アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSスプルーアンス(DDG-111)の乗組員が、2022年6月4日ミッドウェー海戦への敬意を表す式典で、電子攻撃飛行隊(VAQ)133の「ウィザード」所属のEA-18Gグローラー2機がフライバイする中、国歌斉唱し国旗へ敬礼した。US Navy Photo
この記事は、2022年の米海軍トップストーリーを振り返るシリーズの一部。
今年の米海軍はインド太平洋地域でのプレゼンス重視と、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、欧州での継続的な抑止任務の必要性とのバランスを取ろうとした。
ロシアがウクライナ侵攻を続ける中、米第6艦隊の安定したプレゼンスにより、海軍艦艇は今年、域内全体でNATOや他のヨーロッパ同盟国と演習や作戦行動を行った。
また、今年は戦争の影響もあり、中東での空母運用と一線を画す年となった。
新型空母USSジェラルド・R・フォード Gerald R. Ford(CVN-78)は、初の運用ストレステストに出港し、搭載する新システムを駆使し大西洋全域の同盟国やパートナーと訓練を行い、初めて海外寄港した。
整備面では、海軍は依然として潜水艦整備の滞りに苦労しており、ヴァージニア州ニューポートニューズ造船所ではUSSジョージ・ワシントン(CVN-73)の供用期間中燃料補給とオーバーホールは予定より19ヶ月近く遅れている。
ニミッツ級空母USSカール・ヴィンソン(CVN-70)とUSSニミッツ(CVN-68)が2022年2月13日に太平洋を航行した。米海軍写真
インド太平洋
海軍は今年もインド太平洋地域で空母プレゼンスを維持した。
2021年初め、USSカール・ヴィンソン(CVN-70)は西太平洋で活動していた。同空母は、海軍向けF-35CライトニングII共用打撃戦闘機とCMV-22Bオスプレイを搭載した第5世代空母航空団として、インド太平洋へ展開した。
1月下旬に南シナ海での作戦行動中、ヴィンソン搭載の航空団のF-35Cがランプストライクで甲板端に乗り上げた。パイロットは無事脱出し、その後、海軍の引き揚げ作業員が南シナ海でF-35Cを回収した。
「事故が起こったとき、我々は着陸する必要のある航空機を追加空輸していた。そのため、訓練が再開できた。ワイヤー4本をすべて交換しなければならず、飛行甲板の全員(航空団員も含めて)が緊急事態に対応するのを見て、畏敬の念を覚えた。4本のワイヤーをすべて交換しなければならなかったからだ。私たちは、着陸区域の異物除去のために、飛行甲板から物を拾い上げなければなりませんでした」と当時国防関係者がUSNI Newsに述べていた。
一方、USSエイブラハム・リンカン(CVN-72)は1月上旬、米海兵隊F-35Cと海軍CMV-22Bオスプレイ航空隊とインド太平洋に展開した。約1カ月間、米海軍は2個空母打撃群を米第7艦隊で活動させた。
リンカンは派遣期間中、主に第7艦隊で活動し、日本やフィリピンと演習した。また、7月にはハワイ沖で2年に1度の環太平洋合同演習に参加した。
海軍の前方展開空母、USSロナルド・レーガン(CVN-76)も、5月から8月にかけ春のパトロールと今秋のパトロールでインド太平洋で活動した。
ナンシー・ペロシ下院議長が台湾訪問し、中国が非難を浴びせた際、レーガンは台湾近海に展開していた。当時は、USSトリポリTripoli(LHA-7)も台湾付近で活動していた
USSトリポリ(LHA-7)は、2022年4月7日、カリフォルニア州ノースアイランド海軍航空基地を出発した。 US Navy Photo
トリポリは5月に初出発し、F-35BライトニングII共用攻撃戦闘機を搭載した「ライトニング空母」または「強襲揚陸艦空母」コンセプトをテストした。
「ある日はF-35Bを飛行甲板に、ある日はMV-22を、またある日は海兵隊を上陸させることができます」。米第7艦隊司令官カール・トーマス中将 Vice Adm. Karl Thomasは10月、強襲揚陸艦の試験コンセプトについて、「汎用性が非常に高い装備で、第5世代戦闘機を14機搭載している。各機は信じられないほど高性能なセンサーだ」と述べた。「まだ実験段階だが強襲揚陸艦をフルサイズ空母とどう統合するのか、試してみたかった」と述べた。
トリポリは、マキンアイランド水陸両用準備集団が米第7艦隊で活動を開始した11月末に7ヶ月の派遣から帰還した。12月中旬にはニミッツ空母打撃群が責任範囲に展開した。
また、台湾海峡通過や南シナ海で航行の自由作戦を継続し、中国から批判を受けた。
2022年3月25日、ニミッツ級航空母艦USSハリー・S・トルーマン(CVN-75)の飛行甲板でレンジファインダーを覗く、 US Navy Photo
ヨーロッパ
2021年末、ロイド・オースティン国防長官は、ロシアがウクライナ国境沿いに部隊を集結させたため、USSハリー・S・トルーマン空母打撃群に米中央軍ではなく、地中海にとどまるよう命じた。それ以来、米海軍は米第6艦隊に一貫して空母を配備している。
トルーマン(CVN-75)は8カ月間、地中海全域で運用された。USNI Newsによると、トルーマンは、米欧州軍司令部での米空母の連続運用で過去20年の最長となった。
