2014年5月9日金曜日

次期大統領専用ヘリにシコルスキーS-92が選定されました


Sikorsky Wins $1.24 Billion Contract for Presidential Helo

USNI News By: Dave Majumdar
Published: May 7, 2014 5:05 PM
Updated: May 7, 2014 5:05 PM
An artist’s rendering of Sikorsky’s bid for the VXX presidential helicopter. Sikorsky Photo
An artist’s rendering of Sikorsky’s bid for the VXX presidential helicopter. Sikorsky Photo

米海軍はVXX次期大統領専用ヘリコプターにシコルスキーS-92を選定した。契約規模は12.4億ドルとペンタゴンの契約広報で報じている。
  1. テスト用6機および関連支援設備、政府指定搭載システムとの統合、訓練システムとして飛行訓練装置および保守点検訓練装置、兵站、技術全般、試験評価での支援を含む、と発表があった。
  2. 最終的な調達規模は運用機材21機とテスト用2機。
  3. VXXはシコルスキーS-92で老朽化進む同社製VH-3とVH-60のVIP仕様各機と交代させる内容だが、同社の一社入札に終わった。
  4. 2013年7月時点でアグスタ・ウェゥトランドAW101大型ヘリコプターが脱落した。ボーイングはCH-47チヌークとV-22オスプレイのどちらも提案しなかった。
  5. 一社入札になったが、海軍は法的には標準手順を守る中でシコルスキーが正式に採択されたことで、今後の展開は加速するとみられる。海軍はテスト機材一号機の受領を2016年に期待している。初期作戦能力獲得は2020年末の予定で、完全稼働は2022年となる。.
  6. 2009年にもVXX入札があり、ロッキード・マーティンとアグスタ・ウェストランドの合同提案が採択されたものの、費用超過のため取り消しとなり、これが2008年の大統領選挙でも争点となった経緯がある。■


2014年5月8日木曜日

南シナ海で何が起きているのか ベトナム、中国の対立



Hanoi: Chinese Ships Rammed Vietnamese Patrol Boats in Escalating Oilrig Dispute

USNI News By: Sam LaGrone
Published: May 7, 2014 11:29 AM
Updated: May 7, 2014 11:50 AM
Chinese ships firing water cannons at Vietnamese patrol vessels. Vietnam National Border Committee Photo
ベトナム艦船に対して放水する中国船。ベトナム国家国境委員会発表

ベトナムが自国警備艇が中国艦船から海上で衝突されたと抗議している。発生個所は中国の10億ドルの価値がある海上石油掘削施設の周囲で、ベトナムと中国がそれぞれ排他的経済水域と主張しているもの。

「ベトナムの漁業監視部隊はわが方の主権と管轄権を守り、中国側に海域からの退去を求めた」とベトナム国家国境委員会副委員長チャン・ヅイ・ハイTran Duy Hai, deputy chairman of the Vietnam National Border Committeeが7日のハノイでの記者会見で発表している。「ベトナムはこれまで自生してきたが、中国艦船が今後もベトナム船舶に衝突をしてくれば、当方も自衛手段を取らざるを得なくなる」

A Chinese ship ramming a Vietnamese patrol vessel on May 3, 2014. Vietnam National Border Committee Photo
ベトナム警備艇に衝突してくる中国船(5月3日) ベトナム国家国境委員会発表
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また、中国海上警察の複数艦船がベトナム監視艇複数に放水している画像がベトナム国家国境委員会から公開された。
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「わが方の海上警察および漁業保護部隊はこれまで極限まで自制しており、今後も同海域にとどまる」とベトナム沿岸警備隊副指令ゴ・ゴ・チューNgo Ngoc Thuが記者会見で述べている。「ただもし(中国船が)引き続き衝突を試みれば、当方も同様の方法で自衛策をとる」

ベトナムによれば中国は石油掘削施設の周囲に80隻を展開中という。掘削場所はベトナム本土から120カイリの位置にある。問題の海上原油掘削機は海洋石油981 Haiyang Shiyou 981の名称で、中国海洋石油China National Offshore Oil Corporation (CNOOC) が所有しており、5月1日にパラセル諸島近くに移動してきた。この海域はベトナムと中国がそれぞれ領有を主張している。

今月5日にベトナムは中国側の動きを「不法かつ無効」としたが、中国は自国の権利とし保護すると主張。「この施設による石油掘削行為は中国領海内で行われており、ベトナム側による妨害工作は中国の主権に違反するもの」と中国外務省は7日に語っている。「掘削は完全に合法であり、ベトナム側には一切の妨害行動を中止するよう求める」(Hua Chuning報道官、7日)
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これに対し米国務省は6日に状況を慎重に見守る姿勢を見せた。
「最近の南シナ海における緊張を見ると、中国が問題が発生している海域で石油掘削を実施する決定をしたことは挑発行為そのものであり、地域内の平和と安定に何ら貢献するものではない」と報道官ジェン・サキが発表している。■


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コメント 中国はなぜこの時期にこんな行動に出たのでしょうか。民間企業の海域進出に妨害が出ればいよいよ次は海軍の出動となるのでしょうね。ところで思い返せば覇権主義を最も非難していたのが中国だったのですが、時がかわればかつての姿勢など振り返る余裕もないのでしょうか。

トルコがF-35A導入で正式契約に調印



Turkey Approves Buy Of First Two F-35As

aviationweek.com May 6, 2014Amy Butler | AWIN First
USAF
トルコがF-35A2機の調達契約に調印した。
トルコが導入するのはブロック3F仕様で調印は5月6日。トルコは1999年から同機の共同開発国の一員。トルコの生産分担は機体中央部分だ。
トルコ政府によりプラット&ホイットニーF135エンジンの最終組立点検および保守管理用施設の国内建設も承認され、「トルコ企業及びトルコ空軍施設」を活用し、F-35使用国すべてに施設を開放するという。
トルコのF-35導入規模は100機で、今回の2機は低率初期生産(LRIP)では第10ロットの機材となる。
小規模とはいえ、今回の動きはF-35が着実に支持を得つつあるもう一つの事例となった。米空軍のクリストファー・ボグデン中将(F-35開発最高責任者)は参加各国の参画とそのタイミングが全体に影響すると繰り返し発言している。トルコの例では以前にLRIPからの調達を遅らすと決定したため一機あたり百万ドル分の価格上昇が同じロット内の全機に発生している。■



2014年5月4日日曜日

米比防衛協定の中身と対中国戦略の枠組みの現状

中国は相手国の実力、姿勢で対応をそれぞれ使い分けており、フィリピンは完全になめられているとしか思えません。経済が上向きとはいえ、まだまだ余裕のないフィリピンが米国や日本に期待するものが大きいのは当然です。しかし国内憲法の縛りがある中、今回の合意内容はなかなかうまくできているようです。そんなフィリピンの姿勢を西側諸国が支援していけば、中国はいっそう頑なに包囲されていると感じ、予想外の行動に出るかもしれませんね。フィリピンの対応は隣国のベトナムやマレーシアも注視しているはずです。


New Defense Agreement Between The Philippines and U.S.

