2022年7月21日木曜日

ルーマニア事故で見つかったリーパー用ポッドが関心を呼んでいる。無人機用に極秘で各種ポッドが開発されている。対ロシアISRに関連

  Mysterious Pod Carried By Air Force Reaper Drone That Crashed In Romania

via Twitter. screen capture via Twitter


 

ルーマニアで墜落したMQ-9で、シリアで墜落したリーパーが搭載していたのと同様のポッドが見つかった。

 

週ルーマニアで墜落した米空軍の無人機MQ-9リーパーは、2年前にシリアで墜落した別の無人機の主翼下にあったものと類似していると思われるポッドを搭載していた。このポッドは今も謎のままだ。

 問題のMQ-9は7月14日、ルーマニア空軍の第71航空基地(Campia Turzii)から南約3キロの畑に激突した。空軍は同事故を確認し、調査中と述べているが、原因や経緯は依然明らかではない。

 その後、MQ-9の残骸を回収し、撤去する作業を撮影した海外メディア画像がソーシャルメディアに登場し、リーパーがパイロンにやや箱型のポッドを搭載していたことが明らかになりった。Twitterのオープンソース情報愛好家たちは、ルーマニア墜落事故のポッドと2020年のシリア墜落事故のポッドの類似性にすぐ気づいた。後者では、リーパー2機が空中衝突後に墜落したと伝えられている。

 近年、MQ-9用ポッドシステムの開発がさかんで、製造元ジェネラル・アトミックス含む各社が、将来のハイエンド紛争における無人機の有効性を確保する努力を展開しているが、今回のポッドは識別できない。

 

 

ジェネラル・アトミックスがリーパー用オプションで提供するポッド型システム、または同無人機への統合を進めるポッド型システムの一部。General Atomics

 

L3HarrisScalable Open Architecture Reconnaissance(SOAR)ポッドやSledgehammer電子戦ポッドなど、パイロン搭載型のリーパー向けポッドシステムが多数公表されている。また、スペインのSENERグループによる、情報、監視、偵察(ISR)センサーペイロードを搭載するよう構成可能なモジュール設計のNATOポッドもある。

 

 

左から、SOARポッド、スレッジハンマーポッドのレンダリング、NATOポッド。L3Harris/General Atomics/SENER Group

 

今回のポッドは、過去にアメリカ空軍と契約してポーランド基地から飛行していたジェネラル・アトミックスの社有リーパーが搭載したSOARポッドと形状がやや似ている。しかし、SOAR、スレッジハンマー、NATOポッドはいずれもルーマニアやシリアの墜落事故の残骸に見られたポッドと比較すると前端が短いように見える。

 また、ルーマニア事件で回収されたポッドのフロントエンドでは上部に3本の明確なパネル線が見える。SOARにその構造がなく左右に非常に特徴的なパネルがあるが、今回のポッドにはないようだ。

 

 

7月14日にルーマニアで墜落した死神に搭載されていたポッドの前端をクローズアップ screen capture via Twitter

 

 

SOARポッド前面のクローズアップ。 L3Harris

 

今回のポッドは、米空軍のモジュール式多目的設計であるAgilePodまたはUltra Groupの Rosetta Echo Advanced Payloads(REAP)ポッドのバリエーションである可能性が指摘されているが、これら2つのシステムでは統合パイロンを特徴としていない。同じことは、アジャイル・コンドル製の人工知能駆動型照準ポッドにも当てはまるが、これも今回見られるものより著しく小さい。さらに、ルーマニアやシリアの墜落事故の残骸に見られるポッドと、パネルラインが異なっている。

 

 

An AgilePod. AdamWorks, Inc.

