2017年12月4日月曜日

KAI:T-50値下げでT-X採用に期待し、スキャンダルの影響を脱せられるか

T-Xで機体価格を値下げしないとT-50は勝てそうもないのでしょうか。ロッキードの要望を受け入れて社員の人件費も下げるとその後どんな副作用を生むのか、スキャンダルで経営陣交替と言うのも悲しいですが、政府の「天下り」(韓国にもこの表現があるのでしょうか)トップの経営手腕が問われそうですね。
KAI considers price cut of T-50 unit to win bid: new CEO
KAI新CEO:T-50機体価格値下げで採用をめざす


KAI expresses confidence for next year, despite damage of reputation over recent corruption case
KAIが来年の展望を示したが、同社は汚職案件で評判を落としている。


By Shim Woo-hyun Published : Dec 3, 2017 - 16:50


SACHEON, South Gyeongsang Province -- 米次期練習機案件の成約を狙っていると韓国唯一の航空機メーカーKAI(韓国航空宇宙工業)の新トップが121日に語った。

  1. 慶尚南道泗川市の同社本社で開かれた記者会見で社長兼CEOに就任したキム・ジョウォンKim Jo-wonはKAIが米提携先ロッキード・マーティンの要望でT-50高等練習機の機体価格を引き下げると述べた。 
  2. 「ボーイングとの競合に勝ち抜くためロッキード・マーティンから価格値下げの要望があり、KAIには生死の境目となる商機であり労務費含めコスト削減に取り組んでいる」
  3. 発言の背景には米空軍が進める高等パイロット養成機材T-Xが17兆ウォン(150億ドル)と巨額な規模になっており、2018年第一または第二四半期に選定結果が発表される見込みになっている事情がある。
  4. KAIは保守整備ビジネスへの参入も検討しており、長期にわたり売り上げの安定化を狙う。韓国政府の認可は1月に出そうで、KAIは子会社を設立し事業にあたらせるとキムCEOが述べた。
  5. 同CEOは政府出身で主に監査畑を歩いてきたが10月にKAIトップに選任されたのは旧経営陣が汚職・横領で退き空白ができたためだ。
  6. 同社の評判と業績に傷がついた形だが来年の回復をめざす。すでにヘリコプター納入を再開し、海外市場での追加受注を期待する。
  7. 本年第三四半期には航空機輸出売上が92.5パーセント、軍用売上で34.5パーセント下がった。
  8. KAIは軍、森林局、警察向けにスリオンヘリコプター30機を来年納入する。また780百万ドルでフィリピン政府にFA-50PH訓練シミュレーターの2019年三月引き渡しの契約を成立させている。
  9. キムCEOによれば2018年のKAIはアルゼンチン、ボツワナ、インドネシア、フィリピン等へFA-50PH練習機の輸出を進める。また別の二国での成約に期待する。■

金正恩斬首作戦で生じる望ましくない結果4例

世界の指導者の中で暗殺が公然と話題になるのは金正恩くらいでしょう。斬首作戦が実行に移されるかはわかりませんが、北朝鮮の「清算」は大変です。本当に面倒な事態です。では金正恩にどう退場していただくのかが課題ですね。



4 Reasons Why Assassinating Kim Jong-Un Could Become a Total Disaster

金正恩の暗殺がまずい結果を生む四つの理由
December 3, 2017

朝鮮はICBMテストで再び国際社会を人質にとった。韓国の反応が注目されていないが、北朝鮮への先制攻撃能力を整備を「キルチェーン」戦略で進めている。関連してソウルは北朝鮮指導部の斬首攻撃の能力も整備し金正恩含む指導層の暗殺をめざしている。
 斬首攻撃で一番大事な質問が抜けている。その後どうなるのか。韓国は金正恩が攻撃に向かう前に食い止めるのが斬首作戦の目的とするが、北朝鮮がこの脅威で自制するとは思えない。斬首攻撃が成功した場合に多様な影響がうまれるが一部でも検討する価値はある。


