2009年8月30日日曜日

UAV運用の制約:空域と操縦適性



Debate Soars Over UAVs in Civil Airspace
aviationweek.com 8月18日

英国防省はMQ-9Aリーパーの導入を断念する発表をした。経済情勢を理由としているが、実は英空軍は無人機の自国領空内での運用に自信が持てないのだ。米空軍は小型のMQ-1Lプレデターから大型のリーパーに総入れ替えする方向にある。これによりホロマン空軍基地(ニューメキシコ州)に第二の訓練基地を準備しているところ。またリーパーの運用に当たり、24時間監視体制の維持には州軍航空部隊の人員も利用する意向だが、24時間飛行体制が平時に必要なのか、確信が持てない状態だ。戦場の上空で無人機を飛行させるのは民間航空の行き来する空域よりもはるかに容易。米空軍高官がある会議の席上で民間空域内で無人機を飛行させる可能性を聞かれたことがあった。「連邦航空局(FAA)の方はここにおられますか。いない? よかった」と前置きして同高官は航空領域を管轄する民間航空当局への不満を表明した。「何年間にわたりFAAに対して無人機運用をいつどれだけできるのかとたずねてきたが」 戦闘地帯ではプレデター・リーパー部隊は3次元の空域ブロックをGPSで定義した中で飛行し、その空域内には他の航空機は飛行を禁止され、各地上局は軍事航空管制システムに接続される。しかし米国内では「小型民間機で敵味方識別装置や警告装置のないものがたくさん飛んでいる」のが現状。

空中衝突や突然の降下の回避が大切。その際に空軍、陸軍あるいは税関・国境パトロール(CBP)が運用する無人機の区別は出来ない。特にCBPのMQ-9リーパーが誤ってアリゾナ州ノガレス近郊の地上に激突している事例がある。当初、CBPは同機の機体構造に故障が発生したと説明していたが、実は同機は完全に作動しており、遠隔操作の誤りでエンジンを停止してしまったと判明した。陸軍が長距離長時間飛行のUAV運用を開始するに当たり、空軍が支援をしている。陸軍の計画はMQ-1Cウォーリヤーを多数配備するもの。「陸軍が自前の空軍を作る決定をした際に当方との間で考え方の相違があることが判明しました。」と米空軍リメイ政策開発教育センター所属のデイブ・ハイデマン中佐は語る。「陸軍の考えは一等兵ならみんなパイロットになれると言うもので、猿にもバナナをたくさん与えれば空を飛べるようになるというものだった」

陸軍・空軍で共同実施した訓練内容のベータテストで「バナナをたくさん与えてもだめな人もいるとわかった」(ハイデマン中佐)。ビデオゲームが上手な志願者からオペレーターを選抜する試みは、うまくいかなかった。ゲーム好きは現実世界の複雑さに直面するまではうまく操作できた。複雑な事態に直面すると他の任務がおろそかになった。

イスラエルは今年1月のガザ侵攻作戦(Operation Cast Lead キャストレッド作戦)でそれとは別の課題に直面した。部隊は接近戦を展開中で、人口稠密の都市部での戦闘であった。近接航空支援がなければ死傷者とともに付随的損害が増える一方であった。そこでイスラエルは複雑な航空作戦をガザ上空で展開し、12機以上のUAVが同時に狭い空域に展開し、その他ヘリコプター、攻撃機、観測機等と同時に飛行した。同空域の管制は空中と地上を一体化させ、友軍による誤射(砲弾、ロケット弾、誘導弾が同空域を通過)を防止するとともに敵軍による潜在的な脅威の所在を発見した。この区域内管制のシステムは近い将来ロケット攻撃に対抗するするアイアンドームに統合される予定。イスラエルがその際に使用したUAVにはエルビットシステムのエルビットシステムズのハーミーズ450とIAIのヘロンIが同作戦に投入されたほか、低空飛行のスカイラークIドローンも使われた。大型UAVは空軍が管制し、地区内管制センターがその動きを把握。しかし、そのペイロードの決定は地上部隊でビデオ端末を持ち、ペイロード操作装置からによるもの。一方、低空を飛ぶスカイラーク(ミニUAV)は地上部隊で個別に操作された。

低空での航空攻撃機との空中衝突を防止するため、各オペレーターはミッション前の計画立案、侵入・退出ルートの検討を手順どおりに厳格に行った。これはすべて同戦闘区域の状況把握を完全にしている航空管制官の監督下で実施。同作戦の三週間の期間中に航空機同士の事故は一回も発生していない。

