2016年7月14日木曜日

★規模縮小中の米空軍が期待するのは火力結集のハイテク新手法

これも第三相殺戦略の一環なのでしょうか。機数でかなわないので米軍は無人機他のハイテクの方向に向かうようです。気になるのは旧型機を無人機に改装し第五世代機から運用するというアイディアですね。日本は無人機開発を怠っていましたので、米国との技術力の差が大きくなっていますが、これからはギャプを埋めてもらいたいものです。一方で中国のハイテクスパイ活動には要注意ですね。


As Air Force Shrinks, Officials Look For New Ways to Amass Firepower

Valerie Insinna, Defense News6:04 a.m. EDT July 10, 2016


Gremlins(Photo: DARPA)
WASHINGTON — 米空軍の現有機材規模が過去最小かつ稼働年数も最長になっており新規機材の調達企画もあるが空軍当局者は今後の世界で空を制圧し自由に目標を攻撃する能力が維持できなくなると深刻な懸念を隠せない

  1. そこで空軍は機数は増やさず威力を増加させる技術として、無人航空機システム(UAS)、既存機改修や高性能兵装に期待する。
  2. 「戦闘の成否を握るのは今も昔もどれだけの火力を一度に一か所に集めることで、空でも地上でも同じ」と前空軍参謀総長マーク・ウォルシュ大将はDefense Newsに退任直前に語っていた。「前提に兵装が必要だし、精度も照準を合わせる能力も必要だ」
  3. 「わが方には機体もセンサーもあり、これは実現できる。それでも戦闘シナリオで大量の火力が確保できないのは軍の規模を縮小してしまったせいだ。そこで戦闘投入できる機数を増やせば、もっと火力を投入できるはず」(ウェルシュ)
  4. この実現策の一つにいわゆる「重武装機」構想があり、ペンタゴンの秘密部署戦略能力開発室Strategic Capabilities Officeが開発中だ。国防長官アシュトン・カーターがその存在を発表し、既存技術を新用途に投入する現実的な解決策だと今年初めに明らかにしている。
  5. 重武装機は旧式機体を利用するが機種名はまだ明らかになっておらず、精密誘導兵器を大量に搭載する。戦闘投入されれば第五世代戦闘機が敵領空に侵入し、目標情報を重武装機に送りスタンドオフ攻撃を可能にする、とSCO室長ウィリアム・ローパーがDefense One主催の技術サミットで説明している。.
  6. ウェルシュ大将は重武装機構想を空軍が採用するかは不明としたが、「何があっても」開発すべきだとし、空軍が火力投入を一層必要としていからだという。
  7. 「今後二十年間の兵力構造が今のままだとしましょう。F-22が187機しかありませんがもっと大規模な航空優勢の確立が必要となれば、戦闘の初期段階で使用可能な兵装を使いきってしまうでしょう」
  8. SCOには「忠実なるウィングマン」構想への強い期待がある。これは第五世代機のパイロットに無人化した第四世代機を制御させるもので、たとえばF-35が無人F-16と同時に飛ぶことになる。
  9. 「まだ独り立ちできる無人戦闘機の実現は無理でしょう。そこで有人機と組ませることにしました」とローバーは語る。「無人機によりパイロットでは無理な機体制御が可能となり、有人機には危険になるペイロードを運べ有人機よりも大きな威力を実現できます」
  10. SCOと国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)はともに革新的な技術の開発を長期にわたり目指しており、無人航空システムUASの大量発進から開始する。SCOは安価かつ使い捨て超小型無人機を戦術攻撃機から放出する構想で機体は回収しないとローパーは語る。
  11. その対極がDARPAのグレムリン事業で回収可能UASに、ペイロードを搭載するとスティーブン・ウォーカー副局長はいう。初期段階の構想開発業務の契約がコンポジットエンジニアリングComposite Engineering、ダイネティクスDynetics、ジェネラルアトミクス、ロッキード・マーティンの各社へ交付されている。
  12. またDARPAは極超音速技術による兵器開発に相当の注力をしており、極超音速空気吸い込み式ミサイルや打ち上げ滑空体を超高速かつ制御可能な攻撃兵器として近い将来に登場すると期待し、同庁は「今日の」技術と呼んでいる。
  13. 「極超音速の実現化にあと一歩のところまで来ており、指向性エネルギーの実用化にも取り組んでいます。将来の米航空戦力の一部になることを期待しています」(ウォーカー)■

★ハーグ法廷の結論を受け米下院フォーブス議員が論点を整理



ここしばらくは南シナ海だけでなく中国周辺の事態に目が離せないことになりそうですね。中国が世界からの孤立化を防ぐために行動を改めるか(可能性は低い) 新たなレトリックを駆使するのか(すでにその傾向あり)わかりませんが、やんちゃな子どものような態度だけは自制してもらいたいものです。なんといっても核戦力まである国ですから。しかしメンツを潰された時の中国人は逆上するはずですから安心して眠られなくなりそうですね。

The National Interest


The Hague Has Ruled against China. Time to Enforce It.