1.総合戦
北朝鮮は世界有数の閉鎖社会で判らないことが多数ある。その一つが軍事指揮命令系統で、上層部がどれだけ忠誠なのかも不明だ。軍は金正恩が抹殺されても士気喪失せず国家のために戦うのではないか。
 軍エリート層は現行の政治体制から恩恵を受けており、生まれてからすぐ始まる思想教育で金一族への忠誠を叩き込まれており、金正恩が死亡しても変わらない。さらに国が攻撃を受けて上層部が消滅しても軍指導部が淡々と攻撃計画を実行に移すだけだろう。
 ソウル攻撃がその一部で一千万ちかくの住民に砲弾数万発の雨をふらせる。また米軍基地へのミサイル攻撃もある。一部は生物化学兵器となろう。また韓国のみならず米国への核ミサイル攻撃もありうる。これは斬首作戦への報復として攻撃を仕掛けた結果、国内に侵攻があった場合だ。


2. 内戦の勃発
金正恩は鉄の統制で統治している。だが突如として本人が側近とともに死亡した場合、後継者は不明となる。軍は外敵に立ち向かうどころでなくなり、軍内部の反対勢力や一般市民の始動層へ対応を迫られるかもしれない。
 韓国との全面戦争よりはこちらが望ましいともいえるが、事はそう簡単ではない。難民が大挙中国へ向かうだろう。中国が進駐し国内秩序が回復する可能性も排除できないが、これではソウルがめざす韓国主導の半島統一に逆行する。混乱は韓国にも波及するだろう。
 韓国、中国、米国、その他世界の懸念は北朝鮮の核兵器、生物兵器、化学兵器の行方だ。上記三ヵ国には大量破壊兵器の確保が急務となり、このため総合戦のシナリオが現実になるかもしれない。


3. 国家崩壊
金一族が消えれば北朝鮮の国家体制は一夜にして崩壊し混乱状態が生まれる可能性がある。このため内戦同様の状態が生まれる。混乱鎮圧とともに北朝鮮の大量破壊兵器の確保を名目に中国、韓国、米国が国内に進軍する可能性もある。
 最大の危険は中国軍と米韓連合軍の衝突だ。北朝鮮軍の残存兵力との戦闘もあり得るが最大のリスクとはいいがたい。
 ただし危機はこれだけではない。中国、米国、韓国間で調整し武力衝突を避けたとしても、実際に米中間でこの課題を検討中といわれるが、朝鮮人民は民族主義の傾向がきわめて強く、中国の支配を長く受けてきた。さらに北朝鮮は70年間にわたり反米が染みついた国である。イラクやアフガニスタンでの米国の経験は国内反乱勢力の鎮圧がいかに困難かを示しており、中国や韓国が処理できるとはとても思えない。


4. 再統一
最良のシナリオは金正恩含む上層部の除去で朝鮮半島再統一が比較的スムーズに進むことだ。これが最も望ましいものの課題もある。統一費用は1兆-5兆ドルとの試算がある。
 実際の費用は試算の上方に向かいそうだ。直近事例はワルシャワ条約崩壊後のドイツ統一だ。西ドイツから東に2兆ドルの富の移転が発生したが、東ドイツの人口は1989年時点で西の四分の一で、一人当たり所得は西の三分の一だった。ウォールストリートジャーナルのピーター・M・ベックが以下書いている。
 「北朝鮮の一人当たり所得は南の5%未満だ。毎年の韓国GDP増加分だけで北朝鮮経済全体に相当する。北の人口は南の半分だが出産率が高く急増中だ。北朝鮮の生活水準を同等にするには当時の東ドイツより大きな規模の資源が必要だ」
 朝鮮半島の再統一費用がそこまでの規模にならない可能性もある。まずドイツ並みの社会保障のしくみはないので、コストを下げられる。さらに韓国が海外直接投資で統一費用を確保する可能性も北朝鮮の膨大な鉱業資源を考えればありえる。統一で韓国に若く頑健な労働力が手に入る。とはいえ再統一は短期で極めて大規模な支出を伴う。


 斬首作戦を実施したい気持ちは理解できるが、その後どうなるのか、との質問はないがしろにはできない。■


Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: North Korean soldiers stand guard at the beginning of the parade celebrating the 70th anniversary of the founding of Workers' Party of Korea in Pyongyang October 10, 2015. Isolated North Korea marked the 70th anniversary of its ruling Workers' Party on Saturday with a massive military parade overseen by leader Kim Jong Un, who said his country was ready to fight any war waged by the United States. REUTERS/Damir Sagolj​

