2016年4月19日火曜日

★F-35A を2040年代まで戦力として残すために米空軍がしていること



Air Force F-35 Trains Against Russian, Chinese Air Defenses

KRIS OSBORN
03/31/2016


米空軍はF-35に2030年から2040年代になっても敵防空体制に有効にさせたいとしている。
新しい脅威に対応させる
  1. 空軍が航空演習およびコンピュータシミュレーションで戦闘ミッションを繰り返し、中国あるいはロシアの防空技術に対する有効性を試すのは、2020年代以降を想定した準備の一環である。テストではロシア製防空装備など現時点で最先端の防空体制を前提に、次世代の開発中装備も想定している。
  2. 2001年時点で空軍はJSFの脅威対象はロシア製SA-10やSA-20が中心だとしていたが、現在はロシアに加え、中国製ならびにアジア発の脅威対象も視野に入れている。
  3. 「デジタル式SAMが出現し、途中で周波数を変更し、機動性すぐれた地対空ミサイルがあたりまえになる」とジェフリー・ハリガン中将(F-35統合室長)は取材で答えている。
  4. 新型装備で数百マイル先で探知できるものがあらわれ厄介な存在になってきた。さらに高速コンピュータを使用し、ネットワーク機能も充実してくると多様な周波数を使用した統合防空体制が出現してくるだろう。遠距離での機体探知能力と組み合わせ防空体制が大幅に向上し、ステルス機といえども安閑としていられなくなる。
  5. 空軍が想定する有事は中国やロシアといったほぼ同水準の戦力を有する国が相手だが、ハリガン中将は中国やロシアから防空装備を購入した国との対決の方をより憂慮していると語った。中将のいわんとするのはいかなる事態にも準備すべきということだ。
  6. ハリガン中将はさらにF-35には「オープンアーキテクチャア」が装備されており、新兵器を迅速に取り入れ、ソフトウェアやエイビオニクス技術も敵の脅威に対応できると説明。
  7. 「この機体を導入する理由の一つに脅威対象の進化があり、どんな環境でも残存性を確保しなければなりませんし、こちらの接近を阻止しようと敵も能力を引き上げていきます。この機体は敵地に侵入し、兵器を投下し、情報を味方に共有する能力があるんです」
  8. 最高水準の敵防空網を想定した演習をハリガン中将は「オープンエア」演習と呼ぶが、ハイエンドかつハイテクで急速に開発が進む将来の脅威対象を想定している。ここでモデリングとシミュレーションが大きな意味を持ってくると中将は述べた。
  9. 「モデリングとシミュレーションで機動性を最大限に試しています。実際の演習空域では予想される脅威への対応を試しています。敵の開発ペースを考えると、対応の難易度は高くなっていくでしょう」
  10. 空軍は次世代の敵防空体制装備の実例をウェポンスクールに2018年から導入する。
  11. シミュレーションではラングレー空軍基地(ヴァージニア州)に配備した機体はネリス基地(ネヴァダ州)の機材と戦闘シナリオで訓練する。
  12. JSFが搭載するアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーで合成開口像を空中、地上のいずれでも利用可能となる。AESAは同時に電子攻撃能力も実現するとハリガンは説明した。
搭載ソフトウェアの現状と展望
  1. 今後のF-35近代化改修ではソフトウェアを脅威内容に合わせて更改していく。AESAレーダー、電子攻撃能力、電子防御やコンピュータ処理能力の性能を引き上げていくとハリガン中将は述べた。
  2. JSFは最高速度マッハ1.6で、F-15やF-16と同等の操縦性をもちながら各種の装備と戦力を実現する。
  3. 米空軍はF-35Aを1,763機調達すると戦闘機機材の大部分は同機になる。現時点で空軍が供用中のF-35Aは83機だ。
  4. JSFの戦闘能力を握るのがソフトウェアの増加改訂「ドロップス」で機体能力を都度引き上げていく存在だ。JSFのコンピュータコードは10百万行を超える規模になっている。
  5. 空軍はF-35に最新のソフトウェアドロップの3Fを搭載して作戦能力の獲得を宣言する予定だが、すでに四番目のドロップで作業が始まっており、2020年ないし2021年にこれが利用可能となる予定だ。彼杵、機体には二年おきに最新のソフトウェアドロップが搭載され、敵の脅威に対する有効性を維持する。
  6. ブロックIVソフトウェアの最初の部分の予算は12百万ドルで2014年度予算で確保済みと空軍は説明している。
搭載兵装では
  1. ブロックIVでは英国製、トルコ製の兵装対応が可能となり、その他ヨーロッパ製武装の搭載が希望通り実現できるようになる。
  2. ブロックIVでは運用できる兵装の性能が上がり2020年代から2040年代にかけて敵の防空システムに対抗できる見込みだ。具体的には小口径爆弾II型およびGBU-54ともに空中投下型爆弾の運用が可能となる。このうち小後継爆弾II型は「三モード」方式のシーカーを搭載し、赤外線、ミリ波、レーザー誘導のいずれも利用する。各種センサーを併用することで移動目標を追尾し破壊することが全天候で可能となる。第四世代のソフトウェアはこれまでのソフト資産を元に発展させていく。
  3. ブロック2Bでは高性能模擬攻撃弾、データリンク性能、早期センサー統合機能でブロック2Aの延長線上の進化を遂げる。またブロック2Bでは近接航空支援任務の基本が可能となり、AMRAAM高性能中距離空対空ミサイル、JDAM共用直接攻撃弾、GBU-12レーザー誘導爆弾の運用が可能となる。.
  4. ブロック2Bに続くブロック3iで戦闘能力はさらに引き上げられr、ブロック3Fは敵防空網の制圧能力が大幅に上がる。
  5. ブロック3Fでは兵装運用能力が上がり、小口径爆弾、500ポンドJDAM、AIM 9X短距離空対空ミサイルの利用ができるという説明だ。
  6. 実際にF-35でAIM-9Xサイドワインダー赤外線誘導空対空ミサイルの試射を最近開始したおペンタゴン関係者が明らかにした。このF-35はエドワーズ空軍基地(カリフォーニア州)を離陸後、ミサイルを高度6,000フィートで発射したと空軍は公表している。
  7. 今後の開発の方向性を示すものとしてF-35では機体前方や視界内にいない敵機も捕捉撃破する「照準外」 “off-boresight”攻撃能力の開発が期待される。
  8. AIM-9Xでは高機動性の推力方向偏向可能な設計で、照準外攻撃能力をパイロットがヘルメットから広い範囲で実現可能となる。
25mmガトリング機関銃
  1. また昨年秋にはF-35左翼搭載の25mmガトリング銃で初の空中発射を行っている。
  2. 「F-35A搭載の25mm銃で飛行中発射機能のテストとして初の快挙となった」とペンタゴンは発表している。
  3. ガトリング銃により空対空にあわせ近接航空支援任務にも投入できるようになりF-35の多用途戦闘機としての価値があがる。
  4. 同装備は航空機搭載機関銃GAU-22/Aと呼ばれ、同機のステルス性能を損なわない工夫がされている。銃身四本の25mm銃は高速発射で敵を簡単に撃破できる。発射速度は毎分換算3,300発だとメーカーのジェネラルダイナミックスは説明している。
  5. 「一回30発を三回あるいは60発発射を二回実施しており、通常は銃を内部にしまいレーダー弾面積を低くし、引き金を引く段階で外部に出す」とペンタゴンの説明文書は述べている。
  6. 第一段階の試射では延べ13回の地上発射を三か月で行い、機体との整合性を確かめている。最終的には各種の飛行条件や機体装備の組み合わせでも銃の運用に問題がないことを確認する。
  7. 新型機関銃はF-35のソフトウェアでもサポートし、パイロットはヘルメット搭載のディスプレイで射撃できるようになる。この銃の運用は2017年までに始まる。■A


