2019年9月16日月曜日

速報 サウジアラビア石油施設攻撃はイランが実施の可能性濃厚、原油価格上昇は必至か

Everything We Know About The Drone Attacks On Two Saudi Aramco Oil Facilities Yesterday

サウジアラビアAramco石油精製施設二箇所への攻撃で判明していること

Strike Has Strategic Implications, Amplifies Asymmetric Drone War Relevance. 

襲撃は戦略的影響があり、非対称無人機戦への警戒を強めるだろう




BBCワールドニュースが報じたサウジアラビア施設への攻撃直後の様子。 (Photo: via BBC World News)

 


エメンの「アンサルアラー」(フーシ)勢力が無人機(UCAV)を使いサウジアラビア国内の石油施設へ二波におよぶ攻撃を実施したと名乗り出た。これはフーシ派が運営するアル-マシラ通信社が9月14日土曜日に発信したもの。
攻撃では食い違う内容の報道が出ている。:
ウォール・ストリート・ジャーナルは以下伝えている。
「マイク・ポンペイオ国務長官はサウジアラビアの石油関連の心臓部の攻撃にイランが関与したと非難し、世界のエナジー供給に前例のない打撃を与えたとしている。攻撃によりサウジの原油生産の半分が土曜日に停止し、石油価格で上昇の可能性があるり、イラン代理勢力の威力を示した格好だ。無人機は合計10機でサウジアラビア東部の重要施設を攻撃した。だがポンペイオ長官によれば攻撃がイエメンから発進した証拠はないという」
Tehran is behind nearly 100 attacks on Saudi Arabia while Rouhani and Zarif pretend to engage in diplomacy. Amid all the calls for de-escalation, Iran has now launched an unprecedented attack on the world’s energy supply.  There is no evidence the attacks came from Yemen.
We call on all nations to publicly and unequivocally condemn Iran’s attacks. The United States will work with our partners and allies to ensure that energy markets remain well supplied and Iran is held accountable for its aggression

BBCワールドニュース含む信頼すべき筋によれば今回の襲撃で「世界の原油生産で5%」までが影響を受けるとあり、サウジのエナジー大臣アブドゥラジズ・ビン・サルマン王子の声明文では「日産570万バレルの原油生産が止まる」とある。
2019年9月14日付の原油価格をもとにすれば、減産は最大35億ドル相当になる。数字が正確なら今回の襲撃はイエメンのフーシ勢力にとって大勝利と言える。
アブダビ空港の監視カメラに写った長距離無人機。2018年7月。イエメンのm無人機攻撃能力を見せつけた。 (Photo: via PressTV.com)

各筋の情報や襲撃の効果に関する評価が正しければ小型無人戦闘航空機)UCAV)による非対称戦が新しい時代に入ったことになる。
イエメンは以前からサウジアラビア国内施設を無人機で攻撃してきたが、効果のある攻撃となっていなかった。2019年8月17日にもシャイバ油田が攻撃を受けたが負傷者、石油生産ともに影響は生まれていない。
AEW(早期警戒機)が今回の襲撃後にイラク国境付近を警戒すればその他の無人機も探知できたはずである
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This graphic shows Saudi Air Defences around the Abqaiq oil facilities that were struck early Saturday. The drones were well within PAC-2 range, but outside Hawk range. It's possible that the low-flying or the drones' small size and composite materials helped it avoid detection.
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フーシ反乱勢力はアブダビ空港にも2018年7月に無人機攻撃を敢行したと発表し、その際は「サマド-3」武装無人機を3機投入したと主張。フーシ筋は無人機は『1,500キロ』を飛行してアブダビ空港に到達したとアルジャジーラ含む報道機関に発表。トラック一台が損傷を受けたが、負傷者は発生していないとの報道があった。
イラン製無人機がワシントンDCのアナコスティア-ボイリン共用基地で2018年5月に公開され、各国製部品で構成されていることからイランが武器拡散を禁じる国連決議2216号、2231号に違反していることが明らかになった。(DoD photo by EJ Hersom)

