2021年8月15日日曜日

緊急 タリバンはアフガン空軍を捕獲し、米製軍用機を入手することになるのか

U.S officials formally deliver four Super Tucano attack aircraft to the Afghan Defense Ministry, in Kabul, Afghanistan, on January 15, 2016.

 

米国はスーパートゥカーノ攻撃機をアフガン国防省に供与していた January 15, 2016. HAROON SABAWOON / ANADOLU AGENCY / GETTY IMAGES

 

 

フガン国内治安維持軍は米国が支給した銃火器多数を放棄してきた実績がある。米軍撤退を受けてタリバンが支配地を増やす中、アフガニスタンは戦闘航空機材まで失うことになりそうだ。

 

 

アフガン空軍はタリバンへの空爆を続けており、ペンタゴンは事態はそこまでひっ迫していないとする。だが8月13日の報道ではタリバン戦闘員が装甲車両、小型観測無人機、飛行不能ヘリコプターを捕獲している。捕獲がさらに増えてもおかしくない。

 

「米国製装備が敵の手に落ちる事態は絶えず懸念対象だ」とペンタゴン報道官ジョン・カービーが8月13日述べた。「どうしたらその事態を回避できるか、防止できるか、今は予測できない」

 

6月30日時点でアフガン空軍には200機があったが、ミッション投入可能は167機に限られたとアフガニスタン再建担当の米特別監査官がまとめていた。機体の大部分はカブール、カンダハールの二か所から運用していた。だがタリバンは8月13日に航空基地含みカンダハールを占拠している。

翌14日にツイッターにブラックホーク他のヘリコプターがカンダハール空港でタリバンの手に落ちたとの投稿が現れた。ただし、信ぴょう性は確認できていない。こうした機材の多くは武装しているが、実際に威力を発揮するのはプロペラ攻撃機部隊20機程度あるA-29スーパートゥカーノで、近接航空支援用にアフガン部隊へ特別に支給された。レーザー誘導他の爆弾を運用可能だ。

 

アフガン政府軍にはその他MD-530攻撃ヘリ50機もあり、機関銃、ロケットの兵装がつく。またUH-60ブラックホークやロシア製Mi-17ヘリコプター、C-130輸送機、セスナ機も運用するほか、セスナの一部は武装型だ。米国は今後もこうした機材の運用を財政支援していくとカービー報道官は述べている。「アフガン空軍の戦力整備への支援の決意は今も変わらない」

 

ここ20年間に米国はアフガン空軍に130機超を供与してきた。国防総省は7月にさらにブラックホーク35機、A-29スーパートゥカーノ3機の追加供与を発表し、米軍撤退後もアフガニスタン政府支援を継続するとしていた。このうちブラックホーク3機が7月に現地到着している。

 

残るヘリコプター他機材の現状について国防総省の見解は出ていない。これ以上タリバンの手に落ちないよう引き渡しは停止しているのか。

 

タリバンはMi-35ヘリコプターを入手したといわれる。インド政府が供与したものだが、ビデオではローターが欠落している。またタリバンはMi-17ヘリコプター数機が格納庫に予備ローターや部品とともに入手したと発表している。MD-530の一機も捕獲したとするが、大きく損傷しているようだ。

 

稼働可能な機材を入手してもタリバンは適切な訓練がないためと運用に困難を感じるはずと、軍用機に詳しい筋は見ている。訓練を受ければ操縦可能だが兵装運用には別の訓練が必要となる。また機材は定期的保守管理が必要で、長期にわたり飛行を続けるのは困難だろう。

 

とはいえ、敵の手に落ちる前に米国は機材や航空基地を空爆する必要がある。カービーは具体的に述べなかったが実施となれば米軍が動くはずだ。「装備品の破壊となる事態は予測できない。同国政府の装備品活用にむけ支援を続けるのみだ」

 

別の可能性としてタリバンが捕獲機材をロシアや中国に売却し、技術情報が流出することがある。飛行できなくてもタリバンは捕獲機材の映像画像を強力なプロパガンダに利用するだろう。

.

