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風向きが変わってきた。F-35にしびれを切らす民主党議員が生産数削減をちらつかせはじめている。支持派にもさすがにこのままではまずいとの警戒心が生まれている。

  

F-35s in flight

F135の整備遅れ、ソフトウェア問題に議会が忍耐力を試されている。 

Credit: Tech Sgt. Benjamin Mota/U.S. Air Force

 

F-35事業の遅延ぶりに我慢できず、下院有力民主党議員の中に生産数を削減し、ペンタゴンが請求もしていない予算追加を許してきた動きには終止符を打とうという動きが出てきた。

 

ロッキード・マーティンF-35をめぐる問題の山には費用超過、エンジン整備の大量遅延、保守管理システムのあてにならない作動、さらに重要改修の停滞がある。

 

「今後も予測通りの費用削減ができないと、予算は他事業に回し、戦術機材800機の不足発生に対応することになる」とドナルド・ノークロス下院議員(共、ニュージャージー)が下院軍事委員会(HASC)戦術航空地上部隊小委員会委員長としてF-35に関する公聴会で発言している。

 

予算要求規模以上の予算計上を封じる発言を議員が発すること自体が通常ではない。だが、議会は2015年以来F-35調達数を増やし、生産増強を助けてきた。ペンタゴンの2021年度要求は79機だったが、議会が17機追加し、96機になった。議会は2020年度にも20機追加し、計98機にしていた。

 

ジョン・ガラメンディ下院議員(民、カリフォーニア)はHASCの即応体制小委員会委員長として追加調達が整備問題を悪化に導いたと指摘している。

 

「同機事業に予算を回しすぎた。予定通りの性能が実現できていない。ミッション能力が軍基準に達していない。納税者負担で追加予算を投入する選択肢を取ってきた。もう認められない。安易すぎた日々は終わった」

 

ガラメンディ、ノークロス両議員が流れを変えF-35の予算要求拡大の流れにストップをかけねない。ただし、2021年度予算審議でHASCはその他委員会でのF-35追加調達の動きを止めるのに失敗した。

 

同事業に懸念を表明する共和党議員も、公聴会で具体的な対応に言及しなかった。「我が国産業界がF-35維持コストを下げる方策を迅速に実行しないと、反対派が事業に打撃を加えかねない」とHASC即応体制小委員会を率いるダグ・ランボーン議員(共)が述べている。

 

議員も懸念を隠せないのは稼働可能F135エンジンの不足だ。4月8日時点で利用可能エンジンの不足のためF-35の20機が飛行不能だった。「数機は数カ月数か年も飛行できない状態のまま」とF-35統合の責任者デイヴィッド・アバ准将が説明している。「このままだと2025年までに20%の機材がミッション実行不能(NMC)状態になり、2030年に43%に上昇する」

 

F-35事業統括のエリック・フィック中将もアバの見方に同意している。保守監視装備や技術データの納入が遅れており、F135パワーモジュールの修理範囲が拡大していることで、補給処でのエンジン整備が遅れている。

 

米会計検査院(GAO)はペンタゴンがF135パワーモジュールの修理能力拡大を補給処で実現すべく対策を実行中とするものの、当面は稼働可能機体数が焦点になると指摘している。

 

このパワーモジュールの平均修理期間は2020年10月時点で207日と、目標122日を大きく上回っている。そのため2020年末でパワーモジュール65基の修理が終わっておらず、2021年度末からエンジン取り外し件数が増える見込みだ。

 

加えてエンジンコストが増加している。ロット15では3パーセントになる見込みで原因はトルコが共同開発体制からの脱落だ。これはレセプ・タイプ・エルドガン大統領がロシアからS-400対空兵器装備を導入したに端を発する。

 

トルコは高品質部品を低価格で提供してきた。F135メーカーのプラット&ホイットニーはトルコで製造してきた部品188種類を他国に展開する必要に迫られており、米国にも移転される。188種類中の2割を海外で、8割を米国内で調達する。

 

他方でF-35の補給体制に再び急展開が発生している。ペンタゴンはこれまで自動補給情報システム(ALIS)をクラウドベースのネットワークに移転するとし、これを運用データ統合ネットワーク(ODIN)と呼び、2022年までに完了するとしてきた。だが、ペンタゴンはODINへの移行は「戦略的一時停止」とし、2021年度予算が42%削減されたためとした。

 

とはいえF-35共同開発室(JPO)が放置していたわけではない。ロッキード・マーティンはテスト用のODINハードウェアを9月にユマ海兵隊航空基地(アリゾナ)に納入した。ODINベースキットはこれまでのALISより処理速度が速くなり、補給活動での効果増進が期待される。

 

ODINは設置面積や重量がALISハードウェアより小さく、同時にコストは3割低くなる。JPOは今年夏にこれを追加導入する。

 

同時にロッキード・マーティンはALISの性能改修にも取り組んでいる。最新版ではWindows7を10に変更し、サイバーセキュリティも強化した。

 

「ODIN配備が始まるまではALISを使い、フライトラインの整備陣の要望に応える」「JPOとともに四半期ごとにソフトウェア改良を行っており、ユーザーニーズに迅速対応できるようになった」とロッキード・マーティンエアロノーティクス執行副社長グレッグ・アルマーが語っている。

 

遅延を招いているその他要素に技術刷新3(TR-3)とブロック4開発がある。ロッキード・マーティンはTR-3の遅れで60百万ドル分の支払いを受けられなくなった。TR-3では、処理能力の拡張、メモリー、オープンシステムのアーキテクチャアを目指している。同社はサプライヤー側に新型コロナウイルスの影響が出て遅れているという。

 

「主契約企業としてロッキード・マーティンはこの問題に責任を感じており、当社首脳部が直接進展を追っている」(アルマー)

 

ブロック4が遅れているのは年間予算投入に一貫性がないためだ。JPOが重視するのはロット15全機をTR-3仕様で納入し、ロット17ハードウェア仕様を固めることだ「JPOはソフトウェア独立審査チームの提言を受けソフトウェア能力でTR-3とブロック4のサポートを求めている」と同社は解説している。

 

2022年度予算策定では、議会が生産予算削減をちらつかせるのは脅かしに過ぎないとの見方がアナリストにある。その一人Cowen & Coのロマン・シュワイザーは開発段階から低率初期生産に移行した際でも同じような状況があり、研究開発費とともに機体単価の高さが疑惑を呼んだという。

 

「F-35は新たなリスク段階に入った。反対派は文句のつけどころをたくさん手元においている。コスト高や技術面の課題とか。これまで同事業については強気のしせいだったが、これまでより心配の種が増えていることを認めざるを得ない」シュワイザーは投資機関向けニューズレターで書いている。

 

Capital Alpha Partnersのバイロン・キャランによれば立法院議員には故ジョン・マケイン上院議員の精神が伝承されており、公聴会で大規模倉部品事業に厳しい目を向けているのだという。「F-35に対する議会内の環境は変化しており、2023年以降のシナリオでの機体単価、維持コストが焦点になりそうだ」と投資機関向けに書いている。■

 

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US Lawmakers Vow To Limit F-35 Production

 

Lee Hudson April 28, 2021

 




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