2015年10月26日月曜日

★レーダー等を入れ替えたF-16Vは賢い選択になる



これは費用対効果が高い改修策ですね。レーダーその他を変えるだけでステルス性能を手に入れることができれば大きな効果が生まれるでしょう。台湾での運用が注目されますが、当然対岸の中国が目を光らせるでしょうね。一方、予算が足りなくて改修策を導入できない米空軍は悔しい思いでしょう。(捻出した予算はF-35に回されているようです)

New F-16V ‘Viper’ Makes First Flight

by BRENDAN MCGARRY on OCTOBER 23, 2015
ロッキード・マーティンのF-16最新型が初飛行に成功した。F-16V「ヴァイパー」と呼ぼれる。
  1. 初飛行は10月16日にテキサス州フォートワースで行い、第四世代機に分類されるF-16は第五世代機のF-22やF-35と同様の高性能レーダーを初めて搭載した
  2. F-16VはAPG-83アクティブ電子スキャンアレイ方式拡張可能機動ビームレーダー(ノースロップ・グラマン製)を搭載する。またF-22およびF-35が運用するアクティブ電子スキャンアレイレーダーも搭載する。
  3. 新型レーダーではビームを電子的に操作し機械的な可動部品を使わずに照射地点を変更できる。パッシブ方式レーダーと異なり、新型レーダーでは信号を周波数複数に分散させることにより探知妨害されにくくいので、実質的なステルス性を確保できる。
  4. APG-83搭載で第五世代機の空対空および空対地レーダー性能で火器管制が可能になったと同社は発表しており、既存F-16の大幅な性能向上が実現するとしている。
  5. F-16Vのエイビオニクスでは新型コックピット中央ディプレイ、新型ミッションコンピュータ、高性能イーサネットデータバスも採用していると同社は発表。
  6. ただし改修は米空軍向けを想定していない。空軍は1,000機以上のF-16を運用中だが、そのうち340機対象の改修事業を中止している。予算上の理由からで、捻出した資金を別の事業にまわしている。
  7. その中で実際にF-16Vを運用するのは台湾が最初となる見込みだ。
  8. 海外では3,000機超のF-16が供用中だが、機体改修事業をめぐってロッキード・マーティンは英国に本拠を置くBAEシステムズと激しい競争の渦中にある。
  9. このうち機齢15年超のおよそ1,000機がまず改修の対象になるとみられる。F-16が新型F-22やF-35と同等の性能を有することはないが、性能改修で対応するほうが新型第五世代機を導入するよりはるかに安上がりになる。■


2015年10月20日火曜日

ロッキードが地上レーザー装置を公開、米陸軍向け生産始まる


ここまで公表してきたということは秘密裏にもっと先をゆく技術開発が進んでいるということかもしれません。技術優位を重視する第三の相殺戦略の要にもなり戦闘機への搭載が実現すれば革命的な戦闘の変化を生むかもしれません。今後も注目すべきトピックだと思います。

Lockheed Shows Off Ground-Based Laser System

by BRENDAN MCGARRY on OCTOBER 15, 2015

Lockheed Martin's Athena laser weapon system defeats a truck target by disabling the engine, demonstrating its military effectiveness against enemy ground vehicles. (Photo courtesy Lockheed Martin)
ロッキード・マーティンのアセナAthena レーザー兵器システムが小型トラックを照射しエンジンを作動不能にしたことで、敵の陸上車両に対する軍事的活用の可能性を実証した。 (Photo courtesy Lockheed Martin)

ロッキード・マーティンは新型地上配備レーザー兵器をワシントンDCで公開した。
  1. 同社が米陸軍協会の年次総会で展示したのは30キロワット級高性能試験用高エネルギーアセット Advanced Test High Energy Asset。
  2. 光ファイバーレーザーは総会中多くの関心を惹きつけた。通称アセナとの同システムは陸軍用に最近生産が開始されており、来年にも戦闘地帯に導入される。
  3. 同兵器は小型ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾、小型無人機、、小型襲撃艇にも対応可能だと同社は説明。スペクトラムビーム合成と呼ぶ技術により複数のレーザーモジュールが一本の強力な光線を形成するという。
  4. ロッキードは今年早々にもこの技術で走行中のトラックエンジンを照射し焼き付かせることに成功していた。一マイル以上離れた地点から数秒照射したという。(写真参照)
  5. 「光ファイバーレーザーは指向性エネルギー兵器で革命を起こします」とロッキード・マーティンの科学主任ケオキ・ジャクソンはプレス向け発表で述べている。「今回のテストにより次の段階は軽量かつ堅牢なレーザー兵器体系として軍用機、ヘリコプター、艦船、トラックへの搭載を進めます」
  6. この技術は地域防衛弾薬対抗 Area Defense Anti-Munitions (ADAM) のレーザー兵器として小型の空中並びに海上標的を対象にし、加速レーザー実証事業 Accelerated Laser Demonstration Initiative (Aladin) の光ファイバーレーザーを利用していると同社は発表。
  7. 地上利用に加え、空軍及び海軍が機材にレーザー兵器を搭載する可能性に注目している。
  8. 今夏には空軍とペンタゴン研究部門Darpaが共同で150キロワット級電気レーザー(ジェネラルアトミックス製)の地上テストを開始した。これはロケット弾、迫撃砲弾、車両、地対空ミサイルを標的にホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ)で行っている。同プロジェクトは実証レーザー兵器システム(DLWS)と呼ばれ、Darpaの高エネルギー液体レーザー地域防衛システム(Hellads)を元にしている。.
  9. 9月にはブラドレー・ヘイソルド中将(空軍特殊作戦軍団司令官)が120キロワット級レーザー兵器を次世代AC-130Jゴーストライダー・ガンシップに2020年までに搭載したいと発言していた。一方、海軍は20キロワット級レーザーを揚陸輸送艦USSボンセに搭載し運用テストを昨年から実施中だ。■


