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B-21はデジタル・トランスフォーメーションの効果をフルに活用した初の大型機になった。従来の機体開発とどこが違うのか。

 

Photo: Courtesy of Northrop Grumman



B-21はデジタル開発から生まれた機体だ。開発ではリスク削減を最大目標とした。ノースロップ・グラマンはデジタル技術を全面応用した設計、試作、製造、テストの各段階を展開した。


B-21が冷戦時のB-1/B-2/B-52と共通するといえば、F-35ライトニングIIが第二次大戦時のPライトニングと同じだというのと同じことになる。


B-2スピリットの登場から30年が経過し、B-21はその間の技術進展を取り入れいれた。ノースロップ・グラマンは最新防空装備であるS-400地対空ミサイルや中国のJ-20ステルス戦闘機に遭遇してもB-21が十分生き残れるようにしている。


B-21は最新デジタル技術から生まれた驚異の機体だ。デジタルで設計、製造、支援の水準が向上した。デジタル開発は空軍にとっても新しい形の調達となった。


「デジタルの三位一体はデジタル技術、アジャイル・ソフトウェア開発、オープンアーキテクチャでステルスの正当後継者だ。軍事技術で次のパラダイムになる」と最近まで空軍で調達業務を仕切ってきたウィル・ローパーが “There is No Spoon: The New Digital Acquisition Reality” (このタイトルは映画マトリックスからとったものだ)と題した2020年の報告書で述べていた。


優れた装備品の実現ではなく、より良いシステムをデジタル技術、管理で構築する、とローパーは述べ、より迅速に設計し、そのまま生産に移し、性能改修が簡単になるとした。これまで次の機体製造まで数十年も間隔が開き、防衛産業はどんどん少なくなる契約案件をめぐり競合してきたが、ローパーは「このままだと中国やロシアに負ける」と警句を鳴らしていた。


デジタルで何が変わったのか


しかし、デジタルの導入で空軍は5年前からこの状況を脱していた。その背景にローパーがいた。デジタルが機体ライフサイクルを可視化し、開発から製造、維持まで各段階の姿が明らかになった。


空軍がデジタルを活用する案件はB-21以外に、NGAD次世代航空優勢機材(トップシークレットの第六世代戦闘機)、A-10の主翼交換、B-52で民生エンジン換装事業、地上配備戦略抑止装備事業(GBSD)があり、後者はノースロップ・グラマンが進めるLGM-30ミニットマンIII大陸間弾道ミサイルに代わる新装備になる。


こうした事業で空軍は従来より短いサイクルでかつ導入可能な価格の実現をめざし、脅威対象の進展の速さに対応しようとする。ノースロップ・グラマンはデジタル・トランスフォーメーションで現実の環境に適合させる形で設計、開発、製造の各段階を統合している。


「エンドユーザーとなる第一線部隊に必要な内容で適正化をめざし、より良い製品をより早くより効率的に生み出します」とノースロップ・グラマンの研究開発部門副社長クリス・ドーターズが語る。「最高の設計を3-Dで実現し、製造技術と組み合わせます。さらに次世代技術で費用対効果が高い解決方法を実現します」


急速に進展する環境で今後も主導権を握るためにはデジタル・トランスフォーメーションは不可欠で、ノースロップ・グラマンのGBSDもB-21レイダーが基礎となっている。


デジタル・トランスフォーメーションで工程はどこまで加速化するのか


B-21レイダーでは重要設計審査が完了してからノースロップ・グラマンは実機を二年未満で完成させた。これがデジタル設計の効果でテスト機材二機をそろえ、初飛行は2022年を予定している。


「空軍の迅速性能実現室(DAF RCO)と当社の関係が差別化を実現しました」とノースロップ・グラマン副社長スティーブ・サリバンが語る。「このウェポンシステムを予定通り実現することが共通目標です。このため問題の早期発見、迅速な行動、決定的な解決方法を共同実施し、問題をつぶして事業の勢いを維持しました」


