2017年1月6日金曜日

核の軍拡は始まっている 遅れをとる米核戦力の近代化を目指すトランプ政権に注目



オバマ政権が核兵器を軽視した中で中ロは着々と装備の高性能化を進め、北朝鮮まで原始的とは言え核戦力を整備し始めました。8年間の遅れをトランプ政権はどう追いつこうとするのでしょうか。核兵器そのものは非常にお金がかかる代物ですが相手が腕を磨く以上、こちらはトレーニングしなくていいいという世界ではないのでしょうね。これが現実です。皆さんはどう思いますか。

‘Let It Be An Arms Race’: Our Nuclear Adversaries Have Already Started

By ADAM LOWTHER on January 04, 2017 at 8:00 AM
ドナルド・トランプ次期大統領は自身のツィッターで12月22日に「米国は大幅に核戦力を強化拡張すべきだ」と主張した。その後MSNBCテレビで「軍拡競争あってしかるべきだ」とまで発言したとの報道があった。
核弾頭が2万発を超える状況に戻るのは願い下げだが、この十年ほどで米国の相手国側は運搬手段を近代化し、弾頭も更新しており、ロシア、中国、北朝鮮の核兵力は様変わりしている。核の軍拡競争はもうはじまっていたのだ。
ロシア
戦略ロケット軍が新型大陸間弾道ミサイル数種を導入して冷戦時の旧式装備を置き換えようとしている。SS-18、SS-19Mod3はSS-27Topol-MおよびSS-29Yars-Mに交替する。新型ICBMはサイロに配置されるか道路または鉄道網で移動可能だ。移動式ICBMの所在を突き止めるのは非常に困難。2020年代に入るとロシアはRS-28Sarmatの配備を始めるだろう。同ミサイルは「国家破壊兵器」といわれるように再突入体を15個も搭載し、防御性能もありミサイル防空体制に対応できる。
ロシアは新型弾道ミサイル潜水艦を導入して冷戦時のデルタIV型二交替させつつある。新型のボーレイ級はロシア潜水艦で最も静粛度が高く、SS-NX-30ブラーヴァ潜水艦発射指揮弾道ミサイル(SLBM)を16発まで搭載する。一号艦が2009年に就役しており、2020年までに8隻の陣容となる予想がある。
Tu-95ベア-HとTu-160ブラックジャックの爆撃機部隊も近代化を受けているが、新型ステルス爆撃機の設計開発も進んでいる。空中発射式巡航ミサイル(ALCM)の新型Kh-102は核運用可能でロシア領空内から発射して米大陸に到達可能だ。米領空に侵入するまでレーダー探知は困難だろう。
米ロがそれぞれ相手方の迎撃手段を熟知しており、弾頭設計で大きな進展が見られる。確実に弾頭が想定どおりの威力で爆発するようにすることにロシアが特に力を入れている。公開情報は少ないがロシアがこの分野で進展しているのは確かだ。
中国
中国の核抑止力は弾道ミサイルが中心だ。DF-5(CSS-4)は液体燃料式で1980年代から配備されている。単独大型弾頭で米国を攻撃する狙いなのは命中精度が低いためだ。DF-41固体燃料式ICBMに交替しつつあり、新ミサイルは命中精度、発射準備時間双方で大幅改良されている。
またDF-31(CSS-9)固体燃料式ICBMが2006年から配備されており、中国に弾頭三個を米国に到達させる能力が改良型DF-31Aとして実現した。さらにDF-31Bは道路移動式だ。
中国も核の三本柱体制整備に向け海上抑止力に力を入れており、晋級弾道ミサイル潜水艦の配備が2010年に始まり、5隻になる予想だ。公開情報では騒音レベルは高く、容易に米海軍が追尾できる性能の低さだがそれでも中国には一歩前進だ。晋級が12発まで搭載するJL-2(CSS-NX-4)は飛翔距離は5千マイルといわれる。
2009年にはH-6K爆撃機を配備開始した。これはソ連時代のH-6を近代化した機体でCJ-10K巡航ミサイルを搭載でき、通常弾頭のみと見られるが、核弾頭型も登場するかもしれない。アジアでの覇権を狙う中国にとってH-6Kの航続距離2,200マイルで域内各地を十分攻撃できる。
北朝鮮
北朝鮮は核兵器製造能力を見せつけ弾道ミサイル開発も活発だがKN-08道路移動型ICBMに核弾頭運搬能力があるのか不明だ。今のところ北朝鮮が弾道ミサイル搭載用に核弾頭を搭載するまで技術を磨いているのかが公開情報で読み取れない。ただし金正恩が核兵器を重視する中で北朝鮮の科学者技術者は失敗が許されない立場なのは明らかだ。
まとめると米国の敵対勢力は着々と核兵力を拡充している。米国も遅れを取ってはならないのである。■
Dr. Adam B. Lowther is the Director of the School of Advanced Nuclear Deterrence Studies (SANDS) at Kirtland, AFB. His latest book is Defending the Arsenal: Why America’s Nuclear Modernization Still Matters. The views expressed in this article are Dr. Lowther’s alone and do not represent the official position of SANDS or the Air Force at large.