2015年10月19日月曜日

★★米海軍>スーパーホーネットにあと10年頼らざるをえない苦しい事情



F-35開発配備の遅れが米海軍航空戦力にもしわ寄せを発生させています。F/A-XXが登場するのは早くて2020年代末と思われますので、当面米海軍はスーパーホーネットに頼らざるを得ないわけですね。前回のハドソン研究所の指摘のように任務特化した機材を本来整備するべきなのでしょうが、予算不足の中そうもいかず虎の子のスーパーホーネットを給油機に使うなど苦しいやりくりが当面続きそうです。

Boeing Offers New, Rebuilt, Upgraded Super Hornets To U.S. Navy

Oct 13, 2015 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

ボーイングは米海軍にF/A-18E/Fスーパーホーネットの生産を継続することで予想される戦闘爆撃機の機数不足を補う提案をしている。これは2030年代中頃以降となる新型機の配備までのつなぎ措置だ。
  1. スーパーホーネットの初期機体は2017年にも6千時間の設計寿命に達する。残る機材は年間40機ずつのペースで寿命に到達するが、海軍が導入するF-35Cは毎年20機程度想定でしかも実際の調達機数が予定より少なくなる可能性もある。
  2. このギャップを埋めるべく、ボーイングは供用年数が高いスーパーホーネットに寿命延長プログラム(SLEP)を実施し9,000時間まで上限を広げるべられないか機体点検をしている。だが海軍航空本部長マイク・シューメーカー中将は8月にSLEPだけで戦力を維持するのは「相当の難題」と発言している。新造のF/A-18がないと、再製済みホーネットが2030年までに戦闘爆撃機材の6割にまで上昇すると海軍の文書は解説している。業界筋によればSLEPでは十分ではないという。「確かに助けになるが、解決策ではない」
  3. そこで「全体的かつ統合された」解決策としてSLEP、新規生産、改修を組み合わせるボーイングでF/A-18E/F およびEA-18Gを統括するダン・ギリアン副社長はいう。
  4. ボーイングの構想はF-35Cの調達数が削減されない前提でスーパーホーネット生産を2020年代まで継続することだ。SLEPおよび新規生産で性能改修効果を空母部隊で発揮するチャンスが増える。一方で初期投資の見返り効果が増える。同社はもうAdvanced Super Hornetの名称こそ使っていないが、海軍に「ホーネット性能向上策」を提言しており、各種改修として機体一体型燃料タンク、エンジン改良やコックピットのワイドスクリーン化を提示している。
  5. 同社は生産ペースを減速中で月産2機になっているが現在の機体価格を維持できる。現在の受注分は2017年までラインを維持することが可能だが、議会は2016年度予算でスーパーホーネット12機分の追加予算を認めた。またスーパーホーネットの輸出商談も「順調に進んでいる」とギリアンは言う。別の業界筋によればクウェートと24から30機の商談があり、近くまとまる見込みだという。
  6. この受注でラインは2019年まで維持できるとギリアンは言う。ボーイングはデンマークでの採用を狙い、ベルギー、フィンランドでも入札の予定で、もしカナダが10月19日の国政選挙の結果次第では選定候補として同機に注目するのではと期待を示す。
  7. スーパーホーネットのSEPではボーイングは海軍とともに旧型のF/A-18A-D で遭遇した問題を回避できると期待する。海軍・海兵隊の旧型機の半分近くが「稼働不可能」状態にあり、海軍の機体整備施設(フロリダ州ジャクソンビルとサンディエゴ近郊のノースアイランド)にほぼ同数が保管されている。あるいはSLEPを待つ状態だ。
  8. 施設はSLEPで一時的に満員となるが、もともとSLEP実施は想定していない施設だとボーイングは指摘し、もう一つ大問題である腐食については機体ごとに状況がことなり、SLEPに持ち込んで初めて露呈することも多々あるという。その場合は施設から必要な部品を発注し、その間機体は部品到着を待つことになる。
  9. だがSLEP対象機数が多く、標準作業が1年間かかることを考えると機体寿命をのばすだけでは解決にならないことがわかる。海軍の整備構想では戦闘爆撃機を40飛行隊にし、10隻の空母に各4隊を配置する。だが戦闘機不足は現実の問題で、ボーイングによればこの問題が露呈していないのは空母が当面9隻になるからだ。新造USSジェラルド・R・フォードが次に就航するまではこの体制で、他の空母も通常より大修理保全期間を長く取っている。ただし空母部隊の規模が再び拡大傾向になれば、戦闘機不足は今より深刻になる。スーパーホーネットの追加調達により不足数を補ってきたが、根本的な解決策ではない。
  10. この問題が深刻になった原因がF-35共用打撃戦闘機開発が2010年に遅れ、海軍仕様のF-35Cでも遅延が表面化したためだ。2016年から20年にかけての調達数が16から20機減っている。また調達がピークになるのは2020年だが、12機しか導入しない。
  11. そこでF-35を増やして戦闘機ギャップを埋めるとF/A-18より調達費用が80%増え、運用コストも増加するとボーイングは説明しており、予算拡大ができない状況では政府が考える楽観的な数字は非現実的だとする。F-35Cの年間調達規模も12機が上限となる可能性があるが、想定では20機だ。シューメーカー中将も「予算により調達数が12から20機以内になる可能性がある」と認めている。
  12. 海軍航空戦力は他の海軍調達事業の犠牲になってきたと指摘する企業幹部がいる。海軍長官レイ・メイバスは建艦予算を確保しており、海兵隊もF-35Bおよびベル・ボーイングV-22調達を死守している。2016年度予算案では海兵隊以外の航空機は記録上最低の25機になっていた。議会がこの上乗せを認めている。
  13. これ以外の緩和策も提案されている。たとえば仮想体験含む訓練の多用、マジック・カーペット着艦誘導システムで着艦訓練を削減する等あるが、ボーイングの分析では問題の根本的解決策に直結しないという。■