B-52エンジン換装は2020年以降に先送り、その他米空軍主要戦略事業の概況



No $ For New B-52 Engines Til 2020; Nuke Modernization Moves Ahead: Gen. Rand

B-52エンジン換装の予算がつくのは2020年まで無理、核近代化は前進とランド大将
B-52H Stratofortress
By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 30, 2017 at 5:09 PM
  1. ロビン・ランド大将Gen. Robin Randは米空軍の爆撃機、ミサイル部門のボスで老朽化進むB-52のエンジン換装を本当に望んでいる。空軍は関心を有する企業を招きに二日にわたり情報公開セッションを行うが、ボーイングロールズロイスがすでに受注目指し動きはじめている。だがランド大将はAssociation of Old Crows主催の会議に集まった記者に早くても2020年まで予算のめどがつかないと述べた。
  2. 76機残るB-52Hのエンジン交換実施は当然その後になる。空軍は新型B-21爆撃機やICBMの更新を控えており、海軍にもミサイル潜水艦の建造事業がある。
Air Force photo
Gen. Robin Rand
  1. B-52エンジン換装は「検討課題であり進めたいが、長官の前では口ごもらざるを得ない」
  2. つまり「エンジン換装の決断に今までになく近くなっている」が「それだけ事態が切迫しておりB-52を今後も供用するならエンジン換装が必要だ」とする。
  3. この点で後押しする企画が技術公開日で、実際は12月12日13日の二日間ルイジアナのバークスデイル空軍基地が会場だ。公式案内では空軍が民間から情報を求める企画で正式提案を受けつける意図はなく、調達を決めるわけでもないが、空軍が求める契約の大枠がわかるはずだ。
  4. 業界は大いに興奮しており、ボーイングは8月に5分半の動画をYouTubeに掲載し、同社のエンジン換装案を広報した。9月にはロールズロイス役員トム・ハートマンがFlightGlobalで「急いで対応する」と述べていた。
  5. だが実際はそうではない。「FY20年度計画の選択肢の一部にすぎない」とランド大将は言う。複雑な予算手続きで議会が2018年度の支出法案作りに取り組んでおり政権は2019年度予算要求案をまとめ来年初めに提出する。エンジン換装はその後になるとランド大将は明言している。「まだ決定されておらず、あるとすれば20年早々だろう」
  6. 航空業界に造詣が深いアナリストのリチャード・アボウラフィアRichard Aboulafiaはエンジン換装に懐疑的だ。「たしかに名案だが、それはこれまで30年の間に限ってのことで実施は困難だろう」とするが、ペンタゴンの予算作業を考えると実施はきびしいのか。
  7. 「問題はエンジン換装で節約できるのはO&M勘定(燃料、部品予算)なのに出どころは調達勘定になっていること」とアボウラフィアは述べている。「O&Mの節約分が調達費を上回るがそれぞれで相殺するわけではない。O&M節約分で調達予算が助かるわけではないのですが、DoDはこれに固執していますね」
  8. 「このためエンジン換装はなかなか実現していない。例外はKC-135とC-5Aだけです。後者のTF39は本当に面倒なエンジンで稼働率が低いうえにスペアパーツが入手しにくくなってますからね」
GBSD次期ICBM整備
  1. B-52の次に2020年度予算ではランド大将のグローバル打撃群段はもう一つ大事な決定が必要だ。ICBMでボーイング、ノースロップ・グラマンのどちらを選定しミニットマンIIIミサイルの後継機種を実現するかだ。(8月に両社とも3億ドル超の技術成熟化リスク低減契約を交付されているがロッキードがこの段階で落とされた) 地上配備戦略抑止力(GBSD)となる同事業の最終規模はペンタゴンの費用解析事業評価(CAPE)室によれば少なくとも850億ドルになるという。
Minuteman III in silo
  1. これはミサイル本体だけで済む問題ではないとランド大将は報道陣に語った。GBSDは「本体の保全方法、指揮命令方法他大幅に変更を伴う。ただし契約企業の仕事のやり方で異なってくるので今の段階でこうなるとは簡単に言えない」
ALCMあらためLRSOスタンドオフミサイル
  1. 他方で1980年代製の空中発射巡航ミサイル(ALCM)の交替が進んでいる。8月には「概算9億ドル」で試作品の長距離スタンドオフ(LRSO)ミサイルの製作契約をロッキード・マーティン、レイセオンの各社に交付している。最終選考は2022年の予定だ。ただ核兵器嫌いの民主党議員が事業をつぶさないかぎりLRSOはB-52、B-2および開発中のB-21が運用するはずだ。
B-21
  1. B-21は最低でも100機を単価550百万ドルで調達する。この野心的ともいえるコスト目標のため通常の調達手続きではなく空軍迅速戦力整備室(RCO)が進めており、事業規模の大きさのためRCO職員が多数B-21に向けられている。
  2. B-21はグローバル打撃軍団最大の謎である。空軍がノースロップ・グラマンに契約交付して二年以上になるが、極端までの極秘扱いで、制式名とニックネームのみB-21レイダーとして意図的に不明確なCGI図と公表されたただけだ。空軍は同機は無人機運用も可能とし、大量の爆弾搭載能力があり、核兵器運用も後日可能となるだろう。また搭載内容をモジュラー化し、ISR、電子戦に使い分ける。会議ではランド大将が電子戦について語っていたので記者はEW能力がB-21に搭載され敵の高度対空装備を突破できるとのうわさについて聞いてみた。大将は詳細に触れず基本的な考え方についてのみ語った。
B-21 Raider artist rendering
  1. 「B-21はシステムをファミリー構造にしている」とし、単一の機体にはならないとランド大将は述べた。「具体的な性能についてここでは話せない」としながら「B-21は厳しい状況でも十分に活躍できる機体になる」と後で記者団に語ってくれた。
  2. 「センサー中心の機体となるだろう」とレーダー他の装置が兵装同様に重要になり、F-35共用打撃戦闘機と似てくると述べ、「長距離打撃機となりスタンドオフ攻撃と敵地侵入能力を実現する」とし、敵対空装備の有効範囲外から長距離巡航ミサイルを発射するか、防空網をかいくぐりステルス性能と電子欺瞞能力を発揮するのだろう。
  3. いわゆる接近阻止領域拒否の防衛体制がロシアや中国で整備が進んでいるが、B-21はその弱点を探し出す。「A2/ADを通過不可能な壁のようにいう人がいるが、実はA2/ADはチーズの塊、スイスチーズで、穴がいっぱいあるんですよ』■

