2020年11月10日火曜日

F-15EXの納入に備える米空軍。一方、日本向けF-15JSIはEXの機能ほぼ全部を搭載する構想と判明。ただし、フライバイワイヤを除く。

 規製造のF-15が納入されるのは2004年以来となるが、米空軍が準備を進めている。来年早々にボーイングF-15EX二機がエグリン空軍基地(フロリダ)に到着し試験用途に投入される。最新鋭のF-15EXは今後15年かけて200機調達が予定されている。

F-15EXにはイーグルドライバーが熱望してきた装備がほぼ全部ついてくる。フライバイワイヤ制御、兵装装着部の追加、電子戦装備を一新し、高性能レーダー、超高速コンピュータ、一体型燃料タンク、さらに強化構造だ。 


ただし同機は第四世代機のままで、ステルス性能は1974年にロールアウトのF-15Aと大差ない。防空圏内作戦では低視認性が必須とされるので、同機は新型といっても敵防空圏の手前に留まり、防空体制が打倒されるまで待つことになる。


空軍予算にF-15EXが登場したのは2018年のことでジェイムズ・マティス国防長官(当時)がペンタゴンの分析結果を受け入れ、攻撃力増強とともにF-35Aを製造するロッキード・マーティンへ競争原理を働かせる意図もあった。


前空軍長官ヘザー・ウィルソンは空軍は実はF-15EXを望んでいなかったと明かしている。2004年以降の米空軍方針は「旧型機の新造機材」は導入せず、第五世代機に集中するとしていた。


空軍は戦闘機部隊の強化につながるとF-15EXを歓迎したものの、予算はきびしいままだった。もともとF-15C/Dの後継機とされたF-22が、予定の381機調達は実現せず、186機で打ち止めとなった。グローバル規模の部隊展開の要求では機齢が若いF-15C200機を当初想定より長く供用する必要がある。


それから11年経過し、F-15C/D各機は摩耗し、空軍関係者は修理しながらの供用は費用対効果が劣ると指摘している。安全性確保のため高負担の点検を続け、構造部品を使用可能に保つ必要がある。 


F-15EX一号機がボーイングのセントルイス工場で最終組み立てに入っている。ボーイングは自社費用でまず2機の製造を始め、想定より早く完成させようとしており、テストは2021年早々に始まりそうだ。空軍契約は今年7月に公布された。 Eric Shindelbower/Boeing


イーグル部隊の維持が予算を食いつぶすとデイヴィッド・S・ネイホム中将(計画担当副参謀長)が悲鳴を上げている。


旧型機運用で空軍には多方面で負担になっているとネイホムは認めている。「単に経費の問題以外にリスクが高いのが問題だ」と経年変化で飛行制限も発生しているという。空軍はすみやかにF-15EXを導入し、F-15C/Dと交代させるべきだという。


ボーイングはF-15EXの機体価格を80百万ドルとしており、F-35Aと大差ないが、運用コストで差が出る。退役したばかりのデイヴィッド・L・ゴールドフェイン大将はF-35の時間当たり飛行経費が35千ドルのまま変わらないことに警戒していたが、F-15は27千ドルだ。空軍はF-35でブロック4仕様を中心にしたいとするが、同型機の生産はまだ始まっていない。


参謀総長チャールズ・Q・ブラウンジュニア大将にとって、どちらかを選択すればよいという問題ではない。「あくまでも性能だ」とDefense One が主催した10月のオンラインイベントで発言していた。参謀総長は「F-35を重要視する」としながらF-15EXは「機会となる」と述べた。海外顧客がこれまでF-15の性能向上に多大な投資をしてくれたおかげで、空軍は自ら開発投資をせずに第四世代機の強力な性能を手に入れることができる、というのがブラウンのいいぶりだ。

 

サウジアラビア、カタールがあわせて50億ドルを負担し、それぞれの仕様のF-15開発が実現したとボーイング副社長プラット・クマールが10月取材で述べており、米空軍はその恩恵を利用しているわけだ。


F-15EXは実はF-15QA(カタール向け)とほぼ同じである。そのQA型はF-15SAサウジアラビア向けが原型で、デジタルフライバイワイヤを初めて導入している。


