2018年11月16日金曜日

☆高性能機に進化したF/A-18Cの歴史をたどる



Why the F/A-18C Hornet Was Truly One of a KindF/A-18Cが比類ない機体になった理由とは



November 10, 2018  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz Tags: F-18F-18CU.S. Air ForceHornetF-35


As the U.S. increasingly places its faith in a fewer range of platforms, it can only hope the F-35 will prove itself at least half as adaptable, reliable, and versatile as the Hornet was.米国で今後の供用機種が減る中、F-35でもせめてホーネットの半分程度は適合性、信頼性、多芸ぶりを示してもらいたいところだ
April 12, 2018


クダネル・ダグラスF/A-18Cホーネットが米海軍での供用を2018年4月に終了した。攻撃戦闘機第34飛行隊 (VFA-34)の「ブルーブラスターズ」が「レガシー」ホーネットの海軍における最後の運用部隊となった。USSカール・ヴィンソン(CVN-70)が同機を運用した最後の空母となった。海兵隊は同機をしばらく供用するが、海軍はF/A-18E/Fスーパーホーネットとロッキード・マーティンF-35CライトニングIIを将来の航空隊機種と位置づけている。


ホーネットの設計は実証ずみだが、実際は何度も改修を受けている。今年初めに退役したF/A-18C型は三十年前に初登場した機体と大幅に異なる。


ホーネットは1983年にF/A-18AおよびB型として供用を開始した。単座のA型は海軍・海兵隊の第一線飛行隊に導入され、B型は主に訓練に投入された。精密攻撃能力で名を上げたとはいえ、最初から成功したわけではない。A/B型でAGM-62ウォールアイTV誘導爆弾の利用はAN/AWW-9データリンクポッドと併用が前提だった。そうでないとホーネットは汎用爆弾やクラスター爆弾を運用するだけの平凡な爆撃機になった。


その後の改修でAGM-65マーヴェリック赤外線誘導ミサイル、AGM-84ハープーン対艦ミサイル、AGM-88HARM対レーダーミサイルの運用が可能となった。改修対象はロット10、11機体でF/A-18C、D型として1987年に登場した。D型は複座で海兵隊が使用し、後席に兵装システム士官(WSO)が攻撃任務あるいは前線航空統制(FAC)任務にあたった。


だがなんと言っても大幅な能力向上は「戦闘攻撃機」として「攻撃」能力の獲得だった。1989年11月にロット12のF/A-18C/Dに「夜間攻撃」型ホーネットの呼称がつき、暗視ゴーブル運用型コックピット、夜間低空飛行能力が実現し、ヒューズAN/AAR-50熱画像航法装備 (TINS)を格納したポッド、デジタル地図表示、カラー多用途ディスプレイ(MFDs)も搭載され、これまでの緑色ディスプレイと交代しヘッドアップディスプレイ(HUD)も導入した。新型機はその後F/A-18C(N)の制式名称がついた。


翌年にホーネットで新型AGM-84Eスタンドオフ対地攻撃ミサイル(SLAM)の運用が可能となった。これは1991年の砂漠の嵐作戦で初めて実戦投入された。その後の改修でAN/APG-65 AN/ARC-210 HAVE QUICK/SINCGARS VHF/FM通信装置が導入され、エンジンも効率が良いF404-GE-402に換装された。最後に1993年のロット16からAN/APG-65 レーダーが大幅改修され、APG-73の名称となり「情報量、メモリー容量を増大」させ信頼性を上げ整備が容易になった。並行して新型ミサイルAIM-120AMRAAMの運用が始まり、視界外距離(BVR)での交戦能力が実現した。APG-73はF/A-18E/Fにも当初搭載されていた。


ただしホーネットは精密攻撃の実現に苦労した。マーヴェリックやウォールアイの運用は初期型から実現していたものの、レーザー誘導爆弾(LGB)の利用に制限がついていた。このためホーネット導入後も冷戦終結後の海軍航空部隊で全天候で完全武装の攻撃機として供用されていたのはグラマンA-6Eイントルーダーだった。


AN/AAS-38NITEホーク用の前方監視赤外線(FLIR) ポッドはF/A-18専用に開発されホーネットとほぼ同時に艦隊に導入された。だが初期生産モデルにはレーザーが装着されなかった。そのため別機(例 TRAMを装備したA-6E)や地上FACに標的を識別してもらう必要があった。またAN/ASQ-173レーザースポット追尾装置で標的情報を受信するポッドでハードポイントがひとつ占領され、その分兵装あるいは燃料搭載量が減る。このためF/A-18ではGBUシリーズのレーザー誘導爆弾運用に厳しい制約がつき通常爆弾を運用するのが普通だった。