タリバンが各都市を奪う前から、供与済み装備品の状況を米国は把握していないとの声が出ていた。

 

昨年12月にアフガニスタン再建特別監察官はペンタゴンが「アフガニスタンへ供与済みで機微性の高い装備品で必要な要求を満たしていない。国家安全保障リスクを最小にとどめ、極秘技術の詰まった防衛装備品の移転や誤用を避ける要求だ」と指摘していた。

 

ジョー・バイデン大統領が米軍撤退を命じたことで、「近接航空支援の要請が増え、機材は酷使ぎみだ。また情報収集監視偵察任務も増える中、米軍の航空支援がないままアフガニスタン国軍は航空補給活動を続けている」と監察官は指摘していた。

 

全機材で推奨点検間隔を25パーセント伸ばしたまま運用が続いていると監察官は指摘し、「サプライチェーンに負担がかかり、定期点検を先送りし戦闘中の損傷に対応できなくなっている」という。■



この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


The Taliban Captured Helicopters. Can They Capture an Air Force?

These are the lethal warplanes that could fall under Taliban control.

By MARCUS WEISGERBER and TARA COPP

AUGUST 13, 2021


 

2021年度世界の5大軍事大国ランキング。世界の視点であらためて日本の実力を認識すべき。

 

 

界最強の軍事大国はどこか。一見単純な質問だが、実は複雑な要因が背後にある。各国の軍事組織はその国特有の事情の地理条件や地勢戦略にもとづき資源を投入する。この結果、強固な軍事力が生まれてもそのまま他国へ効力を発するものではない。軍事力ランキングを発表したGlobalFirepowerでは独特の計算式で各種要因を考慮し各国を比較している。

 

1.米国

 

米国は2021年もトップの座を守った。二位とは小さいものの、一貫して差を維持している。膨大な国防予算、大規模な産業基盤、巨大な人的資源に支えられ、米国は近代軍事力の基準全部をパスしており、量的、質的にも次点国を航空分野のほぼ全部で優位に立っている。現役空母も最多で、空母打撃群構想で世界各地への攻撃力を維持する。

 

2. ロシア

 

ソ連崩壊後の軍事力衰退を脱し、ロシアは近代化を広範に開始しており、とくに空軍、海軍の再整備に努めている。その成果が2021年に現れ、新世代戦略・巡航ミサイル潜水艦が登場し米国との質的格差が縮まった。新型海防艦他小型艦艇の整備はロシアが沿岸防備力の強化を図る姿勢を反映している。他方で、地上兵力では米国に対し大きく差をつけているが、装甲車両部門は別だ。空軍力も米国が有利でSu-57制空戦闘機に見られるように米国のステルス侵攻機材への防御に投資しているが、自国の侵攻機能整備は後回しになっている。

 

3. 中国

 

ロシア、米国とは大きく差をつけられているが、中国は相当規模の支出を継続して全軍の戦力増強を図っている。世界第二位の国防予算に加え軍務に投入可能な人口規模が最大という利点を生かし、中国軍は短期間で大幅に増強となる可能性がある。今後も野心的な装備品調達が続く見込んで、独自に空母打撃群を編成し、第六世代戦闘機や爆撃機の稼働を始めるものとみられる。

 

4. インド

 

国防費の規模、装備品の規模も上位三国から差があるもののインドは膨大な人口から軍事潜在力を秘めている。特に戦車部隊は一部旧式車両もあるものの強力な戦力を維持しており、沿岸防衛戦力、砲兵部隊も大規模だ。軍事装備品の輸入国の立場だがインドは新しい一歩を踏み出している。ライセンス生産の形だが技術移転が実現し、国産装備品の生産の基盤が生まれつつある。

 

5. 日本

 

日本は2020年にフランスを追い越し第五位についた。経済力、比較的大規模な防衛予算、国内インフラを背景に伸長した。航空戦力は強力で海軍分野も駆逐艦潜水艦で活発となっているが、地上兵力が小規模のためこの順位におちついている。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

These Are the 5 Toughest Militaries in the World Today

by Mark Episkopos

August 13, 2021  Topic: Military Affairs  Region: Global  Blog Brand: The Reboot  Tags: U.S. MilitaryUnited StatesRussiaIndiaChinaJapanMilitary


2021年8月14日土曜日

未確認宇宙現象(UAP)の正体を探ろうとする民間科学者の動き。ペンタゴンの抱える機密データに頼らず、解明をめざす。もはや国家安全保障の問題という認識も。

 