クマールは空軍がF-15EXを採用したことで今後海外でも同型機の導入にはずみがつくとみており、イスラエル、日本、カタール、韓国、サウジアラビアを想定している。


「世界各国が米空軍の買い物を注視していますよ」とクマールは言い、「世界各地の既存顧客から関心が寄せられています」。イスラエルが新型F-15に関心を寄せているが、日本はEXと同じ機能を導入しようとしている。ただし、フライバイワイヤは除外されているという


ボーイングのテストパイロットはF-15QAの飛行特性はF-15C/DさらにE型とほぼ同じであるが、性能限界にもっと早く到達できるとし、米空軍の旧型イーグルからの機種転換は楽だという。ただしEXの新型「グラスコックイット」表示に慣れる必要がある。C/D型やE型では1980年代物の計器が今も使用されている。


今年8月に航空戦闘軍団司令を退いたジェイムズ・M・ホームズ大将はEX導入を支持したのは議会が予算を付けてくれたことに加え、機体価格が導入可能で初号機が「生産ラインから出てすぐ飛行可能」だからだと発言していた。ただし、敵防空圏に接近できない制約がつくが、EXは本土防空任務や敵の脅威度が高くない場合に有効に投入できると見ていた。


空軍内部でも将来の部隊編成の姿でた結論は出ていない。当面はF-15EXがF-15C/Dの任務を引き継ぐ。ただし、将来はEXがE型の対地攻撃任務の一部をこなすという。E型は2030年代に退役をはじめる。EXは複座構造だが空軍は同機をパイロット一名で運用すると公式に発言している。

new F-15sGraphic: Dash Parham and Mike Tsukamoto/staff

View or download this infographic


「EXはストライクイーグルで運用中の兵器すべてを搭載可能。プラス数点を追加できる」とボーイング関係者は述べる。


ボーイングはF-15EX関連で12億ドルをまず今年7月に受領した。契約では固定価格にコストを付加し、コストに応じ報奨金が出る構造で、200機調達の場合の最大費用を228.9億ドルに設定したが、空軍はこれまで144機の購入しか公言していない。これと別にGEエイビエーションは1億ドルでGE-F110-129エンジン19基をEXテスト機材用に製造する。F-15SA、QAでも同じエンジンを使う。レイセオンテクノロジーズ傘下のプラット&ホイットニーにはF-15EX用にエンジンを自社費用で開発し代替策とすることを空軍が許している。


空軍のかかげる防空計画案ではF-15EXを76機必要としているが、議会は空軍から戦闘機調達戦略方針の提出がないとこれ以上の導入は認めないとしている。


共用性によりF-15C/D飛行隊はF-15EXに三か月以内の機種変更が可能となるとゴールドフェイン大将は述べており、既存の地上支援施設がそのまま使え、新規設備の必要はほぼない。これに対し、F-15C/D部隊がF-35に機種変更しようとすると数年間かかる。機種が全く違うと訓練も必要なためだ。米空軍からすれば迅速に導入可能な点がEXの最大の利点だ。


F-15EXでは今後のアップグレードを視野に入れているとクマールは説明している。


「主翼を改良しており、基地での点検さらに補給処での点検を不要にしました」といい、デジタル技術で再設計した主翼はボーイングのセントルイス工場で作業員10名程度がロボットと製造している。対して以前の型式では86名が作業していた。デジタル製造技術により作業エラーや手直しが減っている。


また「オープンミッションシステムとオープンアーキテクチャ」が特徴とクマールは述べており、空軍のアジャイルソフトウェア開発で「先駆者になるという。 DevSecOpsと呼ばれるソフトウェア開発で時間短縮をねらう方法だ。


米空軍の調達トップ、ウィル・ローパーはF-15EXを「初日から進化する設計」と述べ、進展が著しい通信やデータ共有装備に対応していくと説明している。



F-15EXは「将来の新技術をすばやく搭載可能」で「空軍の技術テスト機材」になれるとクマールは説明している。同機に搭載したコンピュータの処理能力が最速であること、光ファイバーネットワークが搭載され、機内に余裕があることが理由だ。


