米空軍は新規生産のF-15EXイーグルIIの受領を今年3月から始めており、アラスカで今月行われた大規模演習に早速投入した。引き渡し済みF-15EXは二機のみで、両機とも演習に参加した。
演習にはノーザンエッジ21の名称がつき、F-15EX各機がF-15Cに加わり、またF-22ラプターやF-35共用打撃戦闘機も投入されたほか、F-15Eストライクイーグルとも飛んだ。F-15EXは同規模同水準のアグレッサー部隊と交戦した。
ノーザンエッジ21演習でアラスカのエルメンドーフ共用基地に集まった第53航空団、第96試験航空団のF-15、ストライクイーグル (U.S. Air Force photo)
第53飛行団のライアン・メッサー大佐は「ノーザンエッジは運用能力を試す重要な機会となった。超大国間の戦闘を想定し、複雑な条件で相互運用能力を運用してテストデータを提供する数少ない機会となった」と述べた。
最新の第四世代機となったF-15EXの実際の性能は空軍から公表されていないが、4月から5月にかけ展開した同演習でF-15EXは敵機を撃墜しつつ、シミュレーションながら撃墜もされたことを認めている。
狙いはF-15EXに空対空交戦を制圧する能力があり、中国を想定した互角の相手側との戦闘に投入できるかを見ることではなかった。つまり、新型F-15の役割は敵の第四世代機だけでなく、ステルス機も相手にすることにあるようだ。
第84試験評価飛行隊のジョン・オリア中佐は「大規模演習で自軍に被害がなければ、敵の脅威に対応できる学習効果が生まれる」と語る。
オリア中佐はF-15EXが撃墜された今回の演習の状況に関し詳細は語っていないが、新型第四世代機で対応できない脅威についてわずかながら輪郭がうかがえる。イーグルIIは相当の長距離からの攻撃で被害を受けたようだ。この原因としてステルス性能の欠如があり、容易な標的になったのだろう。その通りなら、F-15EXだけが脆弱なわけではない。
「このような環境では青軍の『被撃墜』はほとんどが視界外からの攻撃によるものとなる」(オリア中佐)
F-15EX (U.S Air Force photo by 1st Lt Savanah Bray)
ステルス性の欠如のためF-15EXは視程外から攻撃を受けやすく、レーダー探知されミサイルを先に発射された。ミサイルの速力は機体の飛行速度の五倍程度に達し、正しく反応するのが課題で、ましてや回避行動を取るのは困難だった。この攻撃への脆弱性を見て全機ステルス機材にすべきとする主張が有効に映りかねない。空軍はあえて新規生産F-15EXを採用したのだ。
だが、米国で現在も生産中のステルス戦闘機はF-35のみで、同機の運行経費が非常に高くなるとともに問題が解決できないまま山積しているのが現状だ。このため財政を苦しめつつ、ミッションの多くでは出撃させるのが不適となっている。空軍には負担可能な形で戦力を投入する必要があり、ステルス、非ステルス機を今後も適切な形で運用する。
今日の戦闘機で「多任務」として空対空および空対地対応を両立させた機体には特に秀でる任務を設定している。F-15CとF-15EXをステルスF-22と併用することで制空任務が実現し敵機に対応するが、F-15Eならびに限られた範囲だがF-35はともに地上攻撃を専門とする。
F-35を「空のクォーターバック」と呼ぶパイロットが多いが、戦闘空間の制御で搭載する演算処理能力と大幅に高い状況認識能力を使いその他機材の作戦を調整する機能が期待されている。F-15EXでは国旗ピットディスプレイが改良され、F-15C以上の状況認識機能が実現したとの触れ込みだ。とはいえ、機能上は大差ない。
F-15EXは空軍機材で最新鋭となったが、長く続く血統の流れを引き継いでいる。F-15はこれまで48年間にわたり米国他同盟国で供用されてきた。その間に、ドッグファイトの結果で104対ゼロという記録を作り、一機も撃墜されていない。
米国はF-15調達を二十年ほど前にいったん終了したが、同盟国のサウジアラビアやカタールではその後も新規製造機材を調達し、巨額の費用を投入して機能を向上させた。その結果を利用して米国も高性能版F-15の調達を迅速に実施できるようになり、20年間の技術進歩を同盟国の負担で享受するわけだ。その結果、最高水準の第四世代戦闘機となった。
だが、推力が増え、ペイロード、センサーコックピット内他で向上しているがF-15EXは今回のノーザンエッジ演習では大きく不利な状況に追いやられた。高性能とは言うものの、イーグルIIはステルス性能がなく、長距離攻撃の格好の標的となり、空中、地上の双方から狙われた。今日では新鋭電子戦装備を敵防空体制で供用しており、各機のパイロットには過酷な環境となっている。これは新規製造F-15出も例外ではない。
「ノーザンエッジではF-15EXがジャミング環境で機能するかを試し、GPS、レーダー、リンク16にジャミングをかけた」と第85試験評価飛行隊のアーロン・エシュケナジ少佐が述べている。
「そのほかの目標にはEXが第四世代機第五世代機との共同運用がどこまで可能を確かめることがあった。ノーザンエッジでは連日60機以上が飛び、われわれはイーグルIIが配備された想定でどこまで使えるかを確認した。今までのところ、非常にうまく機能している」■
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Air Force's new F-15EX makes dogfighting debut in Alaska war games
Alex Hollings | May 21, 2021
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