だが1989年登場した「夜間攻撃型」ホーネットではレーザー照準捕捉測距装置 (LTD/R)がつき、自機で標的捕捉追尾ができるようになった。ただし依然としてASQ-173で二次的情報の利用が必要だった。その後四年間でAAS-38AがC/D型に完全導入された。ただし海軍の第一線ホーネット部隊がF/A-18C(N)に完全移行しLGB運用能力を実現するまで時間がかかった。1990年代中頃にAAS-38Bがロット17機材に搭載されレーザー照準装置が導入された。これでF/A-18単独で標的を捕捉しつつレーザーを活用できるようになった。


NITEホークでは低解像度画像と信頼性が難関だった。新型標的捕捉ポッドの模索が始まり、AN/ASQ-228ターミネーターII高性能標的捕捉FLIR(ATFLIR)が登場した。これで画像の解像度が上がり、高高度かつ長距離での対応が可能となり2000年代に導入が始まった。その後NITEホークにかわりスーパーホーネットの標的捕捉ポッドが供用開始された。ATFLIRは2010年代に入ってもAN/AAQ-28(V)4ライトニングで機能が補完され1K画像で最高水準が実現し、接続性が向上してデジタル処理も高度化している。このポッドは海兵隊機で今後も使われる予定だ。


F/A-18の運用・進化の経緯をみると 米航空戦力を振り返って興味深い事実が見えてくる。精密攻撃能力の性能は触れ込みこそ高かったが、実用化は1991年の湾岸戦争まで待たねばならなかった。海軍、海兵隊がここに加わったのは比較的遅く90年代中頃でとくにLGB投下が航空隊全般で可能となったのは遅い。ただ米空軍でも精密攻撃能力を「軽戦闘機」扱いのジェネラル・ダイナミクスF-16ファイティング・ファルコンでも相当の時間が必要だった。世紀が変わる頃になってもPGM能力はF-15Eストライクイーグル、F-117Aナイトホーク、F-111アードヴァークに限定されていた。対照的に現時点の米戦闘機材すべてで精密攻撃能力が実現しており、B-1BやB-52Hといった重爆撃機でも同様だ。

ホーネットは最重要なテスト証明の機会にもなっている。当初の構想と異なる環境やシナリオに人員、機材ともに投入されると適合、改良、課題解決が都度試され、結果として真のシステムの実力が実現するものだ。F/A-18の場合では米海軍海兵隊に加え世界数カ国の空軍部隊が運用しつつ改良が進んだ。米国で今後の供用機種が減る中、F-35でもせめてホーネットの半分程度の適合性、信頼性、多芸ぶりは示してもらいたいところだ。■

Edward Chang is a freelance defense, military, and foreign policy writer. His writing has appeared in The National Interest, The American Conservative, and War Is Boring.
Image: Wikimedia

2018年11月15日木曜日

★F-35開発は実は順調ではない? 信じられない向きはこのメモを見てください



Memo: Troubled $1.5 Trillion F-35 Program Has Another Big Problem トラブル続きの総額1.5兆ドルF-35事業に別の難関が

November 10, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35MilitaryTechnologyAir Force