F-15EXの防御手段はイーグル・パッシブ警告残存システム(EPAWSS)と呼ぶ新型電子戦装備だ。EPAWSSの機能は極秘扱いだが、関係者は各種脅威対象を探知、捕捉、識別し、電子攻撃が可能だと述べている。テスト用EXの最初の二機にもEPAWSSが搭載されるが、ボーイングによればその後のテスト用8機でさらに性能向上させたEPAWSSをテストするという。なお、EPAWSSはF-15Eにも搭載される。


F-15EX価格にEPAWSSは含まれているとクマールは述べ、同様にレイセオンのAPG-82(V) 1レーダーもついてくる。同レーダーは空軍がC/D型、E型に導入を始めている。


80百万ドルの機体価格に含まれるものにスイート9共用運用飛行プログラム、MIDS/JTRS(多機能情報分散システム・共用戦術無線交信システム)がある。これはソフトウェアにより設定変更可能な無線装置だ。目標捕捉システムを搭載した共用ヘルメットは政府支給品として搭載する。


価格に含まれていないのはその他のセンサーで、スナイパーやライテニングポッド、リージョン赤外線捜索追跡(IRST)ボッドが例だという。


またボーイングによればF15EXのペイロードはF-15Eより28パーセント増え、兵装装着ポイントが二つ追加されたという。この追加で装着時の柔軟性が増えるというのが同社の説明である。

F-15EXの機体中央パイロンは全長22フィート、重量7千ポンドまでの兵器を搭載できる。この想像図では極超音速ミサイルを発射している。Sherif Wagih/Boeing


地域作戦司令官の一部からは担当地域を考慮した「別の装備品搭載」を求める声が出た。「2千ポンド爆弾7発を搭載する要求があり、EXはこれが可能で大きな効果が生まれる。その他の地点では目標が多数あるため小直径爆弾28発」の運用が意味を持ってくる。EXはこうした兵装を搭載しながら空対空ミサイル4本を搭載可能で、空対地任務もこなす。空軍はEXを当初こそ空対空任務に投入し、F-15Cと交代させる予定で、空対空ミサイル12本を搭載しながら追加兵装ポイントにはAIM-120あるいはAIM-9が搭載できる。


最初の機体はエグリン基地に契約上の予定より9か月早く到着する。ボーイングは自社資金を投入してまで納入が迅速に行えることを空軍に見せつけた。


「最初の二機は契約交付から数か月で納入できることに興奮状態です。空軍はすぐ機体を飛ばせます」とクマール。「この二機でほぼ二年間にわたり飛行させるとロット1の残り機材が納入され、データ収集に利用します」


サウジアラビア政府はF-15SAの飛行テスト経費を米空軍に支払っており、フライバイワイヤ初の採用となった同型機をテスト部隊があらゆる角度から試している。カタール向けの機体はサウジ仕様機とさして変わらないのでテストの規模は小さく、焦点はレーダー、画像ディスプレイ、コンピューターに当てられている。


EXで新趣向となるのがスイート9運用飛行プログラムと新型兵装管制一式でミサイル試射が必要となる。

 

新型シミュレーターもあるが、F-15C/DあるいはE型用のシミュレーターも最小限の手直しで使えるとボーイングは説明している。また新規に建屋等大型出費が不要だという。同様にF-15EXは国防総省の戦闘演習シミュレーションに簡単に統合できる。


F-15EXでは空軍の通常の性能要求設定手続きやその後に続く開発段階を不要としたので、事業でつきものの各段階通過手順は適用されないいとクマールは述べている。「通常と異なる。マイルストーンCの判断」として重要設計審査ではなく統合設計審査と呼ぶベンチマークは使うのだという。


「すぐ本格生産可能な機体ですので」統合運用テスト評価の「直後に生産に移せる」という。


ボーイングはF-15EXを月産4機のペースで生産する。ここに外国向け機体も含む。だがF-15EXの機数が十分そろうまでF-15C/D部隊は供用を続けられるのか。■                 


