2022年7月11日月曜日

抜本的な改革が必要な米国の装備品調達のしくみ。このままではPRCに負ける。


China is aquiring weapons 5-6 times fast than US

Photo by Long Wei/VCG via Getty Images


 

「購買力平価で見れば、こちらの20ドルに対して向こうは1ドルで同じ能力を入手している」

 

軍の契約関連全般を担当する将官が、中国の防衛装備取得の急速な増加に厳しい警告を発している。中国軍は現在、米国の「5~6倍」の速さで新装備を手にしている。これは、米国防総省が新兵器配備の方法を早急に見直す必要があることを示唆し、米国防当局者にとって厳しい証拠である。一方、中国は戦略大国の座につこうとする取り組みの一環として、各種ハイエンド軍事技術の開発で主導権を争っているように見える。

 

 

キャメロン・ホルト空軍副次官補 Maj. Gen. Cameron Holt(調達担当)は、新兵器システムの購入から後方支援、作戦支援まで、空軍で契約に関するあらゆる側面を監督するのが仕事だ。中国の変化の速さについてのホルト発言は、政府契約価格サミットで、現職を退く前に行われた。

 

ホルトは、北京が新兵器を獲得するスピードが速いだけでなく、はるかに効率的だと主張する。「購買力平価で、同じ能力を得るのに、我々の20ドルに対し、彼らは1ドル程度しか使っていない。「国防のサプライチェーンで、コストを下げ、スピードを上げる方法が見つけられないと、我々は負ける」とホルトは付け加えた。

 

ホルトは、アメリカが中国に対抗できない背景に、防衛装備品、ロジスティクス、サポートなど、自国軍が必要とする装備の調達方法が大問題であると指摘する。実際に購入する予算の枠組みは扱いにくいが、より大きな問題は調達の仕組みだとホルトは主張する。

 

 

 

キャメロン・G・ホルト司令官の公式ポートレート。 U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Chad Trujillo

 

「リソーシングシステムの変更以上に重要なものはない」とホルトは述べた。予算編成のプロセスは現在と同じままでよいという。「執行年度の柔軟性を変え、議会の監視を近代化し、より辛抱強くすれば」と彼は主張した。

 

しかし、現行モデルでは、最初から遅れが生じている。正式な要求事項を書き上げるところから、維持費やライフサイクルコストまで、プログラム各段階で予算承認を得るのに、ひどく時間がかかる。つまり、プログラムのどの段階でも、予算管理者が介入し、資金配分をどう考えるかによって、プログラムの方向性やスピードが完全に変わる可能性がある。そのため、ある兵器プログラムが初期段階で急速に進展しても、その先の段階で資金調達の決定がなされれば、部隊に届くまでの時間を短縮できる。

 

 

過去のプログラムの経験が、B-21爆撃機プログラムへのアプローチを形成した。これまでの大型プログラムの特徴である要求内容の追加、コスト膨張、過大な開発スケジュールを避けるため調整されたものである。 U.S. Air Force

 

 

また、議会が新しいプログラムに資金を喜んで割り当てても、国防総省が資金を移動し、レガシー・プログラムに資金を投入し続けることを優先して、有望な新開発の芽を阻害する可能性がある。

 

その代わりに、ホルトは「キャッシュフロー」モデルを提唱し、国防総省の資金移動に関する規定を含むが、議会の監視力を維持し、よりタイムリーに介入する選択肢の確保を目指す。

 

改革しないと、米国の防衛取得プロセスは、必要とされる迅速な動きができないとホルトは主張している。現在のシステムは冷戦時代の安全保障環境に起源があり、脅威や課題も全く異なる、と主張する。

 

 

1951年、コンベア社の組立ラインでB-36爆撃機の列が延々と続いている。現在の取得サイクルは冷戦時代にまでさかのぼり、新技術の採用ペースの遅さに不満を持つ関係者からますます批判を受けるようになっている。Tony Landis/U.S. Air Force

 

 

「また、中央集権的でマイクロマネジメントの予算計上のシステムも冷戦時代のものです」とホルト少将は言う。「今日の環境では、これではうまくいきません。予算がプログラム名称、プログラム内のフェーズとともに法令に記載され、執行年度のプログラム執行役員がそれを見て、『いや、もっと良い資源配分の方法がある』と言うと違法になる、というシステムはあり得ません」。

 