イスラエルが応用したのは狭い空域であり、敵軍の状況は把握できていた。これとは逆に平時のUAV運用が直面する難易度はもっと高い。米空軍関係者は「プレデターでもグローバルホークでも初めて週末の小型機が飛行する空域に入れば、FAAは当方のUAV全機の飛行を停止させ、地上待機が長く続くだろう」と言っている。

コメント:なるほど、FAAでさえそうであれば、日本でUAVの活用をするには相当の調整が必要ということですね。それもあって目に見える形でUAV導入の話が進展していないのでしょうか。

2009年8月23日日曜日

ミサイル防衛 Thaadの改良型開発


MDA Eyes Longer-Range Thaad Options
aviationweek.com 8月17日

終末高高度防衛ミサイル(Thaad)は最新鋭の弾道ミサイル迎撃システムであるが、その有効範囲を広げる検討が進んでいる。 現行のブースター直径14.5インチに対して21インチに拡大したブースターの採用が一番の関心となっている。「21インチにすると射程距離が3倍から4倍に増え、防衛対象面積も増えます」(ウィリアム・ラム陸軍大佐 ミサイル防衛庁(MDA)Thaadシステム主査) 同大佐によるとMDAは主契約社のロッキード・マーティンが提示した案を検討中で、2011年度予算案に盛り込むことを考えていると言う。

ブースターを大型化することで現地指揮官にミサイル迎撃の判断をする時間が増える。指揮官が最初に発射した迎撃ミサイルの効果を確認の後、必要に応じて第二弾を発射するというもの。

「これだと迎撃ミサイル一基を発射して、向かってくる敵の再突入ミサイルを破壊できたのかを判断します。つまり、まず発射して、評価し、その後、破壊できなければ再度発射するわけです。」(ラム大佐)

無駄な迎撃ミサイルを発射しなくてもいいのであれば装備の節約になると同大佐は強調する。

Thaad用の推進装置を作成するエアロジェットは21インチ試作機と第二段部分の静止作動試験を
2006年に実施している。ロッキード・マーティンのトム・マグラス副社長によると、試験結果は成功だったという。

二段式発射の構想で性能の幅が広がり、交戦段階で側方運動性が高まるとマグラスは説明する。21インチへの拡大で速度が高まり、対応範囲が広まる。

この2方向の改良でロッキード・マーティンはThaad先端の攻撃部分へのハード上の設計変更はないと見ている。ただしソフトウェアの改良が必要となる。

MDAがThaad改良型の開発案を承認すれば、地上配置の発射システムにも改良が必要となる。直径21インチの本体だと現在は8基を格納する発射機に5基しか入らない。Thaadの各部隊は最大9基の発射機を扱うこととなるが、現行では3基を想定している。

ただし、MDAでこのプロジェクトの予算化に向けた動きはない。それでも、ラム大佐によれば21インチのブースターの発射実験は承認が下りれば三年で実現できると言う。MDAには試算資料が行っているが、承認をしていないのが現状。

21インチへの移行で地上配備システムもイージスのSM-3ブースター(レイセオン製)と同じような変化を受けることになる。米国と日本は共同で21インチのSM-3ブロックIIAを開発中であり、現行の13.5インチのSM-3ブロックIAとBよりも大幅に性能を強化する予定。

2009年8月11日火曜日

USAF:グローバル打撃軍団が作戦実施可能状態に



USAF Global Strike Command Announces IOC
aviationweek.com 8月10日

米空軍が公式に空軍グローバル打撃軍団(AFGSC)を立ち上げたことで核戦力の展開が再強化されると空軍長官マイケル・ドンレイと空軍参謀長ノートン・シュワルツ大将が発言。空軍上層部により同軍団の概要が発表され、司令部はフランク・クロッツ中将の指揮の下、「アメリカの持つ大陸間弾道弾、核任務遂行可能爆撃機の編成、訓練、装備を進め、重要な任務に熱意と職業意識を持って遂行できるようにする」(シュワルツ大将)のが目的なのだと言う。

同軍団は初期作戦能力を獲得したが、完全に機能するには今後数ヶ月かかる。ミサイル部隊の移管は12月初旬に完了し、爆撃機部隊は来年2月に移管されるとドンレイ長官が明らかにした。さらに、第20空軍も12月までにAFGSCに移管され、その後第8空軍が2月までに編入されるとドンレイ長官が発表している。

AFGSCは監査長を持ち、部隊監査を「より厳しく、内部に踏み込んで、より要求水準を上げて」(シュワルツ大将)実施する。この監査には国防脅威削減庁も全日程に参加する。

同軍団は2009年1月のシュレジンジャー報告の産物。同報告書では国防総省が核抑止力の心理的・政治的重要性への理解が不足と批判し、核装備管理の大幅な刷新を提言していた。