 

 

REAP ポッドがMQ-9に搭載されている. General Atomics

 

もちろん、未知のパイロン一体型のAgilePodやREAP、あるいは同様のデザインのバージョンが存在する可能性はある。また、MQ-9やその前身MQ-1プレデターには、空軍や中央情報局(CIA)など、アメリカ政府機関が採用した機密ポッドシステムが数多くある。ネバダ州のユッカドライ湖の秘密滑走路は、エナジー省のネバダ国家安全保障サイトのエリア6内にあり、CIAと協力し、長年にわたりリーパーと同サイズの無人機に独自センサーやその他のペイロードを搭載する改造テストを展開している。

 これらの機密ポッドの多くは、見通し外通信(BLOS)中継およびデータ共有機能を提供すると知られており、無人機は、長距離の任務中に、画像他の情報を指揮統制センターに直接提供できる。また、無線や携帯電話などの通信を検知して位置特定し、テロリストや過激派への標的攻撃を支援する目的で設計されたものもある。

 ポッド型通信とデータ共有、ジオロケーション機能は、2020年のシリア墜落では確かに意味があった。墜落事故が起きたシリア西端での米MQ-9は、アルカイダ関連団体のメンバーやその他テロリスト集団への標的攻撃の監視と実施に関連していた。ポッドには、信号情報システム、合成開口撮影機能付き小型レーダーなど、センサーシステムが搭載されていた可能性もある。

 ルーマニアで墜落したリーパーについての情報は限られており、やや矛盾しているため、今回の事件からポッドについて手がかりを得ることは困難だ。地元テレビ局ニュースネットワークDigi24によると、7月14日の無人が墜落の後、ルーマニアのヴァシレ・ディンク国防相が訓練に参加していたとある。しかし、同地域の米空軍最高司令部である在ヨーロッパ米空軍(USAFE)はOvert Defenseに対し、「同地域での作戦を支援する通常任務を遂行していた」とだけ述べている。

 またOvert Defenseによると、USAFEはMQ-9はイタリアのアヴィアノ基地にある第31戦闘航空団の所属で、2021年1月にルーマニアの第71航空基地に立ち上がった第31遠征作戦群第1分隊の所属と述べている。空軍はその2カ月後に、同基地に第31遠征作戦群隷下の第731遠征攻撃飛行隊を設置したため、このこと自体が注目される。

 「ISR能力を発揮することに加え、MQ-9はアジャイル戦闘コンセプトを支援し、機動部隊の自由を守り、地域の共同および連合軍と統合する」と、空軍は第1分隊にこの地域で期待される任務について述べている。「また、MQ-9は同盟国やパートナー国との相互運用性を確保するための演習に参加することができる。新たに活動する飛行隊はMQ-9機と飛行士を含み、その他米空軍資産と協力しながら支配的で持続的な攻撃と偵察能力を提供する責任を負う」と、第731遠征攻撃飛行隊について、その部隊を立ち上げたときに述べている。

 先週ルーマニアで墜落したMQ-9は、演習か訓練に参加していた可能性が高い。ロシアが2月にウクライナ全面侵攻を開始する前から、米軍はNATO加盟国である同国でプレゼンス強化に着手していた。ロシアのさらなる侵略を抑止するために、同盟全体の戦力態勢は強固になった。その結果、加盟国軍間の訓練も増えている。

 同時に、米国はじめNATOのISR機材は、有人・無人を問わず、ロシアとの国境付近や黒海周辺を定期的に飛行している。米空軍MQ-9がどの程度貢献しているかは不明だが、関与しているのは事実だ。1月には、イタリアのシゴネラ海軍航空基地から黒海を飛行中のリーパーがオンラインで追跡されていた。

 さらに、米国政府がウクライナ側に対して、各種情報を提供していることはよく知られている。4月に起きたロシア海軍巡洋艦モスクワの撃破の一因となった黒海でのロシア艦船の動きも含まれているという。

 ルーマニアに墜落したMQ-9が当時何をしていたのか、搭載していたポッドの正確な目的は何だったのか、すべてにおいて確実なことは不明だ。しかし、シリア上空で標的攻撃作戦に使用されていたと思われる極秘システムを搭載したリーパーが、ロシアとNATOの緊張が非常に高まるこの時期に黒海地域を飛行するのを目撃されたのは、興味深い。■

 

Mysterious Pod Carried By Air Force Reaper Drone That Crashed In Romania

BYJOSEPH TREVITHICKJUL 20, 2022 12:36 PM

THE WAR ZONE


ウクライナでHIMARSはロシアに深刻な損害を与えつつある。追加供与が決まり、ウクライナの期待が高まる

 


こ数週間、M142高機動砲ロケットシステム(HIMARS)は、徐々にしかし着実にウクライナを有利に近づけている。さらに多くのHIMARSをウクライナが受け取る準備が整いつつあり、ロシアのウクライナ侵略の命運が確実になりつつある。