2017年12月3日日曜日

韓国にラプター6機が展開中


Six US F-22 stealth fighter jets arrive in S. Korea for joint air drills
韓国にF-2編隊2六機が到着し、共同演習に参加する


(Yonhap)

By Yonhap Published : Dec 2, 2017 - 15:25
Updated : Dec 3, 2017 - 10:08

F-22ラプター戦闘機6機が翌週の空軍演習に参加するため12月2日韓国に到着した。北朝鮮への力の誇示の意味もある。

韓国上空をF-22が6機同時に飛び回るのはこれが初となる。

ヴィジラントエースVigilant Ace 演習は12月4日から8日にかけ展開される。米軍のF-35A、F-35B、F-16Cの他にB-1B爆撃機も参加する。韓国空軍はF-15K、KF-16、F-5を参加させ、合計230機が8基地から展開する規模になる。

両国は北朝鮮の核施設、ミサイル施設、移動式ミサイル起立発射機の模擬攻撃を行う。

米韓両国は10月に米戦略機材の定期巡回配備で北朝鮮の核・ミサイル脅威に対抗すると合意している。

北朝鮮は両国の共同演習を侵攻作戦のリハーサルであり挑発行為だと毎回非難し、これに対し両国は防衛的な性質の演習だと主張している。■

中国が北朝鮮侵攻する日が来るのか



 

Would China Invade North Korea?

