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ドイツ連邦軍の新正式アサルトライフルHK416に注目

 HK416 Finally Looks Set To Become Germany’s Next Service Rifle

Heckler and Koch

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ヘックラー&コッホは、最初の不意打ちの敗北を経てドイツの次期標準アサルトライフルを供給する再コンペティションに勝った

 

 

イツ政府は、連邦軍(Bundeswehr)に新型標準ライフル銃を提供する重要な一歩を踏み出した。2024年より、ドイツ軍はG36ライフルを、ヘックラー&コッホが製造するNATO標準の5.56x45mm弾を使うHK416 A8に交換し始める。銃器メーカー、ヘーネルC.G.Haenelの最初の契約締結が、法的問題でキャンセルされ2年後となる。

 ドイツ連邦国防省は12月14日、連邦議会予算委員会が、ドイツ連邦軍アサルトライフルシステム(System Sturmgewehr Bundeswehr)の初期資金を承認したと発表した。ドイツ当局によると、総コスト約2億900万ユーロ(本稿執筆時の為替レートでは2億2200万ドル弱)で、HK416 A8ライフル計11万8718丁を購入する。

 

標準装備のG36ライフルを持つドイツ軍メンバー。 Bundeswehr

 

 

 上記金額に、スペアパーツやアクセサリー、サポートサービスなどが含まれているかは不明である。3月にドイツのSoldat Und Technik発表のレポートによれば、ヘックラー&コッホは約2億7330万ユーロ(現在の為替レートで約2億9000万円)相当の契約となる見込みとあった。

 HK416シリーズは、米国が設計したAR-15/M16のパターンを継承しているが、アクションのサイクルにいわゆるダイレクト・インピンジメントではなく、物理的なガスピストンを使用している点が大きく異なる。ダイレクト・インピンジメントは、発射時に銃身から吸い上げた推進ガスを直接銃の内部動作に送り込む方式であり、これに対しガスピストン方式は、発射時に銃身から吸い上げた推進ガスを銃の内部動作に直接送り込む方式だ。ガスピストン方式では、ガスや粒子状物質が直接メインアクションに吹き込まれず、表面に堆積しにくく、信頼性の面で有利だ。その代わり、推進ガスを使用し、機械的なピストンシステムを介しボルトを循環させる。

 HK416シリーズは、2000年代初頭に原型が登場して以来、米国の特殊作戦部隊や米国海兵隊をはじめ、世界中で非常に高い人気を博している。2011年、アルカイダ創設者ウサマ・ビン・ラディンの殺害につながった強襲作戦でSEALチーム6が採用したことで、一般市民も含め人気と認知度が大きく向上した。

 ドイツ連邦軍が今後導入するHK416 A8ライフルの正確な構成も不明だ。ドイツ国防省が昨日の発表とあわせ公開した写真を含め、これまでに公開されたA8の写真は、ヘックラー&コッホの現行世代HK416ライフルに標準装備されているハンドガードと著しく異なっており、米国標準のピカティニー・アクセサリー・レールとヘックラー&コッホ独自のHKey取り付けシステムを利用した取り付けポイントの両方を備えていることが確認されている。

 

 

A closeup of the HK416 A8's handguard. Heckler & Koch

G95(HK416 A7)ライフルを持つドイツの特殊部隊隊員。Bundeswehr

 

 国防省発表の写真に見られるハンドガードは、ドイツの特殊作戦部隊が運用するHK416 A7ライフルと類似している。ドイツ軍では、HK416 A7はG95と呼ばれ、新型A8はG95A1と呼ばれると報じられている。

 Soldat Und Techniks3月号の記事では、Bundeswehr Assault Rifle Systemの完成品には16.5インチと14インチの銃身を持つバージョンがあり、後者はG95KA1と呼称されるとある。16.5インチのサブバリエーションの左側を示す写真では、ハンドガード後部の外側にラッチがあり、ハンドガードを迅速に取り外し銃身を素早く交換できると示唆されている。2017年の初回入札には、選定された銃の長銃身と短銃身のバージョンを交換可能にする要件が含まれていた。

14.5インチバレルを装備したHK416 A8。Heckler & Koch

 

HK416 A8のハンドガード左側面後部に見られるラッチのクローズアップ。クイックチェンジハンドガード&バレルシステムの一部と思われる。 Heckler & Koch

 

 

ドイツ軍で供用中のA7ライフルも、クイックデタッチ式リアサイトとバレルに固定されたフリップアップ式フロントサイトで構成しアイアンサイトを備えていたが、A8では後者が廃止されたようだ。ドイツ連邦軍は2021年10月、1~4倍の調整式光学サイト「ELCAN SpecterDR」を新型ライフルすべてに標準装備すると別途発表している。

 これら以外にも、A8新型は銃身にバヨネットラグを装備し、初期型と異なるスタイルのピストルグリップを持ち、スライド式バットストックに調整可能なチークレストが装着されている。また、G95とあわせすでにドイツ軍で使用中の新型のHK416ポリマー製マガジンを装着している様子も公開されている。

 興味深いことに、A8はAR-15/M16派生型と異なり、G36や新型HK433などヘックラー&コッホのその他ライフルや、MP5サブマシンガンなどに見られる両利き用のファイアセレクターレバー構成になっている。これは、A7で初めて導入されたと思われる機能だ。

HK416 A8のファイヤーセレクターレバーをクローズアップ。Heckler & Koch

AR-15/M16スタイルのファイアセレクターレバーを含む、旧型HK416 A5の様々な特徴を示すパンフレットの注釈付き写真。Heckler & Koch

 

 

ドイツ軍の新型HK416 A8がどんな構成になるかはともかく、購入資金が承認され、2024年に配備開始する計画は、G36の最終的な置き換えに向けた努力の重要な進展となる。1990年代半ばにドイツ軍に採用されたG36は、長年にわたり批判にさらされ、ユーザー満足度が低いという報告が出ていた。特に、炎天下での長時間使用や急激な温度変化による命中精度の低下が指摘されている。ドイツ当局はこの問題を認めつつも、「これまで部隊に危険な事態は発生していない」と主張している。

 2017年に初めて発表されて以来、Bundeswehr Assault Rifle Systemの後継装備への取り組みは、ある種の武勇伝と化している。ドイツ国防省発表では、「2021年春に選定決定がなされていたが、落札者の決定での審査手続きにより契約締結が遅れた」との表現で、そのことに間接的に触れている。

 落札したのは、同じくドイツの銃器メーカーC.G.ヘーネルで、2020年9月のBundeswehr Assault Rifle System入札で当初落札し、当時は驚きの選択と見られていた。へーネルの提案はガスピストン作動方式を用いたAR-15/M16の派生モデルMK556だった。

採用取り消しとなったC.G.ヘーネルのMK556. C.G. Haenel

 

 しかし、MK556とその関連設計がヘックラー&コッホの特許を侵害しているとの疑惑が浮上し、ドイツ当局は2020年10月にヘーネル契約を取り消した。その後、ドイツ当局は翌年、ヘックラー&コッホ案を選定し、「提供物の分析を見直した結果、ヘーネル社提案は 『経済的に劣る』と判断された」としている。特許問題に直接触れていないようだ。その後、決定を覆そうとしたヘーネルの訴えをドイツ裁判所が6月に却下している。

 これでようやく、2024年からドイツ連邦軍に新しいHK416 A8サービスライフルを手に入れる道が開けたようだ。■

 


HK416 Finally Looks Set To Become Germany's Next Service Rifle

 

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED DEC 16, 2022 4:19 PM

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