2022年3月29日火曜日

2023年度国防予算原案で4%増7,730億ドルを提案したバイデン政権には、現実の脅威、インフレに加え、議会の反発が待ち受ける。23年度予算については今後もお伝えします。

  

 

 

ワイトハウスが3月28日発表した計画では、国防総省の2023年度支出は4%増となる。昨年政権が希望した額を大幅に上回るが、議会共和党はこれでも満足しないだろう。

 政府高官によれば、総額7,730億ドルにはロシアと戦うウクライナ支援資金、軍用機や核抑止システムで新たな投資、「北朝鮮、イラン、暴力的過激派組織を含む持続的脅威」に対抗する資金を含む。

 この支出計画は、2022年度レベルより300億ドル以上(4%)増加になる。

 昨年、ホワイトハウスは3%以下の増額を要求し、共和党および穏健派民主党との1年にわたる争いを引き起こした。最終的に国防総省予算は増額された。

 要求額が増えても、議論は繰り返される公算が強い。先週、上下両院の共和党議員40人が、インフレ進行と世界的な脅威の増加を受け、国防予算で少なくとも5%増額をホワイトハウスに要求した。ミシシッピ州選出のロジャー・ウィッカー上院議員Sen. Roger Wickerはホワイトハウス要求を「戦略的に不健全」とし、ロシアや中国など脅威を抑止するべく原案を変更すべきと主張した。

 「課題に対応するため、各軍トップは、より多くの要求をしている。艦船、飛行機、兵器、衛星、そして訓練の充実を求めている」(ウィッカー議員)。「バイデン大統領は、逆に、任務遂行に必要な資源を減らそうとしている。戦略的に不健全であり、将来の紛争や我が国への脅威のリスクを増大させる可能性がある」

 月曜日の声明でバイデン大統領は、予算提案について「国家安全保障への歴史上最大の投資の一つで、世界で準備、訓練、装備がもっとも整った軍であり続けるため必要な資金」と呼んだ。

 ホワイトハウス当局者は、予算案が承認されれば、2年間で国防費が9.8%増加することになり、「米国の抑止力を維持・強化し、重要な国益を推進するため必要な資源」を提供できると指摘した。

 研究、開発、試験、評価用予算の重視は続き、9.5%増1,301億ドルを「過去最大」と称している。内訳は極超音速兵器に47億ドル、マイクロエレクトロニクスと5Gネットワークに33億ドル、バイオテクノロジーに13億ドルを含む。

 議会は「旧式装備」の処分計画を昨年破棄したが、政権は再び同様の提案で27億ドル分の再優先化を求めている。空軍は150機を退役させ、MQ-9の100機をその他政府機関に移管し、海軍は24隻を退役させる(16隻は耐用年数前に退役させる)。

 予算案では、欧州抑止力構想に62億ドル、ロシア侵攻を食い止めるウクライナ向けに3億ドルを要求している。国防総省は、中国が依然「ペースメーカー」であることから、インド太平洋地域の抑止力構想に61億ドルを要求している。

 また、核3本柱の近代化予算では、核関連事業に344億ドルを計上する。内訳は、コロンビア級潜水艦に63億ドル、B-21爆撃機50億ドル、地上配備型戦略的抑止力と呼ばれる次世代大陸間弾道ミサイル36億ドル、核指揮統制システム48億ドルを投じる。

 国防総省は、マイクロエレクトロニクスに33億ドル、極超音速兵器と指向性エネルギー兵器のサプライヤー拡大に6億500万ドル、「重要材料」に2億5300万ドル、鋳鍛造に480億ドル、バッテリーとエナジー貯蔵に43百万ドルの投資を提案している。予算概要でホワイトハウスは国防産業基盤を技術革新の源泉としてアピールしている

 「DODは、イノベーションを進め、高価値技術を生み、戦略的競合相手への米国の優位性を確保し、連邦政府の研究開発全体で高賃金雇用を創出する重要な役割を果たしている」とホワイトハウスは総括している。

 「新予算は、イノベーション推進につながる画期的技術に投資し、防衛技術産業基盤を支援し、米国の技術的リーダーシップを確保し、次世代防衛能力の開発を支えるため、防衛研究、開発、試験、評価資金に優先順位をつける」と、述べている。

 国防当局は、予算提案に購買力低下の反映を認めている。国防総省は、燃料価格上昇で1月中旬に予算を使い切った。

 バイデン大統領は22年度の国防・国家安全保障全体に7,530億ドルを要求したが、議会は最終的に7820億ドルへ増額した。

 キャピタル・アルファ・パートナーズのバイロン・キャランByron Callanは、共和党の目標は国防・安全保障費全体で8,750億ドルと見ている。■

 

Biden requests $773 billion for Pentagon, a 4% boost

By Joe Gould and Leo Shane III

 Mar 29

 

Megan Eckstein and Stephen Losey contributed to this report.

