2016年2月25日木曜日

海上幕僚長のサンディエゴ講演の内容を米海軍協会はこう伝えています。


米海軍CNOに匹敵する海上自衛隊のトップが誰なのか日本でも即答できる人はいないと思いますが、それは米国でも同様です。しかし、海軍関係に関心を有する向きはこうした報道で知ることになりますね。しかし日本では同じ人物の発言が逐一報道されることなく、結局誰もわからずじまいに交代するのでしょうか。なんか変ですね。
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Japan’s Maritime Chief Takei: U.S. Industry, Military Key to Address Western Pacific Security Threats

By: Gidget Fuentes

February 22, 2016 9:56 AM
Adm. Tomohisa Takei, chief of staff of the Japan Maritime Self-Defense Force, on Feb. 18, 2016. US Naval Institute Photo
Adm. Tomohisa Takei, chief of staff of the Japan Maritime Self-Defense Force, on Feb. 18, 2016. US Naval Institute Photo
SAN DIEGO — 日本はアジア太平洋での作戦共同実施の拡大ならびに域内の安全確保で米国防産業および軍部隊による支援拡大を期待すると海上自衛隊トップが述べた。
  1. 海上幕僚長武居智久海将は日本が防衛姿勢を変更し、自衛隊部隊が中核的な安全保障上の防衛課題に合わせられる形になった中で、共同作戦の実施能力は極めて重要だと2月18日West 2016会場で講演した。
  2. 武居海将は国際面での進行中の変化を四つ上げた。中国の急速な軍事力増強、中国の海洋海軍力の進展、北朝鮮のミサイル開発、ロシアの海軍活動の高まりだ。国境を超えた危機状況も自然災害、国際犯罪、海賊活動、テロ活動がある。米海軍との緊密な協力体制では最新技術と戦術方法を米海軍から導入したいと述べた。
  3. 武居幕僚長は司会トーマス・ファーゴ退役海軍大将の米海軍協会・AFCEAインターナショナル共催のセッションでほぼ通訳者を介さずに講演した。ファーゴは元太平洋軍司令官兼米太平洋艦隊司令官で、現在はハンティントン・インガルス工業の会長。
  4. 防衛体制に影響を与えそうな日本の国内要因を二つ紹介している。高齢化と財政事情だ。「若年層が急速に減少している。人員確保では民間企業と競争している」とし、今後状況は悪化すると見る。次に日本の民間企業による防衛力強化の支援に制約があると指摘。「必要な防衛力の整備が一層困難になっている」と述べた。
  5. 日本の防衛産業各社は自社の民生部門事業のほうが大きく、防衛関連事業の規模は1割以下だ。「各社が今以上の投資をするとは思えず、不安定かつ予測不可能な国際防衛ビジネスで事業拡大には向かわないだろう」とし、さらに「日本の世論は武器輸出に反対している」と説明した。
  6. それでも共同開発の余地は残る。「日本国内の防衛産業は高度技術を有しているが、経験と専門性が」他国との共同開発で「不足している」と発言。防衛産業の各社は大企業の一部であることが多いが、共同事業で可能性を感じるのは米国製装備の「一部供給または開発での提携」で特に通信技術や情報処理技術に注目しているという。「日本が単独で開発するより今後は米企業の中核的提携先になるのではないか」と付け加えている。
  7. 中国の軍事力が近代化し、拡大中なのは日本にとって微妙かつ深刻な問題だ。
  8. 「アジア太平洋の各国にとり中国は極めて重要な国で、太平洋の安全保障に大きな役割を果たすはずだ」と質疑応答で武居海将は正確を期すため通訳者を介し日本語で話している。「すでに中国海軍はソマリア沖合で海賊対策に参加中だが、軍事力が質量ともに近代化するのは懸念材料。また中国軍の透明性不足が近隣諸国に大きな不安を生んでいる」
  9. 「中国が南シナ海の現状を変えようとしているのは域内で大きな心配を生んでいる。この問題は平和的手段をもってかつ国際法に従って解決すべきとするのが日本政府の姿勢だ」
  10. 「昨日、防衛大臣が日本は米国の行う南シナ海での航行の自由作戦を強く支援すると発言している」とここは英語で述べた。
  11. 中国は米海軍の作戦を非難し、領海侵犯と主張すが、太平洋軍司令官ハリー・ハリス大将含め米側は該当海域での航行は国際海洋法上認められており、海軍艦船の航行・作戦を継続すると述べている。
  12. 海上自衛隊の発足は1952年で、時の政府が防衛政策を変更するに従い、兵力構成を変更し域内の脅威勢力に対抗してきた。とくに中国を念頭にしている。「新しい脅威環境に適合していく必要がある」と武居幕僚長は述べ、重要なのは海上自衛隊と米海軍の「健全な」関係だとした。
  13. このため切れ目のない訓練とともに米国を筆頭に同盟国協力国各国と相互運用の能力が必要だ。したがってC4I 統合指揮統制通信コンピュータ情報能力の整備が重要になる。
  14. 「機密がしっかりし、かつ統合されたC4Iのネットワーク整備を今後も継続し、各国とC4Iシステムを共有すれば作戦の実効性があがる。日本だけが整備を怠れば、同盟関係の中にギャップが生まれてしまう」
  15. 武居幕僚長はこうした努力を続けてこそ日米同盟が維持できると力説した。米国には謝意を重ねて表明し、空母USSロナルド・レーガン(CVN-76)が2011年の東日本大震災直後に救援に急行した事例を言及。こうした対応が同盟関係の強化につながるとし、「日本国民は同艦がしてくれたことを忘れていない」とし、「相互運用能力が各国海軍をつなぐカギだ」と述べた。■