結局のところ、現在の防衛装備調達アーキテクチャは、4年前に認定された技術や能力を実用化する設定なのだ。つまり、新技術が急速に登場し、古い技術を駆逐する変化の激しい今日の世界では、それらの技術や能力は限定的であるか、あるいは劣化したものでしかない。中国はこの現実を受け入れたが、米国のシステムは今のところ適応できていない。

 

 

今年就役した3隻目の中国空母は、中国がアメリカ海軍に匹敵する空母艦隊を整備するスピードを劇的に示している。 Chinese Internet

 

中国の最先端技術導入の管理方法について、米国(そして、より一般的には西側)のやり方との比較を行ったのはホルトが最初ではない。

 

2019年、戦略司令部のトップであったジョン・ハイテン大将は、空軍協会の大会で、アメリカの防衛産業複合体が「高速化」能力を失っていと警鐘を鳴らしていた。

「私たちの敵が私たちよりも速く進んでいるという証拠を目撃している」と「遅い、高い、それが現状だ・・・私はプロセス全体を批判している・・・プロセス全体が壊れている・・・。もっと早く進まないといけないのに、そうなっていないから、イライラする。脅威を見ろ。脅威よりも早く進まないのは間違っている証拠だ」。

 

ハイテン大将は、米国の国防調達プログラムでうまくいった例も挙げていた。冷戦時代のミニットマンI型ICBM計画で、すべての期待や目標を達成、またはそれ以上に達成しただけでなく、わずか5年で、現在のドル価格で200億ドル以下のコストで実現した。

 

 

1961年11月17日、フロリダ州ケープカナベラルで行われたミニットマンI型ICBMの打ち上げ成功。ミニットマンは1年足らずで運用を開始した。 U.S. Air Force photo

 

 

当時『The War Zone』では、KC-46空中給油タンカーで大きく失敗した様子を紹介していた。記事から3年近くが経過しているにもかかわらず、同機事業はまだ苦戦しており、約束された能力目標を達成するのは、すべてがうまくいっても数年先のことだ。

 

 

2020年7月1日、メリーランド州沖でKC-46Aが米海軍のF/A-18Fスーパーホーネットに給油を行った。KC-46Aセンターライン・ドローグシステムを利用する初めてのケースとなった。U.S. Navy photo by Lt. Zach Fisher

 

それ以来、国防総省では、取得システムの根本的な問題に取り組もうとイニシアチブが行われてきた。

 

最も有名な例は、2018年から空軍の取得・技術・兵站担当次官補を務めたウィリアム・ローパー博士Dr. William Roperが導入した最先端のプログラムや破壊的コンセプトの数々だ。しかし、ローパーは昨年、理由は全く不明のまま、その職を去った。

 

しかし、ローパーが初代空軍最高ソフトウェア責任者として採用したニコラ・チャイヤンNicolas Chaillanが、退官時に、フィナンシャル・タイムズ紙へ非常に率直なインタビューを提供している。シャイヤンは、ここでも国防総省がライバルとする中国に遅れをとっていることを痛烈に批判した。

 

米軍の近代化アプローチに対するさまざまな不満の中で、チャイヤンは、サイバー能力、機械学習、人工知能(AI)の分野で米国の負け戦になっていると見ているとを強調した。

 

 

マサチューセッツ州ハンスコム空軍基地を訪問し、集合写真に納まる当時の空軍最高ソフトウェア責任者ニコラ・チャイヤン(中央)U.S. Air Force photo by Lauren Russell

 

「15年から20年は、中国に勝負できる可能性はない」とチャイランはFT紙に語った。「それはすでに終わっている。また、米国に対して、アジリティ、ラピッドプロトタイピング、イノベーションを通じて、より賢く、効率的で、未来志向になるよう求めている」。

 

関係者のフラストレーションがそれを物語っている。少なくとも数名は、軍関係の仕事を離れる準備として、国防総省の失敗を率直に話しているように見える。

 

しかし、結局のところ、各人は同じ問題を繰り返し提起している。中国は今、多くの新興技術分野で主導権を握っている。一方、米国はステルス戦闘機F-35のような高コストで動きの遅いプログラムに陥っている。米国の国防予算は中国よりはるかに多いとはいえ、中国の予算も増加の一途だ。

 

米中の対立が最終的に軍事的対立につながる懸念が繰り返し出ている中で、これらのことは深刻に憂慮されることになる。この現実が、米国の軍事計画や軍事態勢に大きな影響を及ぼしていることは明らかだ。しかし、両大国間の潜在的な衝突は、最終的に枝葉の問題に終わる可能性がある。中国が新しい軍事技術を導入するスピードは加速中で、地政学的な支配力が高まっている様子を示唆している。■