 ターミナル1、ターミナル2共通記事です。


Oumuamua interstellar object

初めて見つかった星間物体オウムアムアの図。発見は2017年10月19日のことだった。

Credit: M. Kornmesser/ESO

 

400年も前にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが一冊の本を著し、太陽系について別の見方を提示し、地球が中心ではなく太陽の周りを地球が回っていると主張した。

 

著書「天文対話」は物議を醸しだし、以後190年間出版禁止扱いとなった。懐疑派は天体望遠鏡を覗くことさえ拒否し、ガリレオの主張の裏付けとなる木星の月、土星の輪の観察を避けた。ガリレオは残りの人生を囚われたまま過ごした。

 

そのガリレオの名を使い、地球外生命による人工物を探知しようという科学者の一派がある。

 

ガリレオプロジェクトは未確認宇宙現象(UAP)の公開データベース整備をめざす。「目標は現在理解されている物理学に基づいて透明度の高い分析を行うこと」とハーヴァード大宇宙物理学者エイヴィ・ローブが記者会見で7月26日に語った。

 

「科学界にはシステム的科学的かつ透明性ある形で地球外技術の証拠を追い求める必要がある」「地球外技術が発見された場合の科学、技術、さらに世界全体への影響はとてつもなく大きくなるだろう」

 

民間資金で発足したガリレオ・プロジェクトと並行し、ペンタゴンは6月25日の報道発表で軍と情報機関によるUAP目撃事例144件の一次調査結果を議会に伝えたとした。目撃事例の大部分は物理的な存在とし、光学あるいは大気状況による錯視ではない。ただし、詳細情報につながる精度が足りない。「最も保守的な組織である政府がこれを公表したこと自体が異例で、頭上の空に人知では理解できない物体があると述べた」(ローブ)

 

「国家安全保障にかかわる問題だ」とローブは評した。だが目撃例は「軍人や政治家が解釈できるものではない。観察訓練を受けておらず、そもそも科学者ではないからだ。科学界が解明するべきで、天文学者が物体の本質を解明するように進めるべきだ」

 

ペンタゴンのUAPタスクフォースの結論は説明がつかない目撃談多数は米国の極秘技術と無関係ながら、軍のパイロット他信頼のおける人員がこうした事例を目撃していることだ。「そこに大きな意味がある」と語るのはルイス・エリゾンドで、2007年に発足した米政府のUAP調査をねらった高度航空宇宙脅威識別事業の責任者だった。

 

「30年にわたり、超特別な技術へ注意を払ってこなかった。だが、この考え方は終わった」とエリゾンドはワシントンポスト取材にこう述べている。

 

「我々の技術から50年から1,000年先の技術が対象だ。こうした技術なら我々の現有装備より高い性能を発揮できる。要するにいったい何を対象にしているのかわからなくなる。オプションはすべて示すべきだ」

 

ガリレオプロジェクトは研究分野を3つ想定する。UAPの高解像度画像を同時に多数の装置で撮影すること。次に星間物質の探査で、2017年に見つかった葉巻状の星間移動体オウムアムア(ハワイ語で偵察者)の例がある。さらに地球周回中の地球外生命による衛星の存在を確認することだ。

 

「UAPの多くで説明がつくようになればよい。蜃気楼や電磁効果あるいは地学上の現象かもしれない」とプロジェクトの共同創設者フランク・ローキン(バッカーグループ社長兼CEO、科学器具メーカー、本社マサチューセッツ)が述べている。「あくまでも不可知論でとらえ、データは公開する」

 

ガリレオプロジェクトはこれまでの目撃例の評価はしない。「こうした事案は交差検証、証拠に基づく科学的説明につながらないためだ」とローキンは述べた。「霧を取り除き科学的解析をデータを積み重ねて進める。政府所有のセンサーで得たデータは使わない。大部分が機密扱いのためだ」

 

プロジェクトはこれまで1.81百万ドルを集めており、天文望遠鏡のデータを活用する。同グループではオウムアムアのような物体を近い地点から観察すべく宇宙機打ち上げも企画している。■

 

Scientists Launch Privately Funded Hunt For Unidentified Space Objects

Irene Klotz August 05, 2021

https://aviationweek.com/defense-space/space/scientists-launch-privately-funded-hunt-unidentified-space-objects

 

