2022年3月2日水曜日

放棄ロシア軍車両をトラクターで牽引し、ウクライナ軍に協力する農民...BTRの操作手順を公開するロシア人の勇気ある動き....ロシア軍がどんどん追い詰められていく

 

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Tractor Ukraine Russia

TWITTER SCREENCAP

 

本ブログではロシア語のキエフではなく、ウクライナ語に近いキーフと表記しています。メディア関係者も慣行にとらわれず早く変更していただきたいと思います

 

シアのウクライナ侵攻は6日目になったが、ウクライナの兵士や市民が困難な中、占領軍に立ち向かっているとの証言が相次いでいる。軍事面では、スネーク島の英雄的な無益な防衛や、キーフの幽霊と呼ばれる神話的な戦闘機エースなどのエピソードが目立つ。一般市民では、ひまわり女、ウクライナ戦車男、そして今回、放棄されたロシア軍用車両を徴用した一般市民が話題になっている。

 

 

こうした動画がソーシャルメディアに出回っている。一方的な結果になると予想されていた紛争で、ロシア軍が直面する予想外の事態を反映している。ウクライナ軍は戦場での成功に加え、広報キャンペーンを展開している。プロパガンダや士気高揚効果ねらいがあることは明らかだ。

 

ロシアの装甲車や航空機の損失が積み重なり、ウクライナ当局や親ウクライナのアカウントがソーシャルメディア上に公開されている。ビデオや写真には、ウクライナ軍のTB2ドローンが破壊したロシアの車両列、泥沼にはまり込んだ車両、ミサイルを装備したチームによって破壊された車両、侵略軍が直面する物流渋滞の一部として燃料切れで立ち往生した車両が写っている。すべて、紛争の強力なシンボルとなっているが、中でも驚かされるのは、ロシア軍の補給計画の欠如ぶりだ。

 

地上戦が急進展する中、ロシア軍の武器や車両がウクライナ住民の手に渡ることが増えており、中には自らの手で装甲車や戦闘車両を牽引する者も出てきたようだ。

 

背後の事情はほとんどわかっていないが、農業トラクターでウクライナ農民がロシア車両を牽引している。

 

しかし、民間人が自発的に行動しているのか、あるいはウクライナ軍や現地組織のため鹵獲車両や損傷車両を移動させているのかは不明だ。また、ウクライナ軍自身が鹵獲車両の移動に民間トラクターを利用し、軍用車両はより重要な業務に充てているのか。

 

ロシア軍とウクライナ軍の装備には共通点が多く、車両や装備品にも大まかな共通点があることが要注意だ。そのためウクライナは、下の写真にあるBTR-82Aをはじめ、鹵獲したロシア製装甲兵員輸送車を使用できる。

 

同時に共通性のため、徴用車両がロシア軍と誤認される危険性がある。一方、ウクライナ軍は以前から、ロシア軍が鹵獲したウクライナ車両を利用してウクライナ国内に潜入する可能性があると警告を発してきた。

 

VIA TWITTER

ウクライナ軍公式ツイッターより。ロシア軍がウクライナ国旗を掲げて内部に侵入する恐れがあると警告している。

 

 

時間が経てば、ロシア製の車両がどのように民間人の手に渡ったことが、どのような経緯で起こったのか、もう少し詳しくわかるといいのだが......。

とりあえず、確認できたものを紹介しよう。

 

 

 

ロシアのインフルエンサーでメカニックのNastya Tyman は、放置された運転可能な BTR シリーズ APCを偶然見つけた一般市民向けに基本の操作手順を説明するビデオを公開し、話題になっている。Tymanは昨年、祖国防衛の日にこのビデオを作ったが、2月27日に再投稿し、ウクライナ紛争で目撃されたすべての装甲車両に言及した導入部を作り直している

 

新バージョンのビデオでは「放棄されたBTRに出会った場合を想定し、起動方法を紹介します」と字幕があり、Tymanは嬉々として装甲車の操作方法を視聴者に教えている。侵略への抗議を間接的に伝える理由があるのか不明だ。

