2022年7月10日日曜日

ウクライナ戦でS-300防空ミサイルで対地攻撃をするロシアはミサイル在庫の減少に苦しんでいるのか

S300 ground targets ukraine

Russian MOD

 

ロシアの地対空ミサイルシステム「S-300」には、あまり知られていないが陸上目標への攻撃能力がついている。

 

シアが長距離地対空ミサイル「S-300」でウクライナの陸上目標を攻撃しているとウクライナが主張している。ウクライナ南部ミコライフ州知事の発言は、ロシアの陸上攻撃用スタンドオフ兵器が想像以上に不足していると示唆している。あまり知られていないが、S-300には対地対地攻撃能力があるようだ。

 

 

ミコライフ州のヴィタリー・キム知事Vitaly Kimは、インスタントメッセージサービス「テレグラム」で、S-300のバージョンを特定せず、この主張を紹介した。ロシアは、8x8車輪付きのS-300Pシリーズと、無限軌道を使用し、対弾道ミサイル能力を向上させたS-300Vの両方を運用している。S-300PとS-300Vの両シリーズは、ウクライナ戦争でロシア(およびウクライナ)が使用したことがある。各システムは、様々なミサイルを発射できる。

キム知事は、S-300がミコライフ州を狙い12発発射されたが、GPS誘導を後付けしたにもかかわらず、不正確なままとも述べている。

 

S-300の地上攻撃能力を欧米の資料ではほとんど報告していないが、ベラルーシのニュースサイト「Naviny」で2011年に発表した記事に詳細が記されている。

 

記事によると、ベラルーシ軍は同年の演習で、S-300防空システムを「敵領土内の重要な地上目標」に対してテストしたという。ベラルーシ当局は、これが同国初の実験であり、「S-300は、数十キロ離れた地上目標を破壊可能」と主張した。

 

 

ロシアとベラルーシの合同軍事演習「West-2009」で使用されたS-300Pシリーズ地対空ミサイルシステムとベラルーシ兵。VIKTOR DRACHEV/AFP via Getty Images

 

しかし、記事が指摘するように、「静止地上目標の攻撃は、開発者が1979年に採用したS-300防空システム、さらにその後のすべての修正版の機能に最初から取り入れていた 」。

 

当時、ベラルーシは、1980年代半ばに導入されたS-300PS(NATOコードネームSA-10 Grumble)を使用しているのが知られており、空中目標に対して最大交戦距離56マイルの5V55Rミサイルを搭載していた。前述Naviny記事によると、ベラルーシのS-300の地上目標にへの最大射程は75マイルで、誘導システムで制限されるとある。

 

 

ロシア極東のティクシに駐留する第3防空師団第414衛兵対空ミサイルブレスト赤旗連隊のS-300PS部隊。Russian Ministry of Defense

 

 

S-300Pシリーズで使用しているミサイルは、無線リンクで更新される慣性誘導システムで、終末期にはセミアクティブ・レーダー・ホーミングが使用される。しかし、慣性誘導と無線更新により、大きな面積の標的を攻撃するのに十分な精度が得られると思われる。これは前代未聞のことではない。米海軍の地対空ミサイル「タロス」も、二次的に陸上・地表攻撃能力を持っていたが、その用途には核弾頭を使用していた。

 

ロシアのS-300P防空隊員が空中目標へ発射練習をする。

さらに、このミサイルは高速で準弾道ミサイルの攻撃方法をとるため、防御は難しいだろう。

 

興味深いのは、Navinyの記事によると、かつてソ連時代も含め、S-300ミサイルは1発あたりのコストが高いため、地上目標への使用練習は法外に高価であったという。当時は、戦術的な地対地ミサイルがもっとたくさんあった。しかし、S-300PSは、高性能なS-400に置き換えられ、陸上攻撃用のミサイルとしてテストできるようになり、現在では実戦使用も報告されている。

 

