2021年5月30日日曜日

空母レーガンを中東へ移動させ、西太平洋で米空母不在状況が発生する。アフガニスタン部隊撤収の支援のため。中東での空母打撃群常時プレゼンス維持は見直しになるのか。

日本の安全保障は国境線ではなく、利益線で考えるべきとの命題の証明になりそうですね。中東地区への出動は短期とはいえ、西太平洋に空母不在時期が発生すれば中国には好機となるでしょう


USSロナルド・レーガン (CVN-76) が硫黄島の沖合を航行した 

May 22, 2021. US Navy Photo

 

本が母港の米航空母艦が中央軍管轄地区へ派遣され、米軍のアフガニスタン撤収を支援する。

 

USSロナルド・レーガン(CVN-76)は護衛艦艇、第5空母航空団とUSSドワイト・D・アイゼンハワー (CVN-69) 打撃群と交代し、2021年9月11日が期限のアフガニスタン撤収に対応する。

 

日本へ前方配備中の空母を他地区で運用するのは今回が初めてではない。USSキティー・ホーク(退役済み)(CV-63)は2003年のイラク侵攻で初期段階の支援で移動していた。

 

ウォールストリートジャーナルがレーガンのCENTCOM管轄地区への移動を報じていた。

 

アイゼンハワーは北アラビア海で待機し撤収作戦の航空支援を行う任務を解かれると4月末にUSNI Newsは伝えていた。

 

日本へ配備中の空母を中東へ移動させると米空母戦力に負担が増える。ただでさえ、海軍は空母の定期修理を先送りしてまで現地司令部の要望に応えている。米中央軍は北アラビア海からオマーン湾に至る狭い海域に空母打撃群一個を常時展開しており、今年早々ごく短期的に不在状態が発生したきりだ。

 

海軍作戦部長マイク・ギルディ大将はペンタゴンはアフガニスタン撤収後に中東地区で空母プレゼンスを減らす検討中と今月初めに明らかにした。

 

「プレゼンスは必要だ。問題は米海軍が維持すべき戦力内容だ。イランと核交渉が続く中で、イランに許容できる形の行動を期待したい。空母打撃群の必要性が減るからだ」(ギルディ作戦部長)

 

2020年の状況を見ると中東には太平洋と同等の頻度で空母が配備されていたことがわかる。

 

2019年からペンタゴンは中東に空母を常時配備しており、空母戦力が不在となるのを避けてきた。

 

ただし、アイゼンハワーは今年二回目の配備となったが予定通りの供用が艦の機構面で不可能となり、7月に中東を離れ本国修理に向かう予定となっている。アフガニスタンでの部隊撤収発表に先立ち、米国は空母の常時プレゼンス維持の方針の変更をほのめかしていた。2月にオースティン長官はUSSニミッツ(CVN-68)打撃群に米国帰還を命じた。同艦は八カ月間の展開を続け、途中でCOVID-19流行のため乗組員は艦内隔離されていた。同艦はワシントン州ブレマートン母港に帰還したが、乗組員は11カ月ぶりに家族と再会できた。

 

USSセオドア・ロウズヴェルト(CVN-71)も長期展開から今週帰港した。

 

レーガンは例年の春季西太平洋哨戒に先立ち横須賀へ先週帰港していた。水曜日時点では修理工事後に空母航空部隊運用の認証作業が完了していない。

 

次に利用可能な空母に西海岸にUSSカール・ヴィンソン(CVN-70)があるが、今年夏遅くまでは出動できず、中央軍管轄地区への移動は秋のはじめ以降になる。■

 

この記事は以下を再構成して人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailへご連絡ください。


Japan-based Carrier USS Ronald Reagan Will Make Rare Middle East Patrol - USNI News

By: Sam LaGrone

May 26, 2021 11:09 AMUpdated: May 26, 2021 2:17 PM


 

 



 

 


 

2021年5月29日土曜日

バイデン政権初の国防予算案はこれから議会で審議へ。新技術投資とともに旧型装備廃止を提唱。中国重視などの基本姿勢はトランプ政権と共通。そもそも国防安全保障政策が急転換することなどあってはならないのだが....