イエメン国内のフーシ反乱勢力は無人機数形式を運用している。昨年から技術水準が向上している。そのひとつがカセフ-1で、ほぼ同型機をイランが「アバビ-2」「アバビ-3」として運用中。カセフ-1はプロペラ推進の「プッシャー」機で作戦行動半径は100キロといわれる。主要任務は偵察だ。
イエメンは土曜日のサウジアラビア国内アブカイクおよびフライス襲撃には10機を投入したと主張しているが、型式を明らかにしていない。
事件直後にISWニュースアナリシスグループから出てきた記事では新型の「クッズ-1」ジェット推進巡航ミサイルが精油所二箇所の攻撃に使われたとしている
Well well well...
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Janesは2019年7月8日に以下伝えている。
「クッズは小型固形燃料ブースターを搭載し主翼、尾翼をつけている。このミサイルがアバ空港を襲撃しており、尾部は6月24日にマリキ大佐が回収し以下述べている。
マリキ大佐はエンジンはTJ100ターボジェットでチェコのPBSグループ製という。クッズ巡航ミサイルのエンジンはTJ100のコピーの可能性がある。PBSからはイランへの輸出実績はないし、同盟国にも同様だが捜査には協力したいとJane’sに伝えてきた。
フーシはサマド無人機で寸法が異なる2型式を展示しアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビア国内の攻撃に投入したと主張している。小型版にはサマド-1の銘板がつき、ともに電子光学方式の偵察用タレットがついている。
大型版にはサマド-3の銘板がついており、監視偵察装備は搭載していないものの主翼結合部上部にバルジがありおそらく大型爆発ペイロードを搭載するのだろう。またフェアリング前方も同様に使うようだ。」
サウジアラビア襲撃事件直後にTJ100ジェットエンジン月の「クッズ」巡航ミサイルが投入されたとの説が出てきた (Photo: via ISWNews)

巡航ミサイル、UCAVのいずれをイエメンのフーシが土曜日に投入したかは別に、サウジアラビアの精油施設襲撃から現在進行中の武力衝突から世界規模に影響が生まれそうだ。■

コメント:これはどう見てもイランの関与が濃厚です。施設への侵入経路から発射地点がイエメンでは矛盾することになれば、いよいよイランですね。また貿易の自由体制を逆手に取るこうした技術移転には一層厳しい管理体制が必要となるのは必至でWTOではもはや対応不可能ではないでしょうか。

各国でまだ現役のM60パットン戦車は近代化改修で親衛戦車に太刀打ちできるようになるのか

America's M60 Patton Tank: Can It Still Fight the World's Best (At Over 50 Years Old)? 50年前のM60パットン戦車で世界最高性能の戦車にまだ太刀打ちできるのか

Raytheon is offering an update to the Patton that makes it a killer (of tanks), but not a survivor. レイセオンがパットン改修で攻撃力を引き上げる構想を提示しているが残存性は期待できないようだ

