中国スパイにより米国の先進技術多数が盗まれてきてきた可能性が浮上
パラダイムを一変する深部貫通弾、極超音速兵器飛行を可能にする硬化耐熱ナノ複合材料、垂直離着陸ドローン、新世代の潜水艦「静粛」技術はすべて、将来の米国兵器システムにとって極めて重要かつ、大きなインパクトを与えるブレイクスルー技術だ。
これらの技術革新と科学的探求の分野はすべて、「破壊的」あるいは画期的な技術の発見と開発に関わり、権威ある米国のロスアラモス国立研究所でここ数十年に大きく注目されたものだ。しかし、端的に言えば、こうした重要分野における米国主導の技術的進歩の多くが、中国スパイによって盗まれている。
中国のスパイ活動
ロスアラモス研究所における中国のスパイ活動は、民間の防諜調査を受け、今年初めニュースになった。この発見は、中国のサイバー攻撃、スパイ活動、米国の機密軍事技術を「盗む」意図的な取り組みから生じる、懸念され、十分に文書化された問題にさらなる光を当てた。ロスアラモス研究所における中国工作が公にされ、この問題の多くはもちろん知られていたし、より広く理解されるようになったのは確かだ。あまり知られていないが、最も重要なのは、中国が米軍の機密技術に侵入し盗用しているのは、科学的探求を装って衝撃的な技術的発見を学び「盗む」のを目的とした「人材」を開発、採用、成熟させる数十年にわたる入念な作戦の結果である。
戦略情報企業Striderの興味深く、極めて重要なレポート「The Los Alamos Club」では、オープンソース調査を用い、1987年から2021年の間に、ロスアラモスで働いた少なくとも科学者162人が中国に戻り、国内の研究開発プログラムを支援していることを明らかにした。
「うち15人はロスアラモスで正社員として働いており、13人は中国政府の人材プログラムに採用され、中国からの客員研究員や博士号研究員のスポンサーを担当し、ある者は機密研究で米国政府の資金援助を受けた」と、同報告書に書かれている。
Striderの調査結果は、詳細なオープンソース文書に裏付けられており、重要で非常に機密性の高い科学技術の探求を通じて得た科学的専門知識を見つけ、育て、配置し、最終的に活用するという、数十年にわたる大規模かつ意図的な取り組みの存在を明らかにしている。同報告書が調べた科学者の中には、最高機密の制限付きデータと国家安全保障情報へのアクセスを許可する極めて機密性の高い「Qクリアランス」を取得後に中国に帰国した者もいる。
「ストライダー・レポート」は、中国の取り組みが、これまで認識されていた、あるいは一部が疑っていたよりも、はるかに精巧で、長期にわたる、意図的なものであったことを明らかにした。科学的発見を支援する協力の名目で、中国政府とつながる中国人科学者は、ロスアラモス研究所で、重要な技術分野の専門知識を持ち、米国主導の軍事的重要度の高い科学技術革新にアクセス可能な科学者を実質的に追加採用していたことになる。
ストライダー報告書には、ロスアラモスで働いた後に中国に帰国した科学者162人のうち59人が、千人計画 Thousand Talents Program および青年千人計画 Youth Thousand Talents Programと呼ばれる中国の特別な「人材募集プログラム」に参加していたことが明記されている。
ストライダー報告書は、ロスアラモスに「責任」を負わせるものではないと明確に言っているが、調査結果は具体的かつ、詳細で、潜在的に甚大な影響を与える。「報告書は、中国の人材戦略の野心と、世界的な科学協力への西側の取り組みを利用したものである。本報告書は、ロスアラモス国立研究所が、PRCによるロスアラモス元所属者の採用に対し責任を負っている、あるいは加担してきたと主張するものではない」と書いてある。
報告書本文は、特定の科学者や兵器開発の影響力のある分野に関連する具体的内容で埋め尽くされている。90年代を通してロスアラモスで働いた専門家である中国の科学者チェン・シーイー博士Dr. Chen Shiyの研究は、「中国が空気呼吸式極超音速機の研究開発で米国を上回ることを可能にし重要な貢献をした」と報告書は述べている。