中国は北朝鮮に侵攻するのか

December 1, 2017


鮮半島で軍事行動が論じられる中、話題に出てこない国は中国だ。中華人民共和国は予測不可能で悪名高い隣国と880マイルにわたり国境線で接しており、強大な軍部隊で国境の安全はなにがあっても確保する姿勢だ。軍事行動が現実になるとすれば北京の選択肢、軍事力行使の選択肢はなんだろうか。
  1. 北朝鮮は中国にはありがたい存在でもあり面倒な存在でもある。朝鮮民主人民共和国は米国等に公然と敵意を示す独立国だ。同国の兵力は中国の抑止力となる。このため中朝国境の南に構える政権は米勢力圏にことごとく反発し自国防衛体制を整えている。
  2. 状況は完ぺきとはいいがたい。北朝鮮はずっと中国の属国だったが両国のつながりはここにきて悪化している。火のつくような平壌の反米論調と核兵器開発が米国を挑発し、米中間の大きな争点になっている。北朝鮮の目に余る国際規範違反は中国政府の忍耐力を試している。
  3. 中国が北朝鮮への介入準備に入ったとのうわさが絶えない。北政権崩壊後か北が中国に深刻な脅威になった場合を想定している。その準備内容は北京政府以外には知りようがないが、シナリオは紹介できる。一つ確かなことがある。中国が北朝鮮に入った時点で金正恩あるいは後継者はそのまま残ることはできない。
  4. 可能性があるシナリオは北政権崩壊後に中国が北朝鮮に進軍することだ。軍事クーデターやシリアのような反乱の勃発でも現政権は転覆される。しかも急速に。これが発生すると、国内食糧配給が止まり、難民が国外脱出を試みるだろう。韓国との国境は要塞化されており、ロシア国境は遠く、中国国境越えが一番楽だ。
  5. 中国政府は国内治安維持に強迫観念を持ち、難民が数百万単位で中国北部に入るのは許容できない。中国の観点では難民は北朝鮮国境を超えない方がいい。政権崩壊の場合は人民解放軍(PLA)の北方軍区の三個軍団が南進する。選択肢として北朝鮮を緩衝地帯にしても、政治経済上の不安定さを解決できない。PLAが南進するのであれば、平壌まで一気に進軍して傀儡政権を樹立し、一定の安定度を確立しようとするだろう。
  6. 最も可能性が高いシナリオが全面侵攻で現行の北政権を転覆することだ。朝鮮人民軍(KPA)には装甲機械化歩兵師団、砲兵隊が16軍区に展開しているが、中朝国境に配備しているのはうち2個だけだ。KPAのほぼ7割は平壌と元山より南の地域に集中し、韓国への侵攻に備えている。
  7. 中国の北方軍区に78、79、80の各地上軍団がある。米陸軍兵団に相当し、混成旅団18個を特殊作戦旅団、航空旅団、砲兵旅団、工兵旅団が各3支援する。これでPLA軍は紙の上では米陸軍戦闘師団5-6個に相当する戦力となる。さらに中国空軍の航空攻撃師団2個の支援があり、PLA三個軍団は迅速に渡河しKPAの背後から南方へ進軍する。
  8. KPAはどこまで抵抗するだろうか。状況次第だ。平壌政権がその時点で健在なら中国部隊は相当の抵抗にあうかもしれない。燃料不足で北朝鮮の残りの14軍団は移動がままならず、中国軍を迎え撃つことができない。政権が崩壊すればKPAは指導者のいない飢えた集団になるが武装していることは変わりない。中国はKPA首脳部と良好な関係作りにつとめ中国軍進駐に抵抗することなく秩序維持を求めるはずだ。
  9. PLAが戦時に機能するかは予見できない。中国の大規模軍事行動は1979年の対ベトナム戦が最後だ。古めかしく効果が低い戦術を使った中国地上軍は戦場で鍛えられたベトナム軍の前に大損害を被り、最高司令官鄧小平がこのような代償の高い戦いは繰り返さないぞと誓ったほどだ。となるとPLAが確実に任務実行できると確信できて初めて中国は攻撃命令を出すだろう。
  10. ただし今日のPLAは当時とは比べようのない野獣になっている。PLAには戦闘経験豊かな米陸軍の技術水準はないが、KPAよりは上のはずだ。習近平は繰り返し「戦闘可能態勢」を求めており、戦闘以外に汚職追放にも言及しているが高機動機械化戦への備えが平壌への進軍で効果を見せるだろう。
  11. 中国軍の進撃で最大の危険は米韓連合軍も同時に北に進軍することだ。北から、南から進軍する部隊間で衝突が発生する可能性は極めて現実的だろう。
  12. 平壌政権の全面崩壊を防ぐべく中国がすぐにも進軍する可能性は低い。経済、政治、軍事上の対価が国境地帯の軍部隊を使った進軍の代償より多い。少なくとも今は。ただし計算条件が変われば躊躇せず隣国に介入してくるだろう。ただし中国、韓国あるいは他国がその際の結果を想定し準備しているかは別の問題だ。■
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009, he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.