B-21はDAF RCOが統括する初の大型機開発事例


B-21は従来の大型調達事業と根本的に異なる。これにはノースロップ・グラマンが画期的なデジタルツール、ソリューション各種を大幅に投入したことで技術リスクとコストを低減した効果が大きい。特に重要なのが同社が技術製造開発段階(EMD)からこうしたツールを多用したことだ。


ノースロップ・グラマンはデジタル・トランスフォーメーションにより機体や各機能の統合デジタルモデルを作成し、改良策をリアルタイムで見つけ、モデルに仮想的に応用した。こうした高精密なデジタルモデルの数々は設計、構造、熱工学、電気、飛行制御、機体シグネチャー情報を扱う各部門が共有した。


同社ではこのアプローチをMB(x)と呼び、モデルをもとにしたシステム工学を応用し、モデリングで最適化を求めるシミュレーションを利用し、組織各部門との連絡、連携を強める方法をシステムのライフサイクル全般に応用する。


「このアプローチでは既存のデジタルツールを使い、設計製造維持に役立つ画期的な応用方法を見つけ出し、同時にアジャイルソフトウェア開発、クラウドベースのソフトウェア連携を利用した」とサリバンは語る。「ここから生まれた成果で最大のものがスピードで、効率よく実行に移し、コスト、リスクで大幅な軽減効果は設計から始まり、製造面にも表れています」


B-21のリスク軽減策


B-21ではノースロップ・グラマンはリスクをいかに減らすかをあらゆる場面で強調している。設計、製造、試作、テストのサイクルがすべてデジタル化され同時実施で期間短縮とともに最終形の統合作業での余分な作業が減る。これによりB-21は従来より短期間で第一線配備が実現し、空軍力の整備が経済的に行える。


同社のリスク低減策は統合作業、テスト工程に焦点をあてている。


ノースロップ・グラマンは有人航空機設計センター(フロリダ州メルボルン)を拡張し、B-21の各種サブシステムに現実の稼働状況数々を応用して開発、統合、テストの各段階を進めた。その例としてハードウェアとソフトウェアの統合・テストがあり、モデリングやシミュレーションの各種ツールを使い、各種ミッション環境を再現している。


同社のテスト機材でB-21のハードウェア・ソフトウェアの統合効果を測定している。こうした実証の積み重ねで空軍は同機の初飛行への道のりに一層確信を抱くことになる。


「実機を使わなくても同じシステムを使ったフライトテストで統合機能を確かめることができる」と空軍迅速性能実現室の事業統括官ランドール・ウォールデンが語る。「ここ数カ月で別の実証にも成功している。さらにハードウェア・ソフトウェアの成熟化が進み、実際に良好な作動結果を生んでいる」


結語


ノースロップ・グラマンは国防産業でデジタル・トランスフォーメーションの先頭を走っており、ソフトウェアで定義しハードウェアで実現する方式にモジュラー構造のオープンインターフェイスやアーキテクチャを応用する。各種システムは従来より早く実用化でき、ソフトウェアのアップデートを短期間で実現することで敵陣営の先を行ける。デジタルシステムによりハードウェアは多機能を発揮し、各種ドメインで機能可能になる。デジタル・トランスフォーメーションで国防装備はハードウェアの制約から解放されるだけでなく、ソフトウェアのアップグレードによりさらに進化し、脅威の変化に対応できる。各システムが想定外のミッションに対応可能となる。


空軍グローバル打撃軍団の司令ティモシー・レイ大将も空軍協会主催の2021年仮想航空宇宙サイバー会議でこうした姿勢を評価している。「B-2に新型スタンドオフミサイルを搭載するのに何年もかかるが、B-21はオープンミッションシステムを導入しており数カ月でこれが実現できる」と述べている。■



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The B-21 Raider: A Marvel Of Digital Development


By   BARRY ROSENBERG

on May 05, 2021 at 3:30 PM


コメント

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