About Joe Gould and Leo Shane III

Joe Gould is senior Pentagon reporter for Defense News, covering the intersection of national security policy, politics and the defense industry.

Leo covers Congress, Veterans Affairs and the White House for Military Times. He has covered Washington, D.C. since 2004, focusing on military personnel and veterans policies. His work has earned numerous honors, including a 2009 Polk award, a 2010 National Headliner Award, the IAVA Leadership in Journalism award and the VFW News Media award.


2022年3月28日月曜日

ロシア空軍が航空優勢を確保できない理由に、西側と全く異なる空軍用兵思想があった。今回の失敗から進化する可能性は?

 





シアのウクライナ侵攻開始から1カ月経過したが、ウクライナ防衛軍は不可能を可能にしたかのように、各地でロシア地上軍を阻止し、ロシアの圧倒的な数の優位にもめげず、空域を確保している。

 ロシア空軍は米国に次ぐ世界第2位の規模だが、運用は米空軍と全く異なる。ロシア軍は確かに苦しんでおり、ウクライナ上空の失敗は、ロシアの戦争へのアプローチそのものの問題だ。



米国の考える戦闘と航空戦力の意義

 米国では、戦闘作戦を6つの想定段階に分け、各段階で、中間目標に向け部隊間が協力し合う。指揮官と幕僚が大規模戦闘作戦を視覚化し、要件を考慮した作戦立案が基本となっている。2009年まで、米国のドクトリンは4段階だったが、対テロ戦争の教訓から劇的に変化した。

 6段階とは、形成、抑止、主導権の獲得、支配、安定化、文民権力の実現、形成への回帰だ。

 この段階的アプローチでは、指揮官は次の作戦段階の前に、各中間目標を完了するため十分な人員、資源、装備、時間を部隊へ確保する。IRIS Independent Research の社長レベッカ・グラント博士Dr. Rebecca Grantが 13 年前に Air Force Magazine で指摘していたが、米国の戦闘ドクトリンでは航空戦力はあらゆる局面で役割を果たし、かつ最重要局面で重要な役割を担う。

 情報、監視、偵察(ISR)、武装哨戒などの航空戦力は、抑止力として不可欠だ。また、米軍機は主導権を握り、空爆を行い、ISRを提供する上で極めて重要な役割を果たす。制圧段階では、米軍機が制空権を握り、敵機や防空網を排除・軽減した上で、地上軍に近接航空支援とISRを提供する。安定化と民政移管の段階では、偵察から武力支援まで、新政権を正統化するため再び航空戦力が頼りにされる。

 大規模で圧倒的な航空戦力が、アメリカの戦争ドクトリンでは主導権を握る段階と支配する段階の両方で不可欠である。航空機は、敵の空中脅威を迅速に無力化し、その後の空爆と地上部隊の支援を同盟国航空機の危険なしで実施可能とする手段だ。

 現実に、米国の戦争アプローチは航空戦力中心に構築されており、地上部隊は目標達成のため航空機や長距離兵器システムと組み合わせて使用される。地上部隊の重要性を軽視しているのではなく、米国式戦闘方法は航空優勢の確保を強調している。


ロシアの軍事ドクトリンでの空軍力の意義

 これに対し、ロシアの軍事ドクトリンでは、戦争へのアプローチが大きく異なり、紛争の前段階と初期段階(グレーゾーン作戦)ではロシアが新世代戦争(NGW)と呼ぶものを重視し、紛争では慎重かつ予算重視の武力行使を行うとある。ロシアでは、安価な手段が実行不可能な場合のみ、高価な資産を使用する。これは、圧倒的技術力を持つアメリカのアプローチと全く対照的である。