記録 アルゼンチン潜水艦からの最後の交信内容



尻切れトンボの内容ですがご容赦ください。捜索はまだ続いており、艦体は発見されていません。爆発がなぜ起こったのか解明が必要です。スノーケルから海水が入るとは荒天だったので安定する潜航のまま航行中に大波をかぶったのでしょうか。乗員の冥福を祈ります。


Water Entered Missing Argentine Sub Through Snorkel Before Detected Explosion 海中爆発音の探知前に消息不明アルゼンチン潜水艦のスノーケルから海水侵入していた

ARA San Juan

 By: Ben Werner
November 29, 2017 4:53 PM


アルゼンチン海軍本部が行方不明の潜水艦ARA サンフアンの最後の交信記録を発表した。同国政府の要望に対応し各国が救難部隊を派遣中。

11月15日午前12時30分ごろ、サンフアン艦長よりスノーケルから海水が艦内に入ったと海軍本部に衛星電話で連絡してきた。海水で前方区画のバッテリーがショートし、スパークで火災か煙が充満したとのアルゼンチン海軍発表を国内ニュース専門局が伝えている。CNNがこの発表文を英語翻訳している。「海水が空気取り入れ口から第三バッテリー部門に入り回路ショートを発生させバッテリー設置場所から火災が発生。艦首外側バッテリーが使用不能となり、現在は回路が分断状態で潜航中。乗組員に関し報告事項なし。連絡を続ける」

艦長は不良バッテリーを分離したと報告しており、サンファンは後部バッテリーで潜航を続けたとアルゼンチン海軍は伝えている。サンファンはドイツ製TR-1700型潜水艦でディーゼル電気推進式だ。潜航時はバッテリーで推進する。

11月15日午前6時:艦長は衛星通話と同じ内容を電文で伝えてきた。これはアルゼンチン海軍の標準規則によるもの。

午前7時30分: アルゼンチン海軍が同艦最後の通信を受信し艦長からサンファンは引き続き同じ針路で航行中と伝えてきた。

午前10時31分: サンファンの推定位置とほぼ同じ地点で海中爆発音が検知された。一週間後に捜索活動はこの地点を集中的に扱ったが、米海軍他各国の対潜専門家は爆発は非原子力あるが異常事態としてアルゼンチン海軍に通知した。アルゼンチン海軍は米連絡あるまで水中爆発は承知していなかったと述べている。

11月18日:救難活動支援の要請にこたえ米海軍が水中捜索救難チームを派遣し各国に加わる。米海軍は編成されたばかりの第一無人水中機部隊(ハワイ真珠湾基地)がブルーフィン-12D深海無人水中機(UUV)一基とアイヴァー580UUV3基を搬送した。P-8Aポセイドンも捜索に加わった。■


追記 アルゼンチン海軍は11月30日に捜索を打ち切った。557千平方マイルの海域を捜索したがなにも見つけられなかった。



2017年12月2日土曜日

新型電子戦機J-16Dは全方位航空優勢を目指す中国の動きの象徴だ


 


