にいるのかな?」

 「平たい顔の猿どもをやっつけるチャンスになるんだったら、どうでもいい。アイザックが陸軍士官として認めるんなら、俺たちはそうなんだろう。彼は新兵を集められる おい、このステンシルは背中に貼るか、それとも腹に貼るか?」

 「両脇に貼ったらどうかな。でも、この軍隊の仕事って、おかしいと思わないか?ある日教会に行ったら、次は軍服だと言われ、宣誓させられたんだよね」

 「個人的には気に入ってる」とミンコウスキーはコメントした。「ミンコウスキー軍曹......いい響きだ。ミンコウスキー軍曹か。教会に関しては、俺はこの偉大なる神のモタビジネスを全く信用していない。タダ飯と安息につられてきたんだ」。

 彼はアジア人の背中からステンシルを取り出した。スマイスは、なぞった表意文字のデザインを速乾性のあるインクで塗り始めた。「あの異教徒の文字は何を意味するのかな?聞こえなかった?」と、スマイスが聞いてきた。

 ミンコウスキーは嬉しそうに笑った。「俺をからかったりしないよな?」

 「いや、確かに。俺は通信室にいた。マザー・テンプル、つまり総本部から設計図を受け取っていたときだった。もう一つ面白いことがあるんだ。スクリーンに写っていたのはこのサルみたいなアジア人だった」。スマイスは無意識の輔佐を示した。「でも、皆そいつをダウナー大尉と呼び、仲間のように扱っていた。どう思う?」

 「何とも言えないね。味方なんだろう、さもなければ本部で自由に動けるはずがない。塗料の残りはどうする?」


 アイザック大尉は進捗状況を見に来て、すぐ気づいた。笑いをこらえて言った。「指示を少し詳しく実行したようだね」と、努めて冷静な口調でコメントした。

 ミンコウスキーは、「絵の具を無駄にするのはもったいないと思ったんです」と言い訳をした。「それに、あれでは裸のままでしたから」。

「それは意見の分かれるところだ。個人的には、今の方が裸に見えると思う。この話はもういい。いそいでこいつの髪の毛を剃るんだ。はやくここを出たい」

 ミンコウスキーとスマイスは、5分後に寺院のドアの前で待っていた。床の上で毛布にくるまっていた。二人は、二輪ステーションワゴンが寺院の前の縁石に乗り上げ、急ブレーキをかけるのを見た。運転席の窓からアイザック大尉の顔が見えた。ミンコウスキーはタバコの吸殻を投げ捨て足元のくぐもった人物の肩を掴み、スマイスがその足を掴んだ。不器用に、そして重そうに車に乗り込んだ。

 アイザック大尉は「そいつを後ろに乗せろ」と命令した。ミンコウスキーがハンドルを握り、アイザックとスマイスが後ろにしゃがみ込んで、懸案のデモンストレーションを行った。

 「パンアジア人がたくさん集まっている場所を探してくれ」と大尉は言った。「アメリカ人がいれば、なおいい」。

 高速で走り、誰にも注意を払わないこと。困ったことがあったら、部下に相談しよう、彼はミンコウスキーの肩越しに通りを眺めした。

 車を前に走らせながら聞いた。「大尉、どうやって

こんなに早く拾えたんですか?」

 「東洋人のお友達を何人かノックアウトしたんだ」アイザックは簡潔に答えた。「信号に気をつけろ!」。

 「了解!」。車は、対向車線の下をくぐり抜けた。パンアジア警察官が手を振っている。

 数秒後、ミンコウスキーが「隊長、この先のあそこはどうですか、大尉」とあごをひいて指差した。市民会館広場だ。

 「OK」ミンコウスキーは、車の床に乗る無言の男の上にかがみ込む。

 アジア人がもがき始めた。スマイスは彼の上に乗り、毛布を頭と肩にしっかりとかぶせた。「場所を選べ。止まったら、準備する」。

 腹がよじれるほどで急停車した。スマイスは後部ドアを開けた。彼とアイザックは毛布の角をつかみ、今は意識のある役人を通りに転がした。「そいつを持って行け」

 車は前に飛び出し、驚きとスキャンダルにまみれたアジア人たちは、突然の全く不名誉な状況に精一杯対処することになった。20分後、アードモアのもとに、簡単ではあるが、彼らの功績を記した報告書が届けられた。彼は目を通すと、トーマスに渡した。「想像力豊かなクルーだな、ジェフ」。