 ロシアの軍事ドクトリンが、航空戦力を背景とするアメリカと異なり、航空戦力を地上軍に従属させる存在として捉えていることが重要である。フォーブスのデビッド・アックスDavid Axeによれば、ロシア空軍は空の火砲として使用されている。これは、NATOの巨大な航空戦力と大規模衝突した場合に航空優勢を失う可能性があることをロシアが理解しているためと考えられる。ロシアのドクトリンは、負け戦に勝つことよりも、戦闘空域を支配できない可能性を甘受している。

 ロシア軍事ドクトリンには、敵制空権を迅速に完全制圧すること、敵防空網を迅速に排除するとはともに書かれていない。アメリカのワイルド・ウィーゼルF-16のような敵防空制圧任務(SEAD)の特化機材がロシアにはない。ただし、ロシア機は、防空システムを攻撃する対レーダーミサイルを使用することができるし、実際に使用している。

 その代わり、ロシアは長距離射撃を重視し、自軍上空を支配するために航空機に任務を与えるよりも、自国の統合防空システムの使用が優先されている。

 ロシアの戦争方式は、長距離攻撃で敵の防空・航空機の効果を下げ、大量の砲撃、ロケット、ミサイルで火力優勢を獲得し活用するものだ。航空機は、戦域支配の手段ではなく、地上軍を支援する。アメリカの軍事ドクトリンのバックボーンが航空戦力ならば、ロシアのは大型戦車部隊と大砲である。

 ロシアの戦争への考え方は、戦闘初期段階で敵を懲らしめ、ロシアに有利な形で紛争を迅速解決するというものだ。米国議会調査局が指摘するように、敵対国の領域アクセスを拒否することはロシアの目標ではない。

 ロシアの狙いは、司令部やインフラなど重要施設を狙い、機能を低下させて、有利な条件を相手に受け入れさせることにある。そのため、ロシアの戦略は、全国的な制空権の確保は前提としていない。ロシアが航空機と統合防空システムで空域を支配することはない、と主張しているのではない。ロシアはそうするだろうし、そうしているのは確かである。しかし、ロシアは、目的の達成に制空権の確立が不可欠とは考えていない。

 ロシア軍は、混沌とした戦場環境で敵機味方機の識別が難しいようで、ロシア軍上空でロシア航空機はリスクが高いように思われる。

そのため、ロシア軍機は砲兵隊同様の扱いで、地上軍支援の空爆に従事している。


ウクライナの現実からロシア航空戦力ドクトリンも変化するはず

 ロシアは火力優勢の補完手段で航空戦力を使用しているが、ウクライナでは、ロシアが長年主張してきた統合防空システムも効果がないことも証明されている。ウクライナ空軍は損失を被っているものの、開戦から1カ月以上経過した現在も連日出撃している。

 ウクライナ戦闘機は、主に夜間に出撃し、防衛部隊に航空支援を提供し続け、ウクライナのドローンは各地でロシアに大打撃を与えている。一方、ロシア軍機は1日に数百回の出撃を続け、ロシア領内からウクライナ国内目標に長距離攻撃を実施し、停滞している地上軍に長距離砲として機能している。

 ロシアがウクライナの空を支配できないのは、航空機を長距離砲やロケット弾の延長として使用しているためで、ロシアのドクトリンは明らかに机上の想定通り機能していない。

 ロシアがウクライナでの航空優勢確保に苦労している理由で、おそらく最も重要な理由は、ロシアの戦争へのアプローチが航空優勢の重要性を著しく過小評価していることだろう。ウクライナ戦争がどのような結末を迎えるにせよ、ロシアの航空戦力に関する考え方は、今後数年で大きく変化する可能性があるように思われる。■


How Russia's warfare doctrine is failing in Ukraine - Sandboxx

Alex Hollings | March 23, 2022

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


2022年3月27日日曜日

主張 北朝鮮の最新ICBM実験は米国に向けた明白なメッセージ。バイデン政権を真剣に対応させるためのシグナルだ。

  

 

North Korea ICBM

North Korea Hwasong-17 ICBM. Image Credit: Creative Commons.