なぜ今、ロシアがS-300でウクライナの地上目標を攻撃するのか、理由は不明だ。一方で、精密誘導式スタンドオフミサイルなど、適切な兵器の不足を指摘しているようにも思える。実際、ロシア軍が近年、陸上攻撃にS-300を使うようになった理由の1つとして、冷戦時代に比べて、戦術地対地ミサイルが不足していることがある。

 

一方、ウクライナ戦争の初期から、ロシアはスタンドオフミサイル、特に爆撃機や水上艦、潜水艦、地上発射機から発射する最新の対地巡航ミサイルが不足しつつあるのではないかという報告が、ペンタゴンを含めてなされている。

 

一方で、この種のミサイルの交換は難しくなっている。調達コストが高いだけでなく、対モスクワ制裁の影響で重要部品の入手が困難になっているのは間違いない。

 

また、冷戦時代のKh-22(現代のKh-32含む)空中発射型スタンドオフミサイルを陸上目標攻撃用に使用することにしたのも、こうした配慮からかもしれない。

 

S-300が陸上目標に使用されるようになったのは、少なくとも部分的には実用的な理由がある可能性がある。通常の砲兵隊の射程外でも、S-300の防空砲台がある場合、高価な巡航ミサイルによる攻撃を行うよりも、こうした手段で攻撃する方が理にかなっていると考えられる。陸上攻撃用の巡航ミサイルは、標的を攻撃するために遠くまで移動するだけでなく、飛翔速度が低いまま攻撃することになり、そもそも行動に移すまでに相当の時間がかかる。ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンダルM」も供給が減少している可能性が高く、最低限の備蓄を維持することが戦略的課題であり、重要度の高い兵器である。最も重要なのは、S-300も使用期間が長いため、老朽化した本体が余っている可能性が高く、静的な地上目標に使用した方が良いと思われているのではないか。

 

ロシアがGPS誘導搭載の兵器を改良したのであれば、準弾道ミサイルとして使用するため、さらに精巧で長期的な構想を示していることになる。そうであれば、精度はかなり向上するだろうが、専用システムほど確実な精度にはならないかもしれない。また、爆砕弾頭は、陸上目標攻撃ではなく、航空機の撃墜に最適化されている。

 

ロシアがS-300で陸上攻撃していると現段階で断定できないものの、可能性はあり、兵器の在庫が枯渇しているのを考慮すれば、理にかなった方法と思われる。■


Russia Now Firing S-300 Surface-To-Air Missiles At Land Targets In Ukraine: Official

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BYTHOMAS NEWDICKJUL 8, 2022 8:36 PM

THE WAR ZONE


 

ロシアの新型大型潜水艦は核動力核弾頭魚雷で放射能の津波を起こし、沿岸都市を壊滅させる構想----完全に狂っている

 

Belgorod Submarine

Via @k560s


 

ベルゴロドは、諜報活動と核動力・核武装魚雷の発射を念頭に建造された、多用途で恐ろしい潜水艦だ。

 

 

核動力、核先制魚雷、長距離魚雷を搭載するため作られた世界最長の潜水艦、K-329ベルゴロドBelgorodのロシア海軍での運用が始まる。

 

Sevmashのウェブサイトによると、ベルゴロドは金曜日、セヴェロドヴィンスクのSevmash造船所で行われた式典で、同国の海事局に引き渡された。

 

ロシアは同艦を「多様な科学的探検と救助活動」を行う「研究」艦として宣伝しているが、実態は破壊的な攻撃能力を発揮し、海底プラットフォームの母艦になる巨大な海底兵器システムだ。GlobalSecurity.orgによれば、高度に改良されたオスカーII級原子力誘導ミサイル潜水艦であるベルゴロドは、全長約600フィートで、190メガワットを供給できるOK-650V原子力発電プラント2基を持ち、水中排水量約2万4000トンとある。

 

ベルゴロドは、2M39ステータス6または「ポセイドン」大陸間核搭載自律魚雷を搭載する最初の艦となるようで、6本を搭載する。

 