ヘッドラインニュース1月6日(金曜日)


1月6日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。


B-52飛行中にエンジン脱落
1月4日ノースダコタ州上空を飛行中のB-52HのTF-33エンジン一基が機体から脱落し地上に墜落した。米空軍はヘリコプターでエンジン残骸を捜索中。落下地点は人口希薄な地帯。B-52エンジン換装の議論がこれを経緯に活発になりそうだ。

ロシアとインドが部品補給体制のインド国内設置で合意か
3月にも締結されるとみられる2国間合意でインドにスホイSu-30向けの予備部品補給処が設立される。部品のインド国内生産につながる一歩とみられる。インド空軍が運用するSu-30MKIの稼働率は現在63%に留まっており、今後の引き上げが期待される。

T-X競作にテキストロンは態度保留
テキストロン・エアランドによれば米空軍のT-X提案要求内容を検討中だがまだ参画するかの決定に至っていないとし、自社開発スコーピオンの行方はまだ不明だ。参入すれば競合他社と真っ向勝負となり、同社としては海外への販路開拓効果も期待したいところ。

核兵力近代化に米国が乗り出す姿勢
トランプは12月に核戦力の整備を重点に掲げ、軍拡競争に打って出る覚悟を表明。米核兵器が老朽化している間にロシア、中国、北朝鮮は近代化、拡充を進め、10年前とは全く異なる戦力を整備している。この三国の現況はどうなっているか。(この記事は別途ご紹介予定)

フィリピンに近づこうとするロシア
航空機、潜水艦など装備提供をロシアがフィリピンに提案していることが判明した。デュテルテ比大統領はこれまでの対米関係を見直す動きを公然と見せており、大統領就任後ロシア艦船が2隻フィリピンに寄港している。さらにロシアはフィリピンとの軍事協力も実現させたいとしている。恒例の米比海軍演習について同大統領は頻度を下げ、海域も南シナ海から離れた地点に変更し、中国を刺激したくないとしている。


2017年1月4日水曜日

ヘッドラインニュース1月4日(水)


1月4日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。


P-1,C-2のニュージーランド販売の成約をめざす日本
ニュージーランドの軍用輸送機、哨戒機調達事業に日本も手を上げている事が判明した。昨年9月の時点で日本政府から両機種の一般情報をニュージランド政府に提供している。日本からは両機種同時採用を期待し、部品の共通性を強調し、費用節約を利点に上げている。P-1はボーイングP-8との一騎打ちになるがC-2ではエアバスが競争相手になりそうだ。採用の場合、一部部品のニュージランド生産も認められるだろう。



中国空母遼寧が南シナ海で航空機運用を実施
中国によると1月2日に遼寧のJ-15をはじめて南シナ海で運用訓練したという。荒天下での運用でヘリコプターが支援に活躍し、空中給油も実施したとのこと。



カール・ヴィンソン空母打撃群が出港
USSカール・ヴィンソン(CVN-70)は空母航空隊2を搭載し、巡洋艦レイク・シャンプレイン、駆逐艦マイケル・マーフィー、ウェイン・E・メイヤーとともに今週西海岸を出港し、西太平洋に向かう。第三艦隊の指揮下で第7艦隊とも連携するという。


フューチャーウェポンのホスト、マックが死去
リチャード・マッコウィッツが1月2日死去した。脳ガン。元海軍SEAL隊の「マック」としてディスカバリーチャンネルの「フューチャーウェポン」でホストを務めた。

2017年国防関連の見通しをアナリストはこう見る


現時点で各アナリストも新政権の国防政策の行方を見通せなくなっているのが現状のようです。とはいえ、そこはアナリスト、以下の知見を紹介しています。でもF-35、核兵器近代化(これはトランプがすでに支持しています)、海外展開の行方については言及されていません。