The amphibious assault ship USS Peleliu transits the South China Sea. Flickr/U.S. Pacific Fleet
The amphibious assault ship USS Peleliu transits the South China Sea. Flickr/U.S. Pacific Fleet

July 12, 2016

UNCLOS仲裁法廷でフィリピン-中国間の領有権をめぐる意見の相違で司法判断が出たことで中国には2つの選択肢が生まれた。一方でアジア太平洋地域に広い可能性が出てきた。中国が今回の法廷の決定に示す反応でアジア安全保障の方向が決まるだけでなく第二次大戦後の国際秩序でも今後の姿が変わる。

大戦後の世界で米国は世界各地の協力国と紛争の平和的解決を原則とする国際的な仕組みづくりを模索し、国際法と規範の順守にこだわり、武力による国家目的の実現を排除してきた。この秩序は二度の世界大戦の灰燼から構築され、これまでの中国やアジア太平洋各国の繁栄を支え、過去70年間に大国間で戦闘は発生していない。

中国は繰り返し「責任ある大国」になりたいと表明してきたが、最近の行動が国際秩序に対する最大の脅威となっている。中国の経済力、拡大する軍事力ならびに他国の邪悪な意図の犠牲になってきたと主張しているため国際間の仕組みは困難な事態に直面させられている。

特に中国周辺国にとって難題は待った無しで、東シナ海から南シナ海、インドとの国境線で紛糾する中で中国は組織的に動いて事実の書き換えを目指している。その背後に武力行使をちらつかせている。南シナ海で人工構築物を建造し領有権主張の裏付けにする、東シナ海で防空識別圏を設定する、インド領アルナチャルプラデシュ近くで挑発的軍事行動を繰り返す、これらで中国は一貫して「力が正義だ」と国際政治で主張している。

そこで今回の決定だが、中国政府に真っ向から反駁する内容になっており、今回の係争事案だけでなく結論の形成過程が重要だ。フィリピンがUNCLOS法廷に提訴した事自体が米国及び協力国が戦後の世界で守ってきた価値観、原則に歩調を合わせている。フィリピンのような小国、開発途上国でも国際法規範に訴え中国のような大国を相手に成功をおさめられること自体が中国外相発言への反駁である。外相は「中国は大国であり他国は小国だ。これが現実だ」と中国の好戦的態度を正当化しようとした。

中国が今回の裁定内容を無視すれば、国際社会で建設的な態度を取る一員になるとの同国の公約が一気に虚しくなる。同時に国際秩序にへの深刻な脅威にもなる。世界第二位の経済大国が世界最大の軍事力で公然と自由を尊重する国際秩序を否定し、紛争の平和解決も認めないというのだ。その結果として国際安全保障への影響は深刻で北京の動きの一挙一動をモスクワ、テヘラン、平壌が注視しているはずだ。

米国は今こそ中国が司法判断を拒絶する事態に備えて態度を硬化させるべきで、場合によっては軍事手段でマニラとの紛糾の解決を模索すべきだ。米政府が空母打撃群二個を派遣する決定をしたのは妥当な対応だ。中国が決定内容に性急な反応を示した場合は、米政府は条約上の同盟国、協力国の側に立ち侵略を食い止め、我々の価値観や利益を守る姿勢を断固として示すべきだ。

今回の法廷の結論は中国が台頭してきた歴史で大きな変換点になり、戦後世界の仕組みに対して世界問題を修正主義的立場で見る中国の価値観が最もわかりやすい形で衝突したものといえよう。今回の決定への対応策を決めるのは中国自体だが、米国の選択肢はひとつしかない。断固としてフィリピンの友人たちの側に立ち、地域全体で普遍的価値観を守り、いかなる大国といえども軍事力やGDPの規模と関係なく、法の上には立てないとの原則を守ることである。

J・ランディ・フォーブス下院議員(共、ヴァージニア)は下院軍事員会シーパワー及び兵力投射小委員会の委員長であり、下院中国問題議員連盟の共同ホッ金人でもある。


2016年7月12日火曜日

★南シナ海対立はもっと深刻な問題に拡大しないか心配される



いよいよ12日(現地時間)国際仲裁裁判所が結論を出しますが、意味がない、根拠が無い、従うつもりは毛頭ないと、ますます中国は不良ぶりを示しているようです。それだけならいいのですが、武力衝突の危険が著しく増えると見るのが普通の見方で、南シナ海がきな臭いことになれば日本経済もお先真っ暗になってしまうのですが、この国は本当にのんきですね。


