スキップしてメイン コンテンツに移動

新発想のロータリーエンジンが軍の需要に応える日がまもなくやってきそう。新興企業リキッドピストンの挑戦に注目。

LiquidPiston XTS-210

LiquidPiston's XTS-210 rotary engine is about the size of a basketball but could replace generator ... [+]LIQUIDPISTON


ネティカット州を拠点とするリキッドピストンLiquidPistonは、稼働中の小型戦術発電機30,000台を置き換え、ドローンに電力供給する新型ロータリーエンジンの開発で、陸軍および空軍と契約を結んだ。

約20年前に設立された同社が、国防総省に貢献できるようになったのはごく最近のことだ。同社はマサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトし、共同設立者のアレック・シュコルニク Alec Shkolnikは人工知能とロボット工学の博士課程に在籍していた。

ウクライナ生まれの物理学者である父ニコライとともに、シュコルニクは、過去60年にわたって自動車や航空機などで動力源となってきた古典的なヴァンケル式ロータリー・エンジンに新たなひねりを加えた。

リキッドピストンの高効率ハイブリッドサイクル(HEHC)ロータリーエンジンは、新しいアーキテクチャと新しい熱力学サイクルをベースにし、サイズ、重量、出力(SWaP)が重要となる小型発電やパワートレイン用途に適している。

「このエンジンは、従来型に比べ5倍から10倍も小型・軽量であるため、国防総省内でも応用可能性が見つかっている。どこへ行っても、どんな用途でも、より大きなパワーとエネルギーは好まれます」とアレック・シュコルニックは断言する。

これが関心を集め、過去2年間に陸軍と空軍から、中小企業技術革新研究(SBIR)と直接開発を合わせて10件の契約(総額約2000万ドル)を獲得した。各契約は、移動式発電と小型ドローン推進システムの両方をカバーしているが、リキッドピストンは、現場で使う小型発電機にまず焦点を当てている。

「移動式(陸軍)指令センターを分散する動きがあります。陸軍が理想とするのは、1つを失っても機能を維持できるようにすることです」(シュコルニク)。

しかし、陸軍にとって差し迫った焦点は、数十年前から実戦配備中のガスおよびディーゼル駆動の小型発電機セット(ジェネセット)の置き換えだ。

陸軍の小型戦術電力(STEP)プログラムでは、「効率性、信頼性、機動性、保守性の向上」を提供する新世代ジェネレーターを検討している。様々なサイズと出力が更新対象で、このうちリキッドピストンは、小型、低・中出力の発電機に焦点を当てている。

「当社が開発中の発電機は、現在配備されている3kWから10kWの発電機に代替できる可能性があります。陸軍はそのことに興奮しています。なぜなら、論理的に、サポート対象を1つにする方がずっとシンプルだからです」とシュコルニクは言う。

リキッドピストンが開発したロータリーエンジンは、手のひらに収まるサイズから、最大1,000馬力を出力するエンドテーブルサイズのパワープラントまでスケーラブルとなっている。これらのエンジンは、同社が「Xプラットフォーム」と呼ぶ、ローターとシャフトの2つの可動部しかないアーキテクチャーの基本設計を共有している。

このシンプルさが、STEPの主要特性である信頼性とメンテナンス性を高める。また、小型でも出力が得られるため、小型車両搭載型発電機(陸軍の新型歩兵分隊車両のような軽量プラットフォームに搭載される可能性がある)や、トラックやトレーラーを必要としない携帯型発電機も可能になる。

「2人から4人で発電機セットを移動させることができれば、それは本当に新しい能力です」とシュコルニクは付け加える。

設計は、2サイクルまたは4サイクル運転が可能で、ガソリン、灯油、水素、ディーゼル燃料に対応する。このような柔軟性は、戦術用パワープラントを単一燃料(JP-8/F24)に統一し、ロジスティクスの課題を大幅に簡素化したい陸軍が強く望んでいるものである。

リキッドピストンは、陸軍C5ISRセンターの資金援助に基づき、バージニア州を拠点とするエンジニアリング会社、パーソンズPSN コーポレーションと830万ドルの契約を結び、XTS-210(210cc)ロータリーエンジンを、陸軍の先進中型移動電源(AMMPS)ジェネレータの要件に対応させ、陸軍が実地試験する小型10kWジェネレータに統合させる。新しい発電機は、現在のAMMPSシステムの約4分の1のサイズと重量で、燃料消費量も同程度となる。

シュコルニクによれば、1.5フィート×1.5フィートの箱に収まり、重量は200ポンド未満で、トラックに搭載可能で、8時間持続する独自の燃料供給以外に、外部タンクから供給することもできる。

シュコルニクは「ヴァンケル・ロータリー・エンジンを裏返しにした」と説明する。リキッドピストンのHEHCエンジンは、ヴァンケルのようにピーナツ型のハウジングの中に三角形のローターを採用するのではなく、エピトロコイド型(ピーナツ型)のローターがトライローブ型(ほぼ三角形)のハウジングの中で回転する。