Aviation Week & Space Technology

Opinion: Nine Defense Predictions For 2017

Dec 23, 2016 Byron Callan | Aviation Week & Space Technology

2017年の防衛産業セクターを予想したいが水晶玉は透き通ってこない。そこで無理やり予言することとする。
➊ 米国防総省予算はオバマ政権時より好転するとはいえ、十分ではない。予算強硬派を自認するミック・マルヴェイニー下院議員(共、サウスカロライナ)をホワイトハウスの予算管理局長に抜擢したことからしてペンタゴン支出案は連邦予算で別格扱いで増加するだろう。今後四年間年率3ないし5パーセント成長すると業界では期待している。ただし当初はそこまで達しないだろう。予算強制削減条項を2011年予算管理法から削除することになるだろう。
➋トランプがツィッターで国防調達の優先順位を示したことから懸念が残っている。とはいえ、騒ぐわりにはたいしたことではないのかもしれない。エアフォースワンとF-35を巡るツィートに対して業界はコスト削減に協力すると反応しており、危険性を緩和することになろう。また業界も急速に学習し、本人の事業知識が増えれば調達関連のツィートは減るだろう。
➌大手防衛産業の合併、企業買収に可能性がある。アシュ・カーターが国防次官時代に設定した現在の省方針は2009年のもので大手企業の合併を極力回避させるものだったが、新政権でこれが変更になる可能性がある。株価が記録更新し、金利上昇が見られる中で株式への影響は減り配当が伸びるのは近年の実績を上回るだろう。最大手5社間の合併はすぐに生まれないだろうが、製品の品揃えを補完するロッキード・マーティンとシコルスキーのような合併はあり得るだろう。企業整理による大規模一時解雇を回避する効果が期待される。
➍議会内部に大幅国防予算削減の動きは依然として見られない。失業率が低いとはいうものの高給の働き口が少ない中で、基地閉鎖は地元経済への影響が大きいし、国防インフラを閉鎖すること含め人気のない選択肢だ。
➎イランと中国が主要な安全保障上の課題としてトランプ政権が認識するだろう。ロシアは脅威度を減じてくるだろう。イランが注目されるのはトランプが2015年の核開発合意に反対していることに加え同国の域内での行動そのものが原因だ。トランプは中国については貿易と為替政策でコメントしており、「一つの中国」原則そのものへも疑問を感じていることも摩擦要因で安全保障構想にも影響がでそうだ。
➏国防調達の大型案件はインフラ整備と財政刺激策の形で現れるだろう。現行の兵器開発は即効性があるものとして地元経済や雇用への貢献が期待されるがGDPへの貢献となると財政刺激策が勝る。
➐民生技術の導入は議会の支持もあり引き続き活発だろう。下院・上院の軍事委員会はそれぞれ民生技術応用を軍に求めているが、ペンタゴンの新体制がカーター長官ほどの熱意を示すか不明だ。連邦事業の契約行為での規制緩和で国防分野への新規参入が楽になるが、大きな影響は生まれないだろう。
➑為替レートが国防装備品の調達価格に影響を及ぼすので、米ドルが主要欧州通貨に対し引き続き高止まりになるか注目だ。
➒地政学的な突発事件でトランプ政権の国防政策の方向も変わるだろう。国防事業社委員会は昨年10月の報告書で新政権は発足後270日以内に大きな危機的状況に遭遇する事が多いと指摘している。トランプの国家安全保障協議会で経験不足なこと、トランプのツィート癖がこれに輪をかけるかもしれない。2001年にブッシュ政権の当初の国防構想は9.11テロ攻撃でひっくり返されている。
バイロン・キャランはキャピタル・アルファパートナーズの役員。本記事中の見解はAviation Week とは無関係。​

2017年1月3日火曜日

2017年は台湾に注目 中国封じ込め体制の構築が太平洋の課題だ。


新年はトランプ大統領の新思考に注目です。中国については1970年代の思考が継続され、台湾を孤立させた方が都合が良い状況を作ってきましたが、トランプの電話一回で虚構が崩れつつあるわけです。やはりトランプが当選してよかったと思える瞬間でしたが皆さんはどうお感じになったでしょうか。台湾もそうですが、沖縄をめぐる中国の動きにも今年は注目していかなければなりません。米戦略では在日米軍もある程度の被害は避けられない前提ですが、そんな「想定外」の事態は考えたくないというのがこの国の「空気」でしょう。沖縄、台湾さらに日本列島と「空気」ではなく、地政学、パワーポリティクスで見ていくべき時代に来ていますね。なお、日米豪台と国名が出る中で韓国については全く言及がないことに注目すべきではないでしょうか。