2015年10月10日土曜日

★米海軍航空戦力のあるべき姿は・対中国作戦に空母の存在は不可欠だ ハドソン研究所報告書より



これまで米海軍が進めてきた艦載機の機種整理は誤りだったのでしょうか。ハドソン研究所の提言はここにポイントがあります。UCLASSはちっとも先に進まず、F-35Cは空母運用テストが始まっていますが、航続距離が足りないと海軍航空部隊の将来はなかなか多難なようです。ただ第六世代機が制空任務を専用に作られるというのが救いでしょうか。問題は予算確保でしょうね。

Carriers Crucial In War With China – But Air Wing Is All Wrong: Hudson

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on October 08, 2015 at 4:00 AM
The new carrier USS Ford is afloat but still unfinished.新造空母USSフォードは未完成
WASHINGTON: 予算を47億ドル超過したフォード級航空母艦への議会の風当たりが強い。今朝は下院シーパワー小委員会で委員長が保守派のハドソン研究所による報告書を発表する。内容は同級空母建造の必要性を訴えるものだが、同時に運用する航空機について棘のあるくだりもある。同報告書は現行の多用途機で航続距離を伸ばす提言に加え専用任務機を複数準備するよう求めており、UCLASS無人機でも各種の仕様を提言している。
  1. 原子力推進の超大型空母は他に代えがたいと報告書の共著者ブライアン・マグラスは記者に語り、フォードの設計は優秀と述べた。だが、「航空部隊では考えなおす必要がある。負けるわけに行かない戦争に勝つ、あるいは抑止するためには」
  2. あえて想定したくないのが中国との戦争だ。「気になるのはどう見ても当たり前で高レベルの議論が海軍から出てこないこと」トマグラスは言う。「そのためハドソン研究所の同僚とともに『われわれがかわりに言わなくては』と考えた」
  3. ランディ・フォーブス下院議員(シーパワー小委委員長)はこれまで中国の脅威に煮え切らない態度を取る行政府を批判してきた。フォーブス議員は議会による監督を真剣に考え、ブッシュ政権時には中国の諜報活動が問題だと認めるよう政府側を22分間に渡り、しつこく求めたことがある。
  4. フォーブスが自主的な検閲を懸念する際によく出てくるのが「非常に親しい個人的知己」の前作戦部長ジョナサン・グリナート提督だ。「海軍大学校で一人の若い士官が立ち上がり提督に真摯な質問をした。中国の挑戦をどう受け止めるのか、と」 フォーブス議員はヘリテージ財団で昨日この話をしている。「すると提督は中国を挑戦相手と認めること自体が許される範囲を超えていると答えている」
  5. 今日の空母の投入先はイスラム国との戦争だ。有志連合各国が陸上基地の使用を認めるまでの54日間に渡り、空母艦載機だけでイラク、シリアを空爆している。しかしこの用途にフォード級は必要ないとマグラスは断言する。
Fig 10 China-US
  1. 「第三世界の国の沖合に留まり一日12時間目標を叩くことのに129億ドルの空母は不要です」「129億ドルも支出する理由として一番合理性のあるのは中国です」(マグラス)
  2. この主張は国家安全保障の専門家には相入れにくい。社会通念では空母はアメリカの航空兵力を世界各地に投射する手段であり、あくまでも艦が沈められたり艦載機は撃墜されない前提だ。敵側に長距離精密誘導方式の対艦、対空母兵器があり、目標を捕捉するセンサーやネットワークがあれば、これは接近阻止領域拒否(A2/AD)となり、空母に別れを告げる日となる。
  3. ただし、この考え方は全くの間違いだとマグラスは言う。A2/ADの脅威で逆に空母の意義が増大するという。「空母が弱体化していうより、むしろ危ないのは第一列島線上の各航空基地でしょう」と言い、つまり中国の射程範囲内にある各地のことだ。「基地は時速40マイルで移動しませんよね」 長距離ミサイルの一斉発射があれば陸上配備の機体は空軍戦闘機のように基地で攻撃を受けやすい。そのため、「戦術航空機に必要な仕事をしてもらいたいのなら」 つまり敵の戦闘機を蹴散らし、友軍の爆撃機を援護するなどだが、「利用できる唯一の選択肢は航空母艦からの運用です」
  4. (ここまで踏み込むと空軍への批判となることはマグラスも認めており、だからこそ海軍はこの考え方を公表していないのだ)
Graphic courtesy of the office of Sen. McCain提供マケイン上院議員事務所