今年のRIMPAC演習でも中国を招へいするとカーター長官が発言


中国をリムパックに引き続機招待することには保守派からの反対があるでしょうが、カーター長官はもう少し広い視野でものを見ているようです。問題はこのような広い心の米国の真意をどこまで中国が理解するかでしょうね。前回は別途スパイ船まで派遣し西側が驚かされましたが、長い視点ではとんでもない行動をしている中国も次第に『常識』の範囲内に落ち着いてくるのではないでしょうか。そのとき初めてアジア太平洋は平和と繁栄を享受できるようになるでしょうね。まず共通の常識が有効に働く海軍の世界で価値観を共有してもらいたいものです。
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SECDEF Carter: China Still Invited to RIMPAC 2016 Despite South China Sea Tension

By: Megan Eckstein
April 18, 2016 3:36 PM


今年のRIMPAC演習について米国は中国を招へいする方針に変わりなしとアシュ・カーター国防長官が4月15日空母USSジョン・C・ステニス(CVN-74)艦上で述べた。乗組員との懇談でカーター長官は「南シナ海での中国の行動は猜疑心を招き、域内の緊張を高めている」と発言したにもかかわらず、RIMPACへ中国を招待することには意義があると述べた。
  1. 乗員との一問一答で長官へ「無作法」をしている中国がなぜ演習参加を許されるのかとの質問が出た。「許す、というのは正しい表現だ。招へいするのは当方で取り消しの手続きはとっていないからね」と長官は説明。
  2. 「では背後にある考え方を説明しよう。米国は同地域での安全保障の基本方針では常に各国を巻き込むことに主眼を置いている。そのため従来からの同盟国との協調に加えて新規参加国のインドやヴィエトナムのようにこれまで一緒に動いた経験のない国、フィリピンのように中国の存在を気にする国、すべて歓迎する。そこでもし中国が参加を希望すれば、参加させるのが良いと考える。孤立させ仲間はずれにするよりも協力関係の一部になってもらう方がよい。これだからこそアジアの奇跡が成立する」
  3. 米国が中国をRIMPACへ招待したのは2014年が初で、中国は参加対象の戦闘艦、補給艦計4隻以外に情報収集艦一隻を米領海の外縁部に配置し電子通信情報を収集していた。中国はこの艦を演習海域付近に派遣したのは中国の主権の一部としていた。
  4. 中国人民解放軍海軍 (PLAN) は前回の演習中に2016年度演習に招へいを受けており、現在も有効だが、中国が南シナ海で声高に主張をし軍事強化も図っているのは事実と長官は認めた。
People's Republic of China, People's Liberation Army (Navy) frigate PLA(N) Yueyang (FF 575) steams in formation with 42 other ships and submarines representing 15 international partner nations during Rim of the Pacific (RIMPAC) Exercise 2014. US Navy photo.
PLANのフリゲート艦 Yueyang 岳陽 (FF 575)は環太平洋海軍演習
RIMPAC 2014で15カ国42隻の各国艦船に加わった。 US Navy photo.