1960年代製の戦車がどこまで性能向上できるのか。
M60パットンは1960年代1970年代の米陸軍戦車部隊の中心装備だった。その後M1エイブラムズに主役の座を譲り、いまも変わらない。ただし現在も合計5千両ものパットンが計19カ国の陸軍部隊で現役だ。今年初めにレイセオンがエンジン換装、火器管制装備、120ミリ主砲を中心とする供用期間延長パッケージ(SLEP)改修を提示した。
M60SLEPの競争相手がイスラエル軍事工業がすでに提供中のM60サブラ改修策だ。サブラはトルコでも供用中でM60Tの制式名称で、シリア北部で戦闘投入されている。一方で旧式パットンがイエメンで両陣営が使っている。
改修型パットンは速力や火力が向上するというが現在の戦場で十分な戦力を発揮できるのだろうか。
冷戦時の主力戦車vertisement
M60の出自を探るとM26パーシング重戦車にたどり着く。第二次大戦終了時にごく少数が実戦投入されたパーシングからパットンが生まれ、主砲90ミリでM46、M47、M48に発展した。M60は1960年に生まれた最終型だ。その狙いはソ連のT-54戦車への対抗で装甲の厚さと長射程M68主砲105ミリの採用だった。
自重50トンのM60は第三次世界大戦勃発に備え欧州に配備されたが、ヴィエトナム戦争には投入されなかった。ただし、橋梁設置の派生型が使われている。M48が北ヴィエトナムのPT-76やT-54を数少ない直接対決で葬っており、ドミニカではスウェーデン製戦車を相手にしている。
中東ではイスラエルがM60を第4次中東戦争で初投入し、ゴラン高原で敵に包囲された機甲旅団の救援に駆けつけた。シリアの3千両の装甲車両をなぶりものにした。一方で南部戦線ではりエジプトがスエズ運河に構築した橋頭堡攻撃に向かったM60がAT-3対戦車ミサイルによる被害をを受けた。パットンの全高が大きいことは標的にされやすく、前面に装備した油圧系統は装甲を破られると発火しやすかった。にもかかわらずイスラエル軍はパットンが気に入り2014年まで現役で使い、各種改装を行っている。
パットンは供用期間中に数々の改修を受けている。中でもM60A2「スターシップ」は155ミリ主砲でMGM-51シレイラ対戦車ミサイルも発射できたが、早々と退役したのは技術面の制約を解決できなかったためだ。最終型M60A3TTSは火器管制機能が改修され熱画像で夜間戦闘に効果を上げた。海兵隊のパットンでは爆発物反応型装甲も導入している。
ただし1980年代に入るとソ連がT-72戦車を大量輸出し、装甲や火力でパットンと互角あるいは上回る性能を示した。米国ではM1エイブラムズ戦車の導入が始まり、火力(120ミリ主砲)や複合材を多用した装甲で防御性能が飛躍的に伸びた。
米軍でM60を最後まで供用したのは海兵隊で1991年湾岸戦争ではクウェイトでおよそ100両のイラク戦車を撃破しながら、パットンの全損は1両のみだった。だがこれは敵側の訓練や戦術が劣っていたためで、まもなくしてパットンは米軍から姿を消した。
とはいえM60は今でも主力戦車の座についたままの国がある。エジプト(1,700両)、トルコ(932両)、台湾(450両)、サウジアラビア(450両)、モロッコ(427両)、タイ(178両)、バーレーン(180両)の各国である。
SLEP・サブレ両改修案の中身は
レイセオンのSLEP改修は火力と機動力の改良が主眼だ。
まず、旧式M68主砲は120mmのM256主砲に交換し、エイブラムスと同じ砲となる。これで1980年代製のT-72への対応に苦労したパットンが最新鋭戦車も撃破可能となる。さらに新型デジタル照準装備をM1A1Dから流用する。新型コンピュータにより砲手は走行中にも照準を当てることが可能となるのは大きな利点だ。そして砲塔の回転用の油圧系統は電気駆動式になり回転速度が上がりながら命中弾を受けての「炎上」の可能性が低くなった。
次にレイセオンはディーゼルエンジンを750馬力から950馬力に更新したので最高速度が40マイル時になり、新鋭戦車と肩を並べる。
