2022年9月11日日曜日

米空軍特殊作戦軍団のUS-2への関心度は本物だ。新明和工業は米軍向け生産の検討に入っている模様。C-130水上機改装案は挫折か。

 

グアムのアンダーセン空軍基地で行われたコープノース22で、海上自衛隊の新明和US-2の前に立つオーストラリア空軍、米空軍、海上自衛隊(2022年2月10日撮影)。米軍は、コープ・ノース含む合同演習や作戦活動を通じ、インド太平洋地域の同盟国やパートナー国との関与の拡大や関係強化を常に目指している。 (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Yosselin Perla)

 

Naval Newsは、新明和工業株式会社に米特殊作戦軍(USSOCOM)が水上飛行機US-2に興味を示しているのか問い合わせたところ、同社から返答を得た。また、USSOCOMにC-130J MACの現況とコメントを問い合わせたのであわせて以下お伝えする。



米国特殊作戦司令部(USSOCOM)のコメント

USSOCOMが水陸両用機C-130Jフロートプレーンや水上機を保有する可能性が高まる中、「船体構造」を有する水上機としては、海上自衛隊の「新明和US-2」が候補に挙がっている。現在、US-2は海上自衛隊に配備されている。

 USSOCOMは、既存MC-130Jにポンツーンを追加して、実質的な水上機にできると考えており、このコンセプトは特殊作戦部隊産業会議2022(SOFIC 2022)で確認された。

 「水陸両用MC-130の実証に関して、USSOCOMは現在、市場調査中で、既存のSOF要件に対応する水陸両用機の可能性を確認するために行っている。またAFSOCは、C-130機にフロート・アセンブリを搭載する実証を行っています。リスクを軽減し、変更を加えるため主要な要因として、デジタルエンジニアリングを活用しており、水力試験とサブスケール機の空力試験を行っている。


USSOCOMの新技術担当技術部長Rich Rodriguez、SOFIC2022でのC-130 MACの状況について

MC-130Jフロートプレーンのコンセプトにはメリットとデメリットがある。主な利点としては、ポンツーンの追加で、アドオンフロートキットが実現できれば、SOCOMの既存MC-130Jを使用できることだ。ポンツーンキットがあれば、各C-130Jで大きな構造変更をすることなく水上機に改造できる。水陸両用のMC-130J(MAC)は、以下のレンダリングと非常によく似た外観になるはずだ。


SOFIC 2022では、このAFSOCのMC-130をポンツーンフロートに載せるコンセプトが、水陸両用MC-130Jの実験目標だと確認された (USAF image)


 だがMC-130J MAC構想の最大の欠点は、機体が高い位置にあるため後部貨物ランプと側面ドアが高さで不利な位置となり、海面から小型ボートを上運用するクレーンがないため水上作戦が困難になることだ。(新明和US-2は腹部が海面上のため、小型ゴムボートを側面ドアから手で上げ下げすることができる)。 実際、AFSOCのレンダリングでは、MC-130Jの胴体からポンツーンや水面につながるハシゴや階段が描かれている。MACが海面までバラストを落とすことができれば、機体先端部FLIRボールが水没し、敏感な電子機器や光学系が危険にさらされる。 また、コックピットが高い位置のため、MC-130Jフロートプレーンの着陸が困難になる可能性もある。

 

 ロッキード・マーチンは、ここで見ることのできるボート(またはクジラの腹)の外皮を持つ水上機を設計しているが、スケールモデル以上に進展した形跡は見当たらない。Naval Newsは同社に水陸両用MC-130Jのコンセプトと状況についてコメントを求めましたが、ロッキードは質問はすべてUSSOCOMに委ねた。



グアムのアンダーセン空軍基地で行われたコープノース22で、オーストラリア空軍と米空軍の隊員に海上自衛隊の新明和US-2の能力を説明する海上自衛隊の隊員(2022年2月10日)。同盟とパートナーシップのネットワークは、世界の安全保障のバックボーンであり続けています。 (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Yosselin Perla)



 Naval NewsがUSSOCOMにMACの状況について2022年8月末に問い合わせたところ、USSOCOM広報のカサンドラ・トンプソン中尉は、MACは2022年8月時点で国防省内の公式事業ではないため、新しいMACニュースで共有すべき内容はないとし、状況は変わっていないと回答してきた。米国政府の契約関連のウェブサイトを確認したところ、C-130J MACは正式なProgram of Recordではないことが確認された。

 また、Naval NewsはUSSOCOMに新明和US-2への関心について質問し、回答を得た。

「US-2視察は、USSOCOMがAFSOC(米空軍特殊作戦司令部)と協力し、水陸両用の新技術を分析し、実行可能な取得戦略をめざす市場調査活動の一環であった」。


USSOCOM広報部 カサンドラ・トンプソン中尉

防衛視覚情報配信サービス(DVIDS)配信の写真は、米空軍特殊作戦司令部(AFSOC)が2022年2月10日にグアムのアンダーセン空軍基地で実際に新明和US-2を視察したと確認できるが、特殊作戦の機密性のため、USSOCOMは関心分野やUS-2を取得計画に組み込む可能性について追加のコメントや詳細を提供できない。

 したがって、サブスケールモデリング以外に、USSOCOMの水陸両用MC-130Jフロートプレーンの実際の状況は不明で、最終的に米海兵隊(米海軍、米海兵隊、米沿岸警備隊)向けに製造されるかは不明なままだ。USSOCOM MACをDARPAの "Liberty Lifter"と混同しないよう注意する必要がある。


2021年11月9日、空軍特殊作戦司令部副司令官エリック・ヒル少将、第353特殊作戦航空団司令官シェーン・ベセリ大佐と新明和US-2の能力を話し合う海上自衛隊第31航空団の搭乗員。[筆者注:「グラス・コックピット」計器盤は、水上機の外見がやや古典的に見えても、US-2の近代的で洗練された操作系を反映している。] (U.S. Air Force Photo by 1st Lt Rachael Parks)



新明和工業のコメント

2022年8月末、米軍向けUS-2の生産可能性についてNaval Newsが問い合わせたところ、新明和工業航空機事業部営業部より回答があった。新明和はUS-2は海上自衛隊向けに開発したが、センサー装備や生産時期、1機あたりの価格などについては、顧客の意向を理由に回答できないとしている。

Naval News: US-2の外側に武器の搭載は可能か?