2016年2月24日水曜日

★レーダー設置報道へ中国国防省が(予想通りの)反応を示す



これは予想通りの反応ですが、中国から米アナリストの予想通りのコメントが出ているのには思わず笑ってしまいました。まるで冷戦時の言葉の応酬の様相を示してきましたが、米政府からの公式声明は出ていないようですね。
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China Military Online

China reaffirms self-defense legitimacy regarding reported radar deployment

Source: Xinhua Editor: Zhang Tao
2016-02-23 23:000

BEIJING, Feb. 23 (Xinhua) -- 中国は2月23日あらためて自国防衛の権利があるとし米国の非難は「不純な動機」があると一蹴した。これは米シンクタンクが中国が南シナ海でレーダー施設を建設中と公表したことへの対応。
  1. 防衛施設の展開は国際法で認められた国防の権利の一環であり、まったく違法性はないと国防省が報道発表している。
  2. 同省の発表はワシントンにある戦略国際研究所が月曜日に衛星画像からちゅごくがレーダー設備を南沙諸島に建設している可能性を発表したことを受けてのもの。レーダーが完成すれば中国の対水上、対空監視能力が南シナ海全域で強化されると発表していた。
  3. これに対し中国国防省は該当の施設は航法および気象観測設備を含み、主として民生用で国際社会の益に供するものと発表。
  4. 同省は米国を非難し、米国こそ南シナ海で軍事展開を強化しており、軍艦、軍用機を同海域に派遣し、同時に同盟各国を巻き込み共同演習や共同航行を実施することで南シナ海の軍事拠点化を招く「根本原因」となっていると主張。
  5. 「米国の行動には目をつぶるが、正当な権利を行使した中国が進める建設工事には飽きもせず非難する一派がいる。意図的に問題を深刻化し、緊張を掻き立てる不純な動機がある」と報道発表は述べている。■

中国がウッディ島に(再び)戦闘機を配備した模様



China Deploys Fighter Jets To Contested Island in South China Sea

Agence France-Presse7:57 p.m. EST February 23, 2016
Xian JH-7A fighter jet(Photo: Alert5 via Wikimedia Commons)
WASHINGTON — 中国が問題になっている南シナ海に戦闘機を配備したと米政府関係者が2月22日に明らかにした。
  1. FOXニュースが匿名米政府関係者二名の発言を引用し米情報機関が瀋陽J-11および西安JH-7をウッディ島で発見したと伝えた。同島は紛糾するパラセル諸島の一部。
  2. 太平洋軍報道官ダリン・ジェイムズ大佐が報道内容を確認したが、中国戦闘機の同島展開は今回がはじめてでないと指摘した。
  3. ウッディ島は台湾とヴィエトナムも領有権を主張している。中国は1990年代から滑走路を構築していたが、昨年に設備改良しJ-11運用が可能になった。
  4. 「問題の地に中国が高性能兵器の配備を進めていることに懸念を感じざるを得ない」(ジェイムズ大佐)
  5. この報道はジョン・ケリー国務長官が中国の王傑外相をワシントンに招いたのと同時になった。王外相はペンタゴンを23日訪問する予定だったが「日程上の都合で」取りやめになっている。
  6. 中国はウッディ島への「武器」搬入は主権の範囲と主張している。
  7. 米関係者はAFPに対して中国が配備した地対空ミサイルはHQ-9と思われ、200キロの有効射程があると述べている。
  8. 前日の月曜日には戦略国際研究所が公表した衛星画像で高周波レーダー施設が建設中と判明した。場所はスプラトリー諸島内のクアテロン島だ。
  9. 中国による南シナ海での埋め立て工事と軍事拠点化は国際社会の非難を呼んでおり米国は今後も中国が領海と主張する海域の航行を続けると公言している。■

中国の南シナ海軍事化>高周波レーダーの設置は早期警戒網の整備の一環か


今度はレーダーですか。中国はなんとしても既成事実をどこまで積み上げるつもりなのでしょうか。ここまで事態が進展していることはオバマ政権の不作為として大統領選挙戦にも悪い影響がでないのかどうか。最も米国民にとっては南シナ海は遠い存在で争点は国内経済や格差問題なのかもしれませんね
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New Possible Chinese Radar Installation on South China Sea Artificial Island Could Put U.S., Allied Stealth Aircraft at Risk

By: Sam LaGrone
February 22, 2016 3:19 PM • Updated: February 22, 2016 6:56 PM

A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS Asian Maritime Transparency Initiative, DigitalGlobe Image used with permission.
2016年1月24日撮影のクアテロン礁の衛星画像では高周波レーダーアレイらしき設備が確認できる。 CSIS Asian Maritime Transparency Initiative, DigitalGlobe Image used with permission.


中国が南シナ海にレーダーを展開し米国や同盟側のステルス機に探知リスクが出てきた。米国が冷戦時にロシア爆撃機を探知しようとしたのと類似した状況だ。
  1. 1月末の衛星画像が戦略国際研究所がDigitalGlobeと共同で公開され、高周波レーダーがクアテロン礁に設置されているのが判明した。同礁はフィリピンに近い。
  2. 画像では高さ65フィートの柱数本が埋立て造成地に視認され、形状はHFレーダーに酷似していると戦略国際研究所の Asian Maritime Transparency Initiative でグレッグ・ポーリングがUSNI Newsに2月22日語っている。「20メートルの柱数本が配置されている。これが高周波レーダーでなければ他にどんな可能性があるでしょうか」
  3. 画像では稼働中か不明で、国防総省に22日照会したが回答はまだない。なお本件はワシントンポスト紙が同日に最初に報道した。

A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.
A Jan. 24, 2016 ima of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.