 政権交代しても基本構造を変えることはできないというのが現実政治の姿であり、民主党左派は不満を表明するでしょうが、既存装備の廃止をめぐり議会共和党も反対姿勢を示しており、政権は板挟み状態になるのではないでしょうか。日本でも政権交代を軽々しく発言する向きがありますが、(支持率10%以下で政権を握れるはずがありません)大事な安全保障政策を変えることなど主張してもらいたくありませんね。

 

 

アンドリュース空軍基地(メリーランド)で大統領専用機から降機し敬礼するジョー・バイデン大統領 May 19, 2021. (Photo by NICHOLAS KAMM/AFP via Getty Images)

 

ョー・バイデン大統領初の国防予算要求は調達を80億ドル削り、旧型装備を廃止し、新技術の開発試験に55億ドルを投入し中国への抑止効果を狙う。

 

2022年度の国防予算要求は7,150億ドルで5月28日に議会へ送られた。110億ドルの増額はインフレーション相殺分だ。ロイド・オースティン国防長官が「史上最大規模」と称する研究開発試験評価予算が大きな比重を占め、ホワイトハウスは1,120億ドルと前年比で5%増とした。

 

その反面、調達予算は6パーセント減で1,336億ドルとなった。うち240億ドルを「国防改革」に投入し、280億ドルを現有装備の処分で捻出し、戦術機材A-10、F-15、F-16および沿海域戦闘艦四隻、巡洋艦二隻を退役させる。

 

予算要求では51億ドルを「太平洋抑止力構想」にあて、49億ドルを統合部隊の戦力アップ、1.5億ドルを各種演習・実験・イノベーション、23百万ドルを戦力構成研究に計上した。装備別ではトマホーク、スタンダードミサイル6、INF条約破棄後の射程500キロ制限を撤廃した陸上配備通常火力、海軍の通常迅速打撃戦力(極超音速兵器)の整備が目を引く。

 

「今回の予算案では厳しい決断を迫られた。今日の強力な脅威の前に有効性を失った、あるいは維持費用が高くなった装備システムには頼れなくなっている」と国防副長官キャスリーン・ヒックスが同日述べている。「厳しい目で資源を再配分し、マイクロエレクトロニクス含む高度技術の研究開発用予算を確保した。これで必要な戦力の実用化の基礎固めを進める。例として極超音速ミサイル、人工知能、5Gがある」

 

各軍別では陸軍が1,740億ドル(21年度比で15億ドル減)、海軍へ2,070億ドル(46億ドル増)、空軍へは2,040億ドル(88億ドル増)となる。空軍の数字には宇宙軍が内数で、前年の154億ドルを175億ドルにする。

 

国防関係者から中国重視で海軍、空軍が増額となったとの発言が出ているが、オースティン長官は統合参謀本部議長マーク・ミリー大将と同席し陸軍予算を減らして多軍向け予算を捻出したのではないと説明した。両名は陸軍が求める近代化優先事業6個にはフル予算をつけ、将来の戦闘に向けた戦力へ配慮していると述べた。

 

大統領府による予算案は議会が修正して成立させることが通例で、供用中の装備品を廃止する案に不満を表明する議員が出ている。共和党議員重鎮からは中国の軍事力整備に対抗するべくインフレ率を3-5パーセント上回る増額が必要との意見が出ており、修正を求める構えだ。

 

「バイデン大統領の国防予算要求は全体として不十分だ。軍で必要となる予算、装備、訓練の各水準を満たしていない」と上院軍事委員会の有力議員ジム・インホフェ(共、オクラホマ)と下院軍事委員会のマイク・ロジャース(共、アラスカ)が共同声明を発表した。「この規模の要求を増額と呼ぶのは適当ではない。インフレ率に達しておらず実質減ではないか」

 

予算関連書類では「高機能を実現する手段」としてマイクロエレクトロニクス(23億ドル)、人工知能(8.74億ドル)、5Gネットワーク(3.98億ドル)とあわせ、極超音速兵器(38億ドル)を対象にしている。極超音速関連では陸軍の長距離極超音速砲、DDG1000級駆逐艦への海軍通常型迅速打撃装備の追加搭載、空軍の高性能迅速反応兵器を含む。

 

中国、ロシアとの開発競争では極超音速兵器が中核となっている。両国が先行といわれる。ペンタゴンは極超音速兵器二型式の実用化を急ぐ。まず極超音速滑空兵器でロケットで打ち上げる。もう一つが戦闘機や爆撃機から発射する巡航ミサイルだ。

 

核三本柱のそれぞれでフル予算をつけ、核兵器体系に277億ドルを投じる。コロンビア級潜水艦、B-21爆撃機、長距離スタンドオフ兵器、次世代大陸間弾道ミサイル(地上配備戦略抑止力)である。

 