新明和工業株式会社:機外に武器を搭載するのは困難です。

Naval News:米軍からUS-2のデモを依頼されたことはあるか?

新明和工業株式会社:AFSOCは日本でUS-2に搭乗し、その様子はAFSOCのウェブサイトにアップロードされています。

Naval News:US-2を米軍向けに生産できるか、可能ならどんな改造が必要なのか。

新明和工業株式会社:AFSOC向けUS-2の製造は可能です。当社はやる気満々です。米国企業と連携して進めています。整備マニュアル等や装備品はAFSOC仕様にする必要があります。

Naval News: US-2の機体価格、製造工期は?

新明和工業株式会社:US-2の価格はAFSOCの要求で大きく変わるので、この質問に答えるのは難しいです。また、リードタイムについてもお答えできません。

Naval News: US-2はどこまでメンテナンスが必要で、耐用年数は?オーバーホールや整備を行う間隔は?

新明和工業:海上で離着陸を行うため、定期的なメンテナンスの間隔は短い。耐用年数も答えられない。

Naval News: US-2は他の水上機と比較してどんなメリットがあるのか?

新明和工業:US-2の最大の特徴は、水上で非常に短距離で離着陸できることです。その他水上機と比較して、圧倒的に短距離です。新明和は、US-2がC-130J MACよりも米軍の要求に応えられると確信しています。(新明和は、US-2は波高3mの海面に着水できる世界唯一の水陸両用機と述べている。)

Naval News: US-2は何機作られたのか?

新明和工業株式会社:9号機を製造中です。

Naval News:US-2は陸上水上でのタキシー運用が可能なのか?

新明和工業株式会社:US-2は陸上で離陸できます。

Naval News:US-2に暗視機能があるか?

新明和工業株式会社:US-2には暗視機能はありません。

Naval News:US-2は空中給油が可能か?また、海上での給油は可能か?

新明和工業株式会社:空中給油能力はありません。洋上で船から給油する能力はあります。(US-2は時速298MPHまたは480KMHで飛行でき、航続距離は2,920マイルまたは4,700キロメートル。離水距離は280m、着水距離は330m。)


海兵隊岩国航空基地で見学者を待つ日本の新明和US-2(2022年7月8日撮影)。US-2は、人員救助や有事対応を目的とした水陸両用機だ。 (U.S. Air Force photo by Senior Airman Gary Hilton)


筆者のコメント

 推測の域を出ないものの、米空軍がUS-2を調達した場合、USSOCOMに利点と問題点の両方が生まれる。現在の生産数は少なく(新明和US-2はこれまで9機しか製造されていない)、実際に米軍特殊作戦部隊や海上部隊のために購入された場合、米軍はUS-2を特殊水上機と見なすかもしれない。US-2は非武装で、精密誘導弾を束ねたパレットを投下できる後部貨物ランプがないため、武装化は難しいようだ。しかし、米海兵隊のKC-130Jハーベストホークには、デリンジャー・ドアと呼ばれる精密誘導弾発射装置が搭載されている。ラックには最大10発の弾丸が収納できる。米軍仕様US-2にもこのようなデリンジャードアが追加され、US-2の与圧キャビン内でスタンドオフの武装ができるかもしれない。また、スイングアーム式の機銃マウントをサイドドアに設置し、折り畳んで出入り口を確保するオプションも考えられる。


米海兵隊のKC-130Jハーベストホークに、デリンジャードアと呼ばれる加圧式スタンドオフ、精密誘導弾発射装置と弾薬10発を収納するラックを取り付ける改造が施されている((Photo: NAVAIR)


 新明和のウェブサイトにある3分間のビデオでは、RHIB(Rigid Hull inflatable boat)が、ドアの上のノブに巻き付けられたロープでUS-2のサイドドアに吊り上げられる様子が映し出されている。乗組員はロープを引っ張り、RHIBを横向きにドアに押し込んでいる。RHIBはサイドドアから押し出して展開される。乗員がUS-2からRHIBに乗り降りするのは、かなり速くできるので、救難やSARの任務で、この方法が生まれる受け入れられるかもしれないが、重い貨物や武装の積み下ろしで、ロープ1本でRHIBを結ぶのは、RHIBをMC-130J MAC内部から後部ランプから発進させるのと比べると、大海原では難しいかもしれない。

 新明和US-2型水上飛行機が採用されれば、米国沿岸警備隊のVisual Board Search and Seizure(VBSS)、高速艇の追跡、麻薬、海賊、密輸の阻止にも大きな助けとなり、資産となる可能性がある。

US-2のサイドドア脇にオレンジ色RHIBが展開された。ドアと上にあるオレンジ色ノブに注目。ロープを結び滑車としてRHIBを昇降させる (Photo: USMC) 



 もう一つの疑問は、US-2が米国向けに製造された場合、米国政府支給品(GFE)を装着したUS-2と、日本製装備を英語仕様に改造したUS-2を比べて、どれだけ信頼できるのかという点だ。USSOCOM(および米軍)は、GFE装備(ジャマー、センサー、カウンターメジャー、ナイトビジョン、データリンク、安全な通信)を追加することが多いので、人道支援、有事、SAR以外のマルチロール用途だと、AFSOCのUS-2はどこまで複雑になるのか?

