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日本が導入開始したばかりのRQ-4グローバルホークを早くも廃止し、新型ステルスISR機材RQ-180運用を開始したい米空軍と、これに反発する米議会の動向に注目だ。

 

An artist's conception of what the so-called RQ-180 stealth drone might look like based on publicly available information.

HANGAR B PRODUCTIONS

 

 

空軍はRQ-4ブロック30全機を今後2年程度以内に処分する案を検討中だ。後継機種として無人機数種類が候補にあり、「敵地侵攻型機」、「第5第6世代性能機」を含むという。RQ-180といわれるステルス新型スパイ機の報道が増える中、実用化が近づくといわれるが、就役済みの可能性もある。

 

これは空軍参謀総長チャールズ・ブラウン大将が2021年5月7日下院歳出委員会で明らかにしたもので、同委員会と上院歳出委員会向けに作成の空軍省文書に追加情報がある。

 

USAF

米空軍の RQ-4 グローバルホーク無人機

 

「既存ISR(情報収集、監視、偵察)機材は競合が激しい空域で残存性がなく、必要な機能を発揮できなくなってきた。こうした従来型機材は第一線から退くべきで、資源は新鋭かつ機能が高いシステムに投じるべきだ。空軍は計算済みリスクを甘受しつつ、これからのより大きなリスクの軽減につとめたい」と文書にある。

 

「例としてRQ-4ブロック30グローバルホークはこれまで及び今日のISRでは不可欠な機材だったが、厳しい環境に対応できない」「空軍はFY21NDAA(国防予算認可法)にあるRQ-4ブロック30の処分をすすめ、かわりに敵地侵攻可能ISR機材の調達をめざす。情報収集では各種システムのファミリーに今後移行し、従来にない形の機材、センサー、民生機材ならびに第5第6世代性能のハイブリッド編成にしていく」

 

2021年度予算で空軍はブロック20、ブロック30のグローバルホーク残存21機全機の廃止を要求していた。ただし、比較的新しいブロック40のRQ-4は保持する。

 

空軍はRQ-4全機退役を以前も試みている。だが議会がこの動きを制してきた。2021年度NDAAでは同型機退役開始について一定条件がそろえば執行猶予が認められており、条件としてISR能力不足が生じないこと、その他正当な理由を議会に説明できることが挙げられている。

 

こうした構想とU-2Sドラゴンレイディ有人スパイ機の関係は不明だ。RQ-4とU-2Sの今後をめぐり二機種が相互に関係している。2021年度NDAAでグローバルホーク処分に猶予が認められればU-2Sも同様の対応となる。

 

USAF

複座TU-2Sドラゴンレイディ練習機が着陸する中で、グローバルホークが地上移動中。カリフォーニア州ビール空軍基地にて

 

ともに全く新しい話ではない。空軍の現有ISR機材各型は大部分がロシアや中国といった今後の厳しい環境に生き残れず、仮にリスク覚悟で進入しても帰還できないことは公然の秘密だ。空軍も「各種システムのシステム」方式で今後のISR要求にこたえていくと数年前から公言している。

 

同時に「侵攻型ISR機能」や「第5第6世代性能」に空軍が触れたのはRQ-180が念頭にあるためだろう。同機の存在は10年前からAviation Weekが明らかにしている。2019年10月に再びAviation Weekが同機が作戦運用に近づいていると報じて、実際にすでに実用化されている可能性もある。2020年11月に同機と思われる機体がモハーベ砂漠上空を飛行する画像がネット上に現れた。(下)

https://aviationweek.com/defense-space/aircraft-propulsion/possible-photo-highly-secret-rq-180-aircraft-surfaces-online

 

RQ-180は米空軍の上空偵察活動で革命を巻き起こす中心といわれ、その機能はISRに限定されない。あらゆる点で同無人機あるいはその派生型は他のステルス機への情報伝達で重要機材となるのは明らかで、空軍が目指す次世代制空機材(NGAD)として開発中なのかもしれない。一方でRQ-170ステルス無人機は戦術用途に特化しておりRQ-180と異なる。

 

RQ-180は空軍だけでなく他部隊のステルス機、非ステルス機含め地上、海上へ中継する機能を有し、共通ミッションコントロールセンター(CMCC)も対象に含むようだ。分散型ネットワーク機能は空軍他各軍で姿を現しつつあり、RQ-180が効果を倍増する役目を果たす存在になる。

 

HANGAR B PRODUCTIONS

RQ-180と言われる機体の想像図。

 

空軍は将来のISR機能として各種機材、性能を組み合わせるとしており、RQ-180のみに依存するわけではない。それでもRQ-4部隊の大部分が来年再来年に姿を消し、新型「侵攻型」機材が登場すると想像するのは困難があり、もう一歩で投入可能な機材がある、あるいは稼働中の機材があるといわなければ、議会も機能不在のリスクが生じないことに納得しないだろう。

 

空軍が目指す高性能ISR機能が今後どのような形で登場するのか、または極秘のうちに稼働しているのかが大いなる関心事だ。議会が空軍案を了承し、ブロック30仕様のグローバルホークが全機退役となるかが見ものだ。■

 


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

 

Global Hawk Drones To Be Retired In Favor Of Secretive Penetrating Spy Aircraft

The Global Hawks cannot survive in highly contested airspace, so the Air Force is doubling down on surveillance assets that can.

BY JOSEPH TREVITHICK MAY 7, 2021

 


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