ロシアが2月末にウクライナへの侵攻を開始した際も、同空母は駐留を継続した。トルーマン空母航空団は展開中、NATOとの任務のため、1日に80~90回出撃することもあった。
8月、ジョージ・H・W・ブッシュ空母打撃群は、トルーマン CSGが帰投できるよう、米第 6 艦隊担当水域に移動した。それ以来、ブッシュ (CVN-77)は、同地域で活動している。
2022 年、トルーマン は 2 回、ブッシュ は 1 回、NATO 指揮下に入った。1月にトルーマンが初めてNATOの指揮下に入り、冷戦後初めてNATOが米空母の指揮を執った。
地中海での一貫した空母のプレゼンスに加え、キアサージ水陸両用待機群は2022年の大半、米第6艦隊全域でも活動した。
USSキアサージ Kearsarge(LHD-3)とUSSガンストン・ホール Gunston Hall(LSD-44)は、6月にバルト海でBALTOPS 2022に参加し、NATO諸国やその他協力国に加わった。一方、USSアーリントン Arlington(LPD-24)は、4月にギリシャ海軍と訓練し、6月には米アフリカ司令部のアフリカンライオン2022演習に参加した。
USSジェラルド・R・フォード(CVN78)は、ジェラルド・R・フォード空母打撃群の一員として、ルイス・クラーク級ドライ貨物船USNSメドガー・エヴァーズ(T-AKE-13)と洋上補給した(2022年11月2日)。米海軍写真US Navy Photo
大西洋
今年はUSSジェラルド・R・フォード(CVN-78)の新しいシステムと技術を運用面で強調する最初のチャンスとなった。
フォードは10月初旬にバージニア州ノーフォーク海軍基地を出発し、シェイクダウンクルーズを行い、ハリファックス(ノバスコシア州)とポーツマス(イギリス)に初めて海外寄港した。
第12空母打撃群司令官グレゴリー・ハフマン少将Rear Adm. Gregory Huffmanは、10月にフォードに乗艦し、USNI News取材に応じ、「これは、ほぼ全機体制の航空団が打撃群と一緒に働くチャンスだ」と語った。
「同盟国協力国と、フォードが新しい能力でどのように各艦船と相互作用できるのか、そして全体的な観点からどのように戦術が変わるのかについて、理解することができます。そのため、新技術を探求し、そこからどのような作戦を展開できるかを見極めたい」。
フォードは秋に東部大西洋でカナダ、デンマーク、ドイツ、スペイン、フランス、オランダ艦船と一緒にシルバーウォルバイン演習に参加した。
2019年9月27日、乾ドックを離れるUSSジョージ・ワシントン(CVN-73)。HII Photo
艦艇整備
海軍は、空母と潜水艦の両方でメンテナンス作業の遅れを取り戻そうとした。
2023年度予算案では、USSジョージ・ワシントン(CVN-73)の中間核燃料補給と複合オーバーホールを2023年3月まで延長するとある。現在、HIIのニューポートニューズ造船で行われているこのオーバーホールは、当初は2021年8月に終了の予定だった。
同空母は2017年8月に初めてRCOHに入った。RCOH遅延のニュースに続き、乗組員の自殺が発生した。海軍によると、2019年以降、ジョージ・ワシントン乗組員6名が自殺しており、当局は7人目の乗組員の死を自殺と断定している。
一方、海軍当局は潜水艦整備の滞りを嘆いている。
海軍海洋システムズ本部NAVSEAによると、過去10年間、海軍の攻撃型潜水艦で予定通りに保守点検を終えたのは3分の1以下のみだという。
NAVSEAのビル・ガリニス中将Vice Adm. Bill Galinisは9月の会議で、「潜水艦の稼働率、特にヴァージニア級で工数が大幅に増えている」と述べた。「理由を理解するために深掘りしている。継続的なプロセスだ」。
11月、攻撃型潜水艦プログラムのエグゼクティブオフィサー、ジョナサン・ラッカー少将Rear Adm. Jonathan Ruckeは攻撃型潜水艦50隻のうち18隻がメンテナンス中あるいはヤードに入るのを待っていると述べた。
2000年当時、米海軍は攻撃型潜水艦の保守を年間12隻分(平均 200日間)開始していた。現在では、450日から700日程度のメンテナンスが年間5回程度行われている。
「作戦サイクルが長くなったのは良い。しかし、艦艇が入港すると、より緊張した状態になり、準備が十分ではありません」と、ラッカー少将は年次海軍潜水艦連盟シンポジウムで述べている。
ラッカー少将によれば、攻撃型潜水艦のメンテナンス期間中に行われる作業の約30%は予定外のもので、これが滞留を助長しているという。また、海軍が資材を十分に事前購入していないことも問題だ。
ラッカー少将によると、2026年までに、海軍は整備期間が始まるまでに資材90〜95%のを事前確保したいとしている。だが実際は約40〜50パーセントの資材を揃えている。
海軍は2019年度に平均1,500~1,600日の整備遅延が発生し、2022年度に約1,100日にまで引き下げたと、ラッカー少将は述べている。海軍は、2026年度に700日にまで減少すると予想している。■
Top Stories 2022: U.S. Navy Operations - USNI News
December 21, 2022 5:12 PM
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