ウラジーミル・プーチンが2019年の激しい演説で強調した、いわゆる6つの「超兵器」の1つであるポセイドンの主な仕事は、ほとんど警告なしに沿岸施設を攻撃することである。特にダーティな弾頭を搭載しているとされ、即座にダメージを与えるだけでなく、放射能で汚染し、継続的な作業や修理に支障をきたすとされる。攻撃は、放射能の津波を発生させて実行する。この兵器は非常に耐久性があり、何千マイルも離れたところから発射された後、攻撃前に長時間待機し続けることができる。アメリカのあらゆるミサイル防衛能力の効果を軽減するため設計された核兵器運搬システムだ。

 

2019年2月、ロシア国防省は、同兵器の水中実験を示すと主張し、動画を公開した。同艦は、深海ドローン、深海潜水用原子力ミニサブ、海底センサーネットワークに電力を供給する水中原子力発電プラントも搭載可能だという。

 

 

ベルゴロドで配備を予定している深海潜水無人探査機「ハープシコード」。(ロシアMOD)

 

海底ケーブルなど、水中深くで比較的小さな物体を調査・操作・回収することは、ロシアの特殊任務潜水艦の主要な機能の一つだ。そのためには、細かい動きと、小型スラスターで水中で比較的安定した姿勢で「ホバリング」する能力が必要となる。

 

海底に「着陸」する想定のため、ベルゴロドで下部舵が強化されていることが説明できるかもしれない。ロシアが特殊任務に使うその他潜水艦やアメリカの潜水艦は、海底で支えるため格納式スキッドを備える。

 

このようなホバリング能力は、有人または無人の潜水艦を発進させ、回収する鍵となる可能性がある。

 

2015年、意図的なリークと思われるが、ロシア国営テレビで、ベルゴロドの船体下側に小型の潜水艦が寄り添うブリーフィングスライドが登場した。この小型潜水艦が何であるかは明らかではないが、プロジェクト10831ロシャリクLosharik原子力ミゼット潜水艦の可能性を指摘する声も出ている。

 

2019年、ロシャリク艦内の事故でロシア人水兵14人が死亡した。ロシア海軍によると、同艦は修理中で、艦隊に復帰する予定だという。

 

 

オスカーII級

 

オスカーII級誘導ミサイル潜水艦は、世界最大級の大きさを誇っている。対艦巡航ミサイル「P-700グラニット」24基を搭載するため、船体の幅が非常に広く、左右の外板と内板の間にある長いコンパートメントに格納されているのが特徴である。改装後は、P-700を発射セルに交換し、72基のカリブルまたはオニキス巡航ミサイルを搭載する。

 

ベルゴロドは改装で、全長は約100フィート伸びた。このため、K-329はプロジェクト09852とも呼ばれ、ソ連時代の巨大なタイフーン級弾道ミサイル潜水艦(現在ロシア海軍で1隻のみ限定運用)より長くなった。

 

 

海上公試中のベルゴロド。(Uncredited)

 

ベルゴロドの就役により、ロシア海軍は海中での攻撃と情報収集用のプラットフォームを手に入れ、各種ミッションを達成できるようになった。ポセイドン魚雷を発射し、遠方から都市を破壊できる。また、通信ケーブルなど海底の物体を探知・操作し、敵の目をくらませることができる。また、ロシアは急速に拡大する北極圏を支配する新たな手段を手に入れた。氷が溶ければ、スエズ運河を通過するより短い大陸間航路ができるかもしれないのである。

 

ロシア海軍は最も汎用性が高く、恐ろしい兵器を運用することになった。■

 

 

Russia's Giant Nuclear Torpedo-Carrying Submarine Declared Operational

BYHOWARD ALTMANJUL 8, 2022 2:23 PM

THE WAR ZONE

 

ウクライナ戦の最新状況(現地時間7月9日現在)ロシア軍は補給中のかたわら戦闘行為を続けている

 

