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8月8日謎の爆発事故はやはり原子力巡航ミサイル「ブレヴェストニーク」関連と考える理由

先にコメントを。先日の記事に対して読者の方からInterfaxから別の説明が出ている、調べずに(ロシアを)叩くのは止めてもらいたいとのご意見がでていますが(この方はロシア関係者?)、①ここのブログオーナーはロシアを信用していない ②それはチェルノブイリ事故や潜水艦事故等々でのロシアによる情報操作のせいでもあるのでInterfaxがいかにロシア政府から独立していようとこのバイアスに変わりはない ③本ブログは個人のものであり、記事の選択、論調などはいっさい個人の主観でしており、「公平性」「中立性」とは無縁の世界、このためむしろロシア批判を続けたいと思います。原子力推進ミサイルの存在そのものが不快なことは当初から一貫した主張です。そこで前回の記事の続きがでていますのでご紹介することにします。不愉快な方やロシア擁護派の方はこれ以上読むのを止めてください。


Evidence Grows That Russia's Nuclear-Powered Doomsday Missile Was What Blew Up Last Week (Updated)

Seven personnel from a major nuclear weapons research laboratory died in the mysterious incident at a test site in northwestern Russia.

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 12, 2019

週ロシア北西部で発生した放射線事故をめぐり噂と観測が渦巻いている。本日は関係者が事故犠牲者の葬儀も行っている。事故では少なくとも7名の科学者他が命を奪われた。各人は国営原子力研究施設で従事し、小型原子炉も作業のひとつだった。同じ研究所が核推進巡航ミサイルのブレヴェストニーク開発にもあたっており、米情報筋ではこうした兵器のひとつ、あるいはテスト機材が今回の惨事のもととなった爆発の原因との見方を強めている。


8月11日にロシア連邦原子力センター・全ロシア実験物理学科学実験研究所(RFNC-VNIIEF)の所長バレンティン・コスチュコフが科学主任ヴャチェスラフ・ソロヴィエフ、副科学主任アレクサンドル・チェルニシェフとテレビ記者会見を行い事故について説明した。RFNC-VNIIEFはロシアの原子力トップ企業ロサトムの傘下にあり、ニョノクサのミサイル試射場で発生した事故について同社は関与を認め、8月9日に原子力「アイソトープ動力源」の作業中に爆発が発生したと述べていた。