レイセオンの試作戦車には結合型装甲もついておりロケット推進弾を跳ね返す効果があり、追加装甲板や補助出力で車体後部の冷却ファンを駆動する。ただし以上はSLEP改修の標準内容ではないようだ。
これに対してイスラエルのサブラII改修でも120ミリ主砲と新型照準コンピュータの組み合わせは同じでエンジンは1千馬力になり最高速度は時速34マイルになっている。SLEPと違うのはサブラも装甲をグレードアップしているが砲塔の形状を変えていることだ。また爆発物反応装甲を採用し、装甲板も追加搭載する。
仕様上良く似ているマガッチ7C戦車に装甲板を搭載し、ヒズボラのAT-3・サガー・ミサイルが18発命中しても残存できたとの報道があり、一発も貫通しなかったという。ただしサガーは1960年代製の装備であり新型ミサイルは爆発力貫通力も増強している。
改修はどこまで効果があるのか
エンジン強化でパットンはその他の装甲車両に遅れを取らずに前進できる。それでもM60の重量馬力比は見劣りがする。
120ミリ砲と新型火器管制装備でM60は今日稼働中の戦車なら大部分を中長距離から撃破できる。高性能のM829E3およびE4劣化ウラン弾があれば高性能反応型装甲にも対応できるのでが、この砲弾が利用できる運用国は少ない。そうなるとM60のSLEP改修はそこそこの戦車ハンターとなりそうだ。
ただし今日の戦車は敵戦車を相手にすることは少ない。相手は戦闘員集団が多く、長距離対戦車誘導ミサイルとしてコメットや短距離向けロケット推進手榴弾を装備している。こうした装備はM1はメルカバといった第一線戦車相手にも有効性を証明している。
パットンはM1あるいはメルカヴァより相当に脆弱である。さらに旧型T-72にも劣る。パットンの前面装甲は鋳鉄の旧式で圧延硬化装甲(RHA)では253ミリに相当する。新鋭戦車では複合材装甲を採用しており同じ重量で硬化は劇的に向上している。最新鋭M1A2の装甲は戦車砲弾には800ミリ相当とされる。
対照的に90年代製の120ミリ、サボー弾はRHA700ミリでも貫通するし、AT-17コメート対戦車ミサイルの貫通能力は1300ミリだ。
パットンは全高が大きく標的にされやすすく、主砲砲弾はまとめて配置されているため敵弾が貫通すると爆発しやすい。エイブラムズでは砲弾は離して配置している。
M60SLEPは装甲には手を付けない。サブラでは装甲も改修しており、トルコの実戦事例で改良型パットンが対戦車ミサイルにも耐えると判明している。
今年4月21日にトルコのM60Tがイラク・バシクエでISISのコメート対戦車ミサイルの攻撃を受け、損傷は受けたものの乗員は無事だった。とはいえ車両は作戦実行に耐えられなくなった。
8月にはこれと別にトルコのM60A3とM60Tがユーフラテス・シールド作戦でISISを戦闘せずにヤラブルス市街地から放逐してからクルド人部隊と戦闘に入った。クルド側はM60数両を長距離ミサイルで破壊し、トルコ陸軍に初めて死傷者が発生した。
トルコのM60Tサブラ戦車隊はISIS占拠の市街地に火砲を集中したためコメートミサイルの標的になった。乗員で助かったのは1名だけだった。さらにシリアでは少なくとも11両のパットンを喪失した。
だがもっと悪い結果がイエメンで発生し、フーシ反乱勢力とサウジアラビア陸軍の双方がパットンを投入し、合計22両以上が破壊されている。
性能改修したサブラでさえ損失を出しているのであり、SLEP改修では砲塔の油圧機構の除去以外に残存性で改良がない。また装甲の強度もサボ貫通弾に対しては不十分であり車両の防御が困難だ。
レイセオンは改修でパットンを戦車キラーにするが、残存性は追求してない。だが近代戦では兵員の生存が一層強く求められており、ロシアのT-14戦車が砲塔を無人化したほか高性能の防御機能を備えたのはこの傾向に従ったものだ。
パットンは火力により信頼を勝ち取ってきたが、死傷者は最小限にしつつ相手方にプロパガンダ勝利を収めさせないことが重要となっている今日では、装甲防御の古さが足を引っ張りかねない。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