シアの侵攻が始まり136日目の土曜日、ロシア軍はドンバスでの作戦休止を続けているが、ロシア軍は同地域で限定的な攻撃作戦を続けている。


作戦の一時停止

ロシア軍が木曜日から実施している作戦休止は続いている。ロシア軍は、次のドネツク州への侵攻に備えて部隊の整備と補給を行っており、スロバヤンスクが最初のターゲットとなる可能性が高い。


The situation in the Donbas during the Russian operational pause. (ISW)


「7月7日に作戦休止を発表したロシア軍司令部は、この時点のロシア軍の状況から、休止の必要性を認識したようだ。セベロドネツクとリシチャンスクの掌握を終えたロシア軍は、再び大規模な攻撃作戦を開始する前に、戦闘力を再生し、補給を含む支援能力を強化する必要があることは明らかだ」と、戦争研究所は最新の作戦アップデートで評価している。

 しかし、ロシア軍は完全に停止したわけではなく、現在も限定的な攻勢を続けており、ウクライナ軍に嫌がらせをするために長距離砲撃を行っている。多くの労苦と犠牲者を出しながらも、ロシア軍はセベロドネツクとリシヤンスクを攻略し、ルハンスク州の占領を完了させたのである。戦闘行為を完全に停止するのは賢明ではない。



ロシア軍の損失

ウクライナ軍は連日、ロシア人犠牲者数を発表している。これらの数字は公式の数字であり、個別に検証されたものではない。

 しかし、欧米の情報機関による評価や独立した報告書は、ウクライナ側の主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報リサーチページ「オリックス」は、800両以上のロシア戦車(フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの合計装甲能力を上回る戦車)と、あらゆるタイプの4,500両以上の軍用車両の破壊または捕獲を視覚的に確認し、この評価は英国国防省によって確認されている。


Destroyed Russian tanks during the Battle of Mariupol. (Ukrainian Ministry of Internal Affairs)


他のウクライナの主張のほとんどについても、同じような独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。

 さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出したという。

 実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いものとなっている。

 土曜日の時点で、ウクライナ国防省が主張するロシア軍損失は以下の通りである。



  • 戦死37,200(負傷者、捕虜は約3倍)

  • 装甲兵員輸送車3,815

  • 車両および燃料タンク 2,687

  • 戦車1,638

  • 大砲832

  • 戦術的な無人航空機システム 674

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 217

  • 多連装ロケットシステム(MLRS) 247

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター 187

  • 防空隊が撃墜した巡航ミサイル155

  • 対空砲台108

  • 架橋装置などの特殊装備プラットフォーム66

  • ボートおよびカッター 15

  • 移動式弾道ミサイルシステム「イスカンダル」4


この数週間、ドンバスで継続的な圧力と攻撃作戦にもかかわらず、ロシアの死傷者の割合は大幅に減速している。このことは2つのことを示唆している。1つ目は、ロシア軍の指揮官が攻撃作戦に慎重になっており、目的を達成するために複合兵器をフル活用していること、2つ目は、ウクライナ軍の戦闘力や弾薬が不足していること、これは3カ月以上にわたってロシア軍と戦っていれば当然予想されることである。最近の現地からの報告によると、この2つの要因はいずれも事実であり、戦いの疲労が双方に追いついてきているようである。


 5 月のほとんどの期間、ロシア軍の死傷者が最も多かったのは、スロビヤンスク、クリ ビイ・リフ、ザポリジャー周辺で、そこで行われていた激しい戦闘を反映したものであった。数日後、数週間後、激しい戦闘はスロビャンスクの南東、セベロドネツク、ウクライナの重要な町ライマン、リシチャンスク周辺のバクムット方面に多く移った。

 その後、ヨーロッパ最大の原子力発電所があるケルソンとザポリジヤ周辺でのウクライナ軍の反攻により、最も多くの犠牲者が出た場所は再び西に移動した。

 土曜日、ウクライナ軍はアヴディフカとバフムトの近辺で最も大きな犠牲を出した。

 ロシア軍の東部での新たな攻勢の目的は、ドネツクとルハンスクの親ロシア派の離脱地域を完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアの間に陸上回廊を作り維持することであると表明している。■