Taiwan, Trump, & The Pacific Defense Grid: Towards Deterrence In Depth

By ED TIMPERLAKE and ROBBIN LAIRD on December 29, 2016 at 4:00
AM

トランプ次期大統領が台湾総統と電話会談したことで外交界に波紋が広がっているが、今や歴史のページを進めて21世紀の太平洋抑止力戦略の一部に台湾を組み入れるべき時が来た。
中華人民共和国(PRC)は太平洋進出を公言し、軍事影響力を行使し米国及び同盟各国の権益に真っ向から挑戦する姿勢を示している。台湾から先にも軍事外交戦略を展開し、太平洋での兵力投射を日本列島からさらにオーストラリアまで広げようとしている。
そこで台湾制圧が日本、オーストラリア、太平洋の米軍基地を睨むために重要な要素となっているのは明らかだ。では米国は台湾防衛を黙視したままでいいのか。太平洋戦略の再構築に台湾が果たす重要な位置を無視できるのか。
ニクソン、キッシンジャーがソ連への対抗策として中国の抱き込みを模索した時代から時間は止まったままだ。ソ連は崩壊したが、ロシアはソ連ではない。今日のクレムリンは中国とはレアルポリティクだけを共有する関係だ。このためロシア封じ込めを期待してPRCに媚を売っても得るものはない。ロシア封じ込めは異例の任務になる。21世紀のロシアはプーチンのもと軍事力で露骨に国益を実現することに躊躇していない。また中国も異例な規模の大国であり、ニクソン-キッシンジャーが交渉していた頃の姿から劇的なまでに変貌している。
「PRCとの関係正常化は三段階の共同声明が1972年、1979年、1982年で形成されてきた。各文書でPRCとUSは明確にお互いの相違点を確認し、暫定的な平和実現のため相違点をあえて黙認してきた。暫定という言葉に意味がある」とダニー・ラム(アナリスト)は強調する。
これがカーター政権末期に「一つの中国政策」に変わっていった。カーターは台湾と断交しPRCを唯一の中国合法政権と認定した。だがこの政策は冷戦期に今はないソ連と対抗する中に形成されたものであり、海洋進出するような軍事力を中国が獲得する前の話だ。政策方針の骨董品置き場から抜け出して21世紀の台湾政策を形成すべきときに来た。より広範な封じ込め戦略の一部とするのだ。
徹底的封じ込め政策
米国では運用可能なテクノロジーとあわせ太平洋地区の中核同盟国での政策変更により全く新しい徹底的な封じ込め戦略deterrence in depthが可能となった。日本は防衛体制の拡大に力を入れている。オーストラリアも防衛範囲を広げるべく戦力を整備中だ。米軍は太平洋で広範な作戦展開する体制づくりに入っている。そこで今こそ台湾の役割を太平洋全体の防衛安全保障の観点で再定義すべきときだ。
海兵隊太平洋地区司令官を務めたテリー・ロブリング中将がいみじくも言っている。「徹底的封じ込めという用語が気に入っている。実態をそのまま表しているからだ。徹底的防衛では対応にならないときがある。相手の行動を抑制し変えさせないと域内安定に役立たない。軍事経済両面で必要で国際法の規範に従うことがすべての諸国に求められている」
この考え方は軍事的にどう実現できるのだろうか。米海軍は統合破壊ウェブとして広範囲に分散した艦船、航空機、潜水艦をネットワークで結び、各種センサーと攻撃手段で「単独戦闘はもうありえない」体制を整備している。ドナルド・トランプ次期大統領が示した政治意思があれば台湾も同様な抑止体制の一環に取り組める。
海軍作戦副部長に就任したマイク・マナジール少将と話す機会があり、少将は広範囲な作戦海域で兵力を統合する意義を強調した。空軍、海軍、海兵隊のチームが互角の相手とのハイエンド戦を想定しているのは明らかだ。
米陸軍がここで果たすべき役割は防空ミサイル防衛能力の整備だ。だがそのためには部隊をモジュラー化し、機動性をもたせハイエンド含むあらゆる局面の軍事衝突で有効に機能を発揮できる部隊にすることが必要だ。
台湾が分散防衛体制ならびに徹底的抑止体制の一部に加わることは容易だ。その手始めに同盟国の沿岸警備部隊との共同作戦に組み入れることがある。台湾も米国並びに同盟国に参加しプレゼンス維持の一環になれるはずだ。
台湾海軍・空軍も分散プローチによる統合太平洋防衛戦略に参画できる。PRCが太平洋に軍事力を広げるのに対抗しようとする中で台湾を孤立させ、日米豪の抑止力部隊に加えない場合、北京政府は台湾を簡単に略奪してしまうだろう。トランプ次期大統領による電話会談はPRC封じ込めの新局面でとても大きな印を残したのだ。
両著者が三年前に太平洋戦略を論じた著書を書いた時点で北京は台湾を自らの帝国の遠心力により統御可能と見ていた。台湾解放戦は中国が考える中核的領土権益の一部に組み込まれている。台湾島は清朝が17世紀に統合して以来中国の一部とされてきた。1895年に日本が統治し、第二次大戦後に返還された。戦後の中国内戦で蒋介石は本土から追い出され、台湾に落ち着き、現在の中華民国となった。民主体制を進めた中華民国は強圧的な体制を旨とする中国本土からは睨まれる存在だ。[1]
台湾の意義
新台湾政策は太平洋諸島向けの新しい方向性とともに中国対象の「抑制封じ込め戦略」 “constrainment strategy”の創設でカギとなる。台湾はPRCが太平洋に出入りする際の軍事戦略上の連接点に位置する。台湾、米国、日本、オーストラリアのいずれも西太平洋や南シナ海で航行の自由を制約する中国の動きは認めてはならない。
PRCが台湾を制圧すれば、軍事的に米国や同盟諸国の作戦を妨害してくるだろうし、PLAにより中国沿岸から100マイル範囲で強固かつ有効な情報収集偵察監視拠点のネットワークが形成されればPLAAF攻撃機と軍事衛星は米海軍並びに同盟各国に大きな脅威になる。
台湾が自国防衛体制を強化するのは台湾の正当な権利であり、台湾関係法でも許容されている。「米国は台湾に防衛装備や防衛活動を必要な量なだけ提供し、台湾に十分な自衛能力を維持させることができるものとする」
だがPRCへ台湾が自衛するためには米、日、豪各国と共同しない限り戦略的な意義が生まれない。台湾は自国防衛の実現のみならず太平洋の防衛への貢献策を探っていくべきだ。一つの鍵は台湾が自国のISR体制を拡大し、指揮統制(C2)能力を引き上げることだ。
これは米陸軍が防空砲兵隊(ADA)能力をアジア太平洋で構築するのに呼応する。ADAには太平洋地区全域にTHAADミサイル防衛装備含む防空装備による支援体制を整備する必要があろう。
THAADを離島に防衛装備ネットワークの一環として展開するにはどうしたらよいか。THAADミサイル発射機の総運搬重量は66千ポンドあり、大型CH-53ヘリコプターでは機体内部には30千ポンド、機外吊り下げで36千ポンドしか運搬できない。しかも飛行距離は621カイリしかない。しかしミサイル自体は運搬車両を別にすれば26千ポンドでCH-53が機内搭載できる。
問題はミサイル発射機を起立させ再装填する機構にある。トラック除く発射機は強化コンクリートがあれば航空機で搬入できる。あるいはモジュラー方式の搬入設備でミサイル装填は可能だろう。そうなるとモジュール化がカギになりそうだ。運用要員は海兵隊のMV-22オスプレイで陸軍ADA部隊を送り込めばよく全く困難な話ではない。ただし、THAAD指令所とレーダーは別だ。
陸軍はMV-22やCH-53Kの運用を真剣に検討していない。両機種は海兵隊所属だからだ。だが前例はある。ヴィエトナム戦のさなかに陸軍はヘリコプターで大型火砲を運搬し遠隔地に陣地を構築している。THAADを離島に展開する構想も同じ発想だが利用する技術が異なるだけだ。
そこでADA陣地を島しょ部に展開し、必要に応じ飛行場を利用するとして、航空母艦は島しょ部から200キロ以上離れた地点に留まらせ、陸上陣地に防空体制を取らせる。米側がこうした防御網を構築する中で台湾も一部になる。近い将来に台湾が自前のC4ISR(指揮統制通信コンピュータ情報収集偵察監視)体制を構築すれば、台湾の防空能力を防御ネットワークの火力の一部に投入できる。
台湾関係法は明確にこうした手段を認めている。「米国による武力あるいはその他手段により台湾の安全、社会経済制度並びに国民の安寧を脅かす勢力に対抗できる能力を維持するものとする」
トランプ大統領は根本的に新しい政策のはずみをつけた。歴史はドナルド・トランプが台湾総統からの電話を取ったことを道徳上の義務の表れとし、ロナルド・レーガンがベルリンの壁を撤去せよと求めたのと同等に扱うだろう。■
[1] Laird, Robbin; Timperlake, Edward; Weitz, Richard (2013-10-28). Rebuilding American Military Power in the Pacific: A 21st-Century Strategy: A 21st-Century Strategy (Praeger Security International) (pp. 25-26). ABC-CLIO. Kindle Edition.