 AFSOCが戦闘装備仕様のUS-2を必要とするならば、「短い定期メンテナンス間隔」は、長いメンテナンスダウンタイムになり、アメリカのUS-2は、外洋に展開するより頻繁に桟橋に停泊することになるかもしれない。新明和は、AFSOCと協力することで、アメリカの特殊部隊の要求を満たせると確信していると述べた。

 しかし、米軍のUS-2は、米海軍で切実に必要としている輸送機、水上機補給機、墜落パイロットのSAR水上機となりうる。また、米軍のUS-2は、増え続ける無人の水上・水中艦艇の整備、燃料補給、再武装、監視を行うことができる。新明和US-2は、世界の海という「距離の専制」を克服し、米軍の特殊作戦や海上部隊で、可能性を与えるソリューションになるかもしれない。■


ShinMaywa and USSOCOM Comment on the US-2 Seaplane - Naval News

Peter Ong  08 Sep 2022

 

Posted by : Peter Ong

Peter Ong is a Freelance Writer with United States and International Federation of Journalists (IFJ) media credentials and lives in California. Peter has a Bachelor's Degree in Technical Writing/Graphic Design and a Master's Degree in Business. He writes articles for defense, maritime and emergency vehicle publications.

 


ウクライナ軍の成果は孫子から着想を得た?だが、ホームズ教授はウクライナの長期戦闘維持に懐疑的だ。

  

 

ISW

 

 

争研究所(ISW)はウクライナ戦の最新動向を毎日取り上げているが、嬉しい知らせが昨日あった。ウクライナ軍がロシアから約2500平方キロメートルを奪還したのだ。主に北部のハリコフ州においてだ。添付の地図が、その様子を視覚的に伝えている。ウクライナ軍はこの地域に深く入り込んで楔(くさび)を打ち込みロシア軍司令部のあるイジュム市に向かい南下した。昨日時点では、イジュム周辺のロシアの補給線を遮断する態勢を整えていた。この原稿を書く時点では、同市を占領していたロシア軍2万人は、包囲され戦闘力として消滅するのを避けるため、同市から避難したようだ。ドネツクの中心部にあるライマンも陥落した可能性がある。

 

 

 ISWは、ウクライナがハリコフ州で「驚くべき作戦上の奇襲」を決めたと断言している。ロシア軍司令官は、ウクライナが反攻作戦を展開している南部ケルソン市を守るため、この地域から軍を撤退させていた。現在、欧米専門家は、南方作戦が北方からロシア軍を吸い上げるフェイントだったのか、それともウクライナ軍司令官が本気でケルソンを奪還し、クリミア半島とウクライナ東部(つまりロシア)を結ぶ陸橋を断ち切るつもりだったのかについて議論している。

 どちらの主張も正しいかもしれない。指揮官たちは、ウクライナの武器に戦争の神が微笑むなら、それ以上のものにする選択肢を留保している。

 実際、この反攻作戦には孫子の趣きがある。孫子は、直接攻撃(正攻法)と間接攻撃(非正攻法)を併用し、敵司令官を優柔不断にさせる指導をした。「正統派」部隊は正面で直接攻撃を行い、「非正統派」部隊は敵の側面を攻撃し、敵防御力を低下させる。孫子の言葉を借りれば、「敵に立ち向かう兵力が通常兵力」であり、「敵の側面に向かう兵力は臨時兵力」だ。軍指揮官は、並外れた力なくして敵に優位に立つことはできない」。

 投資と同様に戦闘においても、ポートフォリオを多様化することが賢明な戦略だとわかる。

 作戦上の利点は、敵司令官をジレンマに陥れることにある。敵はどちらが主戦場か分からず、どこに兵力と火力を投入すれば攻撃を防げるか分からなくなる。孫子は将軍に、敵に推測させ続けるよう助言し、ジレンマをさらに悪化させるとした。「敵に自分の通常兵力を非日常と思わせ、自分の非日常を通常と思わせる。さらに、通常が非凡になることもあり、その逆もある」と。つまり、臨時部隊が戦場で成功を収め、通常部隊が激しい抵抗に遭った場合、野戦将兵は臨時部隊を通常部隊に再指定し、軍の資源の大半を有望な方面に投入すべきなのである。

 名将たるものは戦況の変化に応じ、再び戦力を振り向けるものだ。要するに、孫子は非常に流動的で欺瞞的な戦闘方法を想定している。

 では、中国の戦法をウクライナに当てはめてみよう。孫子の言葉ではないが、ウクライナ軍指揮官は南方部隊を臨時部隊、北方部隊を通常部隊として考えていたのか。ロシアはクリミアへの陸路アクセスを確保するため南部を防衛する必要があり、その貴重な不動産を守るために資産を移転させることを受け入れいていた。そこで、ウクライナ軍は間接的にケルソン方面を攻撃し、ロシア軍司令官に二次的対策として資源配分を誤らせるよう促し、一方で北方では直接攻撃を仕掛けたのだ。もし、南部が予想より良く、北部が予想より悪くなれば、いつでも孫子の教えを守り、作戦を有利に進めるため優先順位を組み替えることができただろう。しなやかなアプローチは、今も昔も有効だ。