  1. ただし前回の演習後、南シナ海では緊張が高まった。PLAN艦船がヴィエトナム漁船をヴィエトナム領海内で脅かすとの報道が数回あり、中国沿岸警備隊のカッターが中国籍漁船に体当たりしてきた事件もあった。この漁船はインドネシア領海内で同国当局が差し押さえたものだった。また中国はサンゴ礁上に航空機運用、艦船寄港が可能な軍事施設を構築している。
  2. 中国はウッディ島で対艦巡航ミサイルを持ち込んだのをはじめ軍事装備展開の事実を認めているがあくまでも自衛用装備だと主張している。
  3. 別の質問では中国によるサイバー攻撃で米国政府としての防御態勢が尋ねられた。
  4. 「サイバーで不正行為をしているのは中国含め数か国ある。ただし一定の前進があったのは事実で、米中首脳の会談で活動中止の合意ができ現在は遵守状況を監視中だ」と長官は2015年9月のオバマ-習会談に言及した。
  5. 「こちら側のネットワーク防衛に努力するが、弱点に攻撃を仕掛ける相手はいつもいる」と長官はサイバー犯罪の恐ろしさに触れ、国防総省として戦闘遂行に必要なネットワークの防御に相当の努力をしていると付け加えた。
  6. 「悪意あるいたずらや秘密を盗もうとする企業もあるが、被害を与えようとする勢力もあるのは事実で、一部政府には損害を発生させる能力がある」と長官は述べている。
  7. 「相手がだれであれ、防御が必要だ。またこちらを攻撃すれば必ず反撃すると知らせる必要がある。反撃はサイバーとは限らず、こちらが自由に選択する。攻撃してきた側は必ず後悔することになる」■

2016年4月18日月曜日

★フィリピンにA-10など米空軍の駐留が復活



これも中国の無茶な動きが招いた事態でしょう。フィリピンの軍事力は実質上これから整備すべき内容ですから、少数とはいえ、実践能力の高い米軍機材が駐留するのは大変心強いことでしょう。ではクラーク、スービック両基地からの撤退を求めた90年代初頭の感情的な国内世論はなんだったのか。日本にとっても他山の石とすべき事例ですね。
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Carter Hails 'Ironclad' Relationship With the Philippines

By Lisa Ferdinando DoD News, Defense Media Activity

WASHINGTON, April 15, 2016 — 米国はフィリピンとの「鉄壁の」関係を段階を追って強化していく、とアシュ・カーター国防長官がマニラで述べた。
  1. その段階として高度防衛協力合意(EDCA)とともに米海洋安全保障構想の始動があるとカーター長官はフィリピン国防長官ヴォルテール・ガズミンとの会談で明らかにした。
  2. アジア太平洋で変化しつつある状況に中国の南シナ海での活動があると長官は指摘し、域内各国の緊張と憂慮のまととなっている。
  3. 米比同盟関係は成熟度を上げつつ、危機の度に真価を試され、両国は価値観と権益を共有し犠牲も払ってきたと長官は発言。
  4. カーター長官のフィリピン公式訪問では米国によるアジア太平洋への再バランスが焦点になった。前日には大統領ベニグノ・アキノ三世とマラカニアン宮殿で会談した。
  5. 米国はフィリピンと共同軍事演習を先月から展開中で、南シナ海でのパトロールではフィリピン海軍との共同作戦実施体制が整備されつつあり、引き続き同海上での安全の確保に貢献していくと長官は発言している。
  6. パトロール活動に加え、米比で合意した高度防衛協力協定EDCAの一部として共同演習の終了後も米空軍は機材人員をフィリピンへローテーション配備することになった。これをカーター長官は演習の閉幕式で発表した。
  7. 米軍部隊はフィリピン政府が招へいする形で、今後も軍事演習に参加し、フィリピン国軍の近代化を支援する。「ローテーション配備で両国部隊の共同作戦体制が強化され、人災天災問わず危機事態発生の際も迅速に対応できる」と長官は述べている。
  8. カーター長官からは第一陣としてA-10サンダーボルトIIを10機、HH-60Gぺイヴホークヘリコプター3機、MC-130Hコンバットタロン1機を配備するとの発表があった。
  9. 長官は空軍要員200名が駐留し、南シナ海含む航空作戦を展開し、共同航空哨戒の基礎を作り、海洋の哨戒活動を補完すると述べた。
  10. さらに米軍部隊の指揮命令機能が後方に準備されるとカーター長官は述べ米比共同での指揮命令司令部機能や支援機能が強化されると述べた。
  11. 「各段階を通じ両国の同盟関係はさらに強化される。米国のフィリピン防衛への姿勢に変更がないことを示し、平和と安定がこの地域の各国の発展と繁栄をもたらした背景であることを堅持する」
  12. 国防総省は五年間で425百万ドルを投じフィリピンはじめ各国の情報共有能力の向上、脅威の探知能力とともに海上防衛を共同で実施する能力を引き上げていく。■