 

北朝鮮のICBM発射実験は、米国の政策の無益さを浮き彫りにした 

平壌が2022年3月24日に行ったICBM発射実験は、ワシントンと東アジア各国の双方に動揺を与えている。ロシアとウクライナの戦争がなければ、今回の事態は米国外交当局の最大の関心事になったはずだ。今回のミサイルは、米国本土に到達可能なICBMだ。北朝鮮による前回の長距離ミサイル実験は2017年で、米国との関係が雪解けし、北朝鮮の金正恩委員長とドナルド・トランプ大統領による3回目首脳会談の直前だった。

 

ICBM実験は想定ずみだった 

今回の平壌の行動は予測可能だった。北朝鮮はワシントンの政策姿勢への不満を2年前から再燃させていた。2022年1月、平壌はミサイル実験を1カ月で7回実施した。旧正月にはグアムまで届く中距離ミサイル「火星12型」発射で一連の実験を終えた。

 ワシントンとの正常な二国間関係の確立への期待は、過去のものになったという金正恩の結論を一連の実験が象徴している。トランプ政権が北朝鮮孤立政策を放棄したように見えた2018年と2019年に、希望が劇的に高まっていた。金委員長との首脳会談は、従来より現実的かつ柔軟な米国のアプローチの表れだった。特に、3回目の首脳会談で一時的とはいえトランプが北朝鮮に足を踏み入れる映像は、建設的友好的な関係が生まれるとの象徴的意味合いが強かった。

 だが国内で反発が強まり、ジョン・ボルトン国家安全保障顧問をはじめとする大統領外交チーム強硬派による妨害が重なり、建設的な変化を実現しようとする努力は絶望的となった。2019年2月のハノイ首脳会談が突然終了したのは、平壌が核兵器プログラムの放棄という、長年にわたる(かつ非現実的な)要求を拒否したためだった。

 和解への期待が薄れ、金正恩政権は2019年後半に敵対的で闘争的な論調を復活させた。しかし、平壌から破壊的な行動がすぐ現れなかったのは注目すべき点だ。2020年の米国大統領選結果に関係なく、米国が今後、柔軟で融和的な姿勢を示すと平壌は期待していたようだ。

 ジョー・バイデンが当選し、希望が見当違いと明らかになった。バイデンは2020年の選挙討論会でも、平壌を望ましからぬ国として扱うという、トランプ以前のワシントンの無益なゾンビ政策と同一だった。バイデンは、2022年1月のミサイル実験を受け、新たな制裁を発動し、北朝鮮を孤立させる不毛な手法を継続すると確認している。

 

ICBM実験の次は核実験か?

とはいえ、北朝鮮には自制心がまだ残っている。平壌は、トランプ政権による打開策の直前の2017年9月以降は核兵器実験を実施していない。また、金正恩政権は、短距離ミサイル含むすべてのミサイル実験を自粛していた。この政策は2022年1月まで変更されず、長距離ミサイルの停止措置は3月の実験で終了した。核実験の一時停止措置は、いまのところ有効である。しかし、バイデン政権の方針が変わらないと、金正恩の抑制は終わる可能性が高い。

トランプ構想は、政策的リアリズムと柔軟性を反映し期待させるものであった。 しかし、残念なことに、ワシントンは逆戻りしたようだ。 米国指導者層は、平壌を非核状態に戻すとの実のない要求に固執するのではなく、多面的かつ正常な二国間関係につながる道を模索すべきだ。数十年にわたる経済制裁を緩和し、最終的に撤廃することになる。また、朝鮮戦争を正式に終了する条約を交渉し、両国に完全な外交関係を確立することである。

 別の選択肢は、北朝鮮がゆっくりと、しかし着実に核兵器と、アメリカを破壊可能なICBMを含む高性能ミサイルを整備するのを見守りながら、北朝鮮を除け者として扱い続けることだ。これでは誰も得をしない。米国は最新の核保有国となった北朝鮮と有意義な関係を築いていない。すべての当事者にとって危険な状況である。

 今回のICBM実験は、米国が北朝鮮と正常かつ現実的な関係を築く必要があるのを示す最新の警告だ。しかしバイデン政権が重要な任務を果たしているとは思われない。■

 

Hawasong-17 ICBM Test Proves America's North Korea Policy Has Failed - 19FortyFive

ByTed Galen Carpenter

 

Ted Galen Carpenter, a senior fellow in defense and foreign policy studies at the Cato Institute and a contributing editor at 19FortyFive, is the author of 12 books and more than 950 articles on international affairs. He is also a 1945 Contributing Editor. 