USNI News By: Armando J. Heredia
Published: April 29, 2014 2:43 PM
Updated: April 29, 2014 4:06 PM
U.S. Navy and Philippine military officials during the humanitarian aid and disaster relief operation in Tacloban in 2013. US Navy Photo
U.S. Navy and Philippine military officials during the humanitarian aid and disaster relief operation in Tacloban in 2013. US Navy Photo


フィリピン国防相ヴォルテール・ガズミン Defense Secretary Voltaire Gazmin と駐比米国大使フィリップ・ゴールドバーグ Philip Goldberg が4月28日に歴史的文書に署名し、米軍が同国に復帰することになった。

防衛協力強化合意書Enhanced Defense Cooperation Agreement (EDCA)は米軍によるフィリピン国内の基地施設利用に道を開く枠組みであり、戦闘だけでなく人道援助・自然災害援助 humanitarian assistance and disaster relief (HADR) 任務用資材の事前集積も可能となる。

1991年に基地使用料の値上げ更新を求める声が高い中50年の基地利用協定が失効して米軍部隊は撤退している。そこに輪をかけるようにルソン島ピナツボ火山が噴火し、基地施設が火山灰や泥流に覆われた。天然の良港であるスービック海軍基地と修理施設を保持したいという声もあったが、冷戦は終結に向かい、ジョージ・H・W・ブッシュ政権は同国残留に経済価値を見いだせなかった。

一転して現在は中国が海上領有権を巡り東南アジア各国と紛糾するなか、米国の政策目標は地域内安定の維持をめざし、太平洋地区に軸足を移すというものだが、かつてとは地域内の力の均衡が変化している。

中国が狙っているのは派遣拡張をねらう九段線Nine-Dash Line 構想でフィリピンを最初の事例とすることだ。少しずつフィリピンの排他的経済水域に中国海上警察と人民解放軍海軍(PLAN)が進出しており、一部は実力占拠されている。

一方フィリピンは長年にわたり対テロ作戦など国内治安維持活動に忙殺されており、通常戦力は削減してきたため、軍事対立は避けてきたのが現状だ。ベニグノ・アキノ政権は強力に軍と沿岸警備隊の装備近代化を図ろうとしているがまだ効果が出ていない。このため従来からの同盟各国都の連携を求めている。

協定書では目標を米・比共同軍事作戦の強化としており、相互運用、フィリピン国軍の近代化を目指した人材育成、周辺部におけるフィリピン国軍の強化、海洋安全保障と海洋領土の保全を掲げている。

EDCAにより米比両国は共同演習バリカタン(協力)の定期的実施、台風被害でのHADR業務、米特殊作戦部隊による助言が可能となる。

ECDAと1991年時点の協定との重要な相違点はフィリピン憲法を尊重する精神が盛り込まれたことで、フィリピンは米国による活動全般ならびに米軍の定期的移動に同意している。フィリピンは国内の各基地を完全に掌握し、米国以外の同盟国にも提供できる。

今回の協定で中国の立場は大きく制約される。対象施設はすべてフィリピン国軍の基地としたのは同国憲法の制約を配慮したもの。

今後発生する新規施設建設作業は米国あるいはフィリピンが実施するが、米国が資金・建設工法などの負担をする。さらに戦闘用あるいはHADR用資材の事前集積はフィリピン国軍も利用可能とされる。(弾薬、特殊作戦装備、大規模作戦用兵装等)

EDCAはフィリピンの外国軍駐留協定の精神と合致しており、部隊は定期的に異動するので常駐ではないとされる。さらに相互防衛委員会Mutual Defense Board (MDB)で軍事面を、さらに安全保障委員会 Security Engagement Board (SEB) でそのほかすべての案件を取り扱うことになる。

協定書では基地名称を明記していないが、米軍がこれまで利用していた地点に戻る可能性が高く、スービック湾、旧海軍航空基地クビポイント、旧クラーク空軍基地になるだろう。新規設備により米軍の立場が強化されるが、さらにパラワン諸島ではオイスターベイにパトロール基地を設置しその近郊のブルックスポイントに海兵隊を駐留させる案が出ている。後者の二施設が利用可能となると紛糾の現場であるスラウェシ海やスプラトリー諸島へ直接アクセスが可能となる。

ECDA関連でフィリピン国軍は旧米沿岸警備隊のハミルトン級カッターの三隻目を取得したい意向で、フィリピン西部の海域の長期間パトロールに投入したいとする

同協定の非排他内容としてフィリピンは同国内施設をASEANやアジア域内の各国に提供する意向が出ている。すでに韓国から軽量攻撃ジェット機を調達しており、日本は老朽化した沿岸警備隊艦船を新造40メートル長の哨戒艇に更新する資金を長期低利で提供する。

フィリピンは国際法廷の場で自国の排他的経済水域の認知を求めている。4千ページ近くの文書が国連仲裁裁判所に3月31日に提出されている。国際海洋裁判所(ITLOS、在ハンブルグ)が提訴を精査中で次の段階に進むべきかを決定する。一方で、中国はかたくなに仲裁手続きを拒否しており、提訴で二国間関係が危機に陥っていると逆に非難している。■


☆ 海洋監視技術でJAXA技術が防衛分野で貢献できる日が来そうです

意外に広がりを示しているJAXAの活動にあらためて注目です。海洋監視はレーダー観測技術の応用で当然考えていっていい内容ですが、紹介の仕方自体で妙なアレルギー反応が市井から出ても困りますね。



