スキップしてメイン コンテンツに移動

宇宙でも日米の防衛協力は進む 日本の準天頂衛星に米監視センサーを搭載する案が実現へ

US, Japan To Ink Hosted Payload Pact to Monitor Sats 日米両国が監視衛星2ペイロード搭載で協力関係を調印に向かう

日本は自国の準天頂衛星QZSSに米国の宇宙状況認識(SSA)センサーペイロードの搭載を認める意向。日米両国関係者は今年末にも覚書(MOU)を締結する
on August 05, 2019 at 11:15 AM

米両国が米国の宇宙監視ペイロードを日本が打ち上げる衛星に搭載する内容の画期的な新合意に調印する。米国防関係筋が明らかにした。米国の宇宙状況把握(SSA)センサーが日本が整備する域内GPS衛星にただ乗りする格好だ。
日米両国は中国やロシアによる制御可能衛星の軌道上実験への懸念を深めている。平和利用と称しているが有事に同盟各国の衛星群の攻撃に転用される可能性があるためだ。  
ペンタゴンが進める広義の宇宙政策に呼応し米空軍は「宇宙状況把握(SSA)センサーペイロードを日本のQZSS衛星に搭載する案を模索している」と空軍広報官ウィル・ラッセル少佐が事実を認めた。
日本のQZSS衛星による航法ならび計時用の衛星群の機能提供区域

準天頂衛星は衛星4機で位置把握、航法、計時(PNT)信号をアジア内の利用者に送信する。うち1機が静止衛星軌道(GEO)、残る3機は楕円軌道で周回する。 
両国の協力事業のねらいは米宇宙監視ネットワーク(SSN)により軌道上の衛星や宇宙デブリの監視体制の強化にある。
日本もSSA体制の独自整備をこの15年続けており、上斎原スペースガードセンター(KSGC)の他、深宇宙探査用望遠鏡の再整備を美星スペースガードセンター(ともに岡山県)で進めてきた。
検討中のMOUでは米国ペイロードの軌道投入を2023年と想定し、日本の衛星群更新にあわせる。さらにMOUは日本のSSAのデータ共有も対象とする。
国防総省は次のように説明している。「米日両国ではすでに宇宙状況把握をめぐり公開情報を共有する合意を米側はSTRATCOM(米戦略軍)を通じ2013年に署名発効しており、今回はPNTに関する実施面でのMOUとともに情報非公開のSSAデータ共有合意を目指している」
米国はオーストラリアともSSA観測・データ共有の合同体制を目指しており、現在はホワイトサンズにある宇宙監視望遠鏡をハロルド・E・ホルト海軍通信基地のあるオーストラリア西部へ2021年に移転する。また地上配備の電子光学深宇宙観測(GEODSS)網としてオーストラリア国内に望遠鏡を設置する。強力な焦点距離1メートル望遠鏡なら40千キロ上空のバスケットボール大の物体も見分けられる。
先週ワシントンで自衛隊の統合幕僚長山崎幸二陸将は日米宇宙協力の重要性を強調した。「日米両国にとって情報共有のみならず衛星機能まで共有し、衛星による情報収集、通信、位置情報、早期警戒機能の共有まで実現する意味は大きい」さらに幕僚長は中国の台頭、北朝鮮の脅威により太平洋地区が従来にまして不安定かつ予測不能な状況に追い込まれているとも述べた
今回のニュースはマーク・エスパー国防長官が日本訪問するに当たり浮上したもので長官は岩屋毅防衛相と会談の他、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを歴訪する。
在米日本大使公邸で先週のイベントが開催され、両国の軍関係者、外交関係者が出席した。中でもジョン・レイモンド大将(空軍宇宙軍司令官兼発足したばかりの宇宙軍トップは宇宙空間における日米両国の緊密関係づくりを歓迎している。
同大将はQZSSでの協力事業は「両国に大きな有益性を生む」とし、「両国の協力関係が宇宙でも進む一歩となる。次回はレーダーでの協力を進めたい。日本が開発中の新型深宇宙レーダーに期待している」
レイモンド大将は宇宙軍隊員を世界各地に展開させ各地の米軍指揮官に装備の活用方法を伝えたいとも付け加え、「インド太平洋軍、欧州軍の他にも各地の戦闘部隊司令機能に組み入れれば、作戦立案の同調が可能となる」「各方面との作戦立案は絶対必要な機能だ」
同日にマーク・ワイズ少将(海兵隊戦闘開発本部副司令)が今後の太平洋地区での作戦について「こちら側の通信機能が低下させられる状況の到来を真剣に憂慮している」と中国が通信リンクや交信内容を妨害する能力を有していることを念頭にペンタゴンで報道陣に述べている。
MOUと別に日本は独自に宇宙司令部の創設をペンタゴンの宇宙軍と並行して検討中と日本側軍事筋が述べている。「目標は宇宙ドメインミッションユニットで宇宙状況認識業務を実施させることだ」
日本はここ数年で宇宙空間の防衛用途利用を野心的に進めてきた。2018年12月の防衛大綱では「マルチドメイン防衛部隊に宇宙、サイバー空間、電磁スペクトラムの各方面を融合させる」とある。
また「中期防(2019-2023年)」では新規部隊の創設で「宇宙空間の常時監視体制を実施し、宇宙空間利用で平時有事問わず絶えず優位な立場を確保する」とある。 . 
5月の日本報道では新規部隊は2022年までに東京西方の府中航空自衛隊基地内に設置されるとある。またヴァンデンバーグAFB内に連絡事務所を設置する。

デイビッド・トンプソン中将(AFSPC空軍宇宙司令部副司令官)は上院軍事委員会で3月にAFSPCが日本側をヴァンデンバーグ基地に招くため両国で覚書の作成に取り組んでいると述べていた。■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...