ヘッドラインニュース1月3日(火)


1月3日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

T-X競合が正式にスタート
米空軍が次期練習機の情報提供要請を12月30日発表し、正式にT-X調達が始まった。業界からは5社から6社が回答を寄せ163億ドルの事業受注を狙う。高等パイロット養成事業では350機の調達をめざし、ノースロップT-38タロン(1961年~)と交替させる。性能要求水準は2015年発表の内容と変わらず、6Gの持続、瞬間で7.5Gだが超音速飛行の要求はない。T-Xは米空軍の費用性能解析事業の第一号となり、要求性能と機体価格のトレードオフを業界と情報公開しながら進めてきた。これにより開発コストの大幅削減を目指す。



T-X競合会社の陣容は?
ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマン、レイセオン、シエラ・ネヴァダとなりそう。選定は2017年中に決定する。低率初期生産をへて、初期作戦能力獲得は2024年度末の見込み。


B-21レイダーの予想性能
次世代ステルス技術と長距離航続能力で最先端の防空網も突破できると予測。情報は堅く秘匿されているが機体構造には排気管が全く見当たらないとの証言もある。ロシアがステルス対抗レーダーを開発したが米空軍は十分なステルス技術を発揮できる自信を示している。B-2も今後改良を行う。


トライデントII D-5発射実験に成功
USSメリーランドが大西洋で発射していたことが明らかになった。トライデントの発射実績はこれで159発目。試射用の弾頭には核爆弾は装着されていない。米英海軍が運用する戦略ミサイル原潜に搭載される。単価は30百万ドル。弾頭には100キロトンから455キロトンまでの選択が可能。今回試されたのはMk-5再突入体。ロシアとのSTART条約で米軍の核弾頭は7割が海軍潜水艦に搭載されている。

台湾の迎春編隊飛行
台湾空軍は恒例の初日の出編隊飛行を今年もF-16で花蓮県海岸でおこなった。

2016年12月31日土曜日

★F-35に代わる選択肢は可能なのか トランプ発言を考察する



トランプ次期大統領の発言が色々波紋を呼んでいます。それは既成事実そのものが崩れる効果を産みかねないため既得権を手にしている勢力にとっては大変な事態ですが、それだけ今まで本質を議論していなかったことになるのでしょう。何が何でも新型機が必要としてこれまで時間を空費してきましたが、2017年はJSF構想そのものが大きな曲がり角に来そうな予感が出てきました。これを不愉快と捉えるのではなく、必要な性能と価格の関係を見直す機会にしたいものです。やはりトップが変われば大きな変化が生まれそうですね。「軍事情報センター」は本稿を勝手にコピーするのであれば出展を明確にしてくださいね。

The National Interest

The 'Super' Plane That Could Replace the F-35 Stealth Fighter

December 28, 2016


ドナルド・トランプ次期大統領は自身ののツィート(12月22日)で「F-18スーパーホーネットの価格検討」をボーイングに頼んだとし、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の価格があまりにも高すぎるのを理由に上げていた。ワシントンの政治エリート層とジャーナリストから冷笑を呼んでいる。
確かにF/A-18E/F現行型ではF-35の性能に劣るが、業界筋の反応は例によって先入観にとらわれている。トランプ発言を文字通り解釈してはいけない。トランプの真意はスーパーホーネット発達型ならF-35の売りである性能の多くをもっと合理的な価格で実現できるはずと言っているのだ。
米海軍にとっては高性能版スーパーホーネットはF-35Cより安価ながら8割方満足できる選択肢となる。米空軍にとっては要求内容とは程遠く映るが、陸上運用の攻撃戦闘機としてスーパーホーネットがオーストラリア空軍が実証済みだ。残る海兵隊は短距離離陸推力着陸にこだわるあまり、トランプがJSFをキャンセルすれば大変なことになる。三軍は敵地侵攻能力を断念してスタンドオフ攻撃に特化するだろう。F/A-18E/Fは今後もステルス機になる見込みはないからだ。