 トーマスは報告書を受け取ると、それを読み、同意するように頷いた。「みんなそうだといいんですが...。

細かい指示を出すべきだったかもしれませんね」。

 「そうは思わないな。細かすぎる指示は主体性を失わせる。これで、みんなにもっと迷惑な方法を考えてやぶにらみの領主の機嫌を損ねようと努力するので、非常に愉快で独創的な結果を期待できるんだ」。

 本部時間の午前9時までに、パンアジアの主要幹部70名あまり全員は生還した。しかし永久に、耐え難いほどの不名誉を背負い、同胞のもとへ戻された。手元にあるデータを見る限りでは、どのケースでもアジア人が今回の問題を直接モタ教団と関連付ける理由はなかった。それは単なる破局であり、最悪の心理的破局であった。夜中に何の前触れもなく、いきなり襲撃されたのだ。

 「少佐、まだ第3段階の時間を決めていませんね」トーマスは報告がすべて終わると、アードモアに言った。

 「分かっている。今から2時間以内ではない。やつらに何が起こったかをわからせるために、少し時間を与えてやらないとね。士気をなくす力は、何倍にもなる。公然と恥をかかされたことに気づくだろう。このことは、俺たちがやつらの全国本部をほぼ限界まで機能不全に陥れた事実とあわせて、集団ヒステリー事例を生み出すはずだ。しかし、それを広める時間がいるんだ。ダウナーはデッキにいるか?」

 「通信監視室で待機しています」

 「彼から俺のオフィスへの中継回路を切断するよう伝えてくれ。 何を拾ってるかを聞きたいんだ」。

 トーマスは事務所間の通信機でダイヤルし、簡単に話をした。間もなくダウナーのアードモアの机のスクリーンにアジア人らしき人物が映し出された。アードモアは話しかけた。ダウナーは片方の耳からイヤホンをはずし、訊ねるような視線を送った。

 「まだ何も出てこないのかと言ったんだ」とアードモア。

 「一部だけです。やつらはかなり騒いでます。私の翻訳は、缶詰にしました」。彼は親指で顔の前にぶら下がったマイクに向かって親指を立てた。

「サンフランシスコで宮殿を...」と付け加えた。

 「邪魔させないでくれ」アードモアはそう言って、自分の送信機を閉じた。

「そこにいる皇帝輔佐は死んだと報告されている。サンフランシスコは何らかの認可を求めている。ちょっと待ってくれ。通信室から別の波長を試せと言っているんだ。あったあった。皇太子の信号を使っている。 だが、州総督の周波数だ。何を言っているのかわからない。

暗号化されているのか、知らない方言なのか、何を言っているのかわからない。監視員、別の波帯を試してみてくれ。そのバンドは時間を無駄にするだけだ。...その方がいい」。ダウナーの顔が真剣な顔つきになり、突然輝きだした。

 「隊長、これを聞いてください。湾岸地域の総督が正気を失い、後任がほしいと言っています。もう一人、宮殿の回路に問題があるのか、宮殿に行く方法を知りたいというものです。反乱を報告したい......」。

 アードモアが切り返した。「どこだ?」

 「聞き取れませんでした。どの周波数も混線してて、半分支離滅裂です。彼らは互いにクリアする時間を与えず、すぐ別のメッセージを送ってくる」。

 アードモアのオフィスのドアを優しくノックする音がした。ドアが数インチ開き、ブルックス博士が現れた。「お邪魔してよろしいですか?」

 「ああ、いいとも、博士。入って入って。ダウナー大尉が無線で何を拾うか聞いていたんだ」。

 「彼のような翻訳家が何人もいないのが残念です」

 「そうなんだが、一般的な印象しか得られないようなんだ」。彼らはダウナーが拾ったものを1時間近く聞いていたが、ほとんどが支離滅裂なメッセージだった。しかし、宮殿組織への妨害工作と、高位管理者の不名誉がもたらす多大な感情的衝撃が、次第に明らかになった。パンアジア政府の機能に支障をきたしている。ダウナーはついに言った。「ちょっと待ってください、これは一般命令です。メッセージはすべて暗号化するようにとのことです」。