  1. 報告書も開戦初日に空母を東シナ海に進出させることは提言していない。逆に「直後に空母および水上艦艇はA2/ADで一番強い範囲外に後退させることになるでしょう」トマグラスは言う。「潜水艦も同行し、空軍の長距離爆撃機には長射程兵器を搭載し、敵のISR機能を排除することでリスクを減らし攻撃の機会となるポケットを作り出します」
  2. ここで「ポケット」と言っていることに注意が必要だ。A2/AD全部をダウンさせて空母を前進させ通常の警戒活動、艦載機の発進をする必要はない。代わりに報告書では「パルス」戦術を提唱している。別の部隊がA2/AD防衛体制に穴が開けば、空母数隻や護衛艦をそこに向かわせ、空爆部隊を発進させて、その場を立ち去る。報告書が言うようにこれは大規模なヒットアンドラン攻撃だ。

Bryan McGrathブライアン・マグラス
  1. この実施には海軍は新しい種類の訓練が必要だとマグラスは展開する。「記憶の範囲では海軍は複数の空母を同時に運用してきていません」 空母部隊は相互に運用し、目標も分けることがあるが、合同で航空部隊を同じ目標の攻撃に向かわせていない。
  2. 航空部隊こそ空母の攻撃手段であり報告書がもっとも力を入れている論点だ。最大の問題は航続距離の不足。空中給油を行えば、脆弱性の高い空軍給油機の助けを借りるが、F-18ホーネットがインド洋上の空母から発艦してアフガニスタンの目標を攻撃できる。ただし空中給油ができない可能性が高脅威度空域で想定され、「空母の有効攻撃射程は第二次大戦時と同等」とマグラスは指摘する。
  3. 空中給油がないとF-18ホーネットの実用攻撃範囲は空母から600マイルしかない。中国に対して到底足りない。中国の対艦ミサイルにはDF-21やDF-26があり射程は2,000から2,500マイルある。そのため「航空部隊が空母の弱点になる」とマグラスは言う。「航続距離が長い航空隊を編成できれば、空母はリスクが低い水域で活動できる」とし、遠距離で安全な地点からの攻撃が可能になるという。
  4. 将来の空母航空隊の中心と期待されるのがUCLASS(無人艦載航空偵察攻撃機)だ。UCLASSを長距離偵察任務に特化させ攻撃能力は二次的とする海軍案と長距離侵攻攻撃能力を重視し偵察を二次的とするフォーブス議員やジョン・マケイン上院議員の考えの間でしれつな意見対立が生まれている。マグラスは共著者とともに両方の機能が必要だと主張し、場合によってはUCLASSを二種類にすれば良いと考える。
  5. 「私は最も早くから攻撃能力を主体としたUCLASSを提唱してきました」とマグラスは言う。「偵察ならP-8ポセイドンやMQ-8Cトライトン別名BAMSがあります」 だが報告書を執筆する中でポセイドンやトライトンはステルス性がなく、機動性が欠け、脆弱な機体でA2/AD範囲で偵察活動を遠隔基地から行うのは無理だと気づいたという。そこで空母から運用可能で生存性が高い無人偵察機の重要度が高まる。
Lockheed Martin's UCLASS concept.ロッキード・マーティンのUCLASS構想図
  1. UCLASSが二型式になるだけではない。海軍は専用機材を排除してきた。S-3ヴァイキング対潜哨戒機、F-14トムキャット迎撃戦闘機は多用途戦闘爆撃機F-18に取って代わられ ゆくゆくはF-35も加わる。だがもう一度専用機を復活させるべきだと報告書は提言する。例えば次世代海軍戦闘機となるまだ概念上のF/A-XXは戦闘爆撃機ではなく生粋の制空戦闘機にする必要がある。
  2. UCLASS、F/A-XXならびに「制海」対潜哨戒機とそろうと相当の買い物リストになる。とくに予算削減の時代には目立つ。予算が潤沢だった時代でさえ、航空兵力の更新には十年単位の時間がかかった。だが空母体制の立て直しには長い時間がかかることはよく知られていることだ。■


★どうしてデラウェアに旧ソ連東欧製ジェット機群がいるのか



アメリカ人の趣味に対する熱意には感服しますね。それにしても冷戦終結でこういった機体を売りさばく商売が成立していたことがわかりますね。実際にそれを飛ばす人がアメリカ人というのも歴史の皮肉のような。さらにそれを維持管理するビジネスが成立するというのも驚きです。

Floggers, Fishbeds And Albatrosses In L'il Ol' Delaware

Oct 7, 2015by  Nigel Howarth in Ares

デラウェア州は全米で一番早く生まれた州と自慢するが、航空レースやロシア製軍用ジェット機となると話は別だ。
筆者は米国内でスホイSu-25フロッグフットの機体を追って記事にしたことがあり、今回は目立たない州でその仲間を発掘した。
ウィルミントンのニューキャッスル空港は大型ビジネスジェット機の本拠地であり、州空軍(C-130Hを運用)および州陸軍航空隊(UH-60)も基地を置く。

そこの名もないハンガー内にMiG機が常駐している。元チェコスロバキア空軍のMiG23フロッガー2機とMiG21 フィッシュベッド1機だ。
ここでは新品同様に見えるMiG23 (「05」の記号入)で塗装したてのような白地に青の閃光が入っているのが目を引く。飛行可能な状態だが、飛行コストが高くつくので飛行時間が足りない。それにMiG23を操縦できるパイロットも不足しているのだろう

