厳しい現実: ウクライナ攻勢は失敗だ
ロシア-ウクライナ戦争で冷厳な真実は、ウクライナの最新の一手の攻勢が失敗に終わったことであり、いくら言い換えても結果は変わらない
2022年のキーウ軍は例外的で大きな戦場数カ所で成功を収めた。2023年に向け、これらの勝利が最終的な戦争勝利への道を開く期待が高まっていた。残念なことに、ウクライナの上級指導層は、誤った判断、自国能力の過大評価、そして悲しいことに、西側の軍事装備の有効性の過大評価に苦しんだ。
2023年1月の時点で、西側メディアはウクライナの「春攻勢」を語り始めていた。当時、ロシア軍はウクライナのハリコフとケルソンをめぐる戦闘で大打撃を受けていた。モスクワは30万人の部隊を部分的に動員して4カ月が経過していたが、新兵の取り扱いで当初はひどいつまずきを見せ、未確認報道だが70万人ものロシア人青年が戦闘を避けるために国外逃亡したとされていた。ウクライナの士気はうなぎ登りで、ロシアのモチベーションは地に落ちていた。
初期のロシア人徴兵兵の質は明らかに劣っていたが、11月の時点で、クレムリンはウクライナの秋攻勢で空いた穴に数万人以上の徴兵兵を投入し、流れを食い止めた。プーチンは1月までに、UAFに圧力をかけ続けるため、ソレダルとバフムートの双子都市に重点を置いて、1000キロの前線全体で攻撃作戦を強化した。プーチンはこの戦いをPMCワグネル・グループに委ねる選択をし、ここでウクライナは2023年最初の大きなミスを犯した。
ウクライナとロシアにとってバフムートは二重の災難
バフムートは70,000人ほどの中規模都市だった。ここを領有する者にとって戦術的な意義はあったが、それ自身が作戦レベルで重要な意味を持つとは考えられなかった。ウクライナはこの町を保持していたが、3月上旬までにワグネルは町の東の郊外に到達した。その時点でウクライナにとって軍事的に必要だったのは、西側の次の防衛線までバフムートから撤退することだった。
なぜなら、ウクライナ側にはロシアが進軍しなければならない高地と開けた戦場があったため、いかなる攻撃も非常に困難で、人員と装備の面でコストがかかるからである。しかし、バフムートにとどまることで、ロシア軍の任務ははるかに容易になった。ロシア軍はバフムート内のウクライナ軍陣地から数メートル以内まで移動できたのだ。バフムート守備隊は、その時点から不利な立場に立たされた。
しかし、ゼレンスキーはとにかく戦いを続ける道を選んだ。米国の上級指導層は数カ月にわたって、ウクライナ大統領に戦闘は勝ち目がなく、他の防衛陣地に移動するよう警告した。ゼレンスキーは優位な戦闘陣地への撤退を拒んだだけでなく、部下に建物一つも譲らないよう命じ、死闘を強いた。毎月毎月、ゼレンスキーは流れを逆転させようと、旅団を次々とバクムートの援軍に送り込んだ。
軍事的な基礎知識からして、ワグネルのバフムート占領を止める合理的な望みがほとんどないことは痛いほど明らかであっただけでなく、ゼレンスキーがバフムートを助けるため無益な援軍となった旅団の多くは、来るべき春と夏の攻勢にも緊急に必要であった。バフムート陥落から2日後、ゼレンスキーは反抗的な態度をとり、同市は陥落していないと主張した。2022年、ゼレンスキーの粘り強さと妥協を許さない姿勢は、ロシアの侵攻を鈍らせ、その後2度にわたって作戦上の大敗を喫する結果となった。
ウクライナは、戦略的に取るに足らない都市の防衛にかけがえのない資源を費やしただけでなく、これから始まる長丁場の攻勢で極めて重要な旅団を失った。残念ながら、6月に攻勢が開始された後も、ミスは続いた。
不十分で不適切な訓練が失敗への道を開いた攻撃開始の何カ月も前から、西側の出版物多数は、ウクライナ軍がNATO諸国から受けていた「高度な訓練」を称賛していた。同時に、ウクライナの多くの旅団は、チャレンジャー戦車やレオパルド戦車、米国の砲兵システム、ブラッドレー戦闘車、ストライカーなどの近代的なNATO戦闘車両を装備していた。NATOの技術とNATOの訓練を組み合わせることで、ロシアの防衛を突破し、アゾフ海岸にくさびを打ち込み、占領軍を真っ二つに分断するような質の高い攻撃能力を生み出すことが期待された。
フォーリン・アフェアーズは攻撃開始当日に、「ウクライナの隠された優位性:欧州の訓練生はいかにしてキーウ軍を変貌させ、戦争を変えたか」と題する分析を発表した。しかし、作戦開始から3カ月近くが経過した現在、欧州とNATOの訓練はUAFを変貌させる効果はなかった。作戦が始まる数カ月前に筆者が主張したように、数週間から数カ月の訓練とNATOの装備の寄せ集めで、ウクライナが自らを変えることは不可能に近い。その理由は根本的なものであり、ウクライナ軍を非難するつもりはない。
帯域防衛システムを準備した大国を打ち負かすために、複合武器作戦の効果的を生む実戦部隊を編成するには、まず、相当数の戦闘旅団を持たなければならない。各旅団の大隊と中隊には、小隊長や軍曹、中隊長、一等軍曹、少佐、大隊長、作戦将校など、このような作戦の実施経験を持つ者を配置しなければならない。こうしたリーダーには、小隊レベルで2~5年、中隊レベルで5~7年、大隊・旅団レベルで15~20年の経験が必要である。
