2009年5月28日木曜日

北朝鮮の核実験データを待つアメリカ


U.S. Awaits North Korean Test Results


aviationweek.com 5月27日 

韓国 烏山基地発

北朝鮮による二回目の地下核実験ならびに一連のミサイル試射が今後のトラブルを引き起こすことは明らか、との立場を在韓米軍のトップは取っている。ただし、韓国への攻撃の可能性は小さいと見ている。

【黄海上で衝突?】 想定リストの上部には黄海上の衝突があり、韓国、北朝鮮、中国の漁業利権が絡み合っている。軍事アナリストはまもなくはじまる蟹漁が引火点と指摘。核兵器開発を進める北朝鮮の行動は現政権維持のための戦術的な意味合いが強いと見る向きがある。その他、大きなイベントとなる可能性があるのは弾道ミサイルの追加発射、ミサイル・核技術の輸出拡大、およびサイバー攻撃。

【まだ分析が出来ない】 合衆国は5月25日に起こった核実験の整理で手が回らないのが現状。確実な証拠はマグニチュード4.7の地震計記録しかない。2006年10月の実験時の記録は4.1。確実なデータは実験後4日以上たたないと入手できないが、放射能を帯びたチリが地下実験場から出て日本海上空を漂えばWC-135Wコンスタント・フェニックス機が大気標本を収集できる。同機は第55飛行大隊第45偵察飛行隊(ネブラスカ州オファット空軍基地)の所属。2006年実験の際は分析に3週間以上が必要であった。

【5月25日実験と今後の動向】 情報関係者の一人は今回の実験規模は「2キロトン以下で前回よりも大きいものの予想規模を下回る」と語るが、データ詳細がまだない現在では単なる推察に過ぎないことに注意。また同関係者は「実験は2006年と同じ地下施設で実施されています。実験継続に必要なプルトニウム貯蔵量は十分あると見ています。」と語る。ただ、今回の核爆弾原料がプルトニウムなのかウラニウムなのかはまだ不明。さらに弾道ミサイル発射テストが近々に実施される可能性について「活動は認められるものの、断言するのは困難」と同関係者は話した。

2009年5月27日水曜日

武器輸出を解禁する日本

Japan to Drop Arms Export Ban

aviationweek.com 5月26日

日本は武器三輸出原則を緩和し、最終的には西側防衛産業との統合プロセスが開始となるだろう。長年にわたる国内技術調達方針を変えて、武器開生産の共同開発を解禁する。一括禁止は1976年より続いており、その間に政府はアメリカと弾道ミサイル防衛開発を可能とした経緯はある。同原則は法律の定義がない政策方針であり、政府により変更は可能。テロ支援国家・人権軽視国家・輸出入管理の不十分な国家への武器輸出禁止は継続。武器輸出禁止の終了により日本国内の防衛産業はコスト削減と需要拡大を期待できると日経新聞記事は報じているが、政府筋の発表内容を基にしているのは明らか。

【F-Xへの波及】 次世代戦闘機がコスト低減と技術上の恩恵を受ける最初の例となろう。ゲイツ国防長官は日本政府に対し、ロッキード・マーティンF-35ライトニングの購入を求めていると報道されている。そこで、武器輸出禁止の解除は日本にF-35生産またはその他F-X候補機の生産がしやすくなることを意味する。マクダネル・ダグラスF-4ファントムの後継機として6機種を検討中の日本の購入予定は合計50機。ロッキード・マーティンのF-35およびF-22ラプター、ユーロファイター・タイフーン、ダッソー・ラファール、ボーイングF-15FX およびF/A-18E/Fスーパーホーネットである。米議会はこれより先にロッキード・ラプター輸出の可能性に道を閉ざしている。

【先制攻撃論】 それとは別に日本が平和主義色を薄め、自民党の内部に自衛隊による敵基地攻撃を自衛のため許す提言を出す動きがある。北朝鮮による第二回原子爆弾実験が5月25日にあり、防衛目的の攻撃を容認する政府決定が出やすくなってきた。ただし、この考え方はまだ全面支持されていない。