 

ウクライナ紛争は、特に市街地戦で、極端な残虐性と、シュールな場面が奇妙に混在している。戦闘の恐怖をリアルタイムで見られるのだから、ウクライナ人がロシア軍戦闘車両を牽引するシーンが反響を呼んだのも無理はない。

 

今後、さらに多くのロシア軍車両がキーフ攻撃に動員され、増援が予想される中、同様の事件が繰り返されることは必至だ。■

 

Ukrainians Citizens Are Taking It Upon Themselves To Capture Russian Military Vehicles

These actions are symbolic of the problems that have slowed the Russian advance and the will of average Ukrainians to resist the invasion.

BY THOMAS NEWDICK MARCH 1, 2022

 


トルコがボスポラス海峡等の軍艦通航を禁止すると通告。ロシア艦艇の通航を止め、ロシア-ウクライナ戦争のエスカレーションを回避するねらい。

 Montreux Convention

ロシア揚陸艦RFS Kaliningrad (102)ガダルダネス海峡を通行した。 February 8th. Photograph copyright Yörük Işık, with permission.


ルコ外相メブルト・カヴソグルMevlut Cavusogluがダルダネス、ボスポラス両海峡の軍艦通行を禁じると各国に発表した。

 

トルコ外相による重大発表は2月28日夜にトルコ内閣が検討した内容を受けたもので、同国はモントルー条約で両海峡の航行の管理権限を有している。


外相はトルコ政府から黒海に接するか問わずあらゆる国に向けロシア-ウクライナ戦が続く間は両海峡を通過する黒海への移動は認めないと発表した。同外相によればこれは初の規定の実施措置だという。


「トルコは今回の軍事衝突に中立であり、当事国の軍艦航行を規制する権限を有する。黒海内の母港への回航では海峡通過を認めるが、あくまでもモントルー条約に従う。黒海に面する、面しないを問わずあらゆる国に警告する。軍艦の通行は認められない」


同外相によればロシア政府からトルコがモントルー条約を遵守するのかとの問い合わせが来ていたという。


トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンRecep Tayyip Erdoganは域内のエスカレーション回避の意味でモントルー条約の意義を認め、トルコが国際枠組み内で責務を果たすと強調した。背景には国連、NATO、EUが念頭にあり、ロシアによる侵攻は「受け入れがたい」と発言した。


「トルコは1936年モントルー条約に基づきトルコ海峡の権限を行使し、ロシア・ウクライナ『危機』をこれ以上エスカレートさせない」(エルドアン大統領)


2月27日のCNNトルコのインタビューで、カヴソグル外相は、「両国の対立を本格的な戦争とみなしている」と述べ、今回の決定を先に示唆していた。外相はモントルー条約第19条に言及し、戦時中のトルコによる海峡管理を強調した。


条約第19条は次の通り。

戦時下において、トルコが交戦国ではないとして、軍艦は、第 10 条から第 18 条に定める条件(トン数制限及び通過規則に関する条文)で、海峡の通過及び航行で完全な自由を享受するものとする。


但し、交戦国に属する軍艦は、この条約第25 条の適用から生ずる場合及び国際連盟規約の枠内で締結され、かつ、同規約第18 条の規定に従い登録及び公示されたトルコを拘束する相互援助条約により侵略の被害国に提供される援助の場合出ない場合は、海峡通過できない。


前項に規定する例外的な場合では、本条約第十条から第十八条に定める制限は、適用されない。


2.上記第2項に定める通航の禁止にかかわらず、交戦国に属する軍艦は、黒海沿岸国であるかを問わず、その基地から分離した場合には、同基地に復航できる。


交戦国に属する軍艦は、海峡において、捕獲、臨検及び捜索の権利の行使、又は敵対行為をしてはならない。


外相は19条に言及したが、条文は交戦国の軍艦を禁止措置の対象とする。その結果、トルコ政府は、第21条の権利行使を行ったと思われる。第21条は、トルコ政府が戦争の危険が差し迫っていると感じた場合、軍艦の通航は完全にトルコ政府の裁量によるものとし、海峡での拿捕、臨検捜索権の行使、あらゆる敵対行為を禁止する、と定めている。