米陸軍のレーザー搭載ストライカー車両が射撃実証を完了。成果は非公表だが、2022年度には実戦配備が始まる。レーザーの実用化は思ったより早く進展している。

  

Photo by Jim Kendall

 

陸軍は無人航空機システム(UAS)、ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾(RAM)への対応を目指し、ハイテクレーザー兵器装備の整備を続けている。

 

陸軍の最新広報資料ではマルチドメイン作戦へ対応しつつ新型スタンドオフ機能を実現するとある。

 

中でも指向性エナジーの応用が最も進展しており、陸軍は24カ月でレーザーを車体に搭載し、戦闘用途の試作車を完成させた。

 

無人機やRAMにレーザーで対抗することで陸軍の防空ミサイル防衛体制が充実し、同時にシステム全体のライフサイクルコストが補給活動の必要が減るため低下する効果も実現する。

 

今夏、陸軍迅速能力整備重要技術開発室Rapid Capabilities and Critical Technologies Office (RCCTO)が航空ミサイル防衛機能横断チーム等とレーザー搭載ストライカーをオクラホマのフォート・シルへ持ち込み、指向性エナジー機動短距離防空Directed Energy-Maneuver Short-Range Air Defense (DE M-SHORAD)の戦闘発射実証を行った。実戦部隊をUASやRAMの脅威から防御すべくRCCTOはレーザー搭載ストライカー4両で1個小隊を2022年度までに整備する。

 

「レーザーの初めての戦闘応用となります」とL・ニール・サーグッド中将(極超音速・指向性エナジー・宇宙・迅速調達担当)は語った。中将はRCCTOも統括する。「現時点で技術は準備が整った。未来の扉を開く」

 

戦闘射撃想定ではストライカーに現実を想定したシナリオが準備された。陸軍にとっても初の出来事であり、今後のDE M-SHORAD装備に必要となる特性を考慮した。

 

「前例のない試みです」と語るのはG・スコット・マクロード大佐(RCCTOのDE M-SHORAD事業主査だ。「これまでどこにもない機能を実現し配備する。改修や性能向上ではない。わずか24カ月で政府民間合同で設計、統合の上実用環境で作動する装備に仕上げた」

 

Photo by Jim Kendall

 

DE M-SHORAD用の試作装備は陸軍が進める近代化戦略の一環で対空防衛、ミサイル防衛を意識している。戦闘射撃実証は7月に終わり、隊員は新型装備の取り扱い訓練を完了し、最新技術を通じDE M-SHORAD装備に習熟することができた。数日で装備の操作が可能となり、標的捕捉の技量を示し、交戦を実際を行えるようになった。

 

隊員を考慮した設計が試作装備のあちこちに見受けられる。例えば、訓練では民生用のゲーム用コントローラを使っており、標準型の軍用コントローラより使い勝手が良い。ストライカーの三次元モデルがハンドヘルド機器で使え、仮想的にシステムを移動でき、部品単位で分解できる。またオンラインでシステム研修資料にアクセス可能だ。

 

演習で隊員は実際の脅威を再現した戦闘シナリオを体験した。E M-SHORAD兵装システムは設計どおりの性能を実証し、22年度配備をめざし大きな一歩となった。

 

「今回の実証は迅速試作化の好例となった」とクレイグ・ロビン博士(RCCTOのDEプロジェクト室)が語る。「はじめて戦闘対応レーザーを一定の距離から脅威対象に向け放射した。まだ完全ではないものの、隊員のフィードバックを反映し、将来の指向性エナジー兵器としての完成度を上げていく」

 

「今回の試作品から学ぶ点は多い。2つの狙いがある。一つは隊員が安全に運用できる装備の設計、2番目は、確実に脅威に対応できるようにすること。技術開発は完了している。次は隊員に初の実戦能力を与えることだ」(サーグッド中将)■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

US Army evaluates laser-equipped Stryker combat vehicle

ByColton Jones

Aug 13, 2021

米中戦争を真正面から描いた小説2034年の共著者にWIREDが背景等を聞いた。

 小説「2034年」の共著者エリオット・アッカーマン、ジェイムズ・スタヴリディス海軍大将に執筆の背景、個人の経験、心配な事項を聞いた。

 