今回の予算要求で姿が見えないのが将来年度国防事業への予算で、これは新政権がグローバル防衛体制を見直し中で、その先の国防戦略改訂を待つためだ。

 

中国重視、旧式装備削減、将来への展望、核兵器体系への手厚い支出、というのはドナルド・トランプ政権による最後の2021年度予算の継承だ。

 

またトランプ政権の予算優先順位と同様にバイデン政権初の要求でも戦時予算勘定OCOを含めた予算構造にしている。これまでOCOには削減対象とすべきとの批判があった。

 

OCOは複雑な構造になっており、予算提案では「直接戦闘要求」に56億ドル減で143億ドル、「基地関連OCO」および「継続的」関連は217億ドル減で要求している。

 

節約分は本来なら他事業に使えるのだが、国防関係者によれば政権はアフガニスタンのテロ制圧能力整備に使い、イランへの抑止効果をねらっているという。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Eyeing China, Biden defense budget boosts research and cuts procurement

By: Joe Gould


2021年5月28日金曜日

(再出)主張 日本の南西島しょ部分防衛方針は中国の侵攻に対応できない。南西部を城壁にし、中国の水上進出を阻むべきだ

  

Japan Military Strategy

陸上自衛隊の88式対艦ミサイル Japan GSDF

 

 

本の南西諸島防衛が問題に直面しそうだ。

 

サウスチャイナモーニングポストに菅義偉首相率いる日本政府が防衛支出増額に向かうとの記事が出た。第二次大戦終結後の日本は非公式ながら防衛支出をGDP1パーセント上限に押さえ、軍国主義の再登場を懸念するアジア周辺国をなだめてきた。

 

ところが中国の軍事力増強と東シナ海での横暴な行動から日本もついに平和主義を脱し防衛費増額に向かいだしたわけだ。尖閣諸島含む南西部の防衛が日本の大きな懸念事項だ。岸信夫防衛相は「自衛隊に対応できない地点があってはならない。島しょ部分への部隊派遣は極めて重要」と述べている。

 

これを受けて陸上自衛隊は水陸機動団ARDBを発足させた。番匠幸一郎陸将はRANDでこの誕生を以下説明している。山本朋広防衛副大臣はARDBの主目的を「揚陸作戦を全面的に展開し、遠隔部が不法に占拠された場合に短時間で上陸、奪還、確保すること」と述べた。

 

番匠元陸将発言から「南西部城壁戦略」が見えてくる。島しょ線を日本の主権下に保ち、中国の海洋移動を阻もうというものだ。これ自体は良好に聞こえる。ただし、奪還となると話は別で問題となる用語だ。日本政府の考える戦略方針をそのまま反映している。自衛隊には相手の動きを待って反応させるが、先行した動きは認めない。また作戦はあくまでも第一列島線を舞台とする。日本は攻撃が加えられるまで待つのか。中国の人民解放軍PLAが地上を制圧するのを待ってから自衛隊が動き、奪還するというのだ。

 

これでは受け身の姿勢だ。逆に日本はPLAの攻撃前に島しょ部に部隊を急派し守りを固めるべきではないのか。守備隊が撤退しては敵の攻撃の前に城壁もそのまま守れない。南西島しょ部の壁も同じだ。プロシア陸軍のヘルムート・フォン・モルトケ元帥なら敵攻撃により陥落した島しょ部奪回作戦を聞いて興奮するはずだ。クラウゼビッツ流にモルトケは軍事史上で最高の作戦家にしてドイツ統一の立役者のモルトケは戦時には「戦術的防衛が有利」であり、戦略的攻勢が「より効率が高い方法であり、目標達成の唯一の方法」と述べている。言い換えれば、敵地を占拠あるいは占領してから戦術的に有効な防衛体制をとれば、戦略的な勝利につながるということだ。敵は莫大な犠牲と危険を覚悟で占領地の奪回を迫られる。戦場も実生活と同じだが、いったん手に入れれば我が物、ということだ。

 

海洋戦略も同様だ。前世紀の海洋歴史家ジュリアン・S・コーベットがモルトケの知見を沿海部に応用した。コーベットは戦略的攻勢に戦術的防衛を組み合わせれば限定戦で大効果が出ると主張した。戦闘艦艇は戦わずして敵に現実を受け入れさせることができる。あらゆる点で太平洋での戦闘は限定戦になる。核の時代に戦争を最終段階に持っていこうとするものは皆無だからだ。

 