 

 

China Acquiring New Weapons Five Times Faster Than US Warns Top Official

BYTHOMAS NEWDICKJUL 6, 2022 6:46 PM

THE WAR ZONE


中国②台湾武力侵攻の余裕はない(少なくとも今は)

 

 

 

  • 中国に台湾攻略の余裕はない

  • 現在の政治環境下で台湾を攻撃すれば、中国にとって困難かつコストがかかる結果となる

 

 

6月12日にシンガポールでのシャングリラ会議において、中国の魏鳳和国防相は、台湾が独立宣言した場合、中国は「最後まで戦う」と明言した。だが、中国に台湾を攻撃する覚悟があるのだろうか。現在進行中のロシア・ウクライナ戦争は、中国の判断にどのような影響を与えるだろうか。

 

筆者は、現時点では中国による台湾攻撃は困難だと見ている。まず、政治的な不確実性の中で戦争を始める難しさを考えてみよう。秋に開催される中国共産党の全国代表大会で、習近平主席は中国全土から集まる2287人の中国共産党代表から3期目就任の承認を受ける必要がある。承認は象徴的なプロセスに過ぎないが、秋を前に習近平の成果に墨をつけるのは避けたいだろう。従って、台湾への軍事力行使は最適な選択と言えない。

 

一方、習近平は現在進行中のCovid-19のパンデミックと格闘しなければならない。中国は人権侵害で激しい批判を受けながらも「ゼロコロナ政策」を堅持してきた。上海では3月下旬にCovid-19の患者数が増加し、2カ月以上にわたる封鎖が続いた。上海の封鎖は、ウイルスの拡散をある程度遅らせることに成功した。しかし、この政策には中央が予期していなかった副作用が2つあった。1つは、長引く封鎖への上海市民の不満である。これは、習近平の権威を脅かすものと受け止められる。もうひとつは、中国の経済パフォーマンスへの悪影響だ。上海は中国経済の大きな部分を占めるため、今回の封鎖で経済的な繁栄にマイナス影響が出た。習主席の最大の関心事は、台湾の統一より、Covid-19のパンデミックなど中国本土の問題を管理のはずだ。

 

もうひとつは、ウクライナ戦争が中国と台湾にもたらすリスクの認識だ。2月にロシアがウクライナを攻撃した際、中国は台湾事案の教訓と捉えた。具体的には、ウクライナと台湾を、ともに近隣の巨大国から独立しようとしている点で、比較した。米国が中台間に直接介入せずに様子を見ていたのに対し、北京はこの揺れ動く態度を利用して、ウクライナで「世界は米国の助けを期待してはいけない」という内容を台湾にメッセージとして発したのである。      

 

ロシアは簡単にウクライナを制圧できるとの期待は打ち砕かれた。ロシアの軍事作戦は今のところ失敗しているが、ウクライナの抵抗の意志は高まったままだ。一方、欧米世論は、ロシアを侵略者、ウクライナを被害者に仕立て上げるのに成功した。したがって、習近平が台湾を攻撃すれば、中国はロシアのような侵略者、台湾はウクライナのような被害者の烙印を押される可能性が高くなる。

 

台湾の軍事準備以上に注目すべきは、台湾国民の意志と覚悟だ。ロシア・ウクライナ戦争の勃発後、多くの台湾人は中国の考え方がロシアと同じになると予期し、脅威を前に、自国を守る意志を強め始めた。台湾人の多くは、中国が攻めてくれば台湾は統一されてしまう、それは台湾の独立戦争になると考える。つまり、中国が台湾を攻撃すれば、台北に独立宣言の口実を与えかねないと習主席が認識しているのは賢明なことだ。

 

第三は、台湾の自衛の決意だ。現時点の台湾は、中国を刺激せずに自立することに注力している。蔡英文政権は台湾海峡の反対側の懸念を払拭するため、独立のスローガンは唱ていない。一方、国防に不可欠な装備システムの取得には熱心だ。台湾は近年、防衛費を増加させ続けており、特に防衛システムに注力している。この点では米国も台湾を積極的に支援している。軍備増強のおかげで、台湾は中国の奇襲攻撃を生き延びるのが可能となり、北京は高負担の軍事行動に躊躇するはずだ。

 