この記事は以下を再構成したものです。


Joining Up on the F-15EX


By John A. Tirpak

Nov. 1, 2020


2020年11月9日月曜日

米海兵隊は中国海軍をミサイルで狙い、各地を迅速移動する戦術構想を訓練中。

 

 

海兵隊が火力を迅速展開する新方式で訓練中だ。HIMARSミサイル攻撃を展開すれば海兵隊に実用的かつ残存性の高い対艦攻撃能力が実現する。

海兵隊の迅速展開訓練から西太平洋における米軍の軍事戦略が垣間見える。

 

2018年12月7日に第352海兵燃料補給輸送隊がM142高度機動ロケット発射機(HIMARS)をカリフォーニアのキャンプペンドルトンからユタのダグウェイ試射場まで移動させ、演習を展開した。

 

HIMARSは車輪つきだが自重12トンあり、各種対地攻撃ロケット弾を発射できる。KC-130J輸送機から展開し、訓練弾を発射し、またKC-130Jで原隊に戻った。

 

 

航空機による迅速展開演習は米陸軍が先行し陸軍では「HIMAR迅速展開」(HIRAIN)と呼んでいる。

 

新型装備、新型戦術と組み合わせHIRAINにより米軍部隊は長距離砲兵部隊を迅速移動させ敵軍を混乱させるのが目的だ。この手法で米軍は西太平洋で中国の動きを封じようとする。

 

中国は日本列島からフィリピンへ伸びる「第一列島線」を中国の影響圏ととらえ、中国共産党は貿易、外交、軍事脅威を使い影響力を行使している。有事になればこの列島線で多数地点を占拠するだろう。

 

ペンタゴンはこの動きを困難にしたいとする。航空・海軍戦力が米戦略の中心であることにかわりはないが、地上部隊へも固有の役割が期待される。H.R.マクマスター米陸軍大将(退役)は短期間ながらトランプ大統領の安全保障担当補佐官を務め、陸軍に「陸地からの兵力投射」を期待している。オバマ政権で海軍次官だったジャニーン・デイヴィッドソンも「陸軍に艦船を攻撃させる」よう動いたと発言。海兵隊には陸軍と同程度の装備品が多数あり、敵艦攻撃も可能だ。

 

近い将来の戦闘で中国艦艇が日本あるいはフィリピン近隣の諸島へ向け移動中としよう。海兵隊のロケット中隊が輸送機で諸島の一つに迅速移動し、中国艦へ数発発射する。その間輸送部隊が待機する。「発射するたびに部隊は別の場所に隠れ、次の発射命令を待つ」とRANDコーポレーションが2017年に構想を発表していた。

 

「遠隔島しょ部分の防御を強化し、隣接水域に海軍部隊が展開すれば低コストで戦略上の優位性が大きく確保できる」と海軍大学校のジェイムズ・ホームズ教授も2014年に提案していた。

 

陸軍は構想の一部を現実的な条件で訓練している。2018年のリムパック演習では陸軍HIMARS部隊が除籍した海軍強襲揚陸艦ラシーンをロケット弾5発で沈めた。発射地点は50マイル先で無人機が射撃を調整した。

 

とはいえ、無誘導227ミリロケット弾(弾頭200ポンド)を40マイル先から運用するHIMARSは理想的な対艦兵器とはいえない。

 

そこでHIMARSで誘導式610ミリ陸軍戦術ミサイルATACMS(弾頭500ポンド)を190マイル地点から発射させればよい。2016年に陸軍はシーカーの改良で艦船攻撃の効果を増大する作業を開始した。

 

海兵隊はHIMARS発射機に専用対艦ミサイルの導入を検討中だ。2018年にアリゾナでの試射では、F-35ステルス戦闘機から標的情報をロケット部隊に送信し、命中精度を引き上げようとした。海兵隊のF-35Bは地上のコンテナを探知し、データリンクでGPS座標をHIMARS要員へ送った。

 

HIMARSにより海兵隊に実用に耐えつつ残存性が高い対艦攻撃能力が実現する。そこにF-35を加え、ロケット攻撃の命中精度が向上する。また発射部隊は迅速空輸により敵の反撃を逃れ、敵は所在をつきとめようと懸命になる、という目論見だ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

How Would U.S. Marines Fight China in a War? This Photo Is a Hint.