  1. 戦略予算評価センター(CSBA)の海軍関係アナリスト、ブライアン・クラークに言わせると同島の高周波レーダーは海上取締まり用途かもしれず、米国が同様の装備をメキシコ湾やカリブ海で運用しているという。だがクアテロン島のHFレーダーには軍事用途が二次的に想定され、ステルス機の探知が可能ではと見ている。
  2. 米ロ両国の類似レーダーでは水上目標を80マイルから200マイルの範囲で探知可能だが、中国レーダーがステルス機の探知が可能かは不明とクラークは言う。
  3. 「海上・空中ともに監視できるおあつらえの装備だ」とクラークは言う。「両方の機能があるところがいい。従来型の早期警戒レーダーの周波数で探知不可能だったステルス機も発見可能だ」
  4. 中国はすでに本土沿岸に類似型レーダーを設置しており、ステルス機の探知に投入している。
A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.
A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.

  1. クアテロンの高周波レーダーがデータリンクで探知結果を中国本土に送れば高性能レーダーは探知範囲を狭めて効率よく捜索できる。そのデータは対空ミサイル陣地に与えればよい。
  2. レーダー設備の導入は「該当地域にステルス機が運航されていることの証拠だろう」とクラークは見る。
  3. 米ステルス機各型はレーダー高周波数で最大のステルス性能を発揮する設定になっている。
  4. 高周波レーダーはステルス機が探知範囲に入れば判別できるが、兵器の照準ロックをするだけの正確性はない。しかし、USNI Newsが2014年に報じたようにロシア、中国はともに低バンドレーダーを改良しHF早期警戒システムと併用してステルス機探知に成功している。迎撃戦闘機に敵の大まかな位置を伝えることが可能だ。
  5. 米国も同様の構想でロシア爆撃機を探知する遠隔地早期警戒(DEW)ラインを1950年代末に設置している。
  6. クラークはクアテロン島のHFレーダーはこのDEWラインと同じ発想だという。「早期警戒レーダーの有効範囲を延長している」
  7. 設置場所がフィリピンに近い点を考えると、クアテロンのHFレーダーはフィリピンでの米軍機の活動を監視する目的もあ るが、すべて民生法執行活動の範囲内と中国は主張するのではと見クラークは見る。「漁業取締まり用だとか国境監視用と中国は説明するでしょう」
  8. 中国政府は繰り返し同島の設備は昨年完成した灯台とともに「公共の福祉と国際社会への貢献」が目的だと説明している。
  9. これと別に先週発表の衛星画像ではパラセル諸島のウッディ島に移動式対空ミサイル30基以上が配備されているのが判明した。これで中国がいう平和的目的の疑わしさが改めて浮上した。■

無人艦載給油機CBARSは攻撃機に進化するのか、それとも?



米海軍の次代機としてあれほど期待されたUCLASSが葬られ、代わりにタンカー構想が出てきましたが、この機体が同時に長距離攻撃任務にも使えるのでしょうか。あるいは実は別のプロジェクトがブラックの世界で進行しているのでしょうか。期待だけがふくらんでいきますが、その結果はあと数年すれば明らかになるでしょう。
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CBARS Drone Under OSD Review; Can A Tanker Become A Bomber?