AFGSCの管轄に入るのは空軍の戦略核ICBMおよび有人爆撃機。司令部はバークスデイル空軍基地(ルイジアナ州)で、今回の再編により5年間で750百万ドルの支出が見込まれる。

AFGSCはミノー空軍基地(ノースダコタ州)とバークスデイルに各2飛行隊という現在のB-52部隊編成に加え5番目の飛行隊をミノーに編成する。

米空軍の運用する爆撃機3機種のうち、B-1は核任務機体ではないので、引き続き航空戦闘軍団に所属する。残るB-52とB-2は両用任務が可能な機体としてグローバル打撃軍団に移管する。この根拠はグローバル打撃軍団には核攻撃ミッションに専念させ、B-2およびB-52部隊は「通常兵器ミッションにも転用できるように編成、訓練、装備していく」ことを確実にすることだ。とくに協調されたのが、B-2には新型の地下深くの強化施設を目標とする設計の大型貫通型爆弾を搭載可能なことだ。

通常戦は統合部隊司令部(JFC)が担当し、空軍からは航空戦闘軍団がその中に参加している。米国戦略司令部が核作戦を担当し、グローバル打撃軍団が参画する。通常兵力による攻撃の必要性が認められるとJFCは傘下の航空機を前線司令部に移管し、運用される。

2009年8月9日日曜日

第一線配備に近づくEA-18G


Classified Tests Show Growler Ready for Ops

aviationweek. com 8月6日

EA-18Gグラウラーの本格生産の決定をにはQDR(四年毎の国防体制見直し)で海外展開部隊に26機から30機の空中電子攻撃(AEA)航空機が必要としていることがはずみとなるだろう。米海軍によるデジタル電子攻撃機の運用テスト結果が完了してグラウラー/グリズリー電子攻撃機の生産機数が増えることになろう。ペンタゴン高官が海外展開部隊で機数が不足していることを議会公聴会で明らかにしている。敵のレーダーの存在しない戦闘空域でどんな空中電子攻撃機能が必要なのかを論じることを関係者が躊躇しているが,同機のデジタル方式による位置発信と識別能力が機能リストの上位に来る。敵の指揮命令内容を探知し、ネットワーク構造を解明し、通信内容を傍受できる。また簡易爆発物の駆除にも大きな役目を果たすことが出来る。

ボーイングのF/A-18E/F ならびに EA-18Gの生産ラインは海外展開部隊からの要望で生産増加となりそうだ、とリック・マーティン(ボーイング社EA-18G計画主任)も認めている。これまでのところ海軍に引渡し済みは12機で9月と10月に2機追加されるが、契約全体では34機の製造で、一機あたり価格は65百万ドル。海軍が運用能力を実証したことで今秋に追加54機の完全生産の決断が下る見通しで合計88機の調達計画になる。

EA-18Gは運用効果が高いとのお墨付きを得て、空母部隊への配備が7月に勧告されたもの。

この勧告をしたのは海軍運航テスト評価部門。これでグラウラーは実戦で電子戦実施能力ありとみなされたことになる。

グラウラーはEA-6Bを代替し、グリズリーへの搭載がはじまった新型のデジタルICAPIII電子攻撃システムを搭載することで能力ギャップを埋めるように設計されている。今後は次世代ジャマー計画で改修を受ける。次世代ジャマーはより高度の電子戦、サイバー戦、ネットワークかく乱の分野で大きな飛躍となる能力を発揮する。

同機のシステムの柔軟性が高い例としてマーク・ダラー大佐(F/A-18とEA-18G計画主査)はソフトウェアの問題をあげる。テスト中に発見されたソフトウェア上の欠陥は今年後半にはリリースされる次回のソフトウェアでは更新され解決されるという。

このソフトウェア問題はグラウラーの送受信能力には関係がないが、主翼に搭載の電子攻撃ポッドと機内の電子攻撃装置の調整に関係するものとマーティンは説明している。

コメント: F-XだF-XXだと騒いでいますが、日本が真剣に強化しなければならないのが電子戦の分野でしょう。オーストラリアはEA-18Gの輸入を希望しているようですが、日本も検討する価値は十分あるのではないでしょうか。もっとも電子戦はきわめて攻撃性の高い性質のものですが、それだけに対応度を高く求められることになるでしょう。F-22も対応できることになっていますが、システムの設計が新しいEA-18Gは十分魅力的な選択となるはずです。