L-band SAR Satellite May Help JAXA’s New Military Job

JAXA may get ocean-surveillance job with its new space-law assignments
aviationweek.com May 1, 2014Frank Morring, Jr. and Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology
.日本の民生用宇宙機を軍事目的にも転用出来る道が新しい宇宙利用政策で可能となった。写真はH-IIAロケットにGPMミッションを搭載し、打ち上げを待つJAXA種子島施設。
Bill Ingalls/NASA
JAXA宇宙航空研究開発機構が開発した衛星が宇宙基本法改正により防衛機能が付与される。ALOS-2(域観測技術衛星だいち2号)の打ち上げが今月に行われるのが、この先行事例となる。海上自衛隊は衛星データから域内の艦船追尾が可能となる。
JAXA理事長奥村直樹はJAXAの三つの課題の最初に「安全保障と災害対応の準備」を掲げており、民生用宇宙機への投資見返りを増やそうとしている。.
JAXAは引き続き宇宙科学研究で日本が先頭に立つことを掲げているが、防衛分野はこれまで見られなかったものである。ただ、JAXAは2005年に宇宙偵察衛星4基を打ち上げている。
日本は米戦略司令部と非公開の宇宙状況認識 space situational awareness (SSA) 情報の交換を外務省経由で昨年末に合意していることもあり、JAXA理事長の発言になっている。「JAXAの収集情報は外務省へ提供しています。新たに軍事衛星を開発するという話ではなく、現有の機材を利用して情報を提供するものです」(奥村理事長)
ALOS-2レーダー衛星により海上自衛隊は艦船の追尾が可能となる。 Credit: JAXA Concept


検討しているのは海洋監視機能だ。奥村理事長は Aviation Week の取材で「民生用宇宙技術でこれまで開発してきたものをSSAにも活用していく」と発言している。「防衛用の利用は防衛省がとり行います」
同理事長は海洋監視への利用はまだ決定されたわけではないと強調する。「今のところはSSAだけですが、利用構想自体は秘匿内容ではありません」
JAXAが海洋監視用途を実施する場合はALOS-2(だいち2号)を利用するはずである。JAXAはNASAと共同で全球降水観測 Global Precipitation Mission (GPM) による南北緯度65度内の降水降雪観測を宇宙から行なっている。
ALOS-2打ち上げはH-IIAロケットにより種子島から5月24日の予定だ。同衛星は三菱電機が制作しており、Lバンドの合成開口レーダー(SAR)を搭載することで本来の任務である陸地観測の解像度を上げること以外に海洋監視機能が実現する。
冷戦期にはソ連製の宇宙機がSARで艦船航行を監視していた。これは航跡を認識して航行中の艦船を識別するものであった。ALOS-2は昼夜を問わず解像度1から3メートルで50ないし350キロメートルの航跡を識別できる。またSpaise2という自動識別装置も搭載しており、艦船が搭載するAIS船舶自動識別とSAR画像を組み合わせ船舶名称を特定し、追尾することができる。
実現すれば中国や北朝鮮の脅威に日本が直面している現状で、JAXAはより大きな防衛への役割を果たすことになるが、宇宙利用の大きな目標はJAXA技術・機材で日本経済を活性化することにある。
「新たに事業推進機能を立ち上げ、、これまで宇宙とは縁がなかった産業界を支援し、宇宙で実験や事業を展開したい企業を支援できます」(奥村理事長)
この新組織はNASAが立ち上げた国際宇宙ステーションの民生利用を促進するための宇宙科学促進センターCenter for the Advancement of Science in Space (Casis)と類似している。JAXAはISSでも最大規模の加圧モジュールを運用しており、各社に同施設の利用を勧奨している。
利用例にヤクルトがあり、同社は抗がん薬剤の開発を進めている。「ヤクルトとの共同開発研究で宇宙飛行士の免疫力低下防止策がわかれば将来の宇宙旅行の範囲がひろがります」(奥村理事長)JAXAではきぼう実験棟でタンパク質結晶化を低重力下で行い地上より簡単に薬剤開発を進められるという。
さらに新型打ち上げ機H-XとしてH-IIIの開発も進めている。エンジンはLE-7の改良型で初打ち上げを2020年としている。これまでのHロケットでは打ち上げコストの関係から不可能だった商用打ち上げビジネスへの参入を期待し、奥村理事長もスペースXのファルコン9のような低コスト打ち上げ機には対抗できていない現状を認めている。
「これまでは衛星打ち上げやロケット開発で事業成果を評価してきましたが、今後は宇宙基本法が求める三分野でどれだけ貢献できたかで評価をうけるでしょうね」■