中国が今後、武力行使に踏み切る際の想定外の要因とはなんだろうか?重要な要因は、2つとも習近平国家主席に関するものだ。中国共産党の指導者の中で、習近平は「統一は自分にしかできない」と考えているかもしれない。新しい国を作った毛沢東にも、改革のパイオニアである鄧小平にもできなかった。習近平が台湾統一に成功すれば、毛沢東をしのぐ存在になる。本人の野望は、外部からはなかなか伺い知れないが。

 

逆に習近平が弱体化すれば、台湾への武力攻撃の可能性が高まるかもしれない。つまり、習近平にとって国民の目をそらし、他の国内問題を緩和する手段となる。したがって、習近平政権への支持が弱まれば、習主席への内圧を緩和するため、台湾を武力奪取する動きも選択肢になり得る。

 

台湾の国内問題も考慮する必要がある。台湾の民主主義はまだ若く、選挙に勝とうとする政治家によるデマゴギーに弱い。民主主義国家では、経済が低迷すると、過激路線が国民支持を得やすいと言われる。第一次世界大戦後、ドイツ国民が耐え難い賠償金に苦しむ中でアドルフ・ヒトラーが政権を取ったように、台湾の政治指導者が経済悪化の解決策として独立推進に走る可能性がある。そうなると中国は軍事対応せざるを得なくなる。

 

台湾も内部問題を多く抱えている。まず、低賃金と高い住居費が結婚率に影響を与え、少子化を招いている。確かに今は台湾経済は、Covid-19パンデミックというストレスにもかかわらず、健全さを保っている。しかし、経済状況が悪化し、失業率やインフレ率が上昇すれば、国内問題がラクダの背を押す藁となるかもしれない。

 

台湾では11月に地方議会選挙があり、2年後に総統選挙がある。選挙に出る政治家が人気取りのため、独立について極端な立場をとったらどうなるか。台湾人は政治家の政治スローガンに反応し、中国からの独立を希望ある未来の青写真と受け止める可能性が高いだろう。■

 

Why China Can't Afford to Attack Taiwan | The National Interest

July 9, 2022  Topic: China-Taiwan War  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: China Invade TaiwanChina-TaiwanTaiwan IndependenceCOVID-19 PandemicXi Jinpin

by Joshua NamTae Park

 

Joshua NamTae Park is senior researcher at ISA(Institute for Asian Strategy, Seoul), ROK navy captain, retired, Ph.D. from U.S. Texas A&M University. He had various experiences at sea duties, worked for ROK MND and recently KIDA (Korea Institute for Defense Analyses). Currently, he is staying in Taipei, Taiwan as a visiting scholar. His primary research interests are Chinese security and military issues. Contact : pnt914@gmail.com / pnt914@naver.com.

Image: Reuters.


2022年7月10日日曜日

やはり謎の機体はH-20のようだ。B-21の開発に合わせて中国は同機の存在を徐々に明らかにする方針なのか。

 H-20_CONCEPT_ART_PLAAF

PLAAF/YouTube Screencap


中国待望の次世代ステルス爆撃機が飛行準備中であることを示す証拠が増えてきた。

 

 

国国営メディアは、米ステルス爆撃機に対抗すると期待されている次世代爆撃機、H-20の初飛行が間近であることを強く示唆している。共産党系の環球時報に昨日掲載された記事では、中国飛行試験施設(CFTE)の関係者が、現地を訪れた政府関係者に、新型航空機の飛行試験の準備中と語ったという。発言は、CFTEの責任者葛和平のものとされ、公式訪問は 「テストに関わる人員を動員するための集会」と説明されている。

 

また、中国のニュースサイト「Guancha」の記事には、CFTEのWeChatインスタントメッセージアカウントに最近掲載されたニュースが引用されている。この記事でも、中国共産党高官が試験場を訪れたと紹介されているが、「ある機種の開発」と、その重要性を示唆する部分が目立つ。記事は意図的に曖昧にしているが、謎の新型機が「戦略的、歴史的意義」を持つという記述から、H-20を示唆すしている。

 

いずれの記事にも、言及がある航空機についての詳細は書かれていないが、これまでH-20は 「戦略的プロジェクト 」として言及されてきた。

 

 

2021年初頭に公開されたPLAAFの隊員勧誘ビデオに見られる、H-20とされる全翼機の公式レンダリング画像。 YouTube capture

 