 しかし、このままうまくいくだろうか?ウクライナ戦争が始まって以来、本当の問題は、物量で劣るウクライナ軍が、より強い敵に勝利するため十分長く勢力を維持できるのか、ということにつきる。今のところ、筆者の予想は「No」だ。戦場は膠着状態におちいる可能性が高い。

 とはいえ、孫子がどこかで微笑んでいる。■

 

Ukraine’s Big Counteroffensive Seems Inspired by Sun Tzu - 19FortyFive

 

ByJames HolmesPublished1 hour ago

 

 

Expert Biography: A 1945 Contributing Editor writing in his own capacity, Dr. James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the U.S. Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010, and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.” The views voiced here are his alone. Holmes also blogs at the Naval Diplomat


2022年9月10日土曜日

北朝鮮が核兵器放棄はしないと公言。かねてからこれを予想していた米国の各専門家の見方と今後の予想。

  

North Korean Missile Launch. Image Credit: Creative Commons.

 

ナルド・トランプと金正恩が核戦争で互いに脅し合っていない今、北朝鮮は以前ほど見出しやクリック数を稼いでいなくても、米国にとって真剣に対処すべき脅威であることに変わりはない。

 

 

 バイデン政権は金正恩政権を相手にすることに関心がないようだが、平壌は今後数ヶ月、数年で核戦力が進歩するとワシントンに思い知らせたいようだ。実際、北朝鮮はついに、キム・ウォッチャー多数がもう知っていることを声高に述べた。平壌は、いかなる交渉においても核兵器を決して手放さず、本格的な核保有国になったと宣言したのだ。

 平壌は核保有国であると憲法に明記し、核を手放さないと以前から一貫して言い続けていた。しかし、昨日の金正恩の発表は、新しい核政策法の一部で、より権威がある。北朝鮮はまた、先制核攻撃の条件を提示した。多くの専門家が、平壌の全体的な戦略的思考の一部であると考えていた内容だ。さらに、「責任ある」核保有国であると示すために、金正恩は核技術を決して売却しないと明文化した。

 北朝鮮はどうなるのか。金一族を核保有国として受け入れるべき時なのか、それとも交渉のテーブルに戻させるためさらなる制裁を加えるべきなのか?

 19FortyFiveでは、以下のシンポジウムで、トップクラスの専門家に意見を求めた。回答が集まり次第、以下追加していく。

 

ブルース・ベヒトール アンジェロ州立大学教授 Bruce Bechtol, Professor, Angelo State University「北朝鮮は核兵器について反抗的な態度をとり続けている。これまでの『いずれ』核兵器を廃棄するとほのめかしてきた行動は、米国から譲歩を多く得るための方策に過ぎない。北朝鮮指導者は、プルトニウムと高濃度の核兵器化プログラムにあまりにも多くの時間と資金を費やしてきたため、簡単に手を引けない。

 それを実現させるには、包括的で理不尽なほどの譲歩が必要だ。それでも、平壌の透明性の欠如のため、核兵器の一部は査察官から隠され残る可能性が高い。したがって、北朝鮮の最近の発表は驚くことではなく、協議が行き詰まっている(あるいは協議が行われていない)ときに出てくるレトリックの典型例だ。

 新たな協議が行われれば、北朝鮮は今、すべての関係者を数年前と同じ場所、つまり(再び)始まりの場所に連れ戻す立場を確約したことになる」。

North Korean Hwasong-16 ICBM. Image Credit: KCNA/North Korean State Media.

 

ブルース・ベネット、ランド・コーポレーション Bruce Bennett, Rand Corporation: 「金正恩が非核化を拒否するのは当然だ。彼は過去に何度も非核化しないと言ってきたが、それでも米国に譲歩を求めて交渉で米国政府を誘惑してきた。しかし、その交渉に北朝鮮の核専門家を連れてこなかったことから、彼は交渉を自分の望む「核保有国」認定を得るための場と考え、非核化の意志はなかったと思われる。米国の夢と希望はここまでだ。ある世論調査では、韓国人の70%が金正恩の非核化を期待しておらず、また別の世論調査では、韓国人の90%が北朝鮮の非核化はあり得ないと考えている。

 問題は、北朝鮮が単に核兵器を保有しているわけではないことだ。核兵器を使用すると脅している。

例えば、木曜日、北朝鮮の国会は、「指導部が攻撃を受けた場合、北朝鮮軍に核攻撃を義務付ける条項」を含む法律を可決した。これは外部からの介入に対する抑止力として特に驚くべきものではないが、北の不安定さが増しているため、内部の脅威に対応するため、あるいは内部の脅威を理由に陽動作戦として、北朝鮮が限定的に核兵器を使用するきっかけになりかねないのが大きな不安材料だ。さらに新法は核先制使用を正当化し、将来の地域危機を不安定にする脅威となる。

 これらの懸念は、国際原子力機関(IAEA)によれば、北の核兵器製造が「フル回転」していることと相俟っているに違いない。ある専門家が指摘するように北朝鮮が保有する核分裂性物質の量が45発分であろうと、米国諜報機関による推定で100発分以上であろうと、その数は米国や韓国が主導する対北軍事行動を抑止するため北朝鮮が必要とする量をはるかに超えている。

 最近、韓国を訪問したが、聴衆に尋ねてみた。韓国の通常兵器を使った対北攻撃を抑止するために、北朝鮮はどの程度の規模の核攻撃を南に行う必要があるのか?最も多い答えは「0」であった。聴衆は、北への軍事攻撃で得るものは少なく、失うものは大きいと考えている。そして、北との核兵器交換のリスクを冒すことに米国は何の興味もなく、米国が得る価値のあるものは何もないと考えている。