戦術的防衛を戦略的攻勢と組み合わせることについてコーベットは「即応体制、機動力があること、あるいは有利な状況が該当地区にあり、敵が阻止してくる前にこれを実現することが前提」と述べている。敵が「撃退せんと動いてくれば、こちらの望ましい形で対応し、敵の反抗を遠隔地に限定させ、もって敵を消耗させるべし」としている。

 

コーベットもモルトケも地形や地理上の距離さらに防衛側の主体的な動きで反攻は困難になると主張している。このまま海洋面に応用できるかは疑問もある。コーベットは「目標地周囲が海の場合、敵は海洋全周の支配ができない」とし、守備側が占拠を維持できる可能性をほのめかしている。島しょ部は周囲が海だ。海洋戦略でこの海を壁にし、敵の動きを戦術的防衛で困難にさせればよい。日本はもっと攻撃的な姿勢になるべきだし、こうした過去の戦略大家の言葉を咀嚼すべきだ。ただし、何でもそうだが、すべてが想定通りに進まない。PLA部隊が自衛隊部隊より先に上陸する可能性もある。そうなると自衛隊の水陸両用機動団は敵の銃火の下で奪回を迫られる。南西部島しょ部で日本の主権を守る作戦としてこれは最も難易度が高い。日本ではなく中国が戦術的防衛の優位性を享受する。こうした想定が日本の外交政策や防衛当局に共有されれば、水陸機動団に出撃命令は出せなくなる。したがって積極策を考えるべきだ。

 

城壁に人員を配置するべきだ。しかも早期に。

 

そこで日本はモルトケやコーベットもほめるような攻撃的な思考ができるようになる。そうなればよい。また、番匠元陸将が説明したように、陸上自衛隊は「水陸機動団発足」のプレスリリースの中で「日本の遠隔島しょ部へのいかなる攻撃も撃退する」「統合能力」は十分にあると公言している。これは中国の揚陸作戦を阻止すると聞こえる。だが同時に水陸機動団の主目的は襲撃を受けた遠隔島しょ部で「上陸し、迅速に再奪回し占拠する」こととしている。

 

そこで再奪回ということばだ。

 

ここに中国と日本の考える戦略の違いが見え隠れする。日本の2017年版防衛白書では「中国は東シナ海南シナ海の現状変更を狙い、国際法による現状の秩序では受け入れられない形の主張をしており、日本含む域内諸国のみならず国際社会で懸念を生んでいる」と論じていた。言い換えれば、中国は現状を変えるべく攻勢をかけようとしている。

 

たしかに中国は常に積極的防衛手段をためらわないと公言しており、戦略的目的のためには攻撃作戦や戦術を取るとしている。中国の侵攻による犠牲者が中国の侵攻を生むと非難している。だがこれまで続いてきた域内秩序をひっくり返せば戦略的防衛につながるのは必至だ。実際に中国共産党は戦略的攻勢を主張し、実際に攻撃手段を実行している。党に従属するPLAが非武装あるいは紛糾する地点の占拠を選択する、あるいは他国の奪還を許さないと決定する事態が考えられる。このパターンはすでに南シナ海からヒマラヤまで展開しているではないか。モルトケ=コーベットならこの事態を見て即座に軍事対応につながるものと認識するだろう。

 

では日本はどうか。戦略的防衛に徹するが、国のトップは戦術の選択で悩んでいるように見える。日本に一番正しい道はモルトケだ。水陸機動団は中国部隊が防備を固める前に島しょ部へ移動する必要がある。戦術防衛策の優位性を証明することになろう。

 

そうなると菅首相以下の日本政府はモルトケ、コーベットに学び、南西部城壁を有効にする方法を採択すべきだろう。中国の攻勢に対し、日本にはスパルタ王レオニダスが劣勢な軍を巧みに活用したテルモピュレ峠の事例(紀元前480年)というモデルもある。ペルシア王クセルクセスの使者が剣を下ろせと要求すると、レオニダスはできるもんならやってみろ、と回答した。二千年以上前のこの姿勢が今日にも通じる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Japan’s Backwards Island Defense Strategy Against China Is a Mistake

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

ByJames Holmes

 

 

James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface-warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.”