YOUR DAILY TACTICAL UPDATE ON UKRAINE (JULY 9)

Stavros Atlamazoglou | July 9, 2022

https://www.sandboxx.us/blog/your-daily-tactical-update-on-ukraine-july-9/


安倍暗殺事件の余波④ アジア太平洋各国の反応

A man looks at a television broadcast showing news about the attack on former Japanese prime minister Shinzo Abe earlier in the day, along a street of Tokyo on July 8, 2022. (Photo by CHARLY TRIBALLEAU/AFP via Getty Images)


オーストラリアのアンソニー・アルバネーゼ首相は、「悲劇的」な死に「ショックを受け、悲しんでいる」と述べた。「安倍氏は、G7、G20、国連で世界情勢をリードする巨人でした。「彼の遺産は世界に影響を与えるものであり、オーストラリアにとって深く、前向きなものであった」。



倍晋三元首相が暗殺者の手により死亡したとの悲報は、今日の午後、太平洋を駆け巡り、過去50年間の日本でおそらく最も有名な政治家に対する悲しみと称賛を呼び起こした。

 岸田文雄首相は、安倍元首相の死後、涙をこらえながら、「気持ちを表現する言葉が見つからない」と述べた。「選挙の最中にこのような野蛮で悪意のある行為は許されるものではありません」。

 明らかに手製の凶器を使った単独犯による攻撃は、「民主主義の根幹」に対する攻撃であると岸田首相は述べた。安倍首相は、自民党の投票率を上げるため選挙活動をしていた最中に殺害された。日本の参院選は日曜日に予定されている。オブザーバーは、この選挙が岸田氏の党内支持と日本をリードする能力を測る重要なテストと考えている。

 日本の政治と国家安全保障のトップエキスパートであるリッキー・ラーセンは、安倍首相の死で自民党の支持率が大幅上昇する可能性が高いと指摘する。

オーストラリア国立大学の名誉教授ラーセンは、「自民党は、あきらめかけていた議席も勝ち取るだろう」と語った。

 また、安倍首相の死は、彼が長年支持してきた日本国憲法の平和主義条項の改正につながるかもしれない。自民党などの政党は憲法の一部を改正を支持しているが、具体的にどの改正に同意するかはまだ不明である。憲法改正を支持する可能性のある政党連合は82票を必要とする。「憲法改正に弾みがつくかもしれない」(ラーセン)。

 日本が防衛費をGDPの1%弱から2%に倍増させることは、党の最近の戦略文書が提案しているように、確実なになってきた。太平洋に波紋を投げかける可能性がある。中国が否定的な反応を示すのは確実だが、問題は、長年のライバルであり敵でもある日中両国が、摩擦をどう処理するかである。

 ラーセンによれば、テロ事件からわずか数時間後、中国は安倍首相の死に対する西側の反応をどう管理するのが最善か、決めかねているとという。中国指導部は、安倍の死で自分たちの覇権への根強い挑戦を取り除かれると考えているかもしれないが、「綱渡りのような反応をしようとしている」のだという。2004年に起きた台湾独立派の総統候補暗殺未遂事件と同じ結果を望んではいない、とラーセンは言う。この暗殺未遂事件で、台湾独立派は大きく傾いたかもしれない。しかし、ラーセンによれば、今回の中国の関心は、欧米に最も良い影響を与える形で反応することに完全に集中しているという。

 中国の環球時報の最初の反応は予想通り、「日本の右翼勢力はこの事件を利用して、日本政治の保守化の流れを推し進め、安倍首相の支持者は『自由で開かれたインド太平洋』やその他の政策を推進し続け、北東アジアの地政学にさらなる安全保障リスクをもたらすだろう」と懸念している、と分析している。

 同紙はまた、これが選挙で自民党に与えるかもしれない後押しに焦点を当て、基本的に日本は 「戦争への道に戻るかもしれない」軍国主義社会とする専門家の意見を引用している。