 したがって、金正恩の核兵器増強の継続は、防御的な目的よりも攻撃的な目的であることを心配すべきだ。金正恩は十分にリスクを回避しており、通常であれば攻撃的な核兵器の使用は避けれるが、内部脅威、特に北朝鮮軍からの脅威に直面したら、どうするだろうか。軍に韓国侵攻を命じれば、軍の力を自らからそらすことができるだろう。通常戦力だけでは戦争に勝てないことはほぼ確実なので、核兵器で半島の地域バランスを変えることができると期待するかもしれない。特に、韓国と米国の同盟関係に将来亀裂が生じた場合だ...。

President Donald J. Trump shakes hands with Chairman of the Workers’ Party of Korea Kim Jong Un Sunday, June 30, 2019, as the two leaders meet at the Korean Demilitarized Zone. (Official White House Photo by Shealah Craighead)

 

ヘリテージ財団副理事長 ジェームス・ジェイ・カラファノ  James Jay Carafano, Vice President for the Heritage Foundation: 「ネバーセイネバーアゲイン」には映画のタイトル以上のものがある。北朝鮮が普通の国のとして扱われ、世界的な交流の恩恵を受けることが許され、近隣諸国を脅し、恐喝する目的の核兵器を保持する未来を描くことは、不可能ではないにしても困難だ。北東アジアの安定と安全保障はあまりにも重要すぎる。核兵器を維持するとの永遠のコミットメントは、孤立へのコミットメントとなり、孤立した北朝鮮の体制が永続的に維持できるかは不明である。それは自ら招いた死刑宣告だ」。

 

ダニエル・L・デイビス Defense Priotoriesシニアフェロー、元米国陸軍中佐  Daniel L. Davis, Senior Fellow, Defense Priotories, Former LT. Colonel, U.S. Army「この宣言は、10年以上前から知っていたことを、公式に封印したに過ぎない。北朝鮮は、体制存続のための唯一の保証と考える存在を手放すつもりはない。北朝鮮が核の敷居を越えて以来、ほぼすべての大統領が何らかの名目で採用してきたアメリカの『最大限の圧力』政策は、ひどい失敗に終わっている。事実上各政権が、北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化を政策目標に掲げてきた。

 これは現実を無視しているため、常に非現実的な目標であった。北朝鮮は核兵器を保有しており、それを放棄するつもりはない。しかし、我々の核兵器は北朝鮮を無期限に抑止し、我々の安全を確保するのに十分すぎるほどだ。私たちにできる最善のことは、南北和解を求め、南北交流の改善を促し、ゆっくりと関係正常化を図ることだ。中国やソ連・ロシアと数十年にわたって成功させてきたのと同じように。最悪の事態は、武力行使で金正恩に武器を放棄させよることであり、そうなれば、常に避けたいと言ってきた戦争を引き起こす可能性がある。

戦争を始めるような愚かな選択をしない限り、我々は安全でいられるだろう」。

Image: Creative Commons.

 

アメリカファースト政策研究所のアメリカ安全保障センター副議長で元CIAアナリストのフレッド・フライツ Fred Fleitz, Vice Chair of the America First Policy Institute’s Center for American Security and former CIA analyst「バイデン政権の北朝鮮政策の怠慢と外交政策の失敗が相まって、金正恩が最近『自国の核を決して手放さない』と発言するなど、北朝鮮のミサイルと核プログラムの急増を招いてしまったことは疑いようがない。これは、金正恩が核兵器プログラムの放棄を約束し、核実験を中止し、長距離ミサイル実験を含むミサイル実験を終了したトランプ時代と大違いだ。

 バイデンは、北朝鮮に関するトランプの成果を嘲笑し、その上に立つことを拒否した。彼は非常勤の特使を指名することで、平壌を鼻で笑った。ブリンケン国務長官は北朝鮮を無視した。

 したがって、バイデンが弱い大統領であるという認識が強まり、北朝鮮が好戦的な行動を増したのは驚くことではなかった。

 北は、米国がアフガニスタンから撤退した後の昨年秋からミサイル実験を急増させ始めた。2022年はこれまでに少なくとも34発のミサイルを実験し、1年間で過去最多となった。北朝鮮は3月、豊渓里地下核実験場へのアクセスを回復するため掘削を開始した。そして今回、北は非核化の約束を撤回した。

 トランプ大統領は、北朝鮮の核の脅威を解決したわけではないが、彼のリーダーシップで緊張がかなり低下し、外交的解決のチャンスが生まれた。バイデン大統領の外交政策の無能さは、トランプ大統領の成果を無駄にしてしまった。バイデン政権が、イランとの新たな核取引に向けた努力で見られる宥和ではなく、ハイレベルな関与と強さで北朝鮮への対応に期待しよう」。

Hwasong-12. Image Credit: KCNA/North Korean State Media.