 

November 7, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: MarinesArmyF-35MilitaryTechnologyHIMARS

by David Axe 

 

David Axe is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.


2020年11月8日日曜日

2020年選挙で負けたのは左翼勢力。保守勢力が2022年中間選挙に勝利すれば、2024年大統領選の勝者は?

 Reuters

 

 

治でも人生同様に願い事すべてがかなうわけではない。現在の潮流のままだと大統領選挙の最終結果を裁判所で決める事態にはならず、ジョー・バイデンが次期大統領になる。筆者の最初の対応はフェイスブック上の民主党支持の友人多数にメッセージを送ることだった。「ジョー・バイデン当選なら、そちらが次の四年間苦しむことになる」

 

選挙結果は収穫でもあり、種まきにもなる。当選しても次回での敗北がはじまっていることもあり、逆も真なりだ。筆者は今回の選挙結果で四つの可能性を指摘していた。

  1. バイデンが大勝し民主党が上下両院で多数になる。

  2. バイデンが辛勝し、民主党が下院を共和党が上院を制する。

  3. ドナルド・トランプが僅差で当選し、民主党が下院、共和党が上院で多数派となる。

  4. トランプと共和党が世論調査に反する結果をだし、共和党が上下両院で多数派となる。

このうち、2と3が一番可能性が高いとみていた。

4.6K

Game Change

 

さて結果だが、筆者の見立てははずれたようだ。

 

当面は民主党支持者の願いが実現し、ジョー・バイデンがドクター(看護師なのか)ジル・バイデンと2021年1月に宣誓式に臨むとしよう。ではその後四年間の米政治はどうなるのか。

 

バイデンの大統領就任で政界地図はどう変わるか。今回の投票結果にヒントがある。民主党支持が堅固なカリフォーニア州でさえ、今回左翼陣営による動議、住民提案、住民選挙はことごとく失敗し、保守勢力の提案が可決されている。ここに選挙民の潮流が見える。ドナルド・トランプが選挙期間中に分断意識を高めたのとは無関係だ。成立した「リベラル」提案の内容はドラッグ保有の規制緩和、厳罰処置の緩和のみだ。これでは左翼リベラル勢力が勝利を威張れる内容ではない。

 

左寄り富豪のマイク・ブルームバーグなど大金を州レベル自治体レベルの選挙に投入したものの、共和党は全米各地で減衰どころか実力を発揮し増勢の動きも示し、政界地図は書き換えられ今後の動向に影響が出てくる。

 

下院では選挙前の大手メディアは民主党大勝を予測し、ナンシー・ペロシが次期議会を仕切るとみていた。上院ではやはり大口献金を左寄り富豪層から受け民主党が多数を占めると見られていたが、共和党院内総務ミッチ・マッコネルは以前同様に共和党多数勢力の中心人物のままだ。

 

皮肉にも今回の選挙結果でバイデン政権が成立しても共和党がトランプ政権時代より有利になる。

 

なぜか。大統領任期の中間点となる2022年に中間選挙が控える。中間選挙ではほぼ毎回ホワイトハウスに控える政党が負けることになっている。1966年に共和党は議員を若返りさせ、1968年のリチャード・ニクソン当選を予期させる勝利を得た。1978年には全国運動中のロナルド・レーガンが共和党立候補者を助け、自身の大統領候補指名の地盤を築き、1980年に大統領に当選し共和党は上院を確保した。クリントン政権中にギングリッチ革命がおこり、アイゼンハワー時代以来初めて共和党が下院で多数派となり、オバマ政権第一期中にも共和党が多数勢力となった事例がある。

 

オバマ、クリントンともに党内で人望があり、年齢も若く、弁舌達者だった。このためともに再選された。だが、弱い指導力(例 ジミー・カーター)、政治的に疎い(例 ジョージ・ブッシュ父)あるいは極端に二重人格かつ予測不可能(例 トランプ)の場合は中間選挙の退潮が自らの再選の望みを絶つ出発点となっている。

 