H-20に関し憶測が飛び交う中、新型機の飛行試験が間近に迫っているというCFTEから出たニュースに関連付ける人が多いのは、不思議ではない。さらに、この機種についての説明は、H-20について判明しているわずかな情報と一致する。結局のところ、中国にとって最も野心的な軍用機プロジェクトであり、初の完全国産長距離爆撃機であり、重要拠点やインフラを攻撃する新しい手段を提供することによりアジア太平洋地域の戦略バランスを変えかねないプラットフォームである。

 

中国が新型軍用機の初飛行に関し情報を公表するのは極めて異例だが、H-20は一般に、異なる扱いを受けてきたことをここで強調しておきたい。

 

昨年10月、マイクロブログサイト「微博」に、「特殊型」航空機のモックアップを引き渡したとの画像が投稿されたが、当時メディアで取り上げられることはなかった。写真には西安航空工業公司(XAC)のCEOとチーフデザイナーがモックアップ(未公開)に見入いる様子が写っていた。西安航空工業公司は、603航空機設計研究所とH-20開発を担当した主契約企業だとが確認されている。モックアップ、あるいは「アイアンバード」と呼ばれる実物大システム試験機(非飛行タイプ)の引き渡しは、プログラム開発で意味があり、モックアップが完成したとする2021年7月の未確認報告に続くものなのだろう。

 

さらに驚くべきことに、この計画の極秘性を考えると、2021年1月、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の隊員採用ビデオに、H-20で初の公式レンダリングが含まれている。シートで覆われた機体が、アメリカ空軍のB-2スピリットやB-21レイダーに似ていることを示していたが、ビデオの描写が実際の設計を正確に反映していない可能性も十分にある。

 

このティーザー広告の前には、XACを傘下に入れる国営中国航空工業集団(AVIC)による別の動画があった。2018年に公開され、「The Next...」と英語で書かれたシートの下に、CGの全翼機翼が映っていた。当時、B-21のスニークプレビューを提供した有名なノースロップ・グラマンのスーパーボール広告に酷似していることで話題になった。

 

 

シートに覆われたH-20の2018年のAVICのティーザー動画からの静止画。AVIC

 

ノースロップ・グラマン

 

こうした公式動画はいずれも、H-20を名指ししたり、同機の役割の詳細を明らかにしていない。しかし、レーダー断面積のテストモデルなどを総合すると、次期爆撃機は全翼機形状であり、B-2とほぼ同じ大きさとの見方が有力だ。しかし、中国の爆撃機ではのユニークな特徴を取り入れるとの噂もあり、折りたたみ式垂直尾翼を持つのではないかという憶測もある。

 

しかし、全体として、H-20についてはほとんど知られていない。

 

H-20の研究開発は、2000年代初頭にXACの603航空機設計研究所で始まり、亜音速飛行翼と超音速デルタ翼の両方が研究され、スケールモデル数点が作られたと考えられる。2011年頃には、亜音速の飛行翼で4基のエンジンを搭載する案に落ち着いたようだ。

 

機能的な全翼機爆撃機を作るという点では、XACはGJ-11 Sharp Sword戦闘機で得た経験や、その他小型無人機から恩恵を受けているとの指摘がある。確かに、GJ-11の背面エンジンインテークをはじめ、飛行制御システムやレーダー探知機の誤動作防止技術など、シャープソードの設計から重要なデータを得たと思われる。

 

 

軍事パレードに登場したステルス機「GJ-11 Sharp Sword」(2019年10月1日)。The Yomiuri Shimbun via AP

 

 

同様に、少なくとも2型式のステルス有人戦闘機(J-20とFC-31)が現在飛行しており、中国には低視認性技術の実用性を理解する機会が十分にあるため、H-20は、敵空域に侵入し生き残る重要な役割を果たす期待が寄せられている。米情報機関は、中国が実際に2種類の新型低視認性爆撃機の生産に着手したと評価している。戦略爆撃機H-20を補完する中型/中距離戦闘機(おそらく双発エンジンを備えた双発機)が予想されている。

 

一方、アナリストは、H-20はコンフォーマル・アンテナを使用したアクティブ電子スキャン・アレイ(AESA)レーダーを搭載し、回転式ランチャーに内蔵する亜音速巡航ミサイルを主武装に予想している。

 