The National Interest


South China Sea Showdown: Part of a Much Bigger Nightmare

July 11, 2016

  1. 明らかな予測結果をあえて口にすることが良い場合がある。南シナ海をめぐる中国対フィリピンの係争問題で国際仲裁裁判所が明日司法判断を下すがその行方は明らかだ。何が起ころうと、裁定内容にかかわらず、緊張をはらむ同海域は中華人民共和国と領有を主張する多数国がにらみ合い、更に中国と米国も対立する。どう見ても事態は悪化を重ねそうで、おそらく急速に展開するだろう。
  2. まず南シナ海をめぐる中国とフィリピンの二国間の課題を見てみよう。仲裁裁判所が中国の主張の少なくとも一部を無効と宣言するのは確実と見られる。中国はフィリピンからスカボロ礁を2012年に奪い領有宣言しているが,これは岩礁であり200マイルの経済専管水域の要件を満たさず、中国が主張する九段線で南シナ海の85%を自国領海とする論拠が崩れる。
  3. 当然中国は烈火のごとく反論をしてくるだろうし、すでにもう行っている。習近平主席は数日前に「面倒な事態は怖くない」と他の中国関係者同様の発言をしている。だが中国からは交渉も可能との暗示も出ており、フィリピンも協議に前向きな姿勢を示している。
  4. 問題は中国がスカボロ礁のみならず南シナ海の領有を主張していることだ。声明の内容及び回数を見ると、中国は交渉の余地を残していない。さらに交渉したとなれば中国国民も怒りにかられ政府は弱さを露呈したと決めつけ、中国共産党が一番恐れる事態である国内騒乱につながりかねない。
  5. アジア太平洋更に広くインド太平洋地区に不幸なことに交渉しても即座に失敗に終わるか、時間をかけて何の合意形成もできないだろう。どちらにせよ中国は力の行使に出てくるだろう。防空識別圏(ADIZ)を設定するか、スカボロ礁でも浚渫工事、軍事基地建設を始めるだろう。
  6. 中比関係以外にも影響が出る。例えばヴィエトナムが自国も国際仲裁裁判所に法的な解決を求めようとするかもしれない。日本も尖閣問題を法廷に持ち込むか南シナ海での集団訴訟に加わるかもしれない。(日本の原油輸入の6割がこの海域を通過することがポイントだ)
  7. フィリピンと中国の交渉が実現しても決裂するのが関の山だろう。中国としては強硬策しか選択がないと見るだろう。
  8. 真の試練は米中関係だ。現時点で中国は南シナ海で海軍演習を終えようとしており、米国は空母打撃群一個を派遣中でフィリピンに交代で配備中の航空部隊がある。緊張が一気に高まれば米国は必要な対応が取れる体制にあり、中国がADIZを一方的に宣言すれば、空母艦載機あるいは陸上機でこれに挑戦し新たな段階の航行の自由作戦を開始する、あるいはフィリピンとの条約を尊重し、あるいは他国との関係を尊重し一番恐ろしい事態になるかもしれない。
  9. だがもう一つ大きな問題があり、こちらはすぐ解決できそうにない。中国は大国として現状のアジア太平洋国家間の仕組みは自国の目指す権益や要求に適合していないと感じている。中国は国力がまだ弱い段階では日本が尖閣諸島を実効支配し、東シナ海の覇権を握る事を容認していたが、経済力も軍事力も強大になった現在でもそのままとは思えない。中国の定義では台湾は反乱地方の扱いで冷戦の産物としているが、遅かれ早かれ再度前面に出そうだ。
  10. 中国は南シナ海での自国経済力、軍事力の存在感は圧倒的で発言力も最大になってしかるべきと見る。台頭する国家として地域内秩序は新体制にはふさわしくないと見る。同時に米国には自分のことだけ心配しろ、この地方に構うな、中国の動きを封じ込めたり制限するな、今だけでなく未来永劫に、というのが中国の意向だ。まさしくツキディデスの罠で戦争は不可避になり、更に地域内で拡大するだろう。
  11. ということで準備を怠りなく。この数日あるいは数週間は相当荒っぽい展開になりそうだ。しかしながら南シナ海問題は実はもっと大きな問題の断面に過ぎず、大問題が綺麗な形で終結することは少ないのは歴史が示している。■
Harry J. Kazianis is a Senior Fellow for Defense Policy at the Center for the National Interest and Senior Editor at The National Interest Magazine. You can follow him on Twitter: @Grecianformula.
Image: Flickr.


2016年7月11日月曜日

★中国のミサイル原潜>どこまで進展しているのか>どれだけの脅威になるのか



北朝鮮よりはるかに整備された中国の核戦力についてこの国はあまりにも無知かつ安閑としているのは不思議なことです。まさか中国のミサイルが日本へ照準を合わせていることを知らないというのでしょうか。さらに論文にあるように段階式に確実に中国海軍はミサイル原潜運用能力を整備してきますから時限爆弾の上に我々は座っているようなものです。中国が貿易主要相手国の日本を攻撃するわけがないと能天気なことを言うのであれば現実政治が見えていないことになりますね。

The National Interest

The Future of China's Nuclear Missile Submarines: How Worried Should America Be?