ラブルが絶えないF-35事業は総額1.5兆ドル規模になったが重要な戦闘能力試験段階に進める状況にないとペンタゴンのテスト部門責任者が内部メモで8月に伝えていたことが国防情報センターの政府監視プロジェクトPOGOで明らかになった。そのとおりだとペンタゴン史上最大の調達事業となった同機開発がまたも停滞する可能性が生まれる。
同メモは2018年8月24日付けで進展が遅れており重要な戦闘能力評価段階の初期作戦能力試験評価(IOT&E)が開始できない状態と記している。POGOによれば軍関係者は開発段階が完了したかのように見せるべく実際は致命的な設計上の不具合なのに進展していると表記し何も対策していないという。
IOT&Eは調達事業で法規上は最後の関門で本格生産前に完了する必要がある。連邦法によればこの作業は作戦試験評価部門長が事業の必要事項すべてを満たしていると書面で伝えないと開始できないことになっている。
作戦試験評価部長のロバート・ベーラーはソフトウェア問題の解決までIOT&E開始を遅らせている。ベーラーのメモでは機体の主要ソフトウェア、ミッションデータファイル各種・自動兵站情報システム(ALIS)、テスト場のインフラ関係ソフトウェアを全てアプデートするまで試験は開始できないとある。
このメモからは個別問題が解決可能なのかわからないが、これまでの試験報告で「F-35がAIM-120を運用する際に致命的技術欠陥がある」と伝えられており、パイロットが機関砲を発射すると「標的への射程方向が偏る」事象も報告され「常時地上目標に命中させられない」とある。
ペーラーはF-35の次期主要ソフトウェアでは重要な戦闘任務につながる攻撃、対空、制空、電子戦の能力追加が必要と記した。ミッションデータファイルは各種地図、脅威対象の電子特徴、敵装備の配備状況のほか敵味方識別につながる友軍装備情報が入る。ALISはトラブル続きだが整備補給ネットワークとなり診断機能、サプライチェーン管理、整備支援を組み込んでいる。これまでのテストでALISが機能するのは「ALIS管理者、整備要員が大幅に手動作業」する場合のみと判明している。
軍関係者は2018年9月15日をIOT&E開始の期限と設定していたが、ベーラーは相当の圧力のもとでも開始期日をおよそ二ヶ月遅らせそれまでにソフトウェアの改定が手に入ると期待する。
この例から政府機能監視機能の重要な意義が見える。議会は1983年に作戦試験部門をペンタゴンに立ち上げ、議会関係者に新型兵器装備の正確な性能情報が入るようにした。この部門が生まれる前は議会に届いた情報は官僚主義のフィルターを通したもののみで各装備の本格生産の前に正しく評価する情報は皆無だった。
本格生産開始は戦闘能力試験とともにあくまでも性能そのものを基礎とすべきであり、事前設定の日程ありきではないはずだ。試験機に実戦で使用に耐えないソフトウェアや装備を搭載しても意味がなく、実戦想定の評価をしない装備を納入すればパイロットが危険になる。今回、試験評価部長が契約企業より先に軍関係者に実態を伝えてくれたことは喜ばしい。■
Dan Grazier is the Jack Shanahan Military Fellow at the Center for Defense Information at the Project On Government Oversight (where this first appeared).

コメント:F-35に全幅の信頼をおく向きにはこの記事は受け入れられないでしょう。ソフトウェアは百万行規模と言われ、手直しするだけでも大変です。しかも今回指摘のあるようにソフトウェアは一種類だけではないということで大変な作業になりそうですので事業費はさらに膨らみますね。機体が完成しても使えない装備のママの張子の虎では意味がありませんし、今後相当の期間にわたり戦力増強のアップグレードを繰り返すF-35はこれまでの機体のコンセプトを超えたシステムとして認識すべきなのでしょうが、何度も繰り返しているように西側自由世界の防衛力を骨抜きにしかねない存在だと思います。F-35懐疑派は今や少数になっているようですがあえて意見を述べました。

2018年11月14日水曜日

★海上自衛隊>3,900トン新型フリゲート艦建造へ

MHI to build two new multirole frigates for JMSDF 三菱重工が海上自衛隊向け新型多用途フリゲート艦二隻の建造を受注

Kosuke Takahashi, Tokyo - IHS Jane's Defence Weekly
02 November 2018
  
MHIが防衛省から受注したJMSDF向け新型多用途フリゲート艦のコンピュータ・グラフィック。 Source: MHI


菱重工業(MHI)から防衛省(MoD)より海上自衛隊 (JMSDF)向け新型多用途フリゲート艦4隻中最初の二隻建造を受注したと発表が11月1日あった。
MHIは契約金額規模を明らかにしていないが、MoDは2018年度予算で922億円で2隻建造分を計上している。JMSDF引き渡しは2022年3月の予定。
今年8月には995億円で残る二隻建造の概算要求がMoDから出た。こちらは2023年3月引き渡しの想定だが契約は未交付だ。
MHIのフリゲート設計提案は三井造船(MES)およびジャパンマリンユナイテッド案を抑えて採択された。ただしMESがMHIの主契約企業に選定されている。


排水量3,900トン、全長130メートル、全幅13メートルでMHI長崎造船所で一号艦を建造し、二号艦はMESの玉野事業所で建造される。


MoDによれば新型フリゲート艦は日本周辺の海域における監視活動とともに多機能艦として対機雷戦も行う。従来は掃海艇で行ってきた任務だ。


兵装ではヘリコプター1機を搭載し、無人水上・水中機(USV/UUV)も運用する他、海上用に改装した中SAM改中距離対空ミサイル、5インチ(127ミリ)62口径砲一門、垂直発射装備、対艦ミサイル、シーRAM近接攻撃装備も搭載する。

コメント:海上自衛隊では30FFMの名称が使われています。FF=フリゲートにM=対機雷戦能力がつくのは無人機技術があってこそのことですね。コストパフォーマンスに優れた艦になりそうですが、まず4隻建造するのは手直ししながら建造する構想なのでしょうか。乗員100名というのは今後を睨むとあと一段の省人化が必要ではなりですかね。

2018年11月13日火曜日

韓国向けA330給油機一号機のフェリー飛行完了

RoKAF’s first A330 MRTT arrives in South Korea for acceptance trials 韓国空軍向けA330 MRTT初号機が韓国に到着

