2022年3月8日火曜日

オーストラリア潜水艦基地建設をめぐり、西側報道と中国報道を比較してみた。同じ事実が違うメッセージを発する好例。

 オーストラリアが原子力潜水艦基地を新設すると発表しました。今回はBreaking Defenseと環球時報の伝え方をそれぞれご紹介します。まず、米メディアBreaking Defenseです。


Scott Morrison, Prime Minister of Australia, speaks at UN Climate Change Conference in November. (Ian Forsyth/Getty Images)


ーストラリアはAUKUSの一環で100億豪ドル(73億米ドル)で原子力潜水艦運用基地を同国東海岸に構築するとスコット・モリソン首相が本日発表した。軍事基地新設は1990年代初めてで、候補地はブリスベーン、ニューカースル、ポートケンブラの三箇所だ。



基地には特別整備施設、潜水艦乗員や基地要員の宿舎等も含み、英海軍米海軍の原子力潜水艦も利用する、とモリソン首相は述べた。戦略的に意味のある地点で各艦を再補給しつつ、三カ国の潜水艦部隊が情報共有しつつ親密度を上げるねらいだ。


基地構築の初期段階は2023年末までに完了する。


モリソン首相は国政選挙前に原子力潜水艦の国内建造あるいは海外調達の大方針を決めたいとし、AUKUSウォッチャーの関心を集めている。


ピーター・ダットンPeter Dutton国防相は、日曜の報道番組で、「今後数カ月以内に決定する」と発言していた。モリソン首相はこれを否定したが、ダットンと意見が対立していると思われるのを避けるため、「ピーターが言ったように、我々は前進できている」と付け加えた。この件では「時間を無駄にしていない」。しかし、意思決定プロセスまで18ヶ月というスケジュールは変わらないというのだ。


モリソン首相はAUKUS原子力潜水艦事業は単なる調達事業の域を超えていると強調している。「パートナーシップ」だという。米国は技術アクセスを統制しており、「我が国が使いたい技術だけでなく、英国に対しても同様に管理している。そのため、パートナーシップの性質として貿易取決め手続き同様にともにスピードを持って進めていくことになる、という。


さらに広い世界に言及してモリソン首相は暗い見方を紹介した。二元論的で、「中国の好戦的な姿勢や独裁体制の台頭、ウクライナ侵攻で明らかになったロシアの脅威へ、西側の開放性と国際機関の利他的な野心が、知らず知らずのうちに扉を開いてしまった」と発言。


「包容力と融和により独裁政権に改革や穏健化がもたらされるとの期待」は、「裏切られた」と、長年にわたり国会議員を務めてきた首相は述べている。


オーストラリアはこの見解に基づき行動している。「先週火曜日、私はウクライナ防衛を支援するため、約7000万ドルの防衛軍事支援と非殺傷軍事装備および医療品の提供を発表しました。我々のミサイルは現場にある」と述べた。「我々は祈りを捧げたが、弾薬も送っている」


モリソン首相は、ウクライナでプーチンが勝利するかと尋ねられ、以下慎重に評価した。


「ロシア軍の実力は過大評価されていると思う」と、仮定の質問に答えたがらないことで知られるモリソン首相は言った。「ウクライナには抵抗勢力があり、時間とともに拡大するだろう。その結果、ロシアが利益を得られるとしても、維持できなくなる」。


モリソン首相は中国がウクライナ侵攻を台湾占領のモデルとして利用するのではないかという憶測で注目されるインド太平洋にも触れた。


「台湾海峡の状況とウクライナの状況に類似性を見出そうとは思わない。全く異なる状況だ。台湾海峡で予想される反応は、ウクライナで起こっていること全く異なる」■


Australia commits $10B to nuke sub base; US, UK boats welcome

With $70 million defense package to Ukraine, Australian PM says, "So yes, we have offered our prayers, but in Australia, we have also sent our ammunition."