2009年8月4日火曜日

順調に進むP-8Aポセイドンの開発


U.S. Navy To Buy More P-8A Test Aircraft
aviationweek.com 7月31日


米海軍はボーイングP-8Aポセイドン洋上パトロール機を三機追加購入し、運用テストと機体評価に使用する。追加機体は基本契約分5機(飛行テスト用3機と地上テスト用2機)に上乗せされる初の追加発注。P-8Aの初期作戦能力獲得は2013年末の予定で、海軍航空部隊への完全投入は2018年となる。「P-3からP-8への機種変換に6ヶ月を見込んでいますが、P-3の残存寿命は2018年までの完全変換の実施には十分なものです」(海軍のパトロール・偵察部門責任長ビル・モラン少将) 海軍は最大117機のP-8Aが必要と書面で表明しており、これは当初の108機から増加しているが、現用中のP-3の合計数は164機である。モラン少将はP-8Aのロールアウト式典がワシントン州レントン工場で行われた際に発言したもの。同工場で飛行テスト用機体三号機T-3もお披露目された。これに先立つT-1とT-2の二機はボーイングフィールドに移動ずみで、テスト機材および初期段階のミッション用機材の積載が進行中。初飛行は「来月ごろ」になると同機開発計画の主査マイク・モラン大佐は話す。テスト用機材には静止試験用のS-1と疲労試験用S-2があり、後者の胴体組立がカンザス州ウィチタのスプリント・エアロシステムで進行中である。

T-3はレントンからボーイングフィールド(シアトル)まで9月に「丘を越える飛行」をする予定で、2010年にパタクセントリバー海軍航空基地(メアリーランド州)に移動しさらにテストを続ける。T-2も2010年にパタクセントリバー基地に移動するがその前に西海岸で二ヶ月のテストを完了する。

P-8Aは737-800型の胴体構造を強化して、主翼は-900型の設計を基礎に補強され手いる。胴体後部には兵器庫があるのが特徴。また、主翼下部には兵器搭載部分がとりつけられ、ウィングレットにかわり主翼には角度がつけられている。

2009年8月2日日曜日

F-22生産ライン閉鎖は時間の問題なのか、それとも.......



House Joins Senate In Push To End F-22 Line

aviationweek.com 7月30日

修正案が通過したことで、下院が承認ずみの368百万ドルのF-22調達予算は現有機の保守点検ならびに生産ライン閉鎖費用に振り向けられる。「政治的に見て現有の装備で十分と見ます。他の選択肢はありません。」とジョン・マーサ下院議員(民主 ペンシルバニア州)は発言。下院国防歳出委員会委員長を務める同議員はF-22の生産継続の推進派であった。

マーサ議員によると現有機の稼動状態を最高に保つことが優先順位が高くなるのだという。「つまり、187機を完全な状態に保つのに予算を使おうということです」 さらにこの予算をC-17の予備エンジン、大型機材用赤外線妨害装置、高性能目標捕捉ポッド、高性能レーダー開発に振り向ける。同修正案は賛成票269反対票165で通過した。マーサ議員は政界での風向きの変化で優先順位付けが変わったと説明する。今回の下院の議決は7月21日の上院議決でF-22生産を187機で終了させるものに呼応し、オバマ大統領とゲイツ国防長官の要望に沿っている。マーサ議員は7月22日に予算の再配分とF-22を指名した内容を法案に盛り込むつもりだと発言していたが、上院における同議員の同僚となるダニエル・イノウエ上院議員(民主 ハワイ州)は初期の立場を撤回し、ラプター支持から退くと伝えられていた。「制空権確保には大きな関心がありますが、(追加調達の)賛成票が多数となる見込みがありませんでした。こうなれば調達分の各機に十分に予算手当てをすることに全力を尽くすのみです」とマーサ議員は木曜日発言していた。

コメント:二転三転していますが、次第に方向が定まってきました。しかし、第五世代戦闘機の配備薄の状態でアメリカは本当にこれからの安全保障が実現できるのでしょうか。日本はイスラエルとともに資金供出しても生産ラインを維持するべきではないでしょうか。その意味でF-Xは飛び越してF-XXとしてあらためてF-22取得の希望を表明してもいいのではないでしょうか。時間がどんどんなくなっていきます。この状況はE-3AWACSがほしいときに生産ラインが閉鎖になってしまった場合と似ていますね。