Gabriel Dominguez, London - IHS Jane's Defence Weekly
12 November 2018
  
スペイン・へターフェを離陸する韓国向けエアバスA330MRTT初号機。 Source: Airbus

国空軍(RoKAF)が4機発注していたエアバスA330多用途給油輸送機(MRTT)の初号機が韓国釜山の金海 Gimhae航空基地に到着し、受領公試が行われる。
エアバスはエアバスとRokAF混合乗員が同機を操縦し、エアバスの最終組立ラインのあるスペイン・へターフェからカナダ・ヴァンクーヴァー経由でフェリーフライトを完了したと11月12日に発表。
同機は金海で地上及び飛行テスト各種を受ける。RoKAFはエアバス派遣のチームから正式な同機納入まで支援を受けると同社は述べつつ、テスト期間の長さについては言及していない。
A330MRTT四機の納入完了は2019年末の見込み。供用開始でRoKAFの北朝鮮攻撃で有効範囲が広がり、朝鮮半島外での作戦も視野に入る。
韓国は2015年にA330 MRTTを4兆ウォン(12億ドル)で採用し、ボーイング案、イスラエル航空宇宙工業(IAI)案を退けた。ボーイングはKC-46Aペガサス、IAIはボーイング767-300多任務給油輸送機(MMTT)案を提示していた。■

コメント:さて韓国空軍は念願の空中給油機で何をするのでしょうか。同国政府を見ると早く北朝鮮に統合されたいと思っているとしか見えませんが、さすがに国防の第一線を担う軍は違う味方をしているのでは。しかし相互の見解の相違が度を越すと何十年ぶりで軍事クーデターも発生しかねませんが。軍も「国民感情」の前に屈服することはないよう祈るしかありません。A330を選択したのは日本のKC-46の後追いはしたくないという理由だったら笑止千万ですね。

民主党が過半数となった米下院は国防政策にどんな影響を与えるのか


Democratic House Hurts Space Corps, Nuke Modernization, & Pentagon Topline 民主党多数となった米下院で宇宙軍創設、核兵器近代化、ペンタゴン予算に暗雲

By MARK CANCIANon November 09, 2018

NASA photo
主党が下院で多数議席を奪還したことで国防総省で大きな影響が三点生まれる。トランプ大統領が優先順位をつける新型核兵器開発、宇宙軍創設はともに見通しがつかなくなり、国防予算は減少に転じ、逆に監視監督機能はどんどん強化されるだろう。
悪影響と好影響
一番大きく痛手を受けそうなのが核兵器近代化で下院軍事委員会委員長就任が予想されるアダム・スミス議員はじめ民主党員は不要、過剰かつ不安定につながると批判している。
オバマ大統領が核兵器近代化を新START条約調印の見返りに支持したのは近代化で兵器数を減らせばそれだけ米国の安全保障につながるという理屈だった。つまりオバマ構想に盛り込まれなかった内容が脆弱で、特に低出力核兵器、長距離スタンドオフ巡航ミサイル(LRSO)がここにあてはまる。低出力兵器が危険と言われるのは通常戦から核戦争へのエスカレートが容易になるとするためだ。巡航ミサイルが無用と言うのは米爆撃機にはB61のように出力調整型爆弾がすでに搭載されているからで、推進派はB-52のような非ステルス機には長距離兵器が敵標的の撃破に不可欠と主張する。
ミニットマンICBMの後継となる地上配備戦略抑止力兵器も民主党の攻撃対象となりそうだ。だがこれもオバマ政権が承認していたのになぜこうなるのか。兵力管理専門家から地上配備ミサイルは攻撃第一波の前に脆弱であり、不安定化要素になるとの批判がある。というのは大統領に「今使わなければ負ける」と強迫観念にとらわれる可能性が生まれるからだ。コロンビア級弾道ミサイル潜水艦はそのまま残るだろう。核抑止力三本柱の中で潜水艦が残存性が一番高いと言われるからだ。B-21爆撃機も残りそうなのは通常兵器運用能力が高いからだが配備は遅れるかもしれない。
トランプ大統領がめざす宇宙軍構想も挫折しそうだ。賛成派、反対派で意見が分かれる中、戦略的な捉え方の前に大統領個人の構想という事実があり、大統領も共和党マイク・ロジャース下院議員の構想を借用したに過ぎない。ロジャース議員は戦略部隊小委員会で影響力を減少させる。民主党多数となった下院が目に見える形で政治的勝利をトランプに与えるとは考えにくい。
逆に追い風を受けるのは社会文化領域だ。トランスジェンダー隊員は支援を期待できる。また女性向け事業でも同様だ。性的嫌がらせへの保護が拡充されるだろうが、直近の国防予算認可法でもこの内容の一部が取り込まれている
Cancian/CSIS graphic
国防総省予算の時系列変化(実績=実線、予測=点線) Graphic by Mark Cancian, Center for Strategic & International Studies
国防予算が削減されるのはほぼ確実
前出のスミス議員は軍事委員会委員長就任を目され、国防予算が巨額すぎるとかねてから発言している。民主党議員で同様の発言をしている例は少ないが、国防は選挙の争点ではなく、あえて自ら物議を醸す発言に踏み切る候補は皆無であったことを考えると、各議員には意見を出す余地があるようだ。
ただし選挙公約から明らかに民主党は左寄りに変化しており、国内向け事業に巨額予算を投入するとある。上院は共和党が多数のため予算案がそのまま通過できないとしても民主党が国防関連を予算上の競合支出項目と見るのは確実だろう。
つまり、これまで五年間ほど民主党は国防支出への賛成の条件として国内向け支出増を求めてきている。
共和党指導部は国防予算増を求める国防タカ派に「平衡」原則で対応してきた。タカ派は依然として強力な存在であり政府機能の停止を回避し多数党としての面目を傷つけるのを防いできた。国防タカ派は平衡効果として海外緊急作戦(OCO)の予算項目を使ってきた。
目が話せないのが民主党内左派の動きだ。仮に国防予算にかこつけて妊娠中絶、海外派兵、移民対策など自らの主張を盛り込ませる動きにでればすべてが前に進めなくなる。だが可能性が高いのは平衡状態が続くことで、国防予算増額の条件で国内案件への予算手当を求めてくるだろう。共和党内の予算均衡強硬派が勢いを失い少数党内の少数派になったため、今後は予算赤字はだれも気にしなくなるのではないか。
ただしトランプ政権で予算を統括するティーパーティからOMB長官に転じたミック・マルヴェニーは別だ。トランプ大統領から総額300億ドルの減額を2020年予算案に求めた人物だ。これは当初想定の4パーセント削減に相当し、2019年の歳出案比で2.3パーセント減になる。その他エネルギー省の安全保障関連費目も加えれば330億ドルになる。つまり国防予算は今や左派右派双方からの攻撃を受けており、2019年度予算がピークになる。
Courtesy of the Office of Rep. Smith
アダム・スミス下院議員