大柄なソ連時代のフロッガーはマッハ2飛行が可能で、70年代80年代通じ数千機が生産された。排気口の大きさから同機の推力の大きさが推し量られよう
尾翼からはチェコ空軍時代が偲ばれるが、復刻作業を受けている。この機体がもはや飛行する機会はないと思われるが、現在でも運行中のMiG23は少数にすぎない。


MiG21フィッシュベッドは世界で最も多く生産された超音速戦闘機で数千機が各形式で作られた
ワルシャワ条約加盟国以外にも広く輸出され、特にインド、アフリカ、中東が多い。インドは今日でも多くを運用中で、東欧の空軍ではわずかしか残っていない。現在およそ1,600機が運用中でここには中国画生産した改良型も含む。
この機体も無傷の状態で、有名なリノ・エアレースに数回出場した機体だ。超音速性能を武器にぶっちぎりの勝利を収めたのではないか。

ここでは別の機体もある。Let 39 アルバトロスで、チェコ製の同機も数十年に渡り生産された数の型式があるが、39、59、159が有名だ。この機体も多数輸出されており、数千機が世界各地で売却されている。成功の理由として初等練習機、高等練習機、軽攻撃機と多様な任務を遂行したことがあげられよう。
現在は多数が民間所有にわたり、FAAでも250機近くが民間機登録されている。ただし、全機が飛行可能ではない。ここで写っている機体もリノレースに数回出場している。
ニューキャッスル空港の反対側にはレッド・イーグル・エイビオニクス社がソ連時代の機体の保守管理を専門に行なっており、Let 39は定期的に修理点検で訪れている。
訪問時にはたままた一機がサンダーバーズ塗装になってエプロン上に佇んでいた。

もう一機はチェコ空軍塗装仕様で機種にはロシア風にダミー数字が入っていた。

内部では旧スロバキア空軍機に注目。これも良い状態になっている。

Su-25フロッグフットに話しをもどすと、デラウェアの田園地帯に2機が残っている。所有者の一人はレッド・イーグルのオーナーでもある。その後、Su-25のオーナーからマニュアル各種を翻訳し終わり、まもなく飛行開始すると連絡してきた。今後の記事に注目されたい。
記事執筆にあたり、機体オーナー各位およびハンガー内スタッフ各位のご好意に感謝したい。
All photos by Nigel Howarth



2015年10月9日金曜日

★★オーストラリア向け潜水艦建造>日本側提案の概要が明らかになりました



行方が注目されるオーストラリアの次期潜水艦建造ですが、現地生産方式で日本が提案内容をまとめていることが判明しました。オーストラリア人材の養成も含めた総合的な内容のようでオーストラリア政府による公正な選考を期待しましょう。一方で、オーストラリア海軍の作戦構想では北半球のパトロールも視野に入っているようで、これは大型艦ならではの性能でいよいよ日本にとって有利な想定ではないでしょうか。

Japan Outlines Bid for Australia’s SEA1000 Future Submarine Program

By: Mike Yeo
October 8, 2015 11:52 AM
Undated photo of Japanese Maritime Self Defense Force submarine Soryu (SS-501)海上自衛隊の潜水艦そうりゅう(SS-501)

SYDNEY, AUSTRALIA — オーストラリアのSEA1000潜水艦建造計画で日本が提案内容の概略を示した。

  1. シドニーで開かれたPacific 2015 International Maritime Exposition展示会で三菱重工業、川崎造船の共同事業体および日本の防衛省から日本案が採択されれば、建造はオーストラリア国内で行い、日本から技術移転すると明らかにした。

  1. 防衛省関係者から日本側コンソーシアムは「オーストラリア国内でゼロから建造する」前提と述べた。このシナリオでは日本はアデレイドに訓練センターを設置し、300名ものオーストラリア技術者に関連事項を研修する。

  1. さらに実物大のモックアップを政府所有のオーストラリア潜水艦株式会社(ASC)内に設置し、オーストラリア作業員の研修に使う。研修期間は3年に渡り、一部は神戸で行う。

  1. ただし日本からは艦の一部を日本で建造し、残りをオーストラリアで生産するハイブリッド方式のほうが望ましいとの意見が出ている。この方式だと一号艦の引き渡しが早くでき、訓練用モックアップが不要になり長期的に見て費用を下げることが可能になるという。

  1. 日本が提案するのはそうりゅう改ディーゼル・エレクトリック推進艦でリチウムイオンバッテリーを搭載する。ただしオーストラリアから要望があればAIP方式も提供する。

  1. オーストラリア向けそうりゅう級にはオーストラリア国内開発の水力設計を取り入れ、戦闘指揮システムと新開発大型魚雷はオーストラリアが米国と共同開発する。

  1. ASCについて日本側からその機能を高く評価する声が出た一方で、世界でも最大級の通常型潜水艦建造が決まれば設備の更新も必要との指摘も出た。

  1. トラブル続きのSEA1000事業ではオーストラリア政府が不安定だったこと、要求性能水準が明確でなかったこと、安全保障の構図が変わったことがこの数年間発生し執行が滞っていた。

  1. 2009年度版国防白書は当時のケビン・ラッド首相のもとで12隻の潜水艦をASCで建造し、コリンズ級各艦と交代させるとしていた。

  1. ただし2013年までに追加検討がなされ、トニー・アボット首相のもとではASCを重視せず、特にコリンズ級でトラブルが続いたことから「ASCではカヌー1隻も作れない」とまで前国防相デイヴィッド・ジョンストンが発言する始末だった。