2014年5月1日木曜日

F-35Bを操縦してみた米海兵隊パイロットの証言



Pilot reaction to flying the F-35B

aviationweek.com Apr 24, 2014by Guy Norris in Ares

F-35B短距離離陸垂直着陸(STOVL)型の初飛行(2008年6月)はBAEシステムズ所属のテストパイロットがしたが、それ以降は同機の操縦性がきわめて正確かつ簡単との話が多く聞かれている。STOVL運用をめぐってもパイロットの間には垂直着陸の「プッシュボタン」で楽にできることに話題が集中しがちで、どうしてもハリアーと比較されてしまい、なれるまでは「ブレンダ―の中に入れたウォールナッツ」音がリフトファンから聞こえるのも気になるようだ。
しかしこれまでのコメントは経験が深い軍あるいは民間のテストパイロット、または経験豊かな教官パイロットで同機の訓練対象に選ばれた人の声。今や海兵隊の現役パイロットでF-35Bを操縦する人数がユマ海兵隊航空基地(アリゾナ州)で増える中、彼らはどう思っているのか。JSFが今夏にも初の海外遠征を英国の航空ショーエアタトゥーとファーンボロで行おうという中その視点には興味をそそるものがある。
ロッキード・マーティンの社内誌Code OneでF-35Bのユマ基地での運用状況を掲載しており、飛行隊の初の有資格パイロット数名への取材も含まれている。同誌取材の3月時点ではパイロット数は16名だったが、その後も名簿は追加されており、同基地で運用中の機体数も増えている。F-35Bの初納入を2012年に受けたVMFA-121飛行中隊も現時点で定数の17機に増えている。
Preparing for a sortie at Yuma (Code One)
では同誌記事から見てみよう。
ブライアン・ミラー大尉Capt. Brian MillerはF/A-18Dから転向組で機種切替を簡略に表現している。「ホーネットでは真ん中に操縦桿がありましたが、F-35はサイドスティック方式です。でもその違いは意識していません。シミュレーターで離着陸を体験すれば、操作系の位置を難なく取扱いできましたよ」
「ハリアーのパイロットはF-35BのSTOVLモードでは以前の経験から有利と考えるでしょうね」とミラー大尉は続ける。「でもF-18パイロットもSTOVLを先入観なしに扱えるので有利なんですよ」.
もうひとりジョナサン・トンプソン大尉 Capt. Jonathan Thompsonは以前はハリアーを操縦していた。「F-35Bはホバリングモードに入ると直感的に動く設計です。従来型機種のパイロットにとってスティック上のボタンを押せば、機体は下がり、スティックを引き起こせば機体は上昇する、と極めて直観的です。これに対してハリアーのホバリング操作では上下移動はスロットル操作で行い、左右移動はスティックで行うものだった。
「ホバリング中のハリアーではスティックを引くことで着陸用のスロットルを絞っていましたが、F-35ではスティックを押し出すことで着陸できます。」(トンプソン大尉) 「つまりF-35のホバリングは簡単に体得できて、自然に操作できます。AV-8を操縦していたパイロットは逆にSTOVLモードが普通に行えるまではもっと慎重に構える必要があります。短距離離陸垂直着陸にはちょっとしたコツが必要ですが、シミュレーターでみんな練習したのですよ」
(Code One)
「F-35の状況把握能力で一番の改善はレーダーです。F-35ではコックピット内のレーダー表示が一番感動的です。簡単に操作できることには驚かされますね。ハリアーのAPG-65レーダーは旧式でしたが、それなりに状況認識に役立ちましたが、AV-8をレーダーなしで操縦した回数は数えきれないですよ。それでもミッションをやり通しましたが、状況認識がないままだったですね」
F-35ではヘルメット搭載のディスプレイで状況認識が増幅される。「ホーネットのパイロットではJHMCS(共用ヘルメット搭載目標指示システム)を以前使った経験がある人がいるでしょう。しかし、レーダー捕捉情報がヴァイザー上に表示されるというのはハリアーとは全く違います」(トンプソン大尉)
Old and new - Harrier and F-35B fly by the Salton Sea. (Code One)
VMFA-121はじめとする海兵隊では新性能を有効活用する戦術方法を開発中だ。「レーダーの性能が安定しており、電子光学的目標捕捉システム(EOTS)の信頼度が高くなっている中、パイロットの技量も向上しており、飛行性能制限が解除されていけば、戦術戦法を検討してその他の方法で従来型戦闘機の先を行く方法を編み出します」(ミラー大尉)「F-35ならこれまでと違う形で実施ができます。まだ戦術開発をはじめたばかりですが」
パイロットたちは同機の性能制限が解除されることを期待している。「400ノットで飛んで4.5gで機体を引くことは全然難しいことではないです。むしろそんな条件は機体の設計想定の一部ですが、実際には戦術上は400ノット以下の飛行は想定しにくいですね」
今後登場するブロック2Bソフトウェアでは兵装搭載量が増え、飛行速度制限もマッハ1.2、5.5g、迎角50度まで広がる。最終的にはマッハ1.6,7gまで可能となる予定。■



2014年4月29日火曜日

謎の機体の正体はB-2だった(と空軍が伝えてきました)


Midwest Mystery Jets are Actually B-2 Stealth Bombers

USNi News By: Dave Majumdar
Published: April 28, 2014 5:14 PM
Updated: April 28, 2014 5:17 PM
A B-2 in 2010. US Air Force Photo
A B-2 in 2010. US Air Force Photo

テキサス州アマリロとカンザス州ウィチタ上空で相次いで目撃荒れた謎のジェット機編隊の正体はノースロップ・グラマンB-2スピリットステルス爆撃機編隊の編隊飛行、と軍関係筋がUSNI Newsに伝えてきた。

「アマリロの編隊はB-2の訓練飛行です」と米空軍関係者がUSNI Newsに4月28日に話している。編隊はニューメキシコ州のメルローズ空軍演習場爆で弾投下訓練をしたのち、からユタ州のテスト訓練地区へ移動途中だったという。

B-2が配備されているミズウリ州ホワイトマン空軍基地から発進し、アマリロを経由地としてメルローズへ向かおうとしていたのだろう。

「カンザス州の写真はカンザス、ミズウリ付近の訓練飛行の可能性があります」と同上米空軍関係者は話す。

これまでの報道で目撃された機体は未知の三角翼機だとされていたが、写真の解像度が低いために誤認されていたもの。写真で見える三角翼形状はB-2の機体が錯視されたもの。

Photo taken by amature photographer Jeff Templin in Kansas on April 16, 2014
Photo taken by amature photographer Jeff Templin in Kansas on April, 16 2014

「写真解像度からすると、軍用機なのかもはっきりせず、まして空軍機であると断言もできません」とジェニファー・キャシディ(米空軍スポークスウーマン)はUSNI Newsに4月21日語っていた。

コメント さあ皆さんはどう思いますか。情報の操作のために別の話をリークするというのは 1947年にもニューメキシコ州ロズウェルでありましたよね。この話題がまた浮上することはないと思いますが、ブラックの世界の内情はなかなかわかりませんね。


2014年4月28日月曜日

DDG-1000カーク艦長に聞く 配備先はサンディエゴ


前回に続き革新的な新型駆逐艦ズムワルトの記事です。今回は艦長になったジェイムズ・カーク大佐(!)へのインタビューですが、有り余る電力を使った今後の発展性が期待されますね。また、三隻ともサンディエゴ配備というのは太平洋をにらんだ意味があるのでしょうか。

Interview: Zumwalt Commander Capt. James Kirk

USNI NEWS By: Cmdr. Daniel Dolan
Published: April 11, 2014 9:34 AM
Updated: April 11, 2014 9:34 AM
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ダニエル・ドーラン中佐が新型駆逐艦ズムワルト(DDG-1000)の艦長ジェイムズ・カーク大佐に3月31日話を聞いた。同艦は次世代駆逐艦として建造される3隻の一号艦で米海軍の建艦史上もっとも高価な艦艇である。多くの新型装備を搭載しながら、乗組員は同規模の艦艇のいずれよりも最小となっている。ドーラン中佐から同艦長に操艦、船体、命名の由来に加え、海軍大学校からの質問が向けられた。なお、インタビューは同艦の命名式典(メイン州バスのジェネラルダイナミクス・バスアイアンワークス)に先立って行われた。
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Have you decided on ship’s motto yet?
艦の標語はもう決まったのですか
.
Pax Proctor Vim(力による平和)としたよ。艦の力強い外観、兵装や発電容量の規模にぴったりだ。同じ標語はUSS Dewey (DLG-41)も採用していて、ここバスで建造されており、当時中佐だったエルモ・ズムワルトが命名している。ズムワルト家には代々受け継がれている家訓があるんだ。話はズムワルト大将が海軍作戦部長時代に実施した改革に対する批判が渦巻いていたときのことだ。提督は「どうやればいいのか」との質問に「学習しつづけるのみ」と答えている。こちらの砕けた表現の方が就役前の乗員にぴったりだと思う。仕事が多く、どうやって実現するかを自問すれば、前向きに学ぶことをつづけるだけとわかるからね。