コメント: 日本国内報道では輸出禁止の「緩和」なのに本記事では「解禁」です。この差はなんでしょうか。記事を読む方は日本も武器輸出が可能となったと理解されるのではないでしょうか。あるいは政府の真意が英語記事と同じであれば国内向けには「温和な」表現しか使っていないことになります。緩和と解禁は同じではないかと思うのですが。

2009年5月25日月曜日

国防総省に巨額の非公表支出支出が見つかった

DOD Pays Billions For Unnamed Contractors
aviationweek.com 5月22日

ペンタゴンは2008年度の「その他支出」のうち総額27億ドルを超える規模を「非公表」の契約先に支出している。国防総省文書ではきわめてまれな事例が同省の契約データベース分析から判明した防衛関連アナリストの言では今回の取引は極秘事項扱いで情報関連とのこと、かつ議会の監督関係者には契約先名称および実施内容の情報が提供されているという。

【その他支出全体の規模】 同年度のその他支出全体はおおよそ70億ドルで、同年度の国防総省関連予算項目の中では8番目の規模となっている。「その他支出」がペンタゴンのトップ20支出項目に入ってきたのはこの10年間ではじめてのこと。非公表業務のうち、大部分の24億ドルがイラク関連の取引行為とされており、残りはアフガニスタン向けである。アナリストは両国関連で千を超える企業体がペンタゴンとの取引のために設立されているという。

【では内容は?】 今回の「非公表」契約先はその他支出の38パーセントを占めただけでなく、この不明企業が合計7,950の取引のうち85パーセントを占める規模であることに注意。文書中に記述が省かれたことに疑いの余地は少ない。契約先の名称が「非公表」ということは秘密のアクションがあったということとアナリストは見る。たとえば、衛星関連の調達を隠蔽することはよくあることらしい。契約先社名が黒塗りされたり、隠されている場合の大多数は契約自体が不成立の状態であることを意味する。具体的な契約内容を公表するよりも、コードを表示するだけの場合もある。しかしながら、ばらばらに表記されている表示内容を組み合わせても、衛星あるいはその関連との関係を示すものは出てこない。また、公表されている内容の中には軍事情報収集活動と重なるものもあるという。2008年度補正予算からペンタゴンは総額49億ドルを情報収集活動に支出済み。
コメント: 要はわからないということですが、相当な規模のプロジェクトが突然その他支出にもぐりこんできたということですね。これまではCIAはじめとするブラック支出がさりげなく、隠されてきたのですが、あまりにも唐突な規模と出現タイミングです。衛星でない情報関連となるとやはり何度も噂される超高速有人偵察機でしょうか。

2009年5月22日金曜日

イタリア陸軍向けICH-47F


Italian Army Signs Deal For CH-47F Chinooks

aviationweek.com 5月14日


アグスタウェストランドはイタリア陸軍向けICH-47Fチヌーク大型ヘリ16機受注分の一号機を2013年に納入する。契約は総額12.2億ドルで5月13日に調印された。契約内容には当初5年間のロジスティック支援および追加オプション購入4機を含む。当初契約は昨年秋に調印の予定であったが、予算不足により延期となっていた。このため、納入予定は一年間遅れることになった。

【配備計画】 チヌーク新造機は陸軍航空隊第一連隊(ローマ近郊ビテルボ)に配備される予定。ICF-47の導入はアフガニスタンでの作戦行動で既存ヘリが消耗しており急いで必要とされている。イタリアは同機を陸軍特殊作戦部隊用(現在派CH-47C+を使用中)にも使いたい意向だったが、この希望は「輸出妥当性」が理由に却下された。その中には空中給油用ブーム、低高度航法レーダーおよび改良型機体防衛装置として指向性赤外線妨害装置(DIRCM)ミサイル用のジャマーが含まれていた。F型の基本構成は特殊部隊用ではないが、イタリアはオプションを評価検討し、ICH-47FにDIRCM用にイタリアのエレットロニカとイスラエルのエルオプが共同開発中のジャマーを後日装備することにしている。