開戦前よりもウクライナ戦車の台数は増えている。祖国防衛に志が高いウクライナ軍と燃料切れ、戦闘放棄のロシア軍の対比が著しい。

 

 

 

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捕獲したT-72に即席でウクライナ記章がつけれているYURI BUTUSOV PHOTO, VIA TWITTER

 

 

2月23日夜のロシアによる軍事侵攻開始から、少なくとも74両のウクライナ軍戦車が喪失、破壊、鹵獲された。

 

 

 しかし、ソーシャルメディアを精査するオープンソース情報アナリストによれば、ウクライナはロシア戦車を少なくとも117両鹵獲している。

 つまり、ウクライナ軍の戦車は開戦前を上回っている可能性がある。

一方、ロシア軍は少なくとも37両のウクライナ軍戦車を鹵獲したが、失った274両に追いつかない。

 鹵獲戦車数のちがいは、ロシアの開戦準備の不足を物語っている。同時に、防御側が有利に戦う状況を物語る。

 ロシア軍はウクライナへ数十キロから数百キロ侵攻し防御が不十分なまま補給線が延び、前線部隊が弾薬や燃料を使い果たす危険性がある。ウクライナが押収した戦車の多くは、ガス欠で乗員が逃亡したり、座っているだけだった。

 一方、ウクライナ軍は 「内戦」の利点を享受し、主要都市や基地付近で戦っている。ウクライナ軍補給線は、防衛線内に収まっている。

 つまり、ウクライナ戦車が戦場で燃料切れになる可能性は非常に低い。

 ウクライナが捕獲した117台はアナリストが目視確認した分で、実際はもっと多いはずだ。ウクライナ農民が放棄されたロシア車両を牽引する動画は、ウクライナでの抵抗の象徴になった。

 押収した戦車その他車両のうち何両が使用に耐えるかは不明だ。  

 しかし、ウクライナがロシアと同型の戦車を使用していることが救いだ。ウクライナ軍の主力戦車T-64は、ロシア軍で退役ずみだが、T-72とT-80はウクライナ軍も使用している。

 T-80はT-64の発展型で、ソ連戦車で最も洗練されている。それに対しT-72は、シンプルかつ安価で大量生産に適し、戦場での支援も容易だ。そのためT-72をウクライナ軍予備隊に配備している。

 いずれにせよ、鹵獲戦車はウクライナが利用するはずだ。問題は、どれだけ早く修理し、燃料補給し、弾薬補充し、乗員に割り当てるできるかだ。

 数日で起こり得る。3月11日には、旧ロシア軍戦車がロシア軍へ砲火を開いた。戦車、戦闘車両、大砲、防空システム、トラックなど何百台何千台もウクライナに移動されたが、ロシアの戦略的目標への課題が浮き彫りになっている。

 人口4400万人のウクライナが祖国防衛で結束しており、クレムリンは勝利への道を進めない。

 ロシアがシリアに傭兵1000人規模を要請したのに対し、ウクライナは予備軍15万人を動員したのがこれを物語る。

 予備役隊員が装備に困ることはないだろう。旧ロシア軍T-72に乗り込み、ウクライナ記章をペイントすることになろう。■

 

The Ukrainian Army Has More Tanks Now Than When The War Began—Because It Keeps Capturing Them From Russia

David AxeForbes Staff

Aerospace & Defense

 


2022年3月26日土曜日

空港での戦闘で全損した世界に一機の超大型An-225を復活させるプロジェクトをクラウドファンディングで開始したアントノフ。

 


AN225 ukraine crowdfund

ANTONOV/YOUTUBE SCREENCAP


第一、第二ターミナル共通記事です


ーウ郊外ホストメル空港での戦闘で、世界最大の6発貨物機An-225ムリーヤMriya(「夢」)が破壊された。しかし、設計・製造元のアントノフはAn-225復活の資金募集を各国で開始した。