By   COLIN CLARK

on March 07, 2022 at 1:14 PM



では、環球時報の報道ぶりを見てみましょう。中国の権益の観点しかないことが明白ですね。例によって「専門家」に伝えたい主旨を喋らせる格好になっています。記事はトップの扱いで並々ならぬ関心を示した格好ですが....


 

   

中国はオーストラリアの原子力潜水艦基地構築に警戒すべき、と専門家が警句。

 

ーストラリアは、原子力潜水艦基地の建設に巨額の予算を投じる計画を明らかにした。AUKUS協定に基づく初の原子力潜水艦が2038年までに登場すると伝えられていることから、新基地は米国の原子力潜水艦が先に使用する可能性が非常に高いと、匿名希望の北京在住の軍事専門家は述べ、基地は中国にとって脅威となるため、中国は警戒を強め海上防衛力を強化すべきだと注意喚起している。

 

スコット・モリソン首相は月曜日、東海岸に基地を設置すると発表したとオーストラリア・メディアが報じた。

 

「米国と英国の原子力潜水艦の定期的な寄港も可能になる」とモリソン首相は述べた。コリンズ級通常型潜水艦から原子力潜水艦への移行に100億オーストラリアドル(74億ドル)以上が必要になると指摘した。

 

モリソン首相は、ウクライナ危機が必然的にインド太平洋地域に及ぶと主張したが、人民解放軍海軍研究院上級研究員Zhang Junsheは、積極的な国防計画を守るための言い訳だと指摘した。

 

Zhangは、原子力潜水艦基地の整備計画は、実はAUKUSへの加盟と同じ目的に沿ったもので、オーストラリアは米国の世界覇権と地域問題介入の共犯者として行動し、中国を封じ込めるためのいわゆるインド太平洋戦略への協力を決意していると指摘した。

 

AUKUS潜水艦事業は、オーストラリアの近隣諸国や各国の核軍縮支持者の激しい批判にあっており、インドネシアやマレーシアなどの国々は、AUKUSが核軍拡競争に火をつけ、地域の平和を損ねると懸念を示していると、Zhangは指摘する。

 

北京の匿名専門家が月曜日に環球時報に語ったところによると、原子力潜水艦が運用開始するのは2030年代後半と言われているため、オーストラリアの原子力潜水艦が引き渡される前に、中国はより発展し潜在的脅威への対応力を強める。

 

しかし、匿名専門家は、基地が完成すれば、米国や英国の原潜だけでなく、オーストラリア原潜も配備でき、中国への直接的な脅威となると警告している。

 

「おそらくオーストラリアの原子力潜水艦は、AUKUS全体の枠組みの中では、基地整備より重要度が低いのだろう。基地ができれば米原子力潜水艦に中国に近い安定した場所とな利ながら脆弱性を減らせる」

 

Zhangも同様の見解で、基地は「間違いなく米国に利用される」と述べた。

 

 「中国は平和的発展の道を歩むと約束し、海洋防衛能力を開発し続け、起こりうる外部からの脅威に対処し、国家の主権、安全、領土の一体性を守るべきである」とZhangは述べた。

 

China should be on alert over Australia's future nuclear-submarine base: experts - Global Times


China should be on alert over Australia’s future nuclear-submarine base: experts

By Xu Keyue

Published: Mar 07, 2022 10:17 PM


次期大統領専用機VC-25B引き渡しは再度遅延し、2024年以降になると判明。

 



現行のVC-25Aがオファット空軍基地(ネブラスカ)に立ち寄った。Jan. 22. (US Air Force/Josh Plueger)


期大統領専用機の納入は以前の予定からさらに遅れる模様だ。




ボーイングはVC-25B一号機の引渡しを17ヶ月先送りする想定だと複数の消息筋から判明した。


空軍は新日程を了承しておらず、ボーイングと交渉の可能性がある。だが、ボーイングによる新日程予想は社外関係者に伝わっており、昨年時点の12ヶ月遅れが更に拡大していることがわかる。