2009年8月1日土曜日

SM-3で小型飛翔体体迎撃に成功


SM-3 Scores Hit After Fixes Implemented
aviationweek.com 7月31日

ミサイル防衛庁(MDA)が小型の短距離ミサイル迎撃実験に成功した。
【今回の実験の詳細】7月30日にイージス駆逐艦から発射したSM-3ブロックIAによるもの。目標ミサイルは東部標準時間午後11時40分にハワイ州カウアイ島の太平洋ミサイル試射場より発射、二分後に駆逐艦ホッパーが迎撃ミサイルを発射し、太平洋上約100マイル上空で目標に衝突させたとMDAは発表。
【背景】 今回の実験は昨年の迎撃失敗後の変更作業の効果確認として追加された。昨年失敗したのは日本の海上自衛隊から発射のSM-3。その際のMDAの評価は「目標の飛翔状態、迎撃ミサイル発射と飛翔状態、イージスシステムの操作にいずれも問題はなかったが、迎撃につながらなかったとするもの。その根底にある原因は解明されておらず、MDAは今回の実験にハードウェアまたは発射手順に変更が加えられているのかを明らかにしていない。また、なぜ小型目標が使用されたのかも明らかにしていない。
【参加した海軍艦艇】 実験演習では米海軍のイージス艦3隻が参加し、SPY-1レーダーによる目標捕捉を行った。参加したのはホッパー以外に巡洋艦レイク・エリーと駆逐艦オケインであり、各艦がミサイル発射の解を得ている。レイク・エリーにはソフトウェア更新後の効果確認の機会となった。これはSM-3ブロックIBの搭載で必要となったもので、高性能のシーカーを搭載した同迎撃ミサイルは2010年後半まで飛行実地テストを受ける。今回の演習ではレイク・エリーは新ソフトウェアを駆使し、発射管制機能をフル作動させたとMDAが発表している。

2009年7月31日金曜日

日本の防衛力整備の方向性を考える



New Missions for Japan

aviationweek.com 7月26日

日本政府の危惧材料は北朝鮮の弾道ミサイル、中国の高性能戦闘機・巡航ミサイル、領土問題と国土防衛用の基地と新型機の確保だ。予算の増額は考えにくいため、防衛力の大幅増強は不可能となっていることがこれに加わる。このプレッシャーにより政府は相反する政策上の優先順位を検討している。

l 防衛対象は何か

l 装備近代化の選択肢はなにか

l 海外派遣部隊の展開が軍事脅威と周辺国に写らないためにはどうすべきか

【未整備の防衛装備は多い】 また、国内防衛産業が非常に高価な装備(例 F-2やAH-64アパッチ攻撃ヘリ)を生産してきたが、国内生産抜きに装備を調達しようとしている。整備導入で実施済みの案件にはイージス護衛艦、ペイトリオットPAC-3、KC-767空中給油機、E-767AWACSがある。しかし、自衛隊には超音速巡航が可能な戦闘機がなく、巡航ミサイルの追尾ができないし、長距離の航続飛行が可能な無人機がないため本土防衛とシーレーン監視ができない。また高精度の誘導兵器があれば、遠隔地の領土を侵攻する他国の野望を防ぐことが出来るはずだし、長距離輸送機があれば国際活動としてインド洋の海賊対策とか災害救援活動も広く展開できる。

【F-22は断念するのか】 一方で、米国の政治上・予算上の問題と日本の政権基盤が不安定になっていることから、F-22調達は先が見えない状態となっている。米空軍向け生産が終了すると同機の日本向け価格は非常に高価になるので、日本の防衛省は他の選択肢としてユーロファイター・タイフーン他を検討している。さらに、F-22購入が国会で承認されるかは不確実だ。麻生首相は8月30日の総選挙を決断したが、麻生政権ならびに自民党への国民の信望が低い状態では防衛装備調達にも影響が出よう。
【本当はF-22がほしい日本】 「日本がほしいのはF-22です。しかし、日本が求めるのは実は性能であり、機体そのものではありません。日本が求める性能を発揮できるのはF-22だけということなのです。他国の脅威が解消となる見込みはありません。他国の軍事能力が増強されれば、日本は対抗して長距離で捕捉撃墜する能力がほしくなるでしょう。」(チップ・アターバック中将 第13空軍司令官 在ハワイ・ヒッカム空軍基地)「Su-30MKI(中国のSu-30MKKのインド版)を操縦する機会があり、何度も制御限界を超える操作をしましたが、全部失敗しました。非常に安定度が高く、反応性もよい機体です。MiG-29よりもはるかに信頼度が高く高性能です」(同中将)

総論的には日本がほしいのはラプターの超音速巡航飛行性能(マッハ1.6)と運用高度(6万5千フィート)ならびに大型レーダーと電子監視能力だ。その他にアクティブ電子スキャンアレイレーダーで130マイルを探知できることがあり、この距離はたまたま航空自衛隊南西航空群の責任範囲から中国東沿岸までの距離と一致する。ラプターはレーダー探知サイズが極小で探知されることなく目標機に接近できるのだ。「F-22によって米国は敵の防空網の中に侵入することができ、これまでは実施できなかった攻撃他の任務が実施できます。日本は別の見方をしています。日本は本土防空能力の向上をめざしています。F-22ならスタンドオフで防空能力が実現できますが、F-35では無理です。第五世代戦闘機の少数配備は本土防空にはきわめて道理にかなった選択となります。」(アターバック中将)