China's New J-16D Aircraft Might Have a Terrifying New Military Capability 

中国の新型J-16Dの強力な能力は要注意

November 30, 2017

海軍のEA-18Gグラウラー電子攻撃機はジャミング任務に特化した数少ない機材のひとつでジャミングに加え友軍機に向けられるミサイルを誘導するレーダーの破壊も行うはずだ。このミッションはSEAD(敵防空網制圧)と呼ばれる。今日の空軍作戦で味方の損耗を防げるかはSEADの成否にかかっているといってよい。
  1. グラウラーはF-18スーパーホーネット戦闘機から派生し、以前の電子戦機より高速で操縦性、兵装も強化しており、援護する友軍機の速度に追随でき敵防空網に従来より接近できる
  2. 中国空軍は海外の役に立つ考えを堂々とコピーしておきながら「中国の特性」を加味したと述べることが多い。そのため自分たちもグラウラーを作っても不思議ではない。
  3. 問題の機体は複座の瀋陽J-16 Red Eagle 攻撃戦闘機で、これもロシアのスホイSu-30MKKフランカーのコピーだ。ロシア原型からエイビオニクスが改良されアクティブ電子スキャンアレイレーダー(AESA)の搭載が特徴だ。中国は信頼性高いジェットエンジン国産化に依然苦労しているが、電子製品では成功しており、民生技術を流用しているのだろう。
  4. J-16DのDは電子の頭文字で初飛行は2015年12月18日だった。
  5. J-16Dは30mm機関砲、赤外線センサーを外し、ドッグファイトは想定外だ。かわりにアンテナ多数と機体一体型電子戦アレイがついた。レドームは高性能AESAレーダー搭載を想定しているのだろう。重要なのは翼端に付いた電子戦用ポッドでEA-18GグラウラーのALQ-218電子支援ポッドと類似している。レーダー周波数を解明し、発信源をつきとめるのが役割だ。この情報をジャミングにも使い、攻撃にも役立てる。
  6. PLAAFは新型機説明会を開かないので、わかっているのはこれですべてである。次は役割を推測してみよう。
  7. J-16Dはジャミングと対レーダー攻撃を想定して機体を準備し、ジャミングポッド二三個を主翼と機体下に取付け、ジャミングポッド自体にもAESA技術を導入しているだろう。
  8. ハードポイント12個が残り武装搭載に使える。中国には対レーダーミサイル(ARM)が三種あり、かなりの距離から 敵レーダーをホーミングできるはずだ。CM-103ミサイルは射程62マイルで176ポンド弾頭で艦艇・地上レーダーを破壊する。ロシアKh-31Pを国産化したミサイルはYJ-91と呼ぶ。さらにPL-12空対空ミサイルからLD-10ARMミサイルが生まれた。J-16Dは他の兵装も搭載し戦闘に臨むだろう。
  9. 中国は他の戦闘爆撃機でも電子戦装備を搭載しており、国産複座のJH-7Flying Leopardは240機ほどがPLA空軍および海軍で運用中だ。同機の最高速度はマッハ1.75で長距離運用が可能で兵装20千ポンドを搭載し、対レーダーミサイルも含む。原型のJH-7と改良型JH-7Aがジャミングポッドを搭載する写真が出回っている。ただし、同機の電子戦能力は専用機より劣るだろう。
  10. ジャミング支援には別の機材もある。大型で鈍足だがY-8GX、Y-9GX輸送機に戦術ジャマー他電子戦装備を搭載しており、HD-6電子戦機はH-6爆撃機が原型だ。山東Xianglong “Soaring Dragon” 無人機にも戦術ジャミング能力がつく可能性がある。
  11. 艦載版のJ-16Dの可能性もある。J-15 Flying Shark 戦闘機が001型空母二隻に搭載されているが、これもフランカーの流れをくむ機体で複座型に改装したJ-15SDと同様の発展は可能に思える。ただしJ-15のペイロードが低いのが制約だ。これは中国空母のスキージャンプ式発艦による制約でもある。いずれにせよJ-16Dがどこまでどこまで発展するかは見えない。.
  12. 接近阻止領域拒否戦略でミサイルを利用している中国は敵の防空網にどう対処するだろうか。もちろんSEAD機は台湾作戦や可能性は低いが日本との交戦に投入されるはずだ。ただし電子戦機の主な想定対象は米海軍水上艦艇で、SM-2、SM-6、シースパロウ対空ミサイルが飛び交う環境である。米、日、韓の稼働中各国に加えまもなくオーストラリア海軍もイージス戦闘システムを稼働させる。
  13. 例を挙げよう。中国記事ではJH-7をYJ-91対レーダーミサイルと電子戦装備で武装すればイージス艦も「悪夢」に落とせるとしている。もちろんレーダージャミングのボタンを押すだけで勝利は手に入らないが、攻撃側がミサイル、航空機で飽和攻撃をかければ防御能力を圧倒するはずだ。
  14. 中国側は海外の戦役事例に関心はないようだ。ただし、太平洋の軍事バランスを変えるのが同国の狙いだ。J-16Dのような機体は人民解放軍が特殊用途機の整備に力を入れて、あらゆる局面で優勢な航空戦力の実現をめざす証だ。まさしくこれは米軍の目指す方向と同じである。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Su-30SM1戦闘機が登場、スホイ優勢の構図は崩れそうもないですね


 


Russia's New Sukhoi Su-30SM1 Fighter: Could It Crush America's Best Fighters?