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 19, 2016 at 1:58 PM
WASHINGTON: 米海軍の新型無人空中給油機CBARS構想を国防長官官房が精査中であるとBreaking Defense がつきとめた。
  1. 何を精査内容しているのかはわからないが先立つUCLASS構想の偵察攻撃無人機と重なる点がある。UCLASSも同じく長官官房が一年以上検討して結局中止に追い込み、そのためCBARS構想が浮上したのだ。今度の事業も同じ運命をたどらないと誰も断言できない。
  2. 前回の論点は要求性能だった。UCLASS空母運用空中偵察攻撃無人機の主任務は偵察なのか、比較的安全な空域を低速で飛行しそこそこの兵装を搭載するのか。あるいは攻撃に特化させ、防御固い敵地を長距離侵攻する重武装機なのかで論議が続いた。
  3. 後味の悪い論争の応酬が長官官房、海軍、議会の間で続き、2017年度予算ではどちらも否決された。かわりにそこまで大胆な性能を求めず、安価な空母搭載空中給油システムとしてCBARSが生まれた。CBARSの主任務はタンカーだが海軍によれば偵察能力と「限定的攻撃」能力も備えるいう。これでは偵察を主任務と想定したUCLASSに限りなく近いように聞こえる。
  4. そこでペンタゴン関係者にCBARSが想定する内容の説明を求めたが、きわめて丁寧にコメントはだれもできないというのだ。少なくとも官房による精査が終わるまでは。このことから証明はできないが、長官官房の誰かも同じ質問をしていると思われる。CBARSはUCLASSの軽量版なのか全く新しい構想なのか。
  5. 要求性能を正しく設定するのは不可欠だ。話を聞いた海軍航空関係のベテラン二名とも無人給油機は攻撃機にゆくゆくは進化するとみている。ただし今必要とされる空中給油だけが要求性能となれば二者択一式にCBARSがその他任務をこなす可能性が犠牲になる。
  6. 「無人給油機には長距離攻撃機に発展できる余地を残しておくべきでしょう」と語るのはジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐、現在は新しいアメリカの安全保障を考えるセンターに所属している。「発展可能性を残せばそれでいいと思います」
  7. 爆撃機転用は可能なはず、とヘンドリックスは言う。CBARSが別ミッション実施も前提に製造されれば。つまり目標への飛行途中で給油する「ミッションタンカー」にするのであり、空母周囲を飛行して単に給油を与えるだけの「リカバリータンカー」にしなければよい。「これまで20年の給油機は皆このタイプだった。他任務もこなせるタンカーはなかった」
  8. 「ミッションタンカーとして他機と一緒に戦闘空域へ飛ぶ機体になれば、遠隔地の敵空域でも空中給油は必要ですし、とくにS-400の脅威を考慮しなければ」とヘンドリックスは言う。高性能ミサイルが接近拒否領域否定の防空体制に配備されていることからその必要が痛感されるはずだ。このため比較的高性能の機体として兵装を燃料の代わりに積み、新型エイビオニクスとステルス塗装があれば爆撃機として運用できる。
  9. 「マッハ0.8で45千フィートを飛行できれば攻撃機と一緒に行動できる」とF/A-18E/FスーパーホーネットやF-35C共用打撃戦闘機を想定し、ヘンドリックスは見る。逆にCBARSが低性能偵察機になれば、攻撃任務実施は無理だろう。
  10. CBARSが将来の爆撃機の原型になるためには機体形状をクリーンにまとめておく必要がある。とくに搭載燃料は全部機内搭載とし、主翼にタンクを下げることは避ける。これでステルスを実現できるし、エンジン回りの設計は特に慎重にし、熱放射から赤外線探知される事態を防がないといけない。
  11. これまでの空軍の給油機は格好のレーダー標的で、民間機が原型のためだった。現在、一部F-18をミッションタンカーに転用しているが、ステルス性はない。
  12. CBARSを爆撃機に転用する前提だとタンカー性能が犠牲となり単価も高くなる。このため前海軍次官ボブ・マーティネッジ(戦略予算評価センター)は楽観視できないという。
  13. 「理論上はCBARSは侵攻型偵察攻撃機に進化する機体にできるでしょう」とマーティネッジは記者に電子メールで回答。「ただし、そのためにはタンカーの形状と推進系は攻撃機とほぼ同様に設定する必要があり、タンカーミッションが犠牲になります。これでは海軍提案と逆方向になります」「タンカーミッションに特化させれば主翼は高アスペクト比にし、主翼胴体から尾翼の形状、高効率エンジンが露出されることになり、これではステルス攻撃機には進化できません」
  14. 新型艦載給油機は二重の意味で有用だ。まずスーパーホーネットが給油任務から解放され、航空隊全体の運用距離が延びる。だがマーティネッジは「CBARSで解決できない問題がある。攻撃有効距離が不足しており、新しいネットワーク型のIADS(統合防空システムズ)を前に生存性が不足する問題だ。喫緊の課題は空母の作戦戦略上の威力を維持するためにも長距離侵攻可能な偵察攻撃機の確保だ」
  15. マーティネッジの推すのは「A-X」だろう。攻撃ミッションを主とする艦載機にはかつてはA-6イントルーダーがあった。無人機を一番要求が厳しい長距離攻撃任務用に設計しておけば、給油機にも転用できるはずだ。またCBARSを給油任務中心に定義したのちにステルス攻撃機型を別個準備するより費用は安くつくはずだ。開発期間も短縮できるとマーティネッジは言う。「A-Xを先に進めれば、その設計と技術内容から空母用給油機型をCBARSより先に公試、配備できるはず」
  16. マーティネッジが言う先行作業とは極秘の長距離空母運用型ステルス攻撃機のことかもしれない。この機体については今のところ誰も内容を知らないが、マーティネッジとCSBAで同僚のブライアン・クラークが予算の出どころをつきとめている。
  17. 「機体開発計画が別にあるか不明ですが、2016年度国防予算を見ると、議会が300百万ドルの追加予算をUCLASSに認めているのがわかります。これに対して海軍は同年度にUCLASS/CBARSに135百万ドルしか使うあてがないとして予算要求していました。DoDが別の300百万ドルを2016年度からどう使うつもりなのか見えてきません」
  18. もしペンタゴンが今もステルス長距離艦載爆撃機をブラック予算であるいはCBARSを進化させる形で構想しているとすれば、議会の有力筋には吉報だろう。議会は中国、ロシア、イランに対抗するには高性能が不可欠とみている。もし単なるタンカーを作れば、議会から鋭い質問が出てくるはずだ。■


2016年2月23日火曜日

★日本の安全保障の対象領域はどこまでなのか 思考を広げよう



日本にとっての安全保障の範囲はどこまでと考えるべきなのでしょうか。これまで思考停止していたツケを今払わされている感じがします。先回の国会論議を聞くと国境線と利益線は違うとすでに明治時代に力説していた陸奥宗光の言葉が重く感じられますね。国際社会の場で意見を堂々と発言すべしなどと威勢のいいことを吹聴する傾向がありますが、まず自分の言葉でしっかりと考えなければ。英語力だけでは中身のある意見になりません。改めて「あるべき姿」を根本から考えて、既成事実にとらわれなく創造的な思考の必要性を感じる次第です。
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Panel: Japan Concerned How U.S. Will Keep Sea Lines Open if Simultaneous Crises Occur in Asia, Middle East

By: John Grady
February 17, 2016 6:34 PM

中東と東シナ海あるいは朝鮮半島で同時に有事発生の場合に米国がどう動くのか、日本への原油輸送は維持できるのかと日本の政治指導層がこれまでにまして問いかけていると日本人講演者がブルッキングス研究所開催のフォーラムで紹介している。