 一方、日本の同盟国やパートナー諸国は、日本国民に対する悲しみと同情をもって反応した。

 オーストラリアのアンソニー・アルバネーゼ首相は、「悲劇的」な死に「ショックを受け、悲しんでいる」と述べた。「安倍氏は、G7、G20、国連におけるリーダーとして、世界における巨人であった。「彼の遺産は世界的な影響力を持ち、オーストラリアにとって深く、前向きなものであった。

 台湾の蔡英文総統は、「重要かつ親しい友人を失った」と述べた。台湾と日本はともに法治国家であり、わが国政府は暴力的で違法な行為を厳しく非難しています」と述べた。

 インドネシアのバリ島で開催中のG20も同様のコメントでこのニュースに反応した。■


Abe assassination could have ramifications for Japan's defense posture

By   COLIN CLARK

on July 08, 2022 at 10:21 AM




2022年7月9日土曜日

安倍暗殺事件③ USNI Newsの評価 西太平洋の安全保障面での貢献

 




Japanese Prime Minister Shinzo Abe in Tokyo on Aug. 18, 2017. DoD Photo

 

倍晋三元首相は、8年間の政権運営を通じ、地域と世界の安全保障で日本を積極的な役割に導いたが、金曜日、選挙運動中に暗殺された。67歳だった。

 


 2012年から2020年まで、日本の近代史上最長の連続首相在任となった安倍は、健康不安を理由に退陣したが、その後も日本の政界と世界を舞台に重要人物であり続けた。安倍は、本土防衛に重点を置くのではなく、21世紀の課題に対応するため自衛隊を近代化させたと評価されている。

 中国との関係改善を掲げ就任し、戦後初めて北京を訪問した安倍だが、2021年の台湾侵攻をめぐる発言で中国政府から非難を浴びた。

 「台湾有事は日本の有事であり、したがって日米同盟の有事である」「北京、特に習近平国家主席は、この認識で誤解をしてはならない」と述べた。

 

 

2015年10月18日、米海軍唯一の前方展開型空母USSロナルド・レーガン(CVN-76)の指揮官クリストファー・ボルト大佐(左)から話を聞く日本の安倍晋三首相(中央)。 US Navy Photo

 

 日中間の緊張、特に尖閣諸島における北京の領有権主張をめぐって、安倍政権時代から過去10年間、中国の航空・海軍演習が頻度をあげており、ロシア軍も交えて行われるなど、着実に高まっている。

 太平洋での領有権主張を強化するため中国が人工島を建設し、北朝鮮がミサイルや核の実験を積極的に行い、ロシアがウクライナのクリミアを併合するなど、日本は2014年の防衛省白書で「ますます厳しい」安全保障環境を認識した。

 白書は、こうした課題に対処する「動的防衛力」を求めた。歴代の白書は、統合性、アメリカ軍や同盟軍との相互運用性、サイバーや宇宙といった新領域の確保を強調していた。

 安倍が退任する頃、政府は自衛隊の近代化に向けて主要な措置を講じていた。例えば、高性能のF-35AおよびF-35BライトニングII統合戦闘機の購入、短距離離陸型に対応した海自ヘリ空母の改修、ディーゼル電気潜水艦の増産を決定した。

 近代化計画は継続しており、2022会計年度の防衛予算は470億ドル以上である。USNIニュースによると、2022年度予算における海軍関連の資金は、水上艦5隻と潜水艦1隻の建造を要求している。もがみ級フリゲート艦の9号10号艦に1100億円(9億5700万ドル)、たいげい級潜水艦6号艦に736億円(6億4100万ドル)、あわじ級掃海艦5隻目に134億円(1億1670万ドル)、海洋調査艦に279億円(2億4290万ドル)、ひびき級海洋監視艦4号艦に196億円(1億7070万アメリカ)などが予算として含まれている。

 インド太平洋地域では、安倍首相は日本、米国、オーストラリア、インド間で「クワッド」と呼ばれる非公式な安全保障体制を構築した中心人物だった。台湾、尖閣諸島、南シナ海で強圧的態度を強める中国への対抗策として、2020年にオーストラリアが他の3カ国とともにインド沿岸のマラバール海上演習に参加することに合意したのも、この関係の進展の一例だ。