【防衛論議に予算制約の壁】 日本国内では遠距離作戦運用能力を獲得すべきか専守防衛に徹すべきかの議論が常にある。問題は両方を実現する予算があるかどうかだ。「予算使途の目標を正しく設定できれば簡単です。長距離空輸、作戦持続、ISRなのか、C4のシステムなのか、同時に違う目標を実現することも出来ます。日本政府は双方の目標を追求しているようだ。それは困難でしょう。まず、空中給油(KC-767)と長距離空輸(C-X)、ひゅうが級ヘリ護衛艦を着手しました。全部の完成を目指すと予算問題に触れざるを得なくなります。」(東京在住の合衆国政府関係者)

【国内生産の呪縛から解かれる日本】 「国内生産は引き続き防衛装備調達の決定に大きな要因ですが、かつてのような最重要項目ではなくなっています。20年前に航空自衛隊には米軍と共同で脅威に対抗する重要な作戦上の役割は持っていませんでしたので、国内生産を最優先に考える余裕がありましたが、いまや作戦効果や運用能力が一番の関心事になっています。」(米国政府関係者)
この新しい方程式の例が弾道ミサイル防衛への日本の努力増強だ。また、同国政府は輸出管理を緩和し、日米民間産業が共同してスタンダードミサイルのブロック2を開発できるようにした。その目的は日本側に米国パートナーとの共同開発を通じ、新技術へのアクセスを可能とし、市場も拡大することにあった。「日本には健全な防衛産業の基盤を整備してもらいたい。事実、われわれも利用をしたいのは日本が多くの分野で優秀だからであり、実際に依存している分野も多い。米国のミサイル防衛予算は削減されたが、ゲイツ国防長官はSM-3開発の継続のための予算確保を明確に言明している。これには日本側のノウハウと投資が組みこまれている。また、日本はペイトリオットミサイル用の部品を製造する唯一の外国である。いまや日本は製造面と研究開発の両面でより多くの達成が可能。それは両国の産業基盤にとって望ましいことであり、性能要求の観点から最適の決断が可能となっている」(上記米国関係者)

この変化の象徴が日本政府がAH-64アパッチ開発計画を大幅に制限することを決定したことだ。完成品を輸入するよりも国内生産をした場合が大幅に高価となるため。

「この新しい方針を巡ってはかなりの軋轢があったはず。これをきっかけに直接購入に勢いがつくのかが関心のまとですね。」(上記関係者)

その調達型式のリトマス試験紙となるのがF-XおよびF-XXだ。F-Xの構想は高性能超音速巡航可能戦闘機40から50機を購入するもので、F-22あるいはタイフーン類似機となろう。その後のF-XXの要求水準はF-35JSFの内容と類似している。

F-22輸出が最終的に承認されれば、日本側で同機を製造する余地はごくわずかとなる。防衛関係者は日本には高速、高高度対応可能戦闘機で広範囲の島嶼国家として中国国内150マイルまでの範囲で作戦可能な機体が必要と主張している。「日本は数ヶ月前に沖縄にF-4の交代としてF-15を移動させている。これは航空自衛隊が運用域を意識していることのあらわれだ。これまで日本はF-22を切望してきたが、ゲイツ長官が2010年度国防予算案を発表した際を境に米空軍がF-35を今後の中心にすることが明らかになった。

【日米相互運用は高まっている】 相互運用、基地共有、訓練・運用の共同化は既成方針だ。日本側の基地施設を米国他の航空機分散配置に利用する計画も進展している。2006年に合意された米軍基地の再配備では航空訓練施設の再配備も含まれている。戦闘機部隊を一時的にこれまで米軍がアクセスしていなかった基地に配備し、航空自衛隊との共同訓練を展開するもの。日米両国はこの構想を拡大したいと希望しているのは、緊急即応性の向上に定期的な機材配備が有益と判断されたため。

【海外での運用体制拡充が今後の方向か】 海賊対策の運用が安全保障に関する政策判断と政治的な判断のもうひとつの局面となる。日本の関与は空中給油機、海上監視機、長距離輸送機の導入の理由付けとなる。日本の防衛予算編成は国際的な関心の対象でもある。例を挙げれば、同国の長距離輸送能力はまだ初期段階だ。これがはるかかなたの場所に駐留する部隊を運用することになれば、通信、補給、運用維持の問題が浮上してくる。さらに、人道援助や災害復旧の目的に海外派遣を実施する能力の必要性はすでに認識されている。