  1. ㈱外交政策研究所の代表宮家邦彦は会場の質問に答えて「中国が本当に現状維持を欲しているのか、それとも変えようとしているのかが問題の核心だ」とし通商交通路を南シナ海とインド洋で維持することに言及した。
  2. 原油の8割が中東依存の日本の視点を宮家他の日本側講演者が紹介し、日米で現地で発生中の事態で関心事が違うと指摘した。日本は第七艦隊に母港を提供し、一部費用負担もするが、日米は「費用分担以上」をめざし、中国の軍事力経済力の進展に共同で対応すべきとした。
  3. 宮家のプレゼンテーションでは「中国は今や陸上国境線は確保ずみ」とし、中国にとって「脅威は海にあり」沿海部の工業地帯や金融機能防衛を重視し、日米安全保障同盟は脅威に写ると紹介。2011年の津波災害の直後に米国が空母二隻と揚陸強襲艦一隻を日本に派遣し災害救難活動を展開したのは有事の軍事力展開例と中国はとらえている。これに対して米国の視点は中国の歴史上で現在は海軍力、海洋力を発展させる二回目の時期に来ているとする。
  4. 中国も自国の交易エネルギー確保のため海上交通路の維持に配慮していると指摘するのはセントアンドリュース大の宮城由紀子だ。太平洋及びインド洋から眺めると日本の政策目標は「中東の情勢を平穏に維持する」ことだが日本の中東政策は「ジグザグの繰り返し」とし、アラブ・イスラエル紛争、イラン核開発問題、米国のイラク対策での例を挙げた。
  5. 宮家は歴史的にみて日本は中東で主要な役割を演じておらず、自衛力は増強したとはいえ、中東への兵力投射は日本には無理とし、中国が日本の周囲で影響力を増やしている事実を指摘する。またこの現実を受け入れて「中東と東アジアは一つの作戦戦域になりつつある」と日本や中国含む各国のとらえ方を紹介。「太平洋で大国の地位を確立するためには中東でも大国である必要がある」
  6. 中国がこの動きに出ていると指摘するのは中東を専門とするブルッキングス研究所のタマラ・ウィッツで、中国がアフリカの角で展開中の海賊対策を例示した。
  7. 米軍のイラク侵攻(2003年)とその後の「アラブの春」(2011年)を経た中東の情勢は極めて不安定とウィッツは指摘。「現在進行中の戦いは国家の本質を問うもの」でシリア、リビア、イエメンで内戦状態が進行しているところに域内の大国イラン、サウジアラビアがからみあうとともに外部からロシアが入っている。
  8. 「内戦でテロ集団が生まれる。テロ集団が内戦を悪化させる」と指摘したのはブルッキングスで中東政策を研究するダニエル・バイマンだ。外部からの介入が暴力を助長させると述べた。
  9. では米国に解決策があるのかが「大きな疑問、検討対象」だ。域内の協力国と米国が常に意見を共にしているわけではない。サウジアラビアはじめスンニ派国家はイランの核交渉結果を国益に反するととらえ、中東の優先事項はイスラム国の壊滅なのかイランの野望を食い止めることなのか、自国の政治システムを開放すべきなのか反対に縮小すべきか迷っているという。
  10. 米国がめざすイラク・シリアのイスラム国(ISISあるいはISIL)の撃破は単なるテロ集団の壊滅よりずっと規模が大きい目標で、アルカイダのような小規模集団が相手と全く違うとバイマンは指摘。イスラム国がパリやサンバーナディオ襲撃事件のようなテロ攻撃を中止しても依然として一大勢力のままだ。イスラム国のやっていることの95%は「昔ながらの国家建設であり、領土を奪取し、徴税すること」で秩序を確立しようとしているとバイマンは述べた。
  11. バイマンは日米が協力できる分野は多いと指摘した。中東各国のの国境警備隊の訓練やトルコやヨルダンへの支援でシリア難民の適正な処理に当たらせることを例示した。
  12. 会場の質問に宮家は日本の実業界トップは中東やイランをかつては石油供給の中心地と見ていたが、今や不安定の中にもあらためて権益を見つけていると指摘し、「機会だと見ればあなたも投資たくなるのでは」と述べた。
  13. 宮城は日本はイラン投資に相当慎重になるとの見方を紹介している。日本が建設した石油精製施設をイラン政府が接収した前例のためだ。ただし、「日本人の働き中毒ぶりはとても有名」なので中東のビジネスへの態度がとても異なることで「文化摩擦」の発生は必至と微笑しながら述べている。■


2016年2月22日月曜日

★レーザー、AIで優位性を目指す米空軍の最新開発状況



レーザーが実用化されたら軍事応用ではパラダイムチェンジにつながるかもしれませんし、人口知能の応用研究が相当進んでいることがこのような公開情報からもうかがえます。第三相殺戦略の一環でしょうが、一層技術の防衛が必要になりますね。このブログの筆者は依然としてレーザー搭載には発電容量の制約とセンサー、プロセッサーの必要性があり、一定の大きさの機体でないと実用上は役立たないとみており、戦闘機への搭載は懐疑的です。むしろBattle Planeを防御するのに戦闘機は有効でしょうが。
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The Air Force of the Future: Lasers on Fighter Jets, Planes That Think

