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バイデン政権初の国防予算案はこれから議会で審議へ。新技術投資とともに旧型装備廃止を提唱。中国重視などの基本姿勢はトランプ政権と共通。そもそも国防安全保障政策が急転換することなどあってはならないのだが....

 政権交代しても基本構造を変えることはできないというのが現実政治の姿であり、民主党左派は不満を表明するでしょうが、既存装備の廃止をめぐり議会共和党も反対姿勢を示しており、政権は板挟み状態になるのではないでしょうか。日本でも政権交代を軽々しく発言する向きがありますが、(支持率10%以下で政権を握れるはずがありません)大事な安全保障政策を変えることなど主張してもらいたくありませんね。

 

 

アンドリュース空軍基地(メリーランド)で大統領専用機から降機し敬礼するジョー・バイデン大統領 May 19, 2021. (Photo by NICHOLAS KAMM/AFP via Getty Images)

 

ョー・バイデン大統領初の国防予算要求は調達を80億ドル削り、旧型装備を廃止し、新技術の開発試験に55億ドルを投入し中国への抑止効果を狙う。

 

2022年度の国防予算要求は7,150億ドルで5月28日に議会へ送られた。110億ドルの増額はインフレーション相殺分だ。ロイド・オースティン国防長官が「史上最大規模」と称する研究開発試験評価予算が大きな比重を占め、ホワイトハウスは1,120億ドルと前年比で5%増とした。

 

その反面、調達予算は6パーセント減で1,336億ドルとなった。うち240億ドルを「国防改革」に投入し、280億ドルを現有装備の処分で捻出し、戦術機材A-10、F-15、F-16および沿海域戦闘艦四隻、巡洋艦二隻を退役させる。

 

予算要求では51億ドルを「太平洋抑止力構想」にあて、49億ドルを統合部隊の戦力アップ、1.5億ドルを各種演習・実験・イノベーション、23百万ドルを戦力構成研究に計上した。装備別ではトマホーク、スタンダードミサイル6、INF条約破棄後の射程500キロ制限を撤廃した陸上配備通常火力、海軍の通常迅速打撃戦力(極超音速兵器)の整備が目を引く。

 

「今回の予算案では厳しい決断を迫られた。今日の強力な脅威の前に有効性を失った、あるいは維持費用が高くなった装備システムには頼れなくなっている」と国防副長官キャスリーン・ヒックスが同日述べている。「厳しい目で資源を再配分し、マイクロエレクトロニクス含む高度技術の研究開発用予算を確保した。これで必要な戦力の実用化の基礎固めを進める。例として極超音速ミサイル、人工知能、5Gがある」

 

各軍別では陸軍が1,740億ドル(21年度比で15億ドル減)、海軍へ2,070億ドル(46億ドル増)、空軍へは2,040億ドル(88億ドル増)となる。空軍の数字には宇宙軍が内数で、前年の154億ドルを175億ドルにする。

 

国防関係者から中国重視で海軍、空軍が増額となったとの発言が出ているが、オースティン長官は統合参謀本部議長マーク・ミリー大将と同席し陸軍予算を減らして多軍向け予算を捻出したのではないと説明した。両名は陸軍が求める近代化優先事業6個にはフル予算をつけ、将来の戦闘に向けた戦力へ配慮していると述べた。

 

大統領府による予算案は議会が修正して成立させることが通例で、供用中の装備品を廃止する案に不満を表明する議員が出ている。共和党議員重鎮からは中国の軍事力整備に対抗するべくインフレ率を3-5パーセント上回る増額が必要との意見が出ており、修正を求める構えだ。

 

「バイデン大統領の国防予算要求は全体として不十分だ。軍で必要となる予算、装備、訓練の各水準を満たしていない」と上院軍事委員会の有力議員ジム・インホフェ(共、オクラホマ)と下院軍事委員会のマイク・ロジャース(共、アラスカ)が共同声明を発表した。「この規模の要求を増額と呼ぶのは適当ではない。インフレ率に達しておらず実質減ではないか」

 

予算関連書類では「高機能を実現する手段」としてマイクロエレクトロニクス(23億ドル)、人工知能(8.74億ドル)、5Gネットワーク(3.98億ドル)とあわせ、極超音速兵器(38億ドル)を対象にしている。極超音速関連では陸軍の長距離極超音速砲、DDG1000級駆逐艦への海軍通常型迅速打撃装備の追加搭載、空軍の高性能迅速反応兵器を含む。

 

中国、ロシアとの開発競争では極超音速兵器が中核となっている。両国が先行といわれる。ペンタゴンは極超音速兵器二型式の実用化を急ぐ。まず極超音速滑空兵器でロケットで打ち上げる。もう一つが戦闘機や爆撃機から発射する巡航ミサイルだ。

 

核三本柱のそれぞれでフル予算をつけ、核兵器体系に277億ドルを投じる。コロンビア級潜水艦、B-21爆撃機、長距離スタンドオフ兵器、次世代大陸間弾道ミサイル(地上配備戦略抑止力)である。

 

今回の予算要求で姿が見えないのが将来年度国防事業への予算で、これは新政権がグローバル防衛体制を見直し中で、その先の国防戦略改訂を待つためだ。

 

中国重視、旧式装備削減、将来への展望、核兵器体系への手厚い支出、というのはドナルド・トランプ政権による最後の2021年度予算の継承だ。

 

またトランプ政権の予算優先順位と同様にバイデン政権初の要求でも戦時予算勘定OCOを含めた予算構造にしている。これまでOCOには削減対象とすべきとの批判があった。

 

OCOは複雑な構造になっており、予算提案では「直接戦闘要求」に56億ドル減で143億ドル、「基地関連OCO」および「継続的」関連は217億ドル減で要求している。

 

節約分は本来なら他事業に使えるのだが、国防関係者によれば政権はアフガニスタンのテロ制圧能力整備に使い、イランへの抑止効果をねらっているという。■

 

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Eyeing China, Biden defense budget boosts research and cuts procurement

By: Joe Gould


コメント

  1. ぼたんのちから2021年5月29日 23:42

    今回の予算案を考えると、それほどおかしなところは無いように思える。それにほぼ対中対策にシフトし、不要な装備を削減し、有効な装備を強化し、新たな兵器開発に予算を厚くしている。この対中国家戦略に裏打ちされた予算案はトランプ政権時と大きく変わっていないように思える。
    米国の対中政策に関して言えば、現在、注目すべき動きがある。それは27日のWSJ社説であり、今まで陰謀論とされていた、武漢肺炎ウイルスの武漢ウイルス研究所からの漏洩を示唆するものであり、トランプが主張し、バイデンが握りつぶしていたことである。バイデンは、90日までの調査報告を情報機関に命じることになった。
    この動きは、陰謀論的に言えば、米国を牛耳り、バイデン政権を支え、中国ビジネスで甘い汁をすすってきた金融エリートのディープステートが、影響力の強い主要メディアを使って習政権を追い込むことであり、CCPと米国金融エリートの関係の構造変化か、終焉を意味するかもしれない。
    武漢ウイルス研究所からのウイルス漏洩が事実となれば、習の責任と賠償が問われることになり、習のみならず、CCPの存立の危機となる可能性があり、目が離せないであろう。

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