第 21 条:トルコが急迫した戦争の危険にさらされていると認めた場合には、トルコは、本条約 第 20 条〔戦時において、交戦国であるトルコは、第 10 条から第 18 条までの規定を適用せず、軍艦の通航は、トルコ政府の裁量に全面的に委ねられる〕の規定を適用する権利を有する。


外相発表はトルコ政府による両海峡通過の取扱に関する公式発表と受け止められる。■


Turkey Closes The Dardanelles And Bosphorus To Warships

Tayfun Ozberk  28 Feb 2022

https://www.navalnews.com/naval-news/2022/02/turkey-closes-the-dardanelles-and-bosphorus-to-warships/

 

Posted by : Tayfun Ozberk

Tayfun Ozberk is a former naval officer who is expert in Above Water Warfare especially in Littoral Waters. He has a Bachelor Degree in Computer Science. After serving the Turkish Navy for 16 years, he started writing articles for several media. Tayfun also offers analysis services on global naval strategies. He's based in Mersin, Turkey.


2022年3月1日火曜日

ウクライナ上空の航空優勢を確保できないロシア。奮戦するウクライナ防空部隊。砂漠の嵐の再現を狙ったロシア軍が実力を露呈したのか。キエフという呼び方をやめましょう。


Fight of planes in the sky over the Kiev region, as a result a plane of the Russian army was hit.

首都圏上空に展開する空中戦でロシア機が命中弾を受けたPhoto by Aleksandr Gusev/SOPA Images/LightRocket via Getty Images


  • 米政府高官によればウクライナ上空の支配は決しておらず、モスクワ発表と食い違っている

  • ロシアが短時間でウクライナ防空能力を圧倒すると思われていたが、そのとおりになっていない

  • ウクライナはロシア戦闘機、へリコプター、輸送機を撃墜したと主張


ロシア発表と反対にウクライナ上空で両国軍が戦闘を展開しており、ロシア侵攻への対抗が続いていると米国防関係者は匿名条件で語った。


「ロシアは航空優勢を全土で確立できていない」「ウクライナ防空体制は健在で対空・対ミサイル防衛装備は有効に機能している」


「上空で勝敗が決まらない状態のまま、非常に迅速に変化しつづけている」と述べ、モスクワが今朝ロシアがウクライナ上空で「完全な航空優勢」を確保したとの発表と食い違っている。


ロシアがウクライナ侵攻を大規模に開始して5日目となった。各方面から進軍し、首都キーフをめざしている。ロシア軍はキーフ周辺やその他都市を空爆し、一般市民多数が地階や地下鉄構内に避難している。


2月28日にツイッター投稿された映像では上空の機体に地上防空部隊が交戦する様子が見られる。


別の映像では地対空ミサイルが上空の機体に向け発射されており、場所はキーフ上空のようだ。


ここ数日荷渡ウクライナ側からロシア戦闘機、ヘリコプター、さらに輸送機まで撃墜したとの発表が相次いでいる。ウクライナ軍は開戦直後からロシア固定翼機とヘリコプターそれぞれ5機、1機を撃墜したとしていたが、ロシアは否定していた。


ロシアがウクライナとの交戦で被害を受けたのを認めたのは最近になってのことで、それでもウクライナ側の損害のほうが大きいと主張している。


先週木曜日にウクライナ軍が発表した映像ではキーフ近郊の町ホストメル上空でヘリコプター1機が墜落し、ウクライナ軍は墜落後の機体残骸も示した。


ウクライナ最高位の軍人ワレリー・ザルジニーValeriy Zaluzhiny将軍からは2月25日にウクライナ軍がロシアのイリューシンIl-76機をキーフ近郊で撃墜したとの発表があったと報道されている。