By Lara Seligman, Defense News11:02 a.m. EST February 20, 2016
WASHINGTON — 高出力レーザーを発射する戦闘機、大量の情報をミリ秒単位で処理するロボット、考える能力を有する戦術航空機、これは米空軍が考える将来の戦闘の在り方を根本から変える技術革新の数例にすぎない。
  1. 新年度予算で米空軍は科学技術S&Tを再重視し、25億ドルを要求している。16年度は予算強制削減措置でS&Tは削減せざるを得ず、グローバルホークやB-2爆撃機で性能改修を先送りしているので増額要求は心強い。
  2. だがロシアや中国も必死に追いつこうとする中で米国が後塵を拝するのは許されないと空軍主任科学者グレッグ・ザカリアスはこう強調する。「技術進歩を大幅に続ける必要があり、のんびりしている余裕はない」
  3. 今後わずか五年以内に空軍は高出力レーザーの発射を戦闘機で実施する。「スターウォーズ」の技術がいよいよ実現する。
  4. 搭載機種はF-15が有望だ。F-22、F-16やF-35も想定がある。空軍研究所(AFRL)の「シールド」事業は航空戦闘軍団が支援し、高エネルギーレーザーを戦術機で2021年までに実戦化するのを目指す。
  5. 同事業は2015年2月に始まっており、半導体レーザーの最新技術を利用する。小型レーザー装置を組み合わせて10キロワット超の高出力を実現する。開発チームはレーザーは機体防御用だと強調する。
  6. レーザーを戦闘機に搭載できるまで小型にすれば、米空軍は戦闘の有効性とスピードで相当優位に立てる。レーザーの電源はジェットエンジンが発電し、従来型の兵装を搭載せずに機体を防御できる。
  7. 開発は複数企業間で競合させて進めていると空軍は説明。一方の企業がレーザーを開発し、他社がレーザー兵器システムとしてまとめる。ここには電源、冷却、システム制御コンピュータ、戦闘管理用コンピュータを飛行可能な規模にまとめる作業が必要だ。三社目はビーム制御システムを開発し、目標照準を実現し、四社目がシステム全体の統合を行う。
  8. このうちビーム制御の契約交付を3月に空軍は予定しており、統合作業分の契約は9月になるという。レーザー本体の契約は2017年に延期し、残りの契約企業が開発に十分な時間をあてられるようにするという。
  9. だがスターウォーズの世界が現実になる前にシールドチームは乗り越える課題がある。空軍は特殊部隊が運用するAC-130に搭載可能なレーザーウェポンシステムを2019年までに完成させようと着々と進行中だが、小型高速の機体に搭載するのは難易度がはるかに高い。
  10. 高速飛行中に正確に照準を合わせるのは振動のせいで相当困難だ。もうひとつがシステムの小型化で戦闘機の機体におさめなくてはいけない。またレーザーを有効に利用するため安定電源も課題だ。
  11. この解決のため空軍は他軍の知見を利用し、陸軍の高エネルギー機動レーザー実証事業(HEL MD)がその例だという。同事業は10キロワット級レーザーをオシュコシュ製軍用車両に取り付けたもので、海兵隊も同様にハンヴィー車両への搭載を行っている。
  12. AFRLは自律制御技術の開発も進めており、ロボット車両や航空機のみならず意思決定の補助やデータ解析に当たらせるという。
  13. 進行中のプロジェクトには人工知能でISR情報を各種手段からあつめたものを融合し有益なデータを迅速に取り出す機能がある。現在は空軍要員が何時間もかけ動画に目を凝らし、忍耐強く関係ある進展を把握し、指揮命令系統を順々に伝え指揮官の判断を仰いでいる。これが自律制御システムだとデータが即座に把握され人員は別の任務にまわすことができる。
  14. マシンがデータを精査し、重要な内容を区別してくれれば、負担軽減だけでなく人員にやてもらいたい仕事を割り当てられるはず、とAFRLは言う。
  15. ただし自律制御機能が開発されても人間の判断が不要になるわけではないとAFRLは強調する。むしろ空軍要員に知能の高い相棒を作り、ミッションの完遂をより効果的に進めるのが目的だ。AFRLチームは無人機を有人機と一緒に運用する技術の開発中だ。
  16. そこでAFRLは空軍テストパイロット養成課程と共同でこのチーム運用の有効性と実施可能性を実証している。有人F-16が無人F-16と編隊飛行し、無人機にはパイロットがコックピットで緊急時に備えたが、アルゴリズムだけで機体操縦を完了した。両機は有人機パイロットが指示するまで編隊を維持し、その後無人F-16は編隊から離れた後で復帰したという。
  17. だがAFRLがめざすのは自動飛行ジェット戦闘機だけではない。2022年に予定の演習では新技術は自動制御ではなく自律運航であることを証明し、自身で航法し、想定外の天候に対処し、地上からの指示なくても自分で航路を変更できる機能を示すという。■


南シナ海で軍事拠点化を進める中国への対抗策で選択肢は少ない


日本も真剣に考えないといけない問題ですが、すでに中国は自衛隊が哨戒任務を南シナ海で実施することを警戒して予防線を貼っていますね。国際社会の一員として言論だけでなく日本も行動を検討すべきではないでしょうか。その場合に南シナ海をひとくくりにするのではなく、それぞれの海域でアプローチを変える特定解が必要ですね。
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Few Choices For US As China Militarizes South Pacific