【生産体制】 アグスタウェストランドがICH-47Fの主要契約者となり、システム統合と最終組み立てを同社のベジアーテ工場で行う。ボーイングはフィラデルフィア工場から同機の胴体を供給する。アグスタウェストランドとボーイングはCH-47生産をめぐる提携関係の成立に時間がかかった。その内容は今回の契約内容を超えるもので、フィンメカニカの子会社がCH-47の生産販売で英国含むヨーロッパに加えてモロッコ、リビア、エジプトで権利を有する。

【中古機輸出】 アグスタウェストランドはさらにイタリア陸軍と交渉中で現役使用中のCH-47C+ヘリを改修修理の後、中古機市場へ販売する可能性を模索している。両者で合意が出来ていないのは各機の残存価値に関する点。イタリア陸軍でのCH-47Cの運用は21機までに減ったが、当初の調達合計は40機であった。チヌークの需要は国際的に高いことから、C型は運用機がすぐにでもほしい国や新造F型には手が出ない国から買い手が見つかるだろう。

【トルコも購入か】 トルコも最低10機のチヌーク購入に意欲を示している。同国政府の決定でCH-47Fを米国の海外軍事販売のチャンネルで購入することになれば、ボーイングが担当することになるが、商用契約を選べば、アグスタウェストランドが契約主体となる

コメント: ICHという呼称はイタリア向け機体という意味ではなくImproved Cargo Helicopterの略称です。

2009年5月17日日曜日

NASAの宇宙発電システムがピンチ

Aviationweek 5月11日号より

NASAのプルトニウム238のストックが枯渇している。核兵器製造の副産物として太陽光の利用が困難な範囲で活動する宇宙探査機の発電用に使っており、深宇宙探査の継続のために早急に生産再開が望まれると全国研究協議会は考える。オバマ政権の2010年度予算案でエネルギー省分には30百万ドルでアイダホ州およびテネシー州の原子炉を再稼動させ、宇宙機のラジオアイソトープ熱電発電機(RTGs)用の燃料を確保する案が含まれている。Pu-238は1980年代以降は各処理場で製造されておらず、NASAのロシア側供給先でも貯蔵量が減少している。NASAはすでにPu-238供給不足を織り込んでミッションの規模縮小を開始している。ただ、オバマ予算案の30百万ドルは頭金にすぎない。生産再開の費用は総額で150百万ドルを下らないとの見積もりがある。

2009年5月16日土曜日


Senators Push Panel For 15 More C-17s

aviationweek.com 5月13日


上院議員19名の連名で上院歳出委員会に対し2009年度緊急戦時追加予算案にC-17輸送機の追加発注を含めるように求める動きが出ている。同委員会は定数30名でイラク、アフガニスタンに加えて新型インフル対策として総額853億ドル内容の支出案を5月14日に採択する予定。書簡はバーバラ・ボクサー(民主 カリフォルニア州)とクリストファー・「キット」・ボンド(共和 モンタナ州)両上院議員が起草し、上院に対し追加分として15機のC-17調達に必要な予算を盛り込むよう求めている。C-17はボーイングのロングビーチ工場(カリフォルニア州)で組み立てられており、ボンド議員の選挙区。議会内のボーイング支持勢力は以前の生産中止の動きを何とか阻止してきたが、C-17関連で43州合計3万人の雇用があることを強調している。書簡では輸送需要の増加要因としているのはアフガニスタン国内の作戦の増加に加え、ドイツに新設されたアフリカ軍団に陸軍と海兵隊部隊が増強されること。

【国防長官は生産中止方針】 ゲイツ国防長官はC-17調達は205機で終了としたいと言明している。ゲイツ長官はC-17生産ラインの停止に必要な予算を2010年度予算に計上している

【下院予算にもC-17追加購入】 下院歳出委員会の戦時補正支出法案は総額943億ドルでその中には31億ドルでC-17を8機、C-130を11機調達する内容が盛り込まれている。

コメント: C-17の運用機数が大いに越したことはないのは利用者側の意見でしょう。一方、苦しい財政事情の中で国内を優先するオバマ政権(この内向き姿勢が大きな代償をともなうことになります)が予算捻出のためプロジェクトを整理する方針のため、政界で意見が分かれているのでしょう。一方、わがC-Xの開発が遅れると、C-17の購入あるいはリースというオプションが出てくるのでは。その意味でもC-17生産ラインが本当に終了となるのかここが正念場です。