H-20は、現在PLAAFの長距離爆撃機を構成しているXAC H-6の後期型から大きな進歩をもたらすはずだ。H-6の設計は1950年代初頭のソビエトTu-16バジャーに遡るが、最近では最新の巡航ミサイル、空中発射弾道ミサイル、極超音速兵器の可能性を搭載に加えた。H-20は、核抑止力を含む長距離戦略プラットフォームとして、はるかに大きな能力を提供する。最終的には、アメリカ空軍のB-21/B-52のような形で、H-20がH-6と一緒に使用されると容易に想像できる。

 

 

ロシアでのアビアダート軍事演習に参加したPLAAFのH-6Kミサイル搭載機。Ministry of Defense of the Russian Federation

 

2013年初頭、H-20の本格開発にゴーサインが出たと報じられると、その後、H-20のさらなる進展を示唆する非公式な情報開示が次々と現れた。3Dデジタルプロトタイプの完成、レーダー探知を減らすため蛇行させたエンジン吸排気ダクト、「アイアンバード」地上試験装置の製作、飛行制御システムのテストなどだ。また、前述のレーダー断面積用のテストモデルも目撃されている。

 

H-20が2023年に初飛行するとの憶測があったが、今回のCFTEの発言を爆撃機の初飛行に結びつける報道に信憑性が強まっているようだ。また、H-20の初飛行の可能性が、B-21の初飛行と密接に結びついていることも注目される。これは、北京が自国能力を確保するためだけでなく、急速に発展している自国の軍事航空宇宙産業を誇示するために、米国の新型機プログラムの進展に合わせようとしているのかもしれない。

 

 


「戦略的、歴史的意義」といわれる中国の航空機プロジェクトは別にもあり、民生用機材も含まれる可能性があるが、H-20が最有力候補だろう。

 

全体として、H-20の存在は公然の秘密となっており、同機に言及する中国の公式情報源は、増える一方だ。このことを考えると、H-20計画の次の進展はそう遠くないうちに現れるだろう。■

 

First Flight For China's H-20 Stealth Bomber Could Be Imminent: Report

BYTHOMAS NEWDICKJUL 8, 2022 1:15 PM

THE WAR ZONE

 



新型戦略爆撃機H-20か、PLAAFビデオに謎の機体の輪郭が登場。必死に観測を否定しようとする環球時報の記事を御覧ください。

 

 

中国人民解放軍(PLA)空軍が公開した隊員採用ビデオに映し出された、名称不明の航空機 Photo: Screenshot from the PLA Air Force 2021 recruitment video

 

 

国は、戦略的・歴史的に極めて重要な機体の飛行試験を計画中と、中国最大の軍用機メーカーで飛行試験センターを統括するトップが最近述べている。

 

 

発言は、国有企業の中国航空工業集団公司(AVIC)傘下の中国飛行試験センターの責任者Ge Hepingが、火曜日に行われた試験関係者の動員集会で行ったもの、と人民日報海外版の新しいメディアプラットフォームXiakedaoが水曜日、同センターのプレスリリースを引用して伝えている。

 

Geは、同機開発に携わる全員に対し、この任務完遂が極めて重要であるのを十分に認識するよう促した。

 

報道とプレスリリースのいずれも、同機の名称や特徴を明らかにしていない。

 

多くのネットユーザーは、問題の機体は長い間噂されているH-20戦略ステルス爆撃機ではないか、と推測している。戦略兵器だけに、戦略的・歴史的意義があるとの表現がふさわしいとの意見もあった。

 

中国人民解放軍空軍は2021年1月、次世代長距離戦略ステルス爆撃機を、人材採用ビデオの一場面に盛り込み、全翼機形状であるとのヒントを与えた。

 

また、2018年5月公開のAVICによるプロモーションビデオでは、同様の機体の前面輪郭が布で覆われており、全翼機デザインが米B-2爆撃機に似ていることが示唆されていた。

 

こうした公式のヒントを踏まえると、新型機がH-20ではないかとの一般市民の推測は理にかなっているが、過剰解釈かもしれないと、中国の航空産業発展を追跡する中国専門家は1日、匿名を条件に環球時報取材に答えた。

 

この未知の航空機は、J-15艦載戦闘機のカタパルト発射型とされるものや、J-35艦載ステルス戦闘機とされるものなど、他の可能性もあると同専門家は指摘している。中国3隻目の空母である8万トン級、電磁カタパルト装備の「福建」に搭載する見込みの機体であり、戦略的、歴史的意義があることは間違いないと指摘した。

 

とはいえ、中国の航空開発に新たな進展が見られるのは喜ばしい、と専門家は述べた。

 