「当社職員の死亡は原子力センターのみならずロサトムに手痛い喪失。研究者は国家英雄だ」とコスチュコフは述べ、死後に国家勲章の栄誉を与える推薦をしたとも述べた。「ロシア連邦原子力センターのエリート研究員として極めて困難な状況でテストを実施してきた」
コスチュコフはじめRFNC-VNIIEF関係者からは研究員がどんな対象に取り組んでいたのか具体的な言及はまったくなかった。「研究対象のひとつに熱あるいは電気エナジーで放射性物質を取り扱うことがあり、核分裂物質やラジオアイソトープも取り扱っている」とソロヴエフは述べ、小型原子炉も含むとした。
ソロヴエフは研究は軍事民生双方の応用可能性として地上や宇宙空間が舞台に想定していると述べた。米NASAによるキロパワープログラムを非軍事面での取り組みとして紹介した。米軍も小型原子炉を将来の戦場における電力源として検討中であることをThe War Zoneは以前詳しくお伝えしている。
VNIIIEFが小型原子炉開発に取り組んでいるのは確実だ。キロパワー事業を参考にすれば、「アイソトープ動力源」がラジオアイソトープ発電装置あるいは小型原子炉で衛星または宇宙機用のものである可能性がある。液体燃料ロケットモーターが今回の爆発事故での中心部分と伝えられる。新型発電装置または反応炉の設計が打ち上げ時のストレスに耐えられるかのテストだった可能性もある。
ただし正体がはっきりしないブレヴェストニーク開発につながる追加情報がある。米情報機関はこの観点を強めていると、ニューヨーク・タイムズは8月12日に伝えている。
ロシア大統領ウラジミール・プーチンが同兵器(NATO名称SSC-X-9スカイフォール)を2018年3月の演説で公表した。その後の報道では米情報機関筋の話としてロシアは同ミサイルのテストを少なくとも2017年から開始したがすべて失敗に終わっており、同国の北極圏にあるかつての核兵器実験場ノヴァヤ・ゼムリーヤが実施場所だという。
ブレヴェストニークの詳細はほとんどが不明だがもっとも有力な説は主推進力を原子力ラムジェットだとするものだ。この仕様だとロケットモーターに液体燃料を使い、今回の爆発事故の説明もつくが、初期飛翔時にこれを使い、一定の速度になるとラムジェットを作動させる。原子炉に空気が送られると加熱されて排気ノズルへ送られ推力となる。
この仕様だと同兵器は事実上無制限の飛翔距離を実現し、飛翔時間も数日から数週間に延長できる。別の可能性に原子力熱ロケットを推進力に使い、液体燃料を空気の代わりに使うが空気吸い込み式よりは飛翔時間が制限される。燃料搭載量に限界があるためだ。「液体燃料」の報道は液体燃料反応炉につながる。
いずれにせよRFNC-VNIIEF関係者によれば準備作業がニョノクサで進行中だった。これについて商用衛星画像を使いカリフォーニア州モンテレーのミドルベリー国際研究所も確認している。
衛星画像ではロシアがノヴァヤゼムリーヤブレヴェストニーク関連テスト施設の解体を始めているのがわかる。プーチン演説でクレムリンが公開したミサイルのテストはノヴァヤゼムリーヤで2018年7月から8月に実施されている。これと酷似した施設がその後ニョノクサに現れた。
このことからブレヴェストニーク、あるいはテスト用機材が今回の事故の原因だとわかる。原子燃料運搬船セレブリャンカが事故当日に近辺に停泊していた。原子力燃料棒や類似貨物の運送が任務の船舶だ。ブレヴェストニークの搬送にうってつけだ。またロシアは同船含む船舶数隻を2018年に動員しノヴァヤゼムリーヤ付近で水中に没した同ミサイルの捜索回収を試みている。


An August 8 image from @planetlabs showing the Serebryanka, a nuclear fuel carrier, near a missile test site in Russia, where an explosion and fire broke out earlier. The ship's presence may be related to the testing of a nuclear-powered cruise missile.
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それでもテスト内容と事故の規模で不明点が残る。一時的にせよ放射線レベルが急増したとの報道があり、モニタリング地点では核兵器テストの兆候が探知された。ロシア国防省は一貫して放射線漏れは発生していないと主張し、現地当局に対して住民の不安を煽るのを中止するよう求めている。これまでのところその他のモニタリング機関から報告は入っていない。


In response to media queries, and to meet civil society expectations on applications of #CTBTO data beyond the Treaty, we confirm an event coinciding with the 8 Aug explosion in #Nyonoksa, Russia, was detected at 4 #IMS stations (3 seismic, 1 infrasound).
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ブレヴェストニーク開発の進展は不明のままだ。兵器システムとして実用化できるかわからない。米国も同様のコンセプトを冷戦時に実験したが原子炉の小型化が進まないこと、設計上の危険性が排除できないことから計画を放棄した。最大の難関は原子炉で小型化しても遮蔽できないため兵器として目標に向かい飛翔の過程で放射性物質をまきちらすことが欠点だった。
「ロシア国防産業の官僚組織でだれかが技術に詳しくない上層部を説き伏せこれが優れた構想だと信じ込ませたのかもしれない。だが米国が以前試し、リスクと制約にすぐに気づいて中止させた経緯がある」と米国科学者連盟の原子力専門家アンキット・パンダがニューヨークタイムズに語っている。クレムリンとしてはブレヴェストニークを使える兵器として開発を開始したのかもしれないが、将来の米国との軍事力管理交渉での取引材料になる可能性がある。
今回の事故にブレヴェストニークが関与していたのか否かは別にして、クレムリンは同事業に関する批判の山に直面しそうだし、原子力関連のその他プロジェクトも同国のお粗末な安全実績から同様に批判対象となりそうだ。ロシアは原子力動力魚雷や民生用の浮かぶ原子力発電所の開発にも取り組んでおり、ともに議論の対象となっている。発電所アカデミク・ロモノソフはロシア極東部ペヴェク市に向け移動中との報道がある。
ロシア政府は今回の事故に関しごく僅かな量の情報しか明らかにしていないが、クレムリンには軍事事故に関し秘密主義の伝統があり、とくに原子力が絡むとこの傾向が強い。最近の例では2019年7月1日に発生した原子力スパイ潜水艦ロシャリク艦内で発生した火災事故で情報共有に及び腰だ。またこれと別にソ連時代に沈没した原子力潜水艦が多量の放射能を漏らしていると見られていたが、これについては深度と位置から影響は限定的なようだ。
事故の実態が明らかになるのに数十年かかるかもしれない。本当に事故だったとしても。
Update: 6:30 EST—
米大統領ドナルド・トランプは米情報機関がブレヴェストニーク核動力巡航ミサイルまたはその試作型が先週の事故と関連しているとの見方を認めているようだ。トランプはツイッターで事故について8月12日に投稿し、NATO名称「スカイフォール」を使っている。米およびNATO関係者がこの名称を公に使ったことはなく、大統領のソーシャルメディア投稿は本件で正式なブリーフィングを受けたあとのことと示している。
The United States is learning much from the failed missile explosion in Russia. We have similar, though more advanced, technology. The Russian “Skyfall” explosion has people worried about the air around the facility, and far beyond. Not good!


