Credit: Brian Everstine
米空軍とノースロップ・グラマンは12月2日、次世代のステルス、すなわち冷戦後に太平洋の広大な域内で起こりうる紛争に新たに焦点を合わせ作られた新しい戦略爆撃機を世界に発表した。
B-21レイダーは、前身のB-2から約34年後に同社の秘密施設プラント42でロールアウトされ、同社のステルス全翼機を進化させたものである。同機は新世代の低観測性技術を持っており、B-2よりも軽い塗装で、細長い翼と低くなった空気取り入れ口が、敵の防空網も突破するステルス性に貢献していると、ロイド・オースティン国防長官は述べた。
オースティンは、この機体のため建設された新しい機密格納庫外での演説で、「50年にわたる低観測技術の進歩がこの機体に注がれており、最も高度な防空システムでさえ、上空のB-21を発見するのに苦労するだろう」と述べた。
Credit: U.S. Air Force
今回の式典は、ノースロップ・グラマンが長距離スタンドオフ爆撃機の契約を受注し約7年後に行われた。ノースロップCEOであるKathy Wardenによると、契約締結以来、同社はパームデールのスタッフを倍増させ、生産の拡大につれ、特別アクセスプログラム資格を持つ労働者を雇用し続ける計画だという。 爆撃機は現在、同社収益の約10%を占めており、2023年まで安定的に推移し、その後、時間とともに増加する。
ウォーデンCEOは、イベント前に格納庫内でまだ覆われていないB-21の前で、空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウン・ジュニア大将、空軍調達部長アンドリュー・ハンターと登場した。同爆撃機は、空軍の要求を満たす航空機に到達するため、何千もの設計を繰り返した結果と彼女は言った。
ブラウン大将によると、空軍は現在もB-21を100機購入する目標で、2020年代半ばに納入が開始される。B-2やB-1Bの後継機として、近代化されたB-52と並ぶ爆撃機の「基幹」となる予定だ。式典の国歌斉唱では、B-52、B-1、B-2の順に観客席の上空を飛行した。
空軍とノースロップ・グラマンは、テストにデジタル方式を使うことが多くなっており、空軍はテストプログラムの迅速な進展に期待している。
ハンターによると、このプログラムは、一機約6億ドルというコスト目標にまだ達していない。比較的低価格を維持することは、このプログラムの必要条件であり、国防総省の国家防衛戦略で要求される艦隊の規模に到達するために必要である。
「B-21レイダーで見られるのは、インド太平洋戦域や、空軍が活動する必要がある世界のあらゆる場所で任務を遂行し、統合軍が必要とする能力を提供することができる長距離貫通能力の実戦投入です」と、ハンターは言います。
オースティンは、B-21の航続距離を強調した。前線基地を必要とせず、世界のあらゆる場所を攻撃できる。また、信頼性が高く、より簡単にアップグレードできる設計だ。
「B-21は30年以上ぶりの戦略爆撃機で、今日および将来にわたりアメリカの抑止力を強化する先進能力を構築する省の長期的なコミットメントの証」とオースティンは言う。
ノースロップ・グラマンの関係者は、2023年初飛行に向け、航空機のタキシングやシステムの電源投入など、格納庫外でのテストがまもなく始まるので、このタイミングでのロールアウトになったと述べている。
より深く、より広くなった機体
B-21は、B-2に続き、巡航効率を高める大きなスパンを持つ全翼機レイアウトを採用した。これにより、ステルス性を低下させる高い表面勾配を使わず、大きな内部容積を確保できた。また、全翼機であるため垂直尾翼がなく操縦性がよく、エンジンの吸排気も下から遮蔽できるため、悲探知性を最小限に抑える。
B-21は胴体部分が深く広く、エンジンも高度に統合されており、B-2の特徴である鋸歯状の後縁がない。このため、B-2に先立つ1979~80年の先進戦術爆撃機(ATB)コンセプトに近い機体構成になっている。