死の雨を降らせるHIMARS

M142 HIMARSは3名(運転手、砲手、指揮官)しか必要ない。ミサイル6発を搭載し、弾薬にもよるが、最大43マイル離れた目標に発射できる。HIMARSがさらに優れているのは、対砲撃回避能力です。HIMARSは各弾頭を発射し数分で移動できるため、敵に対応する時間をほとんど与えない。

 ウクライナ軍はHIMARSを有効活用している。ウクライナ軍は計画的に目標選定し、正確に攻撃することで、巻き添えを食わずにロシアの軍事力と補給線を徐々に低下させている。

 ウクライナ軍は自国に殺傷力の高いミサイルを打ち込み、弾薬庫や補給路など、学校や建物に隣接することが多い軍事目標を標的にしている。しかし、民間人目標に近いにもかかわらず、ウクライナ側は大きな巻き添え被害を出さずにやり遂げている。ターゲット情報に加え、HIMARSの精度も証明している。


Ukrainian HIMARS fires at targets


ザポリージャ州でウクライナ軍HIMARSが発射された。(ウクライナ軍参謀本部)


ウクライナ軍指導部は、HIMARSの有効性について、ウクライナ軍の防衛に極めて重要であったと述べている。HIMARSはドンバス前線を安定させ、ロシアの進攻を食い止めるのに役立っている、と言う評価だ

 ウクライナ軍のHIMARSはロシアの最前線部隊ではなくロシア軍弾薬庫や兵站庫を標的にしている。

 これまでのところ、わずか数週間で、ウクライナ軍はHIMARSを使い、ドネツクやルハンスクの親ロシア派の飛び地を含む占領下の各地にある弾薬・物流基地30箇所以上を破壊した。その結果、ロシア前線部隊は基本的な必需品や弾薬が不足し始め、1日2万発の砲弾を無造作に発射していた砲兵隊も、今はより慎重に発射任務をこなさなければならなくなっている。

 「HIMARSは最近導入されたばかりなので、ウクライナ側は運用を開始してまだ日が浅い。しかし、同システムは精密かつ射程が長いので、ウクライナ側はより体系的にロシアの努力を損えるターゲットを注意深く選ぶことができる」と米国防関係者が評している。


HIMARS in Ukraine


ザポリージャ州でのウクライナ軍HIMARS。(ウクライナ軍参謀本部)


ジョン・カービー国家安全保障会議戦略コミュニケーション調整官は2日、記者会見で、米軍は大統領令によるあらたなドローダウンパッケージ(16回目)として、ウクライナにHIMARSを追加派遣すると明らかにした。

 「今週末、政権はウクライナ向け武器・装備の次期大統領令を発表する。大統領就任以来、ウクライナ支援の16回目のドローダウンとなる」とカービーは述べた。

 「このパッケージには、ウクライナ軍が戦場で効果を発揮しているHIMARS追加が含まれる。さらに、多連装ロケットシステムと砲弾の追加も含む」。

 水曜日にロイド・オースティン米国防長官は、国防総省がウクライナに追加で4台のHIMARSを送ると発表した。これで、ウクライナのHIMARSは合計16台となる。

 HIMARSに関しては、米国は侵攻開始以来同じアプローチを取っている。HIMARSの初回パッケージは、わずか4台だった。主に2つの理由からだ。一つは、ウクライナ軍が大量の新兵器に振り回されるず兵器システムを導入できるようにする、もう一つは、ウクライナ軍が兵器システムに適応し、有効に活用できるかを判断するためだ。■


HIMARS: How an advanced US artillery system is winning for Ukraine - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | July 20, 2022


Stavros Atlamazoglou

Greek Army veteran (National service with 575th Marines Battalion and Army HQ). Johns Hopkins University. You will usually find him on the top of a mountain admiring the view and wondering how he got there.