Big choices ahead for Beijing.
July 7, 2016
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  1. 中国の国防外交政策を西側が分析が難しいのは中国が世界の通例と異なる形で行動することが多いためだ。例として中国が重視する海軍力開発では細部へのこだわりに10年以上もかけている。それでも中国が運用中の空母は一隻だけだし、海外拠点はジブチの「支援基地」だけだ。同基地は米国など各国軍の基地に隣接するが侵攻拠点とはいいがたい存在だ。
  2. 独自方式をとる中国の軍事戦略の中でも核戦略部門ほどその傾向が鮮明な例はない。1960年代70年代通じ「最小抑止力」に中国が自制していたのは事実で、背景に投入資源が相当制約されていたことがある。中国が米ロに相当する大量の核兵器保有を模索していたら今頃は整備が完了していたはずである。その代わりに中国は国内交通体系に投資する賢い選択をし、高速鉄道網などが完成した。その中でも中国が潜水艦搭載核兵器体系を継続して開発していることに関心が集まる。そこで今回は中国の海中配備核兵器の進展について中国の核戦略思想家 Wu Rigiang 呉日強(中国人民大学)の解説が今年初めのModern Ships(現代艦船)(出版元CSIC造船コングロマリット)に掲載されているのでこれを元に論証したい。
  3. 分析は2015年11月の人民海軍記事で中央軍事委員会が「南海艦隊潜水艦41号艦の乗員」を作戦可能になったと発表したことからはじめている。また2015年4月南海艦隊に実戦に近い長距離パトロール航海の実施の命令が出たことを報じている。その後に続くのが驚くべき内容で「これまで中国の戦略核ミサイル潜水艦が戦略パトロール任務に投入されたことはない」というくだりだ。PLA海軍が潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM(を初めて発射してほぼ30年になるが、深刻な問題があるようだ。
  4. 呉教授は中国の海洋核戦力への米国の脅威を歯に衣着せぬ言い方で説明している。「もし米SSNが中国の潜水艦基地付近をうろついて中国潜水艦を追跡し、開戦となり命令が下れば米潜水艦は中国潜水艦を攻撃するだろう。これは米国の標準戦術だ」 同教授は中国SSBN部隊整備と米国のABM弾道ミサイル迎撃手段の開発を連関させている。教授はソ連時代の戦略ミサイル潜水艦の展開範囲が限られていたため米ミサイル防衛は北半球に集中させておけばよかったと指摘し、次のように提言している。「中国の戦略ミサイル潜水艦が南太平洋からミサイルを発射すれば米ミサイル防衛体制には面倒なことになるだろう」 そこで教授は日本と共同開発中のSM-3ブロック2Aが中国の潜水艦発射ミサイルの実効性を阻む存在と見ている。
  5. 同教授の分析で最も興味深いのは中国がロシア同様の方法を採択するのか、あるいはアメリカに似た選択でSSBN整備を進めるのかという点だ。ソ連が冷戦末期に取った考え方は「防御砦」モデルだと呉教授は言い、戦略ミサイル潜水艦の防御に多様な手段を投入できる利点がある。ただこの方式の欠点は防御に多数の装備を当てる分だけ、それら装備の本来ミッションがおろそかになる点だ。これに対しアメリカ方式は「自律運用型」と教授は述べ、米海軍式のSSBN運用には高度のステルス性能、優秀な音響特性が必要だと指摘する。
  6. 中国沿岸にソ連式の「防御砦」を設定しようとすると渤海は深度が足りず、黄海と東シナ海は深度は潜水艦のステルス性には適するが、敵の侵入は容易だ。そこで南シナ海はどうかというと、深度はいいが音響特性が潜水艦が潜むには不利で残存性も望ましくなく、かつ海域を封鎖することもできない。「もちろん原子力潜水艦の待機海域は国家の極秘情報である」と呉教授は述べるが、PLANの声明文を引用し、配置場所を南海艦隊管轄海域で「長距離パトロール」だと述べている。
  7. そのほかのSSBN配置方式について同教授は簡潔に「連続海中パトロール」を維持するのかと現在英国で議論になっている点を紹介し、反対派が「費用が高くつく」ことを理由にしていると述べる。さらに米情報機関の報告を引用し、094型SSBN潜水艦四隻が建造ずみで、五番艦も建造中であることから中国は連続パトロール体制を確立するとしている。SSBNに対する指揮命令の伝え方が困難であることから教授は中国も専用の中継通信機材(米海軍のE-6TACAMOに類似)が必要だと主張。
  8. ただし当面は地上配備核ミサイル部隊を前面に立てるべきと教授は述べる。「移動式地上発射ミサイルの位置を突き止めるのは簡単ではない」 中国には真に威力のあるSSBN部隊整備を急ぐべきとの意見があるが、教授はまだ能力向上が必要な段階だと指摘した。たとえば、JL-3SLBM(射程12,000キロ)が実戦化すれば「中国沿岸部から米国を直接狙うことで各潜水艦の運用が柔軟になる」と説明。t.
  9. 同論文の結論はいささか予想外だ。「現時点では中国核攻撃潜水艦SSNs整備への要求が戦略ミサイル潜水艦をはるかに上回っている」とし、教授の言いたいことは新世代の静かな中国原子力攻撃型潜水艦の登場で西太平洋の海軍力地図が変わるということなのだろう。また新型潜水艦は東太平洋に進出して米西海岸の海上交通を攻撃する、あるいは陸上攻撃用巡航ミサイルを米本土に向けて発射するかもしれない。だが呉教授の理由付けの中心は静かで威力あるSSN部隊の整備がSSBN部隊の前提だということだ。また「原子力潜水艦の運用経験」を最重要視するが、中国と言えどもこれは一夜にして獲得できない。
  10. 論文から中国の水中抑止力整備やPLAN一般の目指す方向性で違いが見えてくる。中国の海軍力整備は極めて迅速に進んでいるが、同時に慎重でステップを踏む建造方式も明らかで自制しているようだ。先を見つつ洞察力のある米指導部は米国も自制することで中国が最も機密性が高く威力もある戦力を一定の統制下に置くことになると自覚すべきだ。

著者 ライル・J・ゴールドステインは米海軍大学校の中国海洋研究院で准教授を務める。上記分析は本人の個人的見解によるものであり、米海軍あるいはその他米政府機関による評価ではない。