2009年5月10日日曜日

米空軍2010年度予算の概要


USAF 2010 Request Lacks Major New Initiatives

aviationweek.com  5月7日

米空軍の2010年度予算概算要求総額1,605億ドルは毎回新規プロジェクトを加えてきた例年に比してさびしい内容。C-17およびF-22の生産終了で空軍予算案には新規プロジェクトはわずか二つとなり、439百万ドルでKC-135空中給油機の後継機種選定を再開することと、9.5百万ドルで共用垂直離陸輸送機計画(CVLSP)を開始することのみ。後者は空軍宇宙軍団が核兵器運送の支援およびアンドルース空軍基地で要人輸送任務の支援に使用中のUH-1Nヒューイの後継機。

【予算の全体構造】 2010年度要求額は前年度査定額の1、614億ドルを下回る。ただし、後者は補正予算分を含む。2010年度分には戦闘作戦の追加予算160億ドルを期待。空軍がブルートップラインと称する自由裁量予算総額は約20億ドルの増加で、インフレを考慮すると実質減額とパトリシア・ザロキーウィッツ空軍予算局長は説明。同局長によると今年の空軍予算は人員削減の動きが止まり、来年度は総員331,700名体制となることもあり「均衡がよくとれている」とのこと。

【F-22の将来は未決】 C-17生産ライン閉鎖費用として91百万ドル、F-22生産ラインの閉鎖には64百万ドルが必要としている。ただし、F-22生産設備を「使える」状態で保存するのか、生産を完全に停止するかは未決定。(同上予算局長) 

【ISR機】 概算要求が強調するのが情報収集・監視・偵察(ISR)用機の予算ならびに核兵器体系の維持管理予算。後者は空軍内部で核兵器取り扱いの不祥事が頻発したため。ISR向けにはセンサー開発も含め9億ドルが要求されているとのこと。

【CSAR-X先送り】 次期戦闘捜索救難ヘリ(CSAR-X)調達および次世代爆撃機提案競技は先送りとするとゲイツ国防長官が4月6日に発表ずみ。CSAR-Xの延期でH-60M合計2機とHH-60Gペイブホーク合計95機を追加購入する。

【輸送機】 空軍は共用貨物輸送機(JCA)開発の管理を陸軍から引き受けるが、詳細は未整理。また、C-27J輸送機合計8機を購入する。

2009年5月9日土曜日

ファンタムレイ:ボーイング自社開発UAV



Boeing Unveils Phantom Ray Combat UAS


Aviationweek.com May 8, 2009


無人戦闘航空機ファンタムレイPhantom Rayは中止となったX-45からボーイングが自社資金で開始した短期試作プロジェクト。2010年にホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ州)での初飛行をめざす。ファンタムレイはX-45を単純に復活させるものではない。同機は政府の要求水準に具体的を満足するために作られておらず、他社と競合するものでもない。また、政府による指導監督の対象でもない。ボーイングは飛行実証後に兵器搭載、電子戦、情報収集、偵察、また指向性エネルギー兵器運用含む同機の運用可能性を実証する予定。

【ボーイング戦闘航空機の将来】 2001年に共用打撃戦闘機提案協議をロッキード・マーティンに奪われ、2007年には海軍向けの無人戦闘機システム(UCAS)をノースロップ・グラマンのX-47の前に敗北を喫し、ボーイングは戦術航空機事業の戦略を構築に苦労してきた。セントルイスが戦闘機生産の拠点であり、現在は韓国・サウジアラビア・シンガポール向けにF-15E派生型、米海軍向けにF/A-18E/FスーパーホーネットとEA-18グラウラーを生産中。この先の将来は未定だ。

【ボーイングの目論見】 国防予算が伸び悩む中、ボーイングにとってはファンタムレイ他のプロジェクトで世代機開発に技術陣を従事させる。また、設計スタッフも予算削減で人員削減となっているため従来の方法にとらわれない方法で航空機開発に挑戦せざるを得ない状況だ。海軍は再度提案競技を開催する予定で、おそらくX-47の飛行試験が終了する2013年より後となると見られるが、空母運用の次世代無人ステルス機を開発となる。ボーイングのファンタムレイ開発はその際には大きく生かされるだろう。