B-21を「バトルプレーン」とし敵戦闘機の駆逐を図る構想が出てきた


Could the New B-21 Stealth Bomber Become a 'Battleplane'?

B-21ステルス爆撃機が「バトルプレーン」になる可能性
Or, a bomber that can also do air-to-air combat? Is that a good idea?
そもそも爆撃機で空対空戦がこなせるのか。
September 14, 2019  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: B-21B-2Stealth BomberStealth FighterBattleplaneAir-to-Air Missiles
B-21について直近の報道をみると同機は米爆撃機として久しぶりに空対空戦闘に投入されるようだ。米空軍がそのまま進めれば、航空史の初期段階の主張が実現する。実際には1950年代、60年代に技術面運用面からこの構想は実現できなかった。だがB-21が「バトルプレーン」として実用に耐えるのか、あるいはせっかくの構想も官僚主義の前に消えてしまうのか、いずれにせよ新型爆撃機の残存性に関係する話題だ。
歴史
爆撃機の武装では必ず何かが犠牲になってきた。武装で重量が増えれば、後続距離、速力、ペイロードが減る。防御装備も空力特性で悪影響を生み、操縦性や速力が代償となった。にもかかわらず各国の空軍は初期から爆撃機の武装を進めてきた。第一次大戦中にロンドンを恐怖に陥れたゴータ爆撃機は英戦闘機からの防御を各種装甲で試みた。爆撃機の自衛能力を求める動きで転換点になったのがマーティンB-10で機関銃砲塔3箇所で異なる角度での防御をめざした。B-10を編隊運用すれば、理論上は攻撃してくる戦闘機に対抗でき、防衛側に相当の損耗を生じさせるはずだった。
全盛期
爆撃機の自衛能力を求める動きの全盛期が大戦間で米国および規模は落ちるが英国の理論家は十分に武装した爆撃機が編隊を組めば迎撃戦闘機を駆逐できるとしていた。防御力主張派は敵地上空まで爆撃機が飛び、ペイロードを投下しながら敵の防空戦闘機が損耗していくと主張した。
米空軍はこの理論をドイツ上空の昼間爆撃に応用したが、結果は良好とはいえなかった。ドイツ戦闘機の高速飛行性能と操縦性に加え、対空砲火が爆撃機編隊をバラバラにし、1機ずつ爆撃機が撃破された。また米爆撃機の機関銃は威力が足りずドイツ戦闘機を駆逐できなかった。逆にドイツ機が20mm機関砲をお見舞いしてきた。結局、USAFは援護戦闘機無しでの爆撃機の昼間運用は断念し、夜間爆撃に切り替えた後、P-51マスタング等を長距離援護につけた。
とはいえ爆撃以外の任務についた爆撃機もある。ドイツは軽爆撃機を夜間戦闘機に転用した。Ju-88やDo-217も同様に投入した。英空軍もデハヴィランド・モスキート軽爆撃機を夜間戦闘機に投入した。
衰退
大戦直後の爆撃機は防御装備をそのまま残していた。B-36ピースメイカーは20mm機関砲を尾部砲塔に装備し、B-47やB-52も同様だった。USAFがB-36を防御戦闘機用の母機にする実験をしたことは有名だ。だがジェット時代に入ると爆撃機の多くで防御装備は断念された。B-58ハスラーでは皆無、XB-70ヴァルキリーでも同様だった。迎撃機が機銃からミサイルによる攻撃に切り替えるや、爆撃機に機銃を搭載しても意味がなくなった。敵防空網に対抗する装備を搭載した最後の機体がB-52ストラトフォートレスで20mmヴァルカン砲を尾部に積んだ。B-52がヴィエトナム人民軍空軍のMiG-21を2機、ラインバッカーII作戦で撃墜下との記録がある。最後のMiG撃墜記録は1972年4月のB-52だった。
構想の再出発
B-1Bに空対空ミサイル発射装備を搭載する構想があったが、ミサイル発射後のレーダー誘導方式は不明である。同様にB-1Bをミサイルトラックにする構想もあり、「重武装機」としてミサイル多数を搭載しても、他機のセンサーに頼る必要があった。B-1Bの高速力と大量ペイロードで理想的な機体になるはずだ。
B-21を空対空戦に最適化する構想に合理性があるのは兵装・センサーの開発状況を鑑みてのことだ。B-21のような大型機体なら空対空ミサイル多数を搭載しながらステルスを維持できる。強力な搭載センサーで空戦状況を把握しながら戦闘と指揮統制を同時にこなせる。敵空域侵入のためステルスを重視し、速力は二の次とした。他方で戦闘機は依然として高速飛行性能を追求している。ミサイルを発射すればステルスを捨てることになるのは発射でアスペクト比が変わるためで、ミサイルの存在そのものも理由となる。戦闘機ではこの問題に対し発射後は直ちに高速で退避することで対応している。B-21では別の対応が必要となり、超長距離ミサイルを敵の有効射程外から発射するのではないか。
まとめ
USAFが敵地深部への侵攻作戦をステルスだけに任せることに躊躇しているのは、大型機がステルス機でも昼間には姿を隠すことができないことに加え、センサー技術の高性能化が止まらないためだ。このため自機の防御能力の復活には一定の訴求力がある。さらに戦闘機の単価が大幅に上がっている中で、爆撃機が防衛側を損耗する構想に魅力が感じられているのは事実だ。ではB-21が敵戦闘機を撃破する場面が実現すれば、1972年以来のこととなり敵の狩人を逆に狩ることになる。■

Robert Farley, a frequent contributor to The National Interest, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

コメント:ドッグファイトを念頭に進化してきた戦闘機の形態がなくなるとは思いませんが、もともと小型機では全域ステルスは物理的に不可能なはずです。また長距離ミサイルによる視界外戦闘が中心になれば、大型機の活躍の範囲が増えるわけで、B-21が切り込み隊長として有望なプラットフォームになるのは当然とも言えるでしょう。

2019年9月15日日曜日

KC-46で新たな設計不良が見つかり、貨物人員の輸送ができない状態になっている

Aerospace Daily & Defense Report

USAF Identifies Critical New KC-46 Design Flaw

Sep 12, 2019Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report
KC-46A: Paul Weatherman