2016年7月10日日曜日

★★歴史に残る機体⑤ 史上最悪の戦闘機リスト




The National Interest

The Five Worst Fighter Aircraft of All Time

The worst of the "flying coffins."
October 12, 2014

一世紀を超える軍事航空の歴史で、「空飛ぶ棺桶」の異名が付いた戦闘機が複数生まれている。軍事では限界への挑戦は技術だけでなく人体機能でも同じで、この傾向は戦闘機で特に強い。戦闘機の操縦は極めて危険だが空中戦で銃撃を受けたいと思う者はいない。
高性能戦闘機は苦難の歴史だ。エンジン、兵装、機体に少し手を入れるだけで駄作機がエリート戦争マシンに変身する。歴史上の傑作機でも最初はパイロットが不信感をもつことはよくあるがエリートの座も長く続かず、第一次、第二次大戦で特にその傾向が強く、導入一年もすれば戦術の革新のため「空飛ぶ棺桶」になっている。
傑作機と駄作機の違いは実は驚くほど小さい。その基準を見極めるため、戦闘機はその国の戦略装備であり評価は次の観点で行うべきだ。
  • その機体は戦術任務をこなせなかったのか。同時期の他機種と比べ低性能だったのか。
  • その機は戦闘に間にあったのか。同機の操縦で自軍パイロットに敵軍戦闘機より多くの死者を生んでいないか。
  • その国の資源を無駄に使う機体になっていないか。

歴史を通じて最低の戦闘機を選出るにあたり、生産500機以上の戦闘機とし、生産機数は( )で示した。したがってXF-84Hサンダースクリーチのような珍作は該当しない。


Royal B.E.2 (3500)  

実際の空中戦が発生する前に航空機を準備したためパイロット、技術陣ともに苦悩の連続だった。ロイヤルB.E.2は本格生産された軍用機として最初の機体のひとつで、3,500機が製造された。初飛行は1912年で1919年まで供用されたが優秀な機体が登場して出番はどんどん少なくなっていった。

B.E.2は第一世代の戦闘機に対して望ましくない要素を示した機体であった。操縦視界が悪く、信頼度が低く、操縦が難しく、低速で武装も軽微すぎた。フォッカー・アインデッカーの登場でB.E.2は脆弱性を露呈した。改良策が逆効果になり機重が増し、事故多い危険な機体となった。

最初の戦闘機に落第点をつけるのは心苦しいが、B.E.2の低い操縦性と信頼性に加え同機を過剰に投入した英国の決定から同機がリストに入った。なお、英国飛行隊が後継機を投入できなかったことで初の独立航空部隊となった英空軍創設の主張を助けた効果もある。

Brewster Buffalo (509)

全長が短く、ずんぐりした魅力の欠けるバッファローが実戦化されたのは三菱A6MゼロやBf-109といった圧倒的性能を有する機体と同じ年だ。陸上および空母運用をともに想定したバッファローの初陣はフィンランドだった。設計途中で重量が増加したのは兵装を増やし、燃料も追加し、装甲板をつけたためだ。このため恐ろしく出力不足となり、対抗相手へ操縦性で劣ることになった。フィンランド空軍のバッファローはソ連と開戦直後は互角に奮闘していたが、東南アジア各地の英連邦やオランダのパイロットは日本戦闘機になぶり殺しにされている。さらに熱帯地方の高温環境で性能が劣化したのは致命的だった。

海兵隊パイロットがバッファローを「空飛ぶ棺桶」と称したのはミッドウェー海戦後のことで、同機が日本に無残なほど撃墜されたためだ。米海軍は同機より優秀なグラマンF4Fワイルドキャットを急いで配備した。
Lavochkin-Gorbunov-Gudkov LaGG-3 (6528)
軍装備の近代化とは時間との戦いで、1930年代のソビエト連邦は軍事産業再建の中で他国より一歩遅れた技術を中心に生産を最適化していた。LaGG-3は初飛行が1940年だが、ドイツの侵攻時にソ連空軍の主力機だったことが不幸を呼び、同機のロシア呼称からパイロットは「ニス塗りの保証付き棺桶」と呼ばれてしまった。

就役開始はBf-109より後なのにLaGG-3は空戦ではいいところがなく、さらに軽量木材機体に低出力エンジンを組み合わせたことで重量級のドイツ戦闘機に対して戦術的な優位性は困難になった。敵弾命中でばらばらになった。ソ連のパイロット養成も低い水準のため、ドイツやフィンランドのパイロットにとって驚くほど簡単に撃墜できる機種だった。LaGG-3の生産は1942年に終了予定だったが、ソ連軍事複合体の都合で1944年まで生産された。

Century Series (F-101 (807), F-102 (1000), F-104 (2578), F-105 (833))   