主張 日本の南西島しょ部分防衛方針は中国の侵攻に対応できない。南西部を城壁にし、中国の水上進出を阻むべきだ

 

Japan Military Strategy

陸上自衛隊の88式対艦ミサイル Japan GSDF

 

 

本の南西諸島防衛が問題に直面しそうだ。

 

サウスチャイナモーニングポストに菅義偉首相率いる日本政府が防衛支出増額に向かうとの記事が出た。第二次大戦終結後の日本は非公式ながら防衛支出をGDP1パーセント上限に押さえ、軍国主義の再登場を懸念するアジア周辺国をなだめてきた。

 

ところが中国の軍事力増強と東シナ海での横暴な行動から日本もついに平和主義を脱し防衛費増額に向かいだしたわけだ。尖閣諸島含む南西部の防衛が日本の大きな懸念事項だ。岸信夫防衛相は「自衛隊に対応できない地点があってはならない。島しょ部分への部隊派遣は極めて重要」と述べている。

 

これを受けて陸上自衛隊は水陸機動団ARDBを発足させた。番匠幸一郎陸将はRANDでこの誕生を以下説明している。山本朋広防衛副大臣はARDBの主目的を「揚陸作戦を全面的に展開し、遠隔部が不法に占拠された場合に短時間で上陸、奪還、確保すること」と述べた。

 

番匠元陸将発言から「南西部城壁戦略」が見えてくる。島しょ線を日本の主権下に保ち、中国の海洋移動を阻もうというものだ。これ自体は良好に聞こえる。ただし、奪還となると話は別で問題となる用語だ。日本政府の考える戦略方針をそのまま反映している。自衛隊には相手の動きを待って反応させるが、先行した動きは認めない。また作戦はあくまでも第一列島線を舞台とする。日本は攻撃が加えられるまで待つのか。中国の人民解放軍PLAが地上を制圧するのを待ってから自衛隊が動き、奪還するというのだ。

 

これでは受け身の姿勢だ。逆に日本はPLAの攻撃前に島しょ部に部隊を急派し守りを固めるべきではないのか。守備隊が撤退しては敵の攻撃の前に城壁もそのまま守れない。南西島しょ部の壁も同じだ。プロシア陸軍のヘルムート・フォン・モルトケ元帥なら敵攻撃により陥落した島しょ部奪回作戦を聞いて興奮するはずだ。クラウゼビッツ流にモルトケは軍事史上で最高の作戦家にしてドイツ統一の立役者のモルトケは戦時には「戦術的防衛が有利」であり、戦略的攻勢が「より効率が高い方法であり、目標達成の唯一の方法」と述べている。言い換えれば、敵地を占拠あるいは占領してから戦術的に有効な防衛体制をとれば、戦略的な勝利につながるということだ。敵は莫大な犠牲と危険を覚悟で占領地の奪回を迫られる。戦場も実生活と同じだが、いったん手に入れれば我が物、ということだ。

 

海洋戦略も同様だ。前世紀の海洋歴史家ジュリアン・S・コーベットがモルトケの知見を沿海部に応用した。コーベットは戦略的攻勢に戦術的防衛を組み合わせれば限定戦で大効果が出ると主張した。戦闘艦艇は戦わずして敵に現実を受け入れさせることができる。あらゆる点で太平洋での戦闘は限定戦になる。核の時代に戦争を最終段階に持っていこうとするものは皆無だからだ。

 

戦術的防衛を戦略的攻勢と組み合わせることについてコーベットは「即応体制、機動力があること、あるいは有利な状況が該当地区にあり、敵が阻止してくる前にこれを実現することが前提」と述べている。敵が「撃退せんと動いてくれば、こちらの望ましい形で対応し、敵の反抗を遠隔地に限定させ、もって敵を消耗させるべし」としている。

 

コーベットもモルトケも地形や地理上の距離さらに防衛側の主体的な動きで反攻は困難になると主張している。このまま海洋面に応用できるかは疑問もある。コーベットは「目標地周囲が海の場合、敵は海洋全周の支配ができない」とし、守備側が占拠を維持できる可能性をほのめかしている。島しょ部は周囲が海だ。海洋戦略でこの海を壁にし、敵の動きを戦術的防衛で困難にさせればよい。日本はもっと攻撃的な姿勢になるべきだし、こうした過去の戦略大家の言葉を咀嚼すべきだ。ただし、何でもそうだが、すべてが想定通りに進まない。PLA部隊が自衛隊部隊より先に上陸する可能性もある。そうなると自衛隊の水陸両用機動団は敵の銃火の下で奪回を迫られる。南西部島しょ部で日本の主権を守る作戦としてこれは最も難易度が高い。日本ではなく中国が戦術的防衛の優位性を享受する。こうした想定が日本の外交政策や防衛当局に共有されれば、水陸機動団に出撃命令は出せなくなる。したがって積極策を考えるべきだ。