【社内開発】 ファンタムレイプロジェクトはボーイング社内では「リブループロジェクトProject Reblue」の呼称で2007年にコンセプトがまとまったもの。本格的開始は2008年6月。今月までは社内でも少数の幹部とエンジニアを除きその存在が秘密となっていた。

【ファンタムワークス】 以前は先端航空機システムズと呼称されていたファンタムワークスが2月に再発足された。旧名称の復活により、試作機製作の伝統も復活するとしている。同部門はこれまで新規プロジェクトの実現、将来技術の先取りをめざしてきた。同社は試作機製作を続け、技術を成熟させることでペンタゴンが今後必要とするニーズにこたえようとする。

【無人機への挑戦】 ファンタムレイはロッキード・マーティンが2007年に発表したポールキャットPolecat 無人機(同社スカンクワークスによるステルス三角翼の技術実証機)と形状がかけ離れているとはいえない。ただ、ポールキャットは三回目の飛行試験で墜落している。両社とも大型無人機市場でのノースロップ・グラマンの優位性に挑戦しようとしており、プレデターとリーパーの開発元のジェネラルアトミックスに対しても同じである。

【X-45を利用】 ファンタムレイの原型X-45Cは合計3機が空軍向け地上配備無人機運用の実証用に発注されていた。完成した一機をファンタムレイとするほか、ボーイングは二号機となるはずだったX-45Cの機体を保管している。ただし、エンジンは売却済みであり、同機はエンジンなしの状態で工場内に残っている。来年初めまでにジェネラルエレクトリックF404-GE-102Dエンジンを装着する予定。X-45の経緯は複雑だ。空軍主導のX-45と海軍の共用無人機(J-CAS)が統合されたものの、長くは続かなかった。空軍の要求水準は敵の防空体制の制圧にありボーイング案がこれに近く、一方で海軍案は長距離情報収集ミッションを空母発進で行うものであり、ノースロップX-47がこの目的にあっていた。空軍は2006年に同計画への予算支出を停止し、共同開発は頓挫。2007年にノースロップが海軍向け実証機製作契約を獲得。空軍が煮え切らない態度を示す一方、国防総省はボーイングの開発作業を支持。

【自動空中給油機能】 また自動空中給油の開発が重要だ。海軍もノースロップX-47にこの機能を追加要求した。原型のX-45機には給油受入装置のスペースが機体左側に確保してあった。ボーイングは開発当初から空中給油機能を計画していた。

写真 。形状が似ているというロッキード・マーティンのPolecat無人機。。原型のX-45B

2009年5月7日木曜日

P-8Aポセイドンの開発状況



Australia To Help Upgrade P-8A Poseidon

Aviationweek.com 5月6日

【オーストラリア国防省の期待】 オーストラリアはボーイングP-8Aポセイドン海上哨戒機購入の第一歩としてアメリカとの協定に基づき同機の改修作業に参画する。先週発表のオーストラリアの国防白書では空軍所属のP-3Cオライオンの後継機として有人機合計8機(ポセイドンが想定)および最大7機の大型無人機(ノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホークを想定)を導入する計画。P-8A改修の第一段階スパイラルワンに加わることで同機の情報を入手でき、オーストラリア産業界にも機会が生まれる。また、P-8A改修に同国の意見が反映される可能性が高まると期待。ただ、同国の負担金額は未発表。同国のP-3Cの退役は2018年の予定。

【2号機】 一方、米海軍向けP-8A二号機T-2はボーイングのレントン工場(ワシントン州)で完成に近づいており、隣接するボーイングフィールドへのフェリーフライトが予定されている。同機はミッションシステムの試験に供され、一号機T-1は4月25日に3時間31分の初飛行に成功しており、二号機とともに海軍のテストプログラムに2010年の第一四半期に加わる予定。T-1は現在ボーイングフィールドでシステム艤装中。

【海軍におけるテスト予定】 T-1がフライトテストを開始するのは9月ごろの予定で、その後三号機T-3も加わり、シアトルを数ヶ月間は拠点とする。これは海軍がボーイングのフライトテスト実施能力をより多く利用してからパタクセントリバー海軍航空基地(メリーランド州)で引渡しを受ける方針にしたため。T-3は兵装システムのテスト機材となり同機の胴体部分はスピリットエアロシステムズ(カンザス州ウィチタ)よりレントンに今月到着の予定。
【構造上の特色】 P-8Aは737-800の胴体部分・尾翼を補強したもの以外にストレッチ型-900の主翼を強化して使う。胴体下部に兵装庫がある。また主翼下部に兵装装着部分があり、主翼の先端はウィングレットではなく、熊手状に傾斜角がついている。

コメント:前段はオーストラリアのかかわり方についてですが、記事の後半の方が情報量が多くなっていますので、オリジナルの表題はふさわしくありません。Aviationweek電子版では記事がよく表題と中身がつりあっていないのでちょっと注意が必要ですね。それにしてもP-8Aは就役期間を通じて改良を重ねていくというのが基本設計思想のようです。わがP-1はどうなのでしょうか。

2009年5月2日土曜日

大統領専用ヘリVH-71は復活できるか


AgustaWestland Pitches VH-71 Compromise

Aviationweek.com 5月1日

ゲイツ国防長官により開発中止と機種選考の仕切りなおしの方向性が示されてしまった次期大統領専用ヘリVH-71についてメーカーのアグスタ・ウェストランドは反論を展開しており、端的に言えばここまで開発が進んでいるのにやり直しはないだろうというもの。第一期契約分のヘリをスクラップにするよりも同社はしかるべく型式証明を取れば機体寿命は10,000時間あり、仕様要求性能の1,500時間を超えていると主張する。ペンタゴンは同機の使用年数は5から10年しかなく配備するのは無駄と考えている。改装のもととなるAW101型はすでにメーカーの言う飛行時間の証明を受けている。さらに、同社によるとこれまでに33億ドルが費やされており、あと35億ドルあれば第一期契約分の機体計19機を納入できると反論する。この経費合計額は当初のVH-71予算案に近いもの。同社はさらに1.5型と呼ぶ性能向上型の構想を持っており、これが具体化すると当初の計画性能を実現できるが、総費用は130億ドルの当初予算以内になるという。同社は先行生産型としては第五号機のVH-71を英国ヨービル工場から納入したところだ。CEOであるジュセッペ・オルシは実施予算は当初の二倍となってしまったが、ヘリ機体に限ると予算超過規模はわずか8パーセントかつ遅延は6ヶ月に留まっていると語り、これは全部設計変更(大規模なものが50件、小規模なものは800件)によるものという。同社の第一期契約分のVH-71機体は予定の9機がすべて完成し、ロッキード・マーティンによる装備等の完成作業を待つ状態となっている。

コメント:おさらいしておくと、老朽化進むVH-3(S-61)の後継機として合計23機を購入しようという計画があり、アグスタ・ウェストランドのEH-101を原型とするVH-71「ケストレル」が採択されていたのですね。ロッキード・マーティンがインテグレーターとなるといっても機体は外国製というのはいろいろ波紋を呼んだ選択であったはずです。その後性能が思ったより出ない割には大幅に予算が膨らんで、という悪い話題しか聞こえてこなかったので、ゲイツ国防長官も大鉈を切ったのでしょう。メーカーとしては層ですか、と引き下がったのでは話にならないので、ここまできてキャンセルはないでしょうと構えているわけですね。4月現在の国防予算案に同機は計上されていないようです。