では2022年の中間選挙はバイデン政権にどんな結果をもたらすのか、トランプが再選してもレイムダック大統領のままで共和党が上院で多数派を維持し、下院でも勝利していた可能性は低い。

 

ジョー・バイデンが大統領になれば共和党に好結果が生まれるといっても過言ではない。

 

トランプの政治遺産が効果を出す可能性も残っている。ドナルド・トランプは一個人であり運動でもある。個人としてずばぬけた強さを誇り、弱点もある。だがそれ以上にその運動は愛国主義、楽観主義さらに弁解の余地なく米国の過去、現在、未来へに対する責任感がもとになった圧倒的な積極性が売り物だ。近年の共和党大統領候補と異なり、トランプは黒人社会、ラティノ有権者と夢と希望を共有した。この二つが今や有権者で比重を増している。国境線堅持を回復するとの公約は二大政党が支持している。だがなんといっても憲法を守る姿勢の健全な姿勢の連邦栽判事をこれだけ多く指名してきた実績がこれから長年にわたり米国民個々人の権利を守る効果を発揮する。

 

ドナルド・トランプ再選が実現しなくても、本人が生んだ運動は今後も米国民全員ではなくても響きつづけるはずだ。本人が表舞台から去っても残したメッセージが輝きを強める場合が実現しそうだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Why the Left was the Real Loser in the 2020 Election

 

by Aram Bakshian Jr.

 

Aram Bakshian Jr. served as an aide to presidents Nixon, Ford and Reagan and has been widely published here and overseas on politics, history, gastronomy and the arts.

Image: Reuters


次期SSBNコロンビア級の建造にGO。二番艦はUSSウィスコンシンに。12隻建造で核抑止力の維持へ。

 

建造に入る次期弾道ミサイル潜水艦(SSBN)コロンビアの想像図。海軍は同艦含め12隻

を建造する。(Navy)

 海軍はジェネラルダイナミクス・エレクトリックボートにコロンビア級弾道ミサイル潜水艦一号艦の完全建造とともに二号艦USSウィスコンシンの事前調達費用を94.7億ドルで進める契約を交付した。

 

この発表でコロンビア級事業の初期段階が完結した。海軍はコロンビア級を最優先事項としている。12隻建造し、オハイオ級と交代する。一号艦コロンビアは2031年に哨戒航海を開始し海洋抑止力を維持する。

 

DoD契約情報は「コロンビア級一号艦二号艦のSSBN826、SSBN827の建造・試験以外に関連設計作業・技術支援が含まれる」とする。

2020年代後半に建造が本格化し、海軍は毎年一隻の調達を目指す。

 

「実施準備が整った。契約が成立し本格建造に移る」と海軍の研究開発調達責任者ジェイムズ・グーツが述べた。「設計と合わせ事業そのものが従来型の潜水艦以上の成熟度を示している。さらに完成度をあげ、先行建造から本格建造に移る。さらに毎年一隻の建造に移行する」

 

肝心なのは初号艦を予定通り建造することとグーツは続けた。「一号艦を完成するのは大仕事だが、初めてなので重要だ」「ただそれで終わりではない。事業を完結させ国の要求に応える必要がある」

 

二号艦も契約に盛り込まれた。海軍関係者は2024年予定のオプションが行使でき、本格建造費用について協議は不要ということだと解説した。

 

コロンビア事業は巨額規模となる。海軍試算で一隻あたり75億ドルになる。2026年になると毎年一隻のコロンビア級調達になるが、そのためFY21予算で200億ドルを計上していることで規模が想定できる。コロンビア級だけで海軍の建造費を38パーセント消化するが、海軍が中国の脅威を意識して整備が必要と判断しているからに他ならない。

 

1月にコロンビア級の予算規模について海軍作戦部長マイケル・ギルデイ大将は海軍力整備には予算増が必要と述べた。「海洋部門で優勢を維持したいなら、海軍作戦を分散実施するためには、前方で一定の規模で作戦展開するためにはもっと隻数が必要だし、そう、もっと予算が欲しい」

 