「当社は空軍当局と密接に作業し、大日程の承認を得たいと考えています」とボーイング広報ディディ・ヴァンニエロップDidi VanNieropが声明を発表した。


空軍協会主催の航空戦シンポジウムで空軍の調達責任者代行ダーリーン・コステロDarlene Costello はVC-25Bの引き渡し時期を2024年との当初予定から「一年超の遅れ」になると認めた。


空軍は独自に事業点検を終えたばかりで、ボーイングとの新日程確定に「一ヶ月ないし2ヶ月」かかるとコステロは見ている。


「重要なのは事業を先にすすめることだ。新日程が決まるまで何もしないわけではない」


計画遅延は昨年夏に初めて明らかになった。コステロが議会でボーイングから通知があり、12ヶ月相当の遅れが発生しているとわかったと述べていた。


ボーイングはCOVID-19パンデミックさらに契約企業GDCテクニクスの倒産を遅延の腫瘍原因に上げている。GDCテクニクスはVC-25Bの内装工事を担当していたが、ボーイングは契約を破棄し、同社を告訴し、同社の作業が一年以上遅延しているのを理由にしていた。


遅延による費用増加分はボーイングが負担することになる。契約が39億ドルの固定価格のためだ。同契約で技術製造開発業務で747を大統領専用機に改装し、防御装備(内容は機密扱い)、電子装備および通信装備の保安強化が行われる。■


Air Force One replacement facing additional delays, up to 17 months late: sources - Breaking Defense Breaking Defense - Defense industry news, analysis and commentary

By   VALERIE INSINNA

on March 04, 2022 at 3:36 PM


前線のロシア軍はここまで苦労している。車両にまにあわせの丸太で待ち伏せ攻撃に耐える....プーチンの威勢のいい発言とあまりに対照的な姿からロシア軍の劣勢ぶりがわかる。

 Russian Trucks Wood Ukraine Armor

VIA @OSINTTECHNICAL

 

 

給活動の悪化が伝えられる中、ウクライナの道路がロシア軍殺戮の場と化している。重装甲車両や装甲兵員輸送車が対戦車兵器の餌食になる一方、非装甲車両は小火器にさえ脆弱だ。また、前進するロシア軍に人員物資を運搬する軽車両や非装甲車両の損失も増えている。そのため、ロシア運行要員は、ウクライナ内部へ続く危険なドライブでトラックを強化しようと工夫している。

 

土曜日公開されたロシアのKAMAZトラックの画像では、フロントバンパーに丸太を積み上げ、即席装甲としていた。ロシア車両に見られる「V」マークも残ったままだ。前面部分の保護に、木の板やジャンクメタルを使う車両もある。

 

VIA @OSINTTECHINICAL

 

車両は、貴重な燃料トラックと並んでPMP架橋の部材を積んでいるようだ。PMP橋は、開戦直前にチェルノブイリ立入り禁止区域のベラルーシ側でプリピャチ川Pripyat Riverに架けられたと思われる。

丸太は背後の森から切り出し、小銃の攻撃からラジエーターを保護するためだろう。ロシア乗員にとって、待ち伏せにあい、トラックがオーバーヒートで動けなくなるのは最も避けたい事態だろう。

 

ロシア軍がウクライナ侵攻で車両防御を改良した例は、これ以外にもある。鹵獲したT-72戦車の1台は、爆発反応装甲ブロックを強化するために砲塔に土嚢を載せていたが、これは無駄な試みだった。また、オフロード走行で脅威となる泥から車両脱出させる手段として、丸太を搭載した部隊もあった。さらに、無人機や対戦車誘導弾による攻撃に対抗するべく、侵攻前から戦車には檻のような即席装甲も搭載されている。

 