 

 

 

 

日本の安倍晋三首相と一緒にドナルド・J・トランプ大統領が、2019年5月28日火曜日、日本の横須賀でJSかがに到着しました。 White House Photo

 

 

 軍事協定は、トランプ政権が環太平洋パートナーシップ協定から手を引いた後、インド太平洋における主要な地域貿易・経済開発協定を目指す安倍の後押しを強化するものであった。安倍は、東南アジアをはじめ開発途上国に港湾から飛行場、高速道路に至る重要なインフラを建設する北京の「一帯一路」構想に代わるものとして、この開発同盟を位置づけていた。

 安倍首相の任期中、北朝鮮は核兵器を拡大し続け、ミサイル技術を急速に開発したため、北東アジア、さらには米国領グアムやハワイ、場合によっては米国本土に至るまで、太平洋全域に新たな脅威が生まれた。

 しかし、アメリカのもう一つの同盟国である南朝鮮との関係は外交的に低水準に達し、アメリカ、韓国、日本の3国の軍隊の間で重要な情報共有が一時期途絶えた。この分裂は、貿易紛争と南朝鮮と日本の間の植民地時代の歴史が原因である。

 平壌のミサイル計画に関する情報は、このパートナーシップの中心であった。

 3カ国のミサイル防衛の統合は依然課題であり、今年のリムパック演習で試される。

 トランプ時代、ワシントンと東京の関係は必ずしも円滑ではなかった。

 

2015年3月、日中韓首脳会談を行うバラク・オバマと日本の安倍晋三首相。Japan Prime Minister’s Office Photo

 

 

 日本には米軍兵士5万人以上がおり、駐留経費や駐留米軍資産の負担をどうするかは、バイデン政権発足で初めて論争の火種となった。

 安倍首相は、政治的なつながりや経済政策でしばしば物議を醸したが、憲法改正で他国への集団防衛、地域の沿岸警備隊の訓練、海外基地の設置などを可能にすることに成功した。

 安倍首相が退陣した際。戦略国際問題研究所上級顧問を務めるマイケル・グリーンMichael Greenは、安倍首相の在任期間に関するパネルセッションで、安倍は日本の戦後史において「最も重要な首相の一人とまでは言わないまでも、その一人に位置づけられるべきだ」と述べた。経済的にも外交的にも「競争を意図」し、インド太平洋の安全保障を維持したと、グリーンは付け加えた。■

 

Former Japanese Prime Minister Abe Leaves Legacy of Western Pacific Security Changes - USNI News

By: John Grady

July 8, 2022 5:50 PM


安倍暗殺事件② Defense Oneの評価

Then-Japanese Prime Minister Shinzo Abe inspects an honor guard ahead of a Self Defense Forces (SDF) senior officers' meeting at the Ministry of Defense on September 17, 2019 in Tokyo, Japan.

GETTY IMAGES / TOMOHIRO OHSUMI

 

 

暗殺された元首相は、日本を平和主義から脱却させ、中国抑止のためカウンターストライク能力を備え、よりグローバルな姿勢へと導こうと尽力する途中だった。

 

 

2014年、安倍晋三元首相は、台頭する中国から日本を守るために第二次世界大戦後の平和主義的な軍事政策を進化させる必要があるという考えに日本を導く礎を押し進め、専門家にはこれを本人の最大の功績と評価する向きがある。

 安倍元首相(67)は金曜日、奈良県での選挙演説中に撃たれ、暗殺された。彼の死によって、欧米はインド太平洋地域における対中国政策の強化を求めるアジアで最も影響力のある擁護者の一人、現代の安全保障上の脅威に対応するために日本の軍事・防衛産業を変革する主要な人物を失った。ジョー・バイデン大統領は声明で、安倍を「日米同盟の擁護者」と呼んだ。