ジョー・コートニー下院議員(民、コネチカット)は選挙区にエレクトリリックボート(EB)社があり、今回の契約は潜水艦産業基盤の勝利と評価し、年間二隻のヴァージニア級建造にあらたにコロンビア級が加わることを歓迎した。「EBにとって大きな一歩となるだけでなく地域経済にも将来につながる大きな意味がある」と述べ、「長年にわたる建造技術の蓄積にさらに今後数十年間分の作業が加わり、雇用以外に好影響が生まれる」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

US Navy inks $9.4B contract for two Columbia-class nuclear missile submarines

By: David B. Larter 


2020年11月7日土曜日

中国、ロシアとの対決に動員できる機数が足りない! 米国の空軍力の現状を憂う報告書

  

メリカの空軍力の勝利の方程式は敵より多くの機体を、優れた整備を経て配備することだ。だが現実には米軍はあまりにも多くのミッションへ対応を迫られ、戦闘に疲れてはないものの、整備が重荷になっている。

 

トラック台数が少ないのに配達先ばかり多い運送会社のようだ。米空軍力は酷使されているが整備が追いついていない。

 

RANDコーポレーションと米会計検査院(GAO)から二通りの報告書が昨年出た。ともに米空軍力の現状に悲観的だ。まずRANDは米空軍に将来想定される四種類のシナリオで戦闘力を発揮できるか検討した。①ロシアまたは中国との対決 ②大規模地域紛争として朝鮮戦争やヴェトナム戦争同様のシナリオ ③新しい冷戦として小規模な対決を砂漠の嵐作戦を想定、④対テロ作戦だ。類似例の事例からRANDは空軍が対応を迫られるミッションに8種類を上げた。制空、攻撃、空輸、空中給油、C3ISRがここに入る。

 

ほぼそのすべてで空軍は100パーセントの要求に答えられないとRANDは評価。地域紛争が長期化の場合、攻撃では60パーセントしかこなせない、空中給油も92パーセントの需要しか満足させられないという。

 

 

 

可能性が最も低いと思われる戦闘シナリオが空軍を最も疲弊させるのは皮肉としか言いようがない。RANDは「最大の驚きは平和維持活動が空軍に最大の負担となること」と述べている。平和維持活動の一環としての飛行禁止区域設定のシナリオではC3ISRの要求で29パーセントしか満たせず、給油機の需要では32パーセント、特殊作戦関連では40パーセント、爆撃機ミッションの46パーセントしか実施できない。

 

RANDはこの試算を「バルカン半島、中東での飛行禁止措置の長期化で戦闘機、給油機、C3ISR/BM(戦闘統制)の各機材でローテーション配備が必要となった」事例から導いた。言い換えれば、飛行禁止措置の執行のような普通の任務でも長期化すれば、重荷になるということだ。

 

一方で会計検査院報告書で2011年から2016年にかけ空軍、海軍ともに機体の稼働率目標が未達と明らかになった。空軍海軍の13機種について、GAOは重整備の遅れ、必要部品が生産終了となっている、整備要員の欠員、耐用期間を超えても飛行させている事例を指摘している。

 

「機体稼動率が目標を下回ると、訓練や実戦ミッションが期待通り実現できない場面が生じかねない」とGAO報告書は指摘し、「たとえばF-22飛行隊関係者から稼働可能機材が足りず制空任務が達成できないとの不満を聴取した。F-22パイロットは充実した訓練があってこそ制空任務が実現できる。さらに司令部レベルでは機体稼働率が目標水準以下のため、緊急事態の場合に十分な機数を動員できない事態もありうるとの見方がある」

 

海軍では第一線部隊に機材を優先手配し戦力を維持しているが、後方部隊に訓練機材も不足する事態が発生している。

 

また旧式化して維持が高費用となっているやっかいな機材はどうするのか。何か手を打つ必要がある。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

The Air Force Doesn’t Have Enough Jets to Take On Russia and China

November 7, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaChinaMilitaryTechnologyF-15

 

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook. This first appeared last year.