ロシア軍のウクライナ進攻に伴い、ロシア、クリミア、ベラルーシの友好国への補給線が長くなったため、安全性確保がより必要になった。西側の国防関係者やロシアのリーク情報によると、補給線は混乱しており、衛星画像で見られるキーフ北部のトラックと装甲車の数キロに及ぶ渋滞もその一例だ。ウクライナでは、ロシア軍を混乱させ、待ち伏せの罠に誘い込むべく、道路標識を取り外している。

 

ウクライナ側の攻撃を受け黒焦げになった残骸のビデオや画像が大量に出回っている。こうした攻撃は、ウクライナ地上軍、抵抗勢力、戦闘機、ヘリコプター、ベイラクターBayraktar製TB-2無人機が行っている。待ち伏せにより、車両多数が損傷を受け、道路に放置されている。

 

丸太がロシアのラジエーター防御にどれほど効果があるのか、火炎瓶攻撃にトラックがどこまで脆弱なのかは不明だ。しかし、木材を装甲材とする発想は前からあり、ロシア軍部隊が待ち伏せ攻撃に弱いことを考えれば、何もないよりはましと言う程度だ。

 

 

PUBLIC DOMAIN

硫黄島でM4A3 が木材で防御していた.

 

つまるところ、必要は発明の母であり、たとえ丸太がラジエーター防御に何がしかの効果があるのなら試す価値があるのだろう。■

 

 

Desperate Russian Rear-Area Troops Are Armoring Their Vehicles With Wood Logs

ssian drivers are doing whatever they can to survive Ukrainian ambushes.

BY STETSON PAYNE MARCH 5, 2022


2022年3月7日月曜日

主張 きびしい制裁でロシアが中国に運命を握られる事態が生まれる

  

 

回のロシア制裁では迅速さと効果で世界が驚いた。ただし、制裁の影響は、ウクライナ戦争が追わても続く。ロシアにとっては深刻な経済危機の始まりであり、ユーラシア大陸に広がる中国勢力圏に沈む可能性が出てくる。

 

 

制裁で直ちに出る影響は深刻だ。ロシアの新興財閥オリガルヒの関心は、財産と金融資産の保全にある。例えば、アブラモビッチRoman Abramovichは、チェルシーフットボールクラブを慈善信託に移管したと言われる。だが財産を隠しても、オリガルヒは海外に戻れないだろう。

 

深刻なのは一般ロシア国民だ。ルーブルは記録的水準に急落し、金利は2倍に上昇し、市中銀行の資金量は不足気味である。ダイムラーなどのメーカーやBPエクソンモービルシェルなど西側エナジー企業は、ロシア事業の廃止を発表した。ボーイングの部品供給停止で、ロシア航空会社の欧米製航空機700機は飛行できなくなる。ロシア向け海上貨物の予約は停止された。ロシア市場で消費財を販売するEU企業は輸出を停止した。サプライチェーンの遮断でロシア消費者が大きな打撃を受ける。

 

このままだと、ロシア経済は停止状態になるか、中国の慈悲にすがるかのいずれかだろう。

 

ロシアの対中貿易は急成長中だ。2020年、ロシアの対中輸出は日用品中心に約490億ドルだった。同年ロシアの中国からの輸入は約540億ドルで、主に製造品(二流軍需品を含む)だった。中国はロシアへの制裁措置に加わっていない。したがって、両国の二国間貿易は、さらに拡大する予想がある。

 

ロシアの戦略思考家は、対中貿易の拡大を歓迎するだろう。短期的には、制裁による損失をある程度埋め合わせる効果が生まれる。しかし、長期的に見れば、ロシアは戦略的な罠にはまる。ロシア貿易の主要市場は中国のみとなる。

 