 

ウォレス・グレグソン(オバマ政権元国防次官補、退役海兵隊元中将 Wallace Gregson, Former Assistant Secretary of Defense, Obama Administration, Retired LT. General, U.S. Marine Corps「北朝鮮は核兵器を放棄しないと発表した。報道によれば、核兵器国を宣言する新しい法律を可決し、これは『不可逆的』だと付け加えました。これには誰も驚いていないはずだ。北朝鮮の内部権力力学、世界の注目を集める必要性、さらに核と兵器の拡散という有益なビジネスには、地球規模での核兵器運搬能力の一貫した向上が要求される。中国やロシアの独裁者と正式に同盟を結んでいるわけではないが、有用であることも要因の一つである。抑止力の理由もあるが、北朝鮮の山がちな地形が防御に有利であることを私たちは経験している。核武装した北朝鮮に侵攻する理由はなかなか思い浮かばない。

 核兵器を持たない北朝鮮は、韓国にとって通常兵器の脅威であるにもかかわらず、ほとんど注目されなかった。栄養失調などの問題で軍隊は昔のようにはいかないが、韓国の首都には大きな脅威となる。過去には潜水艦攻撃を行い、韓国艦を沈めたこともある。また、北西諸島を砲撃し、死者を出したこともある。

 通常兵器の脅威は危険だが管理可能だ。

 北朝鮮が核兵器の地位を確立したのは、核拡散を勧めたパキスタンのA・Q・カーンのおかげだ 北朝鮮はその術をよく学んでいる。この最も黒い闇市場での商売は非常にうまくいっており、北朝鮮エリートたちを贅沢な暮らしを与えている」。

 

North Korea

Image Credit: KCNA/DPRK State Media.

 

 

ハドソン研究所シニアフェロー レベッカ・L・ハインリクスRebeccah L. Heinrichs, Senior Fellow, Hudson Institute:「バイデン政権は危機に次ぐ危機、まさに危機の連鎖に対応しているが、4年間静かだった北朝鮮が今年初めに長距離ミサイル実験を再開したことが、ほとんどニュースにならなかったのが本当に驚くべきことだ。

 金正恩体制が核兵器を放棄する錯覚に陥ることはないだろうから、驚きはない。しかし、だからといって、普通の核保有国として「受け入れる」ことを諦めたり、「責任ある核保有国になる」と息巻いたところで、それを信じたりできない。北朝鮮は核兵器を持つ収容所であり、犯罪的兵器拡散勢力である。米国と西側諸国が直視すべきは、地政学的な厳しい現実で、それは、中国とロシアが収斂し、北朝鮮やイランというならず者国家との関係を露骨に深め、我々に対して梃入れしようとしていることである。

 ならず者国家にどうアプローチするかで、米国主導の秩序を壊す中露の努力の助けにも損にもなる」。

 

ブルース・クリングナー、元CIA韓国担当副部長、ヘリテージ財団上級研究員Bruce Klingner, former CIA Deputy Division Chief for Korea, Senior Research Fellow, Heritage Foundation:「金正恩の発言は、変化というより、既存の北朝鮮の核ドクトリンを肯定するものだ。金正恩体制は2013年の憲法改正で、核保有国であると明文化していた。金正恩の宣言は、2012年に制定された「自衛的核保有国としての地位の強化に関する法律」の内容をほぼそのまま反映している。

 平壌はしばしば核兵器が抑止のためであることを強調してきたが、核兵器が米国とその同盟国に対する抑止と先制攻撃のための「信頼の盾」と「宝の剣」という二つの目的を持つことも、長い間説明してきた。少なくとも2013年以降、同政権は核兵器による先制攻撃を予告してきた。平壌は2016年と2017年に、韓国と日本への先制核攻撃を想定したミサイル演習を行ったと発表していた。

 また、平壌は数十年前から非核化しないと表明している。過去8回の国際的な非核化合意はすべて失敗に終わり、北朝鮮は現在も非核化を求める11の国連決議に違反していることから、米韓の外交的試みに良い兆候とはいえない。しかし、ワシントンもソウルも、抑止力と制裁執行を維持しつつ、努力を放棄すべきではない」。

 

North Korea Special Forces

Image: North Korean State Media.

 

アンソニー・ラギエロ民主主義防衛財団(FDD)不拡散・生物防衛プログラム・シニアディレクター、国家安全保障会議元北朝鮮担当ディレクター(2018~2019年)Anthony Ruggiero, Senior Director, Nonproliferation and Biodefense Program, Foundation for Defense of Democracies (FDD), and former director for North Korea (2018-2019) on the National Security Council: 「金正恩政権は木曜日、自らを『責任ある核兵器保有国』と宣言する一方で、米国、韓国、日本を先制核攻撃で威嚇した。新法は、北朝鮮がワシントンからの核の脅威から自らを守るため核兵器プログラムを追求してきたという見せかけを取り払った。平壌はまた、核兵器を自国の領土外に配備せず、関連技術を共有あるいは移転しないとも述べている。イランとの長距離ミサイル協力を再開し、シリアに秘密裏に原子炉を建設し、イスラエルに破壊されて以来、世界最大の拡散者の不拡散へのコミットメントは空虚なものとなっている。

 専門家の中には、新法は米国の制裁政策が機能していないあらわれと主張する人もいよう。しかし、ドナルド・トランプ大統領(当時)が首脳レベル外交を受け入れて以来、北朝鮮への制裁圧力はほぼ皆無に等しくなっている。前任者の政策を継続するというバイデンの判断は誤りだった。金正恩は非核化に関心がないが、強固な制裁政策は北朝鮮の核兵器や弾道ミサイル開発の資源や投入を減少させるため、依然として追求する価値がある。バイデン政権は、まず外交連合を再構築し、次に平壌の海外代表と石炭販売や労働者輸出などの資金源をターゲットにすべきだ」。

 

ロジャー・ザクハイム ロナルド・レーガン大統領財団 ワシントンディレクターRoger Zakheim, Washington Director, Ronald Reagan President Foundation:  「これは、北朝鮮で言葉と行動が一致するケースだ。北朝鮮は何十年もの間、米国の政権を越えて、核開発プログラムを使い残忍な体制を固め、近隣諸国を威嚇してきた。核開発は北朝鮮政権の持続的な力を支える要だ。北朝鮮の行動とレトリックにもかかわらず、自由世界は時にそうではないと考えるよう自らを騙してきた」。■