教育・訓練を受けた指導者が部隊に適切に配置されれば、次に必要なのは、個々の兵士が自分の技能(戦車運転手、ブラッドレー砲手、歩兵分隊員など)の熟練度を高め、次に装甲戦闘プラットフォームを運用するための乗組員を訓練し、その後小隊が一緒に戦い、次に中隊が一緒に戦い、さらに旅団で大隊が一緒に戦い、最後に戦域で旅団や師団が一緒に戦うことである。このような個人集団の訓練はすべて、調整された統合軍作戦を成功させるため行う。ウクライナにはその前提条件が皆無だった。それゆえ、待望の攻勢が当初からレンガの壁に突き当たったとしても不思議ではなかった。
2023年夏のウクライナ攻勢での戦術的パフォーマンス
ウクライナ軍の攻勢における詳細なパフォーマンスは以前にも詳しく取り上げたが、ここでは成功に至らなかった原因となった重要なミスについて述べる。第一の問題は、ウクライナの軍部と政治指導部が攻勢開始を指示しなかったことだ。作戦開始からほぼ1カ月後、ウクライナのヴァレリー・ザルジニー司令官Valery Zaluzhnyはワシントン・ポストインタビューで、進展がないことへの不満を聞くと「腹が立つ」と主張した。
しかし、同じインタビューで、「十分な補給がなければ、計画はまったく実現不可能だ」と認めている。彼の不満の主なものは、制空権がないことだ。NATOは制空権なしに攻撃作戦を開始することはない、と彼は言った。そして彼は正しい。しかし、ザルジニーにはさらに不利な要素があった。
ウクライナはまた、慢性的な防空能力の欠如、榴弾砲と砲弾数の不足、電子戦システムの不足、ミサイル不足、そしておそらく最も重要なことだが、必要な地雷除去能力が25%しかないことに苦しんでいる。したがって、ウクライナが6月5日に広範な前線にわたり攻勢を開始したとき、キーウ、ワシントン、ブリュッセルの誰も、ロシアのバズソーに遭遇したことに驚かなかったはずだ。
ロシアの多層防衛システムは、ウクライナ軍を足止めし、キルゾーンに誘導するため、地雷に大きく依存している。最初の2週間は、事実上すべての機甲攻撃が失敗し、獲得した領土はごくわずかで、作戦の価値は皆無だった。ニューヨーク・タイムズなどは、UAFは最初の2週間で攻撃部隊の5分の1を失ったと報じている。これ以外に方法はなかった。
ロシアが制空権、強力な防空、砲弾の優位性、強固な電子戦システム(ウクライナの通信機能を低下させ、大量のUAFの無人機やミサイルを無力化する)を持ち、入念な防御作戦を準備するため6~9カ月もあったのなら、大規模な攻撃作戦を実施した経験の乏しい、部分的に訓練された部分的な装甲部隊を派遣することは、大勢の兵士を確実に死に追いやることであることは、疑問の余地なく明らかだったはずだ。
ウクライナ側は装甲車両を最小限に抑え、歩兵中心の行動をとる戦術に変更した。UAFは3カ月目に入った現在、ザポレジア戦線において、スタロマイオルスケ、ウロジャインの大部分、ロボティナの大部分を奪取するなど、足踏み状態の前進を見せたものの、北部のクピャンスク地区で若干の失地を喫した。しかも、数キロを掻い潜るため兵力数万を失っている。UAFには、匍匐前進を続ける兵力も装備もない。中間目標に到達するずっと前に、兵力は尽きてしまうだろう。
影響はこれから出てくる
今日のロシアとウクライナの戦争における冷厳な真実は、ウクライナの最後の一手としての攻勢が失敗に終わったということだ。UAFが失敗したのは、楽観論や希望的観測やスピンに左右されない永続的な戦闘の基本に基づく、まったく予測可能な理由によるものだ。問題は米国が今何をすべきかである。
開戦当初からワシントンが採用してきた方針は、「必要な限り」ウクライナを支援するというものだった。それが良い考えであったか悪い考えであったかは、別の機会に議論することにしよう。ここで重要なのは、この政策がキーウにとってもワシントンにとっても有益な結果をもたらさなかったということであり、新たな現実を認識し進化しなければならないということだ。
何千台もの装甲車、何百万発もの砲弾、ミサイル、爆弾、そして訓練と情報支援、さらには何十億ドルものその他の援助を提供したのだから。しかし、その支援でウクライナの勝利はもたらさなかった。そして今、現実に照らして新たな政策を打ち出すときが来ている。■
The Hard Truth: Ukraine Has No Realistic Path to Victory Over Russia - 19FortyFive
By
Daniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” Davis is also a 19FortyFive Contributing Editor.
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