1959年設立の同飛行試験施設は、AVIC飛行試験センターとも呼ばれ、軍用機、民間機、航空エンジン、航空機器などの航空製品の検証および飛行試験を実施する資格を有する中国唯一の国家レベルの組織だ。■

 

 

 

China to conduct flight test for aircraft of key 'strategic, historic significance' - Global Times

By Liu Xuanzun

Published: Jul 07, 2022 11:09 PM

 


NATOが中国へ厳しい視線を送り、アジア太平洋で次の動きが出るのを警戒する中共

 


Appearing together at the NATO Madrid summit were Anthony Albanese, Australian prime minister; Fumio Kishida, Japanese Prime Minister; NATO Secretary General Jens Stoltenberg; Jacinda Ardern, New Zealand prime minister; and Suk Yeol Yoon, South Korean president. (NATO)



NATOの戦略概念に中国が含まれたこと自体より「興味深いのは、次に何が来るか」だと、IISSの専門家は、Breaking Defenseに語った。


週、NATOとインド太平洋地域の有力国4カ国がマドリード首脳会議で手を結び、中国によるいじめと国際法の不受理がもたらした結果が、はっきりと浮かび上がった。しかし、太平洋への注力の高まりは、欧州連合にとって突然のことではない。



同盟が習近平主席率いる中国を戦略構想に盛り込んだのは今回が初めてだが、中国は数年前から欧州同盟の主要な戦略的要因として言及されていた。昨年のブリュッセル・サミットでは、中国は「ルールに基づく国際秩序と同盟の安全保障に関連する領域に対する体系的な課題」を提起していると評されていた。NATOに近いオブザーバーにとって、ブリュッセルからマドリードへの移行はシームレスで予測可能だった。NATOは、加盟国すべてが納得できる言葉で明確に定義する1、2年前に、しばしば重大な問題点を指摘する。


国際戦略研究所の中国防衛専門家、メイア・ヌウェンスMeia Nouwensは「今回の戦略概念が画期的な啓示だとは思わない」と指摘する。「同盟がどのように情報を共有し、弾力性を高めていくのか、という点に興味を覚える。EUとNATO間でどのようなメカニズムが導入され、それぞれ何を担当するのか、インド太平洋のどの国が新たにパートナーになり得るのか」。


しかし、中国は長く、公然とアジアのNATO加盟を心配してきたので、アジアの重要な4カ国が同盟と連携することが中国政府関係者を怒らせた。


「中国は平和のため独立した外交政策を追求している。他国の内政に干渉したり、イデオロギーを輸出したりしないし、ましてや長期的な裁判権や経済的強制、一方的な制裁に関与しない」と、中国外務省の趙報道官は先週末述べた。「中国に 「体制的挑戦 」というレッテルをどうして貼るのか。NATOには、中国に対して虚偽の挑発的な発言を広めることを直ちに止めるよう厳粛に求める...ヨーロッパを混乱させた後はアジアと全世界を混乱させようとするをか。これを止める」と述べた。


しかし、サミットでは、中国の脅威がどのように提示され、分析されたかについて、ニュアンスで大きな相違があった。


誰もが同意できる1つの分野、すなわちリベラルな国際ルールベースの秩序に対する中国の脅威については、多くが言及した。そして、中国はロシアの側に立っており、両国は日頃からお互いをパートナーとして称えていることから、ウクライナが議論の多くを彩った。


「ドイツのバールボック外相は、他の多くの首脳と同様に国際法を強調したが、ウクライナにおけるロシアの行動が他国にもたらすであろう前例についても議論した」とヌーウェンズは電子メールで語った。このことが国際秩序のルールに反するという懸念と、それを守らなければならないという危機感が見られたという。バールボックらは、中国との類似性を指摘した。同外相は、どの国にも大きな隣人がいて、人権侵害者への対応は世界中で同じく厳しくなければならない、具体的には中国に言及している、と発言した。


プーチンがウクライナで戦う中、習近平は水路で「法律戦」を抱く

オーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国のNATO首脳会議への参加は、民主主義国の団結という観点でコーチングされた。オーストラリアのアンソニー・アルバネーゼAnthony Albanese首相はヨーロッパ出発の前、「民主主義国家はロシアの残忍なウクライナ侵略に対して団結しなければならないので、NATOサミットに招待された」とツイートしていた。

 しかし、もう一つの侵略の可能性は決して遠くない。プーチンは、ウクライナはロシアのものであり、解放しつつあると主張している。これは、中国が中国の領土であり、大陸と再統合すると言う台湾と明らかに類似している。