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2022年7月20日水曜日

FCASテンペストの実現を目指し、日英伊三カ国の作業分担が明らかになった(ファーンボロ航空ショー2022)


tempest_design


Jaguarの取り組みでは、FCAS用のユニバーサル周波数センサーの技術開発が焦点となる。

タリア国防省とレオナルドの上級代表は、英国主導の未来型戦闘航空システム(FCAS)開発の作業分担について、センサーと通信機能に関する日本の協力の詳細を含む、新たな詳細を明らかにした。

 イタリア空軍のFCASプログラム・オフィスのダビデ・デンタマロDavide Dentamaro中佐とレオナルド経営陣は、ファーンボロー航空ショーで火曜日にメディアに対し、単一および複数国レベルで評価段階にあることを確認した。

 「我々は、それぞれの国家要件の重複を評価するために、政府と協議中」とデンタマロ中佐は、確認し、「これは、要件を定義するための重要な段階」と付け加えた。

 中佐はまた、現在進行中のFCASの取り組みが、ヨーロッパの戦闘機における従来の取り組みとは「まったく異なる」ことを示唆し、「産業界のパートナー間で完全な相乗効果がある」という。

 FCASは、第6世代の戦闘航空能力を設計する多国間プログラムで、2018年に英国国防省によって設立されたこのプログラムには、イタリアと、日本との協業が含まれており、プログラム関係者によると、スウェーデンもプロセスを注視しているという。

 しかし、レオナルドUK の Major Air Programmes のディレクターであるアンドリュー・ハワードAndrew Howardは、時間経過とともに各国の要求の違いが出てくると予想している。

 「効率化のため共通化は必要ですが、オープンアーキテクチャで対応できるような自由な操縦や行動の自由が必要です。一国が単独でこのプログラムを実現するのは無理がある」と述べた。

 7月18日、英国のFCASチーム(英国国防省、BAEシステムズロールス・ロイス、レオナルドUK、MBDAで構成)は、FCASプログラムの主要部分であるテンペスト戦闘航空プラットフォーム実証機を今後5年以内に飛行させると発表した。

 ハワードによれば、今後2年間は各国の要求を一致させ、3極のFCASチームが能力を発揮する期間としてに10年を与えることになる。

 一方、レオナルドのFCASディレクター、グリエルモ・マヴィリアGuglielmo Mavigliaは、イタリア、イギリス、日本が2035年以降に「新しい防衛資産」の恩恵を受けると確認したが、コンソーシアムは、早ければ2040年に輸出市場の「活用」を目指すとも述べた。

 マヴィリアはまた、イタリアとイギリスの第5世代F-35で生み出された戦術・運用経験が、第6世代戦闘航空プラットフォームの開発で重要と説明した。

 「4G(タイフーン)から6G(戦闘機)への飛躍は、本当に大変なことかもしれません」と警告した。

 また、マヴィリアは、日本がこれまでの議論に「シームレスに」溶け込み、スケジュール面でも同様の野心を共有していると説明しました。

 「日本の要求は、イタリアやイギリスの要求と似ています」。さらにハワードは、イギリスとイタリアのレオナルドが、ELT含む業界パートナーとFCASの統合センシングと非誘電効果(ISANKE)および統合通信システム(ICS)の開発に注力していると説明し、「初期協議は非常に心強い」と述べた。

 「私たちは、イタリアのエレトロニカと、共通のISANKEとICSのアーキテクチャの可能性を共同評価するなど、プロジェクト多数で協力しています。この作業は、イタリアが間もなく参加する第6世代センサー能力に関する日本との継続的な協力関係を補完するものです」と述べた。

 レオナルドによると、ISANKEは、FCASの機体全体に配置され各能力の「蜘蛛の巣」となる。

 「ISANKEは、多機能な無線周波数と電気光学のセンシングおよび非キネティック エフェクト ノードの完全に統合されたネットワークです。各ノードは、電磁波スペクトル全体で情報を収集し、高度な融合アルゴリズムを使用し情報を結合します。その結果、包括的な状況認識画像が得られ、航空機乗員に戦闘空間の強化された姿と戦闘における真の情報優位性を提供します」と、イベント後にレオナルド広報担当者が述べていた。

 ICSは、複数の戦術的通信と安全なデータリンクシステムを備え、FCAS編隊全体で迅速に情報を交換し、ISANKE融合能力を活用する。

 「ICSはまた、FCASがより広い戦力構成と情報を共有することを可能にし、マルチドメイン作戦における情報の優位性に貢献します。これは、FCASの第6世代の能力の重要な要素です。パイロットは、戦場における周囲の状況や他の存在について、これまで以上に素早く、より長い距離で認識が可能になります。その結果、優れた戦闘効率と生存率が実現するでしょう」と広報担当者は付け加えた。