ステルス性
スーパーホーネットがF-35にどうしても勝てないのはステルスだ。ステルスの実現には設計そのものを最初から変える必要があるからだ。だがボーイングはレーダー断面積を特に前面で減らしたスーパーホーネットをテストしている。またコンフォーマルタンクで3,500ポンドの燃料を追加搭載し、低視認性(LO)の兵装ポッドで2,500ポンドの搭載も構想している。これでF/A-18E/Fのレーダー探知可能性は減りながら、性能は向上するが、スーパーホーネットはF-35並のステルス性能は発揮できない。とはいえ物理的に可能な選択肢ではある。

電子戦能力はどうか
だがロッキード・マーティンや米空軍が公言するようにステルスがすべてなのだろうか。ロシア、中国は低周波レーダーでステルス戦闘機追尾の能力を整備中だ。そうなるとステルス機を支援する電子戦能力の拡充が一層重要になる。「ステルスは少なくともここ十数年は必要だが永遠に続くマジックではない」と海軍作戦部長(当時)のジョナサン・グリナート大将は2014年に米海軍協会年次総会で述べている。「その先が重要だ。そこでステルス性能もそこそこにもちながら敵の無線電磁送信を無効にする機材も必要になる」
米空軍も電子戦の重要性を認識している。ステルス機パイロットの中には高度の防空体制ではステルス機といえども単独侵入は容易ではないと認めるものもある。低周波レーダーの普及でこの傾向は一層強まるだろう。「ステルスとEA(電子攻撃)はシナジー関係にあり、敵の信号探知が重要だ。LOで信号探知を減らし、EAでノイズを上げる」と空軍関係者が語る。「A2/ADの脅威環境では両者を重要視していく」
ノースロップ・グラマンAN/APG-81アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーでF-35には相当の電子戦能力が搭載されている。だがAPG-81はあくまでも高感度電子支援手段のアンテナであり、ジャマーとしても機能するが、Xバンド内の自機が使う周波数の範囲内に限られる。一方でスーパーホーネットおよびEA-18G電子戦機材にもAESAレーダーは搭載されており、レイセオンAN/APG-79もAPG-81と同様の性能がある。海軍はまだAPG-79の電子戦能力を拡充していくだろう。
F-35がスーパーホーネットに対して優位なのはBAEシステムズのAN/ASQ-239の効果もある。多数のアンテナを機体表面に埋め込み、周囲の状況をパイロットに伝えてくれる。ただしF-35の開発が長引く中でこの技術は進展を示している。海軍は統合防御電子対抗装置(IDECM)のブロックIVをF/A-18に追加搭載している。ボーイングはBAEのALQ-239や今後登場するイーグル・パッシブアクティブ警報残存装備を搭載して、レーダー警報、地理情報、状況認知、機体防御の各能力が付与できるとする。こういう新型装備でF-35のAN/ASQ-239に匹敵する性能が実現する。
別の選択肢としてEA-18Gが搭載するノースロップ・グラマンALQ-218レーダー警報受信機兼電子支援・電子情報収集(RWR/ESM/ELINT) センサーの流用がある。ALQ-218は電子情報収集ツールとして特化した装備で、ASQ-239より高性能だ。EA-18Gは未知の信号でもジャミングが可能だ。だがALQ-218は戦闘機には過剰かもしれない。

センサー・センサー融合機能
スーパーホーネットには統合電子光学目標捕捉システム(EOTS)は搭載されていないのがF-35との違いだが、ポッド式高性能センサーは搭載できる。目標捕捉ポッドのほうが有利になる場合がある。F-35のEOTSは時代遅れの技術になりつつある。F-35開発室はこの問題を認識しており、ブロックIVで解決する意向だが実現は2020年代前半までになる。F-35の個別システムのアップグレードは相当複雑であるのに対し、ポッドを交換すれば常時最新のソフトウェアが利用できる第四世代機の方が有利だ。
またステルス性能を損なうため機体外形を分解できないF-35と違い、スーパーホーネットの性能更新はずっと容易で、新型センサーも搭載できる。その例に海軍のAN/ASG-34長波赤外線探査追尾センサーポッドがあり、今年始めに低率初期生産が始まっている。AN/ASG-34投入で海軍は敵ステルス機やミサイルの探知、捕捉が厳しい電子戦環境でも可能となる。同様に長波赤外線センサーを中波EOTSに追加搭載するのはF-35のステルス特性を損なうことになり選択肢として考えにくい。
ただしF-35には切り札がある。開発が完了すればF-35は各種センサーやデータネットワークで収集した各種データをすべて集め、統合して表示できるようになる。この機能があるのはロッキード・マーティンF-22とF-35だけだが海軍は同様の「センサー融合」装備をスーパーホーネットに搭載しようとしている。海軍の複合センサー統合(MSI)は三段階で開発途上にあり、一部が実戦投入されている。目標はF-22やF-35並のセンサー融合能力を実現することだ。
海軍関係者によればスーパーホーネットのMSIはF-22・F-35の先行事例を参考にしているというが、違うのはF/A-18E/Fの現行ディスプレイでは限界があることだ。これに対してボーイングは新型大型高精細カラーディスプレイの搭載で問題解決可能としている。