 アードモアはトーマスをちらりと見た。「その通りだと思うよ、ジェフ。馬のセンスのある人おそらく我々の古い友人の皇太子が、馬の分別と冷静さをもって、元の姿に戻そうとしているのだろう。あいつを阻止する時だ」。 通信室に電話した。「よし、スティーブズ。奴らに力を与えろ!」

 「ジャムるんですか」

 「そうだ。回路A経由で全寺院に警告し、一斉実行させるんだ」

 「今、待機中です。実行しますか?」

 「よろしい、実行!」

 ウィルキーは、寺院の投影機で驚異的な出力を調整する簡単な装置を開発した。この装置で、神殿の投影機から出る膨大なパワーを、必要ならラジオ放送で未分化の電磁波に整流できる。太陽黒点、暴風雨、オーロラのように、すべてが連動して動き出す。

 ダウナーがヘッドホンを耳から外すのが見えた。「頼むから......なぜ誰も警告してくれなかったんだ?警告してくれよ」。彼は片方のレシーバーを慎重に耳に当て直すと、首を振った。

 「死んだ。全国のすべての受信機を焼き尽くしたに違いない」。

アードモアは「そうかもしれん。でも、妨害は続けるんだ」と応じた。その時点で、アメリカ全土に通信システムは存在しなくなった。あるのはモタ教団のパララジオだけだった。アジア支配者たちは、有線電話も使えなくなった。不要になった地上線は、とっくの昔に銅線として処分されていた。

 「隊長、あとどのくらいですか」とトーマスが聞いた。

 「長くはかからん。国中でとんでもないことが起こっているとあいつらにわからせるんだ。俺達はあいつらをばらばらにした。パニックになるはずだ。パニックが

さらに国中のパンアジア人に広がるようにしたい。熟した頃合いを見て、一泡吹かせるんだ!」

 「どうやって判断するんですか?」

 「わからん。カンだよ。あわてさせてからお仕置きをするんだ。一時間もたたないうちにね」

 ブルックス博士は緊張して口を開いた。「問題がすべて落ち着けば、確かに安心ですね」

 アードモアが彼に向き直った。「一度きりで 物事が解決すると思うな」

 「しかし、確かに...パナシアンを決定的に打ち負かせば...」

 「そこが間違いなんだ」。神経質になっていることが、無愛想な態度に表れている。「一度きりで決着をつけようとしたから、こんなことになったんだ......。アジアの脅威に不干渉条約と西海岸の大規模な防衛で対処した。でも北極から攻めてきた。

 「もっとよく知るべきだった。昔のフランス共和国は

ベルサイユ条約で、一つのパターンに固定しようとした。それがうまくいかなくなると、マジノ線を作り、その陰で眠った。その結果どうなった?最後は大敗北だよ。

 「人生は動的であり、静的にできない。『その後、幸せに暮らしましたとさ』のおとぎ話のような...」 ベルが鳴り響き、緊急透視装置が赤く点滅し、中断された。通信監視員の顔が反射鏡スクリーンに映し出された。

 「アードモア少佐!」。

 そいつが消えて、フランク・ミツイが映し出された。ミツイは、不安げに顔を歪めた。「少佐!」彼は叫んだ。「カルフーン大佐がおかしくなりました!」。

 「落ち着け、 何があったんだ?」「書き置きを渡して寺院に行ったんです。自分をモタ神と思っています」。

(第11章おわり)





ウクライナ戦争の空戦で今のところ判明している教訓とは

 

Su-35 over Ukraine. Image Credit: TASS/Russian state media.

 

シアによるウクライナ侵攻から5カ月になるが、空の戦闘から得られる教訓とは?

 

 

SEADは難易度が高い

 

アナリストにとって、戦争開始数週間で最も驚くべき展開となったのは、ロシア空軍がウクライナ全域で航空優勢を確立できず、自由に活動できなかったことだ。

 イラク、アフガニスタン、リビアでのアメリカやNATOの戦争で、西側航空機が敵機の上空や敵の防御ミサイルを素早く掃射した経験から想定されていた。

 ウクライナ上空でのロシア軍機はウクライナの防衛システムを識別し、破壊するのに苦労している。ウクライナのSAMシステムへのロシアの攻撃は、空からではなく、陸上で成功したものが多い。