★中国軍部に核ミサイル即時発射を求める動きあり要注意



中国が核ミサイルを日本含む目標に照準を合わせ準備していることを忘れてはいけません。また米ロより戦略核兵器の運用で経験の足りない中国がいきなりこのような政策変更をして来たら大きな影響が出ます。実は北朝鮮よりも危険な要因になることをどうして認識しないのでしょうか。よく意義がわからなかった核の安全サミットですが、残念ながら先の見えてるオバマ政権が中国の政策変更を思いとどまらせた兆候はなく、このままだと危険度が高まりそうですね。
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China’s Military Wants to Put Its Nukes on a Hair Trigger

MARCH 31, 2016 BY GREGORY KULACKI

核の安全保障サミットでワシントンDCに乗り込んできた習近平主席だが実は危険な政策変更を検討していた。中国軍部は核ミサイルの警戒態勢を高め攻撃を受ければ即発射できるよう求めている。バラク・オバマ大統領は習主席にこの方針を変更させるべきである。なぜならこのままだと偶発的にあるいは誤解から中国がミサイルを米国や同盟国に撃ち込む事態が発生するからだ。

  1. これまで中国の政治指導層は核攻撃を受けてもまず待って事態を把握する忍耐力を重視し、報復はその後に行えばよいとしてきた。この戦略上の忍耐力は責任感に裏付けされた自信でありこれがあってこそ米国含む外敵の核先制攻撃を予防できるとしてきた。
  2. しかし現在の最高司令官は従来と異なるタイプの指導者である。習は事を急いでいるように見え、中国軍には戦闘に備え勝利を収めるよう求めている。戦争予防だけでは満足しない。
  3. 中国の軍事戦略思想家は核装備を高度の警戒態勢におくべきとすでに三年前に主張していた。その文言はぎこちないが意味するところは明快だ。.
  4. 条件が整えば、また必要が生じれば、敵が核ミサイルを我が国に発射すした場合には目標に弾頭が到達して核爆発が発生する前に、核による被害が発生する前に、迅速に報復の核ミサイルを発射すべきである
  5. この主張をした戦略思想家は米国の先制核攻撃あるいは通常兵器攻撃で中国の保有する150発の核ミサイルが無効にならないよう防御が必要だとする。中国の液体燃料方式ICBMは位置が判明ずみのサイロに収容されており、発射には時間がかかる。中国軍には移動式液体燃料ICBMもあるが、機動性があるといっても以前より残存性が劣化しているとの危惧がある。これは米軍の偵察能力を考慮してのことだ。大型の単一弾頭から小型複数弾頭に変更するなど改善が進んでいるが、戦略思想家はこういった改良だけでは報復能力が保証されないと危惧する。
  6. 中国の技術陣は米国の弾道ミサイル防衛体制が本領を発揮できる状態ではないことが理解されており、今後もその状態に変わりはないとみている。しかし戦略思想家は技術者ではない。米政府が肝心な時に作動しない装備に大金をつぎ込むはずがないと見ており、米ミサイル防衛の量的拡大を恐れている。またBMDが部分的にしか有効でないとしても中国の報復攻撃がほとんど迎撃されてしまうと危惧している。
  7. このため軍事思想家は中国の核ミサイルを警戒態勢におくよう習主席に求めている。破壊される前に発射するのが必要と主張しているのだ。中国の見方では警告発射は第二次攻撃にすぎない。米国とロシアがそれぞれ厳戒態勢でミサイルを維持するのなら中国も従うべきと見ている。
  8. 習主席が思想家の主張を受け入れれば重大な点を見逃すことになる。ミサイル攻撃を探知する早期警戒探知システムには誤った警告を出すことがあり、とくに稼働開始後にその傾向が強い。警報が正しいとしても中国軍の操作員は通常兵器なのか核兵器か区別できるだろうか。通常兵器が飛んでくるとしても中国の核戦力が目標ならどうなるか。中国軍に警告発射の許可が下りれば、今度は米国は自国に向けた核攻撃が偶発的あるいは誤って実施されたと誤解する危険がある。
  9. この危険を回避することがホワイトハウスの優先事項のはずで、とくに今回は核の安全保障をテーマとするサミットだ。
  10. 習は逆に米国の核兵器運用方針を見直すようオバマに反論する可能性がある。米国は陸上配備ICBM450発を警戒態勢に置いており、必要なら迅速発射が可能だし、潜水艦配備の長距離ミサイルは残存性が高く報復兵力となる。
  11. オバマ大統領が主催する核安全サミットは今回が最後だが、両国が核兵力を厳戒態勢に置く愚行を理解できれば、今回のサミットは核戦争の危険を下げる歴史的転回点と理解される。
本稿の著者グレゴリー・クラッキは憂慮する科学者連盟の中国プロジェクト責任者で、米中間の異文化コミュニケーションの専門家でもある。これまで両国間の核兵器管理と宇宙空間の安全保障専門家間の対話を進めてきた。



2016年4月17日日曜日

★緊張高まるバルト海上空、今度はSu-27がRC-135にバレルロールで脅かした



バルト海で緊張が高まっていることは日本ではほとんど報道されていないようですね。
今回はまたもやロシア戦闘機が危険行為をしており、危機一髪という事態だったようです。
思わぬ事故にならないようにロシアに自制を求めたいと思います。米ロでの取り決めを守らないロシアもロシアですが、同様の取り決めは日中でも必要ですね。
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Russian Jet Threatened U.S. Recon Aircraft