Il-76は大型輸送機で空挺部隊の運用にも使われ、150名までの兵員を運搬できる。


ウクライナ軍はS-300ミサイル装備でヘリコプター、Su-25近接航空支援機各1機をそれぞれ撃墜したという。


ロシアはウクライナ防空力を開戦初期に排除すると見られていたが、今までのところ実現していないようだ。■


Ukraine's Skies Remain Contested, Says US Defense Official

Julie Coleman 


ご注意 これまでウクライナ首都をキエフとしてきましたが、キエフはロシア語のいいまわしであり、ウクライナ現地ではキーフKyivと呼ぶのが自然とのことなので当ブログでも今後呼び名を変えます。

 

ウクライナ侵攻の海上戦闘はどうなっているのか。 ロシア黒海艦隊を中心にこの数日の動きをまとめた記事をご紹介。

 

Russian Naval Activity in the vicinity of Snake Island (H I Sutton image)

 

ロシア-ウクライナ間の戦闘が4日目に入り、一向に衰える気配がない。「戦闘の霧」のため、全体像が見えてこない。世間の関心が市街地戦に向かいがちだが、これまで黒海で何が発生したか見てみることに意味がある。


シア軍はウクライナ戦に備え準備していた。国境地帯やベラルーシでの部隊増強が関心を呼んでいたが、重要だったのが黒海艦隊(BSF)の増強で、バルト海、北海、太平洋から艦艇が移動し、BSF配備中の艦艇も地中海に展開した。


報道でなかなか取り上げられない黒海に焦点をあててみよう。



黒海艦隊の役割


陸上空中に比べ、海上の緊張度は低い。2014年のクリミア半島侵攻でウクライナは海軍戦力の大部分を喪失したためだ。


侵攻一週間前にBSFがNOTAMを出し、ケルチ海峡Kerch Straitならびにクリミア半島南部西部の封鎖作戦の予行演習が展開された。その時点でBSFが黒海北部を統制下においたと言っても過言ではない。


2月24日、ロシアはウクライナ主要都市に大規模攻撃を開始した。ロシア国防省は投入したミサイルの種類を明らかにしていないが、BSF艦艇もカリブルミサイルを発射したと思われる。BSFのブヤン-M級海防艦、アドミラル・グロゴロヴィッチ級フリゲート艦、改キロ級潜水艦、プロジェクト22160哨戒艇が同ミサイルを搭載している。


スネーク島で何があったのか


ルーマニア国境付近のウクライナ領の小島「スネーク島」(ウクライナ語でズミイニ島)が海上戦闘で最も目立つ舞台となった。BSF旗艦スラバ級巡洋艦RFSモスクバ、プロジェクト22160哨戒艇が艦砲射撃した。なお、同島はオデッサの南方50カイリ。


守備隊13名は降伏を拒み、ロシア砲火により絶命した。同隊隊員は「ズミイニの英雄」と呼ばれている。ロシア艦艇は同島を占拠し、付近海域を哨戒している。


同島陥落の詳細が不明ながら、その位置がNATO加盟国ルーマニアに極めて近いことが重要で、ロシアのBAL/バスティオンP沿岸防衛ミサイルを配備されればA2/AD効果が増加する点も同様に重要だ。オデッサへの上陸作戦が実施されえれば、同島が補給拠点になる。


黒海での航行の自由

MILLENNIUM SPIRIT on fireMILLENNIUM SPIRIT on fire. Ukrained MoD picture.


黒海で航行の自由を妨げる事件が発生した。


ウクライナ国防省は2月25日発表で民間商船2隻がロシア軍の攻撃を受け、場所はオデッサ近郊とした。パナマ船籍のばら積み船NAMURA QUEEN (IMO: 9841299)とモルドバ船籍タンカーMILLENNIUM SPIRITでともにミサイル攻撃を受けたという。ウクライナ沿岸警備隊初め救難にあたった。モルドバ当局はミサイルをどちらが発射したか不明としたが、ウクライナ防衛省は両船ともロシア軍の行為と非難した。


2月26日、トルコの船舶追跡愛好家からロシア海軍がVHF16チャンネルを使い、「テロ対策作戦」を展開中のためオデッサおよびダニューブ付近の全船舶に直ちにポスポラスへの移動を求めたのを傍受したとツイッター投稿があった。