ロシアの自業自得が悪化してもかまわないと中国がほのめかしていることがロシアには不吉にきこえるはずだ。中国の準公式紙環球時報は、ロシアによる侵攻を肯定しないものの、NATOの東方拡大へのプーチンの不満に理解を示し、西側に傾いたウクライナを非難している。2月28日の中国外務省報道官発言の論調とほぼ同じだ。また、微妙な兆候に中国の考えがあらわれている。中国の著名歴史学者5人がモスクワの侵略を糾弾する共同書簡に署名した。中国でこのような書簡は大きな意味を持つ。中国は言論や文章表現を厳しく統制している。中国が学者に共同書簡を書かせ、発表させたのは興味深い。ただし、中国はロシアを非難する準備はしていない。ウクライナ戦争で露呈するプーチンの脆弱性を利用し、中国はロシアへの戦略的態勢を柔軟に取ろうとしている。

 

ロシアにとって、準国家メディアの記事や学術書簡よりはるかに不吉なのは、中国の外交トーンの変化だ。北京オリンピックでのロシアとの共同声明で、中国は「限りない友情」を両国が享受し、「禁じられた」協力領域は存在しないと表明していた。これに対し、2月28日記者会見での外務省報道官は、中国当局の古典的なあいまいさを用いた。中国ロシア両国は「非同盟が特徴の」関係で、「協調する包括的な戦略パートナー」と呼んだ。中国の呼称への敏感さ(リトアニアが台湾を「間違った」名称で呼んだときの危機があった)を考えれば、ロシアは突然のトーンの逆転に特に注意するべきだ。中国はモスクワに好意を抱いているわけではない。

 

モスクワの観点で一番気になるのは、中国の国有銀行2行が、商品購入用のロシア向けドル建て信用状発行を制限し始めたことだ。中国がロシアと侵攻のタイミングを先に協議していたとの報道もあり、中国が慎重に検討していたのがうかがえる。

 

プーチンと習近平は、民主主義と法治主義に対し共通大義を見出す。中国は、ウクライナ戦争への制裁で、短期的にはロシアを救済するかもしれない。しかし、ロシアの孤立が深まれば、プーチンの遺産はロシア帝国の復活どころではなくなり、ユーラシア大陸唯一の超大国の属国となりかねない。プーチン支持者は、ロシアの未来が中国に握られていいのか、問うべきだろう。■

 

Russia's Chinese Future - 19FortyFive

ByThomas GrantPublished14 hours ago

 

Thomas D. Grant served as Senior Advisor for Strategic Planning in the Bureau of International Security and Nonproliferation, U.S. Department of State, 2019-2021. He is the author of Aggression Against Ukraine: Territory, Responsibility, and International Law (2015).

In this article:China, featured, Putin, Russia, Russian Economy, Xi Jinping

 


2022年3月6日日曜日

B-21レイダーが初飛行前の準備に入った。今年中のロールアウト、初飛行をめざす。調達規模は145機に拡大。

A rendering of the B-21 Raider stealth bomber.

USAF

 

空軍が開発中の次世代爆撃機B-21レイダーが初飛行に近づき、一号機が校正試験に入ったとの報道が出ている。校正は飛行前テストとして必要で、飛行荷重に機体が耐えらるかを検分する。

 

 

校正作業に入ったのはB-21が完成しているためだ。空軍は機体に主翼、降着装置がつき、「爆撃機らしくなった」と述べている。

 

USAF/PHILIPPE ALÈS-WIKICOMMONS

A digital rendering of how the B-21 may look.

 

発言は空軍迅速性能実現室長のランドール・ウォルデン Randall Waldenのもので、Air Force Magazineが伝えたものだ。

 

ウォルデンは荷重校正試験について「極めて通常のもの」とし、機体構造が「想定条件に耐えるか」を見ているという。

 

校正試験用の機体がノースロップ・グラマンの製造施設がある空軍42プラント(カリフォーニア・パームデイル)で完成した実機なのかはわからない。同施設では他に5機が製造中と判明している。

 

Aviation Weekにノースロップ・グラマンはB-21の初号機が「生産ラインを離れ、公式地上試験に投入されている。当社による事業実施の効率と速度を如実に示すもの」と伝えてきた。

