LOCKHEED MARTIN
空軍参謀次長クリントン・ハイノート中将(戦略統合要求内容担当)が次世代制空機材(NGAD)で新たな詳細情報を明らかにした。「各種システムで構成されたシステム」の機材開発の一部として第六世代戦闘機が生まれる。NGAD導入によりF-22ラプターの退役を2030年代に実施すると発表した空軍参謀総長チャールズ・ブラウン大将への追加情報をハイノート中将が明らかにした。
ハイノート中将は空軍戦略に加え複数ドメイン作戦構想をまとめる立場にあり、Air Force Magazine と Defense Newsが取材の機会を得て、極秘事業NGAD内容が一部判明している。中将はF-22退役への大日程と新型機の関係についても言及した。
ハイノートはF-16ヴァイパー、F-117ナイトホークのパイロット経歴があり、少なくとも現時点ではF-22がNGADに交代する時期は2030年代以降で、その時点でラプターは「機齢40年機材」になるとDefense Newsに語っている。「今年中に方針を決める必要はないが、NGADが開発案件から生産案件にいつ切り替わるかがポイントだ」
空軍はNGADの配備予定には口を閉ざしているが、昨年9月に実証機が飛行開始しているとが判明している。ハイノート中将はAir Force Magazineに対し、実証機二号機が製造中だと暗示している。
「成熟化が進めば、次の機体の設計が始まる」とし、ソフトウェアやセンサー技術の進展に触れたハイノートはNGADは単一の機体ではなく、五年ないし八年ごとに新型機を登場させると述べている。
U.S. AIR FORCE/SENIOR AIRMAN ARMANDO A. SCHWIER-MORALES
当時大佐だったクリントン・ハイノートが第8戦闘航空団司令としてF-16による最終フライトを終えた。Kunsan Air Base, South Korea, in 2014.
こうした迅速な技術対応は前空軍次官だったウィル・ローパーが「デジタルセンチュリーシリーズ」と呼んで提唱していたものだ。これと別に空軍は低費用消耗品扱い航空機材共有化Low Cost Attritable Aircraft Platform Sharing (LCAASP) 事業で消耗品扱い・再利用可能なUAVの各型を「共通システム構成で中核システム性能を使いつつ、特定ミッションに合わせるという、ヴァルキリーで採用したモジュラー構造」の実現を狙っていると航空シンクタンクのミッチェル研究所が説明している。空軍は共通部品をもとに拡大縮小が自由にできる航空機ファミリー構成の実現を目指している。
だが、空軍はNGADを有人装備にするべきかで迷っている。ハイノート中将はDefense Newsに対し有人、無人さらに任意有人操縦対応の各装備とすると述べつつ、すべて同時に就航するわけではないとした。「率直に言って各装備の開発を進めてみて、どれが一番いいか見極めたいと思っている」(ハイノート)一方でAir Force Magazine記事はNGADは任意で有人操縦可能な機体となるのは確実と伝えている。
もちろんのこと、F-22と交代する機材に無人機も含むのは確実だろう。
有人・無人機の選択という難題に対しハイノートはAir Force Magazineに対し自律運航機材を多用すして戦力増強効果を狙うとし、スカイボーグ事業で開発した人工知能の初期型テストにも触れた。空軍はスカイボーグをまず忠実なるウィングマン方式の半自律型無人機に応用すると公言しており、その後に技術を完全自律型の戦闘用無人機(UCAV)に応用する点に留意すべきだ。こうした自律運航機材の機能の一部を有人機に移植する話もあり、実現すれば現在そしてこれから登場する有人機そのものは有人操縦へ切り替え可能な機体になる可能性が生まれる。
U.S. AIR FORCE
スカイボーグ自律運航システムがクレイトスのUTAP-22戦術無人車両から発射された。Tyndall Air Force Base, Florida, last April 29.
NGADが有人装備なのかどうかという根本的な問題とは別に、ハイノート中将から事業のは順調に進展中との発言があった。デジタル設計及び各種システム統合が事業で大きな柱になっており、予定通りの進展が続いており、2030年代中に実現すると述べた。
だがNGADが期待どおりに実現しない場合、ハードウェアの第一線配備が遅れる場合、ハイノートはF-22をつなぎとし、後継機を待つと述べた。
ハイノートは「傑作機」と呼ぶが、ラプターは急速に旧式化を続けている。中国のような互角の戦力を相手とした作戦では従来と異なるミッションをこなす必要がある。ハイノートは中国が台湾侵攻した想定の例を取り上げた。2030年代中にこれが発生すれば、F-22で対応能力の不足が露呈する。ハイノートはとくに中国のJ-20ステルス戦闘機が高性能空対空ミサイルを使い、アジア太平洋地区の戦闘の様相が一変すると述べた。
CHINESE INTERNET
中国のJ-20ステルス戦闘機
F-22では航続距離不足、機内搭載兵装量の不足が出撃の際に足かせとなる。これはF-35にも共通する問題だ。ハイノート中将もこのことは認識している。これを念頭にNGADで兵装搭載量がどこまで実現するかを考えてみたい。NGADはF-22より大型機材になり、低視認性のため無尾翼構造になりそうだ。
U.S. AIR FORCE/SAMUEL KING JR.
F-15EX 一号機がエグリン空軍基地(フロリダ)に到着した。March 11, 2021.
さらにF-22は小型ながら整備が大幅に必要な機体で、運行経費が高いまま、敵の高性能防空体制の脅威にさらされるとハイノートは指摘している。さらにB-2ステルス爆撃機同様に部品メーカーの消滅で運行上の支障が生まれている。
F-22の威力を維持すべく、性能改修を2022年度予算に盛り込み、センサーのほか名称不明の新型空対空ミサイルの導入さらに耐用年数の延長も視野にはってくるはずだ。Defense Newsは新型ミサイルは各機種で広く使われるとしており、ハイノートが言及したのはAIM-260共用戦術航空ミサイル(JATM)のことらしい。同ミサイルは外観上はAIM-120AMRAAMと同程度なのでF-22とF-35で機内搭載が可能となるが、射程距離はAIM-120Dより相当長くなり、中国やロシアが開発中の長距離ミサイルに対抗するものだ。
こうした構想には政治面での意味もある。なんといってもNGAD関連の予算を政府に認めさせることだ。Air Force Magazineでハイノート中将は今後の予算要求にNGAD実現を強く求めるつもりだと認めている。F-22関連の予算もNGAD実現を側面から支援する意義がある。2021年度予算最終案ではNGAD関連がわずかだが減らされている。
F-22とNGADをめぐる話とは別に、もう一つ興味を感じるのはハイノートがDefense Newsインタビューで供用中のF-15Eストライクイーグルを最新のF-15EXと同じ標準にすると述べた点だ。サウジアラビアが同じように供用中F-15Sを改修しF-15SAにした事例がある。空軍はF-15EはそのままとしてかわりにF-15EXの追加発注という選択肢もある。
いずれによせよ、世界各地で攻撃の第一陣として酷使されてきたF-15E部隊に新規製造の機体あるいは大幅に性能改修した機材が配備される可能性が生まれることになる。
今回お伝えした各案は正式採択されたものではないし、F-22の「早期」廃止には議会から反発の声が出るのは必至だ。とはいえ、空軍の戦術機材の今後を決める重要な時期に差し掛かっていることは確かだ。■
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New Details Emerge About The Secretive Program That Aims To Replace The F-22
The F-22’s days may be numbered, but we now have a little better view as to what they want to replace it with and why.
BY THOMAS NEWDICK MAY 14
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