センチュリーシリーズから一機選ぶのは難しい。空軍が戦略爆撃思想を重視してソ連との核戦争を第一に考えていた時代の産物だ。戦術航空軍団は自ら「戦略的」になることで課題解決しようとし、迎撃機でソ連爆撃を捕捉撃墜し、戦闘機も大型化し核兵器を搭載することを考えた。このため米空軍の戦闘機各種は北ベトナム空軍の小型で操縦性の高いMiG戦闘機に対応できなくなっていた。
ただし全部が失敗作ではない。F-100は第二世代戦闘機として妥当な機種だし、F-106の迎撃機性能は申し分ない。それ以外の各機には戦略思想と技術企画の方向の誤りで何らかのトラブルがついてまわった。マクダネルF-101ヴードゥーは迎撃機から戦闘爆撃機に転用されたが意義がよくわからない機体で、コンヴェアーF-102デルタダガーは迎撃機、戦闘爆撃機いずれでも性能不足だった。ヴィエトナムにも短期間投入されたが一番の功績は遠隔操作標的機への改装だった。
ロッキードF-104スターファイターは高速で美しいが死の罠となった機体で、「空飛ぶ棺桶」のあだ名は10万飛行時間につき30件の事故率が原因で「有人ミサイル」とも呼ばれた。カナダのF-104では50パーセントが事故で喪失し、ドイツは30%を失った。巨大なリパブリックF-105サンダーチーフは核爆撃機として設計され、通常爆撃ミッションには不向きなのにヴィエトナム戦で無理やり投入され、MiG各機やSA-2ミサイルの格好の餌食になった。
センチュリーシリーズの製造元は各社いろいろで想定任務内容も異なる。相当の機数が調達されたがすべての機体に同じ問題が見つかっている。つまり米空軍が核戦略爆撃以外の戦闘の構想に失敗したことだ。

Mikoyan-Gurevich MiG-23 (5047) 
MiG-23フロッガーはF-4、F-111といった米国製戦闘機へのソ連の対抗策だ。強力な可変翼戦闘機で攻撃と迎撃の双方をこなした。
だがフロッガーは操縦、保守整備ともに怪物だった。米「レッドイーグル」パイロットはソ連機の性能を評価するのが仕事で、フロッガーを大惨事が必至の失敗作と評した。1984年にロバート・M・ボンド中将が米空軍所属のフロッガー操縦中に死亡している。大型の機体となったフロッガーにはそれ以前のMiGの長所だった低視認性が欠けていた。
MiG-23は当初ワルシャワ条約参加国の各空軍に配備する予定だったが、各国はMiG-21の供用継続を好んだ。MiG-23の輸出条件は低価格の目玉商品だったが安全運航は極めて難しいものだった。設計上の問題でエンジンは短時間で燃え尽き、海外の導入国も同機の運用を急速に減らす結果になった。フロッガーの実戦記録はシリア、イラク、リビアが主でしかも芳しいものではない。そのため就役したMiG-21より先にMiG-23の姿が軍から消えたのは驚くことではない。

まとめ
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リストに将来加わりそうなのがF-35共用打撃戦闘機で、生産は500機の大台を超える予定だ。機種の戦略的な価値は供用期間全体を見て初めてわかる。JSFがこのリストにいつ加わるかは不明だが、一つだけ言えるのはF-35がこのリスト各機の事故発生率に近づくことはないだろう。ただしJSFの機体価格が巨額になっていることから将来的にリスト入りは十分ありうると思われる。
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選外: ジェネラルダイナミクスF-111アードヴァーク、マクダネルダグラスF-4ファントムII、メッサーシュミットBf110、ボルトン-ポール・ディファイアント、フェアリー・フルマー、スホイSu-7フィッター
Robert Farley is an assistant professor at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs.He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat. Follow him on Twitter:@drfarls.
All Images: Wikicommons.


2016年7月8日金曜日

★★F-35で中国、ロシアに勝てるのか

hit counter


F-35で本当に大丈夫なのかと言われても当面この機体しかないわけで、その意味でロッキードの宣伝に踊らされた西側世界は本当に不幸としか言いようがありません。確かに同機には新趣向の技術もあり、これまでの戦闘攻撃機の概念を変えるインパクトもあるのですが、いかんせん実用化に時間がかかっている割には実現できている当初の性能水準が少なく、一方で記事がいうような対ステルス技術も進歩しているわけでF-35も安閑としていられないはずで、海軍のようにステルスを軽視し攻撃力を重視する選択にも一理あるかなという見方もあるでしょう。

The National Interest

Is the F-35 a Lethal 'Velociraptor' or Easy Prey for Russia or China?