同社CEOゼルヒ・ビチュコフSerhiy Bychkovは、同社Facebookで声明を発表し、呼びかけている。

「親愛なる世界各国の皆様。アントノフ国営企業のAn-225 Mriyaは特別な存在です。貨物搭載量で最大で比類ない性能を誇ります...現下の厳しい状況にもかかわらず、アントノフチームは、現代のシンボルの一つとして伝説の機体の損失は許されないと確信し、フラッグシップ貨物機An-225 Mriyaの復活に着手する信念を固めました。 当社は国際基金の設立を提案します...」

声明では、紛争前30年間にわたりAn-225が大型貨物輸送に成功し、240もの世界記録の実績を振り返っている。ビチュコフは、An-225が民間機や人道援助物資の輸送に加え、宇宙船やミサイルを空中発射する可能性を指摘している。

今回の野心的なクラウドファンディング提案は、「各国の首脳や政府、世界各地の航空メーカー、航空機やその他アントノフ製品の製造に参加し、アントノフ航空機の連続生産に製品を提供した海外のパートナー企業、銀行やその他の金融機関の経営陣、航空ファンや愛好家、世界の航空界、そしてウクライナのミリヤの偉大さを賞賛するすべての関係者 」へ支援を求めている。

声明文には、振込用の銀行口座も記されている。

ウクライナ国営通信社ウクリンフォルムUkrinformは、同機修復費用を30億ドル以上としており、かなり高く思えるが、近代化改修や、生産施設の分も含まれているのかもしれない。

しかし、少なくとも先月末のホストメル襲撃後に残された機体を見る限り、「修復」は空想に過ぎない。機首、主翼、エンジンが大きく破損し、大部分が破壊された。無傷で残っているのは、機首の一部だけで、この状態も疑わしい。

 

YOUTUBE SCREENCAP

戦闘後のAn-225の無残な姿

 

このためアントノフはキーウに残る未完成のAn-225を完成させるのに資金を使おうとする可能性が高いと思われる。

あるいは完全新規のAn-225製造を希望しているのか。An-225の生産再開は、以前も検討されていた。中国はアントノフに現金を提供し、同機の改修型生産を提案したと伝えられている。最終的に実現しなかったが、An-225の唯一無二の性能に対する需要から、再び使用を希望する顧客は少なくないと思われる。

アントノフが必要な資金を確保できたとしても、ウクライナがプロジェクト着手を検討し始めるには、ロシアに勝つか、少なくとも現在の紛争を終結させる必要がありそうだ。

しかし、同機の損失が、紛争の象徴になったことは間違いない。ウクライナ側は同機の劇的な消滅を利用し、国際的に大きな反響を呼んだ。An-225を再び飛行させれば、ウクライナにとって大きなシンボルとなり、ビジネス的なメリットもある。

現在のウクライナが緊急の問題を抱えているのは明らかだが、An-225を空に戻す「夢」を少なくともアントノフは受け入れており、世界中の航空ファンや愛好家もプロジェクトを支持するに違いない。■

Antonov Is Crowdfunding The Revival Of Its Destroyed An-225 Cargo Jet

Antonov Is Crowdfunding The Revival Of Its Destroyed An-225 Cargo Jet

The one-off An-225 was destroyed after its base was attacked by Russian forces in Ukraine, but there is hope it will rise again, maybe with your help!

BY THOMAS NEWDICK MARCH 25, 2022




米国はウクライナの情報活動をここまで支援している。ロシアの情報工作に注意が必要だ。食料不足への覚悟も必要か。

 


 

 

防情報局局長スコット・ベリエ陸軍中将Lt. Gen. Scott Berrierは、2022年3月17日、議会公聴会で、米国とウクライナとの情報・諜報の共有について、「革命的」と下院軍事情報小委員会の非公開セッションで述べた。

 

 

 サイバー軍と国家安全保障局を率いるポール・ナカソネ陸軍大将Gen. Paul Nakasoneは、「ウクライナで行われているほど、正確かつタイムリーで実行している情報共有はこれまで見たことはない」と述べた。

 同盟国との情報共有は、「同盟関係を構築する」価値があり、ロシアが侵略前に行った「偽情報」キャンペーンに光を当てることができる、とナカソネ大将は付け加えた。問題は、意味があり活用できる情報をウクライナとどう共有するか、ということに尽きる。

 ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が同胞に武器を捨てるように語った最近のフェイクビデオなど、「ディープフェイク」について聞かれると、ナカソネ大将はNSAは「何が本物で何が偽物かを区別しようと取り組んでいる」と述べ、ペンタゴンや行政府、民間企業に情報を適切に伝えている、と発言した。

 ウクライナや世界で実際に起きていることをめぐり、嘘を広め、混乱を招こうとする動きを警戒し、「注意深く観察し、迅速に対応し続ける」と述べた。

 オースティン・スコット議員(共、ジョージア)Rep. Austin Scott, (R-Ga.)は、ウクライナでクレムリンに有利な状況をめざす情報キャンペーンの「ディープフェイク」や「偽旗」について「情報を機密解除することで世界は利益を得ている」と述べた。

 ナカソネ大将は、NSAの成功の「秘策」は、「敵が何をしているか」「それが米国にどう影響するか」を見極め、国外で活動する能力だと付け加えた。また、空軍のKC-135や宇宙衛星、センサーなどの性能実証済み装備と、現場での収集が効果的だと述べた。

 サイバー司令部高官がNSAも指揮する体制を維持すべきかについて、情報・セキュリティ担当次官のロナルド・モルトリーRonald Moultrieは、責任をバラバラにする決定を下した場合、「双方へ損害を与えたくないという感情がある」と述べた。

 サイバー司令部は2010年に設立された。

 ナカソネ大将は、司令部と機関を一元管理することで、イランとの問題からランサムウェア攻撃、ウクライナでのロシアの侵略まで、「一体感」と俊敏な対応力が得られていると述べた。

 DIAが「オープンソース」の素材(画像やデータ)を購入する方法について、ベリエ中将は、購入の範囲や、必要なときに必要なものだけを購入することに限定できるか疑問があるとした。「アフガニスタンで役立つオープンソース(の素材)がある」とも述べた。

 米国はアフガニスタンで国外から情報、監視、偵察を行っているが、限界があると、退任するケネス・マッケンジー海兵隊大将Gen. Kenneth McKenzieは今週、議会で述べた。

 スコット議員は、ウクライナ戦争が世界の食糧市場に与える影響についても、DIAは情報をただちに集めるべきと考えていると述べた。ウクライナは小麦「5000万トン」を輸出し、「世界食糧計画への最大の供給源」でもあるからだ。

 問題を深刻にしているのは、「ロシアが穀物や肥料を輸出しないと言っていること」であり、同盟国のベラルーシも同様だとした。トウモロコシ、大麦、ヒマワリの種、小麦、肥料を含む黒海の穀物輸出市場の閉鎖で、「プーチンは食糧供給に関し第三次世界大戦を始めた」とスコット議員は言う。

 同議員は、食糧供給と価格上昇が、戦闘から遠く離れたスリランカなどに影響を及ぼしはじめたと指摘。

 ワシントン・ポストは3月18日社説で、「穀物植え付けから収穫まで数カ月かかり、一部作物の不足分はすぐ埋め合わせできない。石油供給危機より対応が困難だ」と述べている。■

 

 

Intel Sharing Between US and Ukraine 'Revolutionary' Says DIA Director - USNI News

By: John Grady

March 18, 2022 2:28 PM


2022年3月25日金曜日

自暴自棄になったプーチンが核兵器使用を許可したら? 核兵器使用を止めてきた核抑止力の機能が低下し、世界は大変なことになる。

 

 

Tactical Nuclear Weapons

US Military B-61 nuclear weapon. Image Credit: US DOD.

 

ロシアが戦術核をウクライナで使用した場合、抑止力は回復できるか?

 

クライナ西部の中心都市リビウは、不気味なほど静かだった。午前3時、リビウの西40マイル、ポーランド国境からわずか6マイルのヤボリブ基地上空で、鮮やかな閃光が放たれると夜は昼へ変わった。3分後、轟音で目を覚ましたリビウ市民は、地平線の南ストリイ方面にも閃光を見た。

 プーチン大統領は、膠着状態と敗色が濃くなったのに業を煮やし、戦術核兵器の使用を命じた。米国が広島に投下した原爆「リトルボーイ」の半分以下、第二次世界大戦末期に長崎に投下した原爆「ファットマン」の4分の1の威力の核兵器だ。プーチンは当初、核兵器使用を否定していたが、空軍基地二箇所がウクライナへの兵器輸送の中継地である証拠が集まったのを理由に、核兵器利用を正当化した。ドイツとフランスは、さらなる核兵器の使用を恐れ、プーチンを批判する一方で、対話を求め、ウクライナに戦闘停止を要求した。