 また、ジャスティン・ブロンが指摘しているように、露・ウクライナ戦争で明らかになったSEADの問題は、西側諸国にとって将来の困難を予見させるものかもしれない。

 現時点では、敵のSAMネットワークに対抗できる自信があるのは米国だけだ。実際、現代の防空網を効果的に使えば、最近の紛争では米国でも許容できない程度の航空部隊の消耗が生まれるようである。

 

制空権の確立は難しい

 

現在でもロシアはウクライナで制空権を確立できていない。ベトナムのように政治的なものではなく、ウクライナの奥地にある飛行場や中継地などを攻撃することに何の抵抗もないのにロシアは問題に直面している。

 しかも、安全かつ効果的に攻撃する手段がない。ウクライナの戦闘機は、防御的なミサイル網の中や自国基地の近くで、ロシアに数的優位があっても、ロシアに対して自分たちで対処できている。

 ウクライナのパイロットは不利な状況で戦闘を避けることができ(実際避けている)、ロシアは長距離攻撃で交戦を求めている。つまり、数的優位がないにもかかわらず、ウクライナ空軍は飛行を続け、ウクライナの陸と海の目標を支援する作戦に携わることができるのだ。

 

人的資本と産業資本

 

航空兵力の増強は簡単にいかない。ロシアもウクライナも、航空兵力のストックとフローに苦労している。ウクライナ側では、新型機や旧型機の新機種でパイロットや整備士を養成する必要があるため、キーウに既製の空軍機材を供給する構想は急速に崩れ去った。

 また、スペアパーツや整備施設の不足から、ウクライナの保有する航空機を使い続けることは困難であったが、東欧から航空機の輸入が開始され、この問題は少し緩和されている。現在の航空機は、1960年代のジェット機と比較しても、複雑さが十分に際立っており、有能なパイロットが操縦できるまでのリードタイムは、従来の数ヶ月が数年に延びている。このため、ウクライナに新型機を納入する戦略には、制度的にも産業的にも相当の努力が必要となる。

 これは、ロシアの戦略にも影響を及ぼしている。既存の航空機材を相当数保有しているにもかかわらず、ロシアは消耗の激しい攻撃に航空機を投入する余裕がない。ロシアの産業界は航空機を代替できず、ロシアの訓練インフラはパイロットを代替できない。ロシアはこの戦争で既存機材を消耗したくなく、この決定が航空戦力の使用範囲を限定している。

 

無人機の貢献

 

ウクライナの無人偵察機は、紛争初期の無謀なロシアの攻勢を鈍らせ、最終的には崩壊させるのに貢献した。安価で、消耗品扱いのこれらの各機は、絶望的な時に重要な役割を果たした。戦争が進むにつれ、無人機の主な貢献はTB2による派手な攻撃より、歩兵や砲兵隊が運用する多様なUAVファミリーによる短距離偵察になったようだ。

 しかし、ここでも反撃がある。ロシアは電子対策を飛躍的に向上させており、ウクライナのUAV制御を混乱させ、破壊を容易にしている。ドンバス地方にロシア軍が密集しているため、対空兵器各種を投入でき、各高度の無人機に対処している。全体として、今回の戦闘で無人機はこれまで偵察機や軽攻撃機が果たした役割と非常によく似ているが、より大型で高速の固定翼機の貢献を完全に置き換えるまでにはなっていない。

 

結語


ウクライナでの空戦は、我々が通常使うどのような意味で決定的な結果が生まれていない。ロシアもウクライナも決定的な勝利を主張できない。前者が後者を撃破したわけではなく、後者が前者から領空を隔離したわけでもない。同時に、航空戦力の失敗を論じるのは誤りだ。航空戦力の任務(長距離攻撃から近接航空支援、偵察、輸送まで)の成功は、戦争全体とまではいかなくとも、局地的な勝利(キーウ攻勢の頓挫、ドンバスでのロシアの攻勢の成功)に欠かせないものだった。

 今後数カ月、ウクライナが西側戦力を活用して航空優勢(あるいは少なくとも同等)を勝ち取れるかどうかが、戦争の行方に劇的な影響を与えそうだ。■

 

The Air War over Ukraine: Why Can't Russia or Ukraine Claim Victory? - 19FortyFive

ByRobert Farley

 

WRITTEN BYRobert Farley

Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph.D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.