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航空機搭載レーザー兵器の実用度はここまで進んでいる。F-3の発電容量拡大も指向性エナジー兵器搭載を想定している模様。

Stars and Stripes

 

2017年にThe Driveが入手した米空軍のプレゼン資料では第六世代戦闘機に機体内部搭載あるいは「一体型」のレーザー装備を導入するとある。

 

4月23日、空軍研究本部(AFRL)が光ファイバー方式レーザーをホワイトサンズ試射場(ニューメキシコ)で実験し、「飛翔中のミサイル数発」を撃ち落とした。

防御用高エナジーレーザー実証装置(SHIELD)は大型の地上装備だが、空軍はSHIELDをポッド搭載可能になるまで小型化が可能と楽観視しており、2021年までにF-15で試射するとし、その後F-16やF-35のような単座戦闘機に搭載するとしていた。一部にはC-17やC-130輸送機でテストを開始するとの観測もあった。

 

航空機搭載レーザーが想定通り実用化されれば、航空戦闘の姿が大きく変わる。戦闘機、爆撃機、はては給油機や輸送機で対空ミサイルからの防御能力が画期的に高まる。さらに超高速空対空、空対地攻撃兵器になり、事実上無限の発射が可能となる。

 

まず、航空レーザーの強み、短所、応用範囲を理解しよう。その後、ペンタゴンが進めているレーザー兵器か計画三点をご紹介する。

 

レーザーのドッグファイトは実現するのか

 

レーザーの兵器応用は急速に進んでおり、小火器から、戦車搭載(中国がこれを開発中)さらに地上配備あるいはヘリコプター搭載対無人機装備(米陸軍がテスト中、近接防御装備として米海軍が実用化を狙う装備まで多岐にわたる。レーザーには発射速度(光速)、ステルス、精密度とともに一回の「射撃」コストが極めて低価格になり、事実上無尽蔵の弾倉が実現する。

 

ただし、レーザーには大電力が必要で特に長距離射程でこれがあてはまり、大気状態で効力を減じることがあり、発熱量が大きく冷却装置が必要となり、最近まではかさばる電源が必要だった。

 

SHIELDは敵ミサイルを撃破すべく開発されたアクティブ防御システムの最先端装備だ。ロシアには48N6地対空ミサイルやR-37空対空ミサイルといった長距離装備があり、無防備な早期警戒機や給油機を200マイル先から狙う。第4世代機、第5世代機がレーダー探知されるのはこれよりずっと短い距離で、高機動の短距離ミサイルを回避する可能性は20-30パーセントといわれる。

 

レーザーに運動エナジー効果はないが、比較的小出力でもミサイルの光学誘導装置を妨害あるいは破壊できる。理論上は。より強力なレーザーだとミサイルの飛翔制御用フィンを破壊する、あるいは弾頭を加熱できる。地上発射レーザーで無人機を破壊した事例もある。

 

出力をさらに強力にすると敵機を狙う攻撃兵器となり、水上艦も標的になりうる。レーザーは同時にセンサー機能も発揮するので、極めて迅速な戦闘対応が実現する。

 

レーザーの破壊効果を左右する要素は射程距離や「焦がす」機能が何秒持続できるかだ。さらにレーザーが対応できるのは一回にひとつだけで、かつ敵を直線で狙う必要がある。

 

とはいえ、レーザーで弾薬数の制約がなくなり、資材や車両を相手に非殺傷で付随被害を押さえた攻撃を精密に実施できる。ここに特殊部隊が60キロワット級レーザーをAC-130Jゴーストライダー・ガンシップに搭載を進めている理由がある。

 

ステルス、非ステルスの戦闘機が制空権未確立の空域で行動する際にレーザーがあれば生存性が大幅に高まる。敵は飽和攻撃に近い形でミサイル多数の発射を迫られるだろう。

 