監視の目が強まる
反対党が議会内の予算執行と政府活動の監視が手ぬるいと政権支持派を批判するのは常だ。公聴会で反対党に政権を公然と批判する仕組みが提供され、政権を揺さぶり、短期的には無理でも長い目で法案づくりの基礎にできる。下院を支配する民主党は疑義の提示だけでなく公聴会テーマも選択できるようになった。対立を招きそうな大きなテーマ2つがある。軍事力行使とサウジアラビア支援だ。
ブッシュ、オバマ、トランプと三政権が海外紛争介入を正当化してきたのは2001年以来毎年の軍事力行使認可法が根拠だ。批判派は現在の作戦多数は9/11直後の狂乱状態で法案で想定外の事態だとする。したがって今後の認可で公聴会や討議が必至だろう。民主党に軍事作戦を批判する舞台が生まれ、特にアフガニスタンでは20年にも渡り大きな成功がないだけに批判の的となりそうだ。
もうひとつの緊張要因がサウジアラビア支援で特に同国がイェメン介入していることが問題だ。カショギ記者殺害で関係が悪化している。そのため下院公聴会でサウジ向け武器販売が取り上げられれば武器販売全体に議論が拡大する可能性がある。
最後に専門家予想では下院内閣委員会はトランプ大統領のビジネス関係の調査に乗り出すという。国防関連の委員会も同じ動きをするか不明だが一部は加わるかもしれない。
つい9月まで国防関連は予算案が会計年度前に通過するなど順風満帆だったし、今後の予算見通しも適切と見られていた。今やすべて見えなくなっている。この状況で希望の光はあるのか。各シンクタンクが今後分析を出してくるはずだ。またお伝えしたい。■

コメント:下院で民主党が多数となったと反トランプの論調のメディアが大喜びしているようですが、議決で党による拘束がない米国では単純に与党野党と区別できないのです。当方は野党という言葉に疑義を感じるので反対党と訳出しました。この結果は今後10年の国防力後退を生み、米国人に深い傷を与えるでしょうし、なんと言っても安堵するのはロシア、中国、イランといった望ましくない勢力でしょう。中国が今回の選挙結果にどれだけの影響力を行使シたのかシなかったかの検証は別途でてくるはずですが、左派がいつまでも左派のままでは日米ともに「民主党」とは厄介な存在(すくなくとも安全保障上で)なようですね。