ズムワルト提督は多くの面で先駆者でした。ひとつには海軍で初めて雇用機会の均等化を実現したことが知られていますね。その名前をとった本艦の乗員とともに艦長はこの伝統をどうまもりますか。

本艦の乗員を見れば、これまで40年間になかったタイプだとわかるよ。だれもが機会を利用できる社会になったことの反映だ。本艦の役割はズムワルト提督と同じように国の求める結果を出すことであり、艦の文化としてズムワルト提督が提唱したのと同じように同じ機会を提供することだ。提督の偉業として機会均等を実現したことがあり、本艦の紋章の周りの綱にねじりが66個入っているがこれは提督の通告Z-Gram第66号、有名な「機会均等」のメッセージに由来している。

人員配備については本艦とLCSを比較してあれこれ批判がでていますが、LCSの教訓とはなんだったのでしょうか。

海軍全体としては教訓は反映されていると思う。たとえばLCSでは保守管理のために乗艦してくる要員があるが、もともとの乗員が保守管理を手伝わないということではない。乗員は適正な契約企業が正しい作業を実施していることを確認する責務があるが、本艦はLCSよりはるかに複雑であり、今後に得られる教訓は数多く出てくるだろうと思う。今後二年間は本艦の設計と能力を試されることになるだろうね。

乗組員わずか130名で艦の安全が保てるのでしょうか。

簡単に言えば「うまくできるはず」だ。艦の防護のために停泊中、航海中ともに確実に行う必要があり、海兵隊予備役部隊との訓練も開始している。海兵隊の考え方で各兵士がライフルマンであるように各水兵が防護の達人である必要がある。艦の被害対策をしっかり理解し、医療対応なども理解させる。

喫水線から上にいくほど狭まるタンブルホーム構造の船体で外洋での操船に疑問を呈する向きがありますが。

海軍水上戦センターの波形プールへ行き、テストをみせてもらったが、結論としてどの艦にも操艦で癖があるもので、操艦上望ましくない状況や波形があるのは確かだが、それが理解できて来たと思う。乗組員には十分な指導をして本艦をどんな状況でも安全に操艦できるようにしつつあるところだ。

操艦に関して、固定ピッチのプロペラが電動推進方式になじむのかと疑問を呈する向きもありますが。

電動推進で固定ピッチプロペラは英海軍のタイプ45駆逐艦でこの数年間運用中だ。本艦ではモーターをタンデム上に配置しているので若干違うところがある。これは公試中に実際に会場で試さないといけない。操艦に関しては「獲物のウサギのちょっと先を狙って射撃する」と一定いることになると思う。操艦の手順は蒸気機関の時代に戻る形になるのではないか。ガスタービン推進で制御可能で逆転できるピッチプロペラとはやはりちがうだろうね。

DDG-1000で実現した技術革新は全く新しい戦術や作戦行動につながるのでしょうか。あるいは乗組員は従来型の艦船での経験をいったん忘れてもう一度やり直すべきでしょうか。

そんなことはない。従来からの水上艦戦闘戦術はそのまま使える。システムが新しいので新しい技術や手順を組まねばならないが、戦術に関する限りは今ある指導書で十分だ。一つ例外は砲術で射程63海里で一定量を精密に砲撃する能力があるので、これは戦術を新たに組む必要がある。火器管制もこの砲を使う対空射撃ではトマホークを発射するのとは手順が変わってくる。そういう意味で大部分ではご質問に対してはノーだが新システムでは若干追加作業が必要となりますね。

すでに戦術教本はできているんですか、あるいは乗組員がこれから編纂するのでしょうか。

戦術教本の原稿はある。乗組員は勉強を始めているよ。艦隊に編入されるまでに完成させる。乗組員は当地に半年前に到着しているが、ほとんどが座学の状態だ。今後は艦上で実地訓練をふやし、システムや艦内スペースに慣熟させて、パワーポインンではなく実際に運用できるようにする。、

本艦の母港はきまったのですか。
.
DDG-1000級三隻はサンディエゴに配備される。各艦が戦力化するまではどこであれ海軍の指示により移動するだろう。

海軍大学校教授ジム・ホームズは著書 Red Star Over the Pacific で「単価40億ドルの艦を投入するだけの理由がある緊急事態があるだろうか」と疑問を呈していますが。

指揮官としてみる限り、Phase-II作戦段階に入れば、本艦を投入する意義はたくさんあると思う。艦隊に編入されれば、本艦はPhase-I段階で有効な抑止力となり、Phase-0でも有益な手段になる。本艦の能力はけんかになれば十分に頼りになるものと重宝がられるだろう。

アジア関連の著名な専門家トシ・ヨシハラ教授はこう言っています。「DDG-1000がアジアへの兵力再配備に適合するだろうか」

本艦と同時に乗組員の対応体制を整えるのが第一の仕事だが、もし私が文官あるいは武官の上位者に助言をするとしたら、DDG-1000を太平洋に配置することは公約した政策を実施していると示す良い方法だと言うだろう。USSズムワルトを太平洋で運用するのは目で見てわかる有効なアクションであり、我が国のアジア重視を示す方法になるだろう。

その点をさらにつづけると現在のアジア情勢で懸念で考えることはありませんか。

ある。戦略レベルで領土対立や一触即発の敵視が歴史上の行為をめぐって存在するのは地域内の安定を一気にくずしかねない。毎週毎週毎月毎月地域の大国間で摩擦が発生し、相互作用が繰り返されているようだ。戦術作戦レベルでは技術の進歩と普及により海洋領有権がこれまでよりも対立要素になっている。西太平洋部隊で経験をつんできた小官としては1990年代の冷戦末期が参考になると思う。当時は海洋環境を適切に評価し、我が国の戦力投射能力を再配備しているのはFrom the Sea 、さらに後日Forward, From the Seaで示された非常に知的な視点を現実にしている。その後数年間にわたり、振り子は逆に振ってきて、「海に戻る」必要が我々の思考に生まれ、投資もそれに応じるべきだろうと思う。

Neptune’s Infernoやヒュー大佐のFleet Tactics and Coastal Combat は愛読書で制海権の確保がどうして必要なのかを教えてくれるからだが、航空部隊は有効な右フックを提供してくれるし、他より優れたリーチが可能で大きな可能性を見せてくれる。潜水艦部隊はアッパーカットで接近戦で有効だ。だが制海権の確保にはジャブや敵のパンチをかわすパーリも必要だ。