  1. アボットがそうりゅう級の設計を好んでいることは公然の秘密でオーストラリア独自の要求内容を実現させ、日本ですべて建造する想定で、競争入札の手順を取らないとの噂が流れていた。

  1. すると国内で政治的圧力が高まり、政府は逆コース選択を迫られた。2月には「競争的評価」をフランスのDCNS、ドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズと日本のコンソーシアムの間で行うと発表。この三社は最終提案内容をまとめており、提出期限の11月30日に間に合わせる。

  1. オーストラリアが求める潜水艦での独特の性能要求は南氷洋から熱帯地方までの広範な海洋環境を念頭にしている。また国内基地を遠く離れた展開を想定し、南シナ海や北太平洋までをパトロール範囲に想定しているのが特徴である。■


ブラックホーク他の換装エンジン開発競合始まる 規模は拡大するか



エンジン換装して長く使うということは現行の機材を使い回す、ということですね。回転翼機でも長寿命の機体が生まれるのでしょうか。UH-60系は広範に使われている機体のため、採用されれば大きな潜在的需要が見込まれそうですね。

Battle To Reengine UH-60 Black Hawk, AH-64 Apache Begins

Does a 20,000-engine market await the winner of the U.S. Army’s ITEP contest?
Oct 7, 2015 Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology

米陸軍向けの航空機用エンジン競作は直近が1985年でボーイングシコルスキーRAH-66コマンチ用だったが、結局同機開発はうまく行かなかった。
  1. その前は1971年でジェネラル・エレクトリックT700が多用途戦術輸送航空機事業へ採用が決まり、同機はシコルスキーのUH-60ブラックホークになった。T700は高性能攻撃ヘリコプター事業でも採用が決まり、これはボーイングAH-64アパッチになった。
  2. 米陸軍は新たに主力エンジンの競作を開始した。これは改良型タービンエンジン開発事業(ITEP)として3,000-shp級のターボシャフトエンジンを開発するのが目標だ。ペンタゴン最大のエンジン開発事業となり、陸軍は2024年から合計6,215基を調達し、AH-64E,UH-60M,HH-60Mのエンジン換装を目論む。
  3. だが事業規模は遥かに大きくなるだろう。GEは11月に通算2万基目のエンジンを納入し、T700および民間向けCT7として25種類もの回転翼機、固定翼機に提供している。ITEPでも米空軍のHH-60Mや海軍のMH-60でもエンジン換装が実現するかもしれない。また他の機種でも可能性がある他、構想中の次世代垂直輸送回転翼機事業でも採用になるかもしれない。
  4. T700も今回のITEPが目論むのと同様の過程で生まれたが、遥かに短期間で実現している。GEとプラットアンドホイットニーが契約を1967年に交付され、1,500軸馬力級のエンジンの実証を行った。GE12が1969年に登場し、プラットのST9より優れ、ライカミングのPLT27にも1971年に勝利を収めている。そしてT700の登場が1973年で、ブラックホークは1974年に、アパッチは1975年にそれぞれ初飛行している。T700が実際に投入されたのは1979年だった。
  5. プラットはライカミングと組んで再度コマンチのエンジンとして採用を狙ったが、RAH-66は2004年に打ち切りとなり、エンジンはCTS800として現在も生産されている。
  6. この結果、プラット・アンド・ホイットニーは回転翼機市場から撤退し、カナダの関係会社を通じ例外的に供給しているだけだ。プラットはハネウェルと高性能タービンエンジン製造株式会社(ATEC)を通じ連携している。陸軍はGE単独入札は避けたく、他のメーカー参加を希望するが、ロールスロイスは参加の意向なく、フランスのチュルボメカは回答を避けている。.
  7. ITEPの準備段階の位置づけで陸軍の高性能経済価格タービンエンジン(AATE)事業としてGEとATECがともに2008年に契約交付を受け、3,000軸馬力級エンジンで出力は50%増、燃料消費はT700比で25%低いエンジン開発を進めている。このGE3000とATECのHPW3000地上実証エンジンは2013年に運転を行っており、AATEは2014年に終了している。
  8. 期間2年でITEP初期設計段階の提案要求が9月24日に発表された。契約交付は2016年9月予定で陸軍は初期設計審査用のエンジン2基分の予算を確保しており、その後一基に絞込みを2018年度に行ったあと、技術生産開発段階に移ると目論む。
  9. 初回エンジンテストは2021年予定で、初期低率生産が始まるのは2024年第3四半期となるが、エンジン換装したアパッチ、ブラックホークの初期作戦能力獲得は2027年以降になり、AATEが開始となってからほぼ20年後となる。
  10. T700開発・配備時のスピードとは対照的だが、ITEPで想定する技術課題のレベルが高いのが理由と陸軍は説明する。AATEでは出力とともに効率面でも目標達成が可能と証明する必要があったが、これを高い信頼性かつ予算内でしかもT700と同様の生産規模でできるのかはすでに実証済みであるとカート・キューテマイヤー中佐(陸軍ITEP主幹)は述べる。
  11. ITEPが目指す性能水準はAATEとは異なるが似ていると中佐は語る。RFPでは高度 6,000 ft.で最高出力1,850 shpとし華氏95度の昼間で空気密度が高い条件を想定すると目標は最低でも2,050 shpになる。乾燥重量の目標値は 465 lb未満で出力の目標値と異物分離器の採用も想定する。ITEPでは航続距離の延長、高温高高度性能、到達時間の短縮をUH-60およびAH-64で狙う。
  12. このため、遠心式圧縮機を2基備えた二重スプール方式で必要な性能を実現するとATECは見ている。GEはそこまで複雑ではなく、単スプール式エンジンとして、T700の軸方向遠心圧縮機方式とする。相当のレベルの競作となるとみられる中で、GEは圧縮機、セラミックマトリックス複合材料、タービン技術で陸軍の5,000-10,000-shp級低価格タービンエンジン用に制作した実証エンジンの経験をITEP提案内容で「関連する分だけ」応用するとしている。■