Image: Lockheed Martin/Flickr.
July 7, 2016

  1. 米海兵隊航空部門トップがロッキード・マーティンF-35B共用打撃戦闘機(JSF)を好意的に評価する見解を下院軍事員会で証言した。7月6日。ステルス新型ジャンプジェット機は訓練期間中は暫定ソフトウェアを搭載し、想定する性能の一部しか発揮できていない。
  2. ジョン・デイヴィス中将(海兵隊航空部門次長)はF-35の兵器戦術教官教程での状況が向上していると述べている。演習では既存機種のボーイングAV-8Bハリヤー、F/A-18C、EA-6Bが高度防空網想定では半数の機体しか目標に達しなかったのに対し、F-35は全機が到達しながら被害を受けていないという。
  3. 「F-35は24対ゼロですべての目標を破壊した」とデイヴィス中将は述べ、「ジュラシックパークの恐竜ヴェロキラプトルさながらすべて殺害しています。実にうまくやりとげてくれます」
  4. デイヴィス中将はF-35Bを投入する想定の高性能防空網の詳細は触れなかったが、海兵隊は作戦即応態勢監査を同機で実施済みで、飛行隊も追加編成すると述べた。ただし現在のF-35Bは当座しのぎの性能しかなく、飛行性能や兵装搭載で制約がついている。機体の成熟化に応じて空軍、海軍、海兵隊はハイエンドで互角能力を持った敵との戦闘に備え、訓練を拡大する必要が生じる。
  5. マイク・マナジール少将海軍戦闘システムズ作戦副部長にデイヴィスと並び証言し、ネットワーク戦によりペンタゴンは訓練の新方式の確立が求められると述べた。ハイエンドのロシアあるいは中国兵装の模擬手段としてマナジールはコンピュータシミュレーションの応用にふれた。「F-35のような第五世代戦闘機では戦闘の進め方自体が違い、ネットワーク化戦闘の演習に米本土の四分の三ほどの広さが本来必要になります」と述べ、「このためウェスト空軍少将が提示したようなライブ仮想発展型訓練live virtual constructive trainingになるはずです」
  6. 仮にペンタゴンが同機の完全性能をシミュレーションで試すことが可能としてもF-35が最新の中国機やロシアの統合防空体制にどこまで有効に対処できるかで疑問が残る。特にロシアは庁はネットワーク型レーダー網でUHFとVHFを20年以上試用し、米ステルス技術に対抗しようとしている。中でもノースロップ・グラマンB-2スピリット戦略爆撃機を狙っている。「戦闘機のステルス性能の優劣よりもこちらの機体があちらの長波UHF/VHFレーダーの前でどこまでステルス性能を発揮できるかが問題です。このレーダーは低視認性機体からも全体像をもっと多く返すように設計されています」とマイク・コフマン(海軍解析研究所でロシア軍事技術を専門とする研究者)がNational Interest誌に語っている。「JSFならかわせるかもしれませんが、高価な機体なので潜り抜けられないと厄介です」
  7. コフマンはF-35にもうひとつ深刻な問題があると指摘する。米海軍パイロットに単発エンジンに不安を感じているという。F-35が搭載するプラット&ホイットニーF135エンジンはきわめて強力で43千ポンドの推力を発生するが、同時に極めて高温となる。ロッキードF-22ラプターのF119エンジンでは排気を整流し赤外線を下げているが、F-35では排気を探知しにくくする工夫がないといってよい。ロシアには高性能赤外線センサーがあり、F-35排気の特徴から機体を探知する装備を開発する可能性がある。「世界中で最も高熱を発するエンジンといってよい」とコフマンは指摘する。
  8. せっかくペンタゴンが各軍共通の機体として導入したのに、同じ問題がついてまわることになるのかもしれない。
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


2016年7月7日木曜日

★★南シナ海に日本のプレセンスが必要な理由を説明する一等海佐

先日の海上幕僚長もそうでしたが、米国で見解を発表する方が楽なんでしょうか。国内の言論空間はそんなに窮屈なんでしょうか。もっと国民に現実を知らせる必要があると思いますし、言いたいことはいっぱいあるはずなのに我慢されているのでしょうか。原文は極めて明快に論理を展開されており、英語としても立派なものです。国内でももっと説明してもらいたいですね。


The National Interest



Why the South China Sea Needs Japan's Navy Boosting Tokyo's presence is key to regional security.





February 2, 2016


  1. 冷戦終結後25年になるが、海上自衛隊(JMSDF)は冷戦時の海軍兵力のままだ。米海軍大学校のジェイムズ・ホームズ教授が提起したようにJMSDFは米海軍と連携した隙間戦力でソ連の脅威に対抗する想定で生まれ、対潜戦や掃海作業で傑出した能力を整備してきた。今日のJMSDFは目標を切り替え、新しい安全保障上の役割を域内で世界規模で米国のパートナーとして「積極的平和貢献」を希求すべきではないだろうか。
  2. 21世紀の変化の中で、安全保障を最も現実的に達成する方法としてJMSDFにはいわゆる「非戦闘作戦」(NCMO)の実施が一層求められており、人道支援災害救助や海賊対策をアジア太平洋で米海軍と協力して進めていくだろう。
  3. すでに動きが出ている。日米防衛ガイドラインが2015年8月に改訂され日米の安全保障協力は今後強化されていくだろう。日米同盟がアジア太平洋での安全保障の枠組みで中心的存在になっており、今後は日本の役割が一層大きくなってバランスをとるとともに日本は米国側同盟国との協力を強化していくだろう。フィリピンとオーストラリアが例だ。


南シナ海は新しい舞台
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  1. 米海軍はJMSDFとともにアジア太平洋の海洋安全保障で最前線に立っている。東シナ海(ECS)や南シナ海(SCS)の周辺国に脅威が発生しているが、SCSは中国海軍にとってインド太平洋地区での兵力投射で重要な通過地帯となり、インド太平洋で存在感を増して来た中国は一層自己主張を強めている。
  2. 中国が国際規範を無視してまで自らの国益を軍事力、経済力を背景に主張するつもりなのか大きな疑問が浮上している。南シナ海では中国が人工島を建設し、領海主張を拡大する中で国際ルールが定める「航行の自由」が問われる典型例となっている。
  3. 中国は平和的な意図で建設的態度をとっていると当然のように主張する。中国はSCSの定義として「平和、友好、協力の海」で、李克強首相が2015年11月第十八回ASEAN-中国サミットでSCSの平和安定を目指す提案を発表している。興味深いのは同提案では域外国(例 米国)は域内関係国によるSCS内平和安定確保の努力(つまり中国による周辺国へのお膳立てのこと)を尊重し支持すべきだと明確に主張している点だ。.
  4. 米国と日本はSCS問題に懸念を表明し航路安全をどう確保するのか、埋蔵されている石油ガス鉱脈をどう共有するかの点に触れている。とくに両国は航行の自由が中国により脅かされる可能性を懸念している。域内各国は中国が国益を強硬に追求する事態は歓迎しない。だからこそ中国の行動へ躊躇せず対応する必要があるのであり、艦船商船に公海を通航する権利を保障する海洋ルールは積極的に守る必要があるのだ。
  5. 一部に日米両国はSCSでは外部勢力であり域内問題に介入すべきでないとの意見もあるが、米国は太平洋海上強国として長年にわたり域内の平和安定を守っている存在であり、日米関係は地域全体の安定の基礎だ。JMSDFは同盟国として米国とアジア太平洋で一層大きな役割を果たす体制を構築すべきである。SCS問題にも日本が新しい切り口で解決策を模索し、JMSDFも対応策を検討すべきだ。日本側は米国は世界の警察官として機能できないとオバマ大統領など米国指導層が発言しているのを真摯に受け止めるべきだ。