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 17, 2016 at 3:31 PM

Chinese HQ-9 anti-aircraft missile launcher (Wikimedia Commons)中国軍のHQ-9対空ミサイル発射車両
WASHINGTON: 南シナ海に対空ミサイル配備した中国を共和党の有力議員が非難しているが、米国にどんな対抗策を打てるのだろうか。高性能HQ-9ミサイルがパラセル諸島にあるということは、ヴィエトナム、台湾も領有を主張するなかで中国が確実に太平洋に軍事力を拡充させる一歩になったのではないか、さらにこれで終わりではない。
  1. アメリカが中国の動きの把握に精いっぱいであるのに対し、中国は長期戦略を進めている。中国は南シナ海全域を自国領土と主張し、悪名高き九段線をその根拠とするが、これは実は1949年に大陸から追放された蒋介石政権が作成したものである。今では域内の実効支配を強め、米国の存在など眼中にないようである。
  1. パラセルは米海軍駆逐艦が航行の自由作戦(FONOPS)を先月実施し、中国の領有主張に真っ向から挑戦した場所だ。しかしこの実施が中国のミサイル配備につながったのか、あるいは単なる口実におわったのか。専門家は口実だったとする。
  2. 「中国は米軍のFONOPSとともに域内での演習の強化で米国を非難しています。都合のよい正当化ですね」と語るのは軍事面では中道寄りの安全保障国際問題研究センターのボニー・グレイサーだ。「中国が進める空域海域の実効支配強化の一部でしょう」
  3. 米軍による作戦実施や台湾での独立派政党の選挙勝利、開催されたばかりのASEAN東南アジア諸国連合のサミット(カリフォーニア州)が中国の動きのタイミングと戦術につながっているとみるのは保守派ヘリテージ財団のディーン・チェンだ。だが裏には南シナ海の支配を目指す長期戦略と並んで習近平主席が掲げる中国の国家意識向上がある。
  4. 政治面では米中間の地政学的対立よりも実は中国国内の政治情勢が重要な要素だ。「来年に共産党の党大会を控え、習近平が上席指導層の入れ替えを図っており、経済は減速中だ。習は弱腰と見られる余裕はないはずだ」(チェン)
  5. 「中国はパラセル諸島は固有の領土としており、単に言葉の上だけでなく軍事的にも裏付けをしようとしている。『欲しければ取りに来い』といっているようなものだ。南シナ海の支配確立をめざす中国の目標にも一致する』とチェンは言う。
(Wikimedia Commons)
中国の領有権根拠となる「九段線」
【パラセル諸島の軍事的意義】
  1. ではパラセル諸島にどんな軍事的意味があるのか。まず、中国本土ヘはスプラトリー諸島より近い。中国はパラセル諸島を1974年に当時の南ベトナムから奪い、さらに1988年にも共産ベトナムとも交戦している。二番目に、スプラトリー諸島の一部はフィリピンが実効支配中だが、パラセルはすべて中国が支配している。
  2. パラセル諸島は習近平が掲げる非軍事化の約束の対象になっていないのが中国にとって都合がよいとグレイサーは指摘する。対象はスプラトリー諸島で、グレイサーも『だからと言って習近平が将来スプラトリー諸島を軍事化しないとは言い切れない」と慌てて付け加えた。
  3. 「パラセル諸島の軍事化は長年にわたり続いている」とグレイサーは言う。「中国の装備が急速に向上し主権主張に追いついてきたのが新しい展開です」
  4. パラセル諸島ではウッディ島に軍用仕様の滑走路を建設し、格納庫を空爆に耐えるようにした。11月には米軍の航行の自由作戦に対抗して実際に戦闘機を展開した。高性能地対空ミサイル部隊二個をウッディ島に展開し、これまでの投資を守る姿勢を示している。
  5. 「S-300/HQ-9はいやな存在だ」とチェンは言う。HQ-9はロシアのS-300が原型だが中国は米国のペイトリオット技術を追加している。1990年代にイスラエルが中国に技術援助したためだ。
  6. 「このミサイルで防空空域が前方移動し、高性能戦闘機以外は侵入をためらうようになります」とチェンは言う。「動きが鈍いP-3やP-8なら当然そうなります」
  7. 元海軍次官補ボブ・マーティネッジはここまで心配していない、とりあえず今のところは。「孤立した状況ならウッディ島に配備されたHQ-9の作戦上の意義は限定的だ」と記者に語り、「紛争が発生しても付近の航空路には限定的な脅威にしかならず簡単にこちらが制圧し、無力化できる。平時には米軍偵察機はおよそ100マイルの距離をとって危機発生を防いでいる」
  8. だがミサイル配備の意味はそこにとどまらない。もっと大きな戦略の中で見る必要があるとマーティネッジも指摘する。「とくに今回の配備がこちらの動きを探る観測気球だったらどうなるか。長距離地対空ミサイルや対艦巡航ミサイルが多数南シナ海に持ち込まれた場合は安定を損なう結果になり、米国が有事に介入する引火点を下げることになる(または米国が介入を断念するかもしれない)し、作戦上の不確実性も増えるだろう」 拠点がばらばらのうちは対応しやすいが、連携されると一種の「接近阻止領域拒否」機能のネットワークとなり、マーティネッジが所属する戦略予算評価センターが前から警告している事態が発生する。
【中国は次にどう出るか】
  1. ではパラセル諸島へのミサイル配備は一歩に過ぎないとわかったが、次の展開は何だろうか。
  2. 「中国は次に三番目の手に出るはずでこちらも準備しなければ」とチェンは言う。南シナ海領有の裏付けとして中国は海南島に地域全体を管轄する県を創設した。この県の名前が三沙で、パラセルが西沙、スプラトリーが南沙、マックレスフィールドバンクあるいはミスチーフ環礁が中沙と呼ばれる。このうちパラセルとスプラトリーで滑走路ほかの施設が完成しており、残るは中沙というわけだ。
  3. 「マックレスフィールドバンクに建造物他ができるでしょう」とチェンは言う。「現時点で地図を見ると滑走路、SAM陣地他を設置済みの拠点が三角形になっているのが見えるはずです。南シナ海に簡単に侵入できなくなります」
  4. 「中国は南シナ海で防空識別圏(ADIZ)を設定してくるでしょう」とグレイサーもいう。その手始めがパラセル諸島だという。東シナ海では中国はすでにADIZを設定しており、尖閣諸島がその中に入っている。次に中国が南シナ海でADIZを設定するとすればまずスプラトリー諸島周辺で領有権の根拠となる「基本線」を宣言するだろう。パラセル諸島では設定済みで米国はじめ各国はやりすぎとみている。
 【米国のとるべき次の手は】
  1. では米国は中国の動きにどんな対応ができるのだろうか。上院軍事委員会と下院シーパワー小委員会からそれぞれ提言が出ている。
  2. 「この瞬間にも中国は堂々と国際会議の席上で域内の安定を守ると主張しつつ、問題の島に武器を持ち込んでいる事実そのものが中国こそ地域を不安定にしている張本人と示すなにものでもない」と下院シーパワー小委員会のランディ・フォーブス委員長が声明文を発表。「米国は協力国とともに今後も航行の自由、上空飛行の自由を法による支配の一環として擁護していくべきだ」
  3. 上院のジョン・マケイン委員長はさらに先を行く。「中国の南シナ海での今週の動きは中国政府が軍事化と支配強化を引き続き希求していることのあらわれだ」と声明を発表し、「米国は中国がやすやすと行動できなくなるよう追加策を実行すべきだ。事態の変化を横目に航行の自由原則を堅持するという宣言だけでは足りない。ここまで事態が進展していることを米国は承服できないとし、中国がこれ以上の行動をとればリスクが発生するようにしなければならない」
  4. そのリスクとは何か。マケインは詳しく述べないが、アナリストは以下の見解を示してくれた。
  5. 「中国の意図は米国を挑発しエスカレーションを上げることで域内の安定を損ねようとしています」というのはジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐だ。「中国は米国に現状を受け入れさせ、抗議受けずに事を進めたいのです。しかし、これは受け入れがたく、またそのことを米国は明確に示しています」
  6. 「外交および政治チャンネルで中国に高いコストになるぞと伝えるべきです」とチェンもいう。「これまでは中国は自分の行動の代償を免除されています」とし、大型商談の取り消しや国際会議の締め出しは発生していない。中国は海軍のリムパック演習に招待されている。ペンタゴンは軍同士の接触があれば有事の際でも致命的な誤解を防げるとしており、政治的意図を理由から交流を中止すべきではないとしている。
  7. 「とりあえずFONOPSは中止すべきではない」とチェンは言う。「あそこが連中の領海だと認めることはできない。全く受け入れがたい。認めれば国際法の概念が無効になってしまう」
  8. 「理想的なのは友好国、同盟国と共同歩調をとることですがASEANは全く弱体です」とチェンは述べ、一部内陸国が海洋部での利害対立に無関心であり、中国の友好国も加盟していることを指す。「それでも危機感を共有する国とは連合ができるはず」とヴィエトナムやフィリピンに期待する。だがより中立的なインドネシアと慎重な姿勢のシンガポールも加盟できるはずだ。
  9. ただし各国を中国に対抗させようとすると「誰が猫に鈴をつけるのか」問題が発生する。各国が乗り気だとしても実際に実行してリスクを抱えることは遠慮したいところだ。「米国の主張や行動に賛同する国でも参加は嫌がるのではないか」とグレイサーは指摘する。「驚くべきことではない。中国を批判すれば代償を覚悟しなければならないとみんなわかっているから」と微笑しながら付け加えた。
  10. 現実はもっと悪い。航行の自由の主張も出ず、ASEAN共同宣言も出ず、ヘイグ国際法廷での係争案件にもなっていない。「いかなる手段をもってしても中国を抑制できないようですね」とグレイサーも認める。「域内各国は憂慮しており、米国が何をしても中国の軍事展開はパラセルだけでなくスプラトリーでも止められないのかと心配しているのです」■