Barrel rolls over plane in latest Baltic Sea provocation
April 16, 2016 3:25 pm

RC-135 / image via Wikipedia
RC-135 / image via Wikipedia
     

ロシア戦闘機が米空軍RC-135偵察機に危険な接近飛行をバルト海上空で4月14日に行っていたと判明した。米欧州司令部が16日に公表。
  1. 「4月14日、米空軍RC-135がバルト海上空国際空域を飛行していたところ、ロシアのSu-27一機が危険かつ非常識な飛行で同機を迎撃してきた」と同司令部報道官海軍大佐ダニー・ヘルナンデスが発表している。
  2. 「今回の迎撃はロシアがUSSドナルド・クックを挑発した直後」で、「昨年から数回にわたりロシア軍用機が航空機艦船に危険な接近飛行をしており、深刻な安全上の懸念が生まれている。このような行為に大いに憂慮している」と述べた。ヘルナンデス大佐は同機はロシア領空に侵入していないと付け加えている。
  3. 「このような危険かつ無茶な迎撃は機の乗員に深刻な被害を生じかねない。さらに危険かつ無茶な行動が不必要な緊張のエスカレーションを招きかねない」
  4. ヘルナンデス大佐は問題のSu-27がRC-135側方から高速度で接近し、「過激な操縦」をしたと述べ、ロシア機は「米軍のRC-135Uの乗員の危険を招きかねない操縦をした」という。
  5. 「具体的にはSu-27機はRC-135の翼端から50フィート未満に近づき、RC-135の左でバレルロールを開始し、同機上空をから右側に抜けた」
  6. 米政府はロシア政府に外交チャンネルを通じ抗議中と同報道官は述べた
  7. RC-135Uは電子情報収集偵察機で通常は飛行乗員5名と電子戦要員16名、6名以上の地域専門家が搭乗して飛行する。
  8. この二日前にロシア軍機が誘導ミサイル駆逐艦USSドナルド・クックを襲う飛行をした事件がバルト海で発生しており、米政府は模擬空爆は軍事挑発行為だとし、実弾射撃が始まる一歩手前の事態だったという。この事件ではSu-24戦闘爆撃機の二機がクックを30フィート以内で通過飛行している。
  9. 冷戦終結後で米海軍艦船がここまでの嫌がらせをロシアや中国から受けたことはないとある海軍士官は述べている。「今までも危ない目にあっているが、ここまで接近されたのは初めて」だという。
  10. 空での嫌がらせはロシア軍がすすめる米軍、NATOへの威嚇行動の一環と思われる。
  11. 米国がミサイル防衛をヨーロッパに展開したことでロシアは軍事敵対行為を取っており、一方でロシアはクリミア併合で西側が実施中の制裁で打撃を受けているといわれる。
  12. ウラジミール・プーチン大統領は「近隣諸国」と呼ぶ旧ソ連共和国やロシア国境付近の東欧各国に対し影響力、支配力を再構築しようとしている。
  13. この政策でジョージアを2008年に軍事干渉し、ウクライナでは2014年にクリミア半島を強行に併合し、ウクライナ東部の分離独立派を支援している。
  14. これに対応して米国とNATOは東欧で米軍、NATO軍を強化しており、とくにバルト海のラトヴィア、エストニア、リトアニア、ポーランドで部隊規模を拡大している。
  15. ここにきてロシアが軍事挑発行為をしているのはロシアの飛び地領土カリニングラードが米軍の監視対象になっていることに符合している。
  16. 今週初めに国防次官補ブライアン・マッケオン(国防政策担当)が下院小委員会でロシアがカリニングラード上空での米軍、NATO側の飛行を認めない姿勢に出ているが、飛行はオープンスカイズ条約で認められていると述べた。
  17. マーク・シュナイダーはかつてペンタゴンで戦略兵力の分析を行い、現在はロシア専門家で、ここ数日のバルト海で発生した事件はロシアによる従来の挑発行為と全く違う性質だと指摘している。「ロシア側の強硬さがエスカレートしている。ロシア国防省は驚くほど不誠実な対応に終始している」
  18. ロシアはクック事件を軽視しようと国防省報道官イゴール・コナシェンコフが国営インターファックス通信でロシア側操縦士は安全基準を守っていたと発言した。
  19. 考えられる米側の対応としてかつてリチャード・パールが呼んだ「緩い対応」すなわちきわめて弱い形式上の抗議になるとシュナイダーは見る。「そうなると今後の事態はエスカレートしていくのでは」
  20. 今回のRC-135事案はロシア機が行った米偵察機への危険飛行では今年に入って二回目だ。1月25日にはSu-27が黒海上空のRC-135から20フィート地点を飛行したとヘルナンデス大佐は述べている。
  21. 一月の際はロシア機はバレルロールこそしなかったが、急激な高速旋回離脱をしている。これでRC-135の操縦が乱された。
  22. 駆逐艦クックへ危険な飛行を挑んだSu-24の飛行は4月12日のことでその前日にも別のSu-24二機が同艦の上空を20回通過飛行し、うち一回は給油中のNATO側のヘリコプター上空を通過している。このためヘリコプターの運用はSu-24編隊が去るまで中断されている。
  23. その同日に今度はロシアのKa-27へリックスヘリコプター一機がクックの周囲を飛行している。クックはポーランド寄港直後で艦上にはポーランドのヘリコプターが搭載されていた
  24. ロシア機は模擬空襲のパターンで飛行し、英語ロシア語で繰り返した注意喚起に反応しなかった、と欧州司令部は声明文で述べている。ペンタゴンは映像記録を公表し、接近飛行で海面上に軌跡が生まれているのを示している。
  25. 駆逐艦クックは対空兵装として接近迎撃兵装システムCIWSも搭載しているが、今回の事件では射撃準備はしていなかった。これは米ロで相互に機体へ照準を合わせないことが決まっているためだ。
  26. 「危険かつ無茶なロシア側の飛行操縦を深く憂慮している」と欧州司令部は声明文を発表している。「各事例では不必要な緊張のエスカレーションを招きかねない要素があり、誤解や事故dにより深刻な死傷者が発生してもおかしくない」
  27. 各事案は米ロ合意による海上事故予防策に反する。協定では模擬攻撃を禁じ、自動作動対空砲の使用も制限している。
  28. ロシア戦闘機とRC-135の衝突すれすれの事態が昨年5月30日に黒海で、またSu-27がRC-135の20フィートを飛行する事態がバルト海で発生している。さらに昨年10月にはTu-142爆撃機二機が空母USSロナルド・レーガン付近を超低空で通過飛行する事件が日本海で発生している。また2015年7月4日にはTu-95戦略爆撃機二機がカリフォーニア海岸から40マイル地点まで近づき、迎撃に向かった米軍パイロットに「お誕生日おめでとう」との無線交信をしている。この独立記念日の事件はオバマ大統領がプーチンと電話会談を行ったその日のできごとだった。
  29. ロシアはTu-95爆撃機を太平洋で長距離飛行に投入し、グアム島まで数回にわたり飛行させている。グアムは米軍のアジア重視の中で中心的な役割を果たす軍事拠点だ。■


