Iskander: The One Missile America and NATO Fears (And North Korea Loves)
イスカンデル:米国NATOが恐れ北朝鮮が夢中になるミサイル
9K720イスカンデルM(NAOT名称SS-26ストーン)は高性能な短距離弾道ミサイルだ。輸出仕様は射程280キロ、ペイロード480Kgで、ロシア国内仕様は500キロ射程とGlobal Securityがまとめている。
(本稿は2016年初出だが北朝鮮がほぼ同型のミサイル発射試験を行ったため読者の要望に答え再録した)
Missile Threat Project含むその他筋では国内仕様は400キロ射程でペイロード400Kgとしている。いずれにせよ、核弾頭搭載可能なイスカンデル-Mは中距離核戦力(INF)条約制限内だ。とはいえ、同ミサイルはINF条約で第一線から消える旧型OTR-23オーカ(SS-23スパイダー)核弾頭ミサイルと交代する。
イスカンデルは単弾頭で終末誘導装置がつくがミサイル命中精度は異なる。Missile Threatのまとめでは慣性誘導型の命中誤差は200メートルだがGPSあるいはGLONASSを搭載すれば一気に50メートル未満になる。更にレーダーや電子光学センサーの補助で10メートルまで誤差を縮められる。
イスカンデルは各種弾頭が搭載でき、高性能火薬(HE)の他、小爆弾ディスペンサー、気化爆発型、HE貫徹型が選択できる。ロシア国内仕様は核弾頭も運用でき、この意味でイスカンデルは多様に運用できる。
イスカンデルはミサイル防衛網突破をめざし設計されている。Missile Threatによれば終末段階で30G以上の飛翔制御が可能という。またおとりを搭載し迎撃ミサイルを騙すことが可能だ。このためイスカンデルの迎撃は現状のミサイル防衛技術では極めて困難だ。
イスカンデルは戦略兵器でなく、戦術弾道ミサイルである。有事の際には固定目標・移動目標双方の攻撃に投入されるはずだ。地対空ミサイル陣地、敵の短距離ミサイル施設、飛行場、港湾、指揮通信施設、その他強化標的への投入が想定される。
このミサイル防衛体制を突破可能なイスカンデル-Mをロシアはカリニングラードに持ち込んでいる。これによりロシアは米国がポーランドに構築したミサイル防衛体制を突破するだけでなく近隣の軍事施設にもにらみをきかしている。また同装備をシリアにロシアが展開している可能性が高い。
他方でロシアはイスカンデルの性能向上策を続けており、新型ミサイルを開発中だ。「イスカンデル-Mには更に性能向上が可能」とロシアミサイル軍副司令アレクサンドル・ドラゴファロフスキが2015年11月に国営スプートニク通信に語っていた。
新型イスカンデルで迎撃がさらに困難になるのは疑いない。■
Dave Majumdar is the former defense editor for The National Interest.
南オセチア紛争 (2008年)にて、ロシア軍が実戦運用していました。
返信削除・ゴリに着弾したロシア軍の大型ミサイル(イスカンダルと推定)
http://obiekt.seesaa.net/article/106368100.html
北朝鮮は、8月10日までにイスカンデル、大口径誘導多連装ロケット、「新型兵器」を発射した。イスカンデルはロシアから、あるいはコピーであり、大口径誘導多連装ロケットは中国製のコピー、あるいは自国開発と推測され、「新型兵器」は米国製ATACMSとの類似が指摘されている。
返信削除このうちイスカンデルと「新型兵器」は低高度で飛行経路を変え誘導できると推定され、迎撃困難な対地ミサイルであるが、製造技術がもたらされたとしてもこのような高度なミサイルを複数同時に開発し、製造することは効率が悪く、また、そのような能力は北朝鮮に無いであろう。
イスカンデルについては本ブログの「ロシア機へ警告射撃してしまった韓国空軍の行為は正しかったのか(7月 23, 2019)」で韓国のミサイル横流し、あるいは技術供与の可能性をコメントしたが、ATACMS類似ミサイルについても同様かもしれない。また、そのような行為は政府の関与が無ければできないことだろう。
過去から韓国の対北、対中への情報漏えいについては時々報道されていたが、上記の推測が事実であれば、あからさまな通敵行為であり、日米韓の間の国家関係が根本から変わるかもしれない。その場合、日米の韓国に対する懲罰は相当厳しいものになるだろう。