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ウクライナに展開するペイトリオットミサイル陣地をロシアはこう狙う(はず)---ペイトリオットをさらに防衛する必要が生じる

 

Lockheed Martin


ウクライナでペイトリオット防空システムは脅威に直面するはずだが、撃破が厳しい目標であることに変わりはない

 

 

シアが水曜日に、米国がウクライナに送るペイトリオット地対空ミサイルシステムを標的にすると脅し、ウクライナでこれらのシステムを配備した際の脆弱性へ懸念する声が上がっている。

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、バイデン政権がウクライナにペイトリオットを輸送する計画に署名しそうとの報道に対し、「ペイトリオットは標的になる」と水曜日に述べた。

 ペイトリオットシステムは、古いタイプの迎撃ミサイルとされるが、現在弾道ミサイル防衛能力をほぼ持たないウクライナにとって大きな恩恵となることから、ロシアのターゲットリストの上位に位置する可能性が非常に高い。イランが数百発の短距離弾道ミサイルをロシアに輸送すれば、ペイトリオット対弾道ミサイル能力の獲得が切実となる。イランミサイルの出荷のタイミングはまだ不明だが、いつ起こるかわからず、全く実現しないこともあり得る。

 それ以上に、ペイトリオットは、巡航ミサイル、航空機、ドローンなど空気を吹き込む脅威への対抗を迫られているウクライナの長距離空中監視・防空能力を、供用中のソ連時代のシステムと比べ大きくアップグレードすることになる。ロシアは現状でも既存のウクライナ防空軍に苦慮しているのです。

 しかし、ペイトリオットは多くのスペースを占め、運用に多くの兵力を必要とする。また、強い放射線を出すレーダーをツ使うため、ロシアは信号情報システム、例えばIL-20「クート」スパイ機で探知し地理的位置を特定できる。そのため、ロシアの各種兵器に対し脆弱となる可能性がある。現在使用中の兵器は、ペイトリオットがこれまで防御する必要がなかったものだ。

 

2022年4月10日、ポーランドで日没時に待機する第7防空砲兵連隊第5大隊の米国製ペイトリオットミサイル砲台 (U.S. Army photo by Sgt. 1st Class Christopher Smith)

 

 

オクラホマ州フォートシルにある陸軍防空砲兵学校の前校長、デイビッド・シャンク退役陸軍大佐は、The War Zoneに対し、「発射台をフル装備した(6基以上)ペイトリオット砲台1基には、設置に50~60人の兵士、運用と維持に25~30人の兵士が必要」と語っている。「ペイトリオット砲台は約1平方キロメートルの土地を使うので、ロシアのISR(情報、監視、偵察)の影響を受けやすい。レーダーが放射する信号は大きく、最終的にはロシアの信号諜報能力で探知される」。

 典型的なペイトリオット砲台には、AN/MPQ-53またはより高性能なAN/MPQ-65フェーズドアレイレーダーが含まれ、これがロシア攻撃でターゲットになるとシャンクは述べている。

 

AN/MPQ-65レーダーは、潜在的な脅威の検索、検出、追跡、特定を担当する。 (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Christopher Ruano/Released)

 

 「ペイトリオットレーダーを標的とした対レーダーミサイル」が主な攻撃手段になりそうだ。「ペイトリオットレーダーを破壊すれば、システムは役に立たなくなる」。

 Su-35Sフランカーは、Kh-31P長距離対レーダーミサイルで、モジュール交換可能なパッシブレーダーシーカーを備え、ペイトリオットシステムを標的とする設計だ。射程距離は68マイル。射程を160マイルに伸ばしたKh-31PD/PMは、広帯域シーカーを備え、一度に広範囲の対空レーダーをターゲットにできる。ウクライナに設置されたペイトリオット砲台の周辺に防空システムを追加で配列すれば、ロシア空軍にとって格好の標的になる。

Su-35Sのパイロット、アレキサンダーがR-37M、R-77-1、Kh-31Pミサイルで武装したジェット機とともに、ベルベクにて (TV Zvezda)

 