2018年11月12日月曜日

J-31はこれから本格開発し、中国海軍空母に搭載する構想のようだ

Aviation Week & Space Technology

Avic’s J-31 Fighter Is a Winner After All AVICのJ-31は失敗機ではなかった

Nov 9, 2018Bradley Perrett and Steve Trimble | Aviation Week & Space Technology
J-31試作型の一号機は2014年の中国航空ショーに初めて姿を見せた。Credit: Yan Siming/International Aviation

Avic傘下の瀋陽航空機がJ-31戦闘機試作型の姿を2012年に初めて見せるとすぐさまアナリスト各位は中国軍向けの新型機ではないと見てきた。技術実証機以上の存在ではなく、国営企業の同社が二回連続で戦闘機競作に敗れて腹いせに作っただけの機体と見てきた。
そのJ-31が今や政府公認事業となり、J-15海軍版フランカーの失敗の穴埋め機材の位置づけになっている。実はJ-15のメーカーも瀋陽航空機であり、中国海軍のみならず空軍もJ-31を求めている。
他方で中国のもうひとつ国営企業、Avicの成都航空機が瀋陽航空機の提案に打ち勝って採用されたJ-10とJ-20の改良に取り組んでいる。11月6日から11日にかけて珠海で介されたエアショーチャイナでAvicが推力偏向ノズル付きJ-10を発表し、Cetcが展示したレーダーが広範囲の火器管制能力につながるとして注目を浴びていた。
J-31は国内向けで政府資金で開発が進められてきたと公式筋が説明している。同機は海軍向けの供用を想定していると同上筋は述べており、ここ二年ほどで浮上してきた噂や観測を裏づける格好だ。中国空軍もJ-31に関心を示していると同上筋は述べながらこれ以上の情報はもらえなかった。
瀋陽航空機はJ-31試作機を二機製造し、2016年に姿を表した二号機は一号機より大きい。
中国海軍がJ-31を艦載機としてJ-15の代わりに必要としているのは明らかだ。これも瀋陽航空機の製品であるJ-15は飛行中制御に難があるといわれ、空母着艦では大問題だ。
J-31はFC-31の別名でも知られ、海軍艦載機の地位を成都航空機のJ-20と競っていた。J-20は大型機であり空母搭載用途は考えにくい。失速速度を低く押させる必要があるが同機の主翼荷重は高く見える。
中国空軍がJ-31をここまで強く望んでいるとは意外だが海軍が本格開発を承認したことで説明がつく。空軍が瀋陽航空機のJ-31提案を8から10年前に一度却けたのはJ-10で迅速に機材を揃える必要があったためで、ここまでの高性能機は不要としたためでもある。第一線部隊に老朽機材が多く配備されていたのだ。その緊急性のためJ-10生産に全力を上げ輸出の可能性まで検討する余裕がなかったとAvic関係者が述べている。
だがJ-10は海軍向けJ-15の代替策にならない。同機は単発機であり、極端に高い信頼性がないと海上運用で安全性が深刻な問題になる。
当初のJ-31は最大機体重量が25トンだったが二号機は28トンに引き上げられたと中国報道で伝えている。海軍用途仕様では30トンになるとの情報もある。航続距離は1,500キロに延長されていると同報道にあるが、実際のミッションや兵装を特定しなければこんな数字に意味はない。■
コメント 本当にJ-31が今後本格開発されるのでしょうか。これまで塩漬けのままでFC-31として劣化版の輸出専用機友いわれていたのですが。これから開発し直すとして建造中の空母二号艦で試験運用するのでしょうか。もともとF-35の設計資料を大量に盗んでできたと言われる機体であり、東シナ海で日本のF-35Bがいわば本家としてこのバッタものの機体と対峙する日が来るのでしょうか

米海軍潜水艦にアグレッサー部隊誕生。その他3Dプリンター技術などで将来の姿が変わる

Navy Creating Attack Sub Aggressor Unit to Train to Fight Against Russia, China 米海軍が攻撃潜水艦でアグレッサー部隊を創設しロシア、中国に勝つ訓練を開始する

November 8, 2018 4:00 AM • Updated: November 7, 2018 8:58 PM
ヴァージニア級高速攻撃潜水艦USSミズーリ(USS-780)。May 31, 2018. US Navy Photo

ARLINGTON, Va. — 米海軍潜水艦部隊にアグレッサー戦隊が生まれる。中国やロシアを想定した即戦力体制の効果をさらに引き上げるねらいがあると米海軍潜水艦部隊司令官が説明している。