 ISANKEとICSの最も重要な要素は統合になるかもしれないので、ハワードは、レオナルドがFCASのデジタルバックボーンを作成するプロセスを続けていることについても説明した。戦闘用クラウドも提供される予定だ。

 より深いコラボレーションを実現するため、具体的な分野を検討している」とハワードは語る。「例えば、ICSはイタリアの専門技術で重要な分野であり、多機能処理について英国国防省の技術実証プログラムを背景に、今後協力していきます」。

 さらにハワードは、2月に締結された、戦闘機のセンサー技術に関する日英協力研究の取り決めも紹介した。

 当時のレオナルド社声明によると、「ジャガー」の取り組みは、航空機が「空、陸、海からの将来の脅威をより良く検知し、素早く正確に目標を見つけ、敵対国が運用する監視技術を拒否する」ことを可能にする普遍的な周波数センサー技術の開発が特徴だ。(FCASの取り組みで日本に期待される役割は、その後拡大している)。

 レオナルド関係者は、レーダーの小型化も今後含まれる可能性を示唆しており、同社は「より深いレベル」で実現をめざしているとと同社幹部は結論づけている。■



Italy expects Tempest exports by 2040; Japan working on jet's Jaguar system - Breaking Defense


By   ANDREW WHITE

on July 20, 2022 at 5:02 AM

 

新興企業ブーム社の超音速旅客機にノースロップ・グラマンが参画。空軍での用途に着目か。米空軍は人員貨物の超音速移動に関心を示している

 Boom’s Overture Supersonic Airliner Gains Northrop Grumman As Military Partner

Boom Supersonic

 

 

超音速旅客機「オーバーチュア」は、民間向けに構想されたものだが、ノースロップ・グラマンが軍事用途に注目している。

 

 

ースロップ・グラマンブーム・スーパーソニックは、将来の超音速旅客機「オーバチュア」の派生型を、米軍および同盟軍向けに開発するため協力すると発表した。契約合意は、英国で開催中のファーンボロ国際航空ショーで最終決定されたが、両社パートナーシップは、ブーム・スーパーソニックにとって民生・軍用ニーズの超音速飛行を進めるため米空軍と協力したことはあるが、防衛産業と直接つながる初めてのケースとなる。

 ノースロップ・グラマンが発表した公式発表によると、今回の共同契約は、米軍と同盟国に新しい超音速航空機を提供することが目的とある。特殊任務用航空機は、ブームのオーバチュア機を出発点とし、ノースロップ・グラマン製の空中防衛システムを搭載する予定である。発表では、オーバーチュアは「即応性」のある任務で必要な速度を軍に提供できるとしている。

 「特殊機能を備えたこの航空機は、医療品配送や緊急医療避難、あるいは従来機よりも速い広域監視に使用できるだろう」と発表されている。「また、特殊任務用のオーバチュアは、各種シナリオで他の航空機材や地上資産を調整するのに使用される可能性もあります」。 

 

Breaking Defense誌もこの共同研究を報じており、ノースロップ・グラマンの航空システム担当社長であるトム・ジョーンズTom Jonesに取材している。ジョーンズは、オーバチュアの積載量が大幅増加を高く評価している。しかし、ジョーンズは、このようなプログラムの要件がまだ理解されていないことを自ら認めた上で、次のように述べた。

 オーバーチュアの軍用任務は、広範囲に及ぶはずだ。このことは、ブーム・スーパーソニックと軍の関係がつい最近開花し始めたことも重要な点だ。コロラド州デンバーを拠点とする新興企業の同社は2014年に設立され、超音速飛行の研究開発を中心としており、オーバチュアのコンセプトは商業市場向けを主にに開発されている。「ベイビーブーム」と呼ばれる「オーバーチュア」の3分の1スケールの飛行プロトタイプ機が2020年10月には、初めて公開された。

 

 

 

「Overture」旅客型のレンダリング画像。Boom Supersonic

 