★インド>ラファール36機を88億ドルで調達へ



India To Pay $8.8 Billion for Rafale Fighter Jets: Reports

Agence France-Presse3:52 p.m. EDT April 16, 2016

FRANCE-DEFENSE-ARMY-EXERCICE(Photo: Pascal Pochard-Casabianca/AFP via Getty Images)
NEW DELHI — インドは総額88億ドルでフランスのダッソー・ラファール戦闘機36機の調達に合意したとの報道が15日金曜日に出た。商談が長引いていたが、間もなく成約になりそうだ。
  1. ラファール導入の商談は2012年にはじまっていたが、機体価格を巡り難航していた。
  2. 「交渉は最終段階で今のところまだ結論は出ていない」とインド国防関係者が述べている。
  3. インドNDTVの報道ではインドは88億ドルを支払う都市、最終合意はインド国内で三週間以内に成立するとしているが、機体の引き渡しは18か月後としている。
  4. ダッソーアビアシオン社長のエリック・トラピエは最終合意があと数日のところまで来ていると述べ「契約調印はまもなく」とフランスのメディアに語っている。
  5. ただフランス国防省は本件についてコメントを拒んでいる。
  6. インドはラファール126機の購入で交渉を開始したが、機数は交渉が難航する中で縮小し、価格とインド国内生産を巡り意見がまとまっていなかった。■


日曜日の話題 中国の「国家安全教育日」に登場した奇抜なビデオ宣伝作品



中国国内向けだから版権も著作権も関係ないというのが制作側の考えなのでしょうが、今やこうして世界がすぐその内容を知ってしますのですから、中国政府の姿勢はかなり遅れているとしか言いようがありません。コメディとしてYouTubeにアップロードされると娯楽にはいいかもしれません。とはいえ、こうして大衆は教育されていくとしたら恐ろしいですね。ただし、中国人には多様な価値観があるようで、健全な意見も散見されるのが救いでしょうか。
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China’s Latest Bizarre Propaganda Videos Use Batman and Mr. Bean to Explain State Secrets

11:48 AM ETBY ZHEPING HUANGJOSH HORWITZQUARTZ


スーパーマン、ジョーカー等のポップカルチャーの人気者が中国のオンラインプロパガンダ宣伝に登場している。本日4月15日は新たに制定した全国安全教育日として国家機密保護の重要性を訴える記念日だ。
  1. この機会に国家保安省がアニメビデオを製作し、ポップカルチャーで政府の意思を伝えようとしている。ジェイムズ・ボンドなどハリウッド映画の登場人物を使ったヴィデオ作品5作で国家安全保障での党基本方針を防諜法と国家安全保障法(2014年、2015年それぞれ成立)の側面から解説している。内容は奇抜としかいいようがない。
  2. あるストーリーでは国家安全保障法を説明し、一般市民に外国人スパイを摘発するよう勧める。「特殊部隊、FBI、CIA以外にもスーパーマン、バットマン、アイアンマン、スパイダーマン、キャプテンアメリカもスパイだ」とナレーションが入る。「だが海外各国ではスパイ活動は国家安全保障にとって小さな要素に過ぎない。各国で中国に対抗する安全保障関係者たちは魔法の力も鋼鉄の肉体ももっていない」と述べている。「失業」や「一時解雇」のイメージが出ると上に示したスーパーヒーローたちが泣いている画像に切り替わる、つまり、正体を隠した有名人や外国人が国の安全を脅かすというのだ。
スーパーヒーローも要点解説に動員(iFeng)