チャールズ・リチャード中将中将は8月の就任式典で隷下部隊に「戦闘準備を進めよ」と述べ注目を浴びた。

中将は国家防衛戦略構想を反映しここ数ヶ月に渡り潜水艦部隊の構想を整備している。訓練、戦闘態勢の認定、新規手法の開発やハイエンド戦支援体制などだ。

構想は米潜水艦部隊及び支援組織に向けた司令官の施策方針と呼ばれ、攻撃潜水艦部隊の訓練体系の抜本的変革を目指すとリチャード中将が海軍潜水艦連盟の年次総会の隻上で披露した。

「高速攻撃潜水艦向け訓練期間を元に戻すことでハイエンド戦に対応できるようにする。戦術即応体制評価と呼んできた体制に戻し戦闘即応体制評価として戦闘に中心を置く」(リチャード中将)

「第一線配備への認証過程を見直し重複をなくし、適材適所を目指した。潜水艦部隊ですべてを競わせる。実戦同様に勝敗をはっきりさせる。敵対勢力がこちら以上の水準だと困る。敗者になれば帰港できないだけだ」

アグレッサー戦隊はこの延長でハイエンドの潜水艦対潜水艦の戦いで米海軍が勝利することを目的とする。リチャード中将は海軍航空部隊の「トップガン」からヒントを得たと認めている。

会場で海軍広報官サラ・セルフ-カイラー中佐が構想ではトップガンと違い訓練専用艦は配備しないとUSNI Newsに述べた。かわりに人員(規模未定)は専属とさせ、リチャード中将は現役退役の海軍要員と民間人の想定と述べている。

リチャード中将は新規部隊を「敵側部隊の戦術を再現し訓練、認証演習に投入し、海軍航空部隊から着想を得たアグレッサー戦隊として敵対勢力の能力で我が方部隊と対決させ最大限まで現実を再現した訓練とする。実戦時に発揮できる力を与えるのが目的」と述べた。

司令官の構想では同時に海中迅速戦力整備構想Undersea Rapid Capability Initiatives (URCI) と呼ぶ作戦構想、戦術、整備戦略その他の実現も進めるという。

「内容の性質上詳しくお話できないが、今後実現したい構想は26通りあり、トップが戦略抑止力であり、URCIに13個、作戦構想が11あり、その他海中戦の戦力増強につながる構想作業がある。さらに次世代兵器、複合ドメインセンサー、通信装備、航法支援装備、無人自律技術があります。一部では革命的な効果が生まれる」

迅速戦力実現のハードウェア面ではリチャード中将はデジタル戦整備室が全力で「人工知能、機械学習の海軍への応用、導入」を進めていると紹介。またDARPAが海軍研究本部と無人装備のプロトタイプ、高性能センサーの開発を進めている状況を紹介し、ここ数年で大きな進展があったと述べた。

さらに中将は付加製造(3Dプリンター製造技術)の艦艇導入に触れ、即応体制の引き上げならびに兵站上の負担軽減につながると述べた。「潜水艦上で海上整備修理体制の将来を先取りしている。付加製造の実証を積極的に行い各艦に迅速に導入する。まもなく3Dプリンターが全艦に搭載される」

中将はSUBSAFE基準は今後も守るとしつつプリンターは輸液な存在になると述べた。攻撃型潜水艦USSヴァージニア(SSN-774)の乗組員は自前で3Dプリンターを購入し「部品を自製し航海日数を維持できた。こうした問題解決方法は連日のように部隊内で見つかっている」■

コメント:空のトップガンが生まれたのは空中戦での実力低下を憂えてのことでしたが、水中戦でも同様なのでしょうか。専属艦はないということですが、かつてスウェーデンの通常型潜水艦を借り上げたように同盟国の潜水艦をアグレッサーにしてはどうでしょうか。海上自衛隊のそうりゅう級が最適かもしれません。日本側乗組員にとっても「赤」の戦術を体得できる機会になるのでは。