 ロシア空軍がウクライナ領の奥深くまで入りたがらないのを考えれば、キーウ周辺に設置したペイトリオットへの攻撃は、ベラルーシから行う可能性が高い。

 しかし、固定翼機以外にも、モスクワにはペイトリオットを破壊できる手段がある。シギント探知だけでなく、ペイトリオット砲台の設置面積が大きいことから、ロシアの人工衛星や有人・無人の空中の偵察プラットフォームも探知可能だ。また、地上情報源も含め容易に発見できる。いったん発見すれば、ロシアは巡航ミサイルや弾道ミサイル、ドローン(イラン製の対放射線シーカー付きシャヘドを含む)で、Kh-31型よりも長射程からシステム全体を攻撃できる。このした攻撃では、防衛を困難にするため、同時多発的に行われる可能性が高い。

 シャンクによれば、ウクライナのペイトリオット基地は、ある種の無人機を倒すための対無人航空機システム(C-UAS)、ロケット弾、大砲、迫撃砲を倒すための対ロケット・大砲・迫撃砲(C-RAM)能力(敵軍との近接度に応じて適用)、アベンジャー/スティンガーシステムなどの短距離防空システム、長距離自爆ドローンや巡航ミサイルを対抗する国家最新地対空ミサイルシステム(NASAMS)など中距離システムで守られるのとが理想だという。

NASAMS Ukraine CEO Raytheon

NASAMSは、ウクライナに送られるペイトリオット部隊の防御態勢の一部となる可能性がある. (Raytheon/Kongsberg photo)

 

 

また、「最良の防御は、システムの統合ネットワークであり、階層化され、指揮/制御、早期警戒の共有、交戦/識別の権限のために共通のネットワークアーキテクチャで接続されている」とシャンクは述べている。

 しかし、そのためには、電子戦/スペクトル管理のデコンフリクションも必要とシャンクは指摘した。

 これまでのところ、敵に破壊されたペイトリオット砲台は皆無とシャンクは言う。確かに、イエメンやその周辺での紛争では、ペイトリオットが直接の脅威にさらされている。また、無人機やミサイルから防衛体制を敷くイスラエルでさえ、ロシアが保有し、使用中の武器や探知システムに直面していない。

 最近ウクライナに供与された最新の防空システム、例えば米国が供与したNASAMSやドイツが供与したIRIS-T SLM地対空ミサイルシステムが、真価を発揮している。ウクライナ当局によれば、両システムは最近のロシアの大規模なミサイル攻撃で100%の命中率を誇ったという。その真偽はともかく、非常に優れた性能を発揮しているのは間違いない。

 これらのシステムは、ロシアのターゲットリストの上位にあることは間違いない。ペイトリオットのレーダーも同様にシギント探知や対レーダーミサイルの影響を受けやすいものの、ペイトリオットシステムよりも設置面積が小さく、運用に必要な部隊や車両も少なく、機動性も高いとシャンクは言う。

 何層もの防空能力の中に組み込まれたら、非常に手強い存在になるだろう。

 もちろん、ドローンや数千ドルのミサイルを1発数百万ドルのミサイルで撃墜する問題もある。これは今に始まったことではなく、当面はこの撃ち合い比率の低さをどうにかすることはできない。例えばサウジアラビアはこの現実をよく痛感し、これらの兵器が引き起こす破壊と、無対策で敵に与える潜在的な優位性は、迎撃コストよりも大きい。

 だが、これらのことは2022年に気にする必要はなさそうだ。

 米国防空部隊の訓練を監督していたシャンクは、ペイトリオットがウクライナに到着しても、システムの完全操作には、ウクライナ防空部隊が少なくとも1〜2ヶ月の「専用の実地訓練」を受ける必要があると述べている。

 いずれにせよ、ペイトリオットがウクライナに到着すれば、ロシアにとっては戦術的にも宣伝的にも最高のターゲットとなり、ペイトリオットのシステムはこれまでにない各種脅威で試されるそうだ。■

 

Patriot Missile Batteries In Ukraine Would Be Top Targets For Russia

 

BYHOWARD ALTMAN, TYLER ROGOWAY|PUBLISHED DEC 14, 2022 8:43 PM

THE WAR ZONE

 


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