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P-1は中国への抑止力である。機体にはさらに派生型が生まれる余地があり、今後の日本の安全保障に重要な装備となる。輸出は期待できないが....

 

 

 

 

ここがポイント: 日本は2014年に軍事ハードウェア輸出条件を緩和し、P-1の海外売込み活動を開始した。だが、ポセイドンの牙城は崩せず、ニュージーランド、英国で売り込みに失敗した。川崎重工製同機の単価は140-160百万ドル程度だがポセイドンのフライアウェイ価格は125-150百万ドルになっている。

 

水艦作戦で経済が苦境に陥った国は日本が唯一だ。大西洋ではドイツUボートが両大戦で英国の補給線を狙ったが、Uボートは連合軍の対潜作戦で除去された。これに対し、連合軍は日本の商船隊の55パーセントを第二次大戦中に沈め、日本帝国の細い補給線を遮断した。

 

これが海上自衛隊の記憶に残り、中国PLA海軍潜水艦部隊の急速な整備であらためて自覚されている。PLAN潜水艦部隊は間もなく世界最大規模になる。大部分はディーゼルやAIP推進方式の短距離対応艦といっても日本にとって慰めにならない。なんといっても日本経済は海上交通路の確保が生命線だ。

 

対潜戦(ASW)のカギを握るのは大型対潜哨戒機で、過去半世紀にわたり日本は米国設計のP-3Cオライオンを運用してきた。同ターボプロップ機は長時間哨戒し、艦船を追尾し、潜水艦探知もしてきた。だがオライオンも供用機間の終わりに近づき、日米で別々の後継機種開発が進んだ。

 

米国のP-8ポセイドンは双発のボーイング737-800旅客機を原型に、高高度哨戒飛行に特化した機体だ。これに対し、川崎重工のP-1は2007年初飛行の完全新型機でエンジン4発で、低高度高高度双方の作戦に対応する。P-1はC-2と同時開発され、重量で25パーセントの部品を供用している。

 

P-1の頑丈な主翼で失速速度が低くなり、低空飛行性能はP-8を上回る。全長38メートル、最大離陸重量88トンの同機は2018年ベルリン航空ショーで展示された。

 

エンジンはF7-10ターボファン四基で長時間哨戒飛行で冗長性を確保しており、P-3より10デシベル低い騒音レベルで音響ステルス性能を実現した。P-1は5千マイルの最大飛行距離を有し、時速518マイルで巡航しP-3より30パーセント早く対象海域へ到達できる。(最大速度は621マイル)到着後はエンジン二発で低速飛行し燃料を節約する。

 

パイロット2名、ミッション担当9名が運用する。光ファイバーによるフライバイワイヤ方式を世界初めて搭載した機体となり、信頼性が増し機内センサー装備は電磁干渉を受けない。

 

P-1の各種センサーでは、まず強力なHPS-106アクティブ電子スキャンアレイレーダー4基があり、機体全周を監視する。水上走査で艦船を探知し、潜水艦のシュノーケルやセンサーマストも探知可能だ。同時に航空監視も可能で臨時のAWACS機にもなる。電磁センサーアンテナがコックピット上部にあり、敵のセンサーや通信活動を探知し、HAQ-2赤外線電子光学センサーのタレットが機首下にあり、水上艦船を監視する。さらにHQA-7音響処理ユニットが潜水艦のディーゼル騒音を聞き取り、カナダ製ASQ-508(V)磁力異常探知装置(MAD)が機体後部につき、潜水艦艦体が生じる磁力特性を低空飛行で探知する。

 

ただし、ソナーブイの投下が潜水艦探知手段の中心で、P-1は37基を搭載する。キャビンも使えば70基を追加搭載する。センサー情報各種をHYQ-3戦闘指揮システムで統合し、人工知能を活用し探知した潜水艦の今後の移動を予測する。HYQ-3は海上自衛隊のSH-60Kヘリコプターなどその他対潜装備と情報交換し、海軍装備データベース、衛星偵察データベースとリンクアップし、潜水艦の正体を突き止める。P-1にはLink-16データリンクも搭載し、F-15Jや767AWACSやイージス搭載駆逐艦ともセンサー情報を共有する。

 

敵のミサイル攻撃を受けると、HLQ-9ミサイル警告装置が作動し、電子妨害とともにチャフ・フレアを放出し攻撃をかわす。

 

P-1は20千ポンドの兵装をハードポイント16か所に搭載しており、お返しに機雷、マーク46あるいは日本製軽量対潜魚雷、ハープーンあるいはASM-1C亜音速対艦巡航ミサイル、AGM-65マーヴェリック精密誘導ミサイルをお見舞いするだろう。

 

2018年央時点でP-1は18機が海上自衛隊第三航空隊(厚木基地)とVX-51試験隊に配備されていた。さらに20機が発注済みだった。運用面の詳細情報は少ないが、関係者はP-1が「P-3時代より遠距離地点で潜水艦を中低高度で探知するのが普通になっている」とAviation Weekに述べている。

 

最終的にP-1は60機ないし70機が導入され、P-3Cと交代する。またP-1搭載センサーの性能向上は10年ごとに実施する。自衛隊ではEP-3C通信情報収集機(5機)、OP-3C光学偵察機(4機)、UP-3C・UP-3D試験訓練機(4機)の代替用として改修したP-1の調達にも向かいそうだ。

 

2014年に日本は軍事ハードウェア輸出ルールを改正し、P-1の対外営業活動を開始した。だがポセイドンの牙城は崩せず、ニュージーランド、英国での商談は成約に至らなかった。P-1機体単価は140-160百万ドルだがポセイドンはフライアウェイ価格で125-150百万ドルといわれる。それでもタイ、ヴィエトナム両国が関心を示しており、フランス、ドイツへは老朽機材アトランティーク2哨戒機の後継機種として売り込みを図った。ただし、米国の軍事装備品調達ネットワークの強さ、737部品の入手が容易なことでP-1には不利だ。

 

それでもP-1にはP-8より優位な点が見られる。低空飛行性能、最高速度、ハードポイントの多さ(P-1が16、P-8は11)、四発エンジンによる柔軟運用、MADセンサーの搭載(P-8はインド向けP-8I除きこれを搭載していない)といった点だ。両機のセンサー機能の比較は実務上の知見がないと困難だ。ただしその貴重な機会が2018年6月にあらわれ、マラバール対潜戦演習で日本のP-1が米印両国のP-8と並んで参加した。

 

ここまで高性能な対潜哨戒機が海外販路を開けるかは別として、日本はP-1やそうりゅう級大気非依存型潜水艦に中国の潜水艦部隊整備からの防衛効果を期待している。■

 

 


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Without Firing a Shot, This Japanese Plane May ‘Sink' China’s Submarines

May 7, 2021  Topic: Submarines  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: SubmarinesAnti-Submarine Warfare JapanMilitaryChinaNavy

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .

This article first appeared in July 2018.

Image: Wikimedia Commons


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