ここがポイント:米国が日本の核武装を認めなかったことが長期的に良好な結果を生んだといえるが、日本が核武装していれば北京政府はパニック状態になっていたはずだ。
冷戦時の米国は選択的核兵器拡散を認め、ソ連によるヨーロッパ侵攻への抑止効果を狙った。ロシア側も英仏両国の脅威を現実に感じていた。
米国は同じ戦略をアジアでは採用しなかった。米国には日本の核武装を支持する理由がなかった。逆に日本が核兵器に野心を見せると毎回米国が抑え込んでいた。
この方針は熟考の結果で、日本が核武装すれば世界規模の核拡散につながるためだった。しかし東アジアの力のバランスが望ましくない方向に動いていたら、日本の核武装が理にかなっていたはずで、これが世界の核兵器拡散に大きな意味を持ちかねなかった。
第二次大戦の遺産
第二次大戦中に日本も核兵器開発を模索していた。ただしドイツに匹敵する進展はなく、米国には及びもつかなかった。占領初期に研究基盤は米国が破棄し、日本に核兵器開発を許す意思がないことは明白だった。真珠湾の前例が米国に重くのしかかり、日本が強力な兵器を保有し再び奇襲攻撃を実施するのは受容できないというのが一般の受け止め方だった。米国が英仏両国に核開発を容認したのは両国が第二次大戦で同じ戦勝国だったからであり、なんといっても日本は侵略国家であり、敗戦国だった。
一方で唯一の核攻撃被害国として日本の国内政治は核武装に否定的だった。とはいえ、1960年代の日本政府が核兵器開発を積極的に検討していた事実があり、佐藤栄作首相は日本に核兵器がないと中国に対抗できないとまで発言した。米側はこれを問題視した。ジョンソン政権は日本に不拡散条約加入を求め、当時はこれで日本の核武装構想は封印された恰好になっていた。
日米両国での核兵器に関する意思決定
ではどうしたらワシントンの方針が変わり、日本にどんな影響が生まれていただろうか。中ソ対立が米国の懸念材料だった。日本の核武装で中国がソ連に再接近すれば、東アジアで共産勢力が強固になっていたかもしれない。だが二大社会主義国が仲たがいしていなければ、日本の核抑止力構想の魅力が高まっていただろう。
日本国憲法は攻撃兵器保有を禁じており、各装備に防衛的性質があるのか言葉遊びが延々と続いている。例えば航空母艦は「ヘリコプター護衛艦」と呼ぶ。日米当局が憲法による禁止事項の回避策を見出しているのは明らかだ。日本経済の成熟度を見れば、核兵器開発の方針が決まれば自衛隊の核武装は短期間で実現していただろう。
核兵器運搬手段として日本は中距離弾道ミサイルを開発、あるいは米国から導入していたはずだ。アジア中心部を標的に収めても米本土には到達できない。さらに米国がポラリスあるいはトライデントSLBM技術を供与し、原子力潜水艦建造も並行して進めていれば実用化に道が開いたはずだ。長距離爆撃機となると飛躍しすぎになるが、F-15なら戦術核攻撃任務はこなせていただろう。
日本核武装はこんな影響を及ぼしていたはず
日本核武装による最大の影響は北京に現れ、中国側は大パニックに陥っていただろう。中国は核武装で米、ソ、日本の三か国に抑止効果を発揮できるようになった。ただ日本については通常兵器に限定した武装であり、国内に平和主義の政治風潮があることから、核兵器による抑止効果は不要となった。とはいえ、日本が核兵器保有により米国から独立した政治力を持つと中国は懸念したはずだ。日本が米国の核抑止力に依存している限り、米国が有利となる。日本の核兵器は覇権を求める動きを再開させ、中国は最終的にロシアに再接近、あるいは自国の核抑止力強化に向かっていたはずだ。
日本の核武装は域内で警戒を招いていたはずだ。ソウルも米国に安全保障で依存する中で、当面は「苦笑いで我慢する」態度を取りつつ、長期的に自国の核開発に向かっていたはずだ。同様に日本の核武装で米国は台湾の核武装志向を押さえるのに苦労していたはずだ。遅れてはならないとインドも核武装に走り、同国の場合は政治制約もなく進展していたのではないか。
さらに日本が核武装していたら、実際に日本が世界規模の核不拡散の進展に果たした役割は果たせなかったはずだ。世界唯一の被爆国として日本は世界各地の反核の動きに重みを示していた。こうした動きも日本が退場していれば大きく制約を受け、世界各地の核兵器拡散防止は支障をきたしていたはずだ。
長期的には日本の核兵器開発を認めないワシントンの決断が効果を奏している。中国はロシアからさらに離反し、日本は米国依存を保ち、域内とともに世界規模の非拡散体制が効果を上げている。しかし、米国が中ソ関係を読み間違え、日本政府の一部が強硬な態度に走っていれば、全く別の状況が生まれていたはずで、日本のみならず世界各地で核武装が実現していただろう。■
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What if Japan Became a Nuclear Weapons Powerhouse in the Cold War?
April 30, 2021 Topic: Nuclear Weapons Region: Asia Blog Brand: The Reboot Tags: Nuclear WeaponsJapanChinaJapanese MilitaryMilitaryDefense
Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and the Diplomat.
This article first appeared in 2016.
Image: Reuters
旧冷戦時、日本が核武装するには無理がある。そして新冷戦の現在も日米同盟が機能する限りは核武装する必要は無いだろう。
返信削除しかし、将来は話が別となる。米国が衰退し日米同盟が形骸化したり、台湾が中国に占領される場合は状況が全く異なる。この状況は、民主国家日本の存亡の危機に瀕することになるだろう。日本は、核武装の是非を問われることになる。
日本は、潜在的な核保有国であり、必要となれば短期間で核武装できる。しかし、日本は平和国家であり、国家も国民も核武装は望んではいない。
そうではあるが、中国、正確にはCCP指導者のような攻撃的な侵略的国家、及び指導者が日本に戦争や占領を挑むとなれば、最大限の抑止力が必要になり、その選択肢の一つには間違いなく核武装を含むことになる。日本は短期間で中国並みの、複数の運搬手段を持つ核保有国になることができる。
このようにならないことを祈るが、戦争準備を叫ぶCCP指導者と戦狼外交を見る限り、危険な方向に向かっているように思える。
日本がこれから行うべきは、勿論台湾危機が進展する場合だが、強い抑止の声明であり、台湾侵略時の介入や核武装を匂わせることではなかろうか。