ボクサーならジャブとパーリが両方必要だ。バーリは向かってくる投打の効果を鈍らせ、ジャブは敵を損失させるもの。

水上艦部隊は敵に連続して対抗し、敵を危険に陥れることが可能だ。とくに敵の交戦が我が国を目標としていない場合や場所で有効だ。もし敵が先に手を出せば、わが方には防衛しつつ迅速に反撃する能力が必要だ。敵の攻撃を防ぎ迅速に敵を攻撃することこそ絶対不可欠だ。部隊にリスクがあっても防衛行動が必要なら、水上部隊こそこのミッションを実施できる唯一の存在となる。

最後に制海権をめぐり、艦長はマハン派あるいはコーベット派ですか、つまり海上優越性をあらゆる箇所で常時確保すべきか、それとも必要な場所と必要な時に確保すればよいと考えますか。

必要な事態で必要な個所で確保すればよいと思う。海上優越性は都合の良い考えだと思うね。任意の場所と時間で海洋を制圧できる力があり、敵の自由にさせない力があればエスカレーションの防止が可能だ。海上支配ができればいっぺんにエスカレーションすることが防げる。ツキディデスの言葉を借りれば敵を海上で敗り、敵の名誉、利益に損害を与え、恐怖を植え付けることだが、支配権を守ることにもなり、地上兵力を上陸させ、重要な施設を攻撃し、敵の沿岸地域へ侵攻し、わが方の意図に住民を従わせること。もし交戦の結果が敵を撃破することが海空軍力を撃滅しつつ敵領土への損害を制約すれば、複雑かつ危険度の高い地政学的状況においては極めて有益な国家政策の実現手段になりうると思う。その意味で制海権には大きな戦略的意義がある。海を舞台に戦術的な交戦で勝利を収める手段があれば、防衛的な姿勢を戦略上もとりつつ、政治上の目的を限定つきでも達成する方法としてはとても有益だと思う。同時にエスカレーションの危険も押さえれば。たくさんの国家が人類を全滅させる能力を有している状況では恐ろしい損害を解き放す能力は恐怖、名誉、権益が混ざり合った状態で実際にその手段の実行に余儀なくなる状況に追いやられるので、優れた制海権の確保が可能な手段を持つことがこれに対する保険の役割を果たすと思う。■k

2014年4月27日日曜日

DDG-1000ズムワルトは未来志向の新世代駆逐艦


21世紀の新型駆逐艦(といっても巡洋艦クラスですが)のズムワルト級一号艦がこのたび命名式をおえ、就役に一歩近づきました。以下海軍水上部隊部長が Navy Times に解説記事を寄稿していますので、その内容を見てみましょう。ただし同級は大幅に規模が縮小されて3隻しか建造されないのですがね。


USS Zumwalt: Building the Future

– APRIL 17, 2014 POSTED IN: INSIDE THE NAVY, SURFACE
By Rear Adm. Thomas Rowden, Director of Surface Warfare, N96
先週の週末にメイン州バスでエルモ・ズムワルト提督の遺児がシャンペンのビンをUSSズムワルト(DDG1000)の舳にぶつけ公式に命名を与え、21世紀の駆逐艦が米海軍の水上艦艇の新しい歴史を開いた。
  1. エルモ・R・「バド」・ズムワルトジュニアは第19代海軍作戦部長(1970-1974年)で海軍最高位に着いた最年少の提督。ズムワルトは時代遅れの人事制度その他を果断に変革し、21世紀につながる海軍の基礎を作った。
  2. その提督の名前を与えられた本艦は一般的な駆逐艦の概念に挑戦するものである。USSズムワルトは世界で最も革新的な軍艦であり、米国の建艦技術の進歩を反映している。
The Zumwalt-class guided-missile destroyer DDG 1000 is floated out of dry dock at the General Dynamics Bath Iron Works shipyard.
ズムワルト級誘導ミサイル駆逐艦DDG 1000が乾ドックから海上に引き出された。ジェネラルダイナミックス社バスアイアンワークス造船所
  1. DDG1000ステルス駆逐艦3隻の一番艦であるUSSズムワルトは全長610フィートでこれまでどおりの制海任務や兵力投射の任務にあたる。船体はタンブルホーム型(喫水線より上が狭まる)で波浪を「貫通」しつつ敵レーダーに見つかりにくい。推進力は統合動力システムも備えたUSSズムワルトは米海軍の建艦史上最大の駆逐艦である。高性能技術による兵装と生存システムを備え、いかなる脅威にも対応可能であり今後数十年間にわたりその地位を維持する。統合推進力、高性能主砲、SPY-3レーダーとMK57発射装置を装備した同艦は米海軍が今後も各地で支配力を維持する意味で重要な存在だ。

  1. 統合推進力システムは全電動で全艦に電力を供給するほか、推進力、兵装システム他艦内維持を電動でおこなう。発電能力は78メガワットあり、一般家庭47千軒に十分配電できる規模だ。十分な発電量があるので同艦は将来のレイルガンやレーザー兵器の搭載に理想的な環境だ。艦には将来の搭載に十分なスペースと電力余裕が残されている。

  1. 高性能主砲システムは155ミリメートル長距離陸上攻撃砲弾を最大70マイル発射するもので、水上艦艇により前例のない射程と精度で陸上の海兵隊、陸軍、特殊作戦部隊を支援できる。

  1. SPY-3レーダーは高性能対艦、対巡航ミサイル用でビーム幅が狭いため高度に正確で広い周波数帯域をもたせてあるので、低高度飛行目標を識別するほか、SM-2や改良型スパロウミサイルに目標照準を提供することが可能。

An artist's rendering of DDG 1000.
An artist’s rendering of DDG 1000.
  1. MK57は新設計の垂直発射システムで船体の外側で厚さ4インチの鋼鉄板で周囲を囲み高温のミサイル発射の影響を最小限に食い止める。80セルで発射可能な装備はスタンダードミサイル、垂直発射型ASROC、ESSMや陸上攻撃用トマホークミサイルがある。このシステムはオープンアーキテクチャが特徴で電子装置はモジュラー構成は今後導入される新型ミサイルにも対応可能だ。

  1. USSズムワルトの就役で海軍は紛争の各段階で主導的立場を維持することができ、海上交通路の確保を確実にする。ライフサイクルでのコスト削減を狙い、同艦は将来の敵の脅威に対応可能だろう。

  1. 単独行動するミサイル発射艦として、あるいは艦隊の一部として、または多国籍軍の一員として本艦は十分かつ全ての局面で能力を発揮し、制海権を大洋、沿海のいずれでも確保し、これを今後数十年保持できるだろう。■