 

North Korea Says It Will Never Give Up Nuclear Weapons: What 9 Experts Told Us - 19FortyFive

ByHarry Kazianis

 

Expert Biography: Harry J. Kazianis (@Grecianformula) serves as President and CEO of Rogue States Project, a bipartisan national security think tank. He has held senior positions at the Center for the National Interest, the Heritage Foundation, the Potomac Foundation, and many other think tanks and academic institutions focused on defense issues. His ideas have been published in the New York Times, Washington Post, Wall Street Journal, Newsweek, CNN, CNBC, and many other outlets across the political spectrum. He holds a graduate degree focusing on International Relations from Harvard University and is the author of the book The Tao of A2/AD, a study of Chinese military modernization.

 


B-1Bを南米違法漁業取締に投入と聞いて、ムダな運用と思う向きは対中戦略の大きな構図を理解していないことになる

 

テキサス州ダイエス空軍基地の第7爆撃隊所属のB-1Bランサー機が、フロリダ州マクディル空軍基地の第927空中給油隊所属のKC-135ストラトタンカー機から、カリブ海上で空中給油を受けた(2022年9月7日撮影)。第12空軍と航空機動司令部による航空作戦は、パナマとエクアドルとのパートナー相互運用性訓練の一環で行われ、能力向上、違法漁業行為への対応強化、地域の安全保障における共通利益の維持のために行われた。このような多国間協力により、資源効率を最大限に高め、米南方軍、構成司令部、パートナー国間で一貫した訓練を行える (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Joshua Hastings).

 

B-1Bの投入は、爆撃機の海上での役割増大を意味する一方、違法漁業は国家安全保障上の懸念事項だ

 

 

キサス州ダイエス空軍基地から飛来した米空軍B-1B爆撃機編隊は、エクアドル沖の太平洋東端とガラパゴス諸島周辺を飛行し違法漁業の兆候を監視した。長距離攻撃機B-1Bで、この任務は珍しく聞こえるかもしれないが、国際法執行活動の支援は、実際の環境でスキルを磨く方法として、以前から行われている。

 また、今回のB-1B投入は、特に太平洋地域における将来のハイエンド紛争時の対艦ミッションも視野に入れた、B-1Bの海上での役割拡大への空軍の関心度も浮き彫りにしている。さらに米軍は、インド太平洋地域含む地域でも、違法漁業など、中国の悪質な活動への対抗方法の支援に、興味をいっそう示している。

 

テキサス州のダイエス空軍基地から、違法漁業対策に出撃する米空軍のB-1B爆撃機。 USAF / Senior Airman Mercedes Porter

 

9月7日のミッションには、ダイエス基地の第7爆撃航空団から2機のB-1Bが参加した。空軍は、エクアドルおよびパナマ政府と協力して実施の米国本土(CONUS)爆撃機部隊(BTF)の広範な作戦として、「違法、無報告、無規制(IUU)漁業」に対処したと説明している。フロリダ州マクディル空軍基地のKC-135空中給油タンカーがB-1Bを支援した。爆撃機乗員から提供された情報から、違法漁船の疑いに関して何らかの行動が取られたかどうかは不明。

 米南部司令部の声明によると、「このような地域的な軍事的関与は、エクアドル・パナマ両国とのパートナーシップを強化し、相互運用性を高め、災害救援から人道支援、安全保障活動まで、将来起こりうる各種活動に備えた準備を向上させる」ものだという。「部隊が互いに訓練することで、危機場面での協力能力を向上させることができる」。

 第7爆撃航空団第7作戦群長のジョン・マクラング空軍大佐Col. John McClungも東太平洋への展開について、「空軍グローバルストライク司令部の飛行士にしかできないことの一つだ」と述べている。「この部屋にいる飛行士は、この任務を遂行し、数時間で反復できる。簡単に見えるが、実は大変な仕事だ」。

 B-1Bは、爆弾倉に最大75,000ポンドの各種弾薬を搭載し、何千マイル先の目標に向かう長距離攻撃機の機能が主任務だイラク、シリア、アフガニスタンでの戦闘作戦を支援しながら、近接航空支援プラットフォームとしての価値も証明してきた。2036年までに完全退役の計画が進んでいるが、新兵器搭載や外部パイロンへの武器搭載機能の復活など、現在も現役爆撃機として能力向上に取り組んでいる。

 しかし、AN/AAQ-33スナイパー高性能照準ポッド(ATP)で、B-1Bが即席の長距離監視プラットフォームとして機能するのを示したのは今回が初めてではない。

 

B-1Bランサーの機体右下に搭載されているスナイパーポッドにより、攻撃後の標的を確実に識別し、戦闘ダメージを迅速に評価できる。 (U.S. Air Force photo/Jet Fabara)

 

この役割は、非伝統的な情報・監視・偵察NTISRと呼ばれる。スナイパーセンサーは、電気光学赤外線双方のフルモーションビデオカメラとデータリンク機能があり、下方の対象物の特定、移動目標の追跡、地表の特定地点のGPS座標生成など、NTISRミッションに適した機能を備える。

 B-1BやB-52は、これまでもNTISRミッションで飛行しており、カリブ海上空では、麻薬対策のために密輸船を探ったことがある。

 NTISR支援に加え、麻薬対策や違法漁業対策のためB-1Bの飛行は、予測不可能なターゲットの特定や追跡含む様々な機能を実践する貴重な機会だ。こうした出撃で得られた経験は、将来の戦闘出撃、特に海洋環境での出撃に応用できる。