2016年2月21日日曜日

★★T-50 PAK-FAは名ばかりの第五世代戦闘機だ



この記事の通りならロシアの新技術開発が相当遅れていることを露呈しています。一方でロシアには軍事装備ぐらいしか工業製品で輸出競争力がある商品はないので、本当ならT-50を黙って販売したいのでしょうが、同じスホイ社内製品がブロックするというのは製品開発戦略が根本的に間違っていることになりますね。ロシア航空界の今後は相当悲惨でしょう。
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Singapore Airshow 2016: Analysis - PAK-FA's Asian export hopes stymied by lack of 'fifth-generation' qualities

Reuben F Johnson, Singapore - IHS Jane's Defence Weekly
18 February 2016

第五世代戦闘機の触れ込みだがT-50 PAK-FAは今のところ第五世代戦闘機として性能発揮できるシステムが搭載されておらず、今後の生産機材でも不明だ。Source: Sukhoi

ロッキード・マーティンのF-22ラプターがシンガポール航空ショーに出展され、同社はアジアにおけるF-35各型への将来需要を強調しているのはアジアでの第五世代戦闘機需要の強さを改めて浮き彫りにしている。
ロシアはこれまでスホイT-50 PAK-FAを第五世代戦闘機と呼んできたが、よく見ると同機は「名前だけ」の存在だとわかる。次世代戦闘機の条件はステルス形状の機体外観だけではないとロッキード・マーティン社関係者が述べている。
ロシア防衛関連シンクタンクはT-50はスホイSu-27/30「フランカー」各型を運用中のアジア各国が採用すると以前に予測していた。インドネシア、マレーシア、ヴぇ営む、中国がここに含まれる。だが中国はスホイ機の大口導入国だが今や国産で次世代機の成都J-20と瀋陽FC-31を開発中だ。
T-50事業に詳しいロシア専門家は同機がアジア市場で人気を博するのは難しいとみている。その理由として機内搭載システムで第五世代機にふさわしい機能がほとんどないことを上げ、一方で機体価格はSu-35「フランカーE」(中国、インドネシアが発注)より相当高くなる。
T-50が搭載するNIIP製イルビスレーダーおよびNPOサトゥルン製117Sエンジンは同機の主要サブシステムであり、Su-35にも搭載されている。またT-50とSu-35でエイビオニクスの相当部分が共通だ。T-50の量産型で搭載システムが一気に刷新されSu-35と差別化される可能性は低いと上記専門家はみている。■