スキップしてメイン コンテンツに移動

習近平が台湾侵攻の前に別の脆弱な周辺国へ武力を行使する可能性が高まってきた。対象はどこか。

 


中国の武力行使は台湾以外の場所で始まる可能性

中国による台湾侵攻を抑止する米国の取り組みが成功すれば、中国が別の国を攻撃する可能性がある

メリカのアジア外交は、中国に台湾を侵攻させず、南シナ海におけるアメリカのパートナーの主張を簒奪するのを阻止することに重点を置いている。しかし、太平洋における米国の効果的な抑止力により、中国は台湾を攻撃する前に、より脆弱な近隣諸国を相手に能力を評価できる内陸部へ狙いをシフトさせるかもしれない。

アメリカの戦力がアジア内陸部に投射される機会はほとんどないため、この地域は中国にとって、最近整備された軍の能力を試す、低リスクのチャンスとなる。中国は、1979年にベトナムで屈辱を味わって以来、大規模な軍事作戦を行っていない。そのため、小規模介入を行うことで、能力を試すことができ、また中国の武力行使に対する世界の反応も試すことができる。従って、米国はこれらの地域におけるパワーバランスを改善させ、中国の軍事行動を抑止するべきである。

習近平国家主席は、対外軍事行動に向かわせる内政での圧力に直面している。習近平は、失速した経済を若返らせ、中国共産党の強さを国内外に示す党の期待に直面している。習近平はまた、人民解放軍(PLA)に対し、広範な改革の価値を示したいと考えている。

中国の人口ピラミッドが急速に逆転していること、国内の失業率が著しく、不満が高まっていること、習自身の年齢を考えれば、期待に応えるには時間がたりない。だからこそ、台湾の安全保障に対する米国の懸念は高まっているのだ。

米国が台湾に注目することで、中国の野心を別の目標に向かわせる可能性がある。台湾の物理的な地理、ヤマアラシのような防衛戦略、アメリカの庇護は、台湾の制圧を困難にしている。中国軍の戦闘経験の欠如も相まって、台湾との戦争は習近平が直面している圧力を緩和する賢明な方法ではない。習近平はまず、中央アジアや東南アジアの、利害関係の低い舞台で限定的な軍事行動を追求するかもしれない。

習近平は中国の少数民族であるウイグル族を迫害しており、キルギス、タジキスタン、アフガニスタンなど、自国主権を守る能力に限界がある中央アジア各国と国境警備上で懸念を高めている。習近平は、アフガニスタンの崩壊や中国人へのテロ攻撃のような出来事を軍事介入する理由に活用できるだろう。これでPLAに貴重な実戦経験を提供し、習近平はPLAの即応性を評価し、軍に対する大規模改革の価値を証明できる。このような高価な改革が成功した証拠があれば、中国経済が失速し始めている中で政治的ストレスから解放されるかもしれない。以前であれば、この地域におけるロシアの軍事的優位が抑止力となっていたが、ウクライナ戦争により中国への依存度が高まり、北京に対抗するモスクワの信頼性が低下している。


中国が東南アジアの紛争に介入する可能性もある。中国はミャンマーと長い国境を接しており、ミャンマーは2021年5月以来、終わりの見えない内戦に巻き込まれている。中国は長い間、ミャンマーを代理の緩衝国として維持しており、政治的・安全保障上の懸念が軍事的経験を積む機会を生み出す可能性がある。気候変動による難民危機の脅威は、不安定さに対する認識を悪化させ、あるいはインドが前例のない中国の介入に挑戦する気をそらす可能性がある。

ミャンマーはASEANのメンバーだが、その他加盟国は紛争対処の努力を怠っている。さらに、南シナ海における中国の行動は、ASEANが抑止力と見られていないことを暗示している。そのため、中国はこの地域を「安定化」させるため軍事作戦を展開し、アフガニスタンと同様の利益を得るかもしれない。

第三のターゲットは、軍事的に弱いモンゴルである。中国と国境を接するモンゴルには、石炭、ウラン、モリブデン、銅、スズなど、世界で最も豊富な鉱床がある。これらの資源は、中国の拡大する原子力計画、石炭プラント建設、電子技術革新(特に半導体)の燃料となる可能性がある。中国がアメリカの貿易戦争や国際制裁から自国を守りたいのであれば、こうしたプロジェクトの拡大は極めて重要だ。モンゴルの多額の負債と、特に石炭生産に関連する最近の国内不安は、ウランバートルのこれらの鉱床の完全利用を妨げ、モンゴルと中国の貿易の現状を脅かしている。

2022年、国際通貨基金はモンゴルは世界的なショック、国境紛争、経済スタグフレーションに直面していると宣言した。モンゴルの「政治的不安定性」は、中国に有利な「戦略的鉱業プロジェクトを大きく混乱させる」可能性があるとIMFは述べている。正式な対外防衛コミットメントがなく、軍備も小さいモンゴルの不安定な状況は、国境資源を強引に奪取し、利用することに北京が魅力を覚えさせるかもしれない。

上記シナリオのいずれでも、軍事的経験と経済的利益、そして習近平にとっての政治的利益は、中国による予期せぬ対外行動を動機づけるかもしれない。しかし、中国が太平洋でアメリカに挑戦するためには、軍事経験と経済力が不可欠であることを考えれば、アメリカはロシアやインドのような地域大国に、中国とのバランスを取り、このような試練を防ぐよう働きかけるべきだろう。


アメリカが太平洋で中国を封じ込めることは、アメリカの利益にとって重要である。しかし、貴重な資産を支配し、中国軍の能力を証明する機会を失うことは、ひいては習近平が太平洋でより積極的な措置を取る自信の醸成を妨げることになりかねない。

地域内有力諸国が中国を中央アジアや東南アジアから締め出せば、太平洋におけるアメリカの投資を間接的に保護できる。だからこそアメリカは、中国が中央アジアや東南アジアにもたらすリスクを認識するだけでなく、そのリスクに対し行動を起こすよう、地域の大国に積極的に働きかけることが極めて重要なのだ。中国が潜在的に悲惨になる戦争を始める第一歩を踏み出す前に、アメリカはこの地域に利害関係を持つ有力国の利益を活用すべきである。■

China Won’t Start With Taiwan - 19FortyFive

By

Patrick Fox and Garrett Ehinger


Patrick Fox is a Program Assistant at the John Quincy Adams Society, the Co-Host of the Security Dilemma Podcast and the Editor-In-Chief for the Realist Review. He holds a bachelor’s degree in international relations from Syracuse University and was a Fall 2022 Marcellus Policy Fellow. You can follow him on Twitter at @patrckfox.

Garrett Ehinger is an Assistant Editor at Realist Review and a China analyst who holds a bachelor’s in Biomedical Science with a minor in Mandarin Chinese from Brigham Young University in Idaho. He is currently a master’s student at the University of Utah studying public health. He has studied Chinese culture and language for over a decade. You can follow him on Twitter at @GarrettEhinger.


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM