2018年11月27日火曜日

第一次大戦事例から日中開戦の勝者を占う

What World War I Tells Us About a China-Japan War Today 

第一次大戦の先例から日中開戦の様相がわかる

"The Great War at sea presents an example worth emulating in certain respects and modifying or rejecting in others. Let’s devise forces capable of mounting a low-cost strategy, keep the alliance sturdy, and cultivate mariners, soldiers, and aviators who extract full value from their fighting machines. Do that and Tokyo may yet prevail."
第一次大戦時の海上対決にはそのまま適用できる要素の一方で事情が異なる要素もある。低費用戦略の実行にむけ戦力構築し、同盟関係を堅固に維持し、戦闘マシンの性能を最大限に引き出せるよう陸海空の隊員を育成しようではないか。これが実行できれば日本は優位に立てる


November 24, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaPLANMaritime InsurgencyMaritime MilitiaSouth China Sea
一次世界大戦の研究から現代のアジア地政学を理解し対処方法もわかる。

では第一次大戦が中国と日本の軍事バランスとどう関係するのか、また東アジアで戦火がひろがればどうなるのか。日本では中国人民解放軍(PLA)が自衛隊(JSDF)を圧倒するとの見方がこれまで主流だった。人口構成、経済力、国防予算等々すべて中国が優位だ。


大陸国家の中国で驚異的な経済成長と国防予算の拡大が長年続く一方、島嶼国の日本で経済が停滞している対照は否定できない。経済が好調なら軍事力増強に必要な材料が入手可能となる。逆に経済が不調だと軍事装備の整備が思うに任せない。中国は経済改革の結果を享受してきた。すべての点でPLAに有利な状況に見える。


だがそこまで単純ではない。戦闘では装備数が全てではない。逆だ。使える装備を組み合わせ戦術面で有利な状況を生み出す能力こそ重要であり、軍事装備は一国の兵力の一部にすぎない。地理条件も重要だ。このためクラウゼビッツは各指揮官に正しい戦力評価のためには戦闘部隊のもつ能力とともに状況把握を忠告している。ハードウェアの合計数は一部にすぎない。


この意味で地理は日本にも重要だ。日本はもうひとつの島嶼国家と似ており、大陸の強国に直面した状況が同じだ。この国は大陸に居座る侵略国に真っ向から対決した。それが世紀末の英国であった。英諸島は低地諸国、ドイツ、バルト諸国から大西洋に向かう航路を横切る形で位置している。強力な英海軍にとって北海、バルト海で北西ヨーロッパ諸国の海軍部隊を封鎖するのは港湾施設が多いフランスや地中海の封鎖に比べれば容易な仕事だった。


英海軍としては航路を2つ封鎖すれば事たりた。狭い英仏海峡では機雷を敷設し、小型魚雷艇を配備し、沿岸に砲兵をおけばよかった。これに対しスコットランドとノルウェーの間は広い。英海軍の拠点スコットランドのスカパ・フローからノルウェー沿岸まで250マイルの距離だ。英本国艦隊はドイツ大海艦隊に対抗して防衛線を広く設定する必要に迫られた。これで艦艇を集中して使うことになったが実効性ある戦略だった。


だが日英両国の類似はここまでだ。英国の海洋支配は以前から続いていた。日本が世界規模で海洋大国であるとはいえない。それでも英国が北海沖や英仏海峡で実施した封鎖作戦を日本が中国北部で踏襲することは可能だ。


日本本土および南西の琉球、尖閣諸島は台灣以北の中国本土港湾を取り囲んでいる。中国が「第一列島線」を抜けるため特定の海峡を通過する必要がある。島の形状だが不沈の砦になる。そこで島しょ部で防備を固め、戦闘艦艇あるいは軍用機で海峡を封鎖すれば中国本土に向かう海運空運を抑える事が可能だ。


中国の経済活動、軍事作戦にとって西太平洋からインド洋へのアクセス確保が不可欠だ。このアクセスをJSDFが制限すれば中国に深刻な事態となる。その結果、PLAの作戦活動も低下する。中国は封じ込め可能だが、帝政ドイツでは不可能だった。


最良の選択は小型舟艇や航空機を、有人無人問わず、大量運用し、列島線防衛の第一線としつつ対艦、対空ミサイルの地上配備だ。この実施にかかる費用はイージス艦建造よりずっと安い。大量装備できる。これは予算的に実行可能な戦略だ。日本は中国の国防予算規模・軍事力構成を逆手にとれる。海上自衛隊(JMSDF)に英海軍戦艦・巡洋艦艦隊による哨戒封鎖線の設定は不要だ。日本に必要なのは「戦隊」級艦艇である。


狭い英仏海峡での封鎖作戦はスコットランド-ノルウェー封鎖よりJSDFに参考になるはずだ。日本は安価にこれを実施できる。


英国にはUボートの封鎖線突破が別の問題だった。水上を進み英海軍封鎖艦艇をすり抜け大洋に移動し商船隊を沈めた。だがこの点でも現代の日本に有利な状況がある。海峡付近の海底地形から潜水艦の動きはある程度予測がつく。潜水艦は既知の移動経路をたどり大洋に移動する。また地形のため潜行深度にも制約がつき、封鎖線突破が困難となる。潜水艦の行動範囲が狭まるため対潜作戦は容易だ。


つまりJSMDFはじめ日本側は相手に対抗する規模の装備を展開せずに100年前の英海軍がと同じ封鎖作戦を効果的に行える。クラウゼビッツの言い方を借りれば、軍事力での優位性は中国にあるが、地理条件で日本が有利だ。両国が一対一で対戦すればどちらに軍配が下るかは明らかである。


だが東アジアで戦火が開けば一対一の戦いになるだろうか。ここからは第一次大戦の経験と離れる。今日の日本は海洋支配の大国ではなく、海洋覇権では米国という大国との同盟関係から多大の恩恵を受けている。日米両国の関係が続く限り片方に足りない戦力は他方が補う構造のままだ。


JSDFの戦力に米太平洋方面の軍事力が加われば戦力バランスの真の姿が見えてくる。


英米同盟が1914年時点で成立していたらどうなっていたか。米国はその時点で世界大国の座についていなかったが国力は増強中だった。その経済力、工業力は英国の支配力に陰りが見え始める間も着実に伸びていた。ドイツ皇帝とその一味がベルギー、フランス侵攻を思いとどまっていれば米国が別の大国として協約締結国になっていただろう。米国がヨーロッパの地政学を重視していれば平和が続いていたかもしれない。


だが米国ではアジアの政治状況を重視する姿勢がここ数十年続いている。日米安全保障条約は1950年代に生まれ、現在の条約は1960年改訂版であり、冷戦期、脱冷戦期もアジアの地政学競争で中国が台頭しても一貫して堅固に維持されている。日米安保はNATOを形成した北大西洋条約とならび同盟関係の黄金律とでも言うべき存在だ。


そこで有事に東アジアの軍事バランスが不明確になれば、日米同盟が地理上の優位性を発揮する。各種戦闘シナリオや予見で同盟両国に実戦で必要となる行動が可能なのかを検討しているところだが実戦に近くなればなるほど欠点が露呈される部隊構成を鍛え直し戦略を更新できるのだ。

英国が「輝かしい孤立」から抜け出し大国同士の戦闘に向かったのは100年前のことだ。これにより英国は一大方向転換を遂げドイツは英国の大陸政策理解の再検討を迫られた。日本はPLAに単独で対決する必要はないと理解しており、中国もこれを知っている。

そこで部隊の技量水準、戦意の問題が出てくる。戦争とはつまるところ人間の行為だ。第一次大戦でブラドレー・フィスク提督が海軍を戦闘マシンと位置づけた。(これは陸軍や空軍にもあてはまる) マシンの作動には高い技量を持つ使用者が不可欠だ。熟練整備員ならマシンの最大能力を引き出せる。だが中途半端で士気の低い要員がマシンを扱えば性能の一部しか使えない。対峙する両軍が同様の装備、センサー等を使っても一方が負ける。敗北を喫するのは訓練が足りない、戦略が不備がある、戦術や作戦で欠陥がある側だ。あるいは戦意が第一線部隊に不足しているなど人的要素がもろい側が敗北するのだ。

人的能力は把握が困難だが決定的要素である。中国が本格的外洋部隊を前回運用したのは600年前の明朝のことで、海洋戦闘では新参者といってよい。これに対し日本側には多大な実績がある。帝国海軍時代の羨ましいほどの記録だ。日本研究者のAlessio Patalanoは今日の海上自衛隊は第二次大戦時の帝国海軍は無視していると記している。逆に東郷平八郎提督が率いた明治時代の海軍が誕生後数十年で中国、ロシアを撃破した事実に注目している。これこそが伝統というものだろう。

日本には大国を屈服させた実績があり、しかも堂々とこれをやってのけたのだ。

そうなると日中戦争の結果を占うのは単純かつ明白だ。また良い結果となる。アジアでの意見対立を軍事力で制圧できる自信に疑いが残れば中国指導部も寛容さを示さざるを得ない。中国側に疑義や恐怖があれば日米同盟にとっては好結果だ。

第一次大戦時の海上対決にはそのまま適用できる要素の一方で事情が異なる要素もある。低費用戦略の実行にむけ戦力構築し、同盟関係を堅固に維持し、戦闘マシンの性能を最大限に引き出せるよう陸海空の隊員を育成しようではないか。これが実行できれば日本は優位に立てる。■

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific (second edition due out next month). The views voiced here are his alone.​
Image: Reuters.


今年は第一次大戦終結100周年ですのでいろいろな考察がでてきていますがホームズ教授が日中での有事を想定してくれました。参考になりましたでしょうか。日本としては賢く戦力を整備運用して中国に無駄な労力を払わせるわけですか。なんでも大きいこと、量が多いことを自慢したがる中国ですからやすやすとこの作戦にひっかかればいつかロシアのように経済が破綻してしまうかもしれません。そうなると中国にとって日本がますます目の上のたんこぶになるはずで、「見えない侵略」つまり日本を内部から崩壊させようとする工作も激化しそうです。国と国の関係に「純粋な友好」はありえず、敵と思って一定の実力を維持することで「敬意」が生まれるのではないでしょうか。このブログを御覧の皆さんには通じても「平和」愛好家の人には理解出来ない論理でしょうか。

2018年11月26日月曜日

イスラエル、F-15IA採用の最終決定はまだ

IDF: No decision on advanced F-15s as yet 

イスラエル国防軍:高性能版F-15導入は最終決定ではない

Yaakov Lappin, Tel Aviv and Jeremy Binnie - IHS Jane's Defence Weekly
22 November 2018

イスラエルは高性能版F-15の調達を検討中だが、最終決定はまだ下していない
Source: Boeing

スラエルは高性能版ボーイングF-15多任務戦闘機導入を最終決定していないとイスラエル国防軍(IDF)がJane'sに語った。

「あらゆる可能性をIDFはIAF(イスラエル空軍)、国防関連機関と検討中であり、結論は出ていない」とIDFが11月20日に声明を出した。

Ynet ニュースが11月19日にF-15IAの採用をIAFが決めたと報じていた。記事ではイスラエルが高性能F-15IAの調達を決定し同時にロッキード・マーティンF-35の50機購入もすすめるとしていた。

F-15IAとはF-15高性能版イーグルのイスラエル制式名称で、サウジアラビア向けF-15SAは生産中でカタールもF-15QAを発注している。カタール向け機材にはイスラエル企業エルビットの大型ディスプレイが搭載されている点が異なる。

YnetによればイスラエルがF-15IA導入を検討した際に米国が反対し、イスラエルのF-35発注が減るのを恐れたとある。同記事で言及した文書はリーバーマン国防相が決済したとありIAFはF-35三個飛行隊の整備をそのまま進める。一個飛行隊は25機構成だ。■

だそうですが、高性能版イーグル導入は既定の方針といってよいのではないでしょうか。中東でこぞって新型機導入が進む中で旧型機多数を抱え込む日米の空軍は指を加えてながめるしかないのでしょうか。それとも?

B-21調達は200機へ拡大の可能性、2030年代の米爆撃機構成を大胆に予測



Could the Air Force End Up with 200 New B-21 Stealth Bombers? 米空軍はB-21調達を200機まで拡大するのか

It could happen. Here's how. 可能性はある。その場合はこうなる
November 22, 2018  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz Tags: B-21B-52U.S. Air ForceChinaRussia
空軍はB-21レイダー・ステルス爆撃機の運用基地の準備に入った。だがB-21の調達規模はいまだはっきりしない。
選ばれたのはティンカー空軍基地(オクラホマ州)で同機の整備拠点となることが11月16日の空軍発表からわかる。
ジョージア州のロビンス空軍基地、ユタ州のヒル空軍基地もティンカー基地を支援する。エドワーズ空軍基地(カリフォーニア)がテスト拠点となる。
この発表に何ら驚くべき情報はない。ティンカーは航空補給施設の主要基地で一万名ほどの軍民関係者がB-1B、B-52、KC-135、E-3やE-6の重整備にあたっている。エドワーズはテスト機の基地として空軍現有機ほぼ全部を運用してきた。
「各基地の活用でB-21の開発、運用が大きく前進する。B-21は長距離性能があり敵防空網を突破し重要任務をこなして十分生存できる機体である」と空軍は述べており、レイダー初号機は2020年代中頃の就役とある。
とはいえ空軍にB-21が何機揃うのかは今も不明だ。ペンタゴンはノースロップ・グラマンのレイダー生産機数を時の経過につれて変更しており、2015年10月時点では80機から100機で総経費を200億ドル程度としていた。
だが空軍の2017年度予算要求では最低機数が100機に増えている。「今世紀通じて航空優勢確保の持続のため最低100機のB-21を調達したい」との説明だった。「最低100機の調達でライフサイクル運用コストが下がる。さらに今後の爆撃機部隊の適正規模を検討中だ」
その時点ではB-21導入でB-2、B-1Bを運用中のテキサス、サウスダコタ、ミズーリの各基地で廃棄する予定だった。「各基地の運用で影響を最小限にし、運用経費を削減しながら既存施設の再利用を最大限にしながらコストは下げられる」との説明だった。
2018年現在で空軍には1990年代製のノースロップ・グラマンB-2が20機、ロックウェルが1980年代に製造したB-1Bが63機ある。空軍は2030年時点でB-21を100機、ボーイングB-52Hと併用の方針だ。B-52は1960年代の機体だが改修を受けており76機が2018年現在稼働中だ。
だが爆撃飛行隊は増える。2018年現在は第一線爆撃飛行隊は計9ある。2018年9月に飛行隊を5つ増やすとの空軍発表があった。
「目標を裏付ける調達予定がともなっていないが、関係者は75機追加が必要と見ており、その時点で生産中の機材はB-21しかない」と議会調査部は2018年10月の報告書で指摘している。
あるいは空軍が旧型機の稼働期間を伸ばす可能性もあると議会調査部は指摘。「B-21調達を拡大する決定をするにあたり議会は費用対効果の比較で新型機導入と既存機の可動期間延長の比較検証を求めるだろう」
「この比較は容易ではない。というのもB-52は稼働期間を80年の想定で、軍用機でここまで長く運用した例がないためだ。B-52で防空網の進化に耐えられるのかは別にしても機齢80年の機体を整備し稼働させるのは難易度が高いだろう」
空軍が5個爆撃飛行隊を追加し、B-52Hを他機種と退役させればB-21は200機以上必要となり、事業規模は増大するはずだ。■
David Axe edits War Is Boring. He is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.
B-21はもともとLRS-Bと呼ばれていたようにファミリー構成のBつまり爆撃機型のはずですから、残りの機体がどうなるのかが関心を呼ぶところです。格闘戦闘機にかわる制空機とでも言うべき重武装機や電子戦やISR機への進化も期待しているのですが、今の所爆撃機の話題ばかりですね。あるいはブラック事業で裏で別の機体が開発されているのか。いずれにせよ、B-21の実機を誰も見ていない状態なのですが、2020年代中頃の就役であれば意外に早く開発が進んでいるのでしょうか。あるいは既に初飛行しているのかもしれません。中国を意識して今回はペンタゴンも徹底した情報管理を行っているようですね。


2018年11月25日日曜日

イラン侵攻に米軍が踏み切ればこうなる



What If America Invaded Iran? Why a War Would Not Be Easy.

米軍がイラン侵攻したらどうなるか。一筋縄でいかない戦いになる

Invading Iran and dictating terms to an occupied Tehran would be one way to achieve regime change. However, the United States would struggle to directly overthrow the Islamic Republic regime through force of arms.
イランを侵攻しテヘランを占領すれば政権変更の一つの方法だろう。しかし米国は武力によるイスラム共和国体制の放逐に相当苦労するはずだ。
November 5, 2018  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMiddle EastWarTechnologyRegime Change
ランプ政権はイランが合同総合行動計画Joint Comprehensive Plan of Action (JCPOA)を遵守していないと断定する動きのようだ。ただしイランに違反証拠はない。JCPOAにかねてから批判的な向きは今回の動きは正しいと支援している。米政策が目指すのはイスラム共和国の終焉であり、テヘランの現政権の放逐である。現政権が存続を続けると二国間あるいは多国間合意でいくら制約を課しても中東の秩序を揺るがす動きが止まらず、公然非公然に軍事手段の行使もためらわなくなる。米国でこの立場をとるのが民主主義防衛財団のマーク・デュボウィッツやトム・コットン上院議員等である。イラン政権の変更を求める動きは中東にもあり、特にイスラエルとサウジアラビアに強い。
公平を記せばこうした主張をする向きでも軍事作戦でイスラム共和国打倒を求める声は皆無に近く、そのような作戦を展開して成功の代償を負担してもいいとの声は少ない。とはいえ政権転覆を目指す戦いがどんな様相を示すかを考えて見る価値はありそうだ。ブッシュ政権がイラクの政権転覆を政策目標に定めて開戦につながったのは疑う余地がない。トランプ政権も同様に政権転覆を志向すれば開戦は遅かれ早かれ避けられないのではないか。
イラン侵攻は可能か
イランに侵攻しテヘランを占領する以外に政権変更の実現手段はないようだ。しかし米国がイスラム共和国を力で転覆させようとすれば相当苦労することになる。米国には地域内にイラン侵攻用の兵力を整備する基地がない。このため米軍部隊はイランの弾道ミサイル攻撃の前に脆弱となり損害多数を覚悟せねばならない。さらに戦闘終了後のイラン占領問題は簡単に解決できない。
封鎖作戦、侵攻作戦
政権転覆を求める向きによるJCPOA批判の中心はイラン制裁が最終的にイスラム共和国崩壊につながる考え方そのものだ。政権転覆をめざす軍事行動はイランの経済基盤を崩す効果を生み、同国民衆が不満を募らせ反革命運動に走ると期待したいところだ。侵攻しなくても米国は軍事経済両面の封鎖で現政権の崩壊を引き起こせる。その場合、空爆や海上からの巡航ミサイル攻撃のほか特殊部隊を展開させるはずだ。
経済封鎖はイランのみならず世界各地にも影響を与える。だがこの作戦に同調する同盟国は皆無に近く、実施の場合は重要技術内容の輸出入をとめる物理的手段が必要となろう。
作戦の初期段階ではイラン国内の軍事施設が標的となり、とくに空軍基地、海軍基地、弾道ミサイル基地を狙うはずだ。攻撃は相当の損害を与え、同時にイラン防空体制も攻撃する。イランの海軍・空軍は大損害を受け、ミサイル部隊多数が損壊するだろう。湾岸地区の米同盟国が基地を提供するはずでサウジアラビアも当然ここに含まれるが、長期にわたる対イラン作戦を支援するかは大きな疑問だ。
イラン軍や統治機構を狙う攻撃は相当の損害を与えるだろうが、米国の目標はイラン政権への国民支持を低下させることだ。このため米国はイラン経済を狙い石油施設や輸送インフラを狙うはずだ。これでイラン経済は少なくとも短期的に大打撃を受け、イスラム共和国のみならず貿易相手国にも影響が生まれる。ただし民間を標的にすれば米政策および武力紛争関連法に抵触する。米国としてはイランの経済インフラを標的とする理由は妥当と説明するはずで、イランが国家統制で経済を運営し輸送も軍用に利用していると指摘するだろう。米軍はISISでも石油インフラを空爆での破壊に成功している。これがISIS石油関連事業の崩壊に繋がり、同時に輸送トラック等の輸送手段も崩壊した。イラン侵攻でテヘランを占領すれば政権変更につながるだろう。だが米国は軍事力を持ってしてもイスラム共和国体制の崩壊には苦労させられるだろう。
作戦はイラン国内の反政府勢力の大々的支援と調整しての実施となるだろう。その一派にイラン人民ムジャヒディンがある。そのため武器供与、情報収集、抵抗勢力向け訓練のほか、新規戦力の募集も必要となりクルド人が有望だろう。だが地上部隊編成には長い時間がかかる。一定規模の地上部隊がなければイラン地上兵力の壊滅は不可能だ。さらにイラン陸軍、革命防衛隊の相当部分が市街地に配備され国内騒乱や市民の反乱を防ぐ役割を果たすだろう。
イランの反応は
米軍攻撃を受けてイランには多様な選択肢が可能だ。イランはイラク、アフガニスタンを不安定化させる動きを強化すべく代理勢力や武器輸出を利用するだろう。同様に域内の代理勢力に米軍基地、艦船を攻撃させつつ米同盟国の軍事経済インフラも攻撃するだろう。ただしミサイル部隊は時間経過で消耗するはずだ。可能性が高いのはイランがなにもせずに国際世論が米国に反対の論調となることで、これで米国が攻撃を実施できなくなるとの考えに基づき待つことだ。
結論
政権転覆が成功する可能性は低く、問題を解決するどころか逆に悪化させそうだ。
第一に攻撃でイランの国民感情が激昂し現政権支持を強める効果が短期的に発生する。攻撃を受けた現政権に社会経済の締め付けを強める口実が生まれる。こうした締め付けは長い目で見て失敗するが。
二番目に米国が政権転覆を狙う作戦を展開しても国際的支援は期待できない。サウジアラビアやイスラエルはじめ同盟国は戦闘長期化の際の費用負担に恐怖を感じるだろう。ロシア、中国が支持するとは到底考えられず、むしろテヘランへの圧力緩和を求める動きに走る可能性がある。ヨーロッパ各国では国民の反対が根強く、本来なら理解してくれるはずのフランス、英国の指導層もワシントンと距離を取るだろう。
三番目に軍事介入がどう止まるかが不明だ。イランを軍事的に封じ込める米国には国際支援がつかず、逆にイランは各国の同情を集める動きを加速するだろう。イラン指導層はこの動きを理解しているようだ。イスラム共和国が崩壊しないと米国は敗北を認めるか、あるいはもっと危険なエスカレーションに走るかもしれない。
良い面では作戦が失敗に終わりテヘランの現政権の転覆ができなくてもイランの軍事・経済・科学の基盤に大きな損害が長期的に発生し、イランの軍事的野望は後退するだろう。この結果、中東内の米同盟各国へ最大の影響が生まれるだろう。
政権変更がうまく機能しても成功の可能性は高くない。戦闘でイランは深刻な被害を受けるが、イスラム共和国打倒は成功しても米国にとって数十年を要する目標となろう。■
Robert Farley , a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

サウジアラビアをめぐる不可解な背景に西側がメスを今ひとつ入れられない理由が中東の複雑な力関係、特にイランの存在です。日本にはとても理解し難い力のバランスですが、宗教よりも地政学の問題でしょう。日本にとってもエネルギー安全保障の観点からも簡単にどちらかを糾弾できないのがつらいところです。米国がイランをここまで警戒するのは日本が北朝鮮に神経をとがらせるのと同じでしょうか。

中国空軍J-10の増強に要注意



Forget China's J-20 Stealth Fighter: The J-10 Is One Tough Jet J-20ステルス戦闘機に目を向ける間にJ-10の存在に注意が必要、相手にしたくない戦闘機だ

Much like the U.S. Air Force with its mix of stealthy and non-stealthy fighters, the Chinese air force is developing a two-tier fighter fleet. Alongside a handful of radar-evading J-20s, Beijing is acquiring hundreds of more-conventional J-10s.
中国の戦闘機部隊が急速に増えているとはいえ、米国から見れば小規模かつ近代機材の比重は低い戦力だ。2018年時点の米軍には戦闘機2,800機があり、F-16だけで900機があり、F-22.F-35のステルス機も数百機となっている
November 22, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaMilitaryJ-10J-20Air Force


型J-20ステルス戦闘機に注目が集まりがちだが中国空軍は少しばかり性能が劣る戦闘機J-10の増勢に励んでいる。
米空軍がステルス機、非ステルス機の組み合わせを図るのと同様、中国空軍も二層構造で戦力整備中だ。レーダー波吸収機能があるJ-20は小規模調達だが通常型J-10は数百機規模で調達中だ。
単発単座のJ-10は成都航空工業の製品で初飛行は1998年、実戦配備開始は2003年だった。水平尾翼なしのデルタ翼、カナード翼が特徴の同機(全長51フィート)は失敗に終わったイスラエル戦闘機ラヴィと酷似するが、中国がイスラエル設計をコピーした証拠はない。.
J-10は性能、ミッション双方で米空軍F-16に似ており、空対空、空対地双方のミッションをこなせる。
2018年版のペンタゴン発表の中国軍事力報告書では最新型J-10Cを「高性能第四世代戦闘機で、最新兵装を搭載している」と評している。
2017年末時点で中国空軍J-10は260機近くあり、中国軍用機の15パーセント、米国防総省が近代的と区分する軍用機では半数近くを占める。
J-10の増勢で演習や領空警備への投入が増えている。2018年秋にJ-10はその他中国軍用機と演習に投入され、中国空軍はこの演習を「総合的戦闘能力に向けた大切な一歩」と評していた。
2017年7月にはミサイルを搭載したJ-10の一機が東シナ海の国際空域飛行中の米海軍EP-3に異常接近し、米関係者は同機の飛行を「危険行為」と評した。
中国はJ-20はじめ新型機開発と並行しJ-10の改良を重ねている。2018年11月初め開催された珠海航空ショーでは推力偏向エンジンを搭載したJ-10Bが極限までの機動性を示していた。
新型J-10Cは2018年から第一線に配備されているといわれ、空気取り入れ口が変更され、あきらかにレーダー探知性を改善している。また電子スキャンアレイレーダーを搭載し、出力・信頼性ともに改良している。
中国の戦闘機部隊が急速に増えているとはいえ、米国から見れば小規模かつ近代機材の比重は低い戦力だ。2018年時点の米軍には戦闘機2,800機があり、F-16だけで900機があり、F-22.F-35のステルス機も数百機となっている。■
David Axe edits  War Is Boring  . He is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.

2018年11月24日土曜日

歴史に残る機体20 ロッキードP-38ライトニング


Hitler Hated This: Why Nazi Germany Feared the P-38 Lightning ナチ・ドイツがP-38ライトニングを恐れた理由

The hero of World War II? 第二次大戦で戦功を上げた機体といえるのか
November 22, 2018  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: P-38 LightningWorld War IIU.S. Air ForceNazi GermanyImperial Japan