CEOのブレイク・ショールBlake Schollが設立したブームは、移動時間を実質的に半分にすることを目標としている。ファーンボロ国際航空ショーでのショールの発言によると、同社の旅客機コンセプト(65〜85人乗り)は、洋上でマッハ1.7、陸上でマッハ0.94で飛行し、航続距離は4,250カイリになる。しかし、今回のノースロップ・グラマンとの契約が成立する以前からオーバチュアには米空軍が関心を寄せていた。

 

 

Credit: Boom Supersonic

 

空軍はブーム社と2020年2月より提携し、特に政府の幹部飛行を目的としたオーバーチュアを検討していた。超音速機は、莫大な金額を支払ってプライベートフライトを利用している世界の富裕層にとって、時間を節約する点で非常に魅力的であるため、この提携は大きな驚きを呼ばなかった。空軍は、オーバーチュアを利用して、政府要人を現在使用中の既存旅客機型よりはるかに速く世界各地に移動させることができる。実際、空軍はこの潜在的な能力に非常に興味を持ち、エアフォース2後継機計画からこの研究に資金を振り向けた。

 

 

「Overture」の以前のレンダリング画像。Boom Supersonic

 

2017年、ロッキード・マーティンエアリオン(当時はブームの競合企業と見られていた)と手を組み、超音速ビジネスジェット機「AS2」を開発した。その後、ロッキード・マーティンはエアリオンとの提携を更新しないことを決め、ボーイングがその座に就いた。

 これらの提携には、現在のノースロップ・グラマン社とブームの提携を彷彿とさせるものがある。ロッキード・マーティン=エアリオン提携が発表されたとき、軍事的応用の可能性には、似たようなものがあったためだ。AS2を軍用化する計画はなかったが、マッハ1.4の速度と流線型の機体は、現在オーバチュアが潜在的に提示している速力と監視・電子戦能力の余地を軍に提供できたはずだった。しかし残念ながら、2021年、エアリオンはAS2計画を進める資金の調達に苦戦し、同社を清算することが発表された。

 ロッキード・マーティンがエアリオンと協力すると発表されたとき、本誌は超音速輸送機の軍での活用で多くの方法を提示したが、ノースロップ・グラマンとブームの連合が提唱する潜在的用途と一致している。

 今回の発表で示唆された軍用仕様「オーバーチュア」の高速輸送用途には、空軍の主要目標である貨物や人員の高速輸送が含まれる可能性がある。空軍は、有事の際に人員や貨物を世界中に素早く移動させる能力を実現するために、Space-X社の垂直離着陸型などのロケットに注目しているが、オーバチュアのような長距離超音速航空機は、需要の一部を、実現する可能性がある。

 

 

「Overture」の以前のレンダリング画像。Boom Supersonic

 

オーバチュア商用機は2024年に生産開始、2026年に飛行試験開始、2029年に乗客輸送開始の予定だが、特殊任務仕様のスケジュールは明らかにされていない。しかし、この分野の航空宇宙開発は、リスクと技術的なハードルが高く、極めて資本集約的であることを忘れてはならない。こうした要素のため、飛行テストはおろか、生産仕様のオーバーチュアが製造にさえたどり着いても、実戦配備のスケジュールに影響を与える可能性がある。ノースロップ・グラマンは、複雑な航空機を大量生産できるアメリカの大手航空機製造会社であるため、関係の進展次第では、より深いパートナーとなる可能性がある。

 ブームによれば、民間旅客機は1機あたり約2億ドルで、これは楽観的な数字とも言われており、軍用機となればもっと高くなることは間違いない。また、ブームのショールCEOは、軍向けオーバーチュアは基本的に平和利用されると主張しており、現時点では兵器搭載の可能性は否定している。

 

 

ブームのXB-1実証機、初飛行に向け準備中。Boom Supersonic

 

オーバチュアの魅力は、航続距離、積載量、速度で、限りなく既存機材にちかくなることが防衛分野でのセールスポイントだ。ノースロップ・グラマンが加わるのは、野心的な新興企業にとって有望な兆しだが、同じことは、エアリオンにロッキード・マーチン、さらにボーイングが参加したときにも言われていた。コンコルド以来となれば20年不在だった超音速旅客輸送が実現し、そして既存機材では対応不能な任務を担う軍用機の可能性を再び享受できるよう、ブームには多くの点でうまくやってほしいものである。■