2014年4月25日金曜日

☆ ステルスに限界が見えたとき、電子戦機はどこまで頼りになるのか



これまでも取り上げてきましたが、海軍のEA-18Gは当面唯一の電子戦機としてその役割に空軍も期待しているようでこのままいけば、追加調達もすんなりと議会を通りそうです。ただ空軍と海軍の見解の相違、さらにボーイングとロッキードの主張にも相当の差があるようで、こんなことで本当に近い将来のA2AD環境への攻撃作戦が実施できるのか不安になってきますね。それにしても日本はこの分野で大きく遅れをとっていると思いませんか。まさかF-35があれば大丈夫と思っているのでしょうか。

Stealth Vs. Electronic Attack

USNI News
By: Dave Majumdar
Published: April 21, 2014 6:19 AM
Updated: April 21, 2014 8:25 AM
An F-35C Lightning II aircraft on Aug. 14, 2013 at Eglin Air Force Base, Fla. US Navy Photo
F-35CライトニングII、エグリン米空軍基地(フロリダ州)にて、
2013年8月14日、写真 米空軍 

  1. 接近阻止領域(A2AD)へはステルスと電子攻撃能力を組み合わせて対抗すると海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将 Adm. Jonathan Greenertが米海軍協会の年次総会(4月16日、ワシントンDC)で述べている。

  1. 「ステルスの先を見通すと、ステルス性だけでなく敵の電子電磁発信を制圧する性能のある航空機が必要だ」

  1. グリナート大将が言わんとするのは電子攻撃だけでは米軍は将来の敵の防空網を突破できないということで、同じ意見が軍と業界筋から出ている。

  1. 同大将は「将来の米軍がすべてを制圧できるか疑わしいが、次世代ジャマーは将来の侵攻・撤収時に威力を発揮するだろう」と発言。

  1. グリナート大将の発言は大方でボーイングが先週行った海軍連盟での展示内容を反映している。その席上で同社副社長マイク・ギボンス Mike Gibbons (F/A-18E/FおよびEA-18G担当)がステルス機には電子攻撃機の支援が必要と発言している。


  1. 「侵入時には一つの周波数帯へ対抗するだけでは不十分です。他の周波数帯で探知される可能性があるからであり、ここがカギです」とギボンスは説明。「グラウラーは全周波数に対応できるセンサーとジャミング能力を備えた唯一の機種で、攻撃機支援が可能です」


  1. ボーイングのプレゼンテーションでは低探知性技術は「なま物」だとし、敵方が高性能低周波レーダーや信号処理で進展をとげれば有効性は減じると主張。
Boeing Presentation
Boeing Presentation

  1. 「ステルスとは『探知されるのを遅らせる』にすぎず、この遅れは短くなってきています。地対空ミサイル用レーダーが使用する周波数が低くなっており、米国のステルス機は効果が減ってきています」とボーイングでF/A-18E/F およびEA-18Gの性能改修を統括するマーク・ギャモン Mark Gammon, Boeing’s F/A-18E/F and EA-18G program manager for advanced capabilitiesは説明している。「VHFを使う早期警戒レーダーでステルス性が下がります。各レーダーはSAM管制用レーダーとネットワーク化されており、探知が容易になっています。ステルスだけでは対抗できないIRST(赤外線探知追跡)システムが登場しています。」


  1. このボーイングの見解を軍関係者にUSNI Newsから紹介したところ、完全に同意したのは一部で、反発も一部、ほとんどは微妙な反応だった。


  1. 「ボーイングはF-35を全面攻撃しているのだろう。グラウラーの利点は強調しつつ、その内容は誤っていないが、長所の裏にある代償には目をつむっている。グラウラーと低視認性機体はお互いに補完するのは事実だ」と米空軍関係者は語る。

  1. ロッキード・マーティン社はF-35は強固に防衛された空域にいかなる支援なしに侵入できると主張している。

  1. 「政府契約により同機は脅威度が高い接近拒否環境に侵入が可能になることになっており、自律的にミッションを実施し帰還することが可能」とロッキードでF-35の国内向け事業開発担当役員エリック・ヴァン・カンプ Eric Van Campは説明する。「飛行試験結果からも同機はこの契約の要求水準に合致してることがはっきりとわかる」

An EA-18G Growler from the "Shadowhawks" of Electronic Attack Squadron (VAQ) 141 prepares to make an arrested landing on the flight deck of the U.S. Navy's forward-deployed aircraft carrier USS George Washington (CVN-73) in 2013 US Navy Photo
電子戦飛行隊(VAQ)141「シャドウホークス」のEA-18Gグラウラーが米海軍の前方配備航空母艦USSジョージ・ワシントン(CVN-73)で拘束着陸を行おうとしている。写真米海軍

  1. 戦術機サイズのステルス航空機に高周波帯(C,XやKuバンドなど)に対抗する必要があるのはその通りだが、現実には別の手段で探知・追跡を困難にできる。

  1. 航空業界、空軍、海軍関係者は同様にレーダー周波数波形が一定の想定範囲を超え共鳴効果resonant effectを発生させれば低視認性機体の「段階的変更」が必要になると認めている。共鳴が発生するのは航空機の尾翼などが特定の周波数の波長の8倍を超える場合である。

  1. 小型ステルス機にはレーダー吸収剤を2フィート以上塗布できる余裕がないので表面の各部分はそれぞれ特定の周波数に特化した対応をすることでしのいでいるのが現状だ。

  1. 低周波数帯(SやLバンド)で運用するレーダーなら民間航空管制用でもステルス機をある程度探知追尾することが可能になる。

  1. ただし大型ステルス機の例としてノースロップ・グラマンB-2スピリットでは共鳴効果を生む特徴が少なく低周波レーダーにもF-35より有効に対処できる。


  1. だが低周波レーダーではペンタゴンが「軍用仕様」“weapons quality” と呼ぶミサイルを目標まで誘導する能力がないし、「航空管制レーダーで低視認性機が発見できたとしても、火器管制システムがなければ撃墜は不可能」と空軍関係者は言う。

  1. 一方でロシア、中国他が高性能UHF、VHF帯を利用した早期警戒レーダーを開発中で、これまでより長い波長を使い他のセンサーを追尾させ迎撃戦闘機にある程度の敵位置情報を与えることが可能となる。