2020年11月6日金曜日

米国内演習にMi-24ハインドが投入されているのはなぜか。超大国間戦に備える姿がそこにあった。もっとすごいのは民間企業がハインドを保有していることでは。

 

 

 

 

空軍の救難ヘリコプター部隊が2019年11月に強力なソ連時代のミルMi-24ハインド攻撃ヘリコプターを前に模擬戦闘訓練を展開した。

 

演習はアリゾナのデイヴィス-モンタン空軍基地で展開され、同基地駐留の第55救難飛行隊にヘリコプター同士の戦闘に備える機会となった。

 

Mi-24の2機が同基地に飛来した。空軍公式写真では大型複座の同機が砂漠上空を低空飛行する様子やハンガー内で第55救難飛行隊のシコースキーHH-60Gぺイヴホーク救難ヘリコプターと肩を並べる姿が写っていた。

 

 

 

ソ連崩壊を受け、米軍は1990年代初め以来ハインドを実際に所有し、借り上げている。うち軍所有のMi-24の2機はネリス空軍基地に配備されている。

 

さらにVTSエイヴィエーション社が二機所有し、一機はブルガリアが運用していたMi-24Dで、アラバマ州ハンツビルに常駐する。VTS社のハインド各機は一時は博物館展示機だった。

 

The Aviationistのトム・デメリーによれば今回アリゾナに展開したMi-24はVTS所有機という。デイヴィス-モンタン基地での訓練は同基地部隊には難易度がきわめて高い内容だった。ハインドはじめソ連時代のヘリコプターは対地攻撃、空対空攻撃の双方をこなす。

 

空対空モードではハインドは機首の機関砲や無誘導、誘導式双方のロケット弾で敵ヘリコプターを排除する。ヘリコプターで敵ヘリコプターを攻撃するのは容易な仕事だ。

 

このため米空軍ではA-10攻撃機をヘリコプター援護に使い、敵ヘリコプターからの攻撃に備える。F-16よりもA-10の低速飛行性能が適している。しかし、ハインドは対ヘリコプター攻撃に性能を発揮する。

 

「ネリスのウェポンスクール以外の場所でこの訓練を展開するのは今回が始めて」と55救難隊のカート・ウォーリン大尉がいう。「HH-60G対HH-60Gの訓練しかしていないので今回は大変化だ」「この訓練で他機種が敵の場合にどんな状況になるかわかるので戦術や手順も対応できる」

 

55救難隊のぺイヴホークはUH-60ブラックホークの派生型だ。HH-60Gには追加センサー、空中給油用プローブがつき、大型機関銃も搭載する。

 

空軍にぺ一ヴホークが100機ほどあり、墜落機のパイロット救出のほか、地上部隊の救出、傷病兵搬送を危険地帯で実施している。G型が旧式化してきたので空軍はHH-60の新型の導入を始めている。

 

ぺイヴホークは中東やアフガニスタンの戦闘地帯に投入されてきた。搭乗員は地上の砲火や悪天候、険しい地理にも対応してきたが、敵部隊の武装ヘリコプターから攻撃を受けた事例はない。

 

ただしこの状況も米国が大国と戦えば一変する。2019年11月の演習は新状況に適応する意味もある。「55救難隊はこの訓練で今後の対応に備えられる」とウォーリン大尉も述べる。


「大国相手の戦闘に備えるべく実力を引き上げたい。ゴールドフェイン参謀総長がまさしくこれを指示している」

 

ペンタゴンが一層現実的なハイエンド演習を増やす中で、VTS社保有のハインド両機が各地の米軍基地上空にあらわれる機会も増えそうだ。

 

海兵隊は2018年にMi-24あるいはMi-17ヒップ輸送ヘリコプターを敵機として借り上げアリゾナ州ユマでの演習に投入する可能性を模索した。

 

「Mi-24はその大きさ、性能、火力、防御行動能力がこちら側にない戦力となり、今後も脅威になりうる」と海兵隊は当時説明していた。■

 

この記事は以下を再構成したものです。20年間戦闘員相手の戦いを展開してきた米軍がロシア、中国との対決に切り替えていくのは相当ハードルが高いでのしょうね。

 

Why the U.S. Air Force is Flying Russian Mi-24 Attack Helicopters


November 5, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaU.S. Air ForceMilitaryTechnologyHelicopterMi-24

by David Axe 

 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article is being republished due to reader interest.