 

城壁に人員を配置するべきだ。しかも早期に。

 

そこで日本はモルトケやコーベットもほめるような攻撃的な思考ができるようになる。そうなればよい。また、番匠元陸将が説明したように、陸上自衛隊は「水陸機動団発足」のプレスリリースの中で「日本の遠隔島しょ部へのいかなる攻撃も撃退する」「統合能力」は十分にあると公言している。これは中国の揚陸作戦を阻止すると聞こえる。だが同時に水陸機動団の主目的は襲撃を受けた遠隔島しょ部で「上陸し、迅速に再奪回し占拠する」こととしている。

 

そこで再奪回ということばだ。

 

ここに中国と日本の考える戦略の違いが見え隠れする。日本の2017年版防衛白書では「中国は東シナ海南シナ海の現状変更を狙い、国際法による現状の秩序では受け入れられない形の主張をしており、日本含む域内諸国のみならず国際社会で懸念を生んでいる」と論じていた。言い換えれば、中国は現状を変えるべく攻勢をかけようとしている。

 

たしかに中国は常に積極的防衛手段をためらわないと公言しており、戦略的目的のためには攻撃作戦や戦術を取るとしている。中国の侵攻による犠牲者が中国の侵攻を生むと非難している。だがこれまで続いてきた域内秩序をひっくり返せば戦略的防衛につながるのは必至だ。実際に中国共産党は戦略的攻勢を主張し、実際に攻撃手段を実行している。党に従属するPLAが非武装あるいは紛糾する地点の占拠を選択する、あるいは他国の奪還を許さないと決定する事態が考えられる。このパターンはすでに南シナ海からヒマラヤまで展開しているではないか。モルトケ=コーベットならこの事態を見て即座に軍事対応につながるものと認識するだろう。

 

では日本はどうか。戦略的防衛に徹するが、国のトップは戦術の選択で悩んでいるように見える。日本に一番正しい道はモルトケだ。水陸機動団は中国部隊が防備を固める前に島しょ部へ移動する必要がある。戦術防衛策の優位性を証明することになろう。

 

そうなると菅首相以下の日本政府はモルトケ、コーベットに学び、南西部城壁を有効にする方法を採択すべきだろう。中国の攻勢に対し、日本にはスパルタ王レオニダスが劣勢な軍を巧みに活用したテルモピュレ峠の事例(紀元前480年)というモデルもある。ペルシア王クセルクセスの使者が剣を下ろせと要求すると、レオニダスはできるもんならやってみろ、と回答した。二千年以上前のこの姿勢が今日にも通じる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Japan’s Backwards Island Defense Strategy Against China Is a Mistake

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

ByJames Holmes

 

 

James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface-warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.”


2021年5月27日木曜日

H-20の推測記事が流出し大上段で否定記事を出した環球時報を見ると、案外的外れではない記事だったのか。とはいえ共産党外郭の同紙でさえ、H-20の実態は知らないのでしょう。透明性とは無縁のPLAの姿

  

   

An unknown aircraft covered in a blanket is seen in a recruitment video released by the Chinese People's Liberation Army (PLA) Air Force this month. Photo: Screenshot from the PLA Air Force 2021 recruitment video

人民解放軍空軍の隊員勧誘映像で正体不明の機体が布に覆われて登場した。 Photo: Screenshot from the PLA Air Force 2021 recruitment video

 

 

る中国雑誌が掲載した新型爆撃機のコンピュータ画像を巡り海外メディアが同機を人民解放軍空軍の次世代ステルス爆撃機H-20だと騒いでいる。だが、画像は想像図にすぎずH-20とは無関係と主張する筋がある。

 

香港及び台湾島のメディア一部が中国本国内の軍事記事にH-20のコンピュータ画像が掲載されたと報道しており、画像がH-20と関連があるとの公式な背景情報を伝えている。

 

記事ではH-20の性能仕様や詳細まで推測し、PLAの今後の軍事戦略まで占っている。

 

こうした報道に対し、内部事情に詳しい筋が今回の画像は想像図にすぎない、掲載雑誌も同機がH-20とは一言も言っていないと環球時報に指摘している。

 

記事は中国ではなく米国やロシアの新型爆撃機開発に触れており、海外メディアが勝手にH-20に関連づけたと同上筋は解説した。

 

該当の雑誌は国営軍事産業企業とつながりがあり、軍事問題を平易に解説する科学雑誌で、そもそも新型重要装備品の中核情報をそのような雑誌に公開することは中国の通常のやり方に反すると同筋は述べた。