これによって、古典的なアトキンソンサイクルとオットーサイクルの特性を組み合わせたサーマルサイクルを使用できる。「当社のエンジンは、(ヴァンケルよりも)はるかに高い圧縮比を実現できます」とシュコルニックは説明する。「吸気と排気を非対称にポートすることで、定容量燃焼と過膨張を実現することができます」。

その結果、ロータリーにつきもののオイル消費とシーリング問題を克服し、小型で高回転のパッケージで競争力ある出力が得られる。Xロータリーエンジン設計の高速回転特性は、発電機モーターと相性が良く、小型化が可能だ。

このようなパッケージングの利点により、小型ロータリーは、独立型ユニットとして、あるいはハイブリッドシステムの一部として、ドローンに動力を供給する候補となる。リキッドピストンは、陸軍の将来戦術無人航空機システム(FTUAS)用のハイブリッド電気Xエンジン(HEXE)推進システムを開発するため、陸軍からフェーズII SBIRを受けている。

FTUASは、陸軍の既存のTextronRQ-7 Shadow ISRドローンを、滑走路に依存しない新しいVTOL UAVに置き換える構想だ。Shadowはガソリン燃料を動力源としているが、陸軍は、より長い耐久性と静かな動作が可能なJP-8/FT-24燃料のハイブリッドシステムを動力源とする後継機を望んでいる。

リキッドピストンのHEXE推進システムは、ジェット燃料でエンジンを空中で再始動できる一方で、全電気、エンジンのみ、またはその両方の組み合わせの間で、必要に応じて動力を切り替えることができる。HEXEはまた、空軍のAFWERX技術推進部門の関心を引き、6月に同社に1500万ドルのSTRATFI(戦略的資金調達)契約を授与した。

米空軍は、重燃料とハイブリッド形式の空中および地上動力アプリケーションの両方に関心を示している。リキッドピストンの当面の目標は、来年末までに先進的な試作型エンジンと発電機を陸軍に納入することだとシュコルニックは言う。そして、他の防衛関連の新興企業と同様、その補完的な目標は、生産契約が実現するまで存続することである。

そのため、研究開発資金を獲得してから本格的な生産契約やサービス契約を獲得するまでのギャップである「死の谷」を越える必要がある。リキッドピストンは、防衛関連の新興企業と同じく死の谷の課題に直面しているが、別の問題にも対処しなければならない。

「陸軍、海軍、空軍の誰もが、より多くの(戦術的な)パワーを望んでいますが、それを前進できるプログラムの所有権を本当に持っている人はいません」とシュコルニックは言う。実際、陸海空軍のどこにも、戦術戦力の中心的な取得組織・団体は存在しないようだ。その代わり、軍の戦術的パワー要素は、要求の包括的なビューの恩恵を受けることなく、特定のプログラムに縛られている。

本誌は、国防革新ユニットに、国防総省全体で拡大し続ける戦術的パワーの必要性の取得と維持を指揮する中央組織が存在しないことを認識しているか尋ねた。これまでのところ、DIUから回答はない。しかし、リキッドピストンのCEOによれば、同社は長年にわたり、その能力と、戦術的パワーの取り組みを一元化することの利点を国防総省に啓蒙してきたという。

また、追加投資を確保するため、あまり知られていない道を歩んできた。リキッドピストンは、株式クラウドファンディングを早くから採用してきた。2016年以前は、投資家が新興企業に資金を提供するには(あるいは彼らと資金調達について話し合うには)認定を受ける必要があったが、規制されたクラウドファンディングの出現により、シュコルニックは、同社が研究開発の道を歩み続ける金を調達する機会を得た。

「それは画期的なことでした。私たちは規制CFラウンドを3回行い、300万ドルを調達し、法定限度額を達成しました」。

同社は2021年以降、10,000人以上の投資家にレギュレーションAによる株式公開を行い、約3,000万ドルの追加資金を調達している。(レギュレーションAは、SECの登録要件を免除するもので、企業は登録せず証券を募集・販売できる。)

「それは私たちにとって素晴らしい方法でした。私たちがやっていることを理解してくれる多くの人々と共鳴しているのです」とシュコルニックは熱く語る。「古いエンジンと当社のエンジンの写真を見たり、新しいロータリーの内部の写真を見たりする。彼らは興奮し、投資する」。

このような戦略は、防衛分野の新興企業であまり議論されてこなかったが、検討する価値はある。リキッドピストンはまた、バッテリーが十分なパワー、コスト・軽量化、ロジスティクスの簡素化などを提供できない商用スペース(補助動力装置など)における機会(同社は84点の特許を保有している)を活用することも計画している。

同社が伝統的な動力システムを開発したことは、斬新なエンジン技術の継続的な利点と魅力を実証している。共同設立者であるシュコルニクの父親は、2000年代初頭に燃料電池やスーパーキャパシタなどの技術に取り組んでいたときから、長期にわたる可能性を認識していた。■

Rotary-Engine Generators Could Put New Spin On Military Tactical Power

Eric TeglerContributor

https://www.forbes.com/sites/erictegler/2023/08/10/rotary-engine-generators-could-put-a-new-spin-on-military-tactical-power/?ss=aerospace-defense&sh=497dfa9031e2


Aug 10, 2023,09:15am EDT


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...