Elliot Ackerman and Admiral James Stavridis

Elliot Ackerman and Admiral James Stavridis, authors of the novel 2034.PHOTO-ILLUSTRATION: SAM WHITNEY/GETTY IMAGES/ALAMY

 

book cover with title '2034 A Novel of the Next World War'

COURTESY OF PENGUIN RANDOM HOUSE

 

Wiredは小説2034: A Novel of the Next World Warの抜粋を六回に分けて公開した。


aircraft carrier with an American flag

Part I: 南シナ海の危機

「国旗を掲げず無理やり航走してくる船舶があり、遭難信号も出していない。何か変だ」

soldiers with guns drawn on a person who is cuffed and blindfolded

Part II: ワシントンDCが連絡不能へ
「目まぐるしいほど多くの事件があった。Wen Rui、F-35、エアフォースワン...でもどれも報道がない。すべて隠ぺいされている」

jet flying over water toward a ship

Part III: 生存者はひとりのみ

「攻撃に向かってくる機体が見えず、艦の乗員は全員沈黙に包まれた。なぜ仕留めに来ないのか」

A scene with two men at a conference table.

Part IV:スプラトリー諸島の待伏せ攻撃

「千年後にはアメリカは国家ではなく、一瞬の出来事として記憶に残っているだろう」

Two men having a conversation in a trophy room.

Part V: 暗闇に向かう

「ブラックホールの中のどこかに中国艦隊がいる。司令官はその位置を突き止め撃破するよう期待されている」


A Russian vessel breaks through ice.

Part VI: レッドラインを超える

「米軍には最終的に見つかるだろうが、その時ではもう遅すぎる」


年初めWIREDは2月号で小説2034年を特集した。その後6回に分け原作短縮版をウェブ上で公開した。今回は最終回として共著者とのインタビューを掲載する。

 

マリア・ストレシンスキー(WIRED): 執筆のきっかけは?

ジェイムズ・スタヴリディス海軍大将: 何年も前に読んだ小説で、米国とソ連の世界規模の戦闘を描いたサー・ジョン・ハケットの「第三次世界大戦」から着想を得た。

 ここ数年にわたり中国と米国が冷戦に向かう状況が現実味を帯びてきた。ヘンリー・キッシンジャーが「まだ冷戦ではないが、冷戦の入り口にきている」と発言したのを覚えているだろうか。

 そこで考え始めた。中国との戦争をどうしたら回避できるか。ソ連との戦争は回避できたが、実際に開戦となっていれば恐ろしい結果が生まれていただろう。そこで「第三次世界大戦」が道しるべになった。

ストレシンスキー: おふたりとも深い知識に基づいて執筆されている。小説の筋はどこまで現実なのだろうか。どの程度までお二人の経験に基づいているのか。

スタヴリディス: 登場人物で自分の経歴から一番身近なのがサラ・ハントだ。違いは多い。サラは自分より背が高く、髪の毛も多い(笑)。だが二人の経歴は似ている。彼女は准将で自分も准将だった。駆逐艦戦隊の司令官で南シナ海に展開した。実際に冒頭場面にあるように中国漁民を救難したことがある。こうした経験を活用できた。

 また空母打撃群の司令という重責を得たのは幸運だった。サラも同じ立場になった。だから状況はよくわかる。また司令官としてサラは不安な状況に置かれるが、指揮官なら同じ経験はある。

 エリオットは小隊、中隊の指揮官を経験し、30回もの戦闘を経験している。次の状況は誰にも予測できない。サラも同じだ。

エリオット・アッカーマン: 作中でサラが抱く疑念は自分も経験したことがある。友人が傷つくのを見れば答えが出てこない厳しい課題に直面する。

ストレシンスキー: 南シナ海事件の描写は経験に基づいているのでは。

スタヴリディス: とても現実的なものだ。

ストレシンスキー: 他にどこから着想を得たの?