 

Boom's Overture Supersonic Airliner Gains Northrop Grumman As Military Partner

BYEMMA HELFRICHJUL 19, 2022 10:00 PM

THE WAR ZONE


南朝鮮の新型戦闘機KF-21ボラメが初飛行に成功。企画どおりならF-35を買えない諸国に有望な選択肢となるかも。

 South Korea’s KF-21 Homegrown Advanced Fighter Just Took To The Air

YouTube Screencap

 

急ピッチで進むKF-21プログラムの最新のマイルストーンとして、韓国泗川空港で試作型が初飛行に成功した。

 

 

朝鮮の国産次世代戦闘機KF-21が本日初飛行した。近代的な戦闘機の開発プログラムとして極めて迅速に進められており、最新かつ最も重要なマイルストーンとなった。KF-21が地上試験を実施していることが明らかになり、本誌も報告したが、それからわずか2週間の出来事となった。

 朝鮮語で鷹を意味する「ボラメ」と名付けられたKF-21の試作1号機は、韓国南東部にある泗川空港から初飛行した。同空港には韓国航空宇宙産業(KAI)の主要生産施設が隣接している。また、韓国空軍(ROKAF)の第3飛行訓練飛行隊の本拠地でもある。

 KF-21(シリアル001)は、現地時間午後3時40分に離陸し、天候の影響で若干遅れ、午後4時13分着陸した。追跡機は、KAIの複座T-50高性能ジェット練習機だった。泗川にある第281試験飛行隊の機体だろう。

 機首に韓国とインドネシアの国旗を描いた試作機「ボラメ」は、初飛行としては珍しく、長距離空対空ミサイル(AAM)「メテオ」のモックアップを4基搭載し、胴体下のセミコンフォルマ位置に搭載していた。

 KF-21初飛行は、早ければ7月22日との未確認観測とほぼ一致した。今月初めの動力地上試験に先立ち、6月には泗川で最初の試作機が静止エンジン試験を行う公式映像が公開されていた。

 当然ながら、KF-21の初飛行は韓国メディアに歓迎されている。聯合ニュースは、「技術的障害、費用対効果、その他の実現可能性に関する疑問に対する懐疑論にもかかわらず、巨大開発プロジェクトが始動して約6年半で飛行を開始した」と報じた。

 韓国で防衛調達を管理する国防調達計画局(DAPA)は声明で、「国産戦闘機の開発成功に一歩近づいたことは、国内航空技術の新たな飛躍と強力なハイテク軍事の台頭を象徴している」と述べた。

 聯合ニュースはまた、KF-21(旧称KF-X)の開発におけるマイルストーンの歴史を紹介している。

 

  • 2000年11月。金大中大統領(当時)により、2015年の生産を目指し新型戦闘機計画が初めて発表される。

  • 2002年11月 統合参謀本部がF-16を上回るハイエンド戦闘機の開発に関する長期計画を立案。

  • 2009: 政府の委託研究により、将来の新型戦闘機の開発は経済的に可能だと結論付けられる。

  • 2011-2012: 初期研究プロセス

  • 2013: KF-Xの運用能力を含む詳細計画が完成。

  • 2015年12月 DAPAがKAIとKF-Xの開発契約を締結。


これら出来事に続いて、2020年までにプロトタイプ一号機の組み立てが始まり、2021年のロールアウトに続いた。

 DAPAはKF-21を「第4.5世代戦闘機」と表現するが、これは一般的に1990年代以降に登場した新型または大幅に近代化された戦闘機を定義するため用いられるカテゴリーだ。第5世代戦闘機と比較すると、ステルス性を主要な設計要因とし、高度なセンサーフュージョンなどの主要な属性に欠けるのが一般的だ。

 一方、KF-21は、スーパーホーネット、ユーロファイター・タイフーン、ダッソー・ラファールなどの第4.5世代戦闘機や、ロシアのミグ35やスホイ35のように1970年代から続く設計と全く異なる路線を選択している。

 KF-21は当初からスパイラルな開発経路をたどる意図で、新しい任務能力を追加するだけでなく、内部武器搭載など、重要な低視認性特性を持つバージョンにつなげる狙いがある。

 