ロスアラモスで90年代を過ごした後、シーイーは中国に戻り、南方科技大学(SUSTech)の学長として、ロスアラモスと関係ある研究の採用に成功した。SUSTechは中国政府が出資する大学であり、「中国のスタンフォード」と呼ばれる。
極超音速兵器
こうした中国の取り組みが、どのような影響を与えたのだろうか。今後数年間、どのような影響を与え続けるだろうか。米国の上級兵器開発者は、極超音速兵器の開発で米国はロシアと中国に次ぐ「世界第3位」になったと公言している。米国はこの差を急速に縮め、極超音速兵器の実験、開発、最終的な配備に向け急速な成功を収めているが、中国の極超音速兵器実験が注目され、誇大宣伝されているのは確かである。報告書では、極超音速兵器の分野における米国主導の技術革新について具体的に説明している。この技術革新は、空気呼吸式極超音速機の研究開発など、特定の重要分野で中国が米国を「超える」能力に「重要な貢献をした」。中国の「千人計画」が、極超音速兵器の分野で中国とアメリカの間に「差」をつけるのに大きな役割を果たしたことは、可能性が高いとは言えないまでも、十分にあり得ることだと思われる。
ロスアラモスに18年間在籍していた中国人研究者趙玉生Zhao Yushengの採用が、最も重要なShiyiの動きと報告書は述べている。
ロスアラモスの出版物『核兵器ジャーナル』の2004年版で、趙は超硬質ナノ複合材料研究が「極超音速の高速貫通に非常に有望」と述べ、「弾頭貫通体における超硬質材料は(中略)米国兵器の技術的優位性を著しく高めるだろう」と指摘した、と同レポートは記している。発表の3年後の2004年、趙は中国で 「超厚貫通弾頭 」の国防特許を申請した。
ロスアラモスが行った極超音速兵器研究の主要部分は、極超音速静粛風洞実験に関わり、発射体の空気力学的特性、熱管理、境界層現象を評価した。極超音速兵器は、特殊な耐熱性複合材料で構成し、極超音速で安定した空気境界流を可能にする輪郭で「成形」され、精密誘導と飛行経路軌道を維持する必要があるため、こうした分野は極超音速兵器開発には欠かせない。
例えば、弾丸を取り巻く空気の流れが「乱流」になると、極超音速兵器の周囲に大きな動きと乱れが生じ、不安定になり意図した飛行経路が乱れたり破壊されたりする可能性がある。長年にわたり、兵器開発者にとって最大の課題は、極超音速を実証する能力よりも、飛行経路全体を通じ極超音速を「維持」する能力だった。このため、気流境界層力学と熱管理が大きく関わる。高熱による爆発や破片化を起こさず飛行経路を維持できる材料は、極超音速兵器の成熟における画期的な「触媒」であった可能性がある。ロスアラモス研究所で発表されたZhaoの極超音速飛行用の「超硬」ナノコンポジットに関する発見を中国に持ち帰り、中国が極超音速飛行で飛躍的な優位に立つのに役立った可能性がある。
ドローン
ロスアラモス研究所で働く中国科学者が盗んだ可能性のある重要な技術分野は、ジェットエンジン推進、垂直離陸型ドローン、潜水艦の「静音化」技術に関するものだ。近年、中国の兵器開発者は、第5世代ステルス戦闘機J-20に国産の新型エンジンWS-10 Cを搭載したが、これにはロスアラモスクラブが盗んだ技術がある程度反映されている可能性がある。
垂直離着陸ドローンは、ストライダーがロスアラモスのスパイ行為と関連付ける技術的進歩の分野だ。ヘリコプターのように垂直に離着陸する能力を特徴とする米海軍のドローン「FireScout」などプラットフォームを通じ、米国は長年にわたり、艦載ドローンの展開でリーダー的存在となってきた。滑走路のない過酷地で活動し、空母甲板を必要とせずに海上で離陸するため、ドローンの垂直離陸能力(VTOL)は極めて重要だ。米海軍はこの種の技術を応用し、駆逐艦や円海域戦闘艦にVTOLドローン「FireScout」を配備した。ストライダー報告書によると、2019年に、ロスアラモスとつながりのある中国人科学者が、中国独自のVTOLプロトタイプドローンの製造に協力したとある。