空軍がKC-46A給油機の設計で欠陥の可能性を新たにみつけ、解決策が確立・実施されるまで同機による貨物・人員輸送を禁止している。
同機床面に組み込んだ貨物固定ロックが不意に外れる事案が運用評価テスト中に発生したと航空機動軍団(AMC)が発表した。
空軍とボーイングが解決策を模索しているとAMCは発表。
貨物ロックが勝手に外れると飛行中に貨物あるいは人員の位置が変わり、機体の重心まで変更する可能性がある。
これに対応して空軍は同機について第三種未解決事案カテゴリー1不良報告を発出したとAMCは述べている。カテゴリー1不良とはリスクが認識され人命あるいは重要貨物が危険となる事態を指す。
今年1月、空軍はカテゴリー1事案が2例未解決のままKC-46受領に合意していた。
ボーイングは空軍資金で設計変更を給油用ブームの作動部分で行い、A-10やF-16など小型機対応の感度を引き上げている。
他方でボーイングから遠隔視認装備(RVS)の設計変更提案が出ており、ブーム操作員が給油作業中に遭遇したディスプレイ映像の歪み問題の解決をめざしている。ボーイングはRVSの設計変更は自社負担で行うとしている。■


コメント:KC-46でボーイングは相当に苦労しており、それだけによい機体にしてもらいたいものですが、もともと同機は固定価格での契約形態であり、コスト超過分はボーイングが負担するのが基本となっています。ではその帳消しはどうなるのか。同機導入を表明しているのが日本だけなので日本向け機材の価格がどこまで上昇するのか、納税者としては気になるところですね。

2019年9月14日土曜日

劣勢なイラン軍の戦力だが、潜水艦部隊には注意が必要だ



America Can Thank North Korea For Iran's Capable and Growing Submarine Force

The U.S. Navy is on notice.
September 13, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMilitaryTechnologyWorldNavySubmarinesA2/ad
キーポイント:イラン軍の戦力は米軍に及ばないが、潜水艦は要注意だ。
国とイラン間の緊張は高いまま、毎週のように外交面で非難の応酬が発生している。

直近では革命防衛隊のホセイン・サラミ少将が問題発言をし、米空母の「弱点」のため米軍はペルシア湾でイランに挑戦できないとイラン議会で明言した。似たような発言はイラン高官や国営報道からよく出ており、イラン軍の能力に揺るぎない信頼をおいているようだ。

だがイランの通常戦力にどこまで威力があり、米軍の攻勢を食い止める実力が本当にあるのか。

The National Interest ではこれまでイランの空軍、水上艦部隊にこの質問を投げかけてきた。今回はイランが世界第四位の戦力と自慢し通常戦力の中心たる潜水艦部隊を取り上げる。

イラン潜水艦戦力でまず目をひくのはその規模で、海軍戦力で突出している。運用可能な海防艦、フリゲート艦、駆逐艦が合計10隻を超えないのに対して潜水艦は34隻もある。大部分は小型艦あるいは「沿海域用」ディーゼル電気推進艦で20隻近くが国産のガディール級だがここに北朝鮮が建造したユーゴ級が加わる。ガディール級は小型だが攻撃能力は侮れない。533ミリ発射管をイランが運用するキロ級潜水艦同様に搭載している。ただし、ガディール級は2門、キロ級は6門だ。

イランがミニ潜水艦を中心に装備するのは同国の戦略目標を考えれば理屈に合う。イランには世界各地への兵力投射能力は不要だし、中東全域でも同様だ。逆にペルシア湾だけ、もっといえばホルムズ海峡を制圧すればよい。ディーゼル電気推進艦の航続距離が短いとはいえペルシア湾の大きさや深度からすれば十分であり、敵水上艦を待ち伏せすればよい。

最近に入りイランが国産潜水艦建造の幅を広げ始めた。新型ファテ級はガディール級とキロ級の中間となる排水量600トンで、533mm魚雷発射管に加え対艦巡航ミサイルを潜航したまま発射できると国営通信が伝えている。

イラン海軍で潜水艦部隊が最も充実している。湾岸地域でのイランの地政学面の動きを考えると、この流れは続きそうだ。本格的な交戦の場合にイラン海軍が米海軍と互角に戦う可能性は極めて低いが、潜水艦が接近阻止領域拒否(A2/AD)の先鋒となる、あるいはペルシア湾内で米軍に奇襲飽和作戦を仕掛ける場合の主役となりそうだ。■

Mark Episkopos is a frequent contributor to The National Interest and serves as research assistant at the Center for the National Interest. Mark is also a PhD student in History at American University. This article first appeared earlier this year.