ウクライナは海峡封鎖をトルコに要請


Marmara Sea map showing the traffic routes to the Black Sea (Prepared by Tayfun Ozberk)



トルコではウクライナ大使が海峡封鎖によりBSFの増強を図るロシア艦艇の移動を止めるよう要請した。トルコはモントルー条約によりボスポラス海峡、ダルダネレス海峡の双方で民間商船、海軍艦艇の通行を管制している。トルコ外相メヴルト・キャブソグルMevlut Cavusogluからトルコは母港に戻るロシア艦艇の移動を差し止めることができないと声明が出た。


2月26日にウクライナ大統領ゼレンスキーがツイッターで再びトルコに要請し、「黒海に向かうロシア艦艇の移動を封じることでウクライナの軍事活動並びに人道支援に大きな効果が生まれるので極めて重要な課題だ」と述べた。トルコ側から返答がない。


マリウポル付近で揚陸作戦か


USNI Newsによればロシアはアゾフ海経由でウクライナへの揚陸作戦をマリウポル付近で実行した。ペンタゴン報道官ジョン・カービーは記者団に同作戦の実態は完全に把握できていないことを認め、ロシア上陸部隊の規模に触れなかった。


英国防省が情報開示でこの点に触れ、2月26日ツイッターでロシアはウクライナ南部メリトポルとマリウポルの間で揚陸作戦を実行したようだと伝えている。


だがマリウポル沿岸での上陸部隊の画像映像が皆無で、ウクライナ当局も情報開示していない。


揚陸作戦はあったのか、ウクライナ新型対艦ミサイルはどこに


ロシアBSFは開戦前予想どおりの動きを示した。BSFはウクライナへの海路、主要港への動きを抑え、援助物資の流れを差し止めながら、海上からのミサイル攻撃を戦略目標に向けた。揚陸作戦が合ったと観測されているが、無用なリスクを生むだけと見ている。BSFは何ら抵抗を同海域でうけていないためだ。


USNI記事はペンタゴン発表をもととし、アゾフ海沿岸での上陸作戦を伝えた。揚陸作戦は水上艦、航空機、特殊部隊等が加わる複雑な作戦となるのが一般だ。だがこうした展開があった、また部隊が衝突した証拠がない。記事が正しいとすれば、これだけ狭い地点に上陸しながら損害が皆無というのは実に驚くべきことだ。沿岸守備部隊の抵抗がない楽な展開だったのか。今後情報が入れば、実態がわかる。


最新情報ではオデッサ付近でも揚陸作戦が実行された可能性があるという。ロシアは揚陸作戦を一定の損失を覚悟の上で実施したはずだ。ロシア軍は開戦3日目に進軍が減速した。このためオデッサ付近の揚陸作戦が南方での新たな展開になりそうだ。


BSFの揚陸作戦能力、装備品を搭載するサヴァストポリからの距離を考慮すれば、ウクライナへの揚陸作戦はBSFに壊滅的結果を招きかねない。まず、セバストポリからオデッサは150カイリの距離で揚陸舟艇の往復に24-30時間を要する。その間にオデッサ上陸に成功したロシア部隊は増援なしで戦闘を迫られる。艦艇の援護射撃や空挺部隊の支援が必要だ。


もうひとつ驚くのはウクライナ軍沿岸配備部隊がネプチューン対艦ミサイルを使っていない点だ。同ミサイルの射程は300キロメートル近くあり、BSFの接近を阻止できるはずだ。ネプチューンミサイルがロシア艦艇の対空装備で撃破されたのか、部隊そのものがロシア空爆で壊滅したのか情報がない。とはいえ、同ミサイルが使用されていないことから運用可能な状態だったのか疑問が生まれる。ウクライナ報道では同ミサイル取得開始は2021年3月とあるのだが。


ネプチューンミサイルでウクライナがロシア艦艇を攻撃し無力化できれば、ロシア海軍の戦闘意欲にも影響が生まれる。艦艇喪失はその他装備の喪失と意味が違う。このため、同ミサイルを沿岸防備に投入することが大きな意味を有している。