エナジー兵器は敵奥地に侵攻するB-2スピリットや間もなく登場するB-21といったステルス爆撃機に防御手段を実現する。B-2ではステルス性能だけが生存のカギとなっており、ミサイルが視界に入っても防御手段がない。同様に、レーザーが輸送機、給油機等の支援機材に導入されれば、こうした大型かつ脆弱な機体でもミサイル奇襲攻撃を回避する可能性が増える。

 

さらにレーザーが大規模導入されれば、ステルス戦闘機や視界外射程ミサイルの優位性が否定されることになり、敵はミサイルを多数発射して命中を狙うはずだ。過剰交戦が視界内ドッグファイトで実現し、レーザー攻撃も加われば、操縦性の高さで、あるいはおとり装置で生き残ることは困難になる。

 

LANCE とCHELSEA

 

空軍のSHIELDは総額155百万ドルの予算で開発が進み、構成要素は三つある。LANCEレーザーはロッキードが空軍研究本部と共同開発している。つぎがSTRAFE制御システムでノースロップ・グラマンが担当し、最後にレーザーポッド研究開発をボーイングが行っている。

 

初期のレーザーは不安定な化学物質を使ったが、LANCEでは光ファイバーのケーブルで光ビームをひとつにし「数万キロワット」級出力を実現する。モジュラー構造により出力規模を増減させる。エナジー効率が40パーセントと高効率が特徴だ。

 

LANCEでは高高度や高速飛行中に耐える改善がまだ必要だが、ポッド搭載可能なまで小型化できれば作動中に生まれる発熱を防ぐこともできる。F-35のブロック4性能改修ではエンジン改良で発電容量を引き上げることになっており、指向性エナジー装備搭載を念頭に置いているのだろう。

 

2019年1月にAFRLから期間6カ月で高エナジーレーザーサブシステム技術評価(CHELSEA)の公告があり、「2024年までにレーザー小型化を実現する最も有望な技術を特定する」ことを目的としていた。CHELSEAレーザーがゆくゆくSHIELDにとってかわれば、攻撃用途に道が開ける。

 

T2017年にThe Driveが入手した空軍プレゼン資料では空軍はレーザーを第6世代機の機内あるいは「一体型」として搭載するとあり、機体の空力特性を犠牲にしない方法でステルス性能も確保するとある。また、100KW級出力を実現し対空、対艦攻撃に使う展望が示されていた。

 

三番目にステルス無人機へのレーザー兵器搭載があり、敵の弾道ミサイル施設上空に滞空し、発射後の加速中ミサイルを狙う構想だ。

 

2010年初頭に空軍は改装747ジャンボジェットに化学酸素イオンレーザーを搭載し、弾道ミサイル2発を撃破する実験を行ったが、その後同事業は中止となった。理由として非ステルス機では敵空域で生存が望めないためだ。F-35で指向性エナジー兵器を搭載し、弾道ミサイル撃破に使う構想も検討されたが、同機の航続距離が短く滞空時間が限られる点が障害になると判明した。

 

ステルス無人機なら残存性とともに長時間滞空性能が実現する。2018年秋にミサイル防衛庁はロッキード・マーティン、ジェネラル・アトミックス、ボーイングの三社に契約交付し、「低出力レーザー実証機」の作成を求めた。低速飛行の無人機は目標地点まで1,900マイル移動し、高度63千フィートの楕円飛行パスで、36時間滞空後に帰還する。レーザーは140から280キロワットで30分照射可能なバッテリーを搭載する。

 

レーザー装備導入を想定するのは米空軍だけではない。仏独共同開発のFCAS、英国のテンペストの両ステルス戦闘機、ロシアのMiG-41迎撃機では指向性エナジー兵器(DEWs)の搭載を最初から想定している。さらに日本のF-3、タイフーン両機のエンジンはターボ発電機能を採用し、発電容量に余裕を持たせているのはDEWs他搭載の想定のためであろう。■

 

 

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