  1. 別のエピソードでは一般市民に国家の安全を脅かす行動をとらないよう訴えている。たくましい腕の赤ちゃんがジョーカーの犯罪現場を撮影し、官憲に報告すると、ジョーカーは直ちに逮捕投獄される。「国家の安全を脅かす行為を見つけたらただちに関係当局に報告し、証拠を持参してください」とナレーションが入る。

  1. 笑いを狙ったのか真剣に訴えようとしているのか区別できない。ナレーションでは新法成立を告げ、30秒にわたりコリン・ファース主演の映画キングスマンが現れる。
  2. 「スパイの道具はここまで進歩して傘が武器になっています」のナレーションでファースが傘から銃弾を発射する場面を映す。「でも我が国の安全保障法は20年間同じままでした。2014年11月に新しい防諜法が遂に登場しました」
  3. またビデオ内ではほかのポップカルチャーの引用も見られる。ナレーションがビデオゲームのワールドオブウォークラフトの決まり文句を叫び、ジャック・マー(アリババ創設者)のように中国へ世界の関心を集める努力を呼びかける。アドルフ・ヒトラーも短時間ながら登場し、巨大なパンチを受ける。
パンチを受けるヒトラー(iFeng)



  1. このビデオ作品を見ても何が「国の安全保障」なのか「スパイ活動」なのか説明がほとんどない。これは意図されたことなのだ。中国政府はこれまでも物議をかもす行為を国家安全保障のためと強弁して正当化してきた。スウェーデンの人権運動家ピーター・ダーリンが今年拘留されているが、中国は「中国の安全保障に害をなす犯罪行為に資金提供した」と本人を追及している。
  2. 一方で中国政府は昨年に海外インターネット企業に中国国内のユーザー情報の記録を国家安全保障を名目に求めてきたといわれる。当初はこれを反テロ法案に盛り込むつもりだったが、昨年成立した完成法では削除している。
投獄されたジョーカー (iFeng)



  1. 中国国営放送のCCTVでこのアニメーションが最初に放映されている。中国版ツイッターのWeibo微博では一部ブロガーがビデオクリップを「かわいい」と評して続編を期待している。評論家のひとりは「正面から取り上げわかりやすく国民に寄り添っている」と評している。
  2. 一方で懐疑的な見方も生まれている。「わたしもぜひ報告を入れたい。海外報道によるとスパイ多数が我が国の資産を他国に移転している」とブロガーのひとりが伝えており、中国指導層が「パナマ文書」スキャンダルに関与していることに触れている。■

2016年4月16日土曜日

★南シナ海>中国がウッディ島に戦闘機を一挙に16機配備中



Defense official: China deploys 16 fighter jets to disputed South China Sea island

Stars and Stripes
Published: April 13, 2016

WASHINGTON — 中国が南シナ海で領有を主張するウッディ島にこれまでで最大規模の戦闘機部隊を展開していることが米関係者の発言で4月13日明らかになった。
  1. 瀋陽J-11戦闘機16機が4月7日に同島へ移動したと国防関係者は匿名で述べている。匿名とするのはこの件を公式に発言する権限がないためだという。この規模の展開は前例がないが、中国は以前から同島へ戦闘機を配備しており、パラセル諸島で最大の面積を有する同島がる南シナ海で重要な存在であることを示している。
  2. 同島に軍用機を配備するのは南シナ海の軍事化はしない、との習金平主席発言(2月のワシントンDC訪問時)と矛盾する。
  3. 米側は今回の戦闘機配備は南シナ海で進む人工島の建設とともに、域内の安定を損ねる行為とみている。米国は中国他南シナ海領有を主張する各国に軍事拠点化はしないよう繰り返し求めてきた。
  4. 現在フィリピンを公式訪問中の国防長官アシュ・カーターは、中国の野望を食い止めるために米国はフィリピン国内基地の利用を検討しており、長官は候補地を訪問する。各基地はスプラトリー諸島からおよそ100マイル離れている。
  5. カーター長官は米国はフィリピン基地を整備し、米軍部隊を交代で配備すると述べた。
  6. 「関係する各国が一方的な埋め立て工事、土地造成工事、軍事拠点整備を実施しないことが肝要だ」とジョン・ケリー国務長官は2月に発言している。「だが現実には中国、ヴィエトナム他が作業しており、不幸なエスカレーションが生まれている」
  7. ウッディ島は中国が1950年代から実効支配しているが、台湾、ヴィエトナムも領有権を主張する。中国が滑走路を建設し、軍用機運用に道を開いたのは1990年代のことで、2014年に滑走路を拡張した。
  8. ペンタゴンはこれまでも中国による小規模な戦闘機配備を確認しており、昨年11月に続いて今年2月にも展開していた。
  9. ペンタゴンが入手した新資料では中国はウッディ島に追加施設を建設していることがわかる。
  10. ImageSat Internationalが撮影した衛星写真では火器管制レーダーが同島に完成しており、中国は地対空ミサイル運用を2月に開始している。画像では地対空ミサイルは同島の東側に配備され、数発が発射可能な状態になっているのがわかる。
  11. 中国外相王穀は2月に報道陣に中国が「必要最小限の防御装備を自国領土に展開している」と述べている。■