  1. とはいうもののVHFやUHF帯レーダーにも問題があり、米海軍関係者がUSNI Newsに語ってくれたのは波長が長くなるとレーダー解像セルも大きくなることだ。つまり兵器を誘導させるだけの正確な追尾ができない。

  1. ただ空軍、海軍、海兵隊関係者が異口同音に言うのはF-35やF-22のような航空機は低視認性だけでは生存はできないことだ。

  1. ある空軍関係者の説明ではステルスと電子攻撃は常にシナジー関係にあり、信号体雑音比signal to noise ratioで探知されるからだという。低視認性で信号を減らせるが、電子攻撃で雑音が増える。「A2/AD対抗策ではこの両方で解決を迫られる」というのだ。

  1. 空軍と海兵隊関係者からはボーイングの指摘した、F-35にはXバンドによる電子攻撃しかなく、その有効範囲が前方にある、との指摘に異議を唱えている。「後方有効範囲は現状のどの機体でも装備されているかいないか明かせない。ただしパッケージで実現している。その場合はEA-18が必要だ」と空軍関係者は指摘する。

  1. しかしながら空軍・海兵隊関係者はグラウラーは今後出現する脅威対象に有効ではなくなると言い、F-35の電子戦能力向上案があるという。

  1. 「グラウラー自体は信頼できる機体だが、高度のA2/AD地帯では対応が限定される」と空軍関係者は言う。「現時点で最新鋭としても今後予想される環境ではジャミング機体として適当なのかわからない」

  1. にもかかわらず、複数の空軍関係者がグラウラー追加調達の拡大案を支持する。「グラウラーは有益な機体で機数をふやすべきだし、高性能のIADS(統合防空システム)に対する攻撃パッケージの中で重要な部分となる。ボーイングのいうような単独での有効性はない」

  1. だが、そういう関係者もグラウラーは共同編成部隊で相互運用性が完璧でないと指摘している。「グラウラーで未解決なのは攻撃用機材との間の問題だ。」という。

  1. 一方で「ボーイングにとっては共用作戦運用が限定される機体を広めることで利点が生まれる。SEAD/DEAD(敵防空体制制圧・敵防空体制破壊)ミッション用の他社製機体とうまく連携できない機体だが、戦闘実施にはあまり意味がない」

  1. 業界筋もグラウラーには共同作戦実施で問題があることを認める。とくに空軍機材との共同作戦でだが、グラウラーだけの問題ではない。たとえばロッキードF-22が編隊中データリンク (IFDL)を使えるのは他のF-22との間だけだし、F-35は共用打撃戦闘機同士でしか使えない多機能高性能データリンク(MADL)がある。「これはエアシーバトル室が解決を迫られている大きな問題の一部にすぎない」と業界筋は解説する。

  1. ボーイングのギャモンはEA-18Gの相互作戦運用能力を弁護している。「グラウラーにはリンク16を装備しており、F/A-18スーパーホーネット、F-35, E-2D、F-15、F-16他爆撃機各種と互換性を確保しています。グラウラーは脅威から距離を置くスタンドオフが可能なのが利点で、そのままでEM(電子電磁)マップを作成し、リンク16経由で兵器照準を支援します。さらにTTNT(戦術目標捕捉ネットワーク技術)がここに加わります。」

  1. 業界筋からはF-35へリンク16搭載案があるが、同機では脅威度が高い空域では全方向性を持つ同リンクは使用できない、なぜなら同機の位置をさらしてしまうからだと説明があった。「F-35のように自機のリンク16で発信を避けたい機材はグラウラーからのリンク16発信を受信して、その指示で兵装を使うことになる」という。

  1. 空軍関係者もEA-18Gの追加調達は必要だと認める。「そもそも初回調達機数が少なかった」と空軍関係者は語る。「同機には同じ重量の黄金の価値があり、ES(電子電磁スペクトラム)による状況把握、EA(電子攻撃)部隊両面で多大な貢献が可能。しかしLIMFAC(限定条件)は常に空母運用による飛行サイクル回数がついてまわることだ」
Boeing Presentation.
Boeing Presentation.

  1. 海軍関係者からは空母運用によりサイクルが限定されるのはグラウラーにAGM-88E高性能対放射線誘導ミサイル(AARGM)あるいは高速対放射線ミサイル(HARM)のようなミサイル発射任務を想定する場合だけだという。同関係者によれば空中給油の実施で海軍の戦闘機が6時間以上耐空するのは普通だという。「もしグラウラーがHARMを全弾発射して再装填するため着艦するとサイクル回数を考慮しなくてはいけないが、現実的にはスタンドオフでジャミングにあたるはずで、HARMを発射するのは防御の想定だけです。」 つまり、着陸し、燃料補給し、乗員を交代させ、点検修理を一定の間隔で実施するのはどの機体にも必要なことではないか、というのである。

  1. ボーイングも自社グラウラーを対空あるいは攻撃任務に投入する可能性が説明している。ギャモンもEA-18Gをそのような任務に使用するのは同社のこれまでの説明とは異なるが、展示では上掲の図を使い、「対空任務ではグラウラーはESM(電子支援装備)を使い、味方戦闘機の敵捕捉を支援し、敵の識別を行うのがもっと重要だ。グラウラーはこれをスタンドオフ位置から実施しても、十分なSA(状況把握)とID(識別)が可能だ」

  1. ギャモンからはEA-18Gを対地攻撃に投入した場合の説明もあった。「グラウラーは敵の戦闘隊形をEMで把握し、敵の発信源を識別し、司令塔の役割をEMで行い、どれをジャム、攻撃あるいは回避する対象とするか決定する。グラウラーはAARGMなどの兵器を発信源に発射するほか、味方攻撃機に交戦情報を提供する」

  1. 海軍関係者はグラウラーを戦闘指揮統制機材として使用する想定だが、同機を直接攻撃任務につかせるとか制空任務にに投入する考えはないという。

  1. 業界筋もグラウラーを制空戦闘機あるいは攻撃戦闘機として投入する可能性はないが、投入されれば重要な役目は果たせるとみる。「グラウラーでJDAM(共用直接攻撃爆弾)を投下することはないが、攻撃任務の他の戦闘機に目標まで誘導させることで支援は可能だろう」

  1. グラウラー追加調達には幅広い支援があるが、それでもさらに進歩したA2/ADの脅威に単独で解決を提供することにはならない。
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  1. 「ステルスには欠点もあるが、第四世代機でも新型ジャミングポッドを搭載すれば将来のIADSにも実用的な解決策になる。米空軍はポッドを大量導入するのはまちがいない」と米空軍関係者は言う。■