フランス海軍の昨日発表では空母シャルル・ド・ゴールをNATO支援に提供し、艦載機が黒海を哨戒する。■



Russia-Ukraine conflict: What happened in the Black Sea so far? - Naval News

Tayfun Ozberk  27 Feb 2022

 

Tayfun Ozberk is a former naval officer who is expert in Above Water Warfare especially in Littoral Waters. He has a Bachelor Degree in Computer Science. After serving the Turkish Navy for 16 years, he started writing articles for several media. Tayfun also offers analysis services on global naval strategies. He's based in Mersin, Turkey.


2022年2月28日月曜日

ウクライナへの戦闘機譲渡案がEUで浮上。対象機材、提供国を推理する。

Fast jets depart RAF Brize Norton for the NATO summit flypast over Celtic Manor.

PAUL CROUCH/CROWN COPYRIGHT

 

 

EUにはウクライナが供用中の機材の同型機を運用する加盟国があり、ウクライナへの譲渡案が浮上してきた。

 

クライナ紛争での大きな進展として、欧州連合(EU)高官は、ロシアの全面侵攻に抵抗し続ける同国へ戦闘の搬入を急ぎ取り組んでいると明らかにした。ロシアによる航空優勢を防いできたが、戦闘で損失を受けたウクライナにとって、追加の戦闘機はきわめて貴重となる。

 

 

欧州連合(EU)の外務・安全保障政策上級代表および欧州委員会副委員長を務めるスペインの政治家ジョセップ・ボレルJosep Borrellは、本日未明、ウクライナに対し、加盟国から戦闘機を購入する資金をEUが提供すると発表した。機種は明らかにしなかったが、ウクライナ空軍で運用中の機材であれば、早く戦闘に投入できるとの見方を示した。これは、450百万ユーロ(510百万ドル強)の大規模な軍事支援パッケージの一部となる。

 

ウクライナ空軍の戦闘機には、ソ連時代のMiG-29フルクラムとSu-27フランカーが混在しているが、EU圏内でSu-27の運用国はない。

 

ということは、MiG-29が譲渡の中心となる。ポーランド、スロバキア、ブルガリアがフルクラム派生型を供用中なので、ウクライナに引き渡せば就役できる。ブルガリア機体はソ連崩壊後、改良はわずかだったが、ポーランドとスロバキアの機体は大幅改良されている。

 

その他EU加盟国も以前はMiG-29を使用し、まだ保管している可能性があるが、再運用可能にするまで時間がかかるため、魅力的な選択肢ではない。。

 

ポーランド、スロバキア、ブルガリアはNATO加盟国であり、MiG-29の代替を進めているのも利点だ。ポーランドは2024年までに、スロバキアとブルガリアはそれぞれ2023年と2025年に新型F-16C/Dを受領する。

 

上記各国は、防空能力の低下による国家安全保障上のリスクを、他のNATO加盟国に領空警備の支援を暫定的に依頼することで軽減できよう。自国の戦闘機を持たないバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)や黒海地域では、NATO加盟国が防衛能力を提供している。さらに、ウクライナ紛争に対応し、アメリカ等のNATO機が同盟の東側で空中パトロールを強化している。ウクライナに引き渡される前に、これらの戦闘機からNATO標準の機密装備を取り外す必要があるだろう。

 

NATO加盟国であるルーマニアとクロアチアは、旧型MiG-21を使用しているが、同機は、空中戦で今でも強力な敵になる。ウクライナは現在、MiG-21を運用していないが、国内企業が他国向けに同機のデポメンテナンスを行っている。ただし、MiG-29譲渡に比べると可能性は低い。とはいえ、紛争が長引けばポーランドが保有する老朽化した可変翼機Su-22も含め魅力的になる可能性はある。

 

ボレルは「戦闘機」の用語を一般的な形で使っている可能性があり、EUはウクライナに別の機材の供給も検討している可能性がある。ブルガリアで今も供用中のSu-25フロッグフット地上攻撃機もウクライナが配備する機種で、今回の紛争にも投入されている。