 台湾についての太鼓判の一部として、中国は最近、台湾は中国だからその海域は中国の海域であるという理由で、台湾海峡は国際水路ではないと主張している。中国の法律では、「台湾と、釣魚島、澎湖島、東沙諸島、西沙諸島、南沙(スプラトリー)諸島などの関連する島々は中華人民共和国に属する」と明確に規定されている。

 もう一つの例は6月25日、米国が台湾海峡上空に対潜哨戒機P-8Aを飛ばしたことに関する非難を中国が誇張したことである。中国人民解放軍東部戦区司令部の空軍と地上軍は、米軍機の通過を追跡・監視し、全行程で警戒を続けたと、同軍東部戦区司令部のスポークスマン、シー・イー上級大佐は文書で発表した。「米国側のこのような挑発的な動きは、地域情勢を危うくし、台湾海峡の平和と安定を害するものであり、中国側は断固としてこれに反対する」と述べた。PLA東部戦区司令部の部隊は、国家主権と領土保全を断固として守るために、常に高い警戒態勢を維持している。

 これはすべて、中国が国際法を否定し、中国の利益に適さない場合は無関係とするパターンに合致する。ヌーウェンズはこれを 「法律戦」lawfare と呼ぶ。海峡に関する最新の主張は、「台湾海峡中間線など存在しないと言い、沿岸警備隊に中国の海洋領土(それをどう定義しようとも)に武器で防衛行動する大きな権限を与え、そしてもちろん南シナ海での行動という中国の大きな行動パターンに合致する」と電子メールで述べた。しかし、台湾海峡は国際的に認められた水路であり、中国の料金所ではないという既成事実を覆すのは難しいだろう。

 「問題は、この声明が第三国の行動を変えるかどうかだ」とヌーウェンスは書いている。「私は変わらないと思う」。

 ニュージーランドのジャシンダ・アーダーンJacinda Ardern首相はマドリッドサミットに出席し、ここ数年のニュージーランドの外交政策の変化を顕著に示し、国際的な不安定さが増していることを文脈に即して説明した。

 「私たちの周辺では、ルールに基づく国際秩序に対する圧力が高まっているのが見て取れます。ニュージーランドでさえ、ロシアの誤報や偽情報の標的になっているのです」。さらに、「中国は最近、自己主張を強め、国際的なルールや規範に挑戦する姿勢を強めている」とも述べた。

 NATO首脳会議に太平洋地域の民主国数カ国が参加したことは、世界レベルで独裁体制に対抗するために志を同じくする国々が団結しようとする姿勢のあらわれだ。6月26日、西側の経済大国G7グループは、中国一帯一路構想を阻止するために、新しい世界インフラ投資パートナーシップの一環として、今後5年間に発展途上国に6000億ドルを調達すると約束した。


中国の軍事的脅威へ懸念する声が高まるオーストラリア

中国の行動は、オーストラリア人の北京に対する見方に大きな変化をもたらしている。ローウィー研究所の最新世論調査によると、オーストラリア人の過半数が、中国は軍事的脅威であり、中国への信頼と習近平への信任は過去最低と見ている。

 おそらくオーストラリア人の見解で最大の変化は、中国がオーストラリアにとって経済的パートナーとして、あるいは脅威として重要かというテーマであった。

ローウィー世論調査の回答者の4分の3が、今後20年間に中国がオーストラリアにとって軍事的脅威となる可能性が「非常に」または「やや」高いと思うと答え、2018年から30ポイント上昇した。

 2018年、オーストラリア人の82%が中国を経済パートナーとして見ていた。当時、中国を脅威と考えるオーストラリア人はわずか12%だった。今では、63%が中国を脅威とみなし、中国をより経済的なパートナーとして見ているのは33%だけだ。

 中国への信頼は急落し、2018年から40ポイント減少した。中国を信頼していると回答したのは、わずか12%だった。

 そして、オーストラリア国民の大多数(65%)は、中国の外交政策を今後10年間の「重大な脅威」と見ており、2017年から29ポイント上昇した。

 プーチンがウクライナ侵攻によりNATO拡大させてしまったように、「太平洋NATO」に包囲されるという中国の恐怖は現実のものになりつつあるのだろうか。■


Pacific powers show unity on Russia, China at NATO meeting: a sign of things to come? - Breaking Defense


By   COLIN CLARK

on July 06, 2022 at 11:27 AM