 

 これはあくまでシナリオであり、仮説だが、考えうる事態だ。ホワイトハウスは、プーチンの核使用を懸念し不安を煽っているが、問題はもう一つある。

 米国が日本に核兵器を使用した当時、ワシントンでは放射性降下物や放射能の恐ろしさの理解は皆無に近かった。トルーマン政権にとって核爆弾は、ドレスデン爆撃のような大量の航空機を必要とせず、都市を破壊する迅速かつ効率的な方法であった。また、トルーマン大統領は、大規模破壊で大日本帝国に衝撃を与え、戦争を早期に終わらせれば、日本への上陸作戦を回避でき人命を救えるとの信念で、核攻撃を正当化した。

 核兵器の真実を世界が知ると、核への汚名は非常に大きくなった。冷戦時の米ソ両国は世界を数回滅ぼしても余りある量の核兵器を製造した。しかし、歴代の両国指導者は相手国代理勢力への核使用を避けてきた。1969年、ソ連外交官が、共産中国の初期核開発プログラムにモスクワが限定的先制核攻撃を行った場合への反応を内密にアメリカ側に打診したところ、米国は強硬に否定した。理論的には、この攻撃は限定的で、毛沢東の野心へのソ連とアメリカの懸念を解消する可能性があったにもかかわらずだ。核の汚名がつくのは、あまりにも危険だった。

 問題は、汚名を着せる行為に前例がない場合、汚名が強固になることだ。最後の戦時核爆発から75年余り、ロシアが小威力とはいえ戦術核兵器を使用すれば、75年待つ大国は皆無だろう。

 イラクでの自動車爆弾テロや斬首刑を考えてほしい。発生当初こそ、世界中の一面トップニュースだったが、犯行が一般化すると、その話題は紙面の奥深くに葬り去さられた。唯一の例外は、暴力が新たな規模に達した時である。リビア海岸でキリスト教徒集団が斬首された事件や、100人以上の子供が犠牲になった車両爆破事件などの例がある。

 シリアのアサド大統領が化学兵器を使用した後で、オバマ大統領がレッドラインを守らなかったとの批判が殺到したのは、化学兵器を連続使用しても代償は軽微と示唆したためだった。化学兵器攻撃のたびに、衝撃は薄れていった。爆弾で殺されても塩素の雲で殺されても、犠牲者に何の違いもないとの主張さえ出ていた。

 核兵器に話を戻そう。ロシアが戦術核兵器を使用すれば、10年以内に使用する他国が出現する。イランは精密ミサイルと濃縮ウランを保有しており、弾頭実験も行っている。ロシアがウクライナを核攻撃すれば、イスラム革命防衛隊はヤンブ、テルアビブ、バーレーンの第5艦隊司令部の攻撃を許可してもおかしくない。国際社会は、イスラエルや米国に同程度かそれ以下の攻撃で応戦するよう求めるかもしれない。しかし、こうした威力の制約は、使用するたびに徐々に損なわれていくだろう。

 抑止力は、一部の政治学者の予想以上にもろいものだ。効果的な抑止力が欠如した世界は、はるかに危険な場所となる。自暴自棄になったロシアはますます危険だ。しかし、現時点の危機はウクライナよりもはるかに大きな問題だ。ホワイトハウスは、小威力核兵器でさえ使用すればただでは済まないとプーチンに確信させるべきだ。

 

What Happens if Russia Strikes with a Tactical Nuclear Weapon? - 19FortyFive

By Michael Rubin

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Michael Rubin is a Senior Fellow at the American Enterprise Institute (AEI). Dr. Rubin is the author, co-author, and co-editor of several books exploring diplomacy, Iranian history, Arab culture, Kurdish studies, and Shi’ite politics, including “Seven Pillars: What Really Causes Instability in the Middle East?” (AEI Press, 2019); “Kurdistan Rising” (AEI Press, 2016); “Dancing with the Devil: The Perils of Engaging Rogue Regimes” (Encounter Books, 2014); and “Eternal Iran: Continuity and Chaos” (Palgrave, 2005).