2009年7月30日木曜日

海軍向けF-35Cが完成


Navy Backs Single Engine As F-35C Rolls Out

aviationweek.com 7月29日

フォートワース(テキサス州)---米海軍向けF-35Cが完成した。F-35向けの代替エンジンの話題があるが、海軍はロッキード・マーティンF-35JSFの選定済みエンジンで十分とする。その理由は空母に代替エンジンをサポートする余裕がないため。 ラフヘッド海軍作戦部長は7月28日のF-35C艦載型のロールアウトの席上、プラットアンドホイットニーF-135を搭載する同機について「空母では空間が大切」と発言した。

【C型の特徴】 JSF基本3型式のうち最新の海軍向けF-35CにはF-35A(通常離着陸用)とF-35B(短距離離着陸用)との大きな相違点がある。主翼が大型となり、尾翼は接近速度を抑えるためこれも大型になっているほか、着陸装置は強化され、拘束フックがついたほか、主翼は折りたためる。【今後の予定】 F-35Cの一号機はCF-1と呼称され、最終組立ラインを離れ、飛行テストに移されたところ。初号機であるため広範囲の地上テストが計画されており、初飛行は12月以降となる予定だ。初期作戦能力かくどくは2015年度となる。海軍は合計680機を購入する予定だが、海兵隊用のB型とC型の編成の方式はQDR(四年毎の国防計画見直し)で決定されようと作戦部長が語った。

空母搭載部隊の編成はまだ流動的だが、F-35Cの引渡しが計画通り実施されるとしても海軍は配備中のボーイングF/A-18A-Dの機体寿命の延長で戦闘機機数の不足を回避したい希望だ。

飛行テストの実施が予定より遅れているが、JSF計画主任のデイビッド・ハインツ准将は開発全体は予定通り実施可能と自信たっぷりだ。「一ヶ月で108回から120回の飛行が実施できれば、2013年10月にテストは全部完了する」という。

(写真はLockheed Martin社ウェブサイトより)

2009年7月29日水曜日

米海軍でも深刻な戦闘機不足


Experts Consider Navy Fighter Gap

aviationweek.com 7月23日


F/A-18C/Dホーネットの就役期間を延長して米海軍の戦闘機不足を解消しようとして機体改修中の戦術航空機不足は解消しないと海軍航空作戦のアナリストは見ている。コングレッショナル・リサーチ・サービス(CRS)のロナルド・オロークはホーネットの機体寿命延長案で1,400時間が追加となるが、空母搭載戦闘機の不足への有効な対策のひとつにはなると語る。議会公聴会で海軍・海兵隊で2010年代中ごろか末期までに125機から243機の不足が見込まれるとの証言があった。

これ以外の解決策としてF-35共用打撃戦闘機の調達速度を上げる、F/A-18E/Fスーパーホーネットの購入機数を増やすことがあるが、オルークはそれぞれ欠点があるという。

ホーネット改修には延べ1,100から2,200人・時間が一機あたり必要となり、現役部隊から一度抜き取られるので別の形の不足が発生すると、海軍航空協会会長のロバート・ダン中将(退役)は見ている。F-35生産の加速は実現する可能性は低いとダンは見ている。

議会内各委員会でスーパーホーネットの追加導入方法の合意が形成されていないのも問題だ。上院軍事委員会は9機の追加調達を希望しているが、複数年度調達方式は認めていない。下院の軍事委員会はこれとは反対のアプローチであり、下院歳出委員会の国防省委員会は追加調達も複数年度調達も支持している。

オルークはあくまでも私見でありCRSの意見ではないとことわったうえで、両院の軍事委員会はともに議会予算局に現有ホーネットの寿命延長とホーネットの追加購入の比較検討を求めていると見ている。

イラク、アフガニスタンでの作戦が急速に展開する中F/A-18C/Dが「酷使され」消耗していることが「海軍航空部隊内部での動揺」をひきおこしており、搭乗員・支援要員ともに部隊移動を繰り返しているとダンは見ている。空母航空隊10編成のそれぞれに4戦闘飛行隊があるので、合計40飛行隊のはずが実際に稼動できるのは36飛行隊しかなく、そのうち1飛行隊は海兵隊所属である。

2009年7月26日日曜日

USAF: サイバー攻撃への対応を進める米空軍

USAF Ponders Cyber Counterattack
aviationweek.com 7月23日

米空軍は電子攻撃能力を太平洋空軍で大きな課題としており、サイバー攻撃あるいは電子攻撃を受けた場合を想定したデジタル反攻能力の機体搭載の検討を開始した。空軍の電子攻撃には今後配備されるF-22とF-35を使うことになるが、「海軍のEA-18Gグラウラー他の機体も含む共用体制となろう」とハウイー・チャンドラー大将(太平洋空軍司令官・空軍参謀副総長に就任予定)は話す。「B-52をスタンドオフ電子妨害機に改装する構想はよかったが、費用が高額になりすぎた。多目的に使える機体のほうが望ましいので、センサーを切り替えることで対応出来るシステムあるいは、大容量の多用途INTセンサー(異なるスペクトラムからデータの操作が同時並行で可能)を搭載できれば助かる」