ロシアのミサイル攻撃を米海軍協会はこう分析している



米海軍協会は投入された艦艇の情報がさすがに詳しい。心情的な反応ではなく、技術的な情報が豊かですので対照的ですね。しかしクルド人勢力もビデオを自由に扱い、ネットに投稿する時代なのですね。

Kurdish Video Lends Credibility to Russian Navy Caspian Sea Strike Mission Claims

By: Sam LaGrone
October 7, 2015 4:29 PM

Undated photo of Russian Navy guided missile frigate Dagestan firing UKSK Shot.
日付不詳、ロシア海軍誘導ミサイルフリゲート艦ダゲスタンがUKSAによるミサイル発射をしている

4隻のロシア戦闘艦がカスピ海から合計26発の誘導巡航ミサイルをイラン、イラクを通過する形で発射し、シリア国内のISIS目標を900マイル以上離れた地点から攻撃したとロシアが主張している。

  1. 裏付ける証拠がISISと戦うクルド人ペシュメルガ勢力から出てきた。ツィッター上で誘導巡航ミサイルがクルド人部隊の野営地上空を飛行する映像を公開したのだ。

  1. 水曜日発表のにロシア国防省声明によればブヤン-M級海防艦(1,000トン)3隻と2,000トンの誘導ミサイルフリゲート艦ダゲスタンがSS-N-30A巡航ミサイルを発射し、「弾薬製造工場、指揮所、弾薬貯蔵設備、戦闘員訓練所をラカ、イドリブ、アレッポの各地で」目標にしたという。

  1. ペルシェメルガ発表の動画では亜音速巡航ミサイル二本がSS-N-30Aの特徴のまま飛来する様子が見られる。

  1. ロシア外務省からも独自に編集した動画が公表されており、ミサイルを発射する艦船、ミサイルがシリア中央部に飛来する経路とともに亜音速SS-N-30AあるいはカリブルNKまたは3M-14Tと呼称されるミサイルを示している。

  1. 国防長官官房(OSD)の関係者および米中央軍からはロシアの主張への確認ならびに独自の軌跡結果はまだ発表されていない。

  1. ミサイルが飛行した距離がロシアの言うとおりなら、イラン、イラク、シリアの領空内を通過して移動している。

  1. 多数のミサイルが自国の領空内を通過すれば該当国の防空体制が無用な反応をしないよう事前準備する必要があると指摘するのはブライアン・クラーク(前海軍作戦部長付特別補佐官、現戦略予算分析センター(CSBA)の主任研究員)だ。

  1. 「本当なら各国間の調整能力が相当前進して戦域大で作戦を調整できる様になったことを示すものです。これまでは実現できていませんでした」とクラークは USNI News に語った。

  1. 事実だと確認できれば、ロシアには遠隔地から攻撃能力があることになるとエリック・ワーサイム(米海軍協会編世界の戦闘艦艇の編者)も USNI News に語った。

Buyan M guided missile corvette.
ブヤンM誘導ミサイル海防艦


  1. ロシアが有効射程と威力の点でレイセオンのトマホーク陸上攻撃ミサイル(TLAM)に匹敵する兵器を有している事実は「世界各国が技術面で差を縮めてきた」ことのあらわれだとワーサイムは指摘。

  1. 前方配備中の航空機なら簡単に攻撃できたのに、今回ミサイルを投入したことに意味があると見るのはスティーブン・ホーレル(米海軍から大西洋協議会へ派遣の主任研究員)で USNI News にこう語っている。

  1. 「戦術的な意味と関係なく、明らかに米国およびNATOにメッセージを送っている」「またトルコには領空・国境線侵害をめぐり緊張が高まっており別の意味がある」


  1. ブヤンM級の海防艦やダゲスタンは新型の水上艦艇としてロシア艦隊に編入されており、UKSK垂直発射方式で長距離巡航ミサイルを発射できる。黒海配備の水上艦では近代的装備の運用は不可能だ。ロシアが同部隊の近代化をしないと決めているためだ。

  1. ただしロシア海軍は巡航ミサイルを装備した艦艇を拡充している。

  1. 「カスピ海に加え、黒海にも改キロ級潜水艦ノボロシスクが同様の能力を有して先月配備されバルチック艦隊にも新型フリゲート艦が編入されている」とホーレルが言う。■


2015年10月8日木曜日

シリア>ロシアのミサイル攻撃への米側反応①


ロシアによる巡航ミサイル攻撃の実施には今後も多くの評論分析が出てくると思いますが、まず以下の記事をご紹介します。若干感情的になっている感じもしますが、今後も関連記事で意味のあるものを随時ご紹介してきます。

Experts: Russian navy missile strikes were 'bravado'

