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北朝鮮の「弾道ミサイル潜水艦」はまともな戦力になるのか。旧式潜水艦を無理やり改造した奇怪な「フランケンサブ」に疑問が消えない。ただし、今回の発表がハッタリとしても西側の対潜アセットは無視できなくなる。

 

旧式ロメオ級通常型潜水艦をここまで改造したのは、金正恩がめざす第2次攻撃核抑止力の夢のあらわれだ


KCNA



 戦時代のロメオ級ディーゼル電気潜水艦を、北朝鮮が「フランケンシュタイン」化し通常動力ミサイル潜水艦に作り変えた。金正恩が出席した式典は9月6日、北朝鮮東岸の新浦潜水艦基地で行われた。この潜水艦は「英雄キム・クンオク」と名付けられ、船体番号は841だ。


新浦で弾道ミサイル潜水艦を視察する金正恩委員長。(KCNA)



2019年に地上で改造中の、いわゆるゴラエ/シンポC級「SSB」の姿を初めて見た。セイル後方に接ぎ木されたミサイル・コンパートメントが、奇妙な外観を与えていた。それが今回我々が目にしているものと同じ艦であるかは明らかではないが、北朝鮮が何年もいじくりまわしていたことを考えれば、その可能性は高い。



同潜水艦の能力については、セイル後方にあるミサイル・コンパートメントの延両側に各5、合計10個のドアがあることが明らかだ。前方の4つは後方の6つより大きい。これは、この艦が複数種類のミサイル、具体的には短距離と長距離の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、および/またはSLBMと潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)を混載する設計に符号する。特に、新型核搭載可能な海上発射巡航ミサイル、フワサル2は、潜水艦発射に適合しており、以前提唱したように、この潜水艦の巡航ミサイルの最有力候補となる。


この潜水艦の非常に古い船体設計と、接ぎ木されたミサイル・コンパートメントがわかる。(KCNA)


桟橋に横付けされた進水後の潜水艦。(KCNA)

北朝鮮は長年にわたり、弾道ミサイルを発射することで、公然と核抑止力を追求してきた。それでも、北朝鮮が大改造したSSBを機能させることができるとして、核パトロールが可能な艦を1隻か2隻持つだけでは、信頼に足る核の第2撃抑止力を確保することはできない。北朝鮮の潜水艦は現代の基準からすると非常に騒音が大きく、出港した瞬間から追跡される。それでも、このような能力が存在すること自体が、北朝鮮にとって核兵器開発という野放図な冒険の新たな大きな一歩と見なされるだろう。持続的なパトロールは、韓国、アメリカ、日本の対潜水艦の資源を大幅に拘束する可能性もある。


2019年に新浦の潜水艦ヤードを視察した金正恩は、政権のロメオ級からSSB「フランケンサブ」への野望を初めて垣間見た。(KCNA)


数年前、ロメオ級に乗る金正恩。このタイプは1950年代にさかのぼり、現在も北朝鮮海軍の潜水艦艦隊の基幹をなしている。(KCNA)


特筆すべきは、進水が9月6日に行われたとされている点だ。しかし、その日の高解像度の衛星写真には、進水式準備の様子も含め、その様子はまったく見られない。進水が行われ、桟橋エリアが素早くリセットされたか、あるいは準備が非常に迅速に行われ、衛星パスが何も拾わなかった可能性もあるが、少し奇妙に思える。


大々的なお披露目式での金正恩の発言について、NKNews.comはこう書いている:

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の指導者は水曜日の演説で、「既存の中型潜水艦を、現代戦において重要な役割を果たす戦術核を搭載した攻撃型潜水艦に改造する計画」の概要を説明した。

北朝鮮は、「原子力潜水艦建造のための開発計画や将来計画とは別の」計画で、「海軍の核武装を休むことなく加速させるだろう」と報じた。


ここまでユニークな同艦で次のマイルストーンは、SLBMの試射だろう。■


North Korea's Diesel-Electric Ballistic Missile 'Frankensub' Emerges


BYTYLER ROGOWAY|PUBLISHED SEP 7, 2023 8:31 PM EDT

THE WAR ZONE


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