2009年4月30日木曜日

高高度飛行船実証機の初飛行は本年8月


High-Altitude Airship Demonstrator To Fly in August Aviationweek.com 4月6日

ロッキード・マーティンは今夏に監視用プラットフォームとして飛行船を成層圏で運用するコンセプトを実証する。飛行船は無人で数週間にわたり高高度にとどまることができ、月単位も可能かもしれない。高高度から高感度センサーと通信有効範囲を大きくとることができる。ただ、強風と昼夜間の繰り返しの中で一定位置を維持できるかが問題となる。【実証機HALE-D]  「次の段階は実証機の建造です」(ロン・ブラウニング 在オハイオ州アクロン、ロッキード・マーティン社海洋システム・センサー開発担当部長)同社は縮小モデルを高度長期間飛行実証機(High Altitude Long Endurance Demonstrator, HALE-D)の名称で8月に飛行させる予定。HALE-Dは米陸軍宇宙ミサイル防衛司令部(SMDC)の予算で開発中の高高度運用実証機のひとつ。「長時間滞空には大きな需要があります」(ブラウニング) 陸軍科学委員会の2008年夏季研究会で中高度および高高度で飛行船および無人機を運用すると長時間にわたる通信、監視、偵察用プラットフォームとして最高との結論が出ていることをブラウニングは指摘する。
【開発経緯】ロッキード・マーティンは高高度飛行船(HAA)の開発に数年間従事しているが、同機のコンセプトへの支持を議会内で得るには苦労して来た。同社は2005年に総額149百万ドルでミサイル防衛庁契約を獲得し試作機製作をすることになったものの、2008会計年度にこれがキャンセルとなった。その後HAAはSMDCに移管され、縮小版の実証機を製作し、無人自立型で太陽電池を電源とする同コンセプトの技術実現性および軍事有用性を証明することとなった。
【HALE-Dの詳細】 一ヶ月飛行可能で、高度6万フィートで500ポンドのペイロードを持つ最終目標の代わりにHALE-Dは二週間50ポンドのペイロードという設計。二週間あれば日周の繰り返しの中で成層圏にとどまる機能を証明できる。HALE-Dは全長270フィート、直径70フィートで船体容積は500,000立方フィート(約14,000立方メートル)あり、グッドイヤー飛行船の二倍の規模であり、ロッキード・マーティンの係留式飛行船エアロスタットよりわずかに大きい。動力には宇宙船からの流用である高信頼性のフィルム状の太陽電池を船体上部にアレイ状に配置し15kwを推進力とペイロード用に供給し、40kwhをリチウムイオン電池に充電する。複数の通信機器、GPS/INS航法・飛行制御コンピューターがを搭載し、後者にはバックアップ用の電池が付属している。推進器は合計2基の2kwモーターであるが、ブラウニングは「本当は4基あれば制御が楽だし、冗長性が生まれる」と話している。SMDCからは通信装置とカメラのペイロードが供与される予定。
【飛行計画】HALE-Dはグッドイヤー飛行船のふるさとアクロンエアードックにて建造される。「アクロンで進空してから未定場所へ移動し、同地上空に滞空して有用度を証明したいですね」(ブラウニング) 「8月に飛行して気候条件を最大限利用したいのです」(ブラウニング) 夏の長い日照時間は太陽発電量を大きくし、電池に蓄積して夜間の飛行動力となる。また夏には米国大陸部上空では「風が温和となる」という。HALE-Dの巡航速度は高度6万フィートで20ノットで、風が吹いても定位置の維持が可能だ。「これ以上風が速くなるのであれば、もっと静かな地点を模索する必要が出るでしょう」(ブラウニング) 
【実用機のスペック】 SMDCの期待は実用型のHAAが半径2キロメートル以内に留まる2,000ポンド搭載、高度65,000フィート、30日間滞留可能というもの。

参考 ロッキード・マーティン社ウェブサイトでのHAA紹介ページ: http://www.lockheedmartin.com/data/assets/ms2/High_Altitude_Airship_productcard.pdf

2009年4月29日水曜日

ターミナル1に豚インフルエンザ関連記事を掲載

ターミナル1に豚インフルの影響①②を掲載しました。民間航空にとっては今回の事態はただでさえ、不況で苦しいときに泣きっ面にハチという感じでしょうか。海外出張の自粛が広がりそうですので、需要の回復にはさらに時間がかかりそうです。エアライン各社の株も下がってきました。ところで日本ではいつまでインフルエンザという言葉に執着するのでしょうか。フルーという短い言い方ができれば報道・発表のたびに大幅に時間が節約できるのですが。