 ロイド・オースティン国防長官は同じく声明で、「彼の殺害は日本国民と、自由で開かれたインド太平洋を重視するすべての人々にとって悲劇」と述べた。「安倍氏は首相として、日米両国の重要かつ永続的な同盟を擁護し、日本が同盟でさらに大きな役割を果たす道を開いた。日本、インド、オーストラリア、米国による四極安全保障対話などの場を含め、インド太平洋全域で同盟とパートナーシップを強化した彼の活動は、より安全で安定し繁栄した地域という遺産を残した」。

 戦後の日本の憲法第9条は、軍事力の保有を一切禁じている。それ以来、日本が維持する軍隊は、地震や津波などの人道的対応や、2004年のイラク復興支援のための派遣で物議を醸したことがあった。

 安倍首相は9条の解釈を変更し、2015年には「平和への積極的貢献」という新解釈に基づく法整備を行った。

 高まる脅威から国民を守るため、日本は防衛力を近代化し、米国と軍事協力を強化し、集団的自衛権に貢献しなければならないと、安倍首相は主張した。

 

 

安倍の功績

 

 安倍首相に仕えた日本政府関係者の一人は、公の場での発言は許可されなかったが、「本人は現行憲法をより柔軟に解釈し、日本の自衛隊が米国とより密接に協力できるように変えることに貢献した」と述べた。中国が南シナ海の島々を軍事化し、攻撃的な戦術をとっているにもかかわらず、この構想は人気を集めなかった。 

 その後6年間で、安倍は海上自衛隊に空母「いずも」を就航させた。V-22オスプレイや、甲板に離着陸できるF-35B共用戦闘機の母艦となる最新型ヘリ空母の第1号である。安倍首相はまた、女性将校の登用や、新型潜水艦に女性用寝台を設置することを支持した。

 日本生まれの移民で上院初のアジア系アメリカ人女性と自称するハワイの民主党上院議員メイジー・K・ヒロノSen. Mazie K. Hironは、安倍を親しい仲間として悼み、2017年の最後の会合で、「日米韓の三国同盟の重要性」を話し合ったと回想した。

 今年、ロシアによるウクライナへの全面戦争が始まってから、日本の軍事観はさらに進化している。安倍の首相罪人の最後の年である2020年には、NHKの調査で40%の回答者が、日本は 「敵ミサイル基地を直接攻撃する能力」を持つべきと答えた。2022年には、回答者の55%が、敵のミサイル発射基地を破壊する「反撃能力」、すなわち長距離攻撃能力を保持すべきと答えた。日本は、中国や北朝鮮のミサイルの脅威に直面している。

 「日本が防衛費の大幅な増額を検討している今、非常に興味深いのは、長距離攻撃能力に目を向けていることであり、こうしたものは今や日本国民の強い支持を得ている」と、戦略国際問題研究所日本担当のクリス・ジョンストーンChris Johnstoneは言う。「安倍首相が中国の脅威を理解し、日本がそれに対して何をすべきかを考える上で、時代の最先端を走っていたことを反映している」。

 重要なのは、安倍が海上自衛隊をブルーウォーター・ネイビーにし、世界的なプレゼンスを拡大するよう推し進めたことだという。「安倍首相の長期的なビジョンは、安全保障だけでなく、経済やグローバルな問題についても、国際舞台で日本がより大きな役割を果たすのを追求することだった」。

 秋元諭宏会長兼理事長が率いる、笹川平和財団USAは声明で、「安倍元首相は日本の偉大なリーダーの一人であり、日本の外交的影響力を世界に広げ、日米同盟を強化し最も重要な外交政策の遺産を残した」「自衛し同盟国と協力するための法的・運用的能力の強化措置は、安倍首相なしには不可能だっただろう」と述べた。■

 

 

Abe's Unfinished Legacy: Leading Japan and its Military to Confront Modern Threats - Defense One

 

Tara Copp

BY TARA COPP

SENIOR PENTAGON REPORTER, DEFENSE ONE

JULY 8, 2022 12:24 PM ET