ネットワーク機能
第四世代機の利点の一つに機体を探知させる無意味な送信を心配する必要がないことがある。F-35は通常は全方位有効なLink-16データリンクを使用し、多機能高性能データリンクを高度脅威環境で使う。問題は両者ともF-35の各種センサーからの大量情報を送信するスループットが不足していることだ。これに海軍が気づいて対策を考えている。他方で海軍は戦術目標情報ネットワーク技術(TTNT)のデータリンクを超高速データ・レートでEA-18Gグラウラーで実現し、海軍統合火器管制防空NIFCCAの一部とする構想を進めている。

結論は
F/A-18E/Fはステルス機になれないが、低費用で米海軍は必要な能力の8割を実現できる。発達型スーパーホーネットなら敵地侵攻攻撃除きF-35Cの性能はすべて実現する。この攻撃はスタンドオフ兵器で実現できる。米空軍へは朗報とはいえないが、発達型スーパーホネット導入を迫られれば渋々受け入れざるをえないだろう。海兵隊にはまったくいい話ではなく、短距離陸垂直着陸型のスーパーホーネットは物理的に不可能だ。いずれにせよトランプ提言でボーイングとロッキード・マーティン間でコスト競争が生まれれば納税者には悪い話ではない。提言そのもののよりも生まれる効果に期待できるのではないか。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


ヘッドラインニュース 12月31日(土)


12月31日のヘッドライン

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ロッキード、PAC-3年間受注が14.5億ドルに
米陸軍が一括発注しているペイトリオット高性能版-3迎撃ミサイルが対前年比32%で14.5億ドルに今年達していることが判明した。発注にはカタール、韓国、サウジアラビア、台湾、アラブ首長国連邦向けも含む。防空ミサイル需要は今後5年で210億ドル規模と言われ、レイセオン-ロッキード組が先行し、MBDA、タレスも売上増を狙う。


台湾の戦略的意義へ再度注目すべき
トランプの台湾電話会談で驚いている暇はない。太平洋進出を着々と進める中国は米国の国益に挑戦する姿勢を隠そうとせず、今こそ台湾の存在が日米豪の太平洋同盟関係で重要な意味を有していることを認識すべきだ。(この記事は別途ご紹介予定)


J-31輸出を狙う中国
瀋陽でJ-31の輸出仕様FC-31ジャーファルコンが23日初飛行に成功した。機体価格は70百万ドルとF-35の半額程度になるとみられる。中国は同機の輸出に力を入れそうだ。


トランプ発言で注目が集まる「スーパー」なスーパーホーネットはどんな機体になるのか
F/A-18E/FではF-35の代わりは務まらないが米海軍が進める高性能版F-18実現の追い風になる。F-35Cの8割の機能をもっと低い価格で実現できれば十分実用に耐える。オーストラリアには陸上運用攻撃機として有効だ。海兵隊は構想を考え直す必要があろう。その他ステルス、電子戦、ネットワーク機能を検討してみる。(この記事は別途ご紹介予定)

2016年12月30日金曜日

ヘッドラインニュース12月30日(金)


12月30日のヘッドライン

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建造中の空母写真配信で共同通信に中国が不快感を示す
中国国営メディアは写真流失で一層の国防情報の機密防衛が必要との警戒を訴えている。共同通信が写真を配信したのは二週間ほど前で建造中の同艦の鮮明な写真は独自に入手したと説明していた。http://www.scmp.com/news/china/diplomacy-defence/article/2057712/chinese-state-media-calls-tighter-national-security


中東地区に米空母は不在に
アイゼンハワー空母打撃群が12月26日帰国の途につき、ペルシア湾地中海で7ヶ月の任務を終えた。搭載した第三空母航空隊はISISを相手に空爆を展開してきた。通常はローテーションで次の空母部隊が交替するが今回はない。ブッシュ空母打撃群がノーフォークを出港するのは早くて1月20日になるからだ。ヨーロッパ,中東、米国でテロの恐れが高まる中でこの空白は痛い。


米空軍が衛星ジャミング対策をレイセオンに契約公布
これは衛星通信を妨害されにくくするための対策。レイセオンは新技術で広帯域グローバル衛星通信用の各衛星とともに民間商用衛星も防御する。

イタリアがATR72哨戒機版を導入
イタリア空軍がATR72海上哨戒機を四機受領した。老朽化してきたアトランティークに代わり地中海で難民の渡航を主に監視する。

2016年12月29日木曜日

12月29日(木)のヘッドラインニュース


12月29日のヘッドライン

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EP-3Eの後を継ぐのはMQ-4Cトライトンだ
情報収集機材としてMQ-4CをEP-3に代わり運用する準備を米海軍が進めている。今年夏にトライトンに器材を搭載するプロジェクトが18ヶ月の予定で始まった。中・高帯域受信装備を搭載したMQ-4Cは2021年に初期作戦能力を獲得する。


遼寧は海南島へ
台湾国防部筋はロイターに空母遼寧は六隻の随行艦と海南島方面に向かっていると伝えた。同部隊は台湾南方を12月25日に通過し、台湾防空識別圏の外側20カイリ地点に停止していた。


米空軍がJSTARS後継機のRFPを発出
B-21(800億ドル)、大統領専用機(32億ドル)に続けて地上をレーダーで監視するE-8C共用監視目標攻撃レーダーシステム機(JSTARS)のRFPが12月28日に公布された。米空軍は69億ドル事業として2024年の初期作戦能力実現を目指す。ボーイング、ノースロップ、ロッキード・マーティンに加え、多数の新規企業も参入を狙う。