By Andrew Tilghman, Staff writer3:44 p.m. EDT October 7, 2015
Russian missile launch(Photo: Screen image via YouTube)
ロシアがシリア国内の目標を1,000マイル以上離れた地点から攻撃したが、艦載長距離巡航ミサイルの投入は軍事的に米国を愚弄する行いだと米専門家は見る。
  1. 「虚勢を見せつける行為です。見えを張っているのです」と話すのはクリストファー・ハーマー退役海軍士官で戦争研究所(ワシントン)で海軍アナリストをしている。
  2. ロシアは26発のミサイル攻撃をシリア反乱勢力に加え、武力投射として初の試みとして艦載超音速「クルブ」ミサイルを投入した。これは米国製トマホークとほぼ同様の性能で「空母キラー」の名前で呼ばれる。
  3. ロシア軍はシリア国内で前方配備中の航空機を使えば同じ目標を簡単に攻撃できたはずだ。.だが今回の攻撃はロシアが初めて海軍の艦対地長距離ミサイルを使ったことに意味があるとハーマーは見る。
  4. 「これまでもロシアが紙の上では戦力を有していることが判明していました。実際に戦闘に投入して威力を示すのは全く違う話です」(ハーマー)
  5. ペンタゴン報道官ジェフ・デイビス海軍大佐からは7日にロシアから米側上層部へはミサイル攻撃の事前連絡はなかったと明らかにした。攻撃対象の反乱勢力はシリア大統領バシャアル・アサドに対抗して戦っており、ロシアはアサドを同盟と捉えている。
  6. 今回の攻撃はロシア海軍の能力を示したばかりか反米同盟関係が中等に生まれつつあることも如実に示している。
  7. ミサイルの飛行経路はイラン、イラクの北部空域を通過し、両国政府にはあらかじめ防空対応は不要との了解を得ていた可能性が高い。
  8. 「またもやイラン・イラク同盟がロシアとつるむ状況を目の前にしました」と語るのはスティーブン・ブランク(アメリカン外交協議会でロシア専門家)だ。「連中は合衆国が中東で行うこと全てに反対の立場です」
  9. 米軍機はシリア上空を毎日飛行しており、ISに対する空爆を実施しているが、ロシアの空爆が9月26日に始まると米軍の作戦にも影響がでできた。米ロは現在のところ意思疎通の手段を有しておらず、空域での衝突回避の手段がなく、偶発事故や武力衝突のリスク低減で手段がない。
  10. 「わが方は航空機の投入数を減らさざるを得なかった」とデイビス報道官は述べた。「安全な飛行を確保する対策を取っている」.
  11. 国防長官アシュ・カーターはロシアが弱体化するアサド政権のテコ入れで軍事行動を展開することに反対と発言している。「わがほうは戦略面で協力する準備ができていない。戦略はロシアにより悲劇的に狂ってきた」と訪問先のローマで7日に述べている。
  12. ただし長官は基本レベルでの調整については可能性を残している。「今後も基本的な技術協議を続け、わが方のパイロットがシリア上空で事故を回避できるようにする」とし、「チャンネルは開けておく。なぜならこれは安全保障の問題であり、パイロットの安全の問題だからだ」
  13. そこで今回のロシア海軍による攻撃はロシアのシリア作戦が一段階拡大していることを示しているとブランクは指摘する。
  14. ロシア軍用機はシリア国内の空爆を開始したが、米国の抗議は無視した形だ。ロシアは同時にロシア兵から「義勇部隊」を募り、シリアの地上戦に投入する構えを示した。
  15. 「これはロシアに武力投射能力があることを示すものです」(ブランク)「尊大さと自己顕示が多大に見られます。プーチンが横柄になっているのでしょう。『お前たちは弱いがこっちは強いぞ。こんなこと朝めし前に実行できるが、お前たちには止められないぞ』ってね」■

シリア>ロシア海軍がカスピ海から巡航ミサイル攻撃を実施


先にお伝えした東地中海に展開中のロシア黒海艦体は旧式艦だらけですが、今回はあえてカスピ海から遠距離攻撃を実施したロシアの狙いはずばり力の誇示でしょう。どれだけの効果があったのかは不明ですが、今後も継続使用すれば相当の効果を上げてくるでしょうね。巡航ミサイル技術でも相当の追い上げが出ていることの証拠で、ますますペンタゴンは三番目の相殺を技術開発面で進めていくのではないでしょうか。

Russian Warships Launch Missiles into Syria: Report

by BRENDAN MCGARRY on OCTOBER 7, 2015

(Photo RT / YouTube / Russian Defence Ministry)
ロシア海軍艦艇から20発以上の巡航ミサイルがシリア国内に向け発射された
ロシア海軍艦艇4隻がカスピ海から26発の巡航ミサイルをISIS関連とみられる11箇所の目標に発射した。ロシア報道機関RTが10月7日報道している。
ロシア国防相セルゲイ・ショイグが「誘導データによればすべての目標の破壊に成功している。民間人の被害は発生していない」と発言しているという。
報道で言及された艦船はゲパード級フリゲート艦ダゲスタン、ブヤンM級海防艦グラド・スヴィヤツク、ウグリッチ、ヴェリキ・ウスチュグの各艦。それぞれカリブル-NKの発射装置を搭載し、最大1,550マイル(2,500キロメートル)までを射程に収める。
ミサイルはラッカ、イドリブ、アレッポ各地方のISIS目標に命中したと言われる。
この攻撃任務はシリア国内を飛行するロシア軍機から容易に行えたはずなのに、あえて巡航ミサイルによる攻撃にしたことはおそらくロシア海軍の実力を示威することが目的だったのではないか。しかも実施には小型艦を用いている。■