 空軍は近年、B-1Bの海上作戦能力を拡大中で、特に中国やロシアのような互角戦力を有する敵との将来のハイエンド紛争を視野に入れている。また米軍は、米国本土への脅威の増大、特に大規模紛争時に太平洋や大西洋沿岸の船舶や潜水艦から巡航ミサイル攻撃を受ける可能性が高まっていると警鐘を鳴らしている。

 第7爆撃航空団の司令官ジョセフ・クレイマー空軍大佐Col. Joseph Kramer,は、今回の東太平洋出撃についての声明で、「西半球で競合に直面している」と述べた。「爆撃機の任務は、今日の複雑ダイナミックかつ不安定な世界的安全保障環境において、いつでもどこでも脅威に対応できる能力を示している」。

 同時に、違法漁業は特に太平洋地域において、ますます深刻な国際安全保障問題となっている。中国漁船団は、定期的に違法漁業活動をしていると非難されている。問題の一部が、南シナ海を含む広範な領有権主張を固め、さまざまな国に政治的・経済的圧力をかける北京の姿勢と密接に絡み合っているのは間違いない。

 ガラパゴス諸島は、今回のB-1Bの出撃の焦点の一つで、問題の発火点だ。ガラパゴス諸島はユネスコ世界遺産と生物圏保存地域に指定され、エクアドル政府は周囲に2万7000平方マイルの海洋保護区を宣言し、グレートバリアリーフに次ぐ規模の保護海域となっている。

 しかし、海洋保護団体オセアナによる2020年報告書によると、2019年7月から2020年8月にガラパゴス付近で観測された密漁のほぼすべてが中国漁船団によるもので、わずか1カ月で合計7万3000時間の漁を行ったという。その後も周辺で同様の活動が観測されている。

 6月、ジョー・バイデン米大統領は、違法漁業に特化した初の国家安全保障メモに署名し、国防総省やその他連邦政府機関に対し、こうした活動の対策強化に向けた協力連携の強化を指示した。また、同月には、米国、オーストラリア、インド、日本の4極安全保障対話で宇宙からの監視を利用した違法漁業監視の計画を発表していた。

 つまり、違法漁業への対策は、米軍や米国政府の他の部門と同様に、中国へ対抗する大戦略の一環として、直接的間接的に実施されそうだ。2020年発表の米海軍、海兵隊、沿岸警備隊の合同海軍戦略では、中国やロシアからの日常的な海上での挑戦に対応するため、非戦闘の悪質行為への監視を強化を強調している。

 「国際ならびに、政府全体の努力とともに、海軍は、国際法に違反し、資源を盗み、他国の主権を侵害するライバル国の行為を検知し、記録する」と戦略に関する公式の白書では、「悪質活動の証拠を米国や国際機関に提供し、こうした行為を暴露し、侵略者の風評被害を拡大する」と説明している。「前方展開中の海軍部隊は、法執行当局と軍事能力を補完的に活用し、攻撃的な作戦を通じ悪質な活動を阻止する態勢を整える。我々の拡大努力は、ライバル国の誤ったシナリオを否定し、ルールに基づく秩序を堅持する米国の姿勢を示すものだ」。

 同文書では、中国政府を特に「自国の排他的経済水域を守れない国から重要資源を奪う、国家補助による遠洋漁業船団」などと批判している。

 

 B-1B が違法漁業対策を定期的に支援するかはまだ不明だが、同爆撃機の運用コストと、より伝統的な軍事任務の支援への要求を考えると、可能性が低いように思われる。空軍はまた、イラク、シリア、アフガニスタンで長年にわたり酷使された後、作戦テンポを縮小することで、B-1B部隊の全体的な即応性を向上させようと努力している。

 

2022年9月7日、テキサス州ダイエス空軍基地で離陸に備える米空軍の航空機乗員。同機は米国南方軍の爆撃機タスクフォース任務を支援するため離陸した。このような地域的な軍事的関与は、同盟国エクアドルやパナマとの米国のパートナーシップを強化し、将来起こりうる各種作戦への集団的な準備態勢を向上させている。 (U.S. Air Force photo by Senior Airman Mercedes Porter)

 

 米軍資産では、海軍のP-8Aポセイドン海上哨戒機がこの任務にはるかに適している。海軍のMQ-4CトライトンやMQ-9リーパーシリーズのような、情報・監視・偵察(ISR)を長時間行う無人航空機も選択肢の1つだろう。持続的な海上監視は、Airbus Zephyr Sのような非常に高い耐久性を持つ将来の超高空飛行ドローンで想定するミッションの1つだ。

 小型の商用機材、特に情報・監視・偵察(ISR)ミッション用に転用できるビジネスジェット機やターボプロップ機は、はるかに経済的なプラットフォームとなる。これは、The War Zoneで過去に対麻薬作戦支援のNTISRで爆撃機を使用する是非を議論した際に指摘していた。米軍は麻薬対策任務に請負業者が運用するISR航空機を採用している。

 B-1Bは、将来の海上戦闘、特に太平洋地域での戦闘に役立つ技術を磨く手段として、散発的に違法漁業監視を行う可能性があり、同盟国やパートナーに現実的に役立つ支援を提供する可能性もある。■

 

B-1B Bombers Are Hunting Illegal Fishing Boats Off South America

BYJOSEPH TREVITHICKSEP 9, 2022 4:26 PM

THE WAR ZONE