 

海外メディアではH-20をもって「中国の脅威」理論に火を注ぐ状況が長く続いていると解説する中国軍事専門家もいる。

 

中国が次世代戦略爆撃機を開発すること自体は自然なことと同上専門家は述べた。

 

 

PLA空軍は2021年1月に公開した隊員採用ビデオで次世代戦略ステルス爆撃機の外観を暗示するシーンを入れた。■


Overseas reports on PLA's H-20 stealth bomber incorrect: source

 

By GT Staff reporters

Published: May 26, 2021 10:12 PM

 

 

ではどんな記事が中国本土で出たのか、探してみました。これがその雑誌と記事の写真のようです。

 

 

 

 

いかにも、という外観ですが、そのうちにH-20実機が登場すれば真偽もあきらかになるでしょう。しかし、環球時報がこれだけ必死に打ち消すのを見ると逆に信憑性を感じてしまうのですが。



夢に終わった装備(1) X-20ダイナソアは米空軍の宇宙爆撃機になるはずだった.....

 



ペースシャトルが飛ぶずっと前から再利用可能宇宙機を運用する構想が米国にあった。ニューヨーク爆撃後、太平洋に移動する爆撃機を創ろうとし第二次大戦中のドイツ技術を応用したボーイングのX-20ダイナソアはロケット打上げで単座宇宙機になるはずだった。


同機は大気圏と宇宙空間の境界を滑空し、ペイロードをソ連国内の目標地点に投下したあと、大気圏外へ跳びはねて移動する構想だった。X-20は核の時代にサイエンスフィクションの世界から生まれた夢の構想で、実際に機能したはずと見る向きもある。


ペーパークリップ作戦と冷戦の高まり

ジョン・F・ケネディ大統領、リンドン・B・ジョンソン副大統領の間に座るカート・H・デビュNASA局長はV-2ロケットの開発陣の一人だった。WikiMedia Commons)



第二次大戦が終結に向かうと、米国とソ連の関係は気まずくなってきた。米ソは冷戦の到来を予期し、次の大戦で勝利をどう実現するかを考え始めていた。


ナチ科学技術陣がドイツの優位性を実現しており、こうした成果を生んだ科学者が敗戦後に訴追を逃れようとしているのを米ソともに承知していた。両国はナチ科学者技術者の確保が戦略的優位性につながると着目した。ドイツ科学者の確保を米国ではペーパークリップ作戦と呼んだ。


ペーパークリップ作戦を主導したのは共同情報目的庁(JIOA) で米陸軍の対諜報部隊が中心となりドイツ人科学者技術者等を1,600名確保し米国へ移送した。各員には米国の軍事技術開発で役割が与えられた。NASAで名を成したウェルナー・フォン・ブラウンは月ロケット、サターンVロケット開発の中心となったが、ペーパークリップで米国へ連れてこられたドイツ科学陣で最高位の人物だったが、その他にウォルター・ドーンバーガーおよびクラフト・エンリケがいた。


両名はベルエアクラフトで垂直発進式爆撃機とミサイルを合体させたコンセプトを最初に提案した。ドイツではシルバーフォーゲル(銀色の魚)と呼んでいた構想だ。現在の目から見ても理にかなっている構想だ。ロケットブースターに機体を乗せて地球周回軌道下ながら大気圏外高度へ移動させ、瞬間宇宙に入ってから大気圏に向け滑空し、主翼を使い「跳ね返り」ながら移動する。


X-20ダイナソアの想定図  (WikiMedia Commons)



今日では再利用可能宇宙機を準軌道高度へ送る構想は当たり前に聞こえる。だが、ドンバーガー=エンリケ提案は1952年のもので、ソ連が世界初の人工衛星を打ち上げる5年も前だった。ペーパークリップ作戦はドイツ科学を使い米軍事装備開発を一気に進める狙いがあったが、倫理上の問題は別として、狙いは実現したといってよい。


スプートニクの影

1957年10月1日、ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1を打ち上げた。小型金属球形状で直径はわずか23インチ、無線アンテナ4本を後部につけ、ソ連のみならず世界各地に信号を送った。西側世界で「スプートニク危機」が発生した。


