大は小を兼ねるのか。これまでの流れの頂点が新型フォード級空母ですがさすがに米国もこれでいいのかと考えつつ、必要な戦力を積算するとどうしても大型艦になるジレンマに苦しんでいるのでしょうか。一方で強襲揚陸艦の新世代USSアメリカが新しい動きの芽になりそうですね。超大型空母が過去の遺物になるのかそれともこれからも平和の守り神の主役の座に残るのか、まだまだ論争は続きそうですがそんなに悠長なこと言ってられるのでしょうか。筆者は日本が一部負担して米海軍が運用する部分所有権みたいな空母が今後生まれると見ていますが。
Small Aircraft Carriers: RAND Report Won’t Convince McCain
RAND報告が型空母構想を検討したがマケイン議員は納得させられず
USSジェラルド・フォード
- 米海軍には小型かつ安価な空母が必要であると予算超過・予定遅延のUSSジェラルド・フォードを念頭に元海軍パイロットのジョン・マケイン上院議員はずっと主張してきた。真っ向から反対するのが大型空母建造を推進する団体ACIBCで米海軍向けRANDの研究成果を引用しつつNational Interestに見解が掲載された。だがマケインに簡単に引き下がる気配がなく、RANDも小型空母構想のうち一案は検討の価値ありと考えている。
- RAND報告書はマケイン主張に異議を立てるものではないとある議会スタッフが教えてくれた。報告書は上院軍事委員会委員長のマケインが提起した疑問に答えていないからだ。「最も過酷な環境下でフォードが実施できる能力との比較で代替各案を検討している」と高度戦力を有する中国のような敵との対決を想定している。「また各案でうまく対応できないと分かったのも驚きに値しない」とこのスタッフは語っている。「空母の任務をあらゆる角度から検討し、フォードは過剰戦力で小型空母がより適していると言えるのか検討している」
- RANDもマケイン主張の中心課題に一言だけ言及している。つまり、「海軍は新しい『ハイローミックス』空母戦力を検討すべきだ」とのくだりでマケインの論文Restoring American Power.を引用している。「従来型の原子力推進スーパー空母は互角の戦力を有する大国への抑止ならびに撃破には有効だが、実際の日常運用たる兵力投射やシーレーン確保、近接航空支援や対テロ作戦なら小型で安価な通常動力空母で十分用が足りる」
- RANDは大型小型空母の組み合わせの方がうまく行き、各種ミッションに対応でき「リスクを低減し」ながら「管理しやすくなる」と結論づけている。ただし同シンクタンクは長期的解決策として深く検討していない。
将来の海軍戦闘構想 (CSBA graphic)
- RAND報告書は立法上の要求に十分こたえられない。上下両院が成立させた国家防衛認可法(NDAA)(2016年)の128節(d)項では海軍に対し代替空母構想を以下の形で議会提出するよう求めている。
- 「各種作戦シナリオで」
- 「CVN-78級空母に代わるものあるいは補完するもの」
- 「排水量2万トンから10万トン超までの範囲で」
- これに対しRAND報告書では
- 「最も過酷なシナリオ」での機能を分析しただけ
- フォード級に対し「低コスト空母代替策」を検討し、
- 検討範囲は2万トンから10万トンの範囲のみ
- マケイン議員は小型空母を推進派だが、NDAAは海軍に現在のスーパー空母を上回る艦の検討も求めており、大小両端で検討を求めているのにRANDはこれをしていない。
- 批判は脇においても「大きいことはいいことだ」がRANDの結論ではない。研究では「小型化には代償がある」としている。同シンクタンクの結論は建造費用を下げても戦闘能力が切り下げられるのは割りが悪いということだ。RANDはフォード級より三割小さい中間サイズの原子力空母も検討している。
オプションは四つ
- RANDは構想を四つに分け、それぞれで長所短所が大規模戦闘で露呈するという。
- ハイエンドが10万トン原子力空母構想(CVN 8X)でフォードよりわずかに大きく高価格の選択肢だ。RANDは建造単価を下げた場合ソーティ形成能力つまり機材の着艦、燃料補給、装備再充填ののち発艦させるくりかえしが「わずかながら低下する」と結論づけた。フォード級でも開発にあれだけの予算がかかりながら、バグ対応していくと節減効果は期待できない。