バルト海での危険なロシア機飛行の背景にある緊張状態を読み解け





Russian Flyby of USS Donald Cook Highlights International Tension in the Baltics

By: Magnus Nordenman
April 15, 2016 10:34 AM

160412-N-00000-007 BALTIC SEA – A Russian Sukhoi Su-24 attack aircraft makes a low altitude pass by the USS Donald Cook (DDG 75) April 12, 2016. Donald Cook, an Arleigh Burke-class guided-missile destroyer, forward deployed to Rota, Spain is conducting a routine patrol in the U.S. 6th Fleet area of operations in support of U.S. national security interests in Europe. (U.S. Navy photo/Released) 160412-N-
ロシアのスホイSu-24攻撃機が低空飛行でUSSドナルド・クック(DDG-75)上空を通過した。2016年4月12日。US Navy Photo

バルト海でUSSドナルド・クック(DDG-75)へロシアのスホイSu-24フェンサーが危険な接近飛行をしたことで、同海がロシア、米国、NATO加盟国のせめぎあう場所になっていることが浮き彫りにした。
  1. 今回の事件では同時にロシアが軍事戦略上で広い地帯を想定し、米軍・NATO軍を有事の際には排除することを考えており、平時でも米軍、NATOの作戦行動を可能な限り困難にさせようとしていることがわかる。
  2. バルト海での米ロ遭遇事件は今回が初めてではない。2014年には米空軍の偵察機が飛行を中断しスウェーデン領空に退避せざるを得なくなった。ロシア戦闘機が危険な接近飛行をしてきたためだ。バルト海各国はロシア軍に不愉快な思いを何度となくされており、ロシアのフリゲート艦がスウェーデン・フィンランド合同の海洋調査船に接近してきた事態もあった。ロシアのバルト海艦隊の説明では同船がロシア海軍の演習地に近づいたためだとする。スウェーデンとフィンランドの間に海底ケーブルを敷設する際にロシア海軍艦艇が近くにいるため作業を中断するのは日常茶飯事だ。またロシアのものと疑われる潜水艦がスウェーデンやフィンランドの領海に忍び込んだ事件も記憶に新しい。
160412-N-00000-005 BALTIC SEA – A Russian Sukhoi Su-24 attack aircraft makes a low altitude pass by the USS Donald Cook (DDG 75) April 12, 2016. Donald Cook, an Arleigh Burke-class guided-missile destroyer, forward deployed to Rota, Spain is conducting a routine patrol in the U.S. 6th Fleet area of operations in support of U.S. national security interests in Europe. (U.S. Navy photo/Released)
ロシアのSu-24攻撃機がUSSドナルド・クック (DDG-75) へ低空通過飛行をしてきた。2016年4月12日。 US Navy Photo

  1. ドナルド・クックへの嫌がらせやその他海上での遭遇がこの数年間続いているのはロシアが接近阻止領域拒否l (A2/AD) の姿勢をバルト海で示しているためだ。カリニングラード飛び地領を中心にS-400対空ミサイルやイスカンダー弾道ミサイルを展開している。有事にはロシアはバスティオン対艦ミサイルを持ち込むだろう。ただしロシアのl A2/ADは政治的なメッセージと軍事演習をNATOに見せつける意味もあり、米国をバルト海に入れたくないのだ。そのため同海での米軍の作戦行動はロシアには不快に映るものになっている。
160412-N-00000-009 BALTIC SEA – Two Russian Sukhoi Su-24 attack aircraft fly over the USS Donald Cook (DDG 75) Apr. 12, 2016. Donald Cook, an Arleigh Burke-class guided-missile destroyer, forward deployed to Rota, Spain is conducting a routine patrol in the U.S. 6th Fleet area of operations in support of U.S. national security interests in Europe. (U.S. Navy photo/Released)
二機のロシアのスホイSu-24攻撃機がUSSドナルド・クック上空を飛行している。2016年4月12日。同艦はスペインのロタに前方配備され、当日はヨーロッパにおける米国権益の保護のため第六艦隊担当海域で作戦行動中だった。 
U.S. Navy photo/Released

  1. デンマーク海軍のフリゲート戦隊がNATOのミサイル防衛ネットワークに加わるとの発表に対しロシアはデンマークのフリゲート艦はロシアの標的になる、核攻撃も辞さないとの声明文で対応した。ロシア国防相はフィンランドもNATOに接近すれば重大な結果を招くと警告をしている。
  2. アジア太平洋だけで米海軍や同盟国側を緊張を高める海域ではない。ヨーロッパ周辺の海でも軍事力拡大とA2/ADは当たり前になっている。ドナルド・クックは黒海でもロシア機に頭上通過飛行を2014年に受けている。バルト海では今回のような接近遭遇による危険事態が今後も発生するだろう。今年の夏にはBALTOPS海軍演習が予定されており、大規模な対潜演習が展開される。さらに、NATOサミットが7月初旬にワルシャワで開催される。ロシアが何らかの動きを示すのは必至だ。■