ロシアの新型スホイSu-30SM1戦闘機は米国の最強戦闘機に勝てるのか。
November 28, 2017

シアがスホイSu-30SMフランカーHの開発を完了し、エイビオニクスと兵装類を改良している。
  1. Su-30SM1と呼称され、シリア作戦の戦訓を盛り込んでいるとロシア紙イズベスチアが伝えている。
  2. 記事によれば合同航空機企業傘下のイルクートがSu-30SM1を生産中ですでに数機が完成しているという。ただし国防産業筋はThe National Interest にイルクーツク工場内に一機しかないと述べている。
  3. Su-30SM1は兵装搭載装備を見直して精密誘導兵器のKAB-250やХ-59МК2対地攻撃ミサイルを搭載とイズベスチア記事は述べている。KAB-250はロシア版の小口径爆弾(250ポンド)でGPS/GLONASS補正付き完成誘導あるいはレーザー誘導式だ。 Х-59МК2 はX-59対艦ミサイルを対地攻撃用にしたものだが、対艦能力を維持しているか不明だ。
  4. イズベスチア記事はエイビオニクスの改良に触れているが、詳細は不明。おそらく、センサー装備、通信機器が以前は弱点だったので改良されたのだろう。
  5. Su-30SMで改良が進むこと自体が驚きだ。ロシア空軍はシリア作戦で多くの戦訓を学んでいるはずでSu-35フランカーEやSu-34フルバック爆撃機に生かされている。
  6. 今年中にSu-30SMは17機が納入予定でSu-35SやSu-34とロシア空軍の主力機となり、さらにSu-57PAK-SAが加わりそうだ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.
Image: Reuters.

2017年12月1日金曜日

速報 北朝鮮新型ICBMファソン-15の性能予想


The New Hwasong-15 ICBM: A Significant Improvement That May be Ready as Early as 2018

新型ICBMファソン-15は相当の改良点が加わり2018年に実戦化されそうだ

NOVEMBER 30, 2017

朝鮮公開の映像画像を見るとファソン-15は以前のファソン-14の改良型とのちがいがわかる。ファソン-15はファソン-14から相当大型化され計算値では新型ミサイルは大型核兵器を米本土まで到達する能力がある。ファソン-15のサイズならおとりなど対抗装備で米国の国家ミサイル防衛(NMD)を無効にできるだろう。ファソン-15の性能・信頼性を確かめるにはまだ発射テスト数回が必要だが、防護の仕組みができていれば大気圏再突入の過酷な条件に弾頭部も耐えられるだろう。
ファソン-15は二段式液体燃料ICBMで、写真を見ると第一段にはエンジン二基がついており外観はファソン-14と似ている。ファソン-15はソ連時代開発のRD-251と酷似していることから推力は80トン程度の可能性がある。ミサイル質量が40トンから50トンと見られるので妥当な規模だ。二段目の構造がよくわからないが、大きさからみてファソン-14ちり50パーセント増の推進剤を搭載していだろう。合わせると控えめにみてもファソン-15の運搬能力はペイロード1トンでも米本土各地に到達可能なようだ。北朝鮮の核弾頭が700キロを下回る重量なのは確実で、もっと軽い可能性もある。
今回のミサイルには新型制御機構がついており以前より操作が簡単かつ効果的になった。スカッドを原型としたミサイルはジェット弁でブースト段階の制御を行っていた。ファソン-12、-14は小型エンジン四基を主推力室に平行に取付け制御していた。北朝鮮技術陣はファソン-15の主エンジンを回転台座に乗せ各エンジンの方向を変えて排気ガスで制御する仕組みを実現した。
二段目がよくわからない。可能性が高いのはソ連R-27ミサイルの小型エンジン四基を使っていることだろう。この事から二段目の出力が低いことが想像されるが、米本土を狙うミサイルであることに変わりない。あるいは第二段用に新型エンジンを搭載しているかもしれない。それによりファソン-15は高性能となっている可能性がある。
もうひとつ重要な改良点がある。ペイロードを宇宙空間で速度位置調整できるようになり、ミサイルの精度が相当上がっている。またおとりの投入も可能だろう。ミサイルの推力重量比から見て弾頭部に対抗装置を搭載できるはずだが、今回の発射時に搭載されていたか不明だ。
ファソン-15で北朝鮮の米国攻撃能力が大きく向上されたと言える。通常軌道によるテストが最低でも一二回必要なはずだ。今後のテスト発射で信頼性が判明し、大気圏再突入時の性能も試すはずだ。ただし、低信頼性でいいのであれば今後半年以内に二三回のテストで十分で金正恩はファソン-15を実戦配備したと宣言できるだろう。■