軍事力の新しい重要性


  1. 習近平主席は中国は周辺国へ主導権を発揮すべきと主張している。PLAは装備近代化を続けており、局地戦準備を進めている。
  2. 国力増大中の中国はアジア太平洋の支配を求めていくだろう。習の「一帯一路」構想では大陸国家としての中国がアジア太平洋を影響圏に収め、域内の政策決定を支配しようとする。日米両国は域内の安全に及ぼす中国の影響力を挑戦ととらえるべきだ。
  3. 日本はASEAN加盟国とのつながりを強化し、中国の台頭に対してアジア太平洋内の海洋国家との連携で均衡を取ろうとしている。日本はこれまでの厳格な自国領土領海に限定した防衛方針化を大幅に変える必要があり、域内の各国を支援した新しい安全保障での役割を希求すべきだ。
  4. 必要な対策が実行に移されている。たとえばJSMDFはソマリア沖海賊対策を2009年3月から実施中だ。遠隔地運用によりJMSDFの基本任務でも再考が必要となり、局地防衛から米海軍はじめ同盟各国、協力各国との作戦に完全参画して世界各地の海上交通路を守る重要性を認識するに至った。(アデン湾はヨーロッパとアジアをスエズ運河経由でつなぐ、世界有数の船舶交通路である)
  5. インド洋と太平洋をつなぐ南シナ海で航行の自由が保障されることが世界経済に不可欠だ。米国は世界各地でのコミットメントもあり、航行の自由を単独で守れないが、ASEAN各国も責任を果たせない。そこで日本が手を差し伸べるべきだ。
  6. ただし海上自衛隊がこれ以上関与すると歴史問題にぶつかる。過去の軍国主義がASEAN各国に負担を与えた。ただし戦後70年をかけ日本は平和主義により信頼を回復したといえる。今日の日本は戦前の日本と全く異なる国家である。この点を明確に示し、日米同盟は問題が発生する前に行動をとるべきだ。そこで日比両国関係が重要になる。日本の装備をフィリピンから運用し、米軍と共同作戦すればSCSの平和と安定が保てるからであり、米軍機能を補強し、フィリピンによる監視偵察機能の強化につながる。


南シナ海NCMOの利点


  1. そこでJMSDFは何ができるか。まず非戦闘海洋作戦(NCMO)として情報収集監視偵察があり、平時の南シナ海でカギとなる機能でフィリピン他ASEAN加盟国を支援できる。NCMO任務をJMSDFは米海軍・海兵隊と調整する実力を有しているのは数十年にわたり米軍と相互運用を高い次元で演習しているからだ。日本がSCSでNCMOを実施すれば以下五つの利点がある。
  • まず、日本が米国の主要同盟国として「積極的平和貢献」で安全保障での新しい役割を果たせば日米同盟が強化される。
  • 次に日本がアジア太平洋でNCMOミッションのような平和的安全保障策を実施すれば積極的安全保障姿勢を示することになる。
  • 三番目に域内の平和安定を維持することで国際社会に貢献しながら、現状維持を破る意思はないと示せる。
  • 四番目に中国も裨益する。中国と日本には防衛協力で域内の平和と安定を共に守る絶好の機会となる。前提は日本が米国とともに域内の平和安定を積極的に守ることだ。
  • そして五番目に日本に大きな恩恵が生まれる。JMSDFはその最新装備を駆使し新しい安全保障モデルを提示するが、NCMOミッションが中心になる。
  1. 日本が戦後の局地防衛から脱する動きを示していることに懸念を示す向きが多数ある。ただしJMSDFにとってこの変化は積極的かつ責任ある役割に移行する機会であり、日本が有する能力を米国並びにその他アジア太平洋内の同盟国、協力国に提供することにつながる。新しい役割を果たす日本により域内の平和と安定が保証され、二十一世紀に世界経済の中心に躍り出る同地域を支えることになる。
  2. 三本の矢を束ねれば強靭な一本の矢より強くなるのである。

下平拓哉一等海佐は米海軍大学校の共同軍事作戦学部で客員教授とLNO連絡官を兼ねる初の日本出身者である。なお記事中の見解は著者個人のものであり、JMSDF、防衛省、日本政府の公式政策の見解を反映するものではない。