設計では、揚力と重量をスパン全体に分散させて構造を軽量化しつつ、高い揚抗比(L/D)を実現した。より細長いアウトボード翼型は、空力バランスを保ちつつ、L/Dに大きく寄与している。スイープ角は、B-2の33度よりやや浅いようだが、遷音速性能のために選択されたようだ。
インレットは胴体上面に対しほぼ平行で、B-2より前方に配置されているようだ。これは、レーダーシグネチャーの低さとインレットリカバリーの高さを両立させる設計と思われる。深く凹んだインレットは、B-と同様のダクト形状をしているように見える。
ロールアウト中に、各インレット内に垂直ベーンがあることを示すものがあった。これは、低観察性のためか、または、両側のエンジンに供給するためにインレットフローを分割するためかは、不明。翼幅と機体形状から、エンジン4基に十分な幅がある機体であることがわかる。
B-21の構成には、ノースロップ・グラマンが20年前に行った空軍研究研究本部のセンサークラフト・プロジェクト(将来のステルス性、高高度無人監視プラットフォームの技術開発)の影響もあるのかもしれない。
高高度設計が中心だが、おそらくRQ-180無人航空機システム開発から得た教訓は、ノースロップグラマンがB-2の設計中に遭遇した空力弾性問題に対する新しい解決策に役立ったかもしれない。特に低高度と高速度における問題のため、同社はB-2の後縁をW型に再設計せざるを得なかった。
B-2では、高速低空での突風応答を減衰させるため必要な制御面の運動によって、空力弾性負荷が悪化してしまった。単純化されたATB原型では、翼曲げモードの形状は、後縁のクランクでほぼ正確に翼を2等分する曲線だった。これをW後縁の追加で修正し、機内エレボンのスペースを確保した。
ATBのようなB-21の外観は、アウトボード中央制御面(スプリット・ラダーとエレボン)に依存しているようで、最初の曲げモードが翼を二分する位置よりも前方に圧力中心がある可能性がある。新しい制御戦略と重量の再配分で、ノースロップ・グラマンは、翼のトレーリング・エッジ・ノッチ内側に余分な制御装置を追加せず、この単純な構成に戻ることができたのだろう。
新型機はB-2のような鷹の形ではないが、横から見ると全体的な外観は、B-21の設計者がB-2に続いて、空力性能のためのキャンバーと低レーダー断面に必要な鋭い進入角を組み合わせた層流翼形状を使用したことを物語っている。
インレットを翼上部の揚力流れ場に埋め込むという明らかな欠点を克服するため、設計者は計算流体力学を駆使し、インレット前方とナセル内部の様々な超臨界翼面を融合させたようだ。
インレットを前方配置することは、遷音速巡航飛行において局所的な超音速流領域に位置するため、難しい課題だ。流れは翼の前縁で超音速まで拡大した後、インレットに入る前に亜音速へ再圧縮される。
Credit: Brian Everstine
目視での確認は難しいが、B-21の深く凹んだインレットは、上部カウル上で超音速的に流れを加速し、その後再圧縮してアウトボード翼に伸びる圧縮領域の一部となる形状であるようだ。B-2同様に、インレットの存在は、B-21の胴体や中盤以降の翼上面のデザインに強い影響を及ぼしているようだ。
B-21の新機能
12月2日のノースロップグラマンB-21レイダーのロールアウトは、新しいステルス爆撃機の外観を初めて公開した。防衛エディターのスティーブ・トリンブルは、このB-21の米空軍の画像をノースロップのB-2スピリット同様の角度から撮影した画像と比較し、4つの重要な違いを発見した:浅い、涙形の入口、再設計されたコックピットの窓と狭い胴体の王冠、翼幅に対する広く深い胴体、および各主脚に2輪対B-2の4輪。■
Northrop, U.S. Air Force Roll Out the B-21 Raider | Aviation Week Network
Brian Everstine Guy Norris Steve Trimble Graham Warwick December 03, 2022
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