大戦後の米国は事実上の世界超大国として軍事・経済力で君臨していた。だがスプートニクの打ち上げ成功で米国の優越性に疑問が生まれた。ソ連は米国と核兵器で追いつき、水爆も1953年に実験成功した。今度は米国に追い付くのではなく、ソ連が最初からリードを取った格好となった。米国はドーンバーガー=エンリケ構想を採択し、三段階の事業としていた。ロケット爆撃機(RoBo)、長距離偵察機(ブラスベル)、極超音速兵器研究だ。スプートニク1直後に米国は各事業を整理し、三つを単一のウェポンシステム464Lに統合しダイナソアと呼んだ。



X-20ダイナソア打ち上げの想像図(NASA)


新規事業ダイナソアは三段階で実用化するねらいだった。ダイナソア1は研究用、ダイナソア2は偵察機能、ダイナソア3で爆撃機能を実現するとした。米国は迅速な作業をめざし、1963年までに滑空実験、翌年に動力滑空を行う予定だった。その時点でダイナソア2がマッハ18を実現する。ダイナソアから開発するミサイルが1968年までに実用化され、宇宙機は1974年に実用化となる目論見だった。



(U.S. Air Force image)


三段階の実現目標を達成すべく、ベルエアクラフトとボーイングが提案書を作成した。ベルが先行したがボーイングが契約を獲得し、X-20ダイナソアの開発作業を開始した。



ダイナソアの製造

(Boeing photo)


宇宙機の全体設計が1960年にまとまり、デルタ翼に小型ウィングレットがつき、尾翼は省略された。再突入時の強烈な温度に対応すべく、X-20には超合金の耐熱レネ41を採用し、その他モリブデン黒鉛やジルコンを機体下部の熱遮断に使った。


空軍の主任歴史専門員だったリチャード・ハリオン博士は「超高温に耐えるようニッケル超合金を採用した。主翼前縁にはさらに高性能合金を使い、アクティブ冷却効果を狙った」


その同じ年に宇宙爆撃機の宇宙飛行士が選抜された。その一人が当時30歳の海軍テストパイロット、ニール・アームストロングだった。


同年末までにX-20の制式名称がつき、ラスヴェガスで一般公開された。X-20の大気圏内投下実験にはB-52ストラトフォートレスが母機に選ばれ、ロケットブースターの初の稼働実験も成功した。事業は順調に予定より先行しているように映り、当時の技術でも実現可能性は十分あるように思われた。1960年代初頭の当時にはアメリカが宇宙爆撃機を飛ばす日が来るのは確実だった。


(U.S. Air Force photo)


X-20ダイナソアのモックアップは全長35.5フィート、翼幅20.4フィートで、着陸時には格納式三脚をつかった。大気圏外まではA-4あるいはA-9ロケットが必要だったが、ミッションでは大部分を滑空移動し、大気圏に接近して揚力を確保してから跳ね返り、水面を跳びはねながら移動する小石のように移動する構想だった。最終的に速力が落ちると同機は地球に帰還するのはスペースシャトルと同じだ。



X-20ダイナソアの終焉 

(U.S. Air Force)


X-20構想は奇想天外なものだったが、技術的に実現可能であり、初期テストからダイナソアは目論見通り機能思想だと判明した。しかし、事業はおどろくべきほどの高予算となり、新しく発足した国家航空宇宙局はジェミニ計画を進めると、政府指導層はソ連への対抗として宇宙機の実用化により関心を示し、国際的な地位の誇示には役立たない兵装への関心は低くなった。


「ブラック事業としてU-2のように進めていれば、確実に実現していたはずだ。障害となる技術要因はなかった」(ハリオン)



1963年12月10日にX-20事業は中止となった。米国は410百万ドル(2021年換算で35億ドル超)をつぎ込んだが、X-20が宇宙爆撃機になるのはまだ相当先のことだった。ハリオンの回想どおりでもX-20の完成は2.5年先で370百万ドルが必要なはずだった。宇宙爆撃機は文字通り世界規模の航続距離を実現するが、1957年に米空軍はB-52で世界一周飛行を実現しており、高価格のロケットは不要になった。


X-20事業が中止となり、米政府は残る予算を有人軌道上実験室事業に転用し、ジェミニ宇宙機を使い、有人軍事プレゼンスを地球軌道上に実現しようとした。


だが、X-20は歴史の波に完全に飲み込まれたわけではない。同事業の遺産はNASAのスペースシャトルに見られ、宇宙軍の極秘X-37BにはX-20に通じるものがある。X-37Bが宇宙爆撃機ではないことはほぼ確実だが、米国で最高性能の偵察機材になっている可能性はある。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


X-20 Dyna-Soar: America's hypersonic space bomber

Alex Hollings | February 11, 2021