放射性物質を韓国へ落とす無人機を北朝鮮が開発中
韓国シンクタンクは北朝鮮が無人機を改造し、放射性物質を含む爆発装置を搭載し韓国首脳部を攻撃する手段を開発中と指摘した。ステルス性を備えた無人機開発を目指しているという。



2016年12月25日日曜日

★★まともに作動しない中国製兵器に輸出拡大の可能性はあるのか




War Is Boring

Z-19 偵察攻撃ヘリ。. Alert5 photo via Wikimedia

Malfunctioning Weapons Throw a Wrench in China’s Arms Industry

American and Russian firms still dominate

by KEVIN KNODELL

2016年11月、中国は珠海航空ショーに展示700社を集め、アフリカ、アジアの来場者が中国製軍事装備に群がった。関心の的は新型J-20ステルス戦闘機で同機は初のお披露目の機会となった。
  1. だが中国武器輸出にはトラブルも多いと米陸軍の海外軍事研究部門のニュースレターO.E. Watch 2016年12月号が中国にハードルは高いままだと指摘している。
  2. 「世界は中国防衛産業を一流とは見ていない。原因に装備が動作不良をしたり、設計に不備があることがある。さらに付帯サービスが欠如しており、販売後の訓練や保守管理ができていない。政治的に中国を信頼していない国もある」
  3. たしかに中国は武器輸出を相当な規模で進めてきた。アフリカでは三分の二の国で中国製武器が採用されている。ここ数年間で中国の武器輸出は記録を塗り替える規模になった。とはいえ、ここにきて武器輸出は鈍化しており、世界市場はロシアとアメリカが大きく支配している。
  4. 南アフリカで9月に中国業者はJF-17戦闘機の買い手を見つけるのに苦労している。同機はパキスタンとの共同開発で米F-16に相当する。一部アフリカ諸国は購入資金で困難を感じ同機を発注しているのはナイジェリアのみだ。
  5. カメルーンは中国製攻撃ヘリコプターを4機導入したが、一機は納入直後に墜落しており、以後の調達は止まっている。中国製兵器の信頼度に懸念が広まっている。
  6. 米国、ロシアの製品が戦場で実証済みなのに対して中国製装備は購入しないとその真価がわからない状態だ。
パキスタンが運用するJF-17 は中国との共同開発。.Photo via Wikimedia
  1. 2016年9月のインドネシア海軍演習では中国製C-705ミサイルが目標を外れた。ジョコ・ウィドド大統領の目の前での大失態となった。
  2. これに対し中国専門家はミサイルの性能を弁護し、人的エラーに原因があるのではと主張する。「ミサイル発射には中間段階で人的要因が大きく作用します。標的に命中させるためには正しい参照データが必要です」さらにC-705並びに短距離用のC-701、C-704の各ミサイルはイランが支援するフーチ戦闘員がUAE艦船を攻撃した際に効力を実証済みだと主張している。
  3. 中国製兵器は世界の反乱勢力、戦闘員の間に人気があり、スーダンは中国製ハードウェアの大口購入国となり、アフリカ中の武装勢力へ供給窓口になっている。
  4. 南スーダン政府軍が中国製対空ミサイルを運用しているのが目撃される一方、スーダンが支援する武装勢力も中国製兵器を使用している。
  5. アフリカへの中国製武器輸出は同時に中国企業による大規模アフリカ投資と表裏一体で、豊富な天然資源に注目しながら中国は軍事プレゼンスを着実に強めている。
  6. 「交易が中国経済成長の中核だ」とO.E. Watch は指摘する。「中国が軍事技術での信頼性向上に成功すれば、武器輸出の経済での役割も増加するだろう」
  7. 世界で戦争がある限り、中国の防衛産業が顧客を見つけるのに苦労する事態は考えにくい。■


ヘッドラインニュース 12月25日(日)


12月25日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。


中国が南シナ海防御態勢の強化か
米政府関係者はフォックスニュースに中国が南シナ海に防空装備の搬入を準備していると語った。米情報衛星はHQ-9、LD-2000両装備が海南島に集積しているのを探知しているが、一時的な搬入にすぎないと評価している。ともに今年前半にパラセル諸島に搬入され展開している。


ハリアーの千歳展開はこれが見納め
米海兵隊航空隊VMA-542が航空運用訓練ローテーション配備で12月22日、千歳基地に展開した。F-35Bの配備が迫る中、今回がAV-8Bハリアーの最後の展開となったとみられる。



平成29年度防衛予算 F-35A調達6機分盛り込む
新年度予算に749百万ドルが6機調達用に計上された。導入後は三沢基地に配属される。またSM-3 Block II A迎撃ミサイルの調達予算も計上されミサイル防衛体制の強化が目立つ。


米民主党へのロシア・サイバー攻撃の解析進む
民主党全国本部へのサイバー攻撃に使われたマルウェアはロシアがウクライナ軍に向けて使ったものと同じX-Agentだと専門家が分析した。


中国製兵器は品質、サポートに欠陥かかえたままなぜ売れるのか
ハードウェアとしての故障の頻発に加え、取扱方法の訓練等のサポート体制が不足していることで中国製兵器への信頼は低いままだ。それでもアフリカは中国兵器の輸出先として大きな存在感を示している。(この記事は別途ご紹介しますhttps://warisboring.com/malfunctioning-weapons-throw-a-wrench-in-chinas-arms-industry-e395fa0290c3