 

VIA BULGARIAN AIR FORCE

ブルガリアのSu-25フロッグフット

 

これに加え、欧州各国や米国から武器他の軍事支援が増加している。ウクライナ軍によると、運用中の戦闘機用の空対空ミサイルも含まれている。

 

過去4日間で大きな損失を被ったウクライナ空軍にすれば、比較的新しい戦闘機を歓迎するはずだ。

 

ウクライナの戦闘機や地上の防空網も、ロシア軍機多数を撃墜している。ここに、「キエフの亡霊」と呼ばれるウクライナのスーパーエースの都市伝説が生まれている。

 

ウクライナの戦闘機は、トルコ製武装ドローンTB2などの装備や地上の防空部隊とともに、ロシア軍の制空権確保を阻んでいる。驚くべきことだ。一例として、TB2がロシアのBukズ移動式地対空ミサイルシステムを破壊する様子を伝える動画が本日未明、公開された。

 

ロシア軍の制空権確保を阻めば、TB2含むウクライナ軍機が、輸送隊の破壊や近接航空支援を試みたり、その他地上目標を攻撃する機会が生まれる。これらはすべて、ロシア軍の航空支援を妨害し、ウクライナ国内を自由に移動する軍事作戦の展開を妨げる効果が生まれる。

 

つまり、ウクライナ空軍には戦闘機がもっと必要だ。ロシア軍が首都キエフ含むウクライナの北部、東部、南部で攻勢をかけ続けているため、需要は高まる一方だ。

 

ウクライナはヨーロッパ各地からの機材を一刻も早く必要としている。

 

UPDATED: 7:05 PM EST —

 

欧州議会の「親欧州政治団体」であるRenew Europeの政策顧問、アレクサンドル・クラウスAlexandre Kraussは、ジェット機の種類が何であれ、「1時間以内にウクライナ上空を飛ぶだろう」とツイッターに書き込んだ。ただし、欧州連合による軍事航空パッケージに含まれ機種、また誰がウクライナ上空で機材を誰が操縦するのか、それ以上詳しくは説明しなかった。

 

これとは別に、ワシントン・ポストのマイケル・バーンバウム記者によると、ヨーロッパの一外交官が、ウクライナはブルガリア、スロバキア、ポーランドからロシア製機材を受け取る予定と語ったという。つまり、上記記事で述べたように、MiG-29やSu-25の納入が間近に迫っているということだろう。

 

ウクライナ空軍パイロットが譲渡機の操縦習熟にどの程度の訓練が必要かは不明だ。ポーランドとスロバキアのパイロットは、性能改修後のMiG-29操縦方法を学ぶのに相当の追加教習を必要としたといわれる。今回の戦闘に不要な高度システムが納入前に除去されていなくても、ウクライナ空軍パイロットの教習内容に含まれる可能性がある。■


Here Are The Options For The EU's Initiative To Restock Ukraine With Fighter Jets (Updated)

 

BY JOSEPH TREVITHICK FEBRUARY 27, 2022


 

プーチンが核兵器使用を口にする理由。ボルトン元国連大使が解説。ロシアの状況が予想以上に悪い。情報線宣伝戦に注意すべきだ。

  

 

 

クライナ侵攻が想定どおりに迅速に展開していないためか、ウラジミール・プーチンが賭け金をさらにあげようとしている。西側エリート層の心拍数、血圧をあげようというのか。2月27日日曜日の発表でロシア核抑止部隊に高い警戒態勢を取らせる様子を公開し、国内外に見せつけた。

 

この発表で抑止体制が引き上げられるのかは不明だし、情報操作以上の実効性があるか疑わしい。過剰反応したり、逆に反応しないとプーチンの思うつぼだ。

 