1937年に米陸軍航空隊が新型迎撃機の提案要求で時速360マイルで短時間で高高度上昇可能な性能を求めた。ケリー・ジョンソンは当時は小企業で軍用機で実績のないロッキードの設計者で双発機でなければ要求は実現できないと計算をはじいた。
ジョンソンの提案内容は他社と全く異なっていた。アリソンV-1710水冷エンジン双発のYP-38では長い2つの胴体が尾翼でつながり、パイロットは中央部のポッドに座り武装は50口径機関銃4門と20ミリ・イスパノ機関砲1門だった。ターボ過給器が各エンジン上部につき高い上昇性能を実現し、実用高度限界を引き上げ、プロペラは逆回転でトルクを打ち消した。
P-38は高速飛行可能で時速395マイルを出し、航続距離も1,100マイルと長かった。しかし、機体構造が新奇のため欠点もあり、とくに急角度高速降下に陥ることで悪名を轟かせ実際に犠牲者もでている。エンジンは取扱がむずかしくパイロットは高度の訓練が必要だったが実際にそこまで技量を上げていたものは少ない。コックピットの温度調整が悪く、高高度で凍結し熱帯では酷暑に悩まされた。
こうした欠点のため英空軍はライトニング発注を取り消し、真珠湾攻撃後に参戦した米国が採用した。米戦闘機の中で唯一戦中通じて生産され計1万機が完成している。
P-38の単価は120千ドルで単発戦闘機の二倍だった。だがP-38の長距離飛行性能とペイロードが大きいこと(爆弾、ロケット弾を3千ポンドまで搭載した)から開戦当初当時の単発機でこなせないミッションを担当した。
1942年9月、アラスカ州アリューシャン列島でライトニング2機が初の撃墜実績をあげた。H6K水上機(97大艇)だった。その5日後にアイスランド駐留のライトニングが初のドイツ機を撃墜した。Fw-200コンドル海上哨戒機だった。その年の冬にライトニング部隊は北アフリカのドイツ軍補給線に打撃を与え、ゲベルシュワンツ・トイファル(双胴の悪魔)とのあだ名を得た。機首搭載の兵装は正確かつ威力が高く当時の米戦闘機が搭載した主力搭載兵器より効果が高かった。
P-38は低空では敏捷性が高いものの高高度で動きが鈍く、B-17爆撃機援護では機動性で優れるMe-109やFw-190戦闘機の前に損耗率が高かった。第七空軍はライトニングを地中海地方で多用し、ルーマニア、ブルガリア空爆にも参加させた。少数の機体が捕獲されイタリア、ドイツのパイロットが操縦し連合軍爆撃機を襲った。
1944年までにジョンソンはライトニング機体構造の欠陥を把握し解決策を講じていた。動力つきエルロンや急降下フラップで飛行中のロック状態発生と急降下は避けられるようになった。大戦末期には無塗装のP-38J型L型が改良策を施され追加燃料タンク、加熱式飛行服を導入し、エンジンは1,475馬力(「あご」式の冷却器が特徴)に拡大し最高速度も420マイルに伸びた。
2,000ポンドの兵装運用能力を活かし、ライトニングは戦闘爆撃機として爆弾や5インチ高速ロケット弾の威力を発揮した。ノルマンディー上陸作戦では黒白の侵攻部隊識別標識をつけフランス北西部上空を飛行し、ドイツ軍司令部、レーダー基地、鉄道、車両を破壊した。
だがドイツ戦闘機との一騎打ちではライトニングは不利で、単発機のマスタングやサンダーボルト並みの評価はもらえなかった。太平洋戦争ではライトニングは米陸軍戦闘機中で最高性能の機材で熱帯気候でもエンジンは高信頼性があり、機銃掃射は正確かつ無慈悲に軽装甲の日本軍用機を葬っていた。
米戦闘機パイロットで最大の撃墜記録を達成したパイロット二名、リチャード・ボング(40機)、トーマス・マクガイヤ(38機)はともにライトニングを操縦した。両名は戦中に死亡しており、マクガイアはフィリピンでのドッグファイトで地上に激突し、ボングはF-80ジェット戦闘機の離陸に失敗した。
チャールズ・リンドバーグも大西洋横断飛行から17年経過していたがライトニングに乗り、フランス作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(星の王子様)の乗機F-5Bは地中海で1944年墜落した。ロビン・オールズ大佐はその後朝鮮、ベトナムで戦果を上げたが、大戦中はライトニングで16機を撃墜している。
だがなんといってもP-38で語り継がれる最大の戦果は1943年4月18日のことで、米情報部が日本海軍の司令官山本五十六大将がブーゲンビルに展開する部隊を視察する情報をつかみ展開された作戦だ。P-38Gの16機編隊がガダルカナルを離陸し、往復1,000マイルを飛び山本大将が登場するG4Mベティー(一式陸攻)を待ち伏せし撃墜した。山本大将の遺体が見つかったが軍刀を片手につかんだままだった。
改造型にはF-4、F-5写真偵察機700機のほか、パスファインダー用ライトニングでは機首にガラスをつけ航法士が腹ばいになり爆撃隊を標的に誘導した。1945年に黒塗り複座のP-38M夜間戦闘機が機首にAN/APS-6レーダー(有効距離5マイル)を搭載し日本軍の夜襲爆撃機を迎撃した。
第二次大戦の終結で迅速に退役したもののライトニングはフランス、イタリアの各空軍でその後も供用され、中国国民党軍(うち一機がソ連製MiG-15の最初の撃墜機となった)やグアテマラではCIAが支援するクーデター軍の艦船一隻を沈めている。
欠点はあったがP-38は初期の「重」戦闘機としては稀な成功作となり、速力、航続距離、火力を誇ったのは現代の多任務戦闘機たるF-15やSu-27に通じるものがある。ケリー・ジョンソンの設計内容は時を越えた丈夫さと魅力があり、1992年にはグリーンランドに50年前に墜落したP-38が82メートルの氷の下から発掘され、機体は2007年に飛行可能状態に復元された。機体は当然ながらGlacier Girlの名前がついた。(Gracierは氷河の意味)■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .
Photos: Wikepedia

P-38には大きな魅力がありますが、日本人にとっては軍神山本提督を抹殺した卑怯な米軍のイメージしかないのでしょうか。しかしF-35がなぜライトニングIIになのか。共通する要素が見当たりませんが、ロッキード・マーティンとしては成功作にしたいとの思いがあったのでしょうか。