スタヴリディス: 戦闘発進の部分は現実に近い。1990年代には国家安全保障会議で働いた。シチュエーションルームがどんなところか知っているし、行政府ビルからホワイトハウスのウェストウィングに移動するのも経験している。コードレッドについても詳しい。

 ロシア側の登場人物コルチャックはロシア人の経験に基づく人物だ。NATOの最高司令官をしていたからね。また中国大使館付き武官 Lin Baoが醸し出す雰囲気が好きだ。両方の世界に詳しい人物だね。フレッチャー時代のクラスメートに中国人がいて、米国で教育を受けており、この男がまさしく両方の世界に足を踏み入れていた。Lin Baoは魅力ある人物だが複雑な人物だね。

 そしてエリオットがウェッジのもとになった人物を知っている。

アッカーマン: うん、そうだね。作中のウェッジはパイロットで海兵隊戦闘攻撃飛行隊323デス・ラトラーズの指揮官となる。親友の一人が実際にこの瞬間にペルシア湾にデスラトラーズ指揮官として出動中なので、敬意を表し、同飛行隊の設定にしたんだ。

 執筆する小説では登場人物の内面を描くことが多いよね。一定の地点を超えると人物がみんな自分になってしまうんだ。各自が自分の一部を切り取った人物になるんだ。

 例えば、ウェッジは冒頭でくりかえし祖祖父が第二次大戦で示した実績に触れている。本人は同様の功績をあげる機会は来ないと思っている。私自身はパイロットではないが心情的に同じような心の旅路が理解できる。その他の登場人物でも国家安全保障会議のチョードリーがおり、複雑な経歴の持ち主で離婚も経験している。私も離婚している。

 さらにDCで暮らしてきた。政府で働き、極秘の政府の仕事で名を秘して働いたこともある。チョードリーがこのことを語っている。本人の性格の一部だ。作中では実際の経験が反映される。意識下の話も登場人物の一部になっている。

ストレシンスキー: こうした登場人物の性格付けをもとに一読してみたら、強い感情を持った。こう問い続けている。どうして止められなかったのか。ボタンを押してはいけない。爆弾投下してはいけない。この本は強い警告を発している。でも自制心があるのに止められない。私自身も同じなのか。軍の組織内だからこうなるのか、指揮命令系統の中では避けられないものなのか。

スタヴリディス: 軍に限った話ではない。むしろ、社会、人間全般にかかわる話だろう。ここ百年の歴史を見てほしい。種として進化したはずで、各国が交易し、女性や少数派の権利が上がり、その他素晴らしい成果がこの百年で実現した。ただし世界大戦が二回発生した。合計すると80百万人が殺害されたのが20世紀だ。

 二度の大戦で誤った指導者もいた。事態の悪化を止められたはずなのに止めなかった。特に第一次大戦では血縁でつながった各国が結局ずるずると破滅的な戦争に進んだ。

アッカーマン: お尋ねの問いは本書の中心テーマだ。人間はなぜ何度も何度も繰り返しているか。著者はともに戦争を終わらせたいと考えている。アメリカの世紀は二回の世界大戦で特徴づけられた。ともにアメリカが始めた戦争ではないが、終わらせたのはこちらだ。その結果、大繫栄時代を迎えた。では米中間で戦争が始まれば、どうやって終戦させるのか。両国にとって益のある形で終結できるのか。このテーマが作中通じ繰り返し問いかけられている。

スタヴリディス: 本書は未来を予見するものではないと強調したい。このような事態に足を踏み込まないよう警告している。また、これからの傾向を示した本でもある。

ストレシンスキー: 心配になる傾向には何があるのか

スタヴリディス: 第一に米国への大規模サイバー攻撃だ。敵陣営はサイバー技術をステルスにし人工知能を利用しわが国に向けている。

 二番目に米中両国が実際の開戦に向かう事態を憂慮すべきだ。発生するとすれば南シナ海だろう。なぜなら両軍の実力が拮抗しているからだ。南シナ海から意図しない結果が生まれる。

 またイランやロシアといった国の役割にも注意を喚起している。イラン、ロシア両国がかつての帝国の後を引き継ぐ国家であることが興味深い。ともに栄光の時代は終わっている。それでも国際分野で相当悪いことを行う力がある。エリオットはどう思う?