クレムリンの視点でいえば、ウクライナ戦で勝てない中での宣伝戦としては異例なほどの遅出しとなった。侵攻開始の先週木曜日以来、モスクワから公式発表は極めて少なく、あっても大部分が差し障りのない内容に終始していた。これに対し、ウクライナ側は中央地方問わず情報を公開し、通常の報道発表とソーシャルメディア双方を使っている。西側メディアもウクライナ報道を増やしており、映像画像さらに一般ウクライナ市民、兵士への取材で良いニュースの拡散に一役買っている。ロシア国内からも、戦線の裏側まで報道しており、部分的ながらモスクワはそうした報道の規制に成果を上げている。

 

例えば、スネーク島のウクライナ守備隊は、ロシアの降伏勧告を受けて、キエフが主張するように殺害されたのか、それともモスクワが言うように捕虜になったのか、プロパガンダ戦争の例にもれず、真偽は疑問のままだ。ウィンストン・チャーチルは、「戦時中に真実は非常に貴重となるため、嘘の護衛を真実に常に付けるべきである」と正しく述べた。不愉快だが広く現れる必要性をウクライナが正しく認識していないとしても、誰も驚くことはないだろう。

 

プーチンは、ロシアの情報戦で核のカードを使うことで、目的を2つ達成したいのだろう。第一に、プーチンは国民に訴えかけ、NATOの脅威と第二次世界大戦以来の歴史的不満から、ウクライナ侵攻以外に選択肢がなかったと納得させようとしている。ロシア国内のプロパガンダキャンペーンは不調で、プーチンは市民の注意を引き、自分の旗の周りに人々を集めるに、もっとセンセーショナルな材料が必要と判断したのだろう。 そして、プーチンがスペードのエースを見せたとウクライナで戦闘中のロシア軍が知れば、士気が下がるはずはない。ただし、この作戦がロシア国内でうまくいくかは別問題である。

 

しかし、プーチンの真の読者層は、彼が弱腰と見るアメリカやヨーロッパの政治指導者であることは間違いないだろう。望ましいプロパガンダ効果を外国にもたらすために重要なのは、ロシアの軍事ドクトリンが戦術核兵器の先制使用を明確に想定し、強調していることを想起させることだ。核兵器に触れただけで怯える西側諸国の人々の数は相当数に上るが、これがプーチンの主なターゲットだ。彼がどこまで成功するかは、すぐにも分かるだろう。

 

NATOがウクライナ政府に武器など緊急支援を続けることで揺るぎはないはずだ。ウクライナ=ベラルーシ国境で開かれるという和平交渉も含め、ロシアと交渉できることは何もない。米国がここで迷いを見せれば、ウクライナ危機で予想以上に不屈の精神を発揮している欧州が動揺を示すだけである。

 

プーチンがウクライナ戦争でロシアの核戦力の使用を述べたが、本気である可能性が残る。おそらく、欧米メディアの報道以上に、ロシアの事態は悪化しているのだろう。プーチンは、軍事的大失敗となれば、権力の座から追われ、自分が仲間たちとが作り上げてきた政権全体が崩壊すると懸念しているのかもしれない。こうした絶望的な状況で、核兵器を使用すれば、全く新しいシナリオが生まれる。プーチンは、ロシアの通常兵器による軍事的失敗を他人のせいにし、1945年以来初めて戦時中に核兵器を使用する過激なまでの不確実性を活用し、権力にしがみつこうというのだ。

 

このシナリオが現実になることはないはずだが、深く憂慮すべきなのは明らかだ。バイデン政権は、プーチンの侵攻開始前に、クレムリンの能力と計画に関する情報を電波に乗せて流してきたが、抑止効果がなかったのが残念で、乱発しすぎたかもしれない。しかし、今こそ機密情報の解除を利用舌情報線を展開すべきだ。

 

その間に、ウクライナ他の地域でも、こちら側の課題は多い。敵対勢力がこちら側のウクライナ関連での優先事項を利用しようとするかもしれない。プーチンの核の脅威は真剣に評価する必要があるが、反射的に対応する必要はない。■

 

Atomic Bluff? Why Putin Placed Russia's Nuclear Forces on High Alert - 19FortyFive

ByJohn Bolton

 

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.

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