2018年11月11日日曜日

米中が台灣巡り開戦に向かう可能性はあるのか、日本はどうするのか

Is a U.S.-China Clash Over Taiwan Inevitable? 台灣を巡る米中武力衝突は不可避なのだろうか


November 9, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Skeptics  Tags: WarMilitaryTechnologyChinaTaiwan
中の貿易戦争で決着の兆候がなく、中国の南シナ海政策が両国間で最大の懸念のまま、米中外交安全保障対話が重要性を増している。ジム・マティス国防長官、マイク・ポンペイオ国務長官は最新の対話は「信じられないほど生産的」であり「米国は冷戦や対中封じ込め政策は希求しない」とともに述べている。
報道を意識し安心させる発言と裏腹に米中関係が良好ではないのは明らかだ。最上の表現でも機能不全であり、開戦の可能性が高まるという気が休まらない状況だと言える。南シナ海の領有権問題がここ数年間背後にあり、中国は戦略拠点構築を続けたままだ。貿易問題以外では最大の懸念が台灣問題で米中両国は共通点を見いだせない事態におちいっている。
台灣を巡る見解相違は今に始まったものではない。米中国交樹立の前から台灣問題が両国関係で重しとなってきた。中国政府が本土に台灣を併合する政策で変更の可能性は皆無だ。米国政府が台湾関係法を放棄するあるいは米台防衛関係を縮小する可能性も同様に皆無だ。これまで米中両国関係者は台湾問題の対処として「合意しないことに合意する」態度に努めてきた。1982年の台灣向け武器輸出に関する米中共同声明は現在も両国間で有効であり、不完全ながらとりあえず十分な見返りが期待できる、つまり米政府が中国の台灣領有権主張を認める一方、中国は台灣への米製防衛装備売却を認めてきた。
ただしトランプ政権は冷戦終結後で最大にタカ派と言われる態度だ。大統領就任前にトランプが台灣総統に電話したが、この40年で誰もしていないことだ。中国政府は慌て、新大統領は1979年以来の米中関係の基礎原則、ひとつの中国政策にあえて手をかけるつもりなのかと警戒した。政権最初の二年間で米政府は17.5億ドル相当の軍事装備輸出を認め、魚雷、早期警戒装備、米製戦闘機の予備部品まで多岐にわたる。米議会はもちろん喜んで賛同した。2017年の台灣出張法、2018年の国防予算認可法はともに米台の国防関係を強化し、米台両国海軍艦艇の相互訪問を促し北京は半狂乱になった。
中国本土を隔てる台湾海峡でも動きがあった。4月、人民解放軍が実弾演習を行い、以前にもあった演習だが今回は全国人民代表者会議で習近平が中国は自国主権に挑戦する勢力に果断に対応していくと表明した一ヶ月後のことだけに注目された。「偉大なる母国領土は一インチといえども奪わせない」
台灣海峡上で米中海戦を予想する向きはないだろうが、両国関係では貿易、知財、サイバーセキュリティから軍事装備近代化や南シナ海まで戦略上の対立が中心となっており、安定化の兆しは見られない。米政府は引き下がる態度を示さず、米国は正しい倫理道徳に立つ国との信念を固持している。USSアンティータム、USSカーティス・ウィルバーの二隻が台湾海峡を通過し、航行の自由演習の一環として実施したが、トランプ政権になり太平洋での同演習実施は増えている。米国防関係者が台湾海峡で中国海軍との対決を想定するのは当然で南シナ海でも同様だ。北京大学のJie Dalei节大磊 は「同海峡で危機状況が発生しても想定外ではない」と書いている。

関連記事(未翻訳)

DATE IMPORTED:August 24, 2010Soldiers carry a surface-to-air missile named "Tien-Chien", or "Sky Sword" in Mandarin, onto a launcher during a military exercise at an air force base in Chiayi, southern Taiwan, August 24, 2010.

中国は台灣全面侵攻は(今の所は)実行不能 China Can't Launch a Full-Scale Military Invasion of Taiwan (Yet)

Image: Flickr

待ってろ、中国:米海兵隊は台湾へ派遣されるかGet Ready, China: Could the U.S. Marines Be Heading to Taiwan?

北朝鮮の真の脅威は戦争ではない(崩壊だ)The Real North Korea Disaster Isn't War (But Collapse)



両陣営が軍事挑発行動を露骨に示す、あるいは誤解から海上、空中で衝突事件が発生すれば世界最大の経済、軍事大国同士が国際危機を簡単に招きかねない。米中ともに瀬戸際へ追いやらずに、緊張緩和への道を殺したくところだ。
ただし中国は台灣を譲れない一線ととらえており、米国が台灣防衛をアジア政策の中核要素と考える中で過失の余地は危険なほど少ない。
Daniel R. DePetris is a world affairs columnist for Reuters, a frequent contributor to the American Conservative and the National Interest , and a foreign-policy analyst based in New York, NY.
Image: Reuters

コメント 台灣問題を避けると結局中国に有利な状況を作るだけです。これまでの日本なら台灣は専守防衛の対象外と逃げられましたが、世界の状況、日本の防衛コミットメントの状況が変わった今となっては日本としても傍観できる問題ではありません。国連安保理メンバーの中国があからさまな武力侵攻を行えば世界の非難は避けられないでしょうが、中国は自国問題として外国の干渉を退けるでしょう。台灣は日本経済にとっても重要な地域であり、通商交易上も台灣の自由が奪われる事態は看過できないと思います。これまで朝鮮にばかり目を向けてきましたが今や日本にとって本質問題とも言える中国の病んだ状況を直視すべき事態でしょう。