- ローエンドが2万トン通常動力空母(CV-EX)で第二次大戦中の護衛空母の現代版だ。ここまで小さいと空母航空隊全部の運用は無理でジャンプジェット機のF-35Bやティルトローター機のV-22オスプレイ並びにヘリコプターの運用しかできない。かつ機数が限られる。電子戦機材は大型空母や陸上基地から運用を迫られる。あるいは新規開発の垂直離着陸機に支援任務を期待するしかないだろう。そうなると護衛空母構想は「実用性に乏しい」とRANDは結論付けている。
- この中間に興味を引く選択肢が用意されている。
HMSクイーンエリザベス
- 7万トン原子力空母(CVN-LX)はフォードより3割小さいがフルサイズ飛行甲板で同じ機材を運用できる。(同規模の通常動力空母の提案も英クイーンエリザベスやかつてのUSSフォレスタルなどの例からあるが、RANDはなぜか検討していない) この艦だと同じ一日でもフォードのソーティー数に及ばないが、RANDはこのことは「ストレスのかかる戦闘シナリオでは制約条件にならない」と結論付けている。深刻なのは7万トン艦が搭載する一機あたり弾薬燃料量はフォードより低くなる点だ。このため同艦は再補給が頻繁に必要となり、戦火の環境では望ましくない。それでもRANDは「相当の節約効果が就役期間全体で期待できコンセプトをさらに磨けば大いに期待できる」としている。
- 4万トン通常動力空母(CV-LX)は現行の強襲揚陸艦USSアメリカを大型化した構想だ。アメリカ同様にこの艦の飛行甲板も小さいため運用はF-35、V-22、ヘリコプターしか期待できず部支援も必要になるが、護衛空母構想よりは支援度合いは低くできる。艦そのものも現行艦を発展拡大すればいいので「低リスク」かつ費用対効果が高いとRANDは見ており、二隻あればフォード級一隻の機能のほとんどが期待できるが、全部とまでいかず、艦隊に追加負担をかけない代替策にだという。
USSアメリカ(LHA-6)
- マケイン論文は小型空母を求めており、具体的にはこの規模を想定しているが現行の空母打撃群(CSGs)の肩代わりは期待していない。かわりに通常動力軽空母群を建造し高艦齢のワスプ級大型甲板型揚陸艦の代替にしたいとする。揚陸即応集団(ARGs)の中核がワスプ級で海兵隊を運ぶのが任務だ。構想では海兵隊に航空戦力を増強し厳しい環境に対応させ、艦隊航空戦力の増強はそこまで期待しない。だがこの構想はマケイン提案にありながら海軍がRANDに委託した際には薄められている。
- 「本研究内容で論争が終止符を打たれることはないし、その他にも似たような結論の研究成果が出ている」と元海軍のブライアン・マグラスが記者に語っている。「小型かつ限定目的の空母には将来の艦隊に立ち位置が残されているが、大型原子力推進空母群に付随こそしても代替する存在にはならない」■
荒唐無稽かもしれませんが、5~7万t級の中型空母を中心とした艦隊に、大型の弾薬補給用潜水輸送艦を随伴または組み合わせるというのを何度か考えたことがあります。
返信削除通常の補給艦は燃料を友軍水上艦に分け与えるものですが、この場合は弾薬を、しかも潜水艦でです。
補給艦が水上艦であれば、戦闘時に艦隊運動に追随しなければなりませんが、対潜結界の内側にいる潜水艦ならばスットロかろうが戦闘能力がなかろうがお荷物にはなり難く、その上で弾薬や燃料の補給が可能となれば高額な超大型空母を建造しなくとも、それなりの継戦能力と火力投射能力を維持したままダウンサイズできると考えます。
補給潜水艦のほうは戦闘を到底する一般的な潜水艦とは異なり、とりあえず水に沈んで航行できれば良いという程度のものであれば、一般的に高額になりがちな潜水艦の「高額になりがちな要素」はほとんど妥協できるということにもなると思います。
いずれにせよ食糧や人員等は飛行機で運んでくれば良いので従来通りでも良いのですが、やはり空母のダウンサイズで懸案になるのは航続距離と弾薬の備蓄量と思われるので、ここらを解決しないと中型空母を従来の空母戦闘群と同じように活動させるのは難しいと思います。核リアクターを搭載しないならなおさらです。