アッカーマン: 今回のプロジェクトの前はもっとよく眠れたね。

ストレシンスキー: 本書を読了する前は寝つきがよかった。

アッカーマン: 現実世界のイベントが原稿より先に現実に発生していることだ。とくにカセム・ソレイマニ、イランの革命防衛隊のクッズ部隊司令官が無人機により暗殺されたのが2020年1月だった。原稿の先の版では本人が何度も登場しており、2034年時点でも存命の想定だった。そこで書き直しになったが、コロナウィルスが発生した。これも言及する必要が出た。

 思い返すと執筆を始めた時点とは全く違う世界になっている。となれば2034年の世界などだれにも想像できないことになる。

スタヴリディス: そうだね。書き始めた段階ではトランプ政権が中国と貿易交渉にあたっており、うまくいきそうな感触だった。執筆を始めると対中関係が悪化の一途となった。バイデンに代わってもコースが逆転するとは考えられない。ということでご指摘の点の通りだ。われわれは小説2034の世界に近づいている。

アッカーマン: そもそも2034という年号からスタートしたのではない。もっと先の未来を考えていた。でも執筆が進むと年号は近づいて、これはまずいぞと気づいた。実際に事態は発生しつつある。

ストレシンスキー: 11月の大統領選挙と1月6日の米議会占拠事件の間に作中の警告のメッセージで変化は生まれたのだろうか。

アッカーマン: 小説の結末に向かうところでチョードリーがリンカーン演説について考察している。リンカーンは「欧州、アジア、アフリカのすべての軍隊が連合し、世界の富がすべて各国の手にわたり、ボナパルトが司令官となっても、オハイオから水一滴も、ブルーリッジに足を踏み入れることは一千年かけても実現しない....自由国民の国家としていかなる時も存続を維持するか、できなれば自害する」というもので、選挙が終わり議事堂占拠までは「自害」に向かっていたといえる。だがこの回避方法は見つかるとの希望がある。

ストレシンスキー: 現実世界でこうした声が大きくなれば安心して眠れるようになるかな。

スタヴリディス: 1月21日になり、バイデンチームに主役が変わり、中国への対処、サイバーセキュリティ、貿易関税問題、5Gネットワーク、南シナ海、人工島構築等の深い知識があり安心した。 

 このチームなら中国に対応できる戦略を構築できると期待している。ここ四年は事案ごとに戦術対応しただけでマー・ア・ラゴでの夕食会から疑似合意になった貿易問題も航行の自由作戦が南シナ海で展開した事実に遠く及ばない。すべて戦略的な意味での手段、結果、方法につながらない。バイデンチームは戦略を打ち立てるはずで、専門家の意見を拝聴するだろう。以前より意味のあるアプローチを示すはずだ。

 だからといってグローバルシステムで一定の地位を占めようとする中国にこちらから妥協する必要もない。その時代は終わった。中国は戦略、作戦案を用意している。一帯一路と呼んでいる。バイデンチームはこれを十分認識している。また我々も戦略面を同時に考えていく。どうやって戦争を回避するか、国際社会の主導的立場を中国にむざむざ渡す必要はない。これをしたら米国の間違いとなる。カギを握るのはインドだと思う。

ストレシンスキー: 小説ではインドが大きな役割を果たしている。フィクションなのはわかっているが、インドの将来についてどこから着想を得たのか。

アッカーマン: 小説家として人間の行動にパターンがあるとみている。2034の中ではインドがグローバル大国として台頭しているが、その行動様式には米国を思わせるものがある。小説の大きな教訓は戦争を始める国になってはならない、戦争を終わらせる国になるべきという点だ。アメリカの優位性が20世紀に確立した際の教訓だ。この国は第一次大戦、第二次大戦ともに始めていないが、終わらせたのはこの国だ。その結果がほぼ一世紀にわたる世界支配を生んだ。では次の大戦に火をつけることを回避できる賢明さが残っているだろうか。ないのであれば、どの国なら終了させられるのか。

ストレシンスキー: おふたりとも現政権で働きたいと思っているみたいね。

アッカーマン: 押しつけがましい小説を書くような連中が必要となればね。(笑)

スタヴリディス: 作家兼評論家という役割で十分だよ。今回のWIREDとの仕事に興奮しているんだ。大のヘミングウェイのファンでね、彼の「老人と海」は全編ライフに連載されたんだ。

ストレシンスキー: それに近いことをWIREDがやってます。マイクロソフトの反トラスト法裁判で丸々一冊を使っていた号が数年前にあった。

アッカーマン: ぼくたちの小説のほうが反トラスト法よりは興奮度が高いと思うけど。

スタヴリディス: そうだな、反トラスト法裁判とヘミングウェイ小説の比較なら、我々の勝ちだな。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


What Did I Just Read? A Conversation With the Authors of '2034'