ブロック1と呼ぶ初期型でも、空中目標を捕捉するためアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーと赤外線捜索・追跡(IRST)を装備する。

 このアプローチにより、ソウルは真の第5世代戦闘機をゼロから開発する膨大なコストと長いプロセスを回避する方法を巧みに見出しているようだ。同時に、基本型のKF-21は、ライバルの第4.5世代戦闘機と同程度の性能と、国産ならではの利点を備えることが約束されている。この観点から、非公式に「4.75」世代と呼ぶ人もいる。KF-21計画の総額は8兆8000億ウォンで、現在のレートで換算すると66億7000万ドルに相当する。

 ブロック2バージョンでも真の第5世代ステルス戦闘機には及ばくても、韓国にとってさほど問題ではないかもしれない。韓国はF-35を調達しており、さらに短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型のF-35Bの購入を計画しているからだ。

 ソウルは、KF-21のブロック1バージョンを韓国空軍に迅速に渡すことを望んでおり、これも同プログラムの利点のひとつだ。KAIは、最初の量産型KF-21を2026年から2028年に製造する計画で、老朽化したF-4EファントムIIとF-5E/FタイガーII戦闘機の代替が可能になる

 

現在の計画では、2032年に120機のブロック1が配備される段階で、より高度なブロック2の作業が順調に進んでいるはずだ。重要なのは、この機体が空対地任務もこなせるようになることだ。KF-21は、低視認性の向上と内部搭載するスタンドオフ空対地兵器の組み合わせで、北朝鮮の重要な標的に対処するため防空を突破する性能が期待される。現在の計画によれば、このようなミッションは、国産のステルス無人機と共同、あるいは少なくとも国産のステルス無人機の支援を受けて飛行することになりそうだ。同じ考え方で、KF-21は必要に応じF-35とも連携することになりそうだ。

 

 

DAPAビデオでは重武装のKF-21が標的ポッドもつけ、ステルス無人機編隊と飛んでいる  DAPA Screencap

 

ソウルが新世代戦闘機開発で自国製造のアプローチを取らざるを得なかったことも興味深い。ある段階まで、米国がAESAレーダー、IRSTセンサー、電気光学照準ポッド、無線周波数ジャマーを提供する期待があった。2015年、米国政府が該当技術の共有を拒否し、韓国は単独行動することになった。その結果、韓国産業界はこれらの技術を開発する経験を手に入れ、輸出にも可能性が出てきた。

 しかし、その他重要部品は海外供給となる。KF-21は、米国製ジェネラル・エレクトリックのF414-GE-400Kエンジンを搭載するが、同エンジンは、世界各地で信頼性が十分に証明されているのが利点だ。F/A-18E/FスーパーホーネットやJAS 39E/Fグリペンなども同エンジンを搭載している。

 主な空対空兵装は、ドイツのディールの短距離兵器IRIS-Tと、MBDA社の前述のMeteorで構成される。

 信頼性の高い航空機エンジンや空対空ミサイルをゼロから生産する能力を確立することは、容易ではない。ソウルにとっては、少なくとも米国製と同等、あるいはそれ以上の性能を持つミサイルを提供されるのであれば、入手するのは理にかなっている。

 現段階では、プロトタイプ1機が飛行し、さらに5機(うち4機は2人乗り)が生産段階にあり、次世代戦闘機を作るべく異なるルートを取るソウルの決断が功を奏する可能性があるように見える。

 しかし、落とし穴がある。飛行試験で予定されている2,000回以上の離着陸は、予期せぬ試練と問題をもたらすに違いない。そして、インドネシアのコミットメントの問題がある。インドネシアはプログラムの第1フェーズに20%出資しており、50機のKF-21を購入する予定だった。しかし、支払いの遅れはインドネシアが長期にわたりKF-21を維持しない可能性を示唆している。しかし、F-35より低価格が約束されているKF-21は、JSFプログラムに参加できない国にとって、(能力が低くても)低価格の魅力的な代替品になり得る。

 KF-21が韓国空軍と輸出市場において、潜在能力をどこまで発揮できるかを興味深く見ていきたい。■

 

South Korea's KF-21 Homegrown Advanced Fighter Just Took To The Air

BYTHOMAS NEWDICKJUL 19, 2022 4:22 PM

THE WAR ZONE