 

同機を巡っては高度の保安体制が取られており、B-21初号機のシリアルナンバーはおろか、非公式名称も不明のままだ。ただ、ウォルデンは校正試験は初飛行機材が対象になるのは確実と述べている。

 

初飛行予定も不明だが、ウォルデンは全体日程にCOVID-19パンデミックの影響は大きくないと述べている。同時に、ノースロップ・グラマンは「画期的な事業実行とデジタルエンジニアリング」で時間短縮効果が生まれたとしている。

 

そうなるとB-21のデビューがいよいよ近づいているのは間違いないだろう。

 

U.S. AIR FORCE

B-21 concept art.

 

期待が集まるロールアウトは華々しいものになるとウォルデンは認め、「歴史的なイベント」となり「政府高官、報道陣」が招待されるとした。日程は未定だが、今年中と見られ、初飛行が直後に控える。ロールアウトが終われば、少なくとも外観がわかる。

 

B-21で判明している僅かな情報は公式発表が主で、今年初めにグローバル打撃軍団(AFGSC)の戦略立案担当ジェイソン・R・アーマゴスト少将Maj. Gen. Jason R. Armagostが以下述べていた。「B-21は敵地侵攻に投入され、接近阻止領域拒否をかいくぐる両用任務対応の機体となる」。最後の部分は核・非核対応を指す。

 

ロールアウトまでにエンジン含む機内各システムに入力を与え、低・高速タキシーテストも行うはずで、その後初飛行となる。場所はエドワーズ空軍基地付近のパームデイルになると見られ、飛行テストも同地で展開する。

 

B-21合計6機が存在しているか、製造中だとわかっているが、技術製造開発(EMD)段階で合計何機が製造されるかは不明だ。とはいえ、B-2でも同様の段階で6機が製造されていた。

 

空軍公表の計画では少なくとも145機のB-21を調達し、近代化改修型B-52と爆撃機部隊を構成するとある。

 

第一線部隊にB-21を相当数配備するまで時間がかかるが、米空軍が同機の登場でカウントダウンに入ったのは確実だ。■

 

First B-21 Raider Is Now Undergoing Calibration Tests As Official Rollout Approaches

The first B-21 now “really looks like a bomber” and after calibration tests, the bomber’s systems can be fired up.

BY THOMAS NEWDICK MARCH 3, 2022


 

開戦を防げなかったが米国はプーチンの動きを正確に予測していた。米情報機関の優秀な成果を認めよう。

  

 

政策立案者の情報への反応(注意を払うだけでは不十分で、それを信じて行動することも含む)が、情報内容と同様に重要である。

 

シアのウクライナ侵攻で目立つ特徴の一つに、バイデン政権が強く、明確に、かつ公然と予測していたことがある。バイデン大統領はじめ政府の評価は、あまりにも明確であったため、ロシアが開戦に踏み切らなかったらオオカミ少年になっていただろう。もちろん、戦争回避が西側の目的だった。

 

 

ロシアが侵攻するはずがない、プーチン大統領は武力示威で目的を達成するだけ、という専門家、評論家、コメンテーター多数の予測と、政権の姿勢が正反対だった。誤って予測した人たちは、謝罪の必要はない。(例外は、ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフの曾孫にあたるニュースクールのニーナ・フルシチョワNina Khrushcheva教授で、「かなり恥ずかしい」と認めた)。また、「ロシアの侵攻はない」とのヨーロッパの通説に反して、政権が正しく予測したことも事実である。

 

外部から見て、政府内部での分析を評価する際に、今回の米国情報の成功で一つ注意すべき点は、プーチンの意思決定で正確な順序が分からないことだ。プーチンの対ウクライナ武力行使での考えは、バイデン政権の想定以上に条件付きのものであり、開戦決定が、米国はじめとする西側諸国の危機対応の影響を受けていた可能性がある。バイデン政権への批判勢力は、次のような議論の展開を期待している。戦争が起きるぞと大声で繰り返す予測しても、プーチンには侵略者のレッテルを付いており、失うものは何もない、という主張だ。