潜水艦の静音化技術も、ロスアラモスの中国人科学者スパイが狙ったもので、太平洋の米海軍に緊急に関連する分野だ。ストライダー報告書は、ロスアラモスの中国人科学者が関与した研究が、新型潜水艦の「騒音低減技術」の開発に不可欠であることが証明されたと説明している。これは、米海軍が海中優位性を維持するために、新しい「静音化」技術を開発し、潜水艦に統合し続ける上で、極めて重要な意味を持つ分野だ。米海軍の攻撃型潜水艦は、トマホークや魚雷などの武器で前方を守る火力に限定されず、リスクの高い敵海域や海岸線を巡回・捜索する秘密偵察拠点として、より本格的に活用されるようになってきたのを考えれば、これは喫緊の課題と言える。
例えば、近年、米海軍はヴァージニア級潜水艦に、攻撃型潜水艦の「ステルス」特性を強化するため、新しいコーティング材料、アンテナ、推進アプリケーションなど一連の静音技術を統合している。これらの重要な技術革新の一部は、中国の潜水艦開発者が盗み、中国の潜水艦に適用されたのだろうか?米海軍の静音化新技術は、7~8年前にヴァージニア級ブロックIIIの試作艦USSサウスダコタに初めて搭載された。その後静音化技術は、米海軍の攻撃型潜水艦全体に統合され続けている。
アップグレードされた潜水艦によって、前方で活動する静かなステルス攻撃潜水艦のグループが、中国の台湾への水陸両用攻撃の開始時に中国の海岸近くで探知されずに魚雷とトマホークで中国艦隊を破壊する可能性がある。これらの海軍技術に関する具体的な内容の多くは、安全保障上の理由で非公開だが、指導層は一般論として公的に引用している。こうした技術の多くは、米海軍の海中支配に大きな意味を持つ。中国が揚陸部隊で侵攻してきた場合、米海軍の海中優勢が台湾を「救う」可能性があるのは、きわめて現実的な話だ。しかし、ストライダー報告書に照らし合わせると、中国もロスアラモスの科学スパイで、これらの「静音化」強化を行っていると思わざるを得ない。
中国の新兵器プラットフォームにある程度証明されているように、中国の潜在的なスパイ行為と「盗み」の事例を詳細に調査した後、ストライダー報告書は、米国のイノベーションセンターを守るため警戒と対策を強化する必要性を呼びかけている。
一つの可能性として、80年代後半から90年代にかけ、中国の脅威は低いと思われていた時期に、中国の指導層は数十年先の未来を見据ていたと考えられる。数十年前に中国は当時、世界の軍事的支配について考え、計画し、追求し、その方向へ意図的に歩みを進めていたのか。この計画と実行は、中国の脅威と中国の世界的野心の範囲に対する理解や認識が、米国内であまり知られていなかったり、理解されていなかったり、認識されていなかった時期に計画されたようだ。
しかし、この課題の範囲に関する認識がより正確に理解されるにつれて、この状況は変わりつつあるように思われる。近年、中国の世界支配の野望は、ペンタゴンの中国に関する報告書多数に引用されているように、いっそう顕著で明確になってきている。 国務省が発表した興味深い論文によると、中国ではよく知られた軍事的民衆融合を通じ支援され、促進されているる可能性を説明している。
「中国共産党は、合法的、非合法的な手段で重要技術を開発し、獲得している。これには、民間企業への投資、人材確保プログラム、学術研究協力の軍事的利益への誘導、強制的な技術移転、情報収集、完全な窃盗などが含まれる」と国務省は述べている。■
How the Decades-Long Chinese Espionage Campaign "Stole" US Military Technology - Warrior Maven
KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN - CENTER FOR MILITARY MODERNIZATION
UPDATED:DEC 9, 2022ORIGINAL:DEC 7, 2022
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.
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