Trump also said that the United States possessed "similar, though more advanced, technology," though it is not clear whether or not he was referring to an active nuclear-powered missile program or the Cold War-era U.S. experiments with the concept.
Contact the author: joe@thedrive.com

コメント

  1. 興味深く読ませて頂いております。
    アメリカのCBSニュースでも爆発の瞬間を捉えた動画が流されておりました。

    因みに、本記事につきましてその筋から管理人さま宛に抗議や反論等ございましたでしょうか?
    恐らくロシア政府関係者と思われますが、どのような抗議・反論が寄せられたのか読んでみたいです。

    返信削除
    返信
    1. YouTubeでFox Businessが動画を提供しております。
      爆発の瞬間は1:17からです。

      https://www.youtube.com/watch?v=N8FPBPmU59I


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  2. ぼたんのちから2019年8月15日 8:00

    本ブログの姿勢を高く評価しています。今後もよろしく。

    ロシアが核動力の巡航ミサイルを開発しようとしていることは間違いないのだろう。
    プーチンは2018年3月に様々な新兵器開発を公表し、そのうち2種類が原子力推進の戦略核兵器である。もともとは冷戦時の遺物の転用のようだ。その一つが今回の「ブレヴェストニーク」巡航ミサイルである。プーチンの狙いは、旧ソ連並みの国威発揚である。
    今年7月に原子力潜水艇の電池による火災死亡事故が起きている。こちらは新たに搭載した恐らく市販のリチウム電池の暴走のようだ。これらの事故に共通することは、軍事優先であり、生命や技術の未熟さは二の次であることだ。
    ロシアは国家として劣化が止まらない。かつてGDPで2位であったソ連は解体し、2018年のロシアは11位と12位の韓国と変わらない。人口も日本と変わらない。
    プーチンはかつてのソ連の復活を狙っているが、これは身の丈に合わない幻想だ。強力な軍事力を維持しようとしているが、制裁下の経済は成長もままならず、軍事費の維持も困難な状態である。これでは新兵器や新技術の開発もままならないだろう。その結果が今回の事故であり、7月の潜水艇事故だ。
    さらに危険なことにプーチンは中国との軍事協力関係を深めている。これではロシアは中国に利用され、さらに飲み込まれるだろう。
    あと10年権力を維持できるか極めて不透明な、そして老化が止まらないプーチンにとって、国民が支持すると勘違いしている攻撃的な国家姿勢と強力な軍備は不可欠であり、結果として、今回のような事件は続くことになる。

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  3. 興味深く読ませて頂いております。
    アメリカのCBSニュースでも爆発の瞬間を捉えた動画が流されておりました。

    因みに、本記事につきましてその筋から管理人さま宛に抗議や反論等ございましたでしょうか?
    恐らくロシア政府関係者と思われますが、どのような抗議・反論が寄せられたのか読んでみたいです。

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