 

しかし、プーチンは今回の侵略により、経済制裁の大幅強化で、失うものが多くなった。さらに侵攻を正当化するプーチンの手の込んだ偽歴史的言説などの証拠をみれば、まさに米国政府が言うように、侵略が前もって計画されていたのがわかる。プーチンは、旧ソ連邦スラブ地域への長年の思いに基づき行動し、各地を再統一し、聖ウラジーミルの再来になろうとしているのである。

 

となると米国情報機関と政策立案者の評価は的を得ていたといってよい。今回の事例から、情報と政策に関し2つの一般的な見解が導き出される。

 

まず、今回の事案で、あらためて情報機関の成功・失敗に国民や政治が非対称的な反応を示すことがわかる。戦争、革命、核実験など、海外で異例な事態が起こり、米国政府が予測していなかった場合、世論調査は「情報の失策」と断じる反応が多く出る。あるいは、そのバリエーションとして、情報機関が仕事をしなかった、政策立案者が情報機関の意見を聞かなかった、という疑問が投げかけられる。今日、一部例外はあるが、ロシアの動きの予測に成功したという話は皆無に近い。

 

今回の事例が、次回の「情報の失敗」騒ぎの際に思い出されるかどうか興味深いところだ。おそらく、それはない。失敗や失敗と思われる事態が発生した後のお決まりのパターンは、根本的な制度的問題に帰することで、事案の固有事情はおざなりとなる。

 

もう一つ、仮に情報が完璧で、政策立案者が情報に注意深く耳を傾け、受け入れていても、米国が最善の努力をしたとしても、不測の事態を防ぐことは不可能だ。今回のバイデン政権の積極的な情報公開は、プーチンの意図を先取りし明らかにすることで、軍事計画の実行を複雑にし、回避を狙う戦術であった。最終的に侵略を防げなかったが、この戦術は試す価値があった。暴露することで、ロシアの計画を複雑にし、実行を思いとどまらせる可能性もあった。

 

今回の事例は、1967年の中東戦争でリンドン・ジョンソン大統領に米情報機関が開戦の可能性とイスラエルが短期で勝利するとの優れた分析を提供した事例を想起させる。CIA長官リチャード・ヘルムズは、この成功でジョンソン大統領政権で国家安全保障上の意思決定の場に座ることが許されたといわれる。しかし、ジョンソンの努力にもかかわらず、イスラエルは開戦に踏み切った。

 

今月のロシアとウクライナの状況は、1967年にジョンソンが直面した場合と似ている。

 

政策立案者の情報への反応(情報に注意を払うだけでなく、信じ、それに基づいて行動することを含む)は、常に情報内容と同様それ以上に重要だ。バイデンが攻撃に関し公に予測を繰り返す大胆な行動に出たことは、驚くべきことである。また、バイデンの前任者が、ロシアの違反行為に関し、自国の情報機関よりプーチンを信じると公言したのと大きな対照を示している。■

 

 

The Shot That Was Called: Intelligence and the Russian Invasion of Ukraine | The National Interest

by Paul R. Pillar

February 25, 2022  Topic: Russia-Ukraine War  Region: Europe  Blog Brand: Paul Pillar  Tags: Ukraine CrisisUkraineRussiaNATOIntelligenceVladimir Putin

 

Paul Pillar retired in 2005 from a twenty-eight-year career in the U.S. intelligence community, in which his last position was National Intelligence Officer for the Near East and South Asia. Earlier he served in a variety of analytical and managerial positions, including as chief of analytic units at the CIA covering portions of the Near East, the Persian Gulf, and South Asia. Professor Pillar also served in the National Intelligence Council as one of the original members of its Analytic Group. He is also a Contributing Editor for this publication.

Image: Wikimedia Commons.