好例がF-22のレーダーだ。小型目標の捕捉用としても、電子妨害装置、ネットワーク攻撃装置あるいは高出力の通信装置としても利用できるし、おそらくこれらすべてを同時に作動できるはずだ。

「サイバー戦はコンピュータネットワーク上の攻撃と防御だけではない」とチップ・アターバック中将(第13空軍司令官)は語る。「電子スペクトル全体を見る必要があり、宇宙からも影響を受ける可能性もある。電子的にアクセスを拒否することも含まれる」

同じ考えがサイバー防衛にもあてはまる。「電子攻撃能力があれば敵の巡航ミサイル、弾道ミサイル、多弾頭にも対応できる。敵の意思決定に侵入し、指揮命令系統も妨害できる。さらに宇宙空間、地球上の両方で防衛が可能となるので、長距離攻撃を受ける可能性がなくなる」(同中将)

自軍の通信系統を防御しつつ、敵の通信網は妨害することが大きな目標だ。「敵対勢力の指揮命令能力を妨害、破壊、あるいは混乱させることが可能なら、自軍を防衛することは可能だ」(アターバック中将) 「電子戦、電子攻撃能力へのこれまでの投資はまだ成果を生んでいない。ただ、わが国の戦闘司令官や実戦部隊の関心を集めてきたのは事実だ。」

空軍の予算投入は再度強化されているが、すぐに功を奏するものではない。最終的にはF-22、F-35および次世代ジャマーがこの分野で一番効果的な空軍装備となると期待されている。

ステルス機に新型の電子攻撃手段を組み合わせるのが空軍の作戦立案者が考えるこれからの方法論だ。アターバック中将もステルス性もいつかは打ち破られる日が来ると考える前提で開発を進めている。最初はステルス性とスピードでつぎに継続的に電子戦・電子攻撃能力を向上させて敵の防空網を突破できる能力を維持していく構想だ。

2009年7月25日土曜日

非正規戦を念頭に航空兵力編成をすすめるペンタゴン


Pentagon Explores Irregular Warfare Air Units

aviawiontweek.com 7月23日


ペンタゴンで作業中の4年周期の防衛力見直(QDR)では非正規戦闘に備えた航空部隊の創設が検討されており、特殊作戦部隊または通常部隊にこの航空戦力を所属すべきかも検討しているという。

国防次官補マイケル・ヴィッカース(特殊作戦・低密度武力衝突担当)は「軽航空機」部隊を非正規戦闘に投入する考え方の機が熟したと見ている。「QDRでもこの種の戦力に注目しています。しかし、問題はどれだけの機数が必要で、その構成はどうあるべきかです」

任務に特化した軽飛行機が必要なのか、「ポートフォリオ」として既存機種を活用するだけで十分なのかが問題と同次官補は語る。

情報収集・監視・偵察(ISR)用途の航空機はアメリカの関心がアフガニスタンに方向転換したことで、弾みがついており、プレデター/リーパークラスの無人機が一番注目されおり、有人機でもビーチクラフトRC-12の需要が高まっている。「有人・無人機を組み合わせて、絶えず監視できる体制ができていることが我が方の作戦にはきわめて重要なことです」(ヴィッカース次官補)

ただし、「ISRはとても重要ですが、情報収集はISR機だけでは不可能です。地上部隊への情報リンクも重要です。」とし、分析・ネットワーク能力も必要だ。「しかし、ISR機材の増強が必要と決定しておりISR部隊への関心が高くなっています。」 この部隊はゲイツ国防長官が編成したものだ。

同次官補はペンタゴンが現在力を入れている非正規あるいは非対称作戦を弁護する。一部ではこの優先姿勢が近視眼的とか既存の国家間戦争能力を犠牲にしているとの批判がある。「非正規戦の開始後9年になります。長官が明白に優先順位をつけて、兵力を再配分しているのは現在進行中の作戦が戦略的に重要だからです。将来を見越した万能の解決方法が見当たらないからこそ、現在の作戦に勝利をおさめなければなりません。そのためにも適正な均衡を維持しなければなりません」(同次官補)

コメント: ゲイツ国防長官はじめとする「新思考」の国防調達でF-22を「時代にそぐわない」とするのは上の背景もあるのでしょうね。しかし、極東のこの地域ではまだ冷戦構造が実際に続いているのですが。