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23年度予算で米空軍は大胆な機種整理を提案する模様。あのF-22も一気に退役させるのはNGADが完成に近づいている証拠か。

 F-22 Alaska air-to-air

U.S. AIR FORCE

 

 

軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウン大将の発言を受けて、航空業界に動揺が走っている。発言では空軍がF-22ラプターの処分もいとわないとあり、戦術機材を戦闘機四種類およびしぶとく生き残るA-10攻撃機に絞るとあったためだ。

 

ブラウン大将による戦術部隊構想にはあえて不明瞭な部分がある。戦術部隊構想は空軍全般におよぶ将来の戦力構造編成の最適化をめざしたもので、あえて大規模かつ難問となる課題に触れている。空軍が The War Zoneに対しブラウン発言の「4プラス1」構想の真意を伝えてきた。

 

Military.comのオリアナ・ポーリクがまずこの話題を伝えており、ブラウンは「4機種に絞りたい。正確には4プラス1だ。A-10は当面供用を続けるからね。F-35が柱となり、F-15EX、F-16もしばらくは残る」と述べた。

 

Military.comによればブラウンはF-22に触れていない。またF-15Eストライクイーグルも同様で、この二機種については廃止に向けカウントタウンが始まったようだ。これまで酷使されてきたF-15EにF-15EXが交代し、ラプターの地位は安泰とされ、他の戦闘機で実現できない機能があるとされてきた。ブラウンは、四番目の機種について言及していないが、これが次世代制空機(NGAD)、あるいはその一部としての第六世代戦闘機で、単一機種ではなく「各種システムのシステム」として従来の概念を超えている新機種だろう。

 

その後Breaking Defenseが戦術機種4型式としてブラウン発言にあったのはNGAD、F-15EX、F-16、F-35と伝え、F-22は含まれていないとした。だがこの取材源はF-16後継機種が「6、7、8年後に」登場し、ヴァイパーの役目は「F-35の追加他」が引き継ぐとした。ブラウンも今年2月に新型機構想について初めて述べており、The War Zoneは「完全新型機」がF-16後継機として登場すれば1,763機調達するはずのF-35がもともとはF-16後継機の位置づけだったので営業の発生は必至と見ている。

 

さらにDefense Oneがブラウンの真意はNGADをF-22に交代させることと報じた。

 

空軍報道官はThe War Zoneに対し空軍トップが話題にした四機種はNGAD、F-35、F-15EX、F-16だと確認し、「中短期でA-10が加わる」と述べた。

 

U.S. AIR FORCE

現行の戦術機材 A-10, F-22, F-35, F-15C, F-15E, F-16.

 

ではF-22、F-15Eの全機退役を空軍は考えているのかと問うと、回答は不明瞭だった。「将来の最適機材構成を戦術戦力研究で検討している」とのことだった。

 

空軍報道官アン・ステファネクはAir Force Magazineに「F-22性能改修は今も続けている」とし、「すぐにも同機を退役させる予定はない」と一歩後退した発言をしている。

 

LOCKHEED MARTIN

ロッキード・マーティン構想の無尾翼高速長距離ステルス有人機はNGAD構想の一端。

 

総合すると空軍参謀総長は戦術機材を4機種に統合し、F-22(さらにF-15Eも)の廃止を考えているようだ。

 

ツイッター上で#SaveTheRaptor を出す前に、今回の戦術航空戦力研究は戦術機の最適戦力構造を検討するものであり、並行してコストアセスメント・事業評価(CAPE)があることに留意する必要がある。つまるところ、ブラウンも目標は戦闘機「四機種ぐらい」とA-10としており、A-10は2030年代までの供用を続けるとみられる。また、空軍はF-22の用途廃止は現時点では予定がないとしている。

 

仮に空軍がF-22を廃止すれば、反対意見が生じるのは必至で、議会でこの案を通過させるのが困難となるのはA-10廃止案が繰り返し否決された事例を思い起こさせる。さらに空軍がラプターを使い、第四世代戦闘機の戦力を最大化させるべく努力している中だというのも話を複雑にする要素だ。F-35Aの5機とF-22一機の相互通信機能をステルスのデータリンクでU-2Sドラゴンレイディを介して実証したばかりでもある。

 

ラプター退役となればNGADには大きな重荷にもなる。NGADはF-22退役で空軍戦力に穴があかないように戦力化が急がれる。

 

NGADと呼ばれる機体のうち戦闘機機能を果たすものはF-22と同じ機能さらにそれ以上を実現する必要があり、これ自身に興味をそそるものがある。

 

ラプターは187機で生産終了となり、小規模編成のため戦力面で制約があるのも事実だ。逆に機体維持運用コストが割高になっている。同機の低視認性は今も有効だが、技術が古くなっており、今後の維持もどんどん難しくなってきた。

 

F-22部隊の機齢は低いとはいえ、稼働率が著しく悪い。機体構造に手を入れ供用期間を延ばしたはずのF-22がミッション実施率が低いままになっている。今年早々にも機体構造強化策は135機で完了している。「数十万時間を再塗装に使い、腐食を防ぎ、機体改修・修理を行った」と空軍は発表していた。

 

さらにF-22には常に航続距離不足がついてまわっている。外部燃料タンクを搭載すれば低視認性や性能が著しく低下する。ロシア長距離航空機の侵入を防ぐ北米防空司令部ミッションではこれは問題にはならないが、中国相手の台湾海峡上空対応となれば、F-22の有益性はさらに低くなる。互角の戦力を有する相手との対戦となれば、F-22の攻撃目標地点から数百マイル地点に空中給油機を配備する必要があり、高リスクを覚悟する必要がある。このことはUSAFも認識している。

 

NGADがこうした欠点を克服していることを願うばかりだ。ペイロード拡大、ステルス性の強化、ネットワーク機能拡張、センサー・電子戦装備の拡充、さらに指向性エナジー兵器の搭載などNGADに期待される内容は多岐にわたる。無人機として有人機と同時投入する構想もNGADに期待され、単一の機体ではなく各種装備システムのファミリー構成になるはずだ。飛行中のソフトウェアアップデートもここで効果を上げるはずだ。

 

NGADに関する情報が不足気味のため、意味のある戦術性能情報が判明するまで時間がかかりそうだ。だが、ブラウンやUSAFがF-22退役でNGAD取得を進めるべく予算裏付けに向かえばこれも一気に変わりそうだ。

 

次にF-35が新構想でどんな位置づけになるのかも疑問点だ。空軍上層部から中国の台湾侵攻などハイエンド戦の机上演習でF-35Aが効果を上げなかったとの発言が出ている。ブラウン大将は空軍戦闘機戦力の「主力」とするものの、F-35には厳しい目が改めて向けられている。

 

とはいえF-22退役案は可能性がどこまであるのか。ブラウン大将は戦術航空戦力研究は2023年度予算要求までに完了させたいとし、「FY23予算では重要な決断を迫られる」と今年早くに発言していた。

 

空軍はF-22の姿がなくなった将来を見越しているようだが、これが現実になるまでは長い長い道が控えている。今のところは、戦術航空戦力研究でF-22にどんな影響が出るか不明だし、その他の戦闘機でも同様だ。■

 

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Yes, It's True, The F-22 Isn't In The Air Force Chief's Future Fighter Plans

The Air Force has confirmed it’s looking at a radical reduction in tactical fighter jet types